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マクロファージの発生と分化に関する実験的解析 (1)

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(1)

熊本大学学術リポジトリ

マクロファージの発生と分化に関する実験的解析 (1)

著者 高橋, 潔

雑誌名 マクロファージの起源、発生と分化 : メチニコフ の食細胞、アショッフ・清野の細網内皮系とファン

・ファースの単核性食細胞系の諸学説を踏まえて ページ 254‑308

発行年 2008

URL http://hdl.handle.net/2298/10440

(2)

254

管から実質に移住し、指状嵌入細胞、ランゲルハンス細胞に分化する。所属リンパ節でも 傍皮質の血管から直接移住する経路が存在し、筆者らは所属リンパ節の輸入リンパ管結紮 実験で樹状細胞の血行性経路を実証した532)。このように、末梢血から樹状前駆細胞が移住 し、樹状細胞に分化する径路で発生する樹状細胞は血液由来樹状細胞(blood-derived

dendritic cells)と呼ばれる。肝臓では類洞内で Kupffer

細胞に接着し、樹状細胞に分化し、

類洞内皮を通過して

Disse

腔内に移行する。

Disse

腔内に移住した樹状細胞は肝門脈域でリ ンパ管内に入り、輸入リンパ管を介して肝門リンパ節に運ばれる。このルートは松野 (1996,

2000)によって明らかにされ、樹状細胞の血液・リンパ転位 (blood-lymph translocation)

と呼ばれる1249, 1250)

(「肝内血液・リンパ転位」の項(p. 375 )参照)。

b) B

細胞関連樹状細胞

(

濾胞性樹状細胞

)

B

関連樹状細胞は

B

細胞の増殖ならびに増幅の場であるリンパ組織でのリンパ濾胞内、

とりわけ胚中心に数多く局在する濾胞性樹状細胞で、抗原を捕捉し、

B

細胞に抗原情報を伝 達し、B細胞の増殖と分化を促す。超微形態学的に、この細胞は多数の細胞突起を伸ばし、

迷路様の構造を形成し、抗原を捕捉、貯留する。濾胞性樹状細胞の起源、発生と分化に関 しては胎生期に発生し、原始細胞細胞から派生する局所起源が小島、今井らによって主張

され263, 266)、この主張が今日一般に容認されているが、骨髄起源の主張も提示されている(「B

細胞関連樹状細胞の発生、分化と成熟」の項(p. 395)参照)。

9 マクロファージの発生と分化に関する実験的解析

「MPS学説の実験的根拠、問題点と批判」の項(p. 87)で触れた如く、van Furthらの提示 した実験的根拠に対して種々の研究が行われ、さらに種々の物質や受容体などの遺伝子の 導入や欠損を施した遺伝子改変マウスが作製され、あるいは自然発症遺伝子異常マウスが 見出され、これらの動物を用いてマクロファージの発生と分化に関する実験的研究が行わ れた。以下これらの研究成績を加えて、マクロファージとその類縁細胞の発生と分化とに 関して実験的に解析し、解説する。

1) マクロファージ、とりわけ組織マクロファージの発生と分化

マクロファージとその類縁細胞の発生と分化に関しては

20

世紀当初からいろいろの物質 や病原体を投与して追求すると言う方法が取られ、Aschoff、清野の網内系学説の提唱の基 本理念の基礎を成した生体染色もまた「網内系学説の問題点」の項(p. 36)でも述べた如く、

生体には一種の刺激状態が惹起され、同様に

van Furth

MPS

学説の提唱の根拠ともなっ た実験的根拠もまた「MPS学説の実験的根拠と問題点ならびに批判」の項(p. 87)でも指摘 したように、その多くは催炎実験あるいは刺激実験であり、これらの実験はいずれも無刺 激定常状態の組織マクロファージの検討には不適当である。すでに「MPS学説の実験的根

(3)

255

拠と問題点ならびに批判」の項(p. 87)で触れたように、マウスを用いて無刺激状態で持続的 に末梢血中に単球の減少あるいは欠如を実験的に作製し、あるいは逆に血液単球の増多を 起させ、血液単球と各所組織での組織マクロファージの変動に関して検討が行われた。ま ず最初に主としてマウスを用いての持続性単球減少症あるいは単球増多症実験について述 べる。

a)

無刺激状態における組織マクロファージと末梢血単球との関連

(1)

極度単球減少症惹起マウスを用いての組織マクロファージの検討

小島ら(1980)は低形成性貧血の剖検例で、長期間単球の極度の減少があるにも拘わらず全 身各所の組織マクロファージの減少が起らず、この事実は単球の組織マクロファージへの 補給とは矛盾することを指摘した257)。「MPS学説の実験的根拠と問題点ならびに批判」の

「単球減少症惹起実験」の項(p.89)で述べたように、

Volkman

Sawyer

ら(1982、

1983、

1986)はストロンチウム 89(

89

Sr)の投与による単球極度減少症惹起マウスを作製し、無刺激

状態での各所組織での組織マクロファージを追求する方法を考案した463465)

マウスに放射性同位元素89

Sr

を静注すると、89

Sr

は生体内を循環し、一部は骨質、とり わけ幼若な骨質のカルシウムに沈着するが、その大部分は組織に沈着することなく、短時 間で腎臓から体外に排泄される。89

Sr

はβ線を放出し、半減期は

55

日で、その範囲は軟部

組織で約

2.5 mm、骨ないし骨髄以外の組織で、この範囲以外にある組織には障害は惹起さ

れない。しかし、投与後89

Sr

は発達中の幼若な骨質のカルシウムに取り込まれ、β線を照射 し続け、骨や骨髄は障害され、とりわけ単球系細胞の障害が高度である。投与後

2

週頃で

は、骨髄の造血細胞は殆ど死滅、消失し、汎骨髄癆の病理組織像を示し、やがて脂肪髄へ と変化する

(

59

参照

)

。このような状態では脾臓に単球系細胞を含めて髄外造血が発現す るので、脾臓での髄外造血の可能性を除去するために89

Sr

投与前

1

ヶ月前に摘脾を行い、

実験には対照群を含めてすべて摘脾マウスを使用した。対照群には非放射性同位元素 88

Sr

を投与し、検討した。88

Sr

投与摘脾マウスでは、末梢血単球の数は摘脾正常マウスとほぼ 同様で、88

Sr

の投与によっても変化は特に見られない。しかし、89

Sr

投与後末梢血中の単 球は漸次減少し、

2

週後には完全に消失し、その後も末梢血中には単球は検出されなくなる

図 59 89

Sr

投与後

2

週目のマウス骨 髄の病理組織像。骨髄の造血細胞はほ とんど死滅、消失し、脂肪組織で置換 されている。骨皮質は変性、壊死に堕 ち、菲薄化し、一部崩壊している(矢 印)。

(4)

256

(図 60

参照)。

このような、末梢血中に単球の完全欠如状態は筆者らが行った実験では89

Sr

投与後

2

週 目から

10

週以上末梢血中に単球欠損状態が持続する。この状態は

Volkman

一派の

Swayer

ら (1982)463)、Volkmanら(1983)464、Swayer (1986)465)、さらに

Ohgiso

ら(1988)のラット

での実験466)や筆者らのマウスで行った研究 467, 468)でも実証された。Volkman 一派は腹腔 マクロファージや肺胞マクロファージの数は89

Sr

投与極度単球減少症惹起マウスでも対照 マウスと比較して殆ど変化はなく、これらのマクロファージには増殖能が証明され、組織 マクロファージは単球の補給がなくとも長期間生存し、これは組織マクロファージの増殖 による自己再生によることを主張した463465)

