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Academic year: 2021

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視覚に障害のある理学療法士の職場における勤務状況の実態と課題(第2報)

-職場における事務処理の実態一

理学療法学科教授松澤正・筑波大学心身障害学系香川邦生

要旨:視覚障害を持つ理学療法士の職場に|こおける勤務状況の実態の中で,治療器具や評価器具の使用状況 についてはテクノレポートlで報告したが,今回は病院,施設等での事務処理の実態について,その現状と問 題点を探った。

視覚障害のために,カルテの記入やその内容の把握に苦労をし,さらに,業務報告書やケース会議の資料等 の作成に苦労をしている実態が明かになり,それらの解決策として,ワープロ・パソコン等の情報処理技術の 活用や弱視レンズ等の補助具を使用して,視覚障害を補償しようとしている実態が明かになった。

キーワード:視覚障害,理学療法士,事務処理

視覚障害者は文字を読み書きする上でのハンディチャ プがあると言われることが多い。病院や施設等に勤務し,

理学療法業務に携わっている卒業者は,これらの事務処 理をどのように行っているのであろうか。ここでは事務 処理の中,カルテの記入と読み取り及び業務報告書の作 成について,現状の分析を通して抱えている問題点を探

り,その解決を目指した工夫を検討してみたい。

3.1カルテの記入と業務報告書の作成

カルテは,医療業務の中で必須の書類であり,この書 類の読み書きは理学療法業務を遂行する上で非常に重要 な位置を占める。また,業務報告書等の作成も,理学療 法士が日常的に行う職務の一つである。

これらの記入や作成に関しては,①記入の手段②手 書きで処理している場合の苦労の有無と工夫③ワープ ロ等を活用している場合の機種④ワープロ等を活用し ている場合の苦労の有無と工夫等についてアンケート調 査を行った。

3.1.1記入の手段

まず,カルテの記入に関してみると,Fig.1に示すよ

1.はじめに

視覚障害のある理学療法士の職場における勤務状況の 実態の中で,理学療法業務について視覚障害が影響を与 える可能性の高い評価器具や治療器具の使用状況につい てはテクノレポートNo.,で報告したが,本稿では職 場における事務処理の状況について報告する。

2.調査方法

視覚障害のある理学療法士として筑波大学附属盲学校 高等部専攻科理学療法科卒業生(以下卒業者という)

168名を対象とし,また,その比較対象として健常者の 理学療法士(以下健常者という)50名に多肢選択法によ

るアンケート調査を行った。

調査内容は①個人情報②職場の状況③理学療法業 務④事務処理⑤職場の人間関係⑥研究活動の6項目

にいて調査した。

調査時期は平成2年7月から8月の2ヶ月間であっ た。

調査用紙の回収状況は卒業者が112名(66.7%),健常 者が39名(78.0%)であった。

、銅飼わぬ犯姻麺麺旧0

囮ワープロ等 屡露手瞥き

3.調査結果と考察

以下調査結果の中で事務処理の実態について報告す る。

理学療法士の主要な業務は,医師の指示に基づく患者 の治療と評価であるが,こうした業務を遂行するために は,治療経過や評価の記録の作成・管理・活用,日々の 業務報告やケース会議の資料の作成等の事務処理も重要

な業務の一環となっている。

卒業者(112名)健常者(39名)

Fig.1カルテの記入の方法

141

(2)

傾向は何を意味するのであろうか。業務報告やケース会 議の資料をワープロやパソコンで作成している卒業者の 半数以上の者が,ディスプレー上の文字が小さいために 非常に苦労していると回答している。このことは,卒業 者にとって自分に使い易い専用機(見やすいディスプ レー)でないと使いずらし、ことを示しているものであり,

