慢性副鼻腔炎患者の鼻腺導管上皮における TSLP 、 IL-25 、
IL-33 発現についての検討
日本大学大学院医学研究科博士課程 外科系耳鼻咽喉科学専攻
永田 善之
修了年 2018 年
指導教員 大島 猛史
目次
第Ⅰ章 概要 1
第Ⅱ章 緒言 7 1. 慢性副鼻腔炎
2. 鼻茸の成因
3. 好酸球性副鼻腔炎
4. 好酸球性副鼻腔炎の病態 5. 上皮由来サイトカイン
6. 好酸球性炎症とリモデリング 7. 本研究の目的
第Ⅲ章 対象と方法 19 1. 対象
2. ヘマトキシリン・エオジン染色(Hematoxylin and Eosin :H&E) 3. 鼻粘膜組織における好酸球数のカウント
4. 免疫組織化学染色 (Immunohistochemistry : IHC) 5. IHC染色性スコアリング
6. 組織中の好酸球数とIHC染色性の関連性 7. 統計解析
第Ⅳ章 結果 27 1. 患者背景
2. ECRSにおける病理組織学特徴 3. 鼻粘膜組織中の好酸球数
4. 鼻粘膜上皮及び鼻腺導管上皮におけるIL-25の発現 5. 鼻粘膜上皮及び鼻腺導管上皮におけるIL-33の発現 6. 鼻粘膜上皮及び鼻腺導管上皮におけるTSLPの発現
7. 鼻粘膜上皮及び鼻腺導管上皮におけるペリオスチンの発現 8. 鼻茸組織中の好酸球数とIL-25発現の関連性
9. 鼻茸組織中の好酸球数とIL-33発現の関連性 10. 鼻茸組織中の好酸球数とTSLP発現の関連性
11. 鼻茸組織中の好酸球数とペリオスチン発現の関連性
第Ⅴ章 考察 36
第Ⅵ章 まとめ 40
謝辞 42
図表 43
図表の説明 64
引用文献 80
業績 83
1
第Ⅰ章 概要
1.目的
慢性副鼻腔炎は鼻閉、鼻漏、咳嗽、嗅覚障害などの症状により、
大きく生活の質の低下を招く疾患である。慢性副鼻腔炎には鼻茸 (nasal polyp)を合併することが多く、副鼻腔炎の病態を複雑にする 要因となる。特に好酸球性副鼻腔炎(eosinophilic chronic
rhinosinusitis; ECRS)は、難治性で、再発性の鼻茸を特徴とする 慢性副鼻腔炎の一病型であり、近年増加傾向にある。ECRSにおける 好酸球性炎症の機序に、自然免疫の関与が示唆されている。これに は上皮由来サイトカインと呼ばれる、鼻粘膜上皮細胞が産生する IL-25、IL-33、Thymic stromal lymphopoietin (TSLP)が重要な 役割を果たしていると考えられている。慢性副鼻腔炎に伴う鼻茸 の粘膜固有層においては、鼻腺導管の発達は組織学的特徴のひとつ であり、鼻腺導管上皮周囲には好酸球などの細胞浸潤が著明である ことが観察される。しかし、鼻腺導管上皮の好酸球性炎症及び鼻茸 形成における病態生理学的意義については明らかでない。
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本研究では、ECRSの鼻腺導管上皮におけるIL-25、IL-33、TSLP の発現を正常検体(control;CTR)、非好酸球性副鼻腔炎検体
(non-eosinophilic chronic rhinosinusitis; nECRS)と比較検討 を行った。また、組織中の好酸球数と上皮由来サイトカインの発 現の関連性を確認することで、鼻腺導管上皮が好酸球性炎症の起 点となることを検証した。また、粘膜固有層におけるリモデリン グの指標として、細胞外マトリックスタンパク質であるペリオス チンの発現を確認し、好酸球数との関連性を検討することで、病 態の難治化、鼻茸の形態維持の要因となることの検証を行った。
2.対象と方法
当研究は日本大学医学部付属板橋病院倫理委員会において承認の もと施行した。
2-1 対象
治療目的に施行した39症例の手術検体を対象とし、CTR 6例、nECRS 11例、ECRS 22例と分類した。正常検体には、鼻腔腫瘍手術時に健常 鼻粘膜部位を採取し、検体として使用した。慢性副鼻腔炎患者の分
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類は、本邦のECRSの診断基準であるJapanese Epidemiological Survey of Refractory Eosinophilic Chronic
rhinosinusitis(JESREC)スコアに基づき、JESRECスコアが11点以 上をECRS、それ以下をnECRSと診断した。
2-2 方法
まず、検体のHE染色を行い、鼻粘膜上皮下、鼻腺導管周囲に存在 する好酸球数を測定し、CTR群、nECRS群、ECRS群で比較した。次に、
IL-25、IL-33、TSLP、ペリオスチンの組織における発現を、各特異 抗体による免疫組織化学染色を行い、染色強度を0〜3の4段階でスコ ア化して評価し、CTR群、nECRS群、ECRS群で比較した。さらに、慢 性副鼻腔炎患者(nECRS症例、ECRS症例)をそれぞれの上皮由来サイト カインの染色性スコアで低発現群、高発現群の2群に分け、鼻茸組織 の鼻粘膜上皮、鼻腺導管上皮における2群間の好酸球数を比較検討し た。
3.結果
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3-1 鼻粘膜組織における好酸球浸潤について
ECRSの組織における観察では、鼻粘膜上皮直下に好酸球浸潤が多 数みられたが、鼻腺導管周囲においても同様に好酸球浸潤を多数認 めた。組織中の好酸球数は鼻粘膜上皮下、鼻腺導管周囲ともにCTR 群、nECRS群に対してECRS群では有意に高く認められた。
3-2 上皮由来サイトカイン、ペリオスチンの発現について
IL-25、IL-33は鼻粘膜上皮、鼻腺導管上皮ともにCTR群、nECRS群 と比較して、ECRS群では有意に高い発現を認めた。TSLPは全症例と もに発現は弱いが、鼻粘膜上皮ではECRS群はCTR群に対して有意差を 認め、鼻腺導管上皮ではECRS群はCTR群、nECRS群と比較して有意に 高い発現を認めた。ペリオスチンは鼻粘膜上皮下においてECRS群で は高い発現を認める傾向にあり、CTR群との比較では有意差を認めた が、nECRS群に対しては有意差を認めなかった。鼻腺導管周囲では ECRS群ではCTR群、nECRS群と比較して発現に有意差を認めた。
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3-3 組織中好酸球数と上皮由来サイトカイン、ペリオスチン発現と の関連性について
IL-25では、鼻粘膜上皮下、鼻腺導管周囲ともに高発現群が低発現 群より、好酸球数は高い傾向にみられたが有意差は認めなかった。
組織中IL-33の高発現群では低発現群と比較して、好酸球数は有意に 高かった。これは鼻粘膜上皮下、鼻腺導管周囲ともに同様の結果で あった。TSLPでは鼻粘膜上皮下においては、有意差は認めなかった が高発現群で好酸球数が高い傾向にあり、鼻腺導管周囲では高発現 群では低発現群に対して有意に好酸球数が高かった。ペリオスチン は、鼻粘膜上皮下では1症例を除いてすべて高発現群であり、好酸 球数の比較はできなかったが、高発現であるほど組織中の好酸球数 は高い傾向がみられた。鼻腺導管周囲では高発現群は低発現群と比 較して、有意に好酸球数が高かった。
4.結論
ECRSにおける好酸球性炎症の病態と関係するIL-25、IL-33、TSLP の産生細胞として、これまで鼻粘膜上皮が注目されてきたが、本研
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究において鼻腺導管上皮も重要な産生源である可能性が明らかとな った。組織における上皮由来サイトカインの発現と組織中の好酸球 数の関連性からIL−25、IL-33、TSLPの上皮への発現は組織中の好酸 球数を増加させる因子であることが示唆された。また、ペリオスチ ンは粘膜固有層に発現する細胞外マトリックスタンパク質であるが、
これもECRSでは鼻粘膜上皮下、鼻腺導管周囲に強く発現を認め、組 織中のタンパク質発現と好酸球数との関連性を認める事から、好酸 球性炎症の誘引となることが考えられた。以上より、鼻茸の鼻腺導 管上皮は鼻粘膜上皮と類似した上皮由来サイトカインやペリオ スチンの発現パターン、組織中の好酸球浸潤との関連性を認める ことから、鼻腺導管上皮の活性化が好酸球性炎症や鼻茸形成に積極 的な役割を果たしている可能性が示唆された。
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第Ⅱ章 緒言