Oghiso

ら(1988)は摘脾を施していないラッ トに89

Sr

を投与し、極度単球減少症を惹起し、脾マクロファージの検討を行い466)、筆者ら は89

Sr

投与誘発極度単球減少症惹起摘脾マウスで肝

Kupffer

細胞を検索した467, 468)。さら に、筆者らの行った研究によると、図 61に示したように、89

Sr

投与後

6

週目の肝臓、脳、

腎臓、子宮内膜、卵巣などの組織マクロファージの数は対照マウスに比べて減少はなく、

ほぼ同数であった。以上の諸事実から末梢血中に単球が長期間欠損しても種々の臓器、組 織における組織マクロファージの数には変化はなく、細胞群によっては増加する場合もあ り、組織マクロファージは末梢血からの単球の補給がなくとも組織マクロファージは生存 し、これはマクロファージの増殖による自己再生で細胞群は維持されると結論され、「MPS 学説の実験的根拠とその問題点、ならびに批判」の項(p. 87)ですでに指摘した如く、van

Furth

の主張する組織マクロファージの単球由来説とは明らかに矛盾する。

組織マクロファージの増殖能は

Volkman

一派の腹腔マクロファージや肺胞マクロファー

2 4 6 8 10週 肝 脳 腎 子宮内膜 卵巣

60

89

Sr

投与極度単球減少症惹起摘脾マウスと88

Sr

投与摘脾対照マウスの末梢血単 球の変動と各所組織におけるマクロファージ数の比較。

A:

89

Sr

投与極度単球減少症惹起摘脾マウス(実線)と 88

Sr

投与摘脾対照マウス(点線) の末梢血単球数の変動。 B: 89

Sr

投与極度単球減少症惹起摘脾マウス(

)と

88

Sr

投与 摘脾対照マウス(

)のストロンチウム投与後 6

週目の諸臓器、組織におけるマクロファ ージ数の比較。

1800

1000 600

400

200

0 800

400 200

A B

(5)

257

ジの研究で実証され、筆者らも摘脾マウスを用いて肝

Kupffer

細胞に関して 3

H-サイミジ

ン・オートラヂオグラフィーで検討した。その結果、89

Sr

投与極単球減少症惹起摘脾マウ スの

Kupffer

細胞の数は89

Sr

投与後

2

週目でもむしろ軽度ながら増加し、その後も漸次増 加を示した(図 61A 参照)。

Kupffer

細胞の3

H-サイミジン標識率は対照マウスに比較して

89

Sr

投与後漸次増加の傾向を示した(図 61B参照)。このように、89

Sr

投与後

2

週目で末梢

にh

血中に単球が消失し、検出されなくなるが、Kupffer 細胞の数は減少せず、むしろ増加し、

増殖能も増加の傾向を示した。これらの事実は

Volkman

らがマウスの腹腔マクロファージ や肺胞マクロファージで提示された成績にほぼ一致し、さらに

Oghiso

ら(1988)466)がラット の脾マクロファージで実証した知見とも符合する。

上述した如く、筆者らの行った 89

Sr

投与誘発極単球減少症惹起摘脾マウスの肝臓におけ

Kupffer

細胞の動態に関する研究からは末梢血からの単球が補給をまったく欠いた状態

でも

Kupffer

細胞は少なくとも

8

週以上生存し、この事実を

van Furth

らの主張したマウ ス肝

Kupffer

細胞の半減期が約

4.5

日と言う短い回転率 (turnover rate)では説明出来ない。

「MPS学説の実験的根拠と問題点ならびに批判」の「マクロファージの寿命と細胞回転」

の項(p. 85)で述べた如く、組織マクロファージの寿命は長命で、Kupffer細胞はラットやヒ トでは数ヶ月から

1

年を越えることが報告されている511514)。このように

Kupffer

細胞の 寿命が長命ならば、

Kupffer

細胞は末梢血中の単球から何等補給されることがなくとも生存 可能で、さらに増殖による自己再生によって維持される。筆者らが行った89

Sr

投与誘発極 単球減少症惹起摘脾マウスの研究成果をもとに算定すると、単球がまったく末梢血中から

2.0 100

A B

200

3.5 3.0 2.5

(/mm2) %

1.5 1.0 0.5

0 2 4 6 8 10 週

0 2 4 6 8 週

図 61 89

Sr

投与惹起極度単球減少症マウスの肝臓における

Kupffer

細胞 の数と核内3

H-サイミジン標識率の変化。 A: Kupffer

細胞数の変動。

B:

3

H-サイミジン標識率の変化。

89

Sr

投与惹起極度単球減少症マウス 88

Sr

投与対照マウス (実験にはすべて摘脾後

1

ヶ月のマウスを使用)。

(6)

258

欠如した状態で

Kupffer

細胞は約

7

週生存し、その間に一回分裂すると、

Kupffer

細胞群は 肝臓内で恒常的に維持される。筆者らはマウスに3

H-サイミジン閃光標識法([

3

H]thymidine flash labeling)を試行し、肝臓で Kupffer

細胞にラベルされたサイミジンの消失を検討した 結果、Kupffer細胞の生存期間は

5

週であることが判明し、これは

van Furth

らが報告し た

Kupffer

細胞の回転率よりは長命である513)3

H-サイミジン閃光標識法では

3

H-サイミ

ジンによる低レベルの核内照射が無刺激状態でのマクロファージの増殖や寿命にどの程度 影響を及ぼすかの検討が必要であるが、筆者らが3

H-サイミジン閃光標識法で示された結果

からは

Kupffer

細胞の寿命は単球欠如状態での

Kupffer

細胞の維持上に要する生存期間よ りは約

2

週間少ないことになる。

そこで、89

Sr

投与誘発極単球減少症惹起摘脾マウスの肝臓での

Kupffer

細胞の維持には 二つの可能性が考慮される。その一つは

Kupffer

細胞の増殖による数の増加によって対応 することで、これは図

61A

に示したように、89

Sr

投与後

2

週以降漸次

Kupffer

細胞の3

H-

サイミヂン標識率が増加し、細胞数の増加を起すことが実証された467)。もう一つの可能性 は単球系細胞以前の分化段階の骨髄前駆細胞からの補給である。筆者らはこの可能性を検 討する目的で、骨髄、肝臓、末梢血における

CFU-S、 CFU-M

の検出を行った。その結果、

89

Sr

投与誘発極単球減少症惹起摘脾マウスの骨髄では

CFU-S

CFU-M

は投与

2

週目で消 失し、末梢血中には投与時や対照マウスでも実験期間中

CFU-M

は検出されない。しかしな がら、肝臓や末梢血中には

CFU-S

が検出され、89

Sr

投与誘発極単球減少症惹起摘脾マウス では肝臓や末梢血の造血幹細胞あるいはそれに近い骨髄前駆細胞からの補給が考慮される

468)。骨髄からは造血幹細胞あるいは造血前駆細胞が末梢血中に放出され、末梢血を介して 末梢性組織に移住し、肝臓では造血幹細胞ないしそれに近い骨髄前駆細胞から

Kupffer

細 胞へと分化する過程が推定される(「SDF-1/CXCR-4 受容体欠損マウスならびに

SDF-1

2000

200 Kupffer細胞

0 1 2 3 4週 0 1 2 3 4 0 600

400 5000

4000 3000

1000

800 1000

0

赤脾髄

腹腔Mφ /mm2

/mm3

62 M-CSF、 GM-CSF

分泌性線維肉腫株

NSFA

移植マウスの末梢血中の 単球の変動 (A)と赤脾髄マクロファージ、腹腔マクロファージ、Kupffer 細 胞の数の変動 (B)。

A B

(7)

