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ア ジ ア 太 平 洋 地 域 の 軍 事 バ ラ ン ス

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ア ジ ア 太 平 洋 地 域 の 軍 事 バ ラ ン ス

一 中国脅威 論 とア ジア太平 洋地域 の安全 保 障一

1.は じ め に

中 国 人 民解 放 軍 は,台 湾 総 統 選 挙 に対 し,1996年3月8日 か ら25日 に か け て,基 隆 ・高 雄 の 台 湾2大 軍港 の沖 合 に 弾 道 ミサ イ ル を4発 打 ち込 ん だ。 さ らに 台 湾 対 岸 の 福 建 省 に 兵 力15万 を集 結,機 械 化 師 団 や 空 挺 旅 団,戦 闘 機 100機 以上 を送 り込 ん で実 弾 演 習 を含 む 大 規 模 な上 陸 訓 練 を実 施 した。 日本 に お い て も,解 放 軍 に よ る 台 湾 の海 上 封 鎖 や 金 門 ・馬祖 へ の 限定 攻 撃 の 可 能 性 が 頻 繁 に 報 道 さ れ た。 米 議 会 下 院 は,364対14の 圧 倒 的 多数 で 台 湾 防衛 決 議 を可 決 。 米 軍 は横 須 賀 を母 港 とす る空 母 イ ンデ ィペ ン デ ン ス と,ペ ル シ ャ 湾 方 面 か ら移 動 して き た原 子 力 空母 ニ ミッ ツの2隻 の航 空 母 艦 に,台 湾 海 峡 を通 過 させ た。 一 般 に空 母 機 動 部 隊 は,50機 以 上 の最 新 鋭 の ジ ェ ッ ト戦 闘機 や 攻 撃 機,さ らに 対 潜 哨 戒 攻 撃 機,ヘ リ コプ ター,空 中早 期 哨 戒 機 な ど を搭 載 す る。 しか も航 空母 艦1隻 に,防 空 巡 洋 艦,攻 撃 型 原 子 力潜 水 艦,ブ リゲ ー ト艦 な ど十 数 隻 の艦 艇 が 電 子 的 に 結 び つ け られ た グル ー プ と して行 動 して お り,大 変 な戦 闘 力 を有 す る1)。 台 湾 周 辺 に 米 中 の 軍 事 力 が 集 中 し,緊 張 は 一 気 に高 ま った 。

1995年5月 米 国 ク リン トン政 権 が,台 湾 李 登 輝 総 統 の 訪 米 を受 け 入 れ て 以 来,中 米 関係 は 大 幅 に 悪 化 して い た 。 さ らに,96年3月22日 の 台 湾 総 統 の 直 接 選 挙 実 施 に 向 け て,中 国 は 台 湾 独 立 に 対 し きわ め て 強硬 な 姿 勢 を表 明 して きた。 李 鵬 首 相 は 「台湾 問 題 は 全 く中 国 の 内政 に属 す る もの で あ り,外 国 の 勢 力 が い か な る 口実 と形 式 で干 渉 す る こ と も許 され な い 。 わ れ わ れ は 平 和 統 一 を主 張 す る と と もに

,そ の た め に 一 貫 して 力 を尽 く して い るが,武 力 行 使 の放 棄 を約 束 し な い2)。」 と した 。 米 国 に 対 して は 「一 つ の 中 国」 の 原 則 の 履 行 を厳 し く迫 る一 方 で,台 湾 に対 して は 「二 っ の 中 国 」 あ るい は 「一 つ の

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中 国,一 つ の 台 湾 」 の 「企 み 」 に対 して は,直 接 的 武 力 行 使 も選 択 肢 に 入 っ て い る こ と を否 定 せ ず,李 登 輝 総 統 へ の個 人 攻 撃 と台 湾 近 海 で の 軍事 演 習 を く り返 した。 さ らに 中 国政 府 は,香 港 各 紙 を通 じて 中 国 軍 が,金 門 島侵 攻 ・ 暫 定 的 占領,台 湾 海 峡 封 鎖,総 統 選 挙 直 前 の 台 湾 空襲 な どの計 画 を有 す る こ

とを報 じ,台 湾 へ の 軍事 的 圧 力 を さ ら に 強化 した3)。

特 に3月8日 か ら始 まっ た 台 湾沖 へ の ミサ イ ル 演 習 は,緊 張 を さ らに 激化 させ る もの で あ っ た。 戦 術 弾 道 ミサ イ ル は,福 建 省 永 安 付 近 の移 動 発 射 台 か ら,台 湾 を南 北 か ら挟 む 形 で打 ち込 まれ て お り,単 な る演 習 とは 言 い に くい 挑 発 的 な もの で あ る。 しか も 目標 海 域 は,台 湾 の 軍 港 兼 二 大 貿易 港 の 面 前 の 海 域 で あ る。 「ミサ イ ル 発 射 が 台 湾 へ の 軍 事 的 桐 喝 を 目的 とす る こ と」 は 明 らか で あ る。 ま た発 射 され たM‑9(中 国 名 「東 風15号 」)は,射 程600キ ロ, 一 発4億 円程 度 とい わ れ る解 放 軍 に とっ て は 輸 出 用 の 高 価 な戦 術 ミサ イ ル で あ る。 これ を一 回 の 演 習 で 四 発 も発 射 す る こ とは 異 常 で あ り,こ の こ とか ら も今 回 の 演 習 が 単 な る軍 事 的 威 嚇 で な い こ とは 明 白で あ る4)。李 鵬 首 相 に よ る 「武 力行 使 を放 棄 せ ず 」 とす る発 言,台 湾 海 上 封 鎖 を示 唆 す る香 港 報 道, 上 陸 演 習 を含 む 一 連 の 軍事 演 習 と挑 発 的 な 弾 道 ミサ イル 実 射 訓 練 が 続 け られ

た。 これ らの 威 嚇 的 か つ 挑 発 的 な 中 国 の 外 交 姿 勢 に,国 際 社 会 の 懸 念 と警 戒 感 が 高 ま るの は 当 然 の こ とで あ っ た。

そ もそ も米 国 を 中心 とす る 「西 側 」 国 際 社 会 は,人 権 な どの 「西 側 」 的価 値 観 と西 側 主 導 の 国 際 秩 序 に従 わ な い 中 国 に 警 戒 心 を高 め て い た 。 と くに核 関連,弾 道 弾 な ど の 高度 軍 事 技 術 をは じめ とす る無 原 則 な 売 却 は 丁 国 際 社 会 か らの 非 難 を招 き,さ らに 人権 問 題(民 主 化 問 題),文 化 的 異 質 性(文 明 の 衝 突論),人 口爆 発,エ ネ ル ギー 問題 な ど を理 由 とす る広 範 な 「中 国 脅 威 論 」

を,中 国 自 らが 呼 び寄 せ る結 果 とな っ た。

「冷 戦 」 終 結 後,世 界 は 軍 事 力 縮 小 の 方 向 に 向 け て す す ん で い る。 しか し な が ら核 実 験 の 強 行,ロ シ ア か らの 最 新 兵 器 の 輸 入 な ど,兵 力 の近 代 化 計 画 を推 進 す る解 放 軍 は 「中 国 脅 威 論 」 の 根 拠 とされ て い る。 台 湾 に た い して, きわ め て 強 硬,威 嚇 的 な 中 国 の 対 応 は,「 中 国 脅 威 論 」 を さ らに 高 め る もの で あ ろ う。 冷 戦 後 ア ジ ア の い わ ゆ る 「力 の 真 空 」 の 中 で,「 中 国 脅 威 論 」 は 他 の ア ジア 諸 国 の 軍備 拡 張 競 争 を激 化 させ る危 険 性 を有 して い る。

本 論 は,ア ジア 太 平 洋 地 域 の安 全 保 障 の 将 来 を左 右 す る 「中 国 脅 威 論 」 の

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アジア太平洋地域の軍事バランス21

真 偽 を,現 実 の 中 国 軍 事 力 を検 討 す る 中 で 明 らか に す る こ とを 目指 して い る。

中国 軍事 力 の 何 が 何 に と って 脅 威 に な り う るの か,軍 近 代 化 計 画 は何 を 目指 して い る の か,米 国主 導 の 現 状 の 国 際 的 軍事 秩 序 に とっ て,あ るい は ア ジ ア 太 平 洋 地 域 の安 全 保 障 に 中 国 の 存 在 は い か な る影 響 を与 え るの か 。 こ れ らの 問題 を明 らか に しな が ら,こ の地 域 の 平 和 と繁 栄 を継 続 して い くた め の 方 策

