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分担研究報告書

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Academic year: 2021

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厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)

分担研究報告書

ALS の意味記憶障害と神経ネットワーク変化 -熟字訓を用いて-

分担研究者  祖父江元  名古屋大学神経内科教授

共同研究者  小倉礼

1

、渡辺宏久

2

、桝田道人

1

、川畑和也

1

、大嶽れい子

3

、加藤隼康

1

、 原一洋

1

、川合圭成

1.名古屋大学脳神経内科  2.藤田医科大学脳神経内科    3.名古屋大学脳とこころの研究センター  4.小山田記念病院脳神経内科 

研究要旨

  筋萎縮性側索硬化症(ALS : amyotrophic lateral sclerosis)は前頭側頭型認知症 (FTD :

Frontotemporal Dementia) と臨床症状、遺伝子変異、病理学的背景に共通点を認め、連

続する疾患と考えられている。FTD の診断基準の一つに挙げられる語義障害に関して、

FTD と連続性を持つ ALS に対して熟字訓を用いて意味記憶障害と神経ネットワーク変 化を検討した。 ALS では健常群に比較して熟字訓音読障害が認められ、熟字訓音読成績 の低下は右紡錘状回〜舌状回をハブとするネットワークの減弱と左中下側頭回をハブ とするネットワークの増強と関連することが示唆された。今回の結果を FTD 患者へ応 用することで、FTD の早期診断マーカーの開発に繋がることが期待される。

 

A. 研究目的: 筋萎縮性側索硬化症(ALS : amyotrophic lateral sclerosis)は前頭側頭型 認知症 (FTD : Frontotemporal Dementia) と臨床症状、遺伝子変異、病理学的背景 に共通点を認め、連続する疾患と考えら れている。FTD は精神症状、言語症状、

運動症状など多彩な症状を呈する一方で、

特徴的な物忘れを呈しない例も多く、診 断が困難な例やアルツハイマー型認知症 と診断されている例もあり、特に早期に 診断することは非常に困難である。そこ で FTD と連続性を持つ ALS の言語症状を 熟字訓を用いて検討し、FTD の早期診断 マーカーの開発を試みた。

B. 研究方法: 名古屋大学脳神経内科へ通 院あるいは入院された ALS 患者 68 例お よび年齢、性別が患者群と一致した健常 者 71 例に対して認知機能検査(MMSE・

ACE-R ・ RCPM ・ FAB ・語想起・数唱・ Stroop test・SALA・TLPA・熟字訓課題)を施行 した。また ALS34 例に対して頭部 MRI を撮像し、安静時脳機能画像評価を行っ た。

C. 研究結果: 健常群に対して ALS 群では

熟語の音読に関して、一貫語、高頻度熟

字訓、低頻度熟字訓いずれにおいても有

(2)

53 意に低値であった。健常者における低頻 度熟字訓得点 5%tile 以下であった ALS 患 者を熟字訓障害群(ALS-JD+) 、5%tile 以 上 であっ た ALS 患 者を 熟字訓正 常群

(ALS-JD-)とし、安静時脳機能画像評価 を行った。健常者および ALS-JD-いずれ の群に対しても、ALS-JD+では右紡錘状 回〜舌状回において次数の低下を、左中 下側頭回において次数の増加を認めた。

右紡錘状回−舌状回を関心領域として Seed based analysis を 行 っ た と こ ろ 、 ALS-JD+群は健常群に対して両側中心前 回−中心後回、左側頭極、両側後頭皮質、

右海馬−海馬傍回、両側外側後頭皮質に おいてネットワークの低下を認め、左中 下側頭回を関心領域として Seed based

analysis を行ったところ、ALS-JD+群は健

常群に対して左中前頭回、両側中下側頭 回、左側頭極、左角回においてネットワ ークの増強を認めた。

D. 考察: ALS の半数以上で低頻度熟字訓 音読成績の低下を認め、頭部 MRI 画像を 用いた検討から熟字訓音読成績の低下は 右紡錘状回−舌状回をハブとするネット ワークの減弱と左中下側頭回をハブとす るネットワークの増強と関連することが 示唆された。

今回の安静時脳機能画像から得られた ネットワーク変化に関しては、紡錘状回 は漢字処理過程で両側性に機能する、意 味関連課題の成績は右半球の関与で向上 する、単語認知において右舌状回は global

attention と関連するなど、これまでにも言

語処理において重要な役割を果たすこと が知られている。本検討ではネットワー

クの減弱と共に増強部位も認められたが、

左中下側頭回を中心としたネットワーク 増強は、右紡錘状回−舌状回のネットワ ーク障害に伴う代償性変化を表している 可能性が示唆された。従来、皮質の障害 領野と症候を対比するという症候の局在 論的解釈が中心であったが、本研究のよ うに回路から症候を捉える方法を検討す ることにより、従来の方法では困難であ った高次脳機能を担う情報処理システム を明らかにすることで、早期診断、早期 介入、新規リハビリテーション法開発へ と繋がっていく可能性があることが期待 される。

E. 結語: FTD と連続性を持つ ALS に対 して熟字訓を用いて意味記憶障害と神経 ネットワーク変化を検討した。今回の結 果を FTD 患者へ応用することで、 FTD の 早期診断マーカーの開発に繋がることが 期待される。

F. 健康危険情報:特になし。

G. 研究発表 1 .論文発表

Ogura A, Watanabe H, Kawabata K, Ohdake R, Tanaka Y, Masuda M, Kato T, Imai K, Yokoi T, Hara K, Bagarinao E, Riku Y, Nakamura R, Kawai Y, Nakatochi M, Atsuta N, Katsuno M, Sobue G. Semantic deficits in ALS related to right lingual/fusiform gyrus network involvement. EBioMedicine. 2019 Sep;47:506-517.

2. 学会発表

(3)

54 小倉礼,桝田道人,祖父江元,他  熟字 訓を用いた ALS の意味記憶障害と安静 時脳内ネットワーク解析 第 60 回日本神 経学会学術大会

桝田道人,小倉礼,祖父江元,他  FTLD-J から見た本邦前頭側頭型認知症の臨床特 徴 第 60 回日本神経学会学術大会

小倉礼、桝田道人、祖父江  元他.熟字 訓を用いた ALS の意味記憶障害と安静 時脳内ネットワーク解析.第 38 回日本認 知症学会学術集会, 東京, 2019. 11.

桝田道人, 今井和憲, 祖父江 元他.ALS の意思決定様式の特異性とその神経基盤:

確率逆転学習課題を用いた検討. 第 38 回 日本認知症学会学術集会, 東京, 2019. 11.

H. 知的財産の出願・登録状況:特になし。

参照

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