259

伝子導入マウス」の項(p. 309)参照)。

同様の極度単球減少症は

Tarling

ら(1982, 1987)によって考案されたマウスでの骨髄分割 放射線照射法448449) でも惹起され、この方法はマウスの内臓臓器や組織を避けて、全身の 骨系統ならびに骨髄のみを分割照射し、このため骨髄に極度の造血障害が惹起される。し かしながら、骨ならびに骨髄以外の内臓諸臓器や組織には放射線障害を起すことはなく、

肺胞マクロファージの数には変化が見られないことを報告した 448, 449)。この事実は

Volkman

らによって89

Sr

投与誘発極単球減少症惹起摘脾マウスで実証された成績と一致し、

組織マクロファージは末梢血からの単球の補給がなくとも維持され、これは局所組織にお ける組織マクロファージの増殖によって自己再生すると理解される448, 449)

(2)

非炎症性単球増多症惹起マウスを用いての組織マクロファージの検討

「MPS学説の実験的根拠、問題点ならびに批判」の「単球増多症惹起実験」の項(p. 90 ) で述べた如く、局所の刺激ないし催炎実験で単球が組織に侵入し、局所組織で滲出マクロ ファージに分化し、これが組織マクロファージに成熟すると言う

van Furth

ら(1970、

1972)

の主張は

MPS

学説の基本理念である。この過程が果たして炎症巣あるいは刺激状態にない 臓器、組織で起こるものかどかを検討する目的で筆者は

M-CSF

やその他の造血因子を産生 するマウス線維肉腫株

NSFA

のマウス背部皮下移植実験を行い、移植部位以外の諸臓器、

組織におけるマクロファージの数を経日的に検討した 1, 475477)。その結果、末梢血単球は 日数とともに増加する(図

62A

参照)。 しかし、腹腔、脾のマクロファージや

Kupffer

細胞

の数は

4

週間検索した限りでは、その間に際立った変動は起らなかった(図

62B

参照)。さ らに、筆者は

rhM-CSF

をマウスに連日皮下注射(2回/日、5μg/回)し、諸臓器、組織の組織 マクロファージの数の変化を検討した。

rhM-CSF

連日投与マウスの末梢血中の単球数は投

Kupffer細胞

Mφ(赤脾髄+白脾髄)

1500

1000

500

0 2 4 7 14

2500 2000

300 200 100 50

0 2 4 7 14 子宮内膜Mφ

腎間質Mφ

図 63

rhM-CSF

連日投与マウスの末梢血単球数の増加 (A)と諸臓器、組織

における組織マクロファージの数の変動 (B)。

/mm3

A

/mm2

B

(8)

260

与開始

2

日目にピークに増加し、さらに

7

日から再上昇した(図 63A参照)。赤脾髄と白脾 髄とのすべてに存在する脾マクロファージの数は末梢血単球の増加に伴った僅かな変動を 示したが、子宮内膜や腎間質のマクロファージ、肝マクロファージ(Kupffer 細胞と肝門脈 域マクロファージ)には殆ど変動は観察されなかった(図 63B参照)。このように、非炎症性 刺激による持続性単球増多症惹起マウス実験で、多くの臓器、組織にける組織マクロファ ージは末梢血単球の増加とは平行した変動はなく、むしろ組織マクロファージは末梢血中 の単球の増加とは無関係で、末梢血中の単球の持続性増加にも拘わらず諸臓器、組織では 組織マクロファージは比較的安定した細胞群を形成し、局所組織に炎症性刺激が加わらな い限り、マクロファージの組織内への浸潤と増加は起らないことが実証されている。

b)

遺伝子変異ないし改変マウスを用いてのマクロファージの分化とマクロファージの 増殖因子の解析

「MPS学説の提唱と概念」の解説での「MPSの分化と造血因子」の項(p. 86)で述べた如 く、マクロファージの分化には

IL-3、 GM-CSF、M-CSF

などの造血因子が作用し、さらに マクロファージ前駆細胞や造血幹細胞の増殖、分化には

CD34、c-kit(CD117)、SCF(stem cell factor)、PU.1

などが関与する。これらの造血因子の突然変異や遺伝子欠損ないし導入 マウスなどが作成され、マクロファージの分化、成熟に関する研究が進んでいる1251, 1252)。 以下遺伝子突然変異マウス、遺伝子導入マウス、さらに遺伝子欠損マウスにおけるマクロ ファージの発生、分化、成熟について今日まで明らかにされている研究成績を解説する。

(1)

マクロファージと

M-CSF

M-CSF

MPS

の前駆細胞のうちで

CFU-M、単芽球、前単球などの単球系細胞の増殖、

分化を促し、単球の分化、成熟、マクロファージの増殖、分化、成熟、活性化に関与する

432)。さらに、

M-CSF

はマクロファージに対して強力な遊走活性を有する1253, 1254)

M-CSF

は主として血管内皮細胞1255)、線維芽細胞486, 1256, 1257)、骨髄ストローマ細胞1258)、骨芽細

1259, 1260)、子宮内膜腺上皮細胞1261)、星膠細胞(アストロサイト)12621264)など種々の細胞

によって産生され、肝細胞からも微量ではあるが、産生され、細胞外に放出される1257)。末 梢血中を循環している液性

M-CSF (soluble M-CSF: sM-CSF)は主として血管内皮から産生、

放出され、

sM-CSF

は単球系細胞やマクロファージによって

M-CSF

受容体を介して細胞内 に取り込まれ、細胞内で分解される。以下マクロファージの増殖、分化、成熟に関しての 生体内での

M-CSF

の作用について遺伝子改変マウスを用いての研究成果を中心に述べる。

(a)

骨大理石病マウス(

op/op

マウス)を用いての組織マクロファージの検討

骨大理石病(marble bone disease: osteopetrosis)はヒトを始めマウス、ラットなどの哺乳 類でも発症し、本症には種々の病型がある。常染色体劣性遺伝を示し、全身の骨系統の骨 質が硬化する全身性疾患の発症するマウスは骨大理石病マウス(osteopetrotic (

op/op )

(9)

261

mouse)

と呼ばれ、本症に関しては以前から研究が行われてきた517, 518, 1265)

Op/op

マウス は正常同腹マウスに比べて、小型で、尾は短く、頭蓋は丸く、切歯が欠如し、全身骨系統 は

X

線撮影で骨硬化を示し、これらの変化は生後

10

日頃から見られるようになる(図 64A 参照)。このマウスでは、

M-CSF

の機能的活性が欠如し、骨大理石病を発症し(図

64B

参照)、

骨髄での

CFC-M

や単球系細胞の産生が障害され、末梢血中には単球が欠如する。1990年

西川伸一教授のグループは

op

遺伝子がほぼ

M-CSF

遺伝子座に相当し、その

ATG

の最初の コドンから

262

塩基対下流に点突然変異としてチミンの挿入が起り、その

21

塩基対下流に 停止コドンが入り、M-CSF の機能的活性を示すために必要な部分がコードされなくなり、

M-CSF

の活性を欠如することを明らかにした 517)。筆者らは西川伸一教授らと

op/op

マウ スを用いてのマクロファージの共同研究を行い、米国

Jackson

研究所

Shultz

博士からは

10

年を越える長期間に亘り

op/op

マウスの供給を受けた518520)

Op/op

マウスの骨系統の病理組織学的変化は図

64B

に示したように、骨皮質の極度の肥

厚と骨稜の増加、骨髄腔の狭小化、骨髄造血の極度の減少、消失を惹起し、骨大理石病の 所見を示す。この変化は破骨細胞の欠如によって骨吸収が障害されことが原因で、そのた め骨芽細胞によって産生された骨基質が進行性に沈着し、増加する。骨質の増加によって 骨髄腔は極度に狭小化し、造血細胞やマクロファージ前駆細胞は著しく減少するが、CFU-

GM

の減少程度は

CFU-S

CHU-M

の減少に比べて軽度である517, 518)