を考 え て い きた い 。

2.人 民 解 放 軍 戦 力 の 現 状

(1)通 常 戦 力 につ い て

① 「平 和 五 原 則 外 交 」 と戦 争 の歴 史

中 国 は,周 恩 来 の 「平 和 五 原 則 外 交 」 に 象 徴 さ れ る よ うに,自 ら を平 和 的 手 段 に よ っ て 紛 争 解 決 を 図 る平 和 的 な 国 家 で あ る と規 定 して い る。初 め て の 中 国 の 国 防 白書 と言 え る 「中 国 の 軍 備 管 理 と軍 縮 」 に も,「 中 国 の 国 防 建 設 は如 何 な る国 に 向 け られ て もの で もな く,如 何 な る国 に 脅 威 を与 え る もの で もな い 。」 と さ れ て い る。 しか し単 純 に 中 国 が 絶 対 的 な 平 和 愛 好 国 家 で あ る と考 え る もの は い な い で あ ろ う5)。朝 鮮 戦 争(1950年),金 門 ・馬 祖 砲 撃 (1958年),中 印 国 境 紛 争(1962年),珍 宝 島事 件(1969年),西 沙 ・南 沙 紛 争 (1974・88年),中 越 戦 争(1979年)と,革 命 後 の歴 史 を見 て も,自 国 の死 活 的 な権 利 と国 土 の 領 域 を守 るた め に は,た め ら う こ とな く軍 隊 を投 入 して い る。 好 戦 的 国 家 と して 非 難 され る こ と も,平 和 国家 と して 賞 賛 され る こ と も な い現 代 国 家 に す ぎな い。 中 国 は 自国 の死 活 的 な利 益 を守 る ため に は,軍 事 力 の 行 使 を ため らわ な い 「普 通 の 国 家 」 で あ る。

② 陸 海 空 軍 の 戦 力 につ い て

しか しな が ら,解 放 軍 通 常 戦 力 の水 準 が,広 大 な 国 土 と膨 大 な 人 口,隣 接 す る 旧 ソ連 や イ ン ドとは 陸 続 きの 国 境 紛 争 を,さ らにベ トナ ム や フ ィ リ ピ ン

と領 海 問 題 を抱 え,し か も朝 鮮 戦 争 とベ トナ ム 戦 争 の 二 度 の大 戦 争 を,超 大 国 米 国 を相 手 に 戦 った 国 に して は意 外 な ほ ど低 い こ と も事 実 で あ る。 例 え.ば 陸 軍 は,総 兵 力 こ そ220万,主 力 戦 車 総 数7500〜8000両 と巨大 な 戦 力 に 見 え

るが,主 力 戦 車 総 数 に は,第 二 次 世 界 大 戦 で ソ連 が使 用 した 旧式 のT‑34/

85型 戦 車 が700両 も含 まれ て い る。 こ れ は 戦 力 に含 め る こ とに 無 理 が あ る。

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数 的 に 主 力 と な る6000両 配 備 さ れ て い るT‑59型 戦 車 は,1947年 に 生 産 が 始 ま っ た 旧 ソ 連 のT‑54型 戦 車 の コ ピ ー で あ る 。 主 砲 は 旧 式 な100ミ リ戦 車 砲 で あ り,射 撃 管 制 用 の 高 度 な 電 子 装 置 は 装 備 さ れ て い な い 。 射 程 の 長 い120

ミ リ砲 と,高 精 度 の 射 撃 管 制 装 置 を 搭 載 し た 西 側 の 主 力 戦 車 と は 比 較 の 対 象 に も な ら な い 。 独 自 設 計 のT‑69型 戦 車 の 保 有 数 は200両,し か し な が ら こ の 車 両 も主 砲 は 旧 式 の100ミ リ砲 で あ る 。 西 側 のL7系105ミ リ戦 車 砲 を 搭 載 す る タ イ プ も 存 在 が 知 ら れ て い る が,世 界 の 傾 向 は す で に120mm砲 に 移 行 し て い る上 に,本 格 的 な 外 国 と の 戦 闘 に 十 分 な 数 が 換 装 さ れ て い る か 疑 問 で あ る 。 ま た,現 代 的 な 陸 軍 に 常 識 的 に 装 備 さ れ て い る武 装 ヘ リや 輸 送 ヘ リが, Z‑9×30機SA‑342×8機(フ ラ ン ス 製 ホ ッ ト対 戦 車 ミサ イ ル を 搭 載 す る

中 国 が 保 有 す る 唯 一 の 対 戦 車 攻 撃 ヘ リ),S‑70×24機(米 国 製 戦 術 輸 送 ヘ リ)と き わ め て 少 数 で あ る こ と に 注 意 して お く必 要 が あ る。 空 中 機 動 力 を有 し な い 機 動 部 隊 は,現 代 戦 で は 十 分 な 戦 闘 力 を 発 揮 で き な い 。 戦 車 や 兵 貝 数 の 割 に,現 実 の 戦 力 が 高 くな い こ と に 十 分 留 意 し て お か な け れ ば な ら な い6)。

空 軍 は,兵 員 数47万 人,作 戦 機4970機 と数 的 に は 世 界 第 三 位 の 規 模 に あ る 。 陸 軍 と 同 様 に 巨 大 な 戦 力 に 映 る 。 そ の 主 力 は,H‑6中 型 爆 撃 機i×120機i,H

‑5軽 爆 撃 機i× 約300機 以 上

,Q‑5対 地 攻 撃 機i×400機 。J‑5戦 闘 機i× 約400機, J‑6戦 闘 機 ×約3000機i,J‑7戦 闘 機 ×500機,J̲$.,闘 機 ×100機i,SU‑27戦 機 ×37機 。 さ ら に ヘ リ コ プ タ ー 約190機(武 装 ヘ リは ほ と ん ど 含 ま な い)な

ど に よ っ て 構 成 さ れ て い る 。 しか し な が ら,主 力 を構 成 す る こ れ ら の 機 体 は, 例 え ばH‑6は 旧 ソ 連 製TU‑16爆 撃 機,H‑5は や は りIl‑28の コ ピ ー で,と に ソ 連 で は か な り以 前 に 廃 棄 さ れ た 旧 式 機 で あ る 。J‑5は 旧 ソ 連 製Mig‑17 の コ ピー,J‑6はMig‑19,J‑7はMig‑21,Q‑5もMig‑19の 対 地 攻 撃 型 で あ

る 。J‑8はJ‑7を べ 一 ス に 中 国 で 自 力 開 発 し た 機 体 で あ る 。 米 国 か ら 電 子 機 器,ジ ェ ッ トエ ン ジ ン な ど を輸 入 し て 高 性 能 のJ‑811が 生 産 さ れ る 予 定 で あ

っ た が,天 安 門 事 件 の 影 響 で 米 国 の 技 術 援 助 は 中 断 自 力 開 発 に 戻 っ た と言 わ れ る。 米 国 のF‑4戦 闘 機 に 相 当 す る 機 体 で あ る と 言 わ れ,『 解 放 軍 報 』 な ど 国 内 マ ス メ デ ィ ア に し ば し ば 新 鋭 「国 産 戦 闘 機 」 と し て 登 場 す る 。 し か し Su‑27の 輸 入 に 踏 み 切 っ た こ とか ら も,軍 がMIG‑21の 改 良 版 で あ る こ の'1 体 の 性 能 に 満 足 し て い る と は 思 え な い 。Mig‑17,Mig‑19が 共 に 朝 鮮 戦 争 当 時 活 躍 し たMig‑15の 発 展 型 で あ り,Mig‑21で さ え ベ トナ ム 戦 争 当 時 活 躍 し

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ア ジア太平洋地域の軍事バ ランス23

た 戦 闘機 で あ る こ と を考 え る と,こ れ らの 中 国 国 産 戦 闘機 が,急 速 に 進 歩 す る西 側 の 戦 闘機 か ら一 世 代 も二 世 代 も遅 れ て い る こ とは 間 違 い な い 。1993年 に ロ シア か ら輸 入 さ れ,部 隊 配 備 が 始 ま っ た37機 のSu‑27戦 闘 機 は(内2機 は復 座 の 練 習 機 型),日 本 の 自衛 隊 が使 用 して い るF‑15戦 闘機 に 匹 敵 す る と 言 わ れ る高 性 能 機 で あ る。 追 加 発 注 や ラ イ セ ン ス 生 産 の 噂 が 聞 こ え て くるが,

当面 予 算 面 か ら も 中国 の 広 大 な 国 土 を防衛 す るの に十 分 な数 を準 備 で き る と は思 え な い8)。

海 軍 は,兵 員 推 定26万5千 人,潜 水 艦63隻,主 要 水 上 戦 闘 艦54隻,海 軍=航 空 隊 な どに よ って 構 成 され る大 海 軍 で あ る。 潜 水 艦 戦 力 は,戦 略 原 潜 ×1隻, 攻 撃 型 原 潜:漢 級 ×5隻,非 弾 道 ミサ イル 通 常 型:ロ メ オ 改 級 ×1隻,攻 型 通 常:宋 級 ×1隻,キ ロ級 ×2隻,明 改 級 ×12隻,ロ メ オ級 ×40隻 あ ま り

