• 検索結果がありません。

和装産業における浴衣市場の実態

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "和装産業における浴衣市場の実態"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

和装産業における浴衣市場の実態

著者名(日) 矢澤 利枝香

雑誌名 共立女子大学家政学部紀要

巻 63

ページ 91‑99

発行年 2017‑01

URL http://id.nii.ac.jp/1087/00003119/

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止

http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

(2)

共立女子大学家政学部紀要 第 63号 (2017) 

和装産業における浴衣市場の実態

The r e a l i t y  o f  t h e  YUKATA  market i n  i n d u s t r y  d r e s s e d  i n  Kimono 

矢 澤 利 枝 香 R i e k a   YAZAWA 

1  .  研究目的

和装の中でも夏の風物詩とも言える浴衣は、

夏のファッションのひとつとして、主にヤング 層にイベント着として滸用されている。従来か ら販売されていた専門店や百貨店に加え、イン ターネットの普及も伴い販売チャネルが拡大し ていった。それにより浴衣は、消費者の手に届 きやすいものになりつつある。しかしながら、

浴衣産業を含む和装産業は、厳しい状況が続い ている。その中で、浴衣関連企業は顧客を確保 し、存続、発展していくために、どのような戦 略をとっているのだろうか。浴衣市場の実態や、

浴衣関連企業における戦略の実態を明らかにす ることにより、発展の可能性がみえてくると考 える。

2.  研究方法

浴衣関連企業の実態を調査することを目的と し、和装産業における浴衣市場の動向、ターゲ ット層に関する認識、企業戦略及ぴ具体的施策 等について、文献調査およぴヒアリング調査を 行った。ヒアリング調査は、浴衣の製造から消 費者の手に渡るまでの流通に沿い、製造業・卸 売業・小売業を対象とし、平成 23年 6‑ ‑8 月

に実施した。

3.  浴衣の定義と歴史的背景

浴衣とは、「夏季に着用するもめんの単(ひ とえ)長着のことで、おもにふだん着として男 女とも用いるもの。むかし入浴のさいに用いら れたくゆかたぴら(湯帷子)>からでたもので、

当時のものは麻製であったが、江戸時代にもめ んのものが湯上がりに着られるようになり、以 来盛夏の着物とされるようになった」"、「ゆか たは(浴衣)と表記することからもわかるよう に、元来は入浴時に着用した衣服。その後、湯 上がりに汗取りの目的や風呂屋への往復、江戸 時代中期以降は夏場に帷子に代わる衣服として 使用されたひとえ仕立てのきもの」

2)

と定義さ れている。銭湯に行く習慣が、浴衣を発達させ た一因となり、染色技術や、盆踊りの普及等も 相まって、明治 30年頃には、夏の飾便な外出 着として着用されるようになった。また、寝間 着等にも用いられ、現代まで至る。

4 .   浴衣市場を取り巻く環境と動向

4‑1. 浴衣市場の動向

近年の呉服市場は、縮小の一途を辿っている。

9 1

(3)

(2017) 

を 取 り 入 れ た コ レ ク シ ョ ン が 発 表 さ れ 、

IJ

への関心が邸まった

こと

や、パプル

Ji,j

壊によ

て生じた伝統への回帰慈識による浴衣への関心

の邸まり、赤やピンク等 の

カラフルな浴衣の登 場 、 花 火 大 会 等 の

活況化等

が 相 ま っ て 典

った

、 浴衣プームの表れである

。しかし、その後の生 産拡は下落している。

2002

年 よ り 、 そ

れ ま で調 査 対 象 に 入 っ て い

なかった、浜松エ

リアにおけ

る広幅が含まれた。

広幅の調査が) U n

わっ

た理由として、伝 統的な染 め方よりも、低

コスト

であるため、小売り等が 発注を増や

した

という背故がある

しかしなが

ら、広幅を含めると

回復傾

向にみえるが、国内

の 浴 衣 生 涯 試 の 実 態 は 、 長 期 停 滞

傾 向 に あ

市場は伸ぴ悩んでいた。

(図 4)

