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独占禁止法第二条九項「公正競争阻害性」と要件事実

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(1)

一一三独占禁止法第二条九項「公正競争阻害性」と要件事実

(都法五十四

-

一) 〔特別寄稿〕

独占禁止法第二条九項「公正競争阻害性」と要件事実

酒  井  紀  子

はじめに律(は、し、

業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保

に、る()。は、

り、て、占、し、

る。は、り()、

る()。り、

規制の中心は、私的独占及び不当な取引制限であるが、不公正な取引方法はこれらの行為に至らない場合でも、公

(2)

一一四

正な競争を阻害するおそれがある場合にそれらの行為を規制することで、補完するものである。不公正な取引方法

は、多様な行為を含み、行為要件を包括的に説明することは難しいとされるが、効果要件である「公正な競争を阻

害するおそれ」、つまり、「公正競争阻害性」は共通の要件であり、不公正な取引方法の基本的な要素である。本稿

は、「公正競争阻害性」に関する主張立証という観点からの試論である。

  不公正な取引方法

  1  不公正な取引方法の位置づけ

1) 行為規制私的独占・不当な取引制限・不公正な取引方法

独占禁止法は、大きく分けると、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法という三つの行為類型を規制す

る。私的独占(三条前段、二条五項)は、事業者を排除または支配することで、競争を実質的に制限するものである。

多くの場合、単独の事業者によって行われる。本論文は排除について述べる。

不当な取引制限(三条後段、二条六項)は、複数の事業者が共同して相互に拘束することで、競争を実質的に制

限するものである。価格カルテル、入札談合などが典型的な行為である。

不公正な取引方法(一九条、二条九項)は、複数の行為類型を含み、競争を実質的に制限するに至らない行為に

ついて規制する。行為要件は、私的独占、不当な取引制限と重なるものもある。

(3)

一一五独占禁止法第二条九項「公正競争阻害性」と要件事実

(都法五十四

-

一) 2) 不公正な取引方法の規制の方法法と一般指定告示

不公正な取引方法には、法律で規定する類型及びその行為の内容を公正取引委員会の指定にゆだねる類型がある。

ち、は、は、が、

項は一号ないし五号は要件を規定し、六号は次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれ

があるもののうち、公正取引委員会が指定するものをいうとする。これに従って、公正取引委員会は、すべての業

種に適用される一般指定告示を定めている。

従来、不公正な取引方法はすべての類型について公正取引委員会の指定にゆだねていた。しかし、平成二一年法

改正によって、一部の行為に課徴金を課すことになったため、その対象となる行為については法律で要件を規定す

ることになったものである。したがって、法律によって規定されるものと一般指定によって指定されるものに分類

お、は、示(を「」、

示(を「」、

指定告示(昭和二八年公正取引委員会告示第一一号)を「前一般指定」という。

3) 不公正な取引方法の位置づけ私的独占と不当な取引制限の補完規定

不公正な取引方法は、いずれの規定も、行為要件と効果要件からなるので、分けてみる。

行為要件からみると、私的独占及び不当な取引制限と重なるものがある。

私的独占及び不当な取引制限については、対市場効果という意味で「競争を実質的に制限する」が効果要件とさ

(4)

一一六

れる。他方、不公正な取引方法については、「公正な競争を阻害するおそれ」、つまり「公正競争阻害性」が効果要

件とされる。

     行為要件

私的独占の行為要件である排除については、その手段は問わないとされる。たとえば、事実行為によるもの、取

引拒絶、排他的契約などである。もともと、他の事業者を市場から退出させること自体、通常の取引においても認

められる中立的な行為であって、そのための手段としてはさまざまなものが見られることと同様である。

不当な取引制限の行為要件は、複数の事業者が相互に拘束し、競争を実質的に制限することであり、いわゆるカ

る。り、

(たとえば、価格カルテル、入札談合、地域分割、取引先分割など)その内容は限定される。

不公正な取引方法の行為要件には、さまざまな類型が含まれる。これらの中には、私的独占、不当な取引制限と

重なるものがある。

私的独占との関係では、排除型私的独占ガイドラインで取り上げられている不当廉売、排他的取引、抱き合わせ、

供給拒絶は、不公正な取引方法としても規定される。

同の同の

に、は、て、

は、占、し、合、り、

い場合には、不公正な取引方法に該当することになる。

(5)