1.慢性副鼻腔炎
副鼻腔炎は、顔面骨内に存在する含気構造である副鼻腔(上顎 洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞)に炎症が生じることにより、鼻 閉、鼻漏、後鼻漏、咳嗽といった呼吸器症状を呈する疾患で、頭 痛、頬部痛や嗅覚障害などを伴う疾患である。一般的に副鼻腔炎 は罹患期間により、急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎に大別される。
発症後1ヶ月以内に症状が消失するものを急性副鼻腔炎とする。
感染が主因と考えられ、鼻汁は膿性であることが多く、頬部痛や 発熱といった急性炎症症状を伴う。3か月以上鼻閉、鼻漏、後鼻 漏、咳嗽といった呼吸器症状が持続するものを慢性副鼻腔炎とす る〔1〕。慢性副鼻腔炎をもつ患者は、感冒など鼻粘膜の炎症性 疾患をきっかけとして急性副鼻腔炎と同様の症状を繰り返し、頻 回の受診を要す。それに伴い生活の質の低下をもたらすのみなら ず、患者個人の医療費の負担も多くなる。アメリカ合衆国におけ る慢性副鼻腔炎患者に対する直接的なコストの総計は1年間で
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100〜130億ドルにも及び、医療経済を圧迫する1つの要因となる
〔2〕。
欧州では慢性副鼻腔炎を、鼻茸を有する慢性副鼻腔炎(chronic rhinosinusitis with nasal polyps、以下CRSwNP)と鼻茸を有さ ない慢性副鼻腔炎(chronic rhinosinusitis without nasal polyps、以下CRSsNP)の二つに分類している〔3〕。本邦での慢性 副鼻腔炎の分類は図1のようにされており、鼻茸の有無が大切な 分類項目となり、鼻茸を有する慢性副鼻腔炎は、ECRSとnECRSに 分類される〔4〕。
2.鼻茸の成因
鼻茸(nasal polyp)は鼻・副鼻腔粘膜から生じる炎症性増殖性 腫瘤であり、耳鼻咽喉科日常診療においてしばしば遭遇する病変 である。鼻茸は、慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、アスピリン 喘息、嚢胞性線維症など様々な鼻・副鼻腔疾患で観察される〔5〕。
鼻茸は鼻咽腔内視鏡で容易に観察することができ、ほとんどが固 有鼻腔の中鼻道(中鼻甲介、鈎状突起付近)から発生する。これ
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によって鼻腔の通気性の悪化を招き、鼻閉や嗅覚障害の原因とな り患者の生活の質を低下させる。また、鼻茸は固有鼻腔と副鼻腔 との疎通性を妨げ、副鼻腔炎を繰り返す要因となり、慢性副鼻腔 炎の主な原因病態となる〔6〕。好酸球性副鼻腔炎では、嗅裂部 や篩骨洞に病変を有することが多く、嗅覚障害が初発症状となり やすいと言われている。
鼻茸の成因についてはすでに諸説報告されているが、いまだ定 説はない。鼻茸発生の背景が1つではなく多岐にわたることがそ の理由と考えられている。鼻茸の成因の1つの発生機序としてTos らによるEpithelial rupture説がある(図2A)〔7〕。この説で は、何らかの刺激により鼻・副鼻腔粘膜が傷害され、粘膜下組織 から肉芽様の組織が突出し、その表面に上皮化が起こり鼻茸の形 態が生じるとしている。さらに、鼻茸の成長過程で鼻腺が鼻茸内 部の粘膜固有層に長く伸張する(図2B)。鼻腺導管は多様な形態 を呈し、様々な分岐をするものもあれば、導管内腔が嚢胞状に拡 張するものも存在する(図2C)。鼻腺組織の病理組織を図3に示 す。鼻粘膜上皮から内方に陥入するようにして鼻腺導管組織が形
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成される。鼻腺導管の上部構造は鼻粘膜上皮と同様に多列線毛上 皮であるが、深部では単層円柱上皮となる。導管組織の終末部に は腺房組織が存在しており、漿液性細胞と粘液性細胞とが混在し ている。
3.好酸球性副鼻腔炎の概要
好酸球性副鼻腔炎(eosinophilic chronic rhinosinusitis;
ECRS)は2001年に初めて春名らにより提唱された疾患概念で〔8〕、
慢性副鼻腔炎の中でも難治性、再発性の副鼻腔炎として、近年増 加傾向にある。現在、本邦におけるECRSの罹患患者数は20万人に 及ぶと言われており〔4〕、2011年よりECRSは指定難病となった。
非好酸球性副鼻腔炎(non-eosinophilic chronic
rhinosinusitis; nECRS)の多くは、マクロライド療法が有効であ り、手術例においても再発率が低いのに対して、ECRSではマクロ ライド療法は無効であり、手術後の鼻茸再発率が高いことが特徴 である。手術後再発率に関しては、術後6年間で50%の症例が再 発すると報告されている〔8〕。臨床的特徴としては早期から嗅
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覚の低下を自覚し、鼻腔を観察するとムチン様の粘稠性な鼻汁を 認め、中鼻道や嗅裂付近に鼻茸を有し(図4)、後鼻漏症状や鼻 閉症状による生活の質の低下を招く。
ECRSの診断は、2015年に全国多施設共同大規模疫学研究
(Japanese Epidemiological Survey of Refractory Eosinophilic Chronic rhinosinusitis Study ; JESREC Study)によって得られ たJESRECスコアに基づく診断基準が示されている(図5)〔9〕。
日本と欧州では臨床的に利用される慢性副鼻腔炎の分類が異な り、欧米でよく用いられるCRSsNPとCRSwNPでは、CRSwNPは予後が 悪く、CRSsNPは予後がよいとされ、本邦におけるECRSは欧州の CRSwNPに類似すると考えられている。日本と欧州で慢性副鼻腔炎 の分類が異なる理由として、以前より日本人と比較してヨーロッ パ人の鼻茸には好酸球が多数浸潤するとされ〔3、9〕、90%程の 慢性副鼻腔炎患者が本邦におけるECRSであり、疾患構造の違いが あるためと説明されている。
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4.好酸球性副鼻腔炎の病態
アレルギー性鼻炎と気管支喘息とは高率に合併することは以 前から言われており、上気道と下気道は1つの臓器としてTh2型
(好酸球性)の炎症が引き起こる“one airway, one disease“の 概念が確立している。この概念において上気道の治療を行うと下 気道病変が改善され、下気道の治療を行うと上気道の病変が改善 すると報告され〔10〕、気道アレルギー疾患の治療を行う上で、
上下気道両方に目を向けることが大切とされる。気管支喘息の40
〜70%と高率に慢性副鼻腔炎を合併することや鼻粘膜や気管支 粘膜だけでなく副鼻腔粘膜も同様の気道上皮であることから、
ECRSと気管支喘息もone airway, one diseaseの関係にあると考 えられている。実際にECRSに対する内視鏡下副鼻腔手術前後で末 梢気道抵抗など肺機能の改善を認めたとする報告もある〔11〕。
アトピー型気管支喘息、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾 患の病態には、Ⅰ型アレルギー反応による好酸球性炎症が関係し ている。Ⅰ型アレルギー疾患は、抗原の感作が起こりBリンパ球 から抗原特異的IgE抗体が産生され、アレルゲンとIgE抗体とが結
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合して肥満細胞からケミカルメディエーターを放出して種々の アレルギー症状を引き起こす獲得免疫反応である。抗原に感作さ れたヘルパーT細胞からIL-4、IL-5、IL-13などのTh2サイトカイ ンが分泌され、獲得免疫の増強や好酸球性炎症、組織リモデリン グが起こる。一方、成人発症の気管支喘息や好酸球性副鼻腔炎で は、Ⅰ型アレルギー反応を介さないTh2型反応が確認されており、
その原因として自然免疫反応の関与が示唆されている〔12、13〕。
自然免疫とは、生まれながらに備わっている異物に対する生体防 御反応のことであり、外来から侵入した異物に対して速やかに反 応することで、生体防御の初期対応を担う免疫反応である。近年、
ウイルスや微生物に共通した構造(Pathogen-Associated