を保 有 す る9)。 ロ メオ 級 は1959年 の 中 ソ海 軍 技 術 引 き渡 し協 定 に よ っ て,国 産 が 始 ま っ た デ ィー一ゼ ル潜 水 艦 で あ る。 明 級 は ロ メ オ 級 の 改 良 型 で1971年 に 登 場 し た。 こ の2隻 は,「 現 在 の 潜 水 艦 技 術 か らす る と き わ め て 旧式 で,外 洋 作 戦 能 力 も低 か っ た 。」 と され る。 一 説 に は 潜 水 す るの も危 険 な くら い老 朽 化 の 進 ん だ艦 も 多 い と い う10)。漢 級 は1974年 に 公 開 試 験 が 始 ま っ た 国 内 開 発 の 攻 撃 型 原 潜 で あ るが,技 術 的信 頼 性は低 く,稼 働 率 は か な り低 い と報 じ られ て い る。 問 題 は や は りロ シ ア か ら購 入 さ れ た キ ロ級 潜 水 艦 で あ る。 現 段 階 で は た っ た2隻 で 戦 力 に は な ら な い か も しれ な い が,唯 一 外 洋 作 戦 能 力 を有 す る近 代 的 通 常 動 力 攻 撃 型潜 水 艦 で あ り,今 後 の 取 得 数 と使 用 法 に よ っ て は 周 辺 諸 国 に 大 き な脅 威 を与 え る こ とに な る。

主 要 水 上 戦 闘艦 は,主 に ミサ イ ル 駆 逐 艦18隻 と フ リゲ ー ト艦32隻 か ら な る。

他 に220隻 の ミサ イル 艇 と160隻 あ ま りの 魚 雷 艇 が 存 在 す るが,旧 式 な上 沿 岸 用 で あ り問題 に は な らな い だ ろ う。 ミサ イ ル駆 逐 艦 は,旅 湖 級 ×1隻,旅 改 級 ×2隻,旅 大 級 ×15隻,フ リゲー ト艦 は,江 衛 級 ×4隻,江 濯 級 ×26隻 成 都 級 ×2を 保 有 す る。 旅 大 級 は ソ連 の コ トリン級 をべ 一 ス に1971年 にii 艦 が 配 備 され た。 更 に 旧 式 の 中 国 製HY‑2艦 対 艦 ミサ イル を搭 載 す る が,対 潜 ヘ リコ プ ター も,対 空 ミサ イ ル も持 た な い 旧 式 艦 で あ る。 こ れ に 国 産C‑

801対 艦 ミサ イ ル を搭 載 した り,ヘ リ コプ ター を搭 載 した の が 旅 大 改 級 で あ る。 旅 湖 級 は1993年 に 配 備 され た新 型 艦 で あ る。 べ 一 ス は 旅 大 級 で あ るが, 主 機 は 米 国 製 の ガ ス ター ビ ン,国 産 の新 型C‑801対 艦 ミサ イル,フ ラ ン ス製

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の電 子 装 置,艦 対 空 ミサ イ ル,ヘ リコプ ター を搭 載 し た海 軍 唯 一 の 近 代 的 駆 逐 艦 で あ る。 現 在 は米 仏 両 国 か らの 公 式 の 軍事 協 力 が 停 止 され て い るの で, 旅 湖 級 が こ の 形 で増 産 され る可 能1生は きわ め て 低 い と言 わ れ る。 成 都 級 は, 1950年 代 に 建 造 され た 旧式 艦 で あ るの で,HY‑2対 艦 ミサ イ ル を搭 載 して い

る もの の 問 題 に な らな い だ ろ う。 江 濾 級 は1970年 代 中期 か ら建 造 が 始 ま っ た 艦 で あ る。HY‑2対 艦 ミサ イ ル を搭 載 す る他 は,砲 や 対 潜 ロ ケ ッ トを搭 載 す る程 度 で,ヘ リコプ ター を搭 載 した もの も存 在 す るが き わ め て 少 数 で あ る。

江 衛 級 フ リゲー ト艦 は,1991年 に 一 番 艦 が就 役 した新 型 艦 で あ る。C‑801対 艦 ミサ イ ル や,HQ‑61対 空 ミサ イ ル な どの 近 代 的 装 備 を有 し,フ ラ ン ス製 ヘ リ コプ ター も搭 載 す るが ,遠 距 離 対 空 監 視 レー ダー を搭 載 して い な い な ど 電 子 装 置 に 大 き な 欠 陥 が あ る よ うで あ る。 各 国 の駆 逐 艦 ・フ リゲ ー ト艦 は, 主 機 に は 強 力 な ガ ス ター ビ ン ・エ ン ジ ン,警 戒 ・火 器 管 制 シ ス テ ム に は 多数

目標 に 同 時 に ミサ イル を誘 導 で き る高 度 な電 子 装 置,対 艦 ミサ イ ル や 対 空 ミ サ イ ル を装 備 して い る。 しか も対 潜 ヘ リ コプ ター を搭 載 し,さ らに バ ル カ

ン ・フ ァ ラ ン クス な ど近 接 防御 シス テ ム を装 備 して い る の は 常 識 で あ る。 こ れ に対 し,中 国 の 主 力 水 上 艦 は,主 機 は 旧式 の デ ィー ゼル エ ン ジ ン で鈍 足, 主 兵 装 は砲 あ る い は鈍 足 の 有 翼 ミサ イ ル,さ らに 警 戒 ・管 制 電 子 シ ス テ ム は 未 装 備 で あ る。 こ れ ら中 国 主 力 水 上 艦 艇 は,新 造 の新 鋭 艦 で あ っ て も,世 の 技 術 水 準 か らか な り遅 れ た戦 闘力 の 低 い艦 で あ る こ とが 明 白 で あ る11)。

③ 大 量 の 旧式 兵 器 と少 数 の 新 型 兵 器

中 国 軍 事 力 に つ い て,そ の装 備 面 か ら詳 細 に 検 討 す る と,大 量 の 旧 式 兵 器 と少 数 の近 代 化 され た新 型 兵 器 が 混 在 して い る こ とが 分 か る。 旧 式 兵 器 は, 旧 ソ連 製 兵 器 を 自国 で生 産 した もの,あ るい は 旧 ソ連 製 兵 器 を中 国 で 改 良, 量 産 した もの を主 力 に して い る。 この 場 合 これ らの 兵 器 が ソ連 で制 式 化 さ れ

た の が 主 に1950年 代 で あ る こ とに,留 意 しな け れ ば な ら な い 。 陸 海 空 軍 の 大 部 分 は,基 本 的 に朝 鮮 戦 争 当 時 の兵 器 を,改 良 し た もの で装 備 され て い る と 言 っ て も差 し支 え な い だ ろ う。 解 放 軍 自身 も兵 器 の 旧 式 化 は 自覚 して お り, エ ン ジ ンや 搭 載 電 子 機 器 や 積 載 す る兵 器 を部 分 的 に 改 良 す る こ とで,戦 闘 力

の 向上 を 目指 して きた。 しか し中 ソ関 係 の さ らな る悪 化 に よ っ て ソ連 か らの 兵 器 技 術 情 報 は 途 絶 え,一 時 は 自力 開 発 も試 み た が 多 くは失 敗 した。 そ の 後 米 国 を は じめ とす る西 側 の 軍 事 技 術 協 力 を うけ て,一 連 の 兵 器 近 代 化 計 画 を

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アジア太平洋地域の軍事バ ランス25

推 進 した。 主 力 戦 車 の 主 砲 を,英 国 製L‑7・105mm対 戦 車 砲 に 換 装 した り, 旧 ソ連 製 戦 闘機 に 米 国 製 の ジ ェ ッ ト ・エ ン ジ ンや 電 子 装 置 を搭 載 す るJ‑811 戦 闘機 の 開 発 計 画,西 側 製 の ガ ス ター ビ ン ・エ ン ジ ンや ミサ イ ル,電 子 装 置

を搭 載 した 旅 湖 級 駆 逐 艦 の建 造 な ど 多数 の兵 器 改 良 計 画 が 推 進 され た 。 しか し西 側 の 対 中軍 事 技 術 援 助 は,天 安 門 事 件 で こ と ご と く中 止 さ れ,中 国 兵 器 の 西 側 の 技 術 に よ る近 代 化 計 画 は 一 部 が 実行 され た だ け で大 部 分 は 中 断 さ れ た 。 現 在 装 備 され て い るい わ ゆ る新 型 兵 器 は,限 定 的 に 生 産 さ れ た これ らの 改 良 型 兵 器 か,冷 戦 終 結 後 ロ シア か ら購 入 さ れ た 「ロシ ア 製 兵 器 で あ る。