一一七独占禁止法第二条九項「公正競争阻害性」と要件事実

(都法五十四

-

一)      効果要件

は、も、て、し、

る。て、は、

」、り、る。は、

る。は、の、の、

自由競争基盤を侵害するものという三つに分けられる。

     三つの行為類型の関係

合、て、

を実質的に制限する」という効果要件を満たせば、私的独占あるいは不当な取引制限に該当することになるが、こ

れに至らない場合、つまり、公正競争阻害性しか認定できない場合には、不公正な取引方法に該当することになる。

このため、不公正な取引方法は、私的独占、不当な取引制限の補完規定であると言われる。前述のとおり、不公正

な取引方法は、さまざまなレベルの行為を対象とすることから、公正競争阻害性をひとくくりに論じることは難し

い。実際に、排除措置命令、審決、判決として明らかになるものは、公正取引委員会が摘発した事件ということに

なり、ある程度の市場規模、違法性を持つ行為が前提となることは否定されない。ただ、現在は、不公正な取引方

法については、私人による差止請求訴訟(二四条)も認められており、さまざまなレベルの行為が対象となる。

これに対し、行為要件が私的独占、不当な取引制限と重ならない類型については、それぞれ行為要件と効果要件

について検討することになる。

(6)

一一八  2要件

不公正な取引方法について個別の類型をみると、行為要件と効果要件からなる。すなわち、どのような行為をし

て、る。

以下では、各要件について概観する。

1) 行為要件      概要

不公正な取引方法には、さまざまな行為類型があるが、いくつかの分類の方法がある。まず、法律の規定からみ

て、る。た、」「」「

常な商慣習に照らして不当に」のいずれを要件とするかによって分類することもできる。また、公正競争阻害性か

らみると、その内容によって分類することもできる。すなわち、自由競争の侵害、競争手段の不公正、自由競争基

盤の侵害のいずれにあたるかという分類である。

     具体的行為類型      法定類型

二条九項は、不公正な取引方法の定義規定である。このうち、一号から五号は法定類型である。

一号は、共同の取引拒絶(供給拒絶)である。競争関係にある事業者の共同の取引拒絶のうち、供給を拒絶する

(7)

一一九独占禁止法第二条九項「公正競争阻害性」と要件事実

(都法五十四

-

一) 行為について規制する。

二号は、差別対価(継続取引)である。差別的な対価の設定について、継続して行われ、他の事業者の事業活動

を困難にさせるおそれがある行為について規制する。

三号は、不当廉売(著しく低い価格)である。供給に要する費用を著しく下回る対価での継続的な供給を規制す

る。は、る。し、て、

これを維持させること、あるいは当該商品の販売価格の自由な決定を拘束することを規制する。

五号は、優越的地位の濫用である。優越的地位を利用して、相手方に不利益を負わせる行為のうち、取引に関係

ない商品の購入等、何らかの経済上の不利益負担、値引き・返品等を規制する。

     一般指定類型

二条九項六号は、不公正な取引方法について、同号に規定する行為に該当するもので、公正な競争を阻害するお

それがあるものについて公正取引委員会が指定することを規定する。これを受けて、公正取引委員会が一般指定告

示によって指定したものが一般指定類型である。

一般指定一項は、共同の取引拒絶(供給を受けることの拒絶)である。共同の取引拒絶のうち、供給を受けるこ

との拒絶を規制する。旧一般指定の共同の取引拒絶のうち、法一号で規定されないものである。

一般指定二項は、その他の取引拒絶である。競争関係にない事業者間の共同の取引拒絶、単独の取引拒絶を規制

する。一般指定三項は、差別対価(法定類型以外)である。法二号に規定する差別対価以外のものを規制する。

(8)