第 63

サ 共立女

f大学家政学部紀災

約 2 5 年 の

1111

に、およそ 1/5

まで減少した。

(図 1

) また、呉)1

11の小光市場構成比に1関し

ては、

直販

・ イ

ンタ

ーネ

ト通販、 リサ

イク

ル販必が 大 幅 に伸 び て い た

。(凶

2 ) よって、只 : 1 1 1 1 市 場 に属する浴衣市楊も、同様

の現象が生じている

と考えら

れる

2805  149S9 

億円)

16000  14000  12000  10000  8000  6000  4000  2000 

万反)

1400  1200  1000  800  600  400  200 

ぶ 忍 惑 忍

名 衣 名 水 衣 , $ ( , $ ( 水 ,$c ,$(名 衣 名

、 " ° ' " " 惑 g 惑虚忍惑ゃら ' l , #

(X!I 1 幻Jll小・)'i.:市場規校推移 「111典:矢野経済研究所

「繊維,~,→ .·~」 31·51 を)£に作成」

2015 2010 2005 2000 1995 1990

3

浴衣生胚屈「III.典 :l:J本 ゆ か た 述合 会 濶 究7)

を基に作成」

万反)

&

u8 c  ピ§

S

8

出 〜

8

8c

8

出§

吐恩[

と累2

6[

g

6 61

叶 ぶ

I

c a ‑

Su at  

g$

g t

.

.. .  Js ol oo ls o2 00 IS OI oo so o 

収14 平成以降の浴衣生廂拭「出典:日本ゆかた述合 会瀾1i:7)を基に作成」

ただし、安 価 な 浴 衣を悔外

生産する試販店は l附UIIしている。

国内生産絨は落ちているものの、

海 外 製 を 含 め た 浴 衣 市 場は下げ 止

まっており、

92

図2

阪必チャネル別只

Ill!小

i 訓

j場構成比「111典:矢 野経済研究所 「絨 維1・1'.f」他31fl!を)店に作成」

浴衣市場に絞った金額ベースの公

IJH

統計柑料 は見当たらなか

ったが、 H本 ゆ かた述合会調究

の加 盟企業を対象と

した、東原、浜松、愛知、

大阪、ぷ計 l l l エ リ ア の 浴 衣 生 滝 : l i t

合,

汁の雅移か

ら、

以下に示す動向が砒み収れた。

1960

年前後が生廂のピークで、

この 頃 の 浴 衣は、主に私 11りぶf や主婦の家·J~の際にイ

f J I !  

され

る機会が多 か

った。

しかし、 i 浮

装化によって

裂の部分での浴衣滸)

l l が 減 少

し、

迄滞した。 O < > I

3) 1990 ‑1992年

頃に

!('jJJII

している

は 、

パ リコ

レ等でデザイナ

ーズ プ

ランドによる

II

(4)

fll装 沌 菜 に お け る 浴 釦Ii場の文態

市場の縮小が顕著な呉服市場の中では、浴衣は

かなり他洲していると ~m 測される。

4‑2. イベント

J I り 1 m と売り上げの関連性 2011年 3月の東 H 本大災災の影押によりイ ベント I J H 備を自粛する領向がみられたことで、

特に東日本での浴衣小売市場は厳しい結呆にな った 。「絨研新 l l H 」 においても、 「 今夏は特に関 東地区を中心に災災の影評を受け、ゆかた販売 は前年比 7割台の売り上げに終わるなど不振 だ った」

8)

とあ った。 イベント l l f l 1 枇数と光り上 げについての関連を探るため、以場の代表的な イベントである、花火大 会の 1 m 1 m 状況に ついて

地 域 北渇 這

稟北

関東 甲償越

棗海 北 陸 閲西

中口 四囚

九州 全囚

表l 地域りJI化火大会

l l ! J 1 1 1 ¥

2010年 度 2011年 度 前年望 前 年 比 126  124  ‑ 2   98.4

66  58  ‑8  87.9% 

163  103  ‑60  632 62  59  ‑3  95.2 182  164  ‑ 18  90.1% 

29  28  ‑ !   96.6% 

106  95  ‑11  89.6 59  59 

1000% 

 

34 

1000% 

177  170  ‑ 7   960

1004  894  11 89.0

調究した

。20

1 1年 3月の東日本大震災の影糊'