結 果 と して,現 在 の解 放 軍 の 軍 事 力 が,数 的 に は 巨大 で あ っ て も,旧 式 で 近 代 化 され て お らず,し か も老 朽 化 して 実効 性 の薄 い もの で あ る こ とは 間違 い な い だ ろ う。 西 側 の 技 術 に 依 存 した 兵 器 は数 が きわめ て少 な い 上 に,援 の途 絶 え た今 メ ン テナ ン ス さ え不 安 定 で あ る。 よ うや く購 入 した ソ連 製 新 型 兵 器 は,従 来 の 兵 器 との 技 術 ギ ャ ップ が あ ま りに大 き く使 い こ な す まで に 時 間 が か か る と言 わ れ る。 い ず れ にせ よ湾 岸 戦 争 で示 され た よ うな 西側 の 高 度 に近 代 化 さ れ た 海 空 軍 力 に は,ま と もに 対 応 で き な い だ ろ う。 「人 民解 放 軍 の通 常 戦 力 の 実 力 全 般 に つ い て は,〜 中 国 軍 が お お む ね 朝 鮮 戦 争 当時 の兵 器 に よ る時代 遅 れ の 戦 力 の ま ま だ と形 容 して い る。 航 空 戦 力 は特 に遅 れ て お り, 海 軍 力 はせ い ぜ い の と こ ろ近 海 で の 作 戦 能 力 が あ る と い う段 階 に あ る12)。

しか し,軍 事 力 は相 対 的 な もの で あ る。 相 手 が 相 対 的小 規 模 な 軍 隊 しか 持 た な い 東 南 ア ジア の 国 な らば,少 数 が 輸 入 され た 旧 ソ連 製 近 代 兵 器,キ ロ級潜 水 艦 やSu‑27戦 闘'1,あ る い は 前 近 代 的 な 中 国 製 兵 ・器 も大 き な効 力 を示 す か も しれ な い。 中 国 軍 事 力 の将 来 を左 右 す るの は,西 側 あ る い は ロ シア の 軍事 技 術 の 供 与 の 有 無 と言 え るの か も しれ な い 。

(2)核 戦 力

① 中 国 の核 戦 略

中 国 は ロ シア 極 東 部 を別 に す れ ば,ア ジア 地 域 に お け る唯 一 の核 保 有 国 で あ る。 しか も水 爆 を保 有 し,少 数 で は あ るが 米 国 ま で 到 達 す る大 陸 間 弾 道 弾, 長 距 離 爆 撃 機,戦 略 原 潜 を装 備 す る本 格 的 な核 大 国 で あ る。

日本 の 中 国 軍 事 専 門家 で あ る平 松 茂 雄 は,「 米 国 ・ソ連 の 戦 略 核 攻 撃 に 対 して 生 き延 び る こ との で き る 『第 二 撃 能 力 』 を保 有 して い る こ と7言 い換 え

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る な らば 最 小 限 核 抑 止 力 を構 築 す る 目的 が 達 成 さ れ た こ と を 明 ら か に し た13)。」 と して,中 国 が 米 ソに 対 して 「最 小 限 核 抑 止 力 」 を保 有 す る と主 張 す る。 また 平 可 夫 は 中 国 の 「最 小 限 抑 止 力 」 に つ い て,「 必 要 に 応 じて 経 済 中心 地 や 大 都 市 な ど 人 口密 集 地 に 反 撃 を加 え,相 応 の核 恐 怖 心 を与 え る こ と に よ っ て 『報 復 威 嚇 』 の 目的 を達 成 す る とい う もの で あ る14)。」 と して,核 が 単 に相 手 の核 攻 撃 を思 い と ど ま らせ る 「報 復 力 」 と して だ け で な く,よ 広 範 な 「抑 止 力 」=「威 嚇 力 」 と して の 力 を発 揮 す る こ とに論 及 して い る。

しか し,初 め て の 公 式 の 国 防 白書 と もい え る 「中 国 の 軍 備 管 理 と軍 縮 」 の 中 で,中 国 政 府 自体 は 以 下 の よ うに 主 張 す る。 「中 国 の核 兵 器 は 始 終 自衛 を 目的 と し,他 国 に脅 威 を与 え ず,核 軍 拡 競 争 に 加 わ らず,核 実 験 に お い て も 終 始 自制 を保 っ て る。」 「中 国 は核 を保 有 した そ の 日か ら,い か な る時,い な る状 況 に あ っ て も核 を先 制 使 用 せ ず,非 核 保 有 国 お よ び非 核 地 帯 に 対 して は 無 条件 で核 を使 用 せ ず,ま た使 用 の 威 嚇 を行 わ な い と厳 粛 に 誓 約 した 。」

と して,自 国 の核 軍 備 は ま った く自衛 目的 で あ る と正 当化 して い る15)。

しか し中 国 国 防 科 学 技 術 情 報 セ ン ター の 軍 備 管 理 ・軍 縮 部 門研 究 員 で あ る 劉 華 秋 は,「 中 国 が 宣 言 して い る軍事 戦 略 は 『現 代 的 条 件 の も と で の 人 民 戦 争 』 で あ る。 私 は この 戦 略 を,通 常 防御 と限定 的 核 抑 止 の二 つ の部 分 に 分 け る。 通 常 防御 は わ が 国 の 戦 略 の 主 要 な 基 礎 とな る もの で あ り,『 核 抑 止 』 に

『限 定 的 』 役 割 を発 揮 させ る。 い わ ゆ る 『限 定 的 』 とは,一 つ に は わ が 国 の 核 兵 力 の規 模 が小 さ く,五 力 国 の核 保 有 国 の 中 で最 小 で あ り,兵 ・器 の性 能 も

ま た こ れ らの 国 家 よ り も優 秀 で は な く,こ の ため に 限定 的 な抑 止 の 役 割 しか 発 揮 で きな い か らだ 。 二 っ に は,中 国 の核 兵 器 は全 て の 戦 争 を封 じ込 め る た め に 用 い られ るの で は な く,核 戦 争 を封 じ込 め る ため だ け に 用 い られ る の で あ って,完 全 に 防 御 的 な もの で あ る。 敵 の 通 常 戦 力 に よ る侵 攻 を核 戦 略 に含 め る米 ロ,ま た 英 仏 の核 抑 止 とは 異 な っ て い るの で あ る16)。」 と述 べ る。 劉 は,中 国 の核 は核 戦 争 を抑 止 す るた め だ け の 「限 定 的 」 な役 割 を与 え られ て お り,通 常 戦 争 へ の抑 止 力 と して の役 割 は 与 え られ て い な い,純 粋 な 防御 力 と して の核 戦 力 で あ る と して い る。 本 来 核 兵 器 は,全 て の 戦 争 を抑 止 す る。

い い か え れ ば 国 家 間 の 政 策 全 般 に わ た って,影 響 力 を行 使 す る もの だ。 彼 は 中 国 の 核 戦 力 が 質 ・量 両 面 で 他 の 四 大 核 保 有 国 よ り も劣 っ て い る た め に,

「限 定 的 な抑 止 の役 割 しか 発 揮 で きな い。」 と主 張 す るの で あ る。 中 国 核 につ

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ア ジア太平 洋地域 の軍事 バ ラ ンス27

制式名 NATO名称 配備数 射程

配備年 航続 距離 Km

弾頭 ×爆発 威力 弾 頭保 有数 [戦略爆撃機]

H‑5

B‑5

30 1968 1200

1× 爆弾

H‑6 B‑6 X20 1965

3×00

1× 爆 弾 X50

Q‑5 A‑5 30 1970 400 1× 爆 弾

[地 上 配 備 ミサ イ ル]

DF‑3A CSS‑2 50 1971 2800

1×1‑3Mt

50

DF‑4 css‑3 20 1980 4750

1×1‑3Mt

20

DF‑5A CSS‑4

4

X981> X3000 1x1‑‑5Mt

4

DF‑21 CSS‑6 36

X985‑86

1800 ].x200‑300kt 36 [潜水 艦発 射弾道 ミサ イル]

JL‑1 CSS‑N‑3

24

1986 1700

1×200‑300kt 24 (註17)

い て 一 般 に は7米 露 に 対 し相 互 抑 止 の た め の最 小 限抑 止 力 を構 成 し,核 保 有 国 だ け で な く非 核 保 有 国 に 対 して も核 抑 止 力(威 嚇 力)を 有 す る と認 識 され て い る。 しか し,中 国側 は 「自衛 の ため の核 」 とい う側 面 を強 調 して い る。