Op/op

マウスの脾 臓では

CFU-S、CFU-GM、CFU-M

は増加し、髄外造血を示す517, 518)。しかしながら、末 梢血中には単球は殆ど欠如しており、M-CSFの欠如によって末梢血中での単球の生存は不 可能で、循環中アポトーシスに堕ち、死滅する。

正常マウス骨髄細胞を

M-CSF

を分泌する正常マウス骨髄ストローマ細胞株

ST2

と共培 図 64

Op/op

マウスと骨大理石病の病理組織像。

A: op/op

マウス(左:白矢 印)と同腹正常マウス(右)。B:

op/op

マウスの骨髄 (TRAP染色)。骨皮質の極 度の肥厚と骨稜の増加によって骨髄腔は極めて狭小化し、骨髄造血の減少、

消失を示す。TRAP陽性細胞は欠如し、破骨細胞の発生は見られない。

A B

(10)

262

養すると、1週間以降は殆どが

2

週目ではそのすべてがマクロファージに分化、成熟する。

これに対して、

op/op

マウスの肺臓から採取した線維芽細胞株を用いて正常マウスの骨髄細 胞を共培養すると、2 週間を経過してもその殆どは単球の分化段階で分化を停止し、

op/op

マウスでは

M-CSF

の欠如によって単球からマクロファージへの分化が障害されている486)。 しかし、僅かに

5%程度ながらマクロファージが発生する。このマクロファージはいずれも

未熟で、小型、細胞内小器官の発達に乏しく、細胞突起も貧弱、PO陰性である(図

65A

参 照)。正常マウス骨髄細胞を

IL-3、レコンビナント・マウス GM-CSF (recombinant murine GM-CSF: rmGM-CSF

)、

rhM-CFS

の 存 在 下 で 寒 天 培 養 す る と 、 マ ク ロ フ ァ ー ジ が

発生し、超微形態学的には、

op/op

肺線維芽細胞株との共培養で出現した未熟マクロファー ジに類似する(図

65B

参照)。これは

op/op

マウスでは

M-CSF

の産生が欠如しているため単 球は生存出来ず、アポトースに墜ち入り、死滅し、マクロファージには分化しないが、産 生障害のない

GM-CSF

IL-3

などの造血因子によって単球系細胞以前の分化段階にある マクロファージ前駆細胞から分化したマクロファージと理解される486)

Feugier

ら( 2005 )

op/op

マウスで樹立した骨髄ストローマ細胞株(OP-9)で

CD34

陽性骨髄細胞を長期間培

養によって、筆者らの

op/op

マウス肺線維芽細胞株と同様に、

CD14

陽性の単球がマクロフ ァージには分化する能力を欠如していることを実証した1266)

Op/op

マウスの諸臓器、組織におけるマクロファージを抗マウス・マクロファージ・モノ

クロナール抗体

F4/80

を用いて検討すると、全身各所の諸臓器、組織にはマクロファージ が存在し、図

66

は同腹正常マウスに対する

op/op

マウスの身体各所の組織マクロファージ

図 65 Op/op マウス肺線維芽細胞株の共培養あるいは

rmGM-CSF

存在下 での培養

2

週間後に正常マウス骨髄細胞から発生、分化したマクロファージ の超微形態。A:

op/op

マウス肺線維芽細胞株との共培養。B: rmGM-CSF 存 在下での培養。

A、 B

のマクロファージはともに未熟で、

PO

活性の発現は見 られず、超微形態上類似している。

A B

(11)

263

の比率で示したもので、脳では

60%、脾臓では 50%、骨髄では 40%、肝臓や皮膚では約 30%、

腎臓では約

27%で、その他の組織では低い比率を示した

486)。このように、

op/op

マウスで は同腹正常マウスに比べて、組織マクロファージの減少が確認され、それらは組織マクロ ファージを認識する抗マウス・マクロファージ・モノクロナール抗体

BM8

陽性を示した。

67

Kupffer

細胞に示したように、一般的に

op/op

マウスの組織マクロファージは超微 形態学的にも未熟である。Jiangら(2000)は

LPS

投与によって

op/op

マウスの肝臓に誘導 さてた

CD14

陽性単球は野生型マウスに比べて、低下していることを報告した 1267)。これ らの事実は末梢血中に単球が減少、欠如し、脾臓での髄外造血が見られるものの骨髄にお

ける

CFU-M

を含む単球系細胞の発達が障害され、さらに単球のマクロファージへの分化、

成熟が障害されている。それにも拘わらず、

op/op

マウスでは各所組織において未熟な組織 マクロファージの発達することは組織マクロファージが単球系細胞を経由しない分化経路 によって発生することを意味している486)

Cecchini

ら(1994)は生後

3

ヶ月間における

op/op

マウスの組織マクロファージの変化を 検討し、生後

2

日では、骨格筋、腱、滑膜などでは組織マクロファージは欠損し、皮膚、

腹腔、腎、骨髄では同腹正常マウスに比べて著しく減少し、これらのマクロファージの多 くは生

3

ヵ月でも欠損あるいは減少が実証された1268)。生後

2

週でも副腎、膀胱、唾液腺 などでマクロファージは減少するが、生後

3

ヵ月では軽度ながら増加する。骨髄ではマク ロファージが週齢とともに増加し、生後

3

ヵ月では約

34%、その後筆者らの提示した同腹

正常マウスとのほぼ同等の比率の

50%程度になった

1268)。これに対して、生下時

op/op

マ ウスの

Kupffer

細胞は

81%にまで発達し、同腹正常マウスよりは 20%程度減少を示すが、

その後この比率は漸次減少し、生後

3

ヵ月では

30%にまでになる。その他、脾臓、胃腸管

粘膜でのマクロファージは生下時では減少があっても極く軽微で、胃腸管粘膜マクロファ

肝 脾 骨髄 腎 皮膚 子宮 卵巣 脳

図 66 同腹正常マウスに対する

op/op

マウスの諸臓器、組織における組織マ クロファージの比率。

70 60 50 40 30 20 10

(12)

264

ージではその後変化が見られず、同腹正常マウスでの増加に比べて数の変化は軽度である

1268)。生下時

op/op

マウスは同腹正常マウスの新生仔と同様に骨髄内の単球は

5%程度であ

るが、骨大理石病が発症した

2

週後には

72%に著増し、その後は同腹正常マウスのレベル

を維持し、骨髄での単球産生は障害されない。しかし、骨大理石病の骨硬化によって骨髄 腔は極度に減少し、その結果骨髄での単球産生は減少し、同時に

CFU-M

や単球系細胞の発 達ならびに

CHU-S

は減少し、

CFU-GM

の減少が起る。一方脾臓では髄外造血が惹起され、

CFU-S、CFU-GM、CFU-M

は増加する 1268)。これに対して、末梢血中には単球には激減 し、欠如する。これは

op/op

マウスでは

M-CSF

の完全欠損のため単球が末梢血や組織では 生存出来ず、アポトーシスによって死滅し、同時に単球からマクロファージへの分化、成 熟が障害され、単球ならびに単球由来のマクロファージは組織では欠如する。このように、

op/op

マウスでは、単球が欠如し、骨髄では単球系細胞の発達が障害され、単球系マクロフ

ァージや破骨細胞は欠如する他に、正常同腹マウスでは脾濾胞周辺帯に存在する辺縁性メ タル好性マクロファージと辺縁帯マクロファージ、子宮内膜、卵管や卵巣マクロファージ、