Moleculer Patterns ; PMAPs)、自己成分として生体内に存在し ていたにもかかわらず、細胞の障害によって放出されて免疫応答 を発動する物質(Damage-Associated Moleculer Patterns ; DAMPs)やその受容体(Pattern-Recognition Receptors ; PRRs)が 発見さたことで、自然免疫が注目されている〔14、15〕。外来環 境からの刺激で起こる、2型自然リンパ球(Group 2 innate
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lymphoid cells ; 以下ILC2)を介したTh2サイトカイン(IL-4、
IL-5、IL-13)の大量の産生が非アトピー型のアレルギー疾患の 発症や病態形成において重要であると考えられるようになって いる。ECRSの組織では、粘膜下の好酸球浸潤は著明であり、ILC2 やTh2サイトカインの発現が亢進していることが確認されている
〔16、17〕。粘膜の好酸球性炎症は、杯細胞の増生や上皮基底膜 の肥厚、粘膜固有層の線維化などの特徴的な病理変化を引き起こ す(図7–A,B)。一方、nECRSの粘膜ではTh2サイトカインの発現 が乏しいことが報告されており〔17、18〕、粘膜組織には好酸球 浸潤や基底膜肥厚といった、ECRSでみられる病理組織学的特徴は あまりみられない(図7-C,D)。
5.上皮由来サイトカイン
気道や皮膚などの上皮細胞がウイルスや細菌などの微生物や 異物に暴露されると、上皮細胞は傷害を受けて活性化を起こす。
その際に上皮細胞から上皮由来サイトカインと呼ばれるIL-25、
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IL-33、Thymic stromal lymphopoietin (TSLP)などのサイトカイ ンが産生、放出される〔19〕。
IL-33は上皮細胞や血管内皮細胞の核内に恒常的に発現し、感 染やストレスといった細胞障害にともなって核内から放出され るDAMPsのひとつである。IL-33は、2005年にSchmitzらによって 同定されたIL-1ファミリーに属するサイトカインで〔20〕、IL-33 受容体であるST2は、自然免疫系の好塩基球やマスト細胞、ILC2、
樹状細胞、さらにはメモリーTh2細胞など多くの免疫細胞に発現 している。IL-33はST2に結合することにより、種々のサイトカイ ンやケモカインの産生と細胞の分化増殖を促すことで、Th2反応 を強く誘導する〔21〕。気管支喘息患者の気管支上皮細胞及び気 管支肺胞洗浄液中には健常者と比較して、多量のIL-33が発現し ており〔22〕、アトピー性皮膚炎患者の末梢血中にも有意に多く のIL-33が検出されている〔23〕。IL-25は好酸球、樹状細胞、Th2 細胞などの免疫系細胞や肺胞上皮細胞など非免疫系細胞から産 生されることが報告されている。IL-25の受容体(IL-17RAと IL-17RBの2量体)も、好酸球、マクロファージ、ILC2、樹状細
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胞といった自然免疫細胞やTh2細胞に発現している〔24〕。気管 支喘息患者における血清IL-25値は気道におけるTh2型反応を反 映しており、副腎皮質ステロイド吸入の有効性を予測すると報告 されている〔25〕。TSLPはIL-7ファミリーに属するサイトカイン であり、主に気管、皮膚、消化管粘膜など上皮系細胞から、炎症 性サイトカインなど様々な刺激によって誘導される。受容体は肥 満細胞、好酸球、NKT細胞、ILC2、樹状細胞に発現している。TSLP はとくに初期の炎症反応形成に深く関与していると考えられ、
IL-25と協調してTh2反応を促進することも報告されている〔26〕。
図8に上皮由来サイトカイン-ILC2-Th2サイトカイン連関を示す
〔13〕。ウイルス感染やプロテアーゼ活性を有するアレルゲンな どによる環境刺激は、気道上皮からIL−25、IL−33、TSLPの産生を 誘導することが報告されており、これらサイトカインは、粘膜下 に存在する樹状細胞やILC2細胞を刺激して、Th2サイトカインを 誘導し、気道に好酸球性炎症を惹起すると考えられている。
6.好酸球性炎症とリモデリング
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持続する好酸球性炎症は、重症気管支喘息における気道組織の 構造的変化をもたらし、上皮基底膜直下の肥厚、気管支平滑筋の 肥大・増殖、粘膜下腺の肥大・過形成、気道線毛上皮の脱落、杯 細胞の増加などの気道リモデリングを引き起こす〔27〕。ECRSに おける組織構造においても、この気管支喘息におけるリモデリン グと同様の機序が働いていると注目されている。好酸球が組織に 集積され活性化されると、Major Basic Protein (MBP)や
Eosinophilic Cationic Protein (ECP)といった炎症物質の放出 だけでなく、Transforming Growth Factor-β (TGF-β)や
Platelet Derived Growth Factor (PDGF)が遊離される。これら は線維芽細胞の分化や増殖をきたすとともに、線維芽細胞からの 細胞外マトリックス合成を促進する。これらマトリックスの増生 は、鼻茸形成と成長に大きく関わっている〔28〕。
近年、細胞外マトリックスタンパク質であるペリオスチンは、
好酸球性炎症の発症と難治化に深く関係していることが報告さ れている〔29〕。ペリオスチンはIL-13やIL-4などのTh2型サイト カインによる刺激で上皮細胞や線維芽細胞から産生され、炎症組
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織に沈着し組織のリモデリングに関係するとされている〔29、30〕。
ECRSの鼻茸においてもペリオスチンの発現は強く認められるこ とが報告されている〔31〕。
7.本研究の目的
ECRSの鼻粘膜上皮細胞での上皮由来サイトカインの発現につ いては、これまでにいくつかの報告がある〔21、32〕。特に、上 皮構造におけるサイトカインの発現が高度であり、二次的に引き 起こる好酸球性炎症が、組織の慢性炎症環境を誘発すると言われ ている。前述のTosら〔7〕のEpithelial rupture説で述べられて いる鼻茸内の鼻腺導管の進展と、ECRSの好酸球炎症機序との関係 性については、これまで研究がなされていない。
本研究の目的は、ECRSの鼻腺導管上皮が好酸球性炎症の起点と なることを検証することである。そのために、まず、ECRSの病理 組織の鼻腺導管周囲における好酸球数を確認し、ECRSの鼻腺導管 上皮におけるIL-25、IL-33、TSLPの発現をCTR、nECRSと比較検討 した。次に、鼻腺導管周囲の好酸球数と上皮由来サイトカインの
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発現の関連性を確認した。また、追加実験として、細胞外マトリ ックスタンパク質であるペリオスチンの粘膜固有層における発 現を、組織リモデリングの指標として検討することで、病態の難 治化、鼻茸の形態維持の要因となることの検証も行った。
第Ⅲ章 対象と方法
1.対象
2014年1月から2016年7月までに日本大学医学部附属板橋病院 を受診し、慢性副鼻腔炎、鼻腔腫瘍と診断され、治療目的に手術 を受けた39人の患者を対象とした。性別は男性24例、女性15例で あった。年齢は平均で53±18歳であった。慢性副鼻腔炎患者を JESREC診断基準(図4)〔9〕に則りスコアリングを行い、11点以 上のものを好酸球性副鼻腔炎(eosinophilic chronic
rhinosinusitis; ECRS)、11点未満の患者を非好酸球性副鼻腔炎 (non-eosinophilic chronic rhinosinusitis; nECRS)として診断 した。ECRSは22例、nECRSは11例であった。ECRS症例は重症度分
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類で中等症以上を対象とした。鼻腔腫瘍手術において生検目的に 健常部位を採取した6例を正常検体(control;CTR)とした。CTR群、
