論文の内容の要旨
氏名:山 室 俊
専攻分野の名称:博士(医学)
論文題名:Interferon-betaの膠芽腫に対する新たな抗腫瘍効果:膠芽腫細胞における未分化性獲得の抑制 について
Glioma stem-like cells(GSCs)は自己複製能と多分化能、そして腫瘍形成能をもつ未分化な細胞であ り、膠芽腫(glioblastoma)の発生や再発、治療抵抗性に強く関与していると考えられている。Glioblastoma の化学療法において temozolomide(TMZ)と併用して用いられている薬剤のひとつに interferon-beta
(IFN-β)がある。IFN-βは腫瘍細胞の増殖抑制やアポトーシスへの誘導などにより抗腫瘍効果を示すとさ れており、GSCsに対しても抗腫瘍効果を発揮するとした報告が散見される。
本研究では、GSCsの細胞株と、悪性神経膠腫(malignant glioma)細胞株7種を用いて、GSCsの分 化や腫瘍細胞における未分化性の(再)獲得を中心に、それらに対するIFN-βの効果を検討した。細胞の 未分化性の評価は、おもに神経幹細胞およびGSCsのmarkerであるCD133の発現と、多分化能のmarker であるNanog mRNAの発現を指標とした。
無血清培地におけるGSCsの細胞株はtumor sphereを形成し、CD133およびNanog mRNAを発現す る未分化な細胞株であるが、血清培地で培養するとCD133およびNanog mRNAの発現が減少し、分化し たと考えられた。分化した腫瘍細胞株をIFN-β投与群と非投与群に分けて3週間培養した後に再度無血清 培地で2週間培養したところ、非投与群ではCD133およびNanog mRNAの発現が再び増加し、未分化性 を再獲得したと考えられた。一方、IFN-β投与群ではCD133およびNanog mRNAの発現が抑制され、IFN-β が未分化性の再獲得を阻害することが示唆された。
血清培地のmalignant glioma細胞株7種はtumor sphereを形成しない分化した細胞株であるが、無血 清培地で培養するとtumor sphereを形成し、一部の細胞株はCD133を発現した。しかし、血清培地でIFN-β を投与した後に無血清培地で培養すると、7種の細胞株は全てCD133を発現しなかった。また、malignant glioma細胞株のひとつであるU-87MGをIFN-β投与群と非投与群に分けて無血清培地で2週間培養した ところ、IFN-β投与群では非投与群と比較してNanog mRNAの発現が抑制された。
GSCsおよびmalignant glioma細胞株は環境の変化に対応して未分化性を喪失、あるいは(再)獲得し た。治療抵抗性や再発につながる未分化性の(再)獲得をIFN-βが抑制することが示唆され、glioblastoma に対する新たな治療戦略になり得ると考えられた。