中 国核 兵 器 は 遅 れ て お り,攻 撃 力 が低 い ため に,米 露 か らの核 戦 争 の 脅 迫 に 対 して の み 有 効 な,き わ め て 限定 的 能 力 しか 有 して こ なか っ た と主 張 す る。

② 核 戦 力 の 実 態

1995年1月 現 在 の 中 国核 戦 力 につ い て,ス ウ ェー デ ン ・ス トッ ク ホル ム平 和 研 究 所 の 資 料 に基 づ い て検 討 して み よ う。

H‑5型 爆 撃 機 は,旧 ソ連 製Il‑28の コ ピー,Q‑5は や は り旧 ソ連 製Mig‑19 改 造 の攻 撃 機 で,共 に 原 型 は 朝鮮 戦 争 当 時 の機 体 で あ る。H‑6型 も 旧 ソ連 製 TU‑16爆 撃 機 の コ ピー で,こ れ も原 型 は1951年 に初 飛 行 した 旧式 機 で あ る。

しか もい ず れ も米 露 の 戦 略 爆 撃 機 が装 備 して い る航 空 機 搭 載 型 巡 航 ミサ イル や 短 距 離 核 ミサ イ ル を装 備 して お らず,旧 式 の 自由落 下 式 核 爆 弾 の み を搭 載 す る。 い ず れ に せ よ米 国 や ロ シ ア が 生 産 す る近 代 的 な レー ダー 網 と防 空 ミサ イル,防 空 戦 闘 機 に よ る 防 空 シス テ ム を突 破 して核 攻 撃 が で き る とは考 え に くい。

核 攻 撃 力 の 中核 で あ る地 上 配 備核 ミサ イル は 以 下 の よ うに構 成 され て い る。

米 国 へ の 抑 止 力 と な る13000キ ロ の 射 程 を 有 す る大 陸 間 弾 道 弾 は,4基

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DF‑5Aが 配 備 さ れ て い る だ け で あ る。 ロ シ ア へ の 核 抑 止 力 とな る モ ス ク ワ に 到 達 で き るDF‑4は20基,50基 が 配備 され る射 程2800キ ロ のDF‑3は 日本,

イ ン ド,ロ シ ア 極 東 部 ま で を射 程 に お さめ て い る だ け で あ る18)。 そ の 上 新 型 のDF‑21以 外 の ミサ イ ル は,移 動 が 困 難 な上 に 発 射 準 備 に 時 間 が か か る 液 体 燃料 ロ ケ ッ トで あ る。 待 機 場 所 か ら引 き出 して 発 射 態 勢 を整 え る前 に, 高 精 度 の 偵 察 衛 星 と命 中 精 度 が 飛 躍 的 に 高 ま っ た 米 露 の 新 型ICBMに よ っ て発 見 され,先 制 攻 撃 を受 け て破 壊 され て し ま う可 能 【生が 高 い 。 中 国 の 地 上 配備核 ミサ イ ル は保 有 数 と即 応 性 の 問 題 か ら,核 報 復 力 と して の 信 頼 性 は 低 い と言 わ な け れ ば な る まい。 しか も報 復 核 戦 力 の 要 と され る潜 水 艦 発 射 弾 道 ミサ イル は,常 時 海 洋 に配 備 され,核 ミサ イ ル の 発 射 態 勢 を整 え て い な け れ ば 意 味 が な い。 しか し 中 国 の ミサ イ ル 原 潜 は,搭 載SLBMの 信 頼 性 と,こ れ を搭 載 す る戦 略 原 潜 自体 の 原 子 炉 不 調 か ら,い ま だ に実 戦 配備 に つ い て い

る こ とが 確 認 され て い な い。 現 在 お そ ら くJL‑1/SLBM×2発 を搭 載 した, 通 常 動 力 型 ゴ ル フ級 実 験 潜 水 艦 が 緊 急 配 備 の た め に港 に用 意 され て,必 要 な 場 合 に 出 航 して ミサ イル 発 射 態 勢 に つ くこ とに な っ て い る と言 わ れ て い る。

これ で は 報 復 核 戦 力 と して は ほ とん ど意 味 を持 た な い だ ろ う18)。

ま た現 在 の 戦 略 爆 撃 機 の 主 力,H‑6の 配 備 が 始 ま っ た の が1965年,DF‑5

・ICBMの 配 備 が 始 ま っ た の が1981年 ,JL‑1・SLBMと 新 型 の 固 体 燃 料 式 ミサ イ ルDF‑21が,配 備 され た の が1986年 で あ る。 こ の86年 か ら95年 に 至 る10年 近 くの期 間,中 国核 戦 力 の発 展 は 実 質 的 に停 滞 して い た。 新 型 兵 器 の 開 発 は 続 い て い た が,現 実 に 配備 さ れ た新 た な核 シ ス テ ム は 観 測 さ れ なか っ た。 しか し この 間対 抗 関 係 に あ る米 露 の 戦 略 核 兵 器 は,戦 略 兵 器 制 限 交 渉 の 進 展 に よ っ て,量 的 に は減 少 して も質 的 に は 逆 に着 実 な進 歩 を遂 げ て い る。

特 に 米 国 のICBMは,MaRV(個 別 誘 導 型 多核 弾 頭)を 搭 載 し,560mか ら370mにCEPを 高 め た ミニ ッ トマ ンIII・ICBMや,120mのCEPを 有 す る とさ れ るMXミ サ イ ル が 配 備 さ れ る よ うに な っ た。 こ れ らの 新 型 ミサ イ ル は,高 い 命 中精 度 に よ っ て,相 手 のICBMを 先 制 攻 撃 で 破 壊 す る第 一 撃 能 力 を飛 躍 的 に 高 め て い る19)。 また 戦 略 爆 撃 機 は,目 標 を 防 空 兵 器 の 射 程 外 か ら攻 撃 で き る短 距 離 ミサ イ ルACMや,数 千 キ ロ の射 程 とCEP数 十 メ ー トル とい う命 中精 度 を併 せ 持 っ た航 空機 発 射 巡 航 ミサ イ ルALCMを 搭 載 で き る よ うに な っ た 。 これ ら の 高 度 な 搭 載 兵 器 に よ り,ICBM基 地 な ど強

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アジア太平洋地域の軍事バランス29

固 に 防御 され た 目標 へ の 攻 撃 力 と生 存 性 を飛 躍 的 に 高 め る こ とに な っ た20)。

ま たSLBMの 命 中精 度 も大 き く改 良 さ れ,本 来 の 役 割 で あ る報 復 攻 撃 に と ど ま らず,高 度 な 命 中精 度 を要 求 さ れ る対 兵 力攻 撃 に も転 用 可 能 な ミサ イ ル さ え 出現 す る よ う に な っ た21)。 こ う して 中 国 核 戦 力 の 成 長 が 実 質 的 に 停 滞 す る 中 で,逆 に 米 露 の核 戦 力 は近 代 化 に よ っ て質 的 向 上 を続 け,核 第一 撃 能 力 つ ま り報 復 核 戦 力 に 対 す る先 制 核 攻 撃 能 力 を大 幅 に 高 め て い っ た。 中 国 の 保 有 す る 「最 小 限 抑 止 力 」 は,相 対 的 に低 下 して い っ た22)。

先 の 劉 華 秋 の 分 析 に 見 られ る中 国 核 戦 力 を,米 露 の核 攻 撃 を抑 止 す る 「最 小 限 」 の 力 しか 有 しな い とす る見 方 は,こ の よ うな近 代 化 の遅 れ た 自国核 戦 力 の 実 態 を踏 ま え,最 も不 利 な条 件 の下 で の 自国核 の影 響 力 を最 小 限 に 見積 も っ た結 果 で あ る と言 え る。 逆 に 平 松 を は じめ とす る西 側 軍 事 筋 の 見 解 は 異 な っ て い る。 米 ロ に 影 響 力 を 与 え る 「抑 止 力 」 だ け で な く非 核 保 有 国 へ の

「核 威 嚇 力 」 も含 め た本 来 的 な 意 味 で の 「最 小 限抑 止 力 」 を有 す る とす る 自国 陣 営 に最 も不 利 な条 件 の も とで,理 想 的 に行 使 され た 中 国核 戦 力 を評 価 した 結 果 で あ ろ う。

中国 核 戦 力 は,近 代 化 が す す む他 の核 保 有 国 に 対 し,相 対 的 に 旧式 化 しつ つ あ る。 核 戦 力 的 に 見 れ ば,中 国 の核 は きわ め て脆 弱 な状 態 に 置 か れ て お り,