一二〇

一般指定四項は、取引条件の差別取扱いである。

一般指定五項は、事業者団体における差別的取扱いである。

一般指定六項は、不当廉売(法定類型以外)である。不当に低い対価による場合であり、法三号に規定する差別

対価以外のものを規制する。

一般指定七項は、不当高価購入である。

一般指定八項は、ぎまん的顧客誘因である。実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利である

と顧客に誤認させることにより、取引するように誘引するものを規制する。

一般指定九項は、不当な利益による顧客誘因である。

一般指定一〇項は、抱き合わせ販売である。自己の商品又は役務の供給にあわせて他の商品又は役務を自己又は

自己の指定する事業者から購入させる等強制することを規制する。

一般指定一一項は、排他条件付取引である。相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引し、

取引の機会を減少させるものと規制する。

一般指定一二項は、拘束条件付き取引である。法四号及び一般指定一一項を除く条件をつけて取引することであ

る。一般指定一三項は、取引の相手方の役員選任への不当干渉である。旧一般指定のうち、優越的地位の濫用のうち

法五号に規定されないものである。

一般指定一四項は、競争者に対する取引妨害である。契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引など、方法を問わ

ず、取引を妨害するものを規制する。

(9)

一二一独占禁止法第二条九項「公正競争阻害性」と要件事実

(都法五十四

-

一) 一般指定一五項は、競争会社に対する内部干渉である。

2) 効果要件公正競争阻害性      公正競争阻害性の意義

は、が、は「

あり、現行法では六号に規定されるのみである。他方、一号ないし五号は、「不当に」「正当な理由がないのに」あ

るいは「正常な商慣習に照らして不当に」と規定されているが、その内容はいずれも「公正競争阻害性」を意味す

るとされる。これは、平成二一年改正前の二条九項では、柱書に「公正な競争を阻害するおそれ」と規定されてお

り、これが不公正な取引方法の効果要件の内容を示すものとされていたのが、平成二一年改正により、条文の構成

が変わったものであり、実質的に変更されるものではないと解されている。

なお、「不当な」「正当な理由がないのに」あるいは「正常な商慣習に照らして不当に」という要件は、行為要件

の規定のように見える。しかし、いずれも公正競争阻害性を意

、効果要件と解される。競争に対する効果であ

り、実質的要件とする考えもあるが、本論文では効果要件という。

は、て、

る。い。

も、

公正な自由競争を妨げるものと認められる場合で足りる」としており、具体性に欠けることは否めない。

これについては、独占禁止法研究会がその内容について検討し詳細な報告を出している。

(10)

一二二      独占禁止法研究会報告

公正取引委員会は、昭和五七年の一般指定告示の改正に先立ち、独占禁止法研究会において不公正な取引方法に

り、る。は、

る基本的な考え方」として報告されている。

同報告によると、公正競争阻害性については、①自由な競争の侵害、②競争手段の不公正さ、③自由競争基盤の

侵害とされる。

①自由な競争の侵害には、競争の回避と競争の排除が含ま

。競争の回避には、再販売価格拘束、販売地域制

限があり、競争の排除には、略奪的価格設定、不当廉売、排他的取引、抱き合わせ、取引拒絶がある。これらにつ

いては、排除型私的独占の行為要件に該当するものもあり、競争の実質的制限に至らないものと解さ

②競争手段の不公正さは、能率競争を妨げるような競争手段自体が非難される場合である。

③自由競争基盤の侵害は、取引主体が主体的に判断するための前提となる自由競争の基盤を侵害する場合である。

いずれも、競争を実質的に制限する、すなわち、市場支配力を形成維持強化することに直接結びつくものではな

いものと解される。

他方、これら三分類について、いずれに該当するかを考えるというよりも、これらの要素を総合勘案して公正競

争阻害性が認められるかを判断するという考えも

     不公正な取引方法の射程範囲

もともと、不公正な取引方法が、複雑雑多な行為類型を含むとともに、同じ行為類型であっても、市場規模・違

法性の程度等において、異なるものを規制の対象とするという特徴を有する。たとえば、拘束条件付取引について

(11)