弱視者を考慮に入れた機種や個人的に専用できる器機の 導入が少ないため,卒業者の使用の比率が健常者より低 い結果となったものと考えられる。

3.1.2手書きする場合の苦労

カルテの記入は現在ほぼ手書きで行われているが,

様々な書類を手書きする場合,卒業者はどの程度の者が 苦労を感じているのであようか。Fig.4はこの点に対す る回答結果である。「何の苦労もなく自分で書いている」

と回答した者が2/3弱を占めているものの,何らかの 苦労を感じている者がl/3以上を占めていることに注 目しなければならない。どのような状態で苦労を感じて いるかは,心理状態や環境条件によって大きく影響され るものと思われるが,ここでは視力の面から検討してみ たい。何らかの苦労を感じている者と視力との関連をみ るとFig.5のようである。この結果から視力がかなり 大きな要因となっていることが分かる。ここで言う視力

とは,両眼を矯正した場合の遠方視力であるから,弱視 者がカルテ等を記入する際に実際に必要な最小視認知と うに,卒業者の97.3%の者が手書きで行っている。また,

健常者もほぼ同様の傾向を示すことから,現状において はカルテの記入を手書きIこよっで行っているのが一般的 である。しかしながら,最近のコンピュータの進歩には めざましいものがあり,病院においても医療事務や臨床 検査データの処理等において大型コンピュータによって 集中管理されるようになっている。このような傾向は診 療の場面にも入りつつある。すなわち,電子カルテシス テムがすでに一部の病院で研究きれている。電子カルテ システムは各診療科よりの診療録を大型コンピュータで 管理するもので,必要に応じて,データを検索し,プリ

ントアウトできるもので,そのデータは診療の他,研究 や教育にも利用できるようにするものである。このよう にカルテの管理システムが21世紀に向けて変化しようと している中で,単に手書きによるカルテの記入では対処 できなくなる時代がきているものと思われる。このよう な流れの中で学校教育においても情報処理技術の指導が 取り入れられてきてはいるが,さらにその充実した指導 が要求されるものと思われる。

次に報告書やケース会議の資料の作成についてみると Fig.2に示すようである。カルテの記入とは異なり,ワー プロやパソコン等を使用している者が,卒業者で約2割,

健常者で約4割と増加している。文書等の作成やデータ の処理には,こうした器機が大きな威力を発揮するが,

理学療法業務の現場にもこうした波が大きく押し寄せて きているとみることができる。

ここで注目しなければならないことは,こうした器機 類を使用している者が,健常者の4割に対して,卒業者 は約2割と大きな落差があることである。この差は何を 意味するのであろうか。

Fig.3は調査対象者がワープロやパソコンを活用する ことができるかどうかを示したものである。この種のい ずれの器機も使用することができない者は,卒業者も健 常者も約3割でほとんど差がない。このようなことから 卒業者は器機を使用することができても,これを職場で 活用している比率が低いということである。このような

切麺的麺0銅% 等人亡、 用

降エカ

いイソ|えC般般便pl- なワパワ

魎函圏罎

蕊讓l轤轤

卒業者(112名)健常者(39名)

複数回答のため、全休は100%とばならない。

Fig.3ワープロ・パソコン等の日常における使用状況

くう番もでてい分い

名韓柁曙 、労る傭

j苦す同の労々

者何苦時 率霞麺麺

6.99K

手密言 ワープロ等 その他(手杏さワープロj 無記入

鑿鶇~藤

D=↓△、託

Fig.4卒業者がカルテや業務報告書等を書くときの苦労 Fig.2業務報告書等の処理

142

(3)

}よ必ずしも一致しないが,Fig.5に示すように,視力の よい者の中にも苦労を感じている者がいる結果となっ た。このように苦労を感じている者は,将来少しでも 苦労を軽減するために,どのような点に期待をしている のであろうか。Fig.6はこの点の回答結果をまとめたも のである。事務処理のための補助員を求めている1名を 除いて,その他9名はワープロ等の活用と弱視レンズや 拡大読書器の併用を上げており,すべての者が何らかの 器機の活用で苦労を軽減したいと考えていることが分か る。中でもワープロやパソコンの活用に期待している者 が多い。ワープロやパソコンは弱視者向けの器機の改良 やソフトの開発が進めば,弱視者の期待に応え得る有望 なシステムであるので,将来より使い易いものの開発が 望まれると共に,有効な活用のための教育システムが検 討されねばならない。