nECRS群、ECRS群それぞれにおける患者データとして、気管支喘 息の有無、血清IgE値(IU)、末梢血好酸球比率(%)を抽出した。本 研究は、日本大学附属板橋病院倫理審査委員会より承認(2015年 10月22日、整理番号RK-150908-14「鼻副鼻腔炎における粘膜変性 の発現因子と発生機序に関する研究」)を得て施行した。
2.ヘマトキシリン・エオジン染色(Hematoxylin and Eosin :H&E) 手術により採取した鼻茸組織、正常鼻粘膜組織をホルマリン固 定し、厚さ4μmのパラフィン包埋切片を作成した。キシレンで10 分ずつ3回の脱パラフィン処理後、100%(無水)エタノールで5分ず つ3回、3分ずつ70%まで段階的にエタノールの濃度を下げ脱水処 理を行った。ヘマトキシリンで5分間染色し、流水洗浄後40℃の 温水で色だしを行い、エオジンで5分間染色した。その後、脱水、
透徹処理をし、封入した。
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3.鼻粘膜組織における好酸球数のカウント
H&E染色を施した検体を400倍視野で観察した。顕微鏡はLeica DM 750(Leica Microsystems社、Heerbrugg、Switzerland)を用い た。鼻粘膜上皮下の3視野、鼻腺導管周囲の3視野、合計6視野を それぞれの検体で確認した。鼻粘膜上皮下3視野、鼻腺導管周囲3 視野における好酸球数の平均値を計算し、その値をそれぞれの検 体の鼻粘膜上皮下、鼻腺導管周囲の好酸球数とした。好酸球数の カウントは、耳鼻科領域の専門家を第三者とし、ブラインド化さ れた検体をランダムに提示し、好酸球数をスコアリングする方法 を採用した。
4.免疫組織化学染色(Immunohistochemistry : IHC)
H&E染色同様に、脱パラフィン処理を行った後、0.01Mクエン酸 緩衝生理食塩水(Citrate Buffer Solution pH 6.0、武藤化学社、
東京、日本)に浸透して、オートクレーブ法(20分間、2気圧)に て抗原賦活化処理を行った。免疫染色は、CSAⅡ Biotin-free Tyramide Signal Amplication System (Agilent Technologies社、
22
California、USA)を用いて行った。内因性ペルオキシダーゼの失 活及びタンパク質のブロッキング、二次抗体、発色は、本キット のプロトコールの推奨手順に従って施行した〔33〕。一次抗体の 希釈倍率は抗IL-33抗体(Anti-IL33: HPA024426、Atlas
Antibodies社、Stockholm、Sweden):1000倍、抗IL-25抗体(IL25 antibody-middle region: OAAB10988、AVIVA SYSTEM BIOLOGY社、
San Diego、USA):1000倍、抗TSLP抗体(TSLP Antibody: 55N1D10、
Novus Biologicals社、Colorado、USA):1000倍、抗ペリオスチ ン抗体(Anti-Periostin antibody: ab14041、abcam社、Cambridge、
UK):1000倍で、リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate bufferd
saline :PBS)で希釈した。一次抗体は37℃で60分間反応させた。
IL-25、IL-33、ペリオスチンに関して、二次抗体はキットに付属 されたマウスモノクローナル抗体を使用し、TSLPに関してはラビ ットモノクローナル抗体としてCSAⅡ Rabbit Link(Agilent Technologies社、California、USA)を使用し、37℃で15分間反応 させた。発色は予備実験でキットに付属されていたジアミノベン ジジン(Diaminobenzidine ;DAB)を使用したところ、染色速度が
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早く染色時間の均一化が難しかったために、DABトリス錠(武藤 化学社、東京、日本)に3%過酸化水素水を3滴添加し、発色を行 った。それぞれの抗体における発色時間はIL-25、IL-33は15秒間、
ペリオスチンは30秒間、TSLPは1分間とした。ヘマトキシリン液 にて3分間の核染色を行ったのち、40℃の温水で色出しを行った。
その後、脱水、透徹処理をし、封入した。
組織におけるIL-5、IL-13の蛍光免疫染色に関しては、まず脱 パラフィン後、酵素抗体法と同様の手法で抗原賦活化処理を行い、
Goat serum(#16210-064 Life technologies社 New Zealand)を使 用し、ブロッキング溶液を作成し、1時間処理した。抗IL-5抗体 (Anti-IL-5 antibody: bs-1318R-A350、Bioss社、Massachusetts、
USA)、抗IL-13抗体(Anti-IL13 antibody: ab106732、abcam社、
Cambridge、UK)を一次抗体として4℃で24時間反応させた。それ ぞれ、リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate bufferd saline :PBS) で1000倍希釈して使用した。洗浄後、二次抗体(Alexa
FluorTM488:A11070、Life technologies社 New Zealand)を遮光 下で1時間反応させた後、洗浄し、封入処理を行なった。
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5.IHC染色性のスコアリング
H&E染色同様に、鏡検はLeica DM 750(Leica Microsystems社、
Heerbrugg、Switzerland)を用いて行なった。観察部位によって 倍率を変更し、上皮構造、導管構造両方観察する際は50倍、それ ぞれ観察する際は100倍、200倍、400倍で適宜鏡検を行った。検 体写真の撮影はBZ-X710(KEYENCE社、東京、日本)を使用した。
今回、病理検体組織におけるタンパク質の発現強度の違いを、
組織染色性をスコア化することで評価した。上皮由来サイトカイ ン(IL-33、IL-25、TSLP)とペリオスチンの染色性を以下に示す スコアリング法で採点した。上皮由来サイトカインは細胞質と核 で染色性が異なり、また、核外の存在するサイトカインが細胞外 へと放出されることから、本研究では鼻粘膜上皮細胞、鼻腺導管 上皮細胞における細胞質でのこれらのサイトカインの染色性を 評価した。ペリオスチンは鼻粘膜上皮下、鼻腺導管周囲の粘膜固 有層の染色性のみを評価した。スコアの基準は、全く染色されな い;0点、淡く、軽度に染色される;1点、1点と3点の中間で、中
25
等度染色される;2点、高度に染色される;3点とした(図9)。
得られたデータをCTR群、nECRS群、ECRS群とし、鼻粘膜上皮、鼻 腺導管上皮に分けて、3群間における染色性スコアの平均値の比 較検討を行った。組織染色の染色強度に対するスコアリングは、
好酸球数のスコアリングと同様に、耳鼻科領域の専門家を第三者 とし、ブラインド化された検体をランダムに提示し、染色性をス コアリングする方法を採用した。
6.組織中の好酸球数とIHC染色性の関連性
検体は正常検体を除いた慢性副鼻腔炎(nECRS、ECRS)のみを 用いて検討を行った。それぞれIL-25、IL-33、TSLP、ペリオスチ ンのIHC染色性に関して、1点以下を低発現群、2点以上を高発現 群とし症例を分類した。低発現群と高発現群における組織中の好 酸球数を鼻粘膜上皮、鼻腺導管上皮それぞれ、平均値で比較検討 した。TSLPに関しては、他のサイトカインと比較して染色性が全 症例で低く、症例数の偏りが無いように0点を低発現群、1点以上 を高発現群として検討を行った。
26
7.統計解析
統計学的解析は、GraphPad Prism(version 6.02;Graph Pad Software 社、Los Angels、USA)を用いた。CTR群、nECRS群、ECRS 群における症例の個人データの比較、組織中の好酸球数、それぞ れの上皮由来サイトカイン(IL-25、IL-33、TSLP)やペリオスチ ンの3群間における染色性スコア平均値の差はKruskal-Wallis検 定で解析し、P < 0.05を有意差ありとした。組織中の好酸球数と IHC染色の関連性における、低発現群と高発現群との平均値の差 はMann-WhitneyのU検定で解析し、P < 0.05を有意差ありとした。
