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【学位論文審査の要旨】

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Academic year: 2021

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【学位論文審査の要旨】

1 研究の目的

我々の宇宙の誕生と、基礎物理における全ての相互作用の統一を記述することは現代の 高エネルギー理論物理学における未解決の問題である。初期宇宙の物理は時空及びビッグ バン元素合成合成(BBN)以前の全ての素粒子の起源を説明しなければならない。全ての 力の統一は、量子力学と一般相対性理論を統一した、量子重力理論を必要とする。これは ミクロの世界(素粒子物理学)とマクロの世界(宇宙)を統一する理論的枠組みを導くと 考えられている。

上記の目標に向けた具体的な問題として、(i)初期宇宙における宇宙論的インフレーショ ンの理論的記述、(ii)可能な余剰次元の記述、及び(iii)電弱スケールとプランクスケー ルの間の階層性問題の解決がある。宇宙がインフレーション、即ちBBN以前の非常に短期 間の擬ドジッター的膨張を経たという観測的証拠が多数ある。そのためスローロール条件 を満たす特別なポテンシャルを持つスカラー場 (インフラトン) の導入、または通常の一般 相対性理論の(アインシュタイン-ヒルベルト)作用の修正が必要となる。最も成功している インフレーションモデルの1つは、スタロビンスキーモデルと呼ばれる (𝑅𝑅 + 𝑅𝑅2) 修正重力 によって与えられる(1980)。ここで、𝑅𝑅はスカラー曲率を表す。 スタロビンスキーインフ レーションは、計量のスピン 0 成分としてのインフラトンと、プラトーを持つインフラト ンのポテンシャルとの双対な記述を持つ。プラトーの存在は、プランク衛星(2018)によ る宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の観測により支持されている。

一方、余剰次元の概念は、理論の統一という目的にとって非常に魅力的である。90 年以 上前にカルツァとクラインにより、1つの余剰次元を小さな円を成すと仮定することでアイ ンシュタイン重力理論とマクスウェルの電磁気理論を統一することが可能であることが発 見された。これは後にさらに高次元に拡張され、非アーベルゲージ場の理論とアインシュ タイン重力の統一をもたらした。 これはカルツァ-クライン(KK)理論として知られてい る。 また、高次元時空における最小の超対称性から、4 次元の拡張された超対称性を記述 することができることから、余剰次元の概念は超対称性や超重力理論からも支持された。

さらに、超弦理論からはその理論的整合性のために特定の(10または11)時空の次元が予 言されており、余剰次元は隠された空間にコンパクト化されていると仮定している。観測 と矛盾しないようにするために、KKコンパクト化された余剰次元のサイズは約10−21cm以 下に制限される。

余剰次元に対して KK コンパクト化を仮定する代わりにブレーンワールドの方法をとる ことにより、余剰次元のサイズを大きくとることができる。これは、我々の宇宙が高次元 時空中の膜 (ブレーン) に局在しているという仮定で、重力のみが余剰次元に伝わることが できる。このモデルは階層問題の解決策となり得るため、過去に多くの注目を集めた(ラ ンドール、サンドラム、1999)。

本論文の目的は、スタロビンスキー型のインフレーションと余剰次元を組み合わせ、修

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正重力理論を用いて、ブレーンワールド、または自発的 KK コンパクト化を介して観測と 整合するインフレーションモデルを構築することである。

2 研究の方法と結果

本論文の主な研究方法は、(i)古典的一般相対性理論と修正重力理論、(ii)カルツァ-ク ライン理論とブレーンワールド、(iii)余剰次元の自発的コンパクト化、(iv)単一スカラー 場による宇宙論的スローロールインフレーションである。ここで、修正重力理論とは、通 常の(スカラー曲率𝑅𝑅について線形な)アインシュタイン-ヒルベルトラグランジアンを関

数𝑓𝑓(𝑅𝑅)で置き換えた、いわゆる𝑓𝑓(𝑅𝑅)重力を指す。従って、スタロビンスキーモデルは𝑓𝑓(𝑅𝑅)重

力の特別な場合であり、4次元時空における最も成功しているインフレーションである。こ れらの方法は全て、重力理論、宇宙論等の高エネルギー理論物理学において十分に確立さ れている。これらの各テーマについては、科学書や研究論文を含む広範な文献があり、 本 論文で使用されている計算ツールは標準的なものである(数値計算や数値を含む)。

本論文は得られた新しい結果により3つに分けることができる。1つ目の部分では、5次 元時空でのランドール-サンドラム(1型)ブレーンモデルと(𝑅𝑅 + 𝑅𝑅2)重力のスタロビンスキ ーモデルの組み合わせに注目し、インフレーションを引き起こし、同時に階層性問題を解 決することを目的としている。このモデルのインフラトンはポテンシャルの最小値で安定 化されるため、𝑅𝑅2項は階層問題を解決するランドール-サンドラムの解を不安定にしないこ とが明示的な計算により示されている。 しかし、このモデルにおいては宇宙論的インフレ ーションを含むことはできていない。

