Vol.36No.1
第46回 奥羽大学歯学会例会講演抄録
4)炭 酸 ガ ス レ ー ザ ー凝 固 モ ー ド照 射 に よ る 組 織 変 化
−照 射 条 件 と組 織 変 化 の 関 係 に つ い て −
○玉村 清治,遊 佐 淳子,櫻 井 裕子 (奥羽大 ・歯 ・口腔病態解析制御)
【目 的 】 近 年 歯 科 臨 床 に お い て,低 出 力 パ ル ス 発振 に よ る炭 酸 ガ ス レ ー ザ ー が 口腔 粘 膜 表 在 性 病 変 の 治 療 に用 い られ 効 果 を あ げ て い る。 この 治 療 法 は,切 除 で は な く組 織 凝 固壊 死 に よ る病 変 の 除 去 を 目的 と して い る点 で 従 来 の 炭 酸 ガ ス レ ー ザ ー と は治 療 概 念 が異 な って い るが,そ の根 拠 と な る 科 学 的 デ ー タ は殆 ど示 され て い ない 。 そ こで 本 研 究 は,こ の 治 療 法 に 関 す る基 本 的 デ ー タの 提 供 を 目 的 と し,照 射 条 件 と凝 固壊 死 範 囲 の 関係 を検 討 した。
【 方 法 】 レ ー ザ ー 発 振 装 置 と し て パ ナ ラ ス CO5Σ を 用 い た 。 パ ル ス 幅600μs,休 止 時 間6 ms,出 力2.5,5.0,7.5W,ス ポ ッ トサ イ ズ1.5mm, 照 射 時 間10,20,30,40秒 の 条 件 で ラ ッ ト背 部 皮 膚 上 に 照 射 した。1日 後 に 試 料 を採 取 し,H‑E 染 色,マ ッ ソ ン ・ ト リ ク ロ ー ム 染 色,お よ び Hsp70免 疫 染 色 を施 して観 察 した。
【 結 果 】2.5W照 射 群 で は,組 織 学 的 に 真 皮 表 面 で 線 維 構 造 の 緻 密 化 と好 塩 基 性 の 増 加 が み ら れ,照 射 時 間 の 増 加 と と も に そ の 範 囲 を 拡 げ た が,深 部 で は細 胞 成 分,線 維 構 造 と も に 明 ら か な変 化 は 認 め られ な か っ た 。 一 方Hsp70免 疫 染 色 で は,組 織 生 存 の 最 前 線 を表 す 帯 状 の 陽 性 細 胞 層 がU字 形 を呈 して 実 際 上 の 壊 死 範 囲 を表 示 し, そ の 深 さ は 平 均20秒:724μm,30秒:756μm,
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40秒:796μmで あ っ た 。5.OW,7.5W照 射 群 で は 真 皮 表 面 の 変 性 が よ り 著 明 に な り 範 囲 を 拡 大, 蒸 散(5.0w20秒 〉,実 質 欠 損(7.5W1O秒)を 示 し, Hsp70表 示 に よ る壊 死 層 も深 さ を 増 し た(5.OW10 秒:1063μm,20秒:1296μm,7.5W10秒:
1350μm)。 統 計 的 に は,同 じ 出 力 の 場 合,照 射 時 間 の 延 長 に よ る 壊 死 の 深 化 に 有 意 差 は み ら れ ず, 同 じ エ ネ ル ギ ー 密 度 で 出 力 を 上 昇 さ せ た 場 合 に 有 意 な 深 化 が み ら れ た 。
【結 論 】 炭 酸 ガ ス レ ー ザ ー 凝 固 モ ー ドに よ る 組 織 加 工 効 果,す な わ ち 凝 固 壊 死 の 範 囲 は 照 射 時 間 よ り も 出 力 に 強 く 影 響 さ れ る こ と が 明 ら か に な っ た 。
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