9

Ill輿:町llkc11ilus をふに作成J

に よ っ て 、 花 火 大 会 の 中 止 が ‑ r l l 次いだため、

2010年度 J I

廿

1 m の花火大会と、 2 0 1 1年疫 l l f l f l l l の 花火大会の

2年を比較した。

( 表

1・

I5) 

2011年に全国で l l f ] f i l l された花火人会は、前 年比で 1 1 0回の減少となった。 これは比率で見 れ ば

1

割程度の減少であり、光上の減少率 で ある

3

割に比べると小さいようにも見て取れ る。 しかし、 2011年 の 1 1 0回の減少のうち半 数以上の

60

回が関東地方であり、 l 関東地方の 減少半は 3割を超える こ とから、花火大会の

1 m 1 m 頻度、特に人口が多く , j i ; 上に占める割合も 大きいと : j ! f ; 測される l 刈束地方における花火大会 の l l f H m 頻度と売上には、相 I 関があると考えられ る。 このように花火大会等のイペント 1 m 1 m 数と 浴衣売上の関述性から、イベントの開他によっ て、浴衣滸川の機会が削加し、浴衣市場 の活性 化に大きく貢献することがわかった。

200  180  160  140  120  100  80  60  40  20 

¢令ぷぶ余~· •"'~· 忍&幻袋ぶ

2010年 度

● 2011年 度

M  5 2010‑2011

年 度 地 ) 窃IJ化 火 大 会

l ! l l l l l

i数 比 較

「 I l l

典:walke1‑plus9lを屈に作成」

5 .   浴衣市場における流通形態

現在、浴衣は、人件牧の安価な中国やベトナ ム等で生槌される悔外製と、伝統的な手 法や、

染色技術を生かした n 本製のものがあり、献販 店等で販光されている安価なものは前者、

1"

「 f i

店や只 J J f i l 打等で販光されている中〜邸価格術の ものは、後者であるケースがほとんどである

ここでは、国内で製造されている浴衣の製造 から販売までの過程と流通の現状につ いて述べ る。 ( 柊

I6) 

第一段階の製造業において中心となるのは、

製造 1 / I J J 対である

。浴衣の製造においては、)

f 多付 け、染め約の各 r . 程は独立 した専 ' I りの戦人によ る分業制にな っており、製造 1 / I J 屈が企両をし、

ー93 —

(5)

共ヽ,'f.女了•大学家政学部紀淡 第 63サ (2017) 

製 造 業

> C!  邑 邑:

L 竺

染色

·加工 ~ "' 

図6 浴 釦

i I

楊における流辿形 態

分業制の製造を取りイ

I:切

っている

製辿

1111

届は、

産地から白生地を仕入れ、各工程を 委託し、と

りまとめている。

なお、分業体制にな っている

理由としては、家内制手工業の時代より牛脱が 開始されていたため、多くの製造設備を一TJT‑業

者で保有できなかったことが一 囚として学げら れる

結果と して、現在においても

1

社あた りの設備投 1 f t コストを抑え られる こ とや、複数 の戦人によ って製造されるため、各戟人の感性 や技法が融合されて創造性の翡い製品が生み I I I 

されるとい

ったメリ ッ トがある

。しかし、分業 体制によ

って行程が細分化されすぎているため

に、仕上がりまでの時間を

多 く要することや、

製造コス ト が上外するデメリ ッ トもある

さら

に、近年では、市場不振による生産数の減少に 伴い、数批当たりの生産コストの上外、戦人の 収入減少による経営巡迫、後継者不足や技術伝

承の

1111

題、使用する道具類を扱う企業の減少に

よる調達難、これらに起因する製造

工程欠裕の

危険性、廃業等、産業基盤の弱体化が懸念され ている

第二段階の在

11売業においては、前売1111屋が製 造1111屋で

{ J :

上がった製品を小光業に屈ける役割 を担っているが、在庫リスク分散等の理山によ り、そこから更に複数の間屋を経111

する場合も

ある

また、製造業が中小企業であることも

いため、前売

l f f l

屋が分業体制を管理し、製造業

と小光業とを結ぶコーディネー

ターの機能も呆 たす楊合や、前売I

IIJ

屈と製造I

IIJ

屈両方の役割を 果たす製造卸売業としての機能を持っている場 合もあり 、他業界以上に在 I I 光業の果たす役割が 大きいとされる

。独自で小'.l°c

を展

JI

りしている場 合でも、 ' . J G I   : .