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Ⅳ. 結果
1.患者背景(表1)
性別は慢性副鼻腔炎では男性が多く、nECRS群はECRS群より女 性の比率がやや高かった。年齢はCTR群やnECRS群、ECRS群の3群 間において有意差はなかった。気管支喘息はECRS群のみで多かっ た。血清IgE値は、ECRS群がCTR群やnECRS群と比較して有意に高 値であった。末梢血好酸球比率もECRS群がCTR群やnECRS群と比較 して有意に高値であった。
2.ECRSにおける病理組織学特徴(図9)
ECRSの鼻粘膜組織では、鼻粘膜上皮細胞、杯細胞の著明な増生、
上皮基底膜の肥厚を認めた(図9–A,B)。細胞浸潤は粘膜固有層 と比較して鼻粘膜上皮直下に強く認め(図9-A)、好酸球浸潤を強 く認めた(図9B)。ECRSの鼻腺導管組織の周囲には、細胞浸潤が著 明であり、鼻粘膜下同様に好酸球浸潤を強く認めた(図9–C,D)。
図10に抗IL-5抗体、抗IL-13抗体を用いた蛍光免疫染色所見を 示す。鼻粘膜上皮下や鼻腺導管周囲にIL-5陽性細胞(図10–A,B)、
28
IL-13陽性細胞(図10–C,D)の浸潤を多数認めた。IL-5は鼻粘膜 上皮、鼻腺導管上皮ともに頂端部も染色を認めた(図10–A,B)。
3.鼻粘膜組織中の好酸球数(図11)
鼻粘膜上皮下3視野における好酸球数の平均値はCTR群8±10個、
nECRS群17±18個、ECRS群134±110個であり、ECRS群ではCTR群、
nECRS群と比較し有意に高かった(図11A)。鼻腺導管上皮周囲3 視野における好酸球数の平均値はCTR群4±5個、nECRS群8±11個、
ECRS群117±139個であり、ECRS群ではCTR群、nECRS群と比較し有 意に高かった(図11B)。鼻粘膜上皮下と鼻腺導管上皮周囲を合 せた合計6視野における好酸球数の平均値はCTR群6±8個、nECRS 群12±16個、ECRS群125±126個であり、3視野平均と同様にECRS 群ではCTR群、nECRS群と比較し有意に高かった(図11C)。
4.鼻粘膜上皮及び鼻腺導管上皮におけるIL-25の発現(図12)
鼻粘膜上皮下組織と同様に、鼻腺導管周辺に著明な好酸球浸潤 やTh2サイトカイン産生細胞の浸潤が生じるメカニズムを明らか
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にするために、CTR群とnECRS群、ECRS群の鼻粘膜上皮及び鼻腺導 管上皮における上皮由来サイトカインであるIL-25、IL-33、TSLP の発現を、免疫組織化学染色を用いて比較検討した。
まず、IL-25の発現について検討した(図12A,B)。ECRS群では、
鼻粘膜上皮と鼻腺導管上皮のいずれにおいても、IL-25の高い発 現がみられた(図12A上段右、下段右)。図12B上段に示すように、
鼻粘膜上皮におけるIL-25発現の平均染色スコアは、CTR群で1.00
±0.57、nECRS群で1.63±0.77、ECRS群で2.54±0.50であり、CTR 群、nECRS群に比べECRS群で有意に高い発現を認めた。nECRS群は、
CTR群に比べて発現の高い傾向がみられたが、有意差は認めなか った。ECRS群の鼻粘膜組織におけるIL-25の発現分布は、粘膜上 皮細胞に加えて、粘膜下に浸潤した細胞にも一部で発現を認めた
(図12A上段右)。鼻腺導管上皮におけるIL-25発現の平均染色ス コアは、図12B下段に示すように、CTR群で1.17±0.69、nECRS群 で1.55±0.66、ECRSで2.50±0.50であり、ECRS群はCTR群、nECRS 群に比べて有意に高かった。nECRS群においても、CTR群に比べて IL-25発現の高い傾向がみられたが、有意差は認めなかった。粘
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膜上皮細胞と同様、鼻腺導管上皮においても、鼻腺導管周囲に浸 潤した細胞にも一部にIL-25の染色性を認めた(図12A下段右)。
5.鼻粘膜上皮及び鼻腺導管上皮におけるIL-33の発現(図13)
次に、IL-33の発現について検討した(図13A,B)。CTR群及び nECRS群においては、鼻粘膜上皮及び鼻腺導管上皮におけるIL-33 の発現は細胞核を中心としているのに対して、ECRS群の鼻粘膜上 皮と鼻腺導管上皮におけるIL-33の発現分布は、細胞質において も高い発現を認めた(図13A上段右、下段右)。図13B上段に示す ように、鼻粘膜上皮におけるIL-33発現の染色スコア平均値は、
CTR群で1.33±0.74、nECRS群で1.27±0.61、ECRS群で2.45±0.50 であり、ECRS群はCTR群、nECRS群に対して有意に高い発現を認め た。nECRS群とCTR群の間には発現に差は認めなかった。図13B下 段に示すように、鼻腺導管上皮におけるIL-33発現の染色スコア 平均値は、CTR群で1.17±0.69、nECRS群で1.55±0.78、ECRS群で 2.54±0.50であり、ECRS群は、CTR群及びnECRS群に対して有意に 高い発現を認めた。
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6.鼻粘膜上皮及び鼻腺導管上皮におけるTSLPの発現(図14)
次に、TSLPの発現について検討した(図14A,B)。CTR群及びnECRS 群において、鼻粘膜上皮及び鼻腺導管上皮においては低いTSLP発 現が観察されたのに対して、ECRS群では症例によっては鼻粘膜上 皮及び鼻腺導管上皮では明らかなTSLPの発現を観察した(図14A 上段右、下段右)。TSLPは核に強く発現する傾向がみられた。図 14B上段に示すように、鼻粘膜上皮におけるTSLP発現の染色スコ ア平均値は、CTR群で0.17±0.37、nECRS群で0.36±0.48、ECRS群 で0.86±0.62であり、CTR群、nECRS群ではほとんど発現を認めず、
ECRS群との比較ではCTR群との比較では有意差は認めたが、nECRS 群との比較では有意差は認められなかった。また、nECRS群とECRS 群との間でも発現に有意差はみられなかった。図14B下段に示す ように、鼻腺導管上皮におけるTSLP発現の染色スコア平均値は、
CTR群で0、nECRS群で0、ECRS群で0.59±0.49であり、CTR群及び nECRS群では発現を認めず、ECRS群では、CTR群、nECRS群に対し て有意に高い発現を認めた。
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7.鼻粘膜上皮及び鼻腺導管上皮におけるペリオスチンの発現
(図15)
鼻粘膜上皮におけるIL−25、IL−33、TSLP発現の亢進は、鼻粘膜 下におけるTh2サイトカイン産生の誘導を介して鼻粘膜上皮下に おけるペリオスチンの沈着を引き起こすと考えられている〔34〕。
今回、ECRSにおいて、鼻腺導管上皮は、鼻粘膜上皮と同様にIL−
25、IL−33、TSLPの発現が亢進していることが観察されたが、こ のようなサイトカイン産生の亢進が、結果として鼻導管周囲にお けるペリオスチンの沈着を引き起こすかどうかについてさらに 検討を行った。
CTR群及びnECRS群において、鼻粘膜上皮下、及び鼻腺導管周囲 の組織では、比較的弱いペリオスチンの発現が観察されたのに対 して、ECRS群では鼻粘膜上皮下及び鼻腺導管周囲では高度なペリ オスチンの発現が観察された(図15A)。図15B上段に示すように、
鼻粘膜上皮下組織におけるペリオスチン発現の染色スコア平均 値は、CTR群で1.5±0.5、nECRS群で2.18±0.57、ECRS群で2.68±
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0.47であり、CTR群ではペリオスチンの発現は軽度で、nECRS群は CTR群に比べてやや発現が高い傾向がみられたが、有意差は認め なかった。また、nECRS群とECRS群との間でもペリオスチン発現 に有意差はみられなかったが、ECRS群においてやや高い発現がみ られた。図15B下段に示すように、鼻腺導管周囲におけるペリオ スチン発現の染色スコアは、CTR群で0.5±0.76、nECRS群で0.73