滑膜

A

細胞なども

op/op

マウスでは欠如している。しかし、脳ではミクログリアは海馬角 では減少はなく、その他の部位では減少が見られた。脾臓では、赤脾髄マクロファージの 減少は極めて少ない。これに対して、われわれの検索によると、これらの組織マクロファ ージの減少に対して樹状細胞には減少や欠損はなく、

op/op

マウスでの樹状細胞の発達はほ ぼ正常で、軽度の低下があるが、基本的には樹状細胞の発生障害は見られないことを報告 した529, 1269,1270)

筆者らの行った生後

4

ヶ月の

op/op

マウスに対する

rhM-CSF

の連日投与によるマクロフ ァージの数的変化は

Cecchini

ら(1994)1268)、Ryanら(2001)1256)

Dai

ら(2004)1271)の研究 成果にほぼ一致し、末梢血単球や骨髄内の単球系細胞、単球系マクロファージや破骨細胞 は速やかに

rhM-CSF

に反応し、これらの細胞は投与後

2~3

日で正常同腹マウスのマクロ ファージの数を超え、比率では

100%以上のレベルにまで回復する

486)。しかしながら、

op/op

マウスの脾濾胞の辺縁性メタル好性マクロファージや辺縁帯マクロファージ、子宮内膜や 卵巣マクロファージの

rhM-CSF

に対する反応は遅く、正常同腹マウスでのレベルまでに達

図 67

Op/op

マウスの肝類洞内に おける

Kupffer

細胞の超微形態。

核は類円形、大型、正核質性で、

細胞突起に乏しく、核/原形質比は

ほぼ

1、発達の貧弱な原形質内に

は空胞や多房性層状構造体などラ イソゾーム関連構造小体が多数見 られる。

(13)

265

するのには期間を要し、子宮内膜や卵巣マクロファージなどは殆ど反応しない。筆者はこ れらの脾辺縁性メタル好性ないし脾辺縁帯マクロファージ、子宮内膜や卵巣マクロファー ジを

M-CSF

遅反応性(あるいは低(無)反応性)マクロファージ(M-CSF-late, low or non-

responsive macrophages)と呼んだ

1, 475477)。これらのマクロファージに対して、

op/op

マ ウスのミクログリア、赤脾髄マクロファージを始め諸臓器、組織に存在する未熟な組織マ クロファージは

M-CFS

の欠損状態で発生することから、筆者はこれらのマクロファージを

M-CSF

非依存性マクロファージ(M-CSF-independent macrophages)と命名し、GM-CSF あるいは

IL-3

との共培養で発生するマクロファージに類似するので

GM-CSF

あるいは

IL-3

依存性マクロファージ(GM-CSF- or IL-3-dependent macrophages)とも呼んだ。これ

らの

op/op

マクロファージは

M-CSF

の作用によることなく発達し、単球系細胞以前の分化

段階のマクロファージ前駆細胞から派生することが考慮される。

筆者らは

M-CSF

反応性(あるいは

M-CSF

依存性)細胞ないしマクロファージ(M-CSF-

responsive (or M-CSF–dependent) cells or macrophages)と呼んだ。 Op/op

マウスの末梢血 中での単球数は

rhM-CSF

投与後

3

日をピークに増加し、その後

7

日から投与期間中同腹正 常マウスの末梢血中単球数にほぼ相当する一定のレベルを保持する(図 68B参照)。しかし、

これらの組織マクロファージのうちで正常同腹マウスの

30%程度に減少する Kupffer

細胞 の

rhM-CSF

に対する反応を検討すると、rhM-CSF 連日投与開始後

5

日でピークに達し、

以降投与期間中はそのレベルを維持する(図 68A参照)519)。その過程で、

rhM-CSF

投与後

2

日をピークに

Kupffer

細胞の3

H-サイミヂン標識率が上昇し、60%に達し、7

日ではほぼ同 腹正常マウスの肝

Kupffer

細胞の3

H-サイミヂン標識率に匹敵する約 7%程度のレベルに減

少し、その後

5%前後を維持する(図 68C

参照)。この過程で、正常同腹マウスに比べて約

30%

に減少している

op/op

マウスの未熟

Kupffer

細胞は

rhM-CSF

投与に反応し、投与後

2

日を

%

0 57 14 21 28日 0 3 7 14 21 280 2 7 14 21 28 1500

1000

500

60

40

20

/mm2 2000 /mm3

C B

A

1200 1000 800 600 400 200 0

図 68

rhM-CSF

の連日投与による

op/op

マウスの肝

Kupffer

細胞数の変動、末 梢血中の単球数の変動、Kupffer細胞の3

H-サイミヂン標識率の変化。

A: Kupffer

細胞数。B: 末梢血単球数。C: Kupffer細胞の3

H-サイミヂン標識率

(14)

266

ピークに増殖し、核周や粗面小胞体に

PO

活性が発現し、投与後

1~2

日には

Kupffer

細胞 へと成熟する。この頃から

rhM-CSF

連日投与によって

op/op

マウスでは投与後

3

日をピー クに末梢血中に増加する単球由来のマクロファージが加わり、

PO

陰性成熟マクロファージ の形状を取る。このように、

op/op

マウスへの

rhM-CSF

連日投与によって末梢血の単球数 がピークに達するのは既存の未熟

Kupffer

細胞の増殖がピークに達する時期より

1

日程度 後れ、末梢血から補給された単球が肝臓でマクロファージに分化するのにはさらに時間を 要する。従って、rhM-CSFの連日投与によってまず既存の未熟

Kupffer

細胞が分裂、増殖 し、自己再生によって

Kupffer

細胞群を同腹正常マウスのレベルまで回復し、成熟する。

その不足を補う形で末梢血から単球が補給され、肝類洞内でマクロファージに分化し、補 充される。

図 69は

op/op

マウスに

rhM-CSF

4

週間連日投与し、肝

Kupffer

細胞、赤脾髄マクロ ファージ、骨髄マクロファージ、肺マクロファージ、子宮内膜や卵巣マクロファージの正 常同腹マウスに対する比率を示したものである。 rhM-CSF連日投与後

Kupffer

細胞は

7

日をピークにその比率は正常同腹マウスの約

2.5

倍に増加し、

2

週後にはほぼ正常同腹マウ スと同程度に成るが、rhM-CSFの投与を中止すると、漸次緩やかに減少する。赤脾髄マク ロファージは

rhM-CSF

の投与によって

op/op

マウスでは正常同腹マウスを上回る増加が見 られるが、投与中止後漸次減少し、

op/op

マウスの投与前のレベルにまで減少する。しかし、

骨髄マクロファージや子宮内膜マクロファージの変動は少ない。

0 1 3 7 14 21 28 1 3 7 14 21 28 200

150

100

50

投与中止 投与開始

%

69 4

週間

rhM-CSF

連日投与と投与中止後の

op/op

マウスの諸臓器、

組織におけるマクロファージの同腹正常マウスに対する比率の変化。

Kupffer細胞( )、赤脾髄マクロファージ( )、骨髄マクロファージ( )、

子宮内膜マクロファージ ( )。

(15)

267

Op/op

マウスの赤脾髄マクロファージや肺胞マクロファージは

rhM-CSF

連日投与後

1~

2

日をピークに3

H-サイミジン標識率が増加し、 Kupffer

細胞と同様の増殖パターンを示し、

Kupffer

細胞以外でも

op/op

マウスの未熟組織マクロファージは

rhM-CSF

の投与によっ て増殖し、分化、成熟する(図

70

参照)。この過程に続いて投与後

3

日をピークに末梢血中 に増加する単球が組織内に移住し、単球由来のマクロファージが組織内に出現する。この マクロファージ群は単球由来のマクロファージ(monocyte-derived macrophages)、単球系 マクロファージ(monocyte/macrophages)あるいは炎症性マクロファージ(inflammatory

macrophages)とも呼ばれ、 M-CSF

依存性マクロファージ

(M-CSF-dependent macro- phages)に帰属する。この単球系マクロファージ群は炎症、感染症や自己免疫疾患などの刺

激状態に関与する519)