一二三独占禁止法第二条九項「公正競争阻害性」と要件事実

(都法五十四

-

一) みれば、マイクロソフトの非係争条項を取り上げた

も高知市の医薬品の卸売業者が所有する建物を薬局の店舗

として賃貸するにあたり、医薬品の購入量に制限を課した (1

も射程に入るものである。前者は、世界市場を前提

にして、私的独占にかなり近い事案であることがうかがえる。後者は、ある地方都市の店舗の賃貸借契約と医薬品

の購入量の制限という不公正な取引方法が基本とする取引の最小単位を前提とする事案であるということができる。

このように、事業者の規模、その取引の範囲、内容、行為の影響する範囲などからみて、不公正な取引方法の射程

範囲はきわめて広い。

さらに、時代によって、前提となる事実が変化することで、不公正な取引方法に該当する行為も変化する。たと

えば、流通の形態の変化が、取引の範囲、事業者間の関係などの変化をもたらすこともある。商品の販売方法とし

て、いわゆる個の独立した商店というような小売店による販売から特殊指定によって規制されるような大型店に

と、り、退(る。

に立地するワンストップ型の大型店舗の発展がある。さらには、最近では、取引の形態は、バーチャルの世界、つ

まり、仮想商店街といったインターネット上の取引へと移りつつある。このような変化、あるいは変化の途上にお

いては、公正競争阻害性の三分類を前提に判断することは難しい場合もある。昭和五八年に出された独占禁止法研

究会報告は、それまでに取り上げられた事件、当時、問題となる事案を前提にするが、法律あるいは一般指定が予

定していた事象と現段階における事象には、差異が生じていることは否定できない。事業活動を対象とする独占禁

止法は、このような前提で抽象的に規定されているということからしても、その解釈においても、柔軟に考えるこ

る。る「」「は「

して不当に」についても異なるものではない。

(12)

一二四

た、て、も、の、

認定できる事実から柔軟に判断することになると解するべきで ((

 3発展的考え方

平成二一年法改正において、不公正な取引方法の一部に課徴金を課すことになったが、基本的には、違法性の程

度によって、違法類型とそうでないものに分け、前者を課徴金類型とするものとし、法定したものであるが、いく

つかの違法類型にあたらない類型についても課徴金の対象とされており、必ずしも、理念と実務上の要請は一致し

ないということができる。

また、そもそも、同じ行為類型を違法性の程度によって規制することは、二重の規制にあたるとして、私的独占

と不当な取引制限に発展的に解消する考えも (1

私的独占と不当な取引制限に含まれない類型もあること、競争を実質的に制限するまではないが、自由で公正な

競争が機能していないような状況にある場合など、不公正な取引方法自体に規制の意義がある考えることもできよ

う。

(13)

一二五独占禁止法第二条九項「公正競争阻害性」と要件事実

(都法五十四

-

一)   独占禁止法と要件事実

  1  事実認定

独占禁止法の要件は、抽象的なものが多いが、その中でも、「公正競争阻害性」、もしくは、「不当な」「正当な理

由がないのに」あるいは「正常な商慣習に照らして不当に」という要件は、最も抽象的なもののひとつといえよう。

このような抽象的な要件であっても立証することが必要であることはいうまでもない。

は、る。て、

法()、法( (1

く。

定がある(六 (1

)。

立証の程度の違いはあるものの、証拠による事実認定のプロセスは刑事訴訟も民事訴訟も同様である。当該要証

事実が認定できるかについて、存在する証拠から心証を形成し、判断する。基本的には自由心証主義が採用されて

り(条、)、 (1

おいて、自由心証主義を採用する規定はないが、法定証拠 (1

に関する規定もなく、事実認定の基本的考え方であ

り、これによるものと解される。

(14)