±0.62、ECRS群で2.54±0.50であり、CTR群及びnECRS群ではほと んど発現を認めず、ECRS群ではCTR群、nECRS群に対して有意に高 い発現を認めた。
8.鼻茸組織中の好酸球数とIL-25発現の関連性(図16)
図16Aでは、鼻粘膜上皮におけるIL-25の低発現群と高発現群の 好酸球数を比較検討した。それぞれ、低発現群は4例で平均好酸 球数は31±16個、高発現群は29例で平均好酸球数は154±139個で あり、高発現群では低発現群より好酸球数が高い傾向がみたれた が、有意差は認めなかった。図16Bでは、鼻腺導管上皮における IL-25の低発現群と高発現群の好酸球数を比較検討した。それぞ
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れ、低発現群は4例で平均好酸球数は15±12個、高発現群は29例 で平均好酸球数は90±111個であり、鼻粘膜上皮と同様に高発現 群では低発現群より好酸球数が高い傾向がみたれたが、有意差は 認めなかった。
9.鼻茸組織中の好酸球数とIL-33発現の関連性(図17)
図17Aでは、鼻粘膜上皮におけるIL-33の低発現群と高発現群の 好酸球数を比較検討した。それぞれ、低発現群は7例で平均好酸 球数は20±18個、高発現群は26例で平均好酸球数は171±136個で あり、高発現群では低発現群に対して有意に好酸球数が高かった。
図17Bでは、鼻腺導管上皮におけるIL-33の低発現群と高発現群の 好酸球数を比較検討した。それぞれ、低発現群は5例で平均好酸 球数は6±6個、高発現群は28例で平均好酸球数は94±110個であ り、高発現群では低発現群に対して有意に好酸球数が高かった。
10.鼻茸組織中の好酸球数とTSLP発現の関連性(図18)
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図18Aでは、鼻粘膜上皮におけるTSLPの低発現群と高発現群の 好酸球数を比較検討した。それぞれ、低発現群は13例で平均好酸 球数は118±171個、高発現群は20例で平均好酸球数は147±102個 であり、高発現群では低発現群より好酸球数が高い傾向がみたれ たが、有意差は認めなかった。図18Bでは、鼻腺導管上皮におけ るTSLPの低発現群と高発現群の好酸球数を比較検討した。それぞ れ、低発現群は20例で平均好酸球数は99±152個、高発現群は13 例で平均好酸球数は193±92個であり、高発現群では低発現群に 対して有意に好酸球数が高かった。
11.鼻茸組織中の好酸球数とペリオスチン発現の関連性
(図19)
図19Aでは、鼻粘膜上皮におけるペリオスチンの低発現群と高発 現群の好酸球数を比較検討した。それぞれ、低発現群は1例で好 酸球数は2個、高発現群は32例で平均好酸球数は162±137個であ った。低発現群の症例が1例のみであり有意差検定はできなかっ たが、ペリオスチンの発現している症例は組織好酸球が高い傾向
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がみられた。図19Bでは、鼻腺導管上皮におけるペリオスチンの 低発現群と高発現群の好酸球数を比較検討した。それぞれ、低発 現群は10例で平均好酸球数は8±10個、高発現群は23例で平均好 酸球数は112±114個であり、高発現群では低発現群に対して有意 に好酸球数が高かった。
Ⅴ. 考察
今回、我々が着目したECRSの鼻茸における鼻腺導管周囲の病理 組織は、図10に示すように、鼻腺導管周囲に好酸球浸潤が多数認 められた。ECRSの鼻腺導管周囲における好酸球数はCTR群やnECRS 群と比較して有意に高く、鼻粘膜上皮下の好酸球数と同様の結果 であった。また、鼻粘膜上皮下、鼻腺導管周囲ともにIL-5陽性細 胞、IL-13陽性細胞といったTh2サイトカインの浸潤が多数認めら れ、これは、ECRSの炎症機序における鼻粘膜上皮と鼻腺導管上皮 との病態生理学的役割の共通性を示唆するものと考えられた。
37
鼻茸を有する慢性副鼻腔炎の鼻粘膜上皮におけるIL-25、IL-33、
TSLPの発現は、過去の文献で報告されている〔13,16〕。一方で 鼻腺導管上皮に着目して検討された文献はない。本研究で、鼻腺 導管上皮におけるIL-25、IL-33、TSLPの発現は、鼻粘膜上皮と同 様にECRSでは高い傾向が見られ、そのタンパク質発現は組織中の 好酸球数との関連性を認めた。本研究では、上皮由来サイトカイ ンがILC2やTh2細胞に作用して好酸球性炎症を誘導していること の証明はできていないが、過去の文献では、鼻粘膜上皮から上皮 由来サイトカインが産生され、ST2などの受容体を持った細胞に 作用し、好酸球性炎症を誘導することが報告されている〔20〕。
このことから、本研究の結果を踏まえ考察すると、鼻腺導管上皮 においても鼻粘膜上皮同様に、上皮由来サイトカインを介した Th2細胞やILC2からのTh2サイトカイン産生の誘導と、それによる 好酸球性炎症が生じていると推測された。TSLPに関しては、CTR 群、nECRS群ともに鼻粘膜上皮、鼻腺導管上皮でほとんど発現が 認められなかった。ECRSでは、鼻粘膜上皮及び鼻腺導管上皮とも に、高い発現を認める検体と発現が認められない検体とがあり、
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組織ごとの不均一性がみられた。過去の報告をみても、組織中の TSLPタンパクの発現と病態との関係については、一定の見解が得 られていない〔32〕。TSLPは鼻茸組織の中で肥満細胞や好酸球な どで産生される内因性プロアーゼにより切断され、組織中で時間 依存性に減少し、その結果、鼻茸組織中にはTSLP mRNAは増加し ているが、TSLPタンパクは減少するとする報告もみられる〔35〕。
本検討において、染色されたTSLPの検体ごとの発現レベルの違い は、炎症のタイプやその強さ、発症時期、アレルゲン暴露状況の 違いなどが関係していると考えられる。
本研究において、鼻粘膜組織におけるペリオスチンの発現と好 酸球浸潤についての追加検討を行った。Shionoらは鼻茸をもつ慢 性副鼻腔炎患者において、ペリオスチンの発現が粘膜固有層全体 に認める群と、鼻粘膜上皮直下のみに認める群での好酸球数の比 較を行っており、粘膜固有層でのペリオスチンの発現が強いほど、
組織の好酸球浸潤が強く、Th2型炎症との関連性が示唆されるこ とを報告している〔30〕。本研究において、ECRSでは鼻粘膜上皮 下及び、鼻腺導管周囲で、ペリオスチンの発現を強く認め、好酸
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球の浸潤との関連性を認めた。ECRSの粘膜固有層には鼻腺組織の 発達が著明であり、Shionoらの検討の粘膜固有層全体におけるペ リオスチンの発現及び好酸球浸潤は、鼻腺導管を起点として引き 起った好酸球性炎症である可能性が示唆された。しかし、好酸球 が線維芽細胞に作用し、ペリオスチンの発現を誘導する場合と、
ペリオスチンが好酸球を組織に遊走、浸潤させる機序があり〔34〕、
その詳細な機序に関しては本研究では証明できなかった。
鼻腺導管は鼻茸の表層だけでなく、鼻茸深部にまで伸長してい る。何らかの外因性刺激が、鼻粘膜上皮だけでなく、鼻腺導管の 深部にまで浸透すると、IL-25、IL-33、TSLPなどの上皮由来サイ トカインが誘導され、IL-5などTh2サイトカインの産生及び、好 酸球炎症を誘導し、鼻腺組織を介した鼻茸の深部組織への好酸球 性炎症を引き起こすことが示唆された。それとともに、ペリオス チンが好酸球と相互に作用し合い、慢性的な好酸球性炎症を組織 にもたらすだけでなく、細胞外マトリックスとして働き鼻茸組織 の形態維持や難治化を引き起こしていることが考えられた。しか しながら、本研究においては、1)十分な臨床検体を得ることが
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出来ず、検討した組織検体の数が比較的少ない小規模な検討であ る、2)蛋白発現のみの検討でありmRNAレベルでの発現検討を行 っていないこと、3)鼻粘膜上皮下及び鼻腺導管周囲のTh2サイト カイン産生細胞の種類、炎症の相違については検討できなかった こと、4)鼻腺導管上皮において、実際に外因性刺激が作用し、上 皮由来サイトカインが発現したかどうかの検討ができていない ことなどが挙げられ、今後の検討課題と考えた。本研究で推測さ れ得る鼻腺導管上皮における好酸球性炎症の機序の仮説の図を 図20に示した。