構成比としては低く、小売

との 述拙で成り立っている場合が多

いが、近年では インタ ー ネ ッ

トを活川し、前販サイ トを展開し ている企業も

い。

最終段階として、呉 J l l i 専

j'lj

店、百廿店等の小 如行を介して消牝者の手に渡るという形態にな っている

。大半が委託販光方式である

ことも特 徴的であり、 一定の数絨が動く状況においては、

商品の企圃

ij

. 発注を製造

1/IJ

屈もしくは前売1

/IJ

屈 が見込み生槌 を行う ことで、製造工程を回し続 け、戦人のイ : 1 ‑ ・ J l t t を維持できるメリ ッ トがある が、小光業が把 M している mn 者のニー ズを製

品に反映しにくいというデメリ

ッ トがある

。そ

こで、市場が低述し生産批が減少してい る近年

においては、従米型のビジネスモデルでは通)

J   I しなくな ってきており、 i l ' i ¥ 料者のニー ズを反映 しやすい受 注生廂方式に切り杵える動きもみら れている

3)0 

また近年では、 SPA(specialty store retailer  of private label apparel)和訳では製造小光業と

呼ばれる、企両、生廂、販売を 一 1 1 して狩理す る業態も 登 場 し た。S

PAはそのI

吐体として

2

i

類あり、ひとつは製造業、針

l

光業 が小光業 に 進出するケ ース ( メー カー主祁型

SPA)

と、も うひとつは小光業がものづくりを 手がけるケー ス (

小光り

主 祁型

SPA)である。

浴 衣 市 場 に おいても、

SPA

型の > F

業)展開を

枢 l る企業 がで てきており、今後の浴衣市場における生韮

流 迎形態に大きな変化がある ことも 予想される

6. 

浴衣関連企業へのヒアリング

6‑1. 製造業におけるターゲット)

f 1

への認識と企

業戦略

調介対象 : 創業大正 1 1年の、浴衣をデザ イ ン 、

— 94 ー

(6)

和装産業における浴衣市場の実態

型紙、生地、染色、縫製まで一貰製作している、

老舗本染浴衣製造問屋 A 社 。

T a r g e t  :  2 0  ‑ 3 0 代の着物を着慣れている人、

本物志向の人

P r o d u c t :   百貨店、着物専門店向けの本染浴衣(手 作業で染められている)

P r i c e  :  反物 2 0 , 0 0 0‑ 3 0 , 0 0 0 円、仕立て上がり 3 0 , 0 0 0  ‑ 4 0 , 0 0 0 円

A 社で取り扱う浴衣は中〜高価格帯であり、

浴衣初心者にとって手を出しにくく、安価な浴 衣の方が入り口としての需要は高いといえる。

しかし滸恨れてくると、より質の高いものを求 める傾向があり、 A 社ではそういった本物志向 の人をターゲット府としている。ターゲット層 は 、 2 0 代 ‑30 代であるが、中には 1 0 代後半 もみられ、 A 社のターゲット贈の中でのヤング 層は、茶道や日本舞踊等のお稽古事で着用率が 高い人、もしくは家族に着物を好んで着用し影 響を受けた人が多く見受けられるという。一般 的なヤング屑に対しては、浴衣を新鮮なファッ ションとして捉えており、何よりもデザインを 重視し、花火大会、祭り等のイベントの際に着 用していると認識していた。

戦略としては、製造業には珍しい HP の開設

(夏期のみ)、衣裳提供等が行われているが、伝 統的な製法での浴衣製造業は、中小企業が多く、

消残者に向けた大々的な取り組みは行われてい ないのが現状であった。また、消費者と接触す る機会がなく、ニーズを把握しにくい状況であ ったが、ターゲット層は、何よりもデザインを 煎視しているという認識があるため、柄の充実 に注力していた。

6 ‑ 2 .   卸売業におけるターゲット層への認識と企 業戦略

調査対象:設立明治 3 5 年の、織物卸売業の中 小企業の改善発達を図るために必要な事業を行 っている、東京織物卸商業組合 (TAFS)。

組合員企業数: 1 5 6 社(平成 2 8 年 3 月現在)