一二六  2主張立証責任

1) 独占禁止法と行政事件訴訟・民事訴訟の関係

独占禁止法は、不服申立の制度として、審判手続、審決取消請求訴訟を予定する。審決取消請求訴訟は、審決と

いう行政処分の取消を求めるものであり、行政事件訴訟の一種である(独占禁止法第七八条等、行政事件訴訟法第

)。は、る(

)。は、が、性、

度という性質からすると、規定がない部分については、行政事件訴訟法、民事訴訟法に準ずると解される。

2) 民事訴訟における主張立証責任      主張立証責任

民事訴訟において、法律の規定する効果が発生するには、当該法律の要件に該当する事実を立証しなければなら

ず、立証できない場合にはその効果が発生することによる利益を受けることができないことになるが、訴訟上、あ

る要件事実の存否が真偽不明に終わったために当該法律効果の発生が認められないという不利益または危険を民事

訴訟における立証責任と (1

。客観的立証責任、証明責任ともいう。具体的事実が立証されない場合、当該事実は

存在しないと扱われることによる不利益を当事者のいずれが負担するかである。ある要件について、立証されるこ

とによる利益と立証されないことによる不利益は同一当事者に帰属し、これらが別の当事者に帰属することはない。

(15)

一二七独占禁止法第二条九項「公正競争阻害性」と要件事実

(都法五十四

-

一) 主張責任は、当事者が主張しない事実は認定できないとするもので (1

。通常は、立証責任を負うものが負担す

る。     立証責任の分配

立証責任を負う当事者は、立証ができない場合には、その法律の規定する効果が発生することによる利益を得る

ことができないという不利益を受けることから、立証責任をどちらの当事者に負担させるかは、訴訟の結果に大き

く影響する。このため、どのように立証責任を分配するかは重要な問題である。

民事訴訟において、裁判所は、原告が主張する権利、あるいは法律関係の存否について判断しなければならない

が、それらは観念的なものであり、原則として直接認定することはできない。このため、当該権利等の存否につい

ては、権利の発生、消滅というような法律効果の組み合わせによって導き出すことになる。法律の多くは、このよ

うな法律効果の発生要件を規定しており、この発生要件を法律要件、構成要件という。そして、法律効果が認めら

れるかどうかは、その発生要件に該当する具体的事実の存否にかかることになるが、この事実を要件事実と (1

民事訴訟における立証責任の分配、つまり、訴訟上、いずれの当事者に立証責任が帰属するかについては、その

要件事実の存在が認められたら発生するであろう法律効果との関係で論理的、客観的に定まるとされる(法律要件

分類説、通説とさ 11

。)。法律効果の発生要件は、すべて客観的に法律が規定するところであり、実体法の規定は、

ら、定、定、定、

権利消滅規定に分けら 1(

。法律効果の働き方によって論理的に定まる組合せに従い、訴訟の当事者は、それぞれ

自己に有利な法律効果の発生要件事実について立証責任を負うとする。

(16)

