第Ⅲ章 対象と方法
Ⅳ. 結果
1.患者背景(表1)
性別は慢性副鼻腔炎では男性が多く、nECRS群はECRS群より女 性の比率がやや高かった。年齢はCTR群やnECRS群、ECRS群の3群 間において有意差はなかった。気管支喘息はECRS群のみで多かっ た。血清IgE値は、ECRS群がCTR群やnECRS群と比較して有意に高 値であった。末梢血好酸球比率もECRS群がCTR群やnECRS群と比較 して有意に高値であった。
2.ECRSにおける病理組織学特徴(図9)
ECRSの鼻粘膜組織では、鼻粘膜上皮細胞、杯細胞の著明な増生、
上皮基底膜の肥厚を認めた(図9–A,B)。細胞浸潤は粘膜固有層 と比較して鼻粘膜上皮直下に強く認め(図9-A)、好酸球浸潤を強 く認めた(図9B)。ECRSの鼻腺導管組織の周囲には、細胞浸潤が著 明であり、鼻粘膜下同様に好酸球浸潤を強く認めた(図9–C,D)。
図10に抗IL-5抗体、抗IL-13抗体を用いた蛍光免疫染色所見を 示す。鼻粘膜上皮下や鼻腺導管周囲にIL-5陽性細胞(図10–A,B)、
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IL-13陽性細胞(図10–C,D)の浸潤を多数認めた。IL-5は鼻粘膜 上皮、鼻腺導管上皮ともに頂端部も染色を認めた(図10–A,B)。
3.鼻粘膜組織中の好酸球数(図11)
鼻粘膜上皮下3視野における好酸球数の平均値はCTR群8±10個、
nECRS群17±18個、ECRS群134±110個であり、ECRS群ではCTR群、
nECRS群と比較し有意に高かった(図11A)。鼻腺導管上皮周囲3 視野における好酸球数の平均値はCTR群4±5個、nECRS群8±11個、
ECRS群117±139個であり、ECRS群ではCTR群、nECRS群と比較し有 意に高かった(図11B)。鼻粘膜上皮下と鼻腺導管上皮周囲を合 せた合計6視野における好酸球数の平均値はCTR群6±8個、nECRS 群12±16個、ECRS群125±126個であり、3視野平均と同様にECRS 群ではCTR群、nECRS群と比較し有意に高かった(図11C)。
4.鼻粘膜上皮及び鼻腺導管上皮におけるIL-25の発現(図12)
鼻粘膜上皮下組織と同様に、鼻腺導管周辺に著明な好酸球浸潤 やTh2サイトカイン産生細胞の浸潤が生じるメカニズムを明らか
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にするために、CTR群とnECRS群、ECRS群の鼻粘膜上皮及び鼻腺導 管上皮における上皮由来サイトカインであるIL-25、IL-33、TSLP の発現を、免疫組織化学染色を用いて比較検討した。
まず、IL-25の発現について検討した(図12A,B)。ECRS群では、
鼻粘膜上皮と鼻腺導管上皮のいずれにおいても、IL-25の高い発 現がみられた(図12A上段右、下段右)。図12B上段に示すように、
鼻粘膜上皮におけるIL-25発現の平均染色スコアは、CTR群で1.00
±0.57、nECRS群で1.63±0.77、ECRS群で2.54±0.50であり、CTR 群、nECRS群に比べECRS群で有意に高い発現を認めた。nECRS群は、
CTR群に比べて発現の高い傾向がみられたが、有意差は認めなか った。ECRS群の鼻粘膜組織におけるIL-25の発現分布は、粘膜上 皮細胞に加えて、粘膜下に浸潤した細胞にも一部で発現を認めた
(図12A上段右)。鼻腺導管上皮におけるIL-25発現の平均染色ス コアは、図12B下段に示すように、CTR群で1.17±0.69、nECRS群 で1.55±0.66、ECRSで2.50±0.50であり、ECRS群はCTR群、nECRS 群に比べて有意に高かった。nECRS群においても、CTR群に比べて IL-25発現の高い傾向がみられたが、有意差は認めなかった。粘
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膜上皮細胞と同様、鼻腺導管上皮においても、鼻腺導管周囲に浸 潤した細胞にも一部にIL-25の染色性を認めた(図12A下段右)。
5.鼻粘膜上皮及び鼻腺導管上皮におけるIL-33の発現(図13)
次に、IL-33の発現について検討した(図13A,B)。CTR群及び nECRS群においては、鼻粘膜上皮及び鼻腺導管上皮におけるIL-33 の発現は細胞核を中心としているのに対して、ECRS群の鼻粘膜上 皮と鼻腺導管上皮におけるIL-33の発現分布は、細胞質において も高い発現を認めた(図13A上段右、下段右)。図13B上段に示す ように、鼻粘膜上皮におけるIL-33発現の染色スコア平均値は、
CTR群で1.33±0.74、nECRS群で1.27±0.61、ECRS群で2.45±0.50 であり、ECRS群はCTR群、nECRS群に対して有意に高い発現を認め た。nECRS群とCTR群の間には発現に差は認めなかった。図13B下 段に示すように、鼻腺導管上皮におけるIL-33発現の染色スコア 平均値は、CTR群で1.17±0.69、nECRS群で1.55±0.78、ECRS群で 2.54±0.50であり、ECRS群は、CTR群及びnECRS群に対して有意に 高い発現を認めた。
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6.鼻粘膜上皮及び鼻腺導管上皮におけるTSLPの発現(図14)