組合員企業年間総販売金額: 4 , 3 6 8 低円 関連団体:日本ゆかた連合会、東京和装服飾品 卸 協 同 組 合 等

卸売先によってターゲット層は異なるが、そ の多くは 2 0 代 ‑30 代である。中でも 2 0 代前 半のヤング附は、浴衣を花火大会や祭り等のイ ベントの際に着用し、勝負服という感覚を持っ ていると認識していた。さらに、細かなデザイ ンを可能とするインクジェットプリントの登場 ゃ、伝統的な古典柄が「古くて新しいもの」と して見直され、デザインの幅が広がり、浴衣の ファッション性を楽しむ傾向がみられている。

しかしヤング附とは対照的に、シニア層にとっ ての浴衣は、外出滸としての認識が低いと考え られている。シニア府からの視線やしきたりに 囚われ、ルールや自由な済こなしを制限されて いることが、ヤング府における浴衣着用の入り 口を狭めていると分析していた。また、浴衣は 着物離れが進む中で、小紋や紬等の実用呉服消 用のきっかけになるとして、重要視されていた。

浴 衣 の 生 産 が 盛 ん だ っ た 1 9 5 0 年 代 後 半 〜 1 9 6 0 年代前半には、浴衣の宜伝、贈答品に浴 衣を贈る旨のポスター等を製作していた。現在 は主に着用を促進するイペント企画を行ってい る。「七夕ゆかたまつり」はその代表例で、 7 月 7 日の七夕の 8 を「ゆかたの 8 」として、

日本橋界隈の銀行や旅行代理店、呉服店等のス タッフが浴衣を滸用して接客し、普及に努める イベントである。(図 7 ) 滸用を促進するだけ でなく、通行人や来店客に涼しさを味わっても らう目的もある。イベント会場では、七夕の飾 り付けがされ、抽選大会も行われている。抽選 会場の来場者数は 250‑3 0 0 人で、浴衣着用者 はスタッフも含め約 4 0 0 人である。このイベン トは、テレビ局や新聞社等マスコミにリリース をかけ、度々ニュースや新聞記事でも取り上げ られていた。消費者の目に留まらせることで、

日頃忘れていた浴衣の存在を思い出させて着用 につながる効果を期待していた。

‑95

(7)

共立女子大学家政学部紀災 笏63

(2017) 

図7 七夕ゆかたまつり

6 ‑ 3 .  

小必業におけるターゲット/怜への認識と企

業 戦 略

瀾 究 対 象

:創

業 昭和 6

年 の 、 関東 を中 心 に全

27

店 舗 を 展 開 し て い る 、 大 手 フ ァ ッ シ ョ ン 小 允 業

B

社。 自 社 プ ラ ン ド 製 品 を 企 画 販 売 す る

SPA

機能も併せ持っている

Target : 10 ‑ 40

Product: 禾II

装 プ ラ ン ド 浴 衣 、 ア バ レ ル プ ラ ン ド浴衣、ライセンス

自社プランド製品

Price : 15,000 ‑ 35,000

B

社のターゲット肘は、

10

‑40

代 と 幅 広 い が 、 そ の 中 で

10

‑20

代 は 、 浴 衣 を 花 火 大 会や祭り、文化祭等のイベン

で滸用し、そ れ 以外での沿 J l J は極めて低い状況であると認識し ていた。消付けができない等、浴衣の好にくさ が消) I J

に繋 が ら な い

i 立大の原因であり

、 加

えて 下駄やパッグの機能性に不満感を抱いており、

こ れ

ら の 改 将 が 怠 務 で あ る と 考 え ら れ て い た。

商 品 の 光 れ 行 き は 、 浴 衣 と 小 物 の セ ッ ト 買 い が 多くみられ、ラメ入りの兵児哨やピジューのつ いたキラキラした{ j ¥ ' 締 め 等 、 従 来 ま で は 見 受 け られなか