「抑 止 力 」 に よ っ て 核 攻 撃 を 防 止 す る よ り も,戦 争 に な っ た場 合 核 攻 撃 を誘 発 す る要 因 に な りか ね な い の か も しれ な い。 しか し米 露 に 対 す る政 治 的 な象 徴 的 「最 小 限抑 止 力 」 を喪 失 した とは 言 え な い で あ ろ う。 米 露 英 仏 の核 兵 器 近 代 化 に よ っ て 純 軍事 的抑 止 力 は相 対 的 に低 下 した と して も,核 兵 器 自体 の 強 大 な破 壊 力 に よ っ て,核 は政 治 的 な 「抑 止 力 」 を喪 失 して は い な い だ ろ う。

た っ た 一 発 のICBMが 発 射 さ れ れ ば,た とえ そ れ が 米 国 で あ っ て も 目標 と な っ た 国 は 耐 え 難 い 損 害 を受 け る。 現 在 の 技 術 で は 発 射 さ れ たICBMを 果 的 に 迎 撃 す る方 法 は存 在 し な い し,た っ た 一 発 の 核 弾 頭 が 大 都 市 を消 滅 さ せ て し ま う。 中 国 に 限 らず 核 ミサ イ ル発 射 ま で追 い込 も う とす る政 策 を あ え て 採 用 しよ う とす る事 態 は,い か な る国 家 で も よほ どの こ とが な い 限 り選 択 で き る もの で は な い 。 や は り中 国核 戦 力 は そ の 軍 事 的 影 響 力 は相 対 的 に低 下 した と して も,引 き続 き米 露 さ らに 周 辺 各 国 に対 し,非 常 に 大 き な政 治 的 ・ 軍事 的 影 響 力 を与 え て い る と考 え られ る。

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(3)転 換 期 の 解 放 軍 戦 力

核 ・非 核 を問 わ ず 中 国 の 戦 力 は,相 対 的 に低 下 して い る と見 て 間 違 い あ る ま い。 そ の最 大 の 原 因 は,装 備 す る兵 器 の 老 朽 化 と陳 腐 化 で あ ろ う。 解 放 軍 の 装 備 近 代 化 の速 度 は,世 界 の 水 準 か ら大 き く遅 れ て い る。 遅 れ た理 由 は 明

らか で あ る。

1957年10月 に締 結 さ れ た 「中 ソ 国 防 新 技 術 協 定 」 をは じめ とす る ソ連 か ら の 軍 事 援 助 に よ っ て,陸 軍 歩 兵 部 隊 を主 力 とす る革 命 軍 で しか な か った 人 民 解 放 軍 は,核 兵 器,ミ サ イ ル,新 型 戦 闘機,戦 車i潜 水 艦 大 型 水 上 艦 艇 な ど を装 備 す る近 代 的 軍 隊 へ と一 気 に 成 長 した。 朝 鮮 戦 争 も ま た先 進 的 な ソ連 製 兵 器 が 流 入 す る機 会 とな っ た 。 中 ソ関 係 が 次 第 に 悪 化 して い く中 で,ソ 製 兵 器 の 複 製,改 良 に努 め,国 産 化 を強 力 に推 進 す る こ とに な る。 しか し文 化 大 革 命 の 混 乱 は,ソ 連 製 兵 器 の 改 良 と国産 化 の 自力 開発 努 力 を も阻 害 す る。

解 放 軍 の政 治 闘争 へ の 投 入 は 軍 本 来 の 戦 力 を低 下 させ る一 方 で,軍 組 織 内 の 兵 器 開発 ・生 産 シ ス テ ム を も混 乱 させ た。 郡 小 平 の再 登 場 に よ って 文 革 の混 乱 は 収 拾 さ れ,彼 の 強 力 な 指 導 の 下 「四 つ の 現 代 化 」 建 設 が 推 進 さ れ る。

「人 民 戦 争 戦 略 」 体 制 の 転 換 が 始 ま り,軍 も 「革 命 軍 」 か ら 「国 防 軍 」 へ の 改 編 が 開 始 され,「 百 万 人 削減 計 画 」 「階 級 制 度 復 活 に よ る軍 組 織 の 正 規 化 」 な どが,実 行 され る よ うに な っ た。 こ の 間 経 済 建 設 が 最 優 先 され,軍 事 予 算 は 削 減 さ れ 軍 需 工 業 の 民 需 転 換 が 推 奨 さ れ た もの の,米 国 を中 心 とす る 「西 側 の 軍事 技 術 」 協 力 に よ っ て,老 朽 化 す る兵 器 の 近 代 化 努 力 は 継 続 され た。

しか し天 安 門事 件 は,西 側 軍 事 技 術 協 力 の 中 断 を招 き,兵 器 開 発 と改 良 計 画 は再 び停 滞,事 実 上 の休 止 状 態 を招 くこ とに な っ た 。

こ の結 果,当 初 は か な り強 力 で あ っ た軍 事 力 は装 備 ・編 成 と もに,時 の 経 過 と共 に老 朽 化,旧 式 化 し た。 中国 軍事 力 は,核 兵 ・器 の 存 在 と兵 員 の 絶 対 数 とい う条 件 を除 け ば,冷 戦 の 激 化 に伴 う米 ロ の 高 度 技 術 に よ る軍 事 力 強 化 と 相 反 して 地 盤 沈 下 を続 け て きた。 「人 民 戦 争 」 戦 略 は,「 自国 に侵 攻 して きた 敵 を,自 国領 土 内 に深 く誘 い込 ん で繊 滅 す る」 とい う意 味 に お い て 「専 守 防 衛 」 戦 略 で あ り,西 側 先 進 国 に とっ て 旧 ソ連 に対 す る 「防 壁 」 で あ る。 しか も兵 器 近 代 化 が 遅 れ た 中 国 は,少 な くと も西側 先 進 国 に とっ て は,脅 威 を与 え な い 「内 向 き」 の 軍 隊 と評 価 され て きた の か も しれ な い 。 天 安 門事 件 ま で,

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アジア太平洋地域の軍事バ ランス31

西 側 の 対 中軍 事 協 力 が 推 進 され て きた事 実 に よ って,そ れ は裏 付 け られ て い る。

現 状 に お い て は,中 国 軍 事 力 の 対 外 的 影 響 力 は,昨 今 頻 繁 に 報 道 され る

「中 国 脅 威 論 」 が 主 張 す る危 険 な 状 態 とは,か な りか け 離 れ た 実 態 に あ る と 考 え られ る。 時 折 示 す 強 硬 な 意 思 の 表 明 とは裏 腹 に,通 常 戦 力 に お い て も核 戦 力 に お い て も,中 国 が 自 国 の 軍事 力 強化 に よ って 「冷 戦 後 」 抑 止 力 を高 め た とす る証 拠 は 乏 しい。 逆 に 軍 事 力 の 実 態 か ら考 え れ ば,「 脅 威 」 を感 じて い る の は い つ まで も近 代 化 が 進 ま な い解 放 軍 の 方 で あ るか も しれ な い。 冷 戦 後 唐 突 に生 ま れ た 「中 国 脅 威 論 」 は,冷 戦 後 の 国際 的 軍 事 秩 序 の環 境 の 激 変 に よ っ て 生 み 出 さ れ た もの で あ ろ う。 何 故,「 中 国 脅 威 論 」 が 台 頭 して き た で あ ろ うか 。 次 に 「冷 戦 後 」 米 国 の 軍 事 的 影 響 力 の低 下 と,こ れ に伴 う中 国 軍 事 力 へ の 懸 念 の 高 ま りに つ い て検 討 して 見 た い。

3.中 国 の 戦 略 的 意 図 と兵 器 近 代 化 計 画

(1)核 近 代 化 計 画 と そ の 意 図

CTBT(包 括 的 核 実 験 禁 止 条 約)交 渉 の 大 詰 め の 段 階 で,中 国 は 駆 け 込 み 的 に 核 実 験 を 行 っ た 。 最 大 の 目 的 は}開 発 末 期 に あ る と さ れ るICBM東 風31号 と東 風41号,SLBM巨 浪2号 の3種 類 の 新 型 ミ サ イ ル に 搭 載 す る 核

弾 頭 の 実 験 に あ っ た と さ れ る。 現 在 主 力 のDF‑5・ICBMは,液 体 燃 料 式 で 大 型 な 上,待f1場 所 か ら 引 き 出 し て 発 射 ま で 約3時 間 が 必 要 だ と い わ れ る23)。 敵 の 先 制 攻 撃 を 防 ぐ た め に は,固 体 燃 料 化 に よ る 移 動 可 能 な 小 型 ミ サ イ ル の 開 発 と待 機 時 間 短 縮 が 必 要 だ と さ れ て き た 。 しか もDF‑4型 とDF‑