Op/op

マウスで単球が末梢血から組織に補給され、局所でマクロファージに分化し、マク

ロファージの減少を補充する過程は

Lagasse & Weismann (1997)によってヒト bcl-2

を組

み込んだ

op/op

マウスの単球の研究で実証されている1272)。彼らは単球と好中球との骨髄単

球系細胞に発現する細胞内カルシウム結合蛋白

MRP8

にヒト

bcl-2

遺伝子を組み込んだ

hMRPbcl-2

遺伝子導入マウスを作製した。この遺伝子導入マウスでは、単球に

hbcl-2

遺伝

子が発現し、M-CSFの欠損状態でも単球はアポトーシスを免れ、長期間の生存する単球の 追跡が可能である。この

hMRPbcl-2

遺伝子導入マウスの単球と好中球とでは

hBcl-2

MRP8

とがともに発現するのに対して、組織マクロファージには

hBcl-2

MRP8

は発現 せず、組織マクロファージと単球とでは

hBcl—2

とMRP8との発現は異なる1272)。彼らは

hMRP8bcl-2

遺伝子導入マウスを

o/op

マウスと交配させて、重複遺伝子改変

op/ophMRP8 bcl-2

マウスを作製した 1272)。この

op/ophMRP8bcl-2

マウスでは、

hbcl-2

が組み込まれた

80 60 60

40

20

0

0 2 3 7 14 21 28

Kupffer

細胞

赤脾髄

肺胞

図 70

rhM-CSF

連日投与による

op/op

マウスの肝

Kupffer

細胞、赤脾髄マクロ ファージならびに肺胞マクロファージの3

H-

サイミジン標識率の変動。

%

(16)

268

単球は

M-CSF

の欠損にも拘わらず、アポトーシスを免れ、生存し、血中でも増加する。末

梢血中に増加した単球は全身各所の組織に移住し、単球は局所組織では増殖することなく、

マクロファージに分化、成熟する。彼らはこの事実を単球の組織マクロファージへの分化、

成熟過程と解釈し、

op/op

マウスで減少した組織マクロファージは

M-CSF

欠損状態でも鎖 依存する

hbcl-2

導入単球の補給に因ると主張した。しかし、

op/ophMRP8bcl-2

マウスでの 腹腔マクロファージの回復や骨大理石病の改善は不完全で、これは全身各所組織での組織 マクロファージの数の減少と同時に、破骨細胞の分化や増殖の欠如に因るものである1272)。 さらに、

hMRP8bcl-2

マウスで見られた単球と組織マクロファージとでの

hBcl-2

MRP8

との発現の差異と併せて、

op/ophMRP8bcl-2

マウスでも増加、回復したマクロファージは

MRP8

を発現せず、末梢血中に増加した

MRP8

発現単球が組織に移住するが、マクロファ ージは

MRP8

を発現せず、

MRP8

陽性の単球は

MRP8

陰性の組織マクロファージやその類 縁細胞へとは分化、成熟しない。

以上の事実から

op/op

マウスにおけるマクロファージの減少は

M-CSF

の欠損による組織 マクロファージの増殖能の低下と単球系マクロファージの欠損によるものである。この自 然発症遺伝子突然変異マウスは切歯が欠如し、正常同腹マウスに比較して食物摂取の障害 による栄養障害の可能性が考慮される。この影響を検討するため、筆者らは正常マウスを 低蛋白食(5%カゼイン食)で

4

週間飼育し、全身各所の組織マクロファージの数と

M-CSF

の 発現を検討した 1273)。その結果、低蛋白食飼育マウスでは

Kupffer

細胞を含む全身各所の 組織マクロファージの数は減少し、組織マクロファージは円形小型化し、細胞突起が減少 し、M-CSFの発現の低下と局所組織での

M-CSF

産生低下が見られ、骨髄での単球系細胞 の発達障害、末梢血中の単球減少、組織での単球由来のマクロファージの減少などが実証

された1273)。このように、低蛋白症発症状態は

M-CSF

の局所組織での産生低下をもたらし、

これは組織マクロファージの増殖能の低下ならびに単球系細胞の発達障害、血中単球なら びに単球由来のマクロファージの減少を惹起する。

Op/op

マウスが老化すると、大理石病の病態が改善する520, 1274, 1275)。筆者らは

op/op

マ ウスでは老化に伴って骨組織での骨芽細胞を始め種々の細胞から

GM-CSF

IL-3

との産 生が亢進し、その結果、単核性の酒石酸耐性酸ホスファターゼ(tartrate-resistant acid

phosphatase: TRAP)染色陽性の前破骨細胞が出現し、この細胞は前破骨細胞で、骨吸収機

能を発揮し、骨質が吸収され、骨大理石病が改善する520)。しかし、Wiktor-Jedrzejczakら

(1994)によると op/op

マウスの

3

週間

rmGM-CSF

の大量(20~40μg/日)連日投与実験では、

骨大理石病の改善、破骨細胞の出現や切歯歯芽の発育などの骨大理石病には何等変化が惹 起されなかった1276)。そこで、筆者らは老化

op/op

マウスに見られる骨大理石病の改善 が果たして

GM-CSF

IL-3

によるものか否かを検索するとめ、骨大理石病の顕著な若年 期の

op/op

マウスに

4

週間に亘りリコンビナント・マウス GM-CSF(rmGM-CSF)を少量(5 μg/日)連日投与し、さらに

IL-3

の単独連日投与、あるいは

rmGM-CSF

ILL-3

の併用連 日投与を行い、骨組織の変化を検索した520)。その結果、rmGM-CSFや

IL-3

の単独あるい

(17)

269

は両者の併用連日投与によって投与期間に比例して若年

op/op

マウスには骨大理石病が改 善され、改善の程度は

IL-3、rmGM-CSF、両者併用投与の順に顕著で、M-CSF

の欠如に よって、末梢血中に単球が欠如しているにも拘わらず単核性の

TRAP

陽性前破骨細胞の増 加を示し、超微形態学的に単核性破骨細胞を示し、刷子縁を有し、骨吸収を営んでいる(図

71

参照)。この事実は

GM-CFC

あるいはそれ以前の分化段階の骨髄前駆細胞から単球系細 胞の分化段階を経由せずに前破骨細胞に分化することを提示している。

さらに、筆者らは

rmGM-CSF

あるいは

IL-3

の単独ならびに両者の併用連日投与を行っ

op/op

マウスの全身各所の諸臓器、組織におけるマクロファージ数の検索結果では、肝マ

クロファージの数は正常同腹マウスを凌駕し、骨髄、脾や腸間膜リンパ節のマクロファー ジはほぼ同腹正常マウスのレベルあるいはそれに近い状態に増加した 520)。しかし、

rmGM-CSF

IL-3

の単独、ないし両者併用の連日投与群の間には程度の差こそあれ、際

立った差異は見られなかった。これらの組織マクロファージの増加は

Wiktor-Jedrzejczak

ら(1994)がすでに報告した

rmGM-CSF

大量連日投与

op/op

マウスで実証した研究成果1276) におおむね符合する520)。筆者らの行った検討では、GM-CSFや

IL-3

連日投与

op/op

マウ スに比べて、程度は低いが、年齢

1

3

ヵ月以降の老齢

op/op

マウスでも全身各所の組織 マクロファージには若年

op/op

マウスよりも有意の増加が見られた520)

Shibata

ら (2001)

op/op

マウスの老化に伴い生後

20

日の若年期に比較して

4

ヶ月を過ぎると、肺胞マクロ

ファージの数は増加し、この増加は

IL-3

の発現を相関し、

MMP (matrix metalloproteinase)