ったような小物を使い、コーディネー

トをフ

ァッション感

i

で楽しんでいると認識し ていた。 またファ

ッションと同様、プランド志

向が閥く、プランドの必要性を惑じていた。

i l ' l 翡者と n ・ i : に接する小売業は、消翡者のニー

ズ を 掴 み や す い 立 場 に あ る と い え る

。B

社は、

S

P

A

型 の 機 能 を 併 せ 持 つ 特 色 を 生 か し 、 売 り 場 で 顧 客 か ら 裕 が

った 滋 兄 や 要 昭 を 、 次 年 度 の

企画に生かす仕糾みを作っていた。 しかし、浴 衣 は 販 輝

JI/

りが短く、追加生産 が 不 可 能 で 、 同 時に過剰生産 によるイ砂 I I リスクも伴う

つまり、

生産数の兄当が外れると、利益に大きな拍害を 被る場合がある

その対策も兼ねて、アンケ

ー ト

調究や

お 客 様 座 談会」 等を尖施し、早 期 の

¥/,}要見込み、ニーズ把射、販促のための取り組 み に 注力 していた。

また

B社

で は 、 接 客 に 爪 点 を 置 き

、 メ ー カ ーごと

の コ ー ナ ー 光 場 に メ ー カ ー か ら の 派 辿 販 光 l : t がつく百 1 ' i ' 店の接客方法、 J 1 t 販店のセルフ サービスとは異なり、価格而やプランド等によ って様々なラインナ

ップを揃え、メーカーの隔

たりなく接客する販光具を配置することで i i 牙翡 者 が 選 び や す い よ う 配 ! I R していた

さ ら に 、 新 規 副 客 狼 得 の た め 、 HP の 充 実、

l f 付けの ! I l l 題を補えるワンタ

ッチで済られる浴

衣 の 企

l

世 i

l f 付 け サ ー ピ ス の実施、販光力のあ るアパレルプランドとのコラポレーションによ る、ライセン

スプ ラ ン ド 浴 衣 の 販 売 、 浴 衣 の サ

イズ殷

JI

り、小物の改蒋と充尖等、他の小売業と の差別化を図

って お り 、 梢極的なマーケティン

グ戦略が兄受けられた。特に、ワン

ッチで沿 られる浴衣は、

B

社 オ リ ジ ナ ル 商 品 で 、 苅 付 け 時において

11

かも難しいとされる、おはしょりを 予 め 経 い 、 紐 で 結 ぶ だ け で; : i v f られるという

工 夫 がされており、浴衣初心者でも前i り1に ~yi'JIJ が可

能である

。(1)(18) 

I

JX

8 B社のワンタッチ で

, , v ,

JIJできる浴 衣

‑96

(8)

和装産業における浴衣市場の文態

7 .   浴衣市場活性化のための近年の取り組みと 傾向

7 ‑ 1 .   イベントの開備と新しい着こなしの提案 近年は、アパレル企業における、浴衣販売へ の新規参入もみられる。アパレルプランドの持 つイメージや世界観を、浴衣のデザインに表現 し、浴衣を身近に感じさせる役割も担っている と考える。 2 0 1 6 年夏には、大手アパレルメー カー、ストライプインターナショナルが、傘下 の 1 7 プランドから 28 種類の浴衣を発光し、さ らに、 10‑20 代女性を対象に、浴衣滸用イベ ントを開催して約 3 0 0 名が集まった。「 H 経産 業新聞」

10)

によると、このイベントの趣旨とし て、以下のように記載されていた。

「着用する「場面」まで提供する必要があ る」。石川康晴社長はイベントを開いた狙い を説明する。イベント自体の赤字は伐悟の上。

2 0 2 0 年をメドに 3 倍以上となる 1 0 0 0 人の集 客を目指す。「モノ」と「コト」の組み合わ せで需要を伸ばす狙いだ。

さらに、 2 0 1 6 年秋に、「あたらしい H 本の文 化、和装週間はじめます。」というピジョンの もと、「東京江戸ウィーク」というイベントが 上野恩賜公園で開催された。一企業ではイペン ト開他に限度があるものの、このイベントは、

省庁や地域等も後援し、各所で述動企画等も行 われ、大規模なものとなっている。その中で、

浴衣の新しいスタイリングである「あきゆかた」

を提案している。「東京江戸ウィーク」公式サ イト

II)