5型 の ペ ト「ロ イ ー ドは2000キ ロ,DF‑31,JL‑2の 弾 頭 重 量 は700キ'ロ,DF‑

41が800キ ロ 程 度 と さ れ て い る の で,か な り軽 量 化 さ れ た 弾 頭 が 必 要 と さ れ る 。 こ れ ら の 開 発 中 の 核 弾 頭 の 爆 発 威 力 は,お そ ら く単 弾 頭 型 で200キ ロ ト ン か ら300キ ロ トン,複 数 弾 頭 型 で 数10キ ロ トン か ら200キ ロ トン と予 測 さ れ る24)。 そ の 後 中 国 がCTBT締 結 に 積 極 的 に 動 き 出 し た こ と か ら,こ の 弾 頭 の 開 発 に ほ ぼ 見 通 し が つ い た と予 測 さ れ る 。DF‑‑31は1995年 に 実 験 に 成 功, JL‑2とDF‑41は 今 後10年 以 内 の 完 成 と さ れ て い る 。 さ ら に 現 在 は 弾 頭 の MIRV化 と命 中 精 度 の 向 上 に 取 りか か っ て い る と予 測 さ れ る 。 ま た 信 頼 性

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の 乏 しい 夏 級SSBNに か わ っ て,JL‑2を 搭 載 す る新 型 の 戦 略 原 潜 の 開 発 も 伝 え られ,も し も来 世 紀 に これ が 配備 され る こ とに な れ ば,こ れ が 中 国 報 復 核 戦 力 の 中核 とな る だ ろ う。

核 兵 器 近 代 化 の 当面 の 目標 は,「 △ICBMを 現 在 の8基 か ら30基 へ ほ ぼ4 倍 に増 加 し△ 硬 化 サ イ ロ内 固 定 発 射 管 へ のICBM装 墳 を増 や し△ 固体 燃 料 推 進 に し△ 望 む ら くは,で き る だ け 多 くの ミサ イ ル を複 数 個 別 目標 誘 導 弾 (MIRV)化 す る25)。」 と も伝 え られ て い る。 仮 に 上 記 の 開 発 計 画 が 実 現 す れ ば,老 朽 化 した戦 略 爆 撃 機(新 た な戦 略 爆 撃 機 の 開 発 計 画 は伝 え られ て い な い。),旧 式 で 数 の 少 な いICBM,信 頼 性 に 欠 け る 戦 略 原 潜 とい っ た 米 国 や ロ シア に 対 して は不 十 分 な 「核 抑 止 力 」 を強化 す る こ とが で き る。 命 中精 度 や 信 頼 性,即 応 性 に勝 る新 型ICBMを,核 攻 撃 に も耐 え る 強 固 な地 中 の サ イ ロ に格 納 し,さ ら に対 弾 道 ミサ イ ル 防 御 に も対 抗 で き るMIRV化 さ れ た 新 型 弾 頭 を使 用 す る こ とで,米 ロに 対 す る 「最 小 限 抑 止 力 」 を確 立 で き る と 考 え て い る の だ ろ う。

中 国核 戦 力 近 代 化 の 最 終 的 目標 に つ い て 「中国 の 最 終 的 目標 は,ロ シ アや 米 国 に よ って 政 治 的 に関 与 さ れ る とい う懸 念 無 しに,自 ら地 域 的 安 全 保 障 問 題 を処 理 し う る水 準 ま で,そ の核 能 力 を建 設 す る こ と に あ る26)。」 と して,

と くに 米 国 の 干 渉 を嫌 う 中 国 が,米 露 との 「相 互 抑 止 体 制 」 完 成 を核 軍備 計 画 の 目標 に お く と して い る。 これ らの 計 画 が 達 成 され る こ とで,核 兵 器 開 発 計 画 は 完 了 す るの で あ ろ うか 。 こ れ につ い て呉 鵬 は,中 国 の 軍 事 専 門 誌 『現 代 軍 事 』 に お い て,「 米 国 の 核 威 嚇 抑 止 政 策 は 変 わ ら な い 」 と して 以 下 の よ

うに分 析 す る。

① 核 抑 止 の 対 象 が,旧 ソ連 に 対 す る大 規 模 核 報 復 か ら,政 治 情 勢 が 不 安 定 な 旧 ソ連 地 域 に対 す る核 抑 止,ま た 第 三 世 界 の 国 家 が 有 す るか,あ る い は 拡 散 す る可 能 性 の あ る大 量破 壊 兵 器 へ の 抑 止 に 変 化 した 。 冷 戦 終 結 後,核 拡 散

の 防 止 が 米 国 政 治 外 交 の 重 要 な柱 の一つ とな った 。

② 核 の トラ イ ア ドの核 戦 力 比 が 調 整 され,潜 水 艦 発 射 弾 道 ミサ イ ル が 米 国 戦 略核 戦 力 の50%を 占め て 中核 を なす よ うに な っ た。

③ レー ガ ン大 統 領 の提 起 した戦 略 防衛 計 画 が,第 三 世 界 の保 有 す る核,あ る い は事 故,あ る い は テ ロに よ る少 数 の ミサ イ ル を迎 撃 す る シ ス テ ム の 開発 へ と変 化 した。

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アジア太平洋地域の軍事バ ランス33

つ ま り呉 鵬 は,冷 戦 終 結 後 は 大 規 模 核 戦 争 の 可 能 性 は低 くな り,か わ りに 地 域 的 な 軍事 衝 突 の 可 能 性 が上 昇 しつ つ あ る。 米 露 は容 易 に 発 射 で き,迅 速 に戦 況 を転 換 で き る新 世 代 の低 威 力核 兵 器 の 開 発 に 向 か っ て い る。 米 国 は局 地 紛 争 で の 限 定 核 戦 争 の発 動 に 向 か い つ つ あ るの で は な い か と懸 念 す る の で あ る27)。す な わ ち,中 国 の 軍 事 専 門 家 は 冷 戦 終 結 後 の 中 国 を め ぐる核 の 状 況 は,以 前 に も ま して 中 国 に対 す る圧 力 が 高 ま るの で は な い か と想 定 して る の で あ る。

さ らに 『現 代 軍事 』 は,21世 紀 の 戦 略 核 兵 器 開 発 の 動 向 に つ い て 以 下 の よ うに分 析 す る。

米 国 は2003年 に,単 弾 頭 の ミニ ッ トマ ンIIIが米 国 の 保 有 す る唯 一 の 陸 上 配 備 の 戦 略 弾 道 弾 とな る。 海 軍 が 地 域 紛 争 に有 用 な 「通 常 弾 頭 」 装 備 の トラ イ デ ン ト ・ミサ イ ル の 開発 を 目指 し,空 軍 も ミニ ッ トマ ンIIIを使 用 した 「通 常 弾 頭 」 装 備 の 大 陸 間 弾 道 弾 の保 有 を希 望 して い る。

ロ シ ア は新 型 の 潜 水 艦 発 射 弾 道 弾 の 開 発 や,米 国 のMXミ サ イ ル に 匹 敵 す る命 中率 を有 す る新 型 ミサ イ ル を開 発 中 で あ る。 と して,ロ シア が ミサ イ ル の 命 中精 度 を改 良 して,先 制 攻 撃 の 能 力 を高 め る こ と。 米 国 は非 核 戦 略 兵 器 の 開 発 を進 め て,地 域 紛 争 に お い て こ れ ら を使 用 す る可 能1生が あ る こ と を 指i摘 して い る。

さ らに 日本 は,3.4ト ン の核 兵 器 に 転 用 可 能 な プ ル トニ ュ ウ ム を保 有 して お り,数 百 発 の 原 子 爆 弾 が 製 造 可 能 で あ る こ と,さ らに大 量 の プ ル トニ ュ ウ ム が 英 国 と フ ラ ン ス に貯 蔵 され て い る こ と。2010年 に は青 森 の再 処 理 工 場 で 50ト ンが 回収 で き る よ うに な る こ とな ど,日 本 が 大 量 の プ ル トニ ュ ウ ム を保 有 して お り,H‑2「 ロケ ッ トの成 功 に よ っ て,日 本 の 大 型 運 搬 用 ロ ケ ッ トの 製 造 能 力 は 証 明 され て い る。 日本 は す で に核 兵 器 を研 究 製 造 す る能 力 を備 え て お り,「 日本 が 核 兵 器 を保 有 す る の は,時 間 の 問 題 で あ る。」 と言 う。 ま た