一二八

3) 行政事件訴訟における主張立証責任      立証責任と主張責任

権利、法律関係を認定するには、これらを発生させる法律の定める要件に該当する具体的な事実(要件事実)を

立証することで認定を可能とするという方法は、民事訴訟だけでなく、行政事件訴訟でも同じであるから、主張立

証の対象、立証責任の分配についても基本的には同様に考えることができる。

行政事件訴訟において、主張立証責任の対象となる事実及び立証責任の分配は、個別の要件ごとに分類されると

いうよりも、憲法及び行政法の制度趣旨により、取消訴訟の対象となる行政処分の種類、つまり、侵害処分か、授

権処分かで区別する。侵害処分の場合、本来有している権利を制限し、義務を課すことになる処分であるから、そ

の立証責任は処分者である行政主体(被告)に負わせ、他方、授権処分の場合、国民として一般人が有する利益に

比べて特別の利益を付与することになる処分であるから、その立証責任は、利益を得ることになる国民(原告)に

負わせることとされる。

ただし、侵害処分でも、すべての要件事実について、行政主体に一から立証させることは、処分の適否について

の判断を遅延させることになり、国民の救済に反することになること、立証責任の負担が大きくなること、要件事

と、民(し、

国民(原告)が争点として指摘した部分について、行政主体(被告)が立証すれば足りると 11

     訴訟物・請求の趣旨・取消理由 行政事件訴訟における訴訟物は、行政処分の違法一般とさ 11

。したがって、処分を争う者(原告)は、取消の

対象となる行政処分を特定し、それが違法であることを明らかにすれば足り、具体的な違法事由を記載することは

(17)

一二九独占禁止法第二条九項「公正競争阻害性」と要件事実

(都法五十四

-

一) 11

し、体(は、と、ち、

処分要件を充足することを主張する。これに対して、処分を争う者(原告)は、特定の処分要件が充足していない

ことを主張しなければならない。さらに、行政主体は、当該処分要件が充足されていることを主張することになる。

このように、処分を争う者(原告)は、訴訟の当初から、個別具体的な処分要件の違法について主張することは必

要ではないが、争う点について明らかにし争点を形成することで、訴訟手続を円滑に進めることができる。

具体的には、処分の特定とその取消が請求の趣旨であり、当該処分の違法が請求の原因である。行政主体は、処

分の適法性、相当性について包括的に主張する。これに対し、処分を争う者(原告)は、処分の適法性を構成する

要件のうち、国民(原告)が争点とするものについて具体的に主張する。そして、侵害処分の裁量権の逸脱または

濫用については、裁量性が明らかな処分の場合には、裁量性が処分の存在から明らかとなり、これに含まれる。

4) 独占禁止法における主張立証責任      立証責任

は、ず、じ、

命ぜられた者等が各命令の適法性を争うときには、審判手続が行われ、これについて判断する審決が出される。こ

の審決に対し、不服がある場合、命ぜられた者等は、裁判所に対し審決取消請求訴訟を提起することができる。審

は、が()、

の規定によるが、手続の連続性、手続の性質からすると、考え方等については、同様に行政事件訴訟に準ずること

になると解される。

(18)

一三〇

は、る。ち、

排除措置命令は、公正取引委員会が独占禁止法違反行為を行った事業者に対して、違反行為を排除するに必要な措

置を講ずるように命令するものであり、課徴金納付命令は、独占禁止法違反行為を行った事業者に対して、一定の

方法によって算定された課徴金の納付を命ずるものであるから、いずれも、国民に対し義務を負わせるものであり、

行政事件訴訟の侵害処分に該当する。そして、独占禁止法における審判手続は、審決取消請求訴訟の前審であるこ

と、処分に対する事後の不服申立の制度であることからすると、審決取消請求訴訟と同様に、主張立証責任および

要件事実についても、行政事件訴訟法、民事訴訟法の考え方によると解される。

     主張責任

独占禁止法における審判手続における主張については、審判請求をしようとする者が審判請求にかかる命令、審

る()。は、

の特定と取消の請求に対応する。

これに対し、公正取引委員会(審査官)は、原処分の原因となる事実及び法令の適用、並びに原処分が相当であ

る()。は、性、

される。さらに、審判請求をしようとする者は、命令に対する主張を明らかにすることを要する(五二条二項)。これは、

行政事件訴訟における争点の形成に対応すると解される。

参照

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