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.脳虚血再灌流障害モデルラットの多角的評価と

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 尾 谷    浩

学 位 論 文 題 名

.脳虚血再灌流障害モデルラットの多角的評価と      その応用に関する研究

学位論文内容の要旨

医学の発達により虚血性脳疾患の病態が明らかにされつっある。脳虚血再灌流後障害では 血流再開後も組織障害が進行し、遅発性二ユーロン死あるいは遅発性機能障害を生じる。

脳虚血再灌流に伴って産生される種々のフリーラジカルが遅発性再灌流障害の誘因と考え られており、ラジカルスカベンジャーなど急性期の病態に基づいた新たな治療法が導入さ れ始めている。しかしながら、再灌流後の酸素誘導性フリーラジカルの動態は複雑であり、

病態生理学的意義を含め不明な点が多い。

  本研究は、脳虚血再灌流障害治療のェンドポイントを脳機能改善に求め、より適切な評 価系の構築を図ること、ならびに遅発性機能障害の病態を再灌流後のフリーラジカル動態 から明らかにすることを目的とした。海馬領域の組織学的変化を伴わない一過性不完全脳 虚血モデルとして、両側総頚動脈血流の10分間遮断による2血管閉塞(2‑vessel occlusion; 2VO)ラットを作製し、脳血流、脳波、海馬シナプス伝達を指標として、虚血再灌流後の脳 機能の動的変化を検討した。また、脳虚血関連分子として一酸化窒素合成酵素(Nitric oxide synthase;NOS)および血管新生因子である血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor;VEGF)と塩基性線維芽細胞増殖因子くbasic fibroblast growth factor; bFGF)の蛋白発現誘導を解析 した。さらに、虚血再灌流後機能障害に対するラジカルスカ ベン ジャー・工ダラポンとNO捕捉・供与能を有するへモグ ロピン修飾体pnitrosylated pegylated hemoglobin (SNO‑PEG‑Hb)の効果を時間治療域(therapeutic time window)か ら 検 討 し 、 虚 血 再 灌 流 障 害 と 各 フ リ ー ラ ジ カ ル 動 態 と の関 連性 をか ら追 究し た。

  皮 質脳 血流 は10分間 の2VOによ って 約40%ま で低 下し 、再灌流直後一時的に虚血前 のレベルまで増加した後、80%前後の血流レベルを推移した。また、再灌流1日後にはほ ぽ虚血前のレベルに回復したが、4日後には逆に虚血前のレベルを上回る傾向を示した。

大脳皮質脳波は、虚血中ならびに再灌流直後に徐波成分6波の有意な増加とa波および速 波成分ロ波の減少を認めた。この周波数帯域別脳波の変化は、再灌流後1日目には逆転し、

6波 の減 少お よびa波と8波 の 増加に転じ、4日目には虚血前へ回復する傾向を示した。

このように、脳血流ならびに大脳皮質脳波は虚血後の時間に応じて異なった変化を示した が、遅発性脳機能低下を窺わせる所見は得られなかった。一方、虚血再灌流後4日目に測 定した2VOラット海馬歯状回シナプスにおける長期増強(long‑term potentiation;I」TP) は、偽手術群に比較して有意に抑制された。このM1P形成障害は再灌流1日目に比較して 強 く 、 虚 血 再 灌 流 後 の 遅 発 性 機 能 障 害 を 反 映 し て い る と 考 え ら れ た 。   エダラポンは脳保護薬として脳梗塞急性期の治療に用しゝられているフリーラジカルス カベンジャーである。なかでもヒドロキシラジカル(.OHラジカル)に対して高い除去能を 示す。再灌流直後に投与したェダラボン(10mg瓜g,i.v.)は、2V0ラット海馬における.0H ラジカル生成を抑制し、再灌流4日目でのI丿11P障害を改善した。このことは、虚血再灌流

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直後に生成された'OHラジカルが神経機能障害の引き金となり得ること、っまり、エダラ ポン によ る'OHラジ カル の除 去作用が本剤のLTP障害改善 作用に寄与し得ることを示し て い る 。 さ ら に 、 エ ダ ラ ボン は2VOラ ット 海馬 にみ ら れた 再灌 流4日目 にお けるNOS isoforms発現 増加 を変 化さ せた。すなわち、nNOSおよびiNOS発現を偽手術群のレベル まで回復させたのに対して、虚血再灌流障害において保護的役割を果たしていると考えら れて いるeNOS発現 をさ らに 増加させた。このようなェダ ラボンによるeNOS活性の亢進 は 、nNOSお よ びiNOS発 現 の正 常化 とと もに 、虚 血再 灌流 後のLTP形 成障 害の 改善 に 寄与しているかも知れない。 少なくともェダラポン処置後の3つのNOS isoformsの発現 様式は、虚血再灌流障害が緩和する方向にあった。

  SNO‑PEG‑HbはHbの ロ 鎖 シ ス テ イ ン 残 基(SH基 ) にNOが 結 合 し た ニ ト ロ ソHbで 、 局所組織への酸素運搬能に加えて、組織環 境に応じたヘム鉄へのNO捕捉作用あるいはSH 基か らのNO遊 離作 用を 持つ 人 工酸 素運 搬体 であ る。SNO‑PEG‑Hbは 虚血 組織 にお いて 酸素運搬とNO供給による血管 拡張作用が期待されることから、2VOラットの海馬シナブ ス機能障害に対する効果を検討した。SNO‑PEG‑Hb (250mgfkg,i.v.)は虚血再灌流後4日 目のLTP形成を 投与時間依存性に改善した。すなわち、虚血再灌流直後の投与では明らか なLTP形成障害の改善がみられなかったのに対して、24時 間後および48時間後の処置で は改 善が みら れ、 特に 、48時間後処置群ではvehicleを処置した2VO群との間に有意差 が 認 め ら れ た 。 こ のI」TP改 善 効 果 は 、SH基 が ニ ト ロ ソ 化 さ れ て い な いPEG.Hb