の発現を伴うことを報告した1277)

Begg

ら (1993)も

op/op

マウスの老齢化とともに骨大理 石病が改善し、それに伴い骨髄内のマクロファージの数の増加を報告した1274, 1275)。これら の

op/op

マウスの老化に伴うマクロファージの増加は

op/op -GM-CSF

重複欠損マウスでは 惹起されず、

op/op

マウスで同時に

GM-CSF

が欠如していると、骨髄マクロファージは増 加しないことが明らかにされた1278, 1279)。このことから、骨髄マクロファージは

GM-CSF

あるいは

IL-3

依存性マクロファージであると言える。これらの事実は

M-CSF

の完全欠如

図 71

rmGM-CSF

の連日投与後

1

週目

op/op

マウスの大腿骨に発生した単核

性破骨細胞(前破骨細胞)の超微形態。原形 質内には小胞、液胞の発達が著明で、矢印 は刷子縁(brush border)。Bは骨基質、M は骨髄腔を示す。

M

B

(18)

270

している

op/op

マウスでは、単球からマクロファージへの分化が障害されているにも拘わら

ず、

GM-CSF

IL-3

によって組織マクロファージは単球を経由することなく分化、成熟す

ることを物語る。このことはすでに述べた89

Sr

投与や放射線分割照射による極度単球減少 症惹起マウスや非炎症性単球増多症惹起マウスでの研究成果で示唆されたマクロファージ の単球由来以外の経路の存在に対してさらに根拠を与えるものである。

以上述べた知見に基づき、筆者は

M-CSF

の反応性からマクロファージは

M-CSF

依存性 マクロファージ

M-CSF-dependent macrophages)、M-CSF

非依存性マクロファージ

(M-CSF-independent macrophages)と M-CSF

低(無)反応性マクロファージ(M-CSF-low or

non-responsive macrophages)とに区別した

475477)

(表 16

参照)。M-CSF非依存性マクロ ファージはさらに

GM-CSF、 IL-3、 GM-CSF/IL-3

に依存するマクロファージが存在し、こ の種のマクロファージは単球系細胞の分化経路を経由することはなく、単球/マクロファー ジとは異なった別の分化径路を辿るもので、無刺激定常状態で発達する組織マクロファー ジは造血幹細胞ないしそれに近い造血前駆細胞から単球系細胞を経由せずに派生すると見 做される。

(b) M-CSF

受容体遺伝子欠損マウス、

M-CSF

遺伝子導入マウスや

op/op

重複遺伝子改変マ ウスを用いてのマクロファージの検討

Op/op

マウスでの組織マクロファージの減少と単球系マクロファージの欠如は

Dai

(2002)によって作製された M-CSF

受容体(M-CSFR: CD115)遺伝子欠損マウス(

M-CSFR

―/―

マウス)でも実証され、

M-CSFR

―/―マウスは骨大理石病の発症、切歯の欠如、短躯、丸型頭 蓋、短尾など

op/op

マウスとほぼ同様の身体的異常を示し、その程度は

op/op

マウスよりも 重篤である521)

M-CSFR

―/―マウスは正常同腹マウス(

M-CSFR

+/―

M-CSFR

+/+

)に比較して

血清中の

M-CSF

20

倍にも増量し、これは

M-CSFR

の完全欠損によって

M-CSFR

―/―

16 M-CSF

への反応性から

op/op

マウスのマクロファージならびに 類縁細胞の分類

M-CSF非依存性マクロファージ (op/opマウスの諸臓器、組織に存在):

赤脾髄、骨髄、脳、肺臓、肝臓。リンパ組織、皮膚などの未熟マクロフ ァージ、ミクログリア、樹状細胞

M-CSF依存性細胞ないしマクロファージ (op/opマウスで欠損し、M-CSF

に反応し、発生する細胞群):単球系細胞、単球、単球由来マクロファー ジ、破骨細胞

M-CSF低(無)反応性:

脾濾胞周辺帯の辺縁帯マクロファージ、辺縁性メタル好性マクロファー ジ、腎間質マクロファージ、子宮内膜、卵管や卵巣のマクロファージ

(19)

271

ウスで産生、分泌された

M-CSF

が細胞に取り込まれず、細胞内で利用、分解、処理されな いことによる521)。脾臓では

op/op

マウスと同様に髄外造血が起り、造血前駆細胞や高増殖 能性コロニー形成細胞(HPP-CFC: high proliferative potential colony-forming cells)が著 増する521)。しかし、

M-CSFR

-―/―マウスの末梢血単球は

op/op

マウスと同様に極度に減少し、

M-CSF

を取り込み、利用できなので、末梢血中で単球は生存出来ない。全身各所の臓器、

組織でのマクロファージは減少し、その減少の程度は組織によって異なるが、M-CSFR の 欠損のため

M-CSF

が細胞内に取り込まれず、利用されず、M-CSFR 依存性マクロファー ジの増殖と生存が阻害される。そのため、組織マクロファージは減少するが、

M-CSFR

―/―

マウスの各所組織には

op/op

マウスと同様に未熟マクロファージが発生し、

M-CSFR

―/―

ウスと

op/op

マウスとの間に組織マクロファージの発達程度には際立った相違はない 521)

この事実は

M-CSFR

が欠如しているため、血中に

M-CSF

の著増が起るのにも拘わらず、

単球系細胞の分化、増殖や生存が障害され、血中で単球は生存出来ず、激減する。同時に、

M-CSFR

―/―マウスでは

op/op

マウスと同様に単球からのマクロファージへの分化が起らず、

単球由来のマクロファージは組織内に欠如し、加えて、M-CSFが利用されないため組織マ クロファージの増殖も障害され、

M-CSFR

―/―マウスでも組織マクロファージは減少する521)。 しかしながら、

M-CSFR

―/―マウスでも

op/op

マウスと同様に未熟な組織マクロファージが 発 生 し 、 こ の マ ク ロ フ ァ ー ジ は

M-CSF/M-CSFR

非 依 存 性 マ ク ロ フ ァ ー ジ

(M-CSF/M-CSFR-independent macrophages)である。さらに、 M-CSFR

は骨髄前駆細胞や

HPP-CFC

の調節を行っており、

M-CSF/M-CSFR

HPP-CFC

CFC-mix (CFC-GEMM)

の増殖と分化とを抑制する521, 1280)

M-CSF

遺伝子導入マウスでは

M-CSF

が過剰発現し、血中に

M-CSF

が同腹正常マウス の約

2~3

倍に増量し、肝臓でのマクロファージの数も約

3

倍に増加する1282)。しかし、腹 腔、脾臓、腎臓のマクロファージの数は正常同腹マウスとほぼ同数で、増加はみられない

1281)

Sasumono

ら(2003)は

c- fms

遺伝子にトロホブラストとマクロファージに発現する増

強 緑 色 蛍 光 蛋 白

(enhanced green fluorescent protein: EGFP)

遺 伝 子 を 組 み 込 み 、

c -fms- EGFP

導入遺伝子を作製した。この導入遺伝子を用いて

c- fms- EGFP

遺伝子導入マ ウスを作製し、マウスの生体内での

c -fms

発現細胞を検索した1282)。この導入遺伝子はトロ ホブラストや卵黄嚢に初発するマクロファージなどに発現し、マクロファージを含む

MPS

帰属細胞の検討上マーカーとして

F4/80

陽性マクロファージの究明に有用であると主張し

1282)。さらに、彼らは筆者の主張と同様に

F4/80

陽性マクロファージの中には

M-CSF

依存性マクロファージが存在することを指摘している 1282)。 M-CSF を添加した培養実験 で、マウスの好中性顆粒球が

M-CSFR

ならびに種々のマクロファージ特異的転写産物を発 現し、マクロファージへと分化転換することが報告されている1283)