次に、TSLPの発現について検討した(図14A,B)。CTR群及びnECRS 群において、鼻粘膜上皮及び鼻腺導管上皮においては低いTSLP発 現が観察されたのに対して、ECRS群では症例によっては鼻粘膜上 皮及び鼻腺導管上皮では明らかなTSLPの発現を観察した(図14A 上段右、下段右)。TSLPは核に強く発現する傾向がみられた。図 14B上段に示すように、鼻粘膜上皮におけるTSLP発現の染色スコ ア平均値は、CTR群で0.17±0.37、nECRS群で0.36±0.48、ECRS群 で0.86±0.62であり、CTR群、nECRS群ではほとんど発現を認めず、
ECRS群との比較ではCTR群との比較では有意差は認めたが、nECRS 群との比較では有意差は認められなかった。また、nECRS群とECRS 群との間でも発現に有意差はみられなかった。図14B下段に示す ように、鼻腺導管上皮におけるTSLP発現の染色スコア平均値は、
CTR群で0、nECRS群で0、ECRS群で0.59±0.49であり、CTR群及び nECRS群では発現を認めず、ECRS群では、CTR群、nECRS群に対し て有意に高い発現を認めた。
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7.鼻粘膜上皮及び鼻腺導管上皮におけるペリオスチンの発現
(図15)
鼻粘膜上皮におけるIL−25、IL−33、TSLP発現の亢進は、鼻粘膜 下におけるTh2サイトカイン産生の誘導を介して鼻粘膜上皮下に おけるペリオスチンの沈着を引き起こすと考えられている〔34〕。
今回、ECRSにおいて、鼻腺導管上皮は、鼻粘膜上皮と同様にIL−
25、IL−33、TSLPの発現が亢進していることが観察されたが、こ のようなサイトカイン産生の亢進が、結果として鼻導管周囲にお けるペリオスチンの沈着を引き起こすかどうかについてさらに 検討を行った。
CTR群及びnECRS群において、鼻粘膜上皮下、及び鼻腺導管周囲 の組織では、比較的弱いペリオスチンの発現が観察されたのに対 して、ECRS群では鼻粘膜上皮下及び鼻腺導管周囲では高度なペリ オスチンの発現が観察された(図15A)。図15B上段に示すように、
鼻粘膜上皮下組織におけるペリオスチン発現の染色スコア平均 値は、CTR群で1.5±0.5、nECRS群で2.18±0.57、ECRS群で2.68±
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0.47であり、CTR群ではペリオスチンの発現は軽度で、nECRS群は CTR群に比べてやや発現が高い傾向がみられたが、有意差は認め なかった。また、nECRS群とECRS群との間でもペリオスチン発現 に有意差はみられなかったが、ECRS群においてやや高い発現がみ られた。図15B下段に示すように、鼻腺導管周囲におけるペリオ スチン発現の染色スコアは、CTR群で0.5±0.76、nECRS群で0.73
±0.62、ECRS群で2.54±0.50であり、CTR群及びnECRS群ではほと んど発現を認めず、ECRS群ではCTR群、nECRS群に対して有意に高 い発現を認めた。
8.鼻茸組織中の好酸球数とIL-25発現の関連性(図16)
図16Aでは、鼻粘膜上皮におけるIL-25の低発現群と高発現群の 好酸球数を比較検討した。それぞれ、低発現群は4例で平均好酸 球数は31±16個、高発現群は29例で平均好酸球数は154±139個で あり、高発現群では低発現群より好酸球数が高い傾向がみたれた が、有意差は認めなかった。図16Bでは、鼻腺導管上皮における IL-25の低発現群と高発現群の好酸球数を比較検討した。それぞ
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れ、低発現群は4例で平均好酸球数は15±12個、高発現群は29例 で平均好酸球数は90±111個であり、鼻粘膜上皮と同様に高発現 群では低発現群より好酸球数が高い傾向がみたれたが、有意差は 認めなかった。
9.鼻茸組織中の好酸球数とIL-33発現の関連性(図17)
図17Aでは、鼻粘膜上皮におけるIL-33の低発現群と高発現群の 好酸球数を比較検討した。それぞれ、低発現群は7例で平均好酸 球数は20±18個、高発現群は26例で平均好酸球数は171±136個で あり、高発現群では低発現群に対して有意に好酸球数が高かった。
図17Bでは、鼻腺導管上皮におけるIL-33の低発現群と高発現群の 好酸球数を比較検討した。それぞれ、低発現群は5例で平均好酸 球数は6±6個、高発現群は28例で平均好酸球数は94±110個であ り、高発現群では低発現群に対して有意に好酸球数が高かった。
10.鼻茸組織中の好酸球数とTSLP発現の関連性(図18)
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図18Aでは、鼻粘膜上皮におけるTSLPの低発現群と高発現群の 好酸球数を比較検討した。それぞれ、低発現群は13例で平均好酸 球数は118±171個、高発現群は20例で平均好酸球数は147±102個 であり、高発現群では低発現群より好酸球数が高い傾向がみたれ たが、有意差は認めなかった。図18Bでは、鼻腺導管上皮におけ るTSLPの低発現群と高発現群の好酸球数を比較検討した。それぞ れ、低発現群は20例で平均好酸球数は99±152個、高発現群は13 例で平均好酸球数は193±92個であり、高発現群では低発現群に 対して有意に好酸球数が高かった。
11.鼻茸組織中の好酸球数とペリオスチン発現の関連性
(図19)
図19Aでは、鼻粘膜上皮におけるペリオスチンの低発現群と高発 現群の好酸球数を比較検討した。それぞれ、低発現群は1例で好 酸球数は2個、高発現群は32例で平均好酸球数は162±137個であ った。低発現群の症例が1例のみであり有意差検定はできなかっ たが、ペリオスチンの発現している症例は組織好酸球が高い傾向