「イ ン ドは す で に,弾 道 核 兵 ・器 の 製 造 能 力 を有 して い る」 とす る。1995年 に65発 分 の プ ル トニ ュ ウ ム を保 有 し,核 攻 撃 能 力 を有 して い る イ ン ドが,北 京 に 到 達 可 能 な射 程2500キ ロの 中距 離 弾 道 弾 ア グ リの 試 射 に成 功 し,し か も 核 不 拡 散 条 約 へ の参 加 を拒 否 し,さ らに 弾 道 弾 を搭 載 す る戦 略 原 潜 の 設 計 に 取 りか か っ て い る と主 張 す る28)。

つ ま り 『現 代 軍事 』 は,米 露 の 戦 略 兵 器 の進 歩 に加 え て,日 本 や イ ン ドな

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どの新 た な核 保 有 国 の登 場 を予 想 す る。 これ らの 国家 との 間 に起 こ る地 域 紛 争 に お い て,核 が 使 用 され る可 能 性 と,こ れ らの 地 域 紛 争 を抑 止 す る た め の 核 抑 止 力 の必 要 性 を指 摘 して い るの で あ る。 これ は 同 時 に 中 国 の 軍 事 戦 略 策 定 者 の認 識 で もあ ろ う。 事 実 中 国 は 新 た な短 距 離 ミサ イ ル の 開 発 を継 続 して い る。 今 回 台 湾 沖 に 発 射 さ れ た東 風15型(M9),パ キ ス タ ンへ の 生 産 技 術 移 転 が 問 題 とな っ て い る東 風11型(M11)は,射 程280キ ロ,弾 頭 重 量 が800キ ー

ロ で 核 ・非 核 両 用 。 現 在 開 発 が 続 い て い る 新 型 の 東 風25型 は 射 程 が 1700〜2000キ ロ,弾 頭 重 量 は2000キ ロで,や は り核 ・非 核 両 用 弾 頭 を搭 載 す る と見 られ る。 これ らの ミサ イ ル は 地 域 紛 争 を視 野 に 入 れ た核 ・非 両 用 の短 距 離 ・中 距 離 弾 道 弾 で あ り,今 後 も この よ うな戦 術 目的 に も戦 略 目的 に も使 用 で き る 中 短 距 離 ミサ イ ル の 開 発 は,継 続 され る で あ ろ う29)。相 互 抑 止 体 制 の完 成 を 目指 して,核 軍 備 の 近 代 化 を推 進 す る 中 国 で あ るが,肝 心 の 米 露 両 国 の 軍 備 が,冷 戦 時 代 の 全 面 核 戦 争 体 制 か ら地 域 紛 争 時 代 の 限 定核 戦 争 目 的 に,質 的 に転 換 しつ つ あ る。 した が って 中 国 が 望 む 核 戦 力 が 整 備 され る頃

に は,米 ロの 核 戦 力 は 構 造 的 転 換 を終 えて お り,核 の脅 威 は相 変 わ らず 存 在 す る こ とに な るだ ろ う。 核 に よ る軍事 的圧 力 が 存 在 す る と認 識 す る 限 り,中 国 の核 兵 器 近 代 化 は,財 政 的 基 盤 が 継 続 す るか ぎ り際 限 な く進 め られ る結 果

とな ろ う。

党 第14期5中 全 会 に お い てi李 鵬 首 相 は,第9次5力 年 計 画 と2010年 まで の 長 期 目標 制 定 に つ い て 以 下 の よ うに述 べ て い る。

① 国 家 の安 全 を守 る た め,国 防 の近 代 化 を強 め なけ れ ば な らな い。 ② 兵 器 装 備 の近 代 化 水 準 と軍 隊 の 戦 闘 力 を高 め る た め,新 型 戦 略,戦 術 兵 器 ・装 備 の 開 発 と開 発 手 段 の 更新 ・改 造 を重 点 的 に 強 化 し,ハ イ テ ク条 件 下 の 防衛, 作 戦 に 必 要 な有 効 な兵 器 装 備 を優 先 的 に発 展 させ るべ きだ 。 わ が 国 が 独 立 自 主 の 外 交 政 策 を と り,国 防 を強化 して い る の は,完 全 に 自衛 の た め だ30)。

古 くは 阿 片 戦 争 以 来 の 西 欧 列 強,お よび 日本 に よ る植 民 地 化 を 目指 した侵 略 の 歴 史 を有 し,最 近 で は 米 国 の 核 桐 喝 に よ る国 家 政 策 へ の 干 渉 を受 け て き た 中 国 で あ る。 これ を排 除 す るべ く 「自衛 の た め 」 に,核 軍 備 を 強化 して き た と李 鵬 首 相 が 主 張 す る も仕 方 の な い こ とか も しれ な い 。 しか しな が ら冷 戦 に よ る不 毛 な 軍 拡 競 争 の 歴 史 は,自 衛 の た め の核 軍 備 が 自国 を防衛 で き な い こ と を教 え て い る。 しか も相 互 抑 止 を はか る軍 備 拡 張 の 重圧 が,世 界 最 強 の

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アジア太平洋地域の軍事バ ランス35

国 家 の一 つ を 自滅 させ て し ま っ た とい う歴 史 的 事 実 も残 して い るの で あ る。

「自衛 の た め 」 と称 して 中 国 が 核 軍 備 に い く ら投 資 して も,米 ロ の 核 桐 喝 力=抑 止 力 を封 殺 す る こ とは不 可 能 で あ る。 米 ソ冷 戦 の 歴 史 は,す で に この 答 え を 出 して い る。

(2)通 常 兵 力 の 拡 充 と戦 略 目的

① 海 洋 へ の進 出

1992年2月,中 国 は新 領 海 法 す な わ ち 「中 華 人 民 共 和 国領 海 お よび 接 続 水 域 に 関 す る法 律 」 を施 行,西 沙 ・南 沙 群 島,尖 閣 諸 島 を 中 国領 土 と明 記,領 海侵 犯 に は武 力 排 除 で 対 応 す る と宣 言 した。 同4月,雑 誌 『瞭 望 』 の イ ン タ

ビ ュ ー に 答 え た 張 連 忠 ・海 軍 司令 員 は,「 海 軍 力 を増 強 させ,改 革 開 放 の護 衛 艦 隊 に な らな け れ ば な らな い 。」 「改 革 開 放 の 進 展 に伴 い,海 洋 権 益 を巡 る 闘 争 は 更 に 激 化 して い る。 改 革 開 放 及 び 中 華 民 族 の 興 廃 は,海 洋 に か か って い る31)。」 と述 べ,従 来 沿 岸 防 衛 の 域 を 出 な か っ た 海 軍 が,経 済 権 益 確 保 の ため 中国 周 辺 海 域 に 進 出 す る決 意 を表 明 した。 人 民解 放 軍 は,侵 略 軍 を 自国 領 土 内 に深 く引 き込 ん で 消 滅 させ る とい う 「人 民 戦 争J型 軍 隊 で あ っ た。 当 然 軍 隊 の 中核 は 陸 軍 で あ り,空 軍 や 海 軍 は そ の補 助 的 役 割 を与 え られ て い た に す ぎな い。 した が っ て解 放 軍 海 軍 が 自国 領 海 内 とは い え,海 洋 へ の進 出 を 宣 言 す る こ とは,中 国 軍 事 戦 略 の 大 幅 な転 換 を意 味 す る。 ソ=連崩 壊 に よ る国 境 へ の 直 接 的 脅 威 が 消 失 した こ と,さ らに 近 代 化 政 策 に よ って 経 済権 益 の 保 護 ・獲 得 の ため に 軍 事 的 プ レゼ ン ス の 周 辺 海 域 へ の拡 大 が 必要 に な っ た と判 断 され た こ とな どが 転 換 の 理 由 で あ ろ う。 しか し実 際 に は,ど の程 度 の 軍 事 力 ・経 済 力 を,如 何 な る海 域 に 向 け よ う と して い るの だ ろ うか 。

1996年 に な る と 『瞭 望 』 は,「 海 上 の 長 城 を建 設 す る」 と題 して 以 下 の よ うに報 じて い る。

「中 国 は 九 六 〇 万kmの 陸 地 面 積 と,三 六 〇 万kmの 美 し く豊 か な 海 洋 国 土 を併 せ 持 っ て い る。 五 月 一 五 日,全 国 人 民 代 表 大 会 常 務 委 員 会 は 『国連 海 洋 法 』 の 批 准 を決 定 し,同 時 に 『国連 海 洋 法 条 約 』 の 規 定 に 基づ い て,中 が 二 〇 〇 カ イ リ経 済 専 管 水 域 と,大 陸棚 の 主 権 権 利 と管 轄 権 を保 有 して い る こ と を声 明 した 。」 「中 国 と英 国,フ ラ ン ス は,『 外 洋 型 海 軍 』 国 に 属 して い るが,米 国 及 び 旧 ソ連 の 『全 地 球 的 海 軍 』 国 とは 異 な って い る と認 識 され て

参照

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