2つ目の部分では、𝐷𝐷次元時空から4次元時空への次元簡約(即ちトーラス上へのKKコ ンパクト化)を用いて宇宙定数Λを含む (𝑅𝑅 + 𝛾𝛾𝑅𝑅𝑛𝑛− 2Λ)修正重力によるインフレーションモ デルに注目し、4次元における可能なインフレーション (即ちプラトーを含むインフラトン ポテンシャル) を導くために𝑛𝑛 = 𝐷𝐷/2 、理論の大局的な整合性のためにD は4 の倍数でな ければならないという条件を導いた。CMBの観測量に関するこのインフレーションモデル の予測値は、現在の観測と矛盾しない。 しかし、余剰次元のダイナミクスは無視されてい るため、余剰次元のサイズは制御されておらず、余剰次元の安定化が依然として必要とさ れる。これはモジュライ安定化問題として知られている。

3つ目の部分において、モジュライ安定化問題は(𝑝𝑝 − 1)形式ゲージ場𝐴𝐴を導入することに

より、𝑝𝑝 = 𝑛𝑛 = 𝐷𝐷/2 を満たす際に解決される。このとき、場の強さ𝐹𝐹 = 𝑑𝑑𝐴𝐴は余剰次元におい

てゼロでないフラックスを持つと仮定している。このモデルに追加された重要な特徴は、

ワープファクターを用いた余剰次元の球面へのワープKKコンパクト化であり、𝐷𝐷 = 8次元 時空におけるモデルが本論文で詳細に研究されている。具体的には、2つのスカラー場(イ ンフラトンとモジュライ)のポテンシャルが計算され、そしてモジュライ(半径)が安定 化されることが特定の範囲のパラメータに対して示されている。4次元の球面𝑆𝑆4上の𝐷𝐷 = 8 モデルのKKコンパクト化は、CMBのテンソル-スカラー比の観測と矛盾しない予測値を与

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える4次元でのインフレーションを可能にし、これは、スタロビンスキーモデルの予測と 非常に近い値である。得られたインフレーションのエネルギースケールは KK スケールよ りも低く、ひいてはプランクスケールよりも低い。これは KK コンパクト化の整合性ため に必要な条件である。さらに、本論文には、𝐷𝐷 = 11次元の(修正)超重力理論を𝑆𝑆3コンパク

ト化し𝐷𝐷 = 8のモデルを導出するための特別な提案も含んでいる。しかし、𝐷𝐷 = 8モデルに

おける正の宇宙定数は、非摂動的(𝑆𝑆𝑆𝑆(2)ゲージーノ凝縮)にのみ生成することができると 考えられるが、それは未知であり、本論文の目的を大きく超えている。

3 審査の結果

余剰次元の概念は 90年以上前から知られているが、高次元宇宙論は過去20 年間で(ブ レーンワールドも含む)有用な理論的枠組みとしての地位を確立してきた。 上記で定式化 されているように、本論文における研究の目標を達成できることは研究当初には保証され ておらず、解決への道は見えていなかった。 さらに、先行研究において(𝑅𝑅 + 𝛾𝛾𝑅𝑅𝑛𝑛− 2Λ)型 の高次元理論から余剰次元の自発的KKコンパクト化による4 次元での可能なインフレー ションの導出はできないという記述がある(グンサー、モニス、ジューク、2002-2008)。

本論文における新しい結果は、次の3つの要素、(a)ラグランジアンにおける動的な𝑝𝑝形 式場Fの存在(𝑝𝑝 = 𝑛𝑛 = 𝐷𝐷/2)、 (b)余剰次元におけるFのゼロでないフラックス、及び(c)

𝐷𝐷から4次元時空へのワープ KKコンパクト化から構成され、先行研究と矛盾しない。 こ れらの結果は他の研究者によっても確認された(オテロ、ペドロ、ウィーク、2017)。

本研究の主要な結果は、原理からの計算によって明確に定式化され、観測結果と矛盾し ていない。 S.ケトフ氏との共同研究で得られた新しい科学的結果は、重力理論と余剰次元 を持つ宇宙論的インフレーション理論に重要な寄与をすると期待され、その中で申請者の 貢献は欠かせないものである。得られた結果は余剰次元の宇宙論的応用に大きな影響を与 え、提案されたD = 8モデルを超重力理論と超弦理論へのより高次元での埋め込みに向け たさらなる理論的発展の基礎として有用である。

以上により、本博士論文は博士(理学)の学位に十分値するものと判定した。

4 最終試験の結果

本学の学位規定に従って試験および試問を行った。公開の席上で論文内容の発表を行い、

物理学専攻教員による質疑応答をもって試験とした。また、論文審査委員による本論文お よび関連分野の試問を行った。その結果、専門科目および外国語について十分な学力を持 つものと認め合格と判定した。

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