M-CSF

は生体各所の臓器、組織の種々の細胞で産生、分泌され(分泌型、

secreted M-CSF)、

細胞表面に局在し(細胞表面型あるいは膜性型

M-CSF、cell surface or membranous form:

csM-CSF)、あるいは細胞外に分泌され、末梢血中にも検出される(液性型、soluble form:

(20)

272

sM-CSF)。 Stanley

一派の

Ryan

ら(2001)1256)

Dai

ら(2004) 1271)はマウスに全長

M-CSF

遺 伝子あるいは

csM-CSF

遺伝子を導入し、全長

M-CSF

遺伝子導入マウス(TgC)と

csM-CSF

遺伝子導入マウス(TgCS)を作製した。さらに、これらの遺伝子導入マウスと

op/op

マウス とを交配させて、

op/op -TgC

マウスと

op/op- TgCSmマウスを作製し、これら二重遺伝子改

変マウスと月齢

3

ヶ月の

op/op

マウスに

rhM-CSF

を連日投与した

rhM-CSF- op/op

マウス とを比較検討した。

Op/op- TgC

マウスでは、

op/op

マウスに発症したすべての病態は

M-CSF

の産生によって完全に回復し、単球系細胞、 単球系マクロファージならびに組織マクロフ

ァージの発達、分化、成熟、増殖は正常化し、

op/op

マウスに発症した特有の体形や骨格の 異常は完全に消退した。これに対して、Dai ら(2004)が作製した

op/op- TgCS

マウスは

csM-CSF

を産生するが、

op/op

マウスに発症した骨大理石病の修復は不完全であり、その

修復程度には多少の相違はあるが、rhM-CSF

-op/op

マウスとほぼ同様の修復が証明された

1271)。しかし、Yao ら(2003)の作製した

op/op- TgCS

マウスでは、骨芽細胞の

csM-CSF

生によって破骨細胞が増加し、骨大理石病は改善した1284)

他方、

op/op- TgCS

マウスの末梢血単球は正常同腹マウスと大差なく、減少は見られない

1256, 1271, 1281)。さらに、

op/op- TgCS

マウスの成熟肝臓ではマクロファージの改善はなく、脾

臓、腹腔、腎間質、副腎のマクロファージの回復もまた部分的であった1256, 1271)。これらの 事実から、M-CSF の作用には、csM-CSF のみならず分泌型

M-CSF

の存在が不可欠で、

csM-CSF/M-CSFR

複合体のマクロファージによる取り込みが重視される。

(c)

抗マウス

M-CSF

抗体連日投与マウスにおけるマクロファージの解析

Wei

ら(2005)は抗マウス

M-CSF

抗体を単離し、生体内での半減期を増強させるため

recombinant Fab’ fragment

40kDa

ポリエチレン・グリコール分子(PEG)を付着させて 修飾し、抗マウス

M-CSF-Fab’ PEG

抗体を作製した。抗マウス

M-CSF-Fab’ PEG

抗体は

い1

表 17 M-CSF連日投与、M-CSF遺伝子導入マウス、抗マウス

M-CSF

抗体連日投与 や老齢化による

op/op

マウスの病態ないし組織マクロファージの改善

op/op op/op TgC op/op TgCS rhM-CSF/ op/op

抗体投与 老化

op/op

骨大理石病 + ― 部分的改善 部分的改善

部分的改善 切歯欠損 + ― ― +

― 発育障害 + ― ― ― + + 破骨細胞欠損 + ― ― ― + 部分的改善 血中単球欠損 + ― ―

― + + 組織

Mφの減少

改善*

改善* + 改善**

*

臓器、組織によってMφの改善が異なる。** 肺臓、骨髄、脾臓などで改善

(21)

273

マウス

M-CSF

と結合し、中和することから、この抗体をマウスに生後半日から

57.5

日に

亘り連日投与し、検討した1285)。その結果、抗マウス

M-CSF

抗体の投与によってマウスの 成長、発育障害、破骨細胞の数の減少、骨大理石病の発症、骨髄、肝臓、皮膚、滑膜、腎 臓のマクロファージの減少を惹起し、

op/op

マウスや

M-CSFR

―/―マウスの示した病態にほ ぼ一致することを明らかにされた1285)。この

M-CSF

抗体はマウスで産生された

M-CSF

の 分泌型、細胞表面型、液性型のアイソフォームすべてを中和し、ある組織では抗体の投与 によってマクロファージの発生や分化が障害されるが、他の組織ではマクロファージの数 が漸次減少し、マクロファージの維持はブロックされる。これは抗マウス

M-CSF-Fab’ PEG

抗体によって生体内で産生、分泌された

M-CSF

が中和され、例えば、滑膜

A

細胞は完全 に消失する。

このように、組織内でのマクロファージの維持は

M-CSF

のアイソフォームよって異なり、

抗マウス

M-CSF Fab’ PEG

抗体連日投与マウスでは概ね

op/op

マウスや

M-CSFR

―/―マウス と同様の骨大理石病を含む種々の病態を発症し、マクロファージの減少や欠損を惹起する。

しかし、マクロファージの減少は組織によっては差異が見られる。

Op/op

マウスに

rhM-CSF

を連日投与した

rhM-CSF op/op

マウスでは、組織によってマクロファージの数は回復する。

さらに、

op/op

マウスに

M-CSF

全長遺伝子(TgC)あるいは細胞表面型

M-CSF

遺伝子(TgCS) を組み込んだ重複遺伝子導入マウス(

op/op- TgC

マウス、

op/op- TgCS

マウス)の研究1256, 1271)

によると、

op/op- TgC

マウスでは、M-CSF が組織に発現し、M-CSF が組織細胞で産生、

分泌され、細胞表面型

M-CSF

も正常に発現する。その結果、この重複遺伝子導入マウスで

は、血中

M-CSF

値、骨大理石病、組織マクロファージの数、造血細胞の異常が正常化し、

op/op

マウスの病態は完全に消失する。しかし、

op/op- TgCS

マウスでは、

op/op

マウスの骨 大理石病は完全には回復せず、rhM-CSF

op/op

マウスで見られた改善状態におおむね符合 する(表

17

参照)。しかしながら、

op/op

マウスや抗マウス

M-CSF Fab’

抗体連日投与マウ

ス、

M-CSFR

―/―マウスでは

M-CSF

の欠損、低下ならびに取り込み障害によってマクロフ

ァージの発生は障害され、この事実は正常マウスにおける

M-CSF

依存性マクロファージ の存在を実証しており、これらは単球系細胞を経由して分化する単球由来のマクロファー ジに相当する。これに対して、単球由来のマクロファージとは異なる

M-CSF

非依存性マク ロファージ群の存在も

op/op

マウスを始め

M-CSFR

―/―マウスなどの遺伝子改変マウスや類 似病態の発症するマウスモデルの検討からも明確である。次項ではこれらの

M-CSF

非依存 性マクロファージを中心にして単球由来以外のマクロファージの発生や分化過程に関して 検討する。

(2)

マクロファージの分化と

GM-CSF

、その他の造血因子ないし接着因子の関与

M-CSF

以外の造血因子に関しては、「MPSの増殖、分化と造血因子」の項(p. 86 )で述べ た如く、GM-CSFや

IL-3

がマクロファージやその前駆細胞に作用し、増殖と分化を促す。

GM-CSF

GM-CSF

受容体(GM-CSFR)に結合し、細胞内に取り込まれる。GM-CSFRは

表 17  M-CSF 連日投与、M-CSF 遺伝子導入マウス、抗マウス M-CSF  抗体連日投与        や老齢化による op/op マウスの病態ないし組織マクロファージの改善

参照

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