また,もっと自分のニーズに合った弱視レンズを求め る者もかなりいることが分かる。近年においては弱視者 のニーズに応え得る様々な弱視レンズが市販されている が,こうした中から最も適合したレンズを選択するとい う過程を経ていない者もいるのではないかと思われる。

このような点は学校教育の中で,弱視レンズの求め方,

活用の方法等を指導することの大切さを示唆すものであ る。

3.2カルテ等の内容の把握

理学療法士はその業務を行う場合,カルテや指示菱の

内容を速やかに把握して対応しなければならないが,卒 業者はこうしたカルテや指示菱の読み取りにどの程度の 者が苦労を感じており,それにどのような工夫で対応し ているのであろうか。

まず,Fi、7をみると,弱視レンズを活用している者 も含めて約8割の者が苦労なく読み取っており,残りの 約2割の者が何らかの苦労を感じている。カルテの記入 においては約3割の者が何らかの苦労を感じているのに 対して,読む場合の方が若干苦労を感じる者が少なくな るという傾向を示すが,これは書きにおいて苦労を感じ る者も,読みにおいては弱視レンズの活用によって,苦 労を感じていないというケースがあることを示すもの で,書きよりも読みにおける弱視レンズの有効性を示す

ものである。

次に,カルテ等の内容把握時の苦労と視力との関連を みるとFig.8に示すようである。視力0.1未満の者は半 数以上の者が苦労を感じている。しかし,手書きによる カルテ等の記入の苦労と視力との関係(Fig.5)と比較 しても,読みよりも書くことに多くの苦労を感じている ことが分かる。

また,苦労を感じている者は,今後苦労を軽減するた めの工夫としてFig.9のような回答をしている。ここ でも弱視レンズに対する期待が大きいが,3.12で 示したような弱視レンズの求め方や活用等の指導の大切 が再度確認できる。

パーセント 50

0 198

るいいなてしし労労一古一古

霊画

卒業者112名

配だ犯霞0

【麺その他 露同僚に読んでもらう 圃圏拡大誌魯器の活用 圏掴レンズ使用苦労あり 函レンズ使用苦労なし 屋詞補助具無しで苦労なし 0.1以上

(85人)

0.1未満

(24人) ニニ邑邑

Fig.5手書きによるカルテ等の記入の苦労と視力との関

係 Fig.7カルテ等の内容の把握

卒業者35名

パーセント 人

0 5 10 15

ョ眉豊劇

囮0

,9塁;

】唾 苦労しない 苦労している ワープロ等の活用

弱視レンズ等の活用 拡大読密雷の活用 補助貝の援助

0.1以上

(B2名)

壱軍苛啓君君宕舌■

■■■l■■■■■■■

ロ■■■■戸■■■■■

ニーュー

0.1未満

(23名) 篝鑿鑪

■■■■■■■■■

その他

Fig.8カルテ等の内容把握時の苦労と視力との関係 Fig.6カルテ等の記入の工夫

14s

(4)

卒業者14名 害のある理学療法士にとってはそれを処理することが苦 労の多い仕事となっているが,しかし,一般には事務処 理ができなければ一人前として扱われないこともあり,

視覚障害があっても十分に事務処理ができるように教育 して行かなければならない。近年の情報処理技術の進歩 はそれを可能にするものであり,今後の理学療法士教育 の中での一つの方向`性を示唆するのと考える。

人 弱視レンズ等の活用 E富国

同僚や補助風等の援助 拡大読魯器の活用 その他

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参考文献

1)森忠三他:診療録の情報処理化一電子カルテにつ いて-,医療とコンピユウータ,VOL2,N02,4-8,

1989年.

2)古和久幸:病院内情報システムと電子カルテ,医療

Fig.9苦労をなくすための工夫

4.まとめ

医療の現場において事務処理はかなりな量にのぼり,

それらを処理するために視力を必要としており,視覚障 とコンピュータ,VOL2,N02,15-20,1989年.

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