によると、以下のように定義されていた。

「あきゆかた」とは、夏に限っていた浴衣を 長い期間お楽しみいただけるよう、梱袢の代 わりに簡易な衿(うそつき衿)を合わせたり、

下駄の代わりに足袋や草履を合わせることで 滸物風にアレンジしたものです。

浴衣を夏だけでなく、秋にも単の着物として 滸用する提案をすることで、着用機会を増やす 取り組みである。また、府用機会の場を提供す ることで、相乗効果を期待することができると 考える。

7 ‑ 2 .   男性向け商品の充実

2 0 1 4 年頃から、大手呉服店が、男性滸物専 門店を積極的にオープンさせている。「全売上 高に占める男性向け消物の比率は 1% 前後にす ぎない。成長余地は大きいとみて、積極的にア ピールしていく」

12)

とあり、男性の滸物消用拡 大に大きな期待を寄せているようである。実際、

大手百貨店の松屋では、銀座店における 2 0 1 5 年度の男性向け浴衣売上が、 2 0 1 4 年度と比較

して 27% 増となっており、存在感を増してい た。さらに、 2 0 1 4 年頃から再流行しているペ アルックや、 2 0 1 5 年頃から注目されているジ ェンダーレスファッション(男女の境界を踏み 越えたファッション)の影孵が、浴衣の商品に も及んでいる。男性向けの定番柄を女性向けに 仕立て、女性向けの定番柄を色を変えて男性用 に作った「ジェンダーレスゆかた」や、男女ペ アで滸用できる浴衣の提案がみられた。三越で は、従来の男性用浴衣にはなかった花柄のデザ インや色の充実、帽子や蝶ネクタイ、スニーカ ーやサンダル等洋装のアイテムを合わせた消こ なしを提案していた。

13)

7 ‑ 3 .   訪 H 外国人向け商品の屈開

訪日外国人は、年々増加傾向にある。(図 9) 実際、訪 8 外国人がお土産として浴衣を購入す

るケースも多く、いわゆるインバウンド消費も 見込める。しかしながら、浴衣の着付けは外国 人にとっては難しいのが現状だ。百貨店では、

おはしよりなしで着ることのできる浴衣(旅館 等で館内着として提供されている浴衣と同型 の 、 対 丈 で 着 用 す る も の ) を 約 1 0 , 0 0 0 円〜

4 0 , 0 0 0 円の価格帯で販売されていた。なお、お

ー 97 —

(9)

共立女子大学家政学部紀要 第63号 (2017) 

はしよりなしで着ることのできる浴衣は、 2 0 0 3

年にはすでに存在していたようである。

14)

これ は、訪日外国人を意識したわけではなく、単に 着付けができない人向けの商品であった。今後 はそのような初心者向けの商品を、訪 8 外国人 向けにアレンジし、提供していくことで、市場 の拡大に一役買うことが推測される。

(万人)

2500  2000  1500  1000  500 

~ ~ 衣~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

芍怠芍,,#~~ 忍忍忍忍忍

図9 訪 B外客数「出典:日本政府観光局 UNTO)

◆注:訪日外客とは、国籍に基づく法務省集計 による外国人正規入国者から、日本を主たる居 住国とする永住者等の外国人を除き、これに外 国人一時上陸客等を加えた入国外国人旅行者の ことである。駐在員やその家族、留学生等の入 国者・再入国者は訪日外客に含まれる。なお、

上記の訪日外客数には乗員上陸数は含まれな い 。

7 ‑ 4 .   今後の課題

一方で、課題もある。浴衣は、和服である以 上、どこかでしきたりやルールに囚われてしま う。ヤング層においては、和服のしきたりを知 らないことがプラスに働き、自由な着こなしを 受け入れることができると考える。しかし、和 服に恨れ親しんでいるシニア附や、茶道等をた しなむ着物上級者に受け入れられるかは疑問で ある。浴衣をもっと自由に楽しむことを、推奨 してもよいのではないだろうか。従来型のしき

たりを重んじる人たちとの、浴衣の自由な着こ なしに対する意識共有も課題であるといえる。

8 .   総括.