第Ⅵ章 まとめ
本検討では、ECRSの鼻茸における鼻腺導管上皮に着目し、上皮 由来サイトカインがこれまで注目されてきた鼻粘膜上皮への発 現のみならず、鼻腺導管上皮にも同様に発現を認め、サイトカイ ンの発現が高いほど組織中の好酸球数が高い傾向を示すことを 明らかにした。これは、鼻腺導管上皮も鼻粘膜上皮同様に好酸球
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炎症において積極的な役割を果たしていると考えられた。また、
鼻腺導管周囲におけるペリオスチンの発現、及び好酸球数との相 関から、鼻腺導管上皮が好酸球性炎症や鼻茸の形態維持に寄与し ていると考えられることから、鼻腺導管上皮の過形成や活性化機 序の解明、また、その制御方法の解明は、ECRSの新たな治療法の 開発に繋がるものである。
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謝辞
本研究を遂行するにあたり、終始御懇篤なるご指導を賜りました 日本大学医学部呼吸器内科学分野准教授 権寧博先生、丸岡秀一 郎先生、日本大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野教授 大島 猛史先生、准教授 野村泰之先生、研究を支えて下さった日本大 学医学部呼吸器内科学分野研究助手 坪井絵莉子氏、日本大学医 学部耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野研究助手 前田美代子氏に心か ら感謝いたします。
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図表
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図表の説明
表1.患者背景
性別は慢性副鼻腔炎では男性が多く、nECRS 群は ECRS 群より女性 の比率がやや高かった。年齢は CTR 群や nECRS 群、ECRS 群の 3 群間 において有意差はなかった。気管支喘息は ECRS 群のみで多かった。
血清 IgE 値は、ECRS 群が CTR 群や nECRS 群と比較して有意に高値で あった。末梢血好酸球比率も ECRS 群が CTR 群や nECRS 群と比較して 有意に高値であった。
IgE, immunogulobulin E ; ECRS, eosinophilic chronic rhinosinusitis ; nECRS, non-eosinophilic chronic rhinosinusitis
図1.慢性副鼻腔炎の分類
慢性副鼻腔炎は鼻茸の有無で大きく分類され、鼻茸を認めるも の を 、 さ ら に 非 好 酸 球 性 副 鼻 腔 炎 (non-eosinophilic rhinosinusitis ; nECRS) 、 好 酸 球 性 副 鼻 腔 炎 (eosinophilic rhinosinusitis ; ECRS)と分類する。(文献4より引用 一部改変)
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図2.鼻茸形成と鼻腺組織に関する図
図 2A. 鼻茸形成の Epithelial rupture 説の説明図
①.鼻粘膜上皮の傷害、②.組織炎症細胞浸潤、③.粘膜下組織の鼻腔 への突出、④.突出した間質表面の上皮化の促進、⑤.鼻腺導管の形 成と伸長の順で鼻茸形成がされると考えられている。
図 2B. 図 2A の E における四角で囲んだ部位の説明図
鼻粘膜上皮から粘膜固有層にかけて鼻腺の伸長を認める。腺房組織 までの介在部に鼻腺導管が存在する。
図 2C. 鼻腺構造の形態パターン
A〜F のように長く伸長し、途中で分岐するもの、J、K のように嚢胞 状に拡張するものなど、多様な形態を示す。(文献 7 より引用 一部 改変)
図3.鼻腺組織の病理組織
鼻粘膜上皮から内方に陥入するようにして鼻腺導管組織が形成さ れる。鼻腺導管の上部構造は鼻粘膜上皮と同様に多列線毛上皮であ
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るが、深部では単層円柱上皮となる。導管組織の終末部には腺房組 織が存在しており、漿液性細胞と粘液性細胞とが混在している。
図4.好酸球性副鼻腔炎の鼻咽腔内視鏡写真 図 4A. 左鼻腔前方
嗅裂部、中鼻道に鼻茸組織を認める。
図 4B. 左鼻腔後方
ムチン様の鼻汁が後鼻漏として認める。
図5. 好酸球性副鼻腔炎 診断基準
病変が両側性か、鼻茸が鼻腔内に存在するか、副鼻腔 CT にて上 顎洞と比べて篩骨洞有意の陰影を認めるか、末梢血好酸球(%)値をそ れぞれスコアリングし、合計点数が 11 点以上を好酸球性副鼻腔炎と 診断する。(文献 9 より引用)
図6. 好酸球性副鼻腔炎と非好酸球性副鼻腔炎の組織所見 図 6A. 好酸球性副鼻腔炎 Hematoxylin-Eosin(HE)染色 ×400
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上皮細胞の杯細胞変性を認め、上皮基底膜の肥厚を認める。上皮 下には著明な好酸球浸潤を呈する。
図 6B. 好酸球性副鼻腔炎 Periodic acid-Schiff(PAS)染色 ×400 上皮における杯細胞が PAS 染色陽性となる。
図 6C. 非好酸球性副鼻腔炎 HE 染色 ×400
上皮細胞の杯細胞変性は軽度で、基底膜の肥厚は認めない。間質 の好酸球浸潤も軽度である。
図 6D. 非好酸球性副鼻腔炎 PAS 染色 ×400 杯細胞変性は軽度であり PAS 染色性は乏しい。
図7. 上皮由来サイトカイン-ILC2-Th2 サイトカイン連関
微生物や抗原となる外来物質に反応して、上皮細胞から IL-25、
IL-33、TSLP など上皮由来サイトカインが放出される。これらのサ イトカインは ILC2 細胞を刺激し、IL-5、IL-4、IL-13 などの Th2 サ イトカインを放出することで、それぞれのエフェクターとなる細胞 が活性化され、組織の免疫反応として好酸球性炎症や獲得免疫反応 が形成される。 (文献 13 より引用 一部改変)
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図8.組織の染色性スコア
上皮由来サイトカインの染色性については、上皮細胞の細胞質に おいて全く染色されない;0 点、淡く、軽度に染色される;1 点、1 点と 3 点の中間で、中等度染色される;2 点、高度に染色される;3 点とした。ペリオスチンに関しては粘膜固有層において上記のスコ アリングを用いた。
図9. 好酸球性副鼻腔炎の鼻粘膜上皮と鼻腺導管上皮 図 9A ×100、図 9B ×400 鼻粘膜上皮組織 HE 染色
粘膜固有層と比較すると、鼻粘膜上皮直下に多数の細胞浸潤を認 め、鼻粘膜上皮細胞には杯細胞の著明な増生を認め、上皮基底膜は 肥厚している。上皮直下には著明な好酸球浸潤を認めた(矢印)。
図 9C ×100、図 9D ×400 鼻腺導管組織 HE 染色
鼻腺導管周囲には多数の細胞浸潤を認め、特に著明な好酸球浸潤 を認めた(矢印)。
図10. 好酸球性副鼻腔炎における IL-5、IL-13 の発現
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図 10A. 抗 IL-5 抗体による鼻粘膜上皮の蛍光免疫染色所見 ×200 鼻粘膜上皮の頂端部、鼻粘膜上皮直下に浸潤した細胞に IL-5 の発現 を認める。
図 10B. 抗 IL-5 抗体による鼻腺導管上皮の蛍光免疫染色所見 ×100 鼻粘膜上皮同様に、上皮細胞の頂端部、導管上皮直下に浸潤した細 胞に IL-5 の発現を認める。
図 10C. 抗 IL-13 抗体による鼻粘膜上皮の蛍光免疫染色所見 ×400 鼻粘膜上皮直下に浸潤した細胞に IL-13 の発現を認める。
図 10D. 抗 IL-13 抗体による鼻腺導管上皮の蛍光免疫染色所見 × 400
鼻粘膜上皮周囲に浸潤した細胞に IL-13 の発現を認める。
図11.鼻粘膜組織における好酸球数 図 11A. 鼻粘膜上皮 3 視野平均
好酸球数の平均値は CTR 群 8±10 個、nECRS 群 17±18 個、ECRS 群 134±110 個であり、ECRS 群では CTR 群、nECRS 群と比較し有意に 高かった。
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図 11B. 鼻腺導管上皮 3 視野平均
好酸球数の平均値は CTR 群 4±5 個、nECRS 群 8±11 個、ECRS 群 117±139 個であり、ECRS 群では CTR 群、nECRS 群と比較し有意に高 かった。
図 11C.鼻粘膜上皮下と鼻腺導管上皮周囲を合せた 6 視野平均
好酸球数の平均値は CTR 群 6±8 個、nECRS 群 12±16 個、ECRS 群 125±126 個であり、3 視野平均と同様に ECRS 群では CTR 群、nECRS 群と比較し有意に高かった。
図12. 鼻粘膜組織における IL-25 の発現
図 12A. CTR、nECRS、ECRS における IL-25 の鼻粘膜上皮(上段)、鼻 腺導管上皮(下段)それぞれの免疫染色
CTR 6 例、nECRS 11 例、ECRS 22 例の鼻粘膜組織ついて、抗 IL-25 抗体による免疫染色を行った。代表的な染色像を示す。鼻粘膜上皮 において、CTR(左上段)で低い染色性、nECRS(中央上段)及び ECRS
(右上段)では中等度〜高度の染色を認めた。ECRS では粘膜固有層 に浸潤した細胞にも IL-25 で染色性を認める。鼻腺導管上皮におい
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て、CTR(左下段)で低い染色性、nECRS(中央下段)及び ECRS(右 下段)では中等度〜高度の染色を認めた。鼻腺導管上皮周囲に浸潤 した細胞に IL-25 染色性を認める。
図 12B 上段. 鼻粘膜上皮における染色性スコア
ECRS 群では CTR 群及び nECRS 群に比較し、有意に染色性が高かっ た。
図 12B 下段. 鼻腺導管上皮における染色性スコア
ECRS 群では CTR 群及び nECRS 群に比較し、有意に染色性が高かっ た。*p<0.05, **︎p<0.005
正常(control ;CTR), 非好酸球性副鼻腔炎(non-eosinophilic chronic rhinosinusitis ;nECRS), 好酸球性副鼻腔炎(eosinophilic chronic rhinosinusitis;ECRS)
図13. 鼻粘膜組織における IL-33 の発現
図 13A. CTR、nECRS、ECRS における IL-33 の鼻粘膜上皮(上段)、鼻 腺導管上皮(下段)それぞれの免疫染色
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CTR 6 例、nECRS 11 例、ECRS 22 例の鼻粘膜組織ついて、抗 IL-33 抗体による免疫染色を行った。代表的な染色像を示す。鼻粘膜上皮 において、CTR(左上段)及び nECRS(中央上段)で中等度の染色性、
ECRS(右上段)では高度の染色性を認めた。鼻腺導管上皮、正常(左 下段)及び nECRS(中央下段)で中等度の染色性、ECRS(右下段)
では高度の染色性を認めた。
図 13B 上段. 鼻粘膜上皮における IL-33 染色性スコア
ECRS 群では CTR 群及び nECRS 群と比較し有意に高い染色性を示し た。
図 13B 下段. 鼻腺導管上皮における染色性スコア
ECRS 群では CTR 群及び nECRS 群に比較し、有意に高い染色性を示 した。*p<0.05, **p<0.005
正常(control ;CTR), 非好酸球性副鼻腔炎(non-eosinophilic chronic rhinosinusitis ;nECRS), 好酸球性副鼻腔炎(eosinophilic chronic rhinosinusitis;ECRS)
図14. 鼻粘膜組織における TSLP の発現
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図 14A. CTR、nECRS、ECRS における TSLP の鼻粘膜上皮(上段)、鼻 腺導管上皮(下段)それぞれの免疫染色
CTR6 例、nECRS 11 例、ECRS 22 例の鼻粘膜組織ついて、抗 TSLP 抗体による免疫染色を行った。代表的な染色像を示す。鼻粘膜上皮 において、CTR(左上段)及び nECRS(中央上段)ではほとんど染色 性を認めなかった。ECRS(右上段)では染色性を認めた。鼻腺導管 上皮、CTR(左下段)及び nECRS(中央下段)で染色性を認めず、ECRS
(右下段)では染色性を認めた。
図 14B 上段. 鼻粘膜上皮における TSLP 染色性スコア
ECRS 群では CTR 群に比較し、有意に高い染色性を示した。nECRS 群に対して有意差は認めなかったが、ECRS の方が高い傾向を示した。
図 14B 下段. 鼻腺導管上皮における染色性スコア
ECRS 群では CTR 群及び nECRS 群に比較し、有意に高い染色性を示 した。*︎p<0.05, **︎p<0.005
正常(control ;CTR), 非好酸球性副鼻腔炎(non-eosinophilic chronic rhinosinusitis ;nECRS), 好酸球性副鼻腔炎(eosinophilic chronic rhinosinusitis;ECRS)
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図15. 鼻粘膜組織におけるペリオスチンの発現
図 15A. CTR、nECRS、ECRS におけるペリオスチンの鼻粘膜上皮下(上 段)、鼻腺導管周囲(下段)それぞれの免疫染色
CTR 6 例、nECRS 11 例、ECRS 22 例の鼻粘膜組織ついて、抗ペリ オスチン抗体による免疫染色を行った。代表的な染色像を示す。鼻 粘膜上皮下組織において、CTR(左上段)では上皮基底膜直下のみ染 色を認めた。nECRS(中央上段)及び ECRS(右上段)では軽度〜高 度の染色性を認めた。鼻腺導管周囲では、CTR(左上段)では染色性 をほとんど認めなかった。nECRS(中央上段)及び ECRS(右上段)
では軽度〜高度の染色性を認めた。
図 15B 上段. 鼻粘膜上皮におけるペリオスチン染色性スコア
ECRS 群では CTR 群に比較し、有意に高い染色性を示した。nECRS 群との比較では有意差はみられなかったが、ECRS の方が高い傾向を 示した。
図 15B 下段. 鼻腺導管上皮における染色性スコア
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ECRS 群では CTR 群、nECRS 群に比較し、有意に高い染色性を示し た。*p<0.05, **︎︎p<0.005
正常(control ;CTR), 非好酸球性副鼻腔炎(non-eosinophilic chronic rhinosinusitis ;nECRS), 好酸球性副鼻腔炎(eosinophilic chronic rhinosinusitis;ECRS)
図16. 鼻茸組織中の好酸球数とIL-25発現の関連性
図16A. 鼻粘膜上皮におけるIL-25の低発現群と高発現群の好酸 球数の比較
低発現群は4例で平均好酸球数は31±16個、高発現群は29例で 平均好酸球数は154±139個であり、高発現群では低発現群より好 酸球数が高い傾向がみたれたが、有意差は認めなかった。
図16B. 鼻腺導管上皮におけるIL-25の低発現群と高発現群の好 酸球数の比較
低発現群は4例で平均好酸球数は15±12個、高発現群は29例で 平均好酸球数は90±111個であり、鼻粘膜上皮と同様に高発現群 では低発現群より好酸球数が高い傾向がみたれたが、有意差は認
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めなかった。
低発現群;染色性スコア1点以下 高発現群;染色性スコア2点以上
図17. 鼻茸組織中の好酸球数とIL-33発現の関連性
図17A. 鼻粘膜上皮におけるIL-33の低発現群と高発現群の好酸 球数の比較
低発現群は7例で平均好酸球数は20±18個、高発現群は26例で 平均好酸球数は171±136個であり、高発現群では低発現群に対し て有意に好酸球数が高かった。
図17B. 鼻腺導管上皮におけるIL-33の低発現群と高発現群の好 酸球数の比較
低発現群は5例で平均好酸球数は6±6個、高発現群は28例で平 均好酸球数は94±110個であり、高発現群では低発現群に対して 有意に好酸球数が高かった。
低発現群;染色性スコア1点以下 高発現群;染色性スコア2点以上