総じて、浴衣市場は、厳しい状況下におかれ ていることがわかった。しかしながら企業は、

消費者にとって、浴衣はあくまで夏のイベント 着であるという実態をよく捉え、浴衣消費の拡 大をイベント開催に見出しているようであっ た。イベント開催数と売り上げは相関したとい う結果から、今後も浴衣はイベント開催と共に 発展していくことが予測できる。よって、イベ ント開他による着用機会の提供により、新規需 要開拓が見込めると考えられる。しかし、単独 の企業によるイベント開催には限界があり、市 場の低迷によってその余力がない企業も見受け られる。したがって、複数の企業による協同、

地方自治体の協力が不可欠である。

また、市場縮小が顕著な中、顧客獲得のため に、とりわけ小売業は積極的に、新たな客層に 向けて商品提案をしていた。 SPA 型の機能を 持っているところでは、顧客から得た情報を積 極的に商品企画に活用していた。着付けやファ ッション面での改善を試みながら、時代の変化 に合わせたアプローチをしていく必要性がある と考える。

浴衣は日本の伝統的衣服であり、浴衣の着用 頻度を上げ、市場拡大を図ることは、浴衣市場、

如いては日本の和装産業にとっても活性化への 大きな原動力となるであろう。

謝辞

本研究を進めるにあたり、藤田雅夫教授(共 立女子大学家政学部被服学科被服行動研究室)

には終始にわたりご指導を賜りました。心より 御礼申し上げます。

98

(10)

和装産業における浴衣市場の実態

引用・参考文献

1) 田中千代:「服飾事典」同文書院 ( 1 9 6 9 ) 2) 長崎巌:「きものと裂のことば案内 j小

学館 ( 2 0 0 5 )

3) 矢野経済研究所「 2 0 0 3 繊維白書 J ( 2 0 0 3 )   4) 矢野経済研究所「 2 0 0 9 繊維白書」 ( 2 0 0 9 ) 5) 矢野経済研究所「 2 0 1 6 繊維白書」 ( 2 0 1 6 ) 6) 矢 野 経 済 研 究 所 公 式 サ イ ト h t t p : / /

w w w . y a n o . e o . j p /   ( 2 0 1 6 . 1 0 調査)

7) 埼玉県民俗工芸調在報告書「埼玉の注染 J

埼玉県立歴史と民俗の博物館 ( 2 0 0 7 ) 8) 「繊研新囲」 2 0 1 1 年 1 2 月 2 2 日(木) 6 

9 9

9) w a l k e r p l u s 「全国花火大会花火カレンダ

‑2011 」

h t t p : /  / h a n a b i . w a l k e r p l u s . c o m /   ( 2 0 1 1 . 1 2   調査)

1 0 ) 「 H 経産業新聞」 2 0 1 6 年 8 月 1 88  2  ページ

1 1 ) 「 江 戸 東 京 ウ ィ ー ク 」 公 式 サ イ ト h t t p s : / / e d o w e e k . c o m /   ( 2 0 1 6 . 1 0 調査)

1 2 ) 「日経産業新聞」 2 0 1 4 年 4 月2 8 8  9  ページ

1 3 ) 「日経 MJ 」 2 0 1 6 年 5 月 2 5 8  1 8 ペー ジ

1 4 ) 「日本経済新聞」朝刊 2 0 0 3 年 3 月 2 7

8  3 5 ページ

参照

関連したドキュメント

「文字詞」の定義というわけにはゆかないとこ ろがあるわけである。いま,仮りに上記の如く

市場を拡大していくことを求めているはずであ るので、1だけではなく、2、3、4の戦略も

従って、こ こでは「嬉 しい」と「 楽しい」の 間にも差が あると考え られる。こ のような差 は語を区別 するために 決しておざ

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

エネルギー大消費地である東京の責務として、世界をリードする低炭素都市を実 現するため、都内のエネルギー消費量を 2030 年までに 2000 年比 38%削減、温室 効果ガス排出量を

彼らの九十パーセントが日本で生まれ育った二世三世であるということである︒このように長期間にわたって外国に

以上の基準を仮に想定し得るが︑おそらくこの基準によっても︑小売市場事件は合憲と考えることができよう︒

 今日のセミナーは、人生の最終ステージまで芸術の力 でイキイキと生き抜くことができる社会をどのようにつ