(250mg瓜g,i.v.)では認められず、逆に、虚血再灌流直後のPEG.Hb処置はu`P形成障害 を増悪した。これはPEG.HbのNO捕捉作用によって局所脳 血管が収縮し、結果として脳 血流低下が生じた可能性を示している。これらの事実は、虚血再灌流直後のおそらくeNOS を介するNO産生が虚血後脳に対して保護的 に働いていることを示す間接的証拠なのかも しれない。SNO.PEG.Hbがェダラポンより 遅い治療時間域を示した理由は明らかではな いが、虚血後発生するフリーラジカル種の 動態の違いを反映しているものと思われる。

  一 方 、2VOラ ッ ト に お い て 再 灌 流4日 目 に 認 め ら れ たVEGFとbFGFの蛋 白発 現増 加 は、再灌流直後に投与したエ ダラボンならびに1日目に投 与したSNO.PEG‐Hbいずれに よっても抑制された。このように虚血再灌流誘導性の血管新生因子発現に対する抑制効果 が、共通して認められたことは、虚血再灌流後に生成されたフリーラジカル種を捕捉する ことによって、間接的に虚血後の脳血管リモデリングの進展を予防することによって、結 果 と し て u` P形 成 障 害 を 改 善 し た こ と を 意 味 し て い る の か も し れ な い 。   以上、一過性不完全脳虚血ラットについて血行動態学的、電気生理学的ならびに神経生 化学的側面から多角的評価することによって、虚血再灌流後における脳機能障害の指標と しての海馬歯状回シナプス工´TPの有用性を明らかにした。さらに、フリーラジカルスカペ ンジ ャー ・エ ダラ ボン およ びNO捕 捉・ 供与 能を 有す るHb修飾 体SNO‐PEG・Hbが 、そ れぞれ異なった治療時間域を以って、脳虚血再灌流後の海馬I」TP形成障害を改善すること を明らかにした。これらの事実は、.OHラ ジカルやNOを含むフリーラジカルの、虚血再 灌流障害における時間的に異なった役割示 唆しており、工ダラボンとSNO.PEG.Hbの併 用も視野に入れた脳循環障害の新たな治療 戦略の可能性を示唆するものと考えられる。

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学位論文審査の要旨 主 査    教授    吉岡充弘 副査   教授   佐々木秀直 副 査    教授    神谷温之

学 位 論 文 題 名

脳虚血再灌流障害モデルラットの多角的評価と      その応用に関する研究

  脳虚血再灌流に伴って産生される種々のフリーラジカルは、遅発性こュー口ン死あるい は遅発性機能障害の誘因と考えられているが、その動態は複雑で病態生理学的意義を含め 不明な点が多い。

  本研究は脳虚血再灌流障害の適切な評価系の構築 および遅発性機能障害の病態をフリ ーラジカル動態から明らかにすることを目的とし、海馬領域の組織学的変化を伴わない一 過性不完全脳虚血モデルである2血管閉塞(2VO)ラッ トを用い、脳血流、脳波、海馬シナ プス伝達を指標として、虚血再灌流後の脳機能の動的変化を検討した。また、虚血関連分 子で ある 一酸 化窒素合成酵素(NOS)および血管内皮細胞増殖因子(VEGF)と塩基性線維芽 細胞増殖因子(bFGF)の蛋白発現誘導を解析した。さらに、虚血再灌流後機能障害に対する ラジ カル スカ ベン ジャ ー・ 工ダ ラポ ンとNO捕捉・供与能を有するへモグ口ピン修飾体 (SNO‑PEG‑Hb)の効果を治療時間域から検討し、虚血 再灌流障害とフリーラジカル動態と の関連性を追究した。

  大 脳皮 質脳 血流 は2VOによ って 約40%まで低下したが、 再灌流4日後にはほぼ虚血前 のレベルに回復した。大脳皮質脳波は、虚血中と再灌流直後に徐波化を認めたが、再灌流 後4日目には虚血前へ回 復する傾向を示した。このように、脳血流ならびに皮質脳波では 遅発性脳機能低下を窺わせる所見は得られなかった。一方、虚血再灌流後4日目に測定し た2VOラット海馬歯状回シナプスの長期増強(I」TP)は、偽手術群に比較して有意に抑制さ れた。このu、P形成障害は再灌流1日目に比較して強く、虚血再灌流後の遅発性機能障害 を反映していると考えられた。

  エダラボンはヒド口キシラジカル(.OHラジカル)に対して高い除去能を示すラジカルス カベンジャーである。再灌流直後に投与したエダラポン(lomg瓜g,i.v.)は、2VOラット海 馬における.OHラジカル生成を抑制し、再灌流4日目でのI』TP障害を改善した。このこ とは、エダラポンによる.OHラジカルの除去作用がL11,P障害改善に寄与していることを 示 し て い る。 さら に、 工ダ ラポ ンは2VOラ ット 海馬 にみ られ た再 灌流4日目 にお ける nNOS,iNOS,VEGFおよ びbFGF発 現を 偽手 術群 のレ ベル ま で回 復さ せた のに 対し て、

保護的役割を果すと考えられているeNOS発現をさら に増加させた。このようなエダラボ ン に よ るeNOS発現 の亢 進は 、nNOSお よびiNOS発現 の正 常 化と とも に、 虚血 再灌 流後 のI」TP障害の改善に寄 与している可能性がある。SNO‐PEG.Hbは虚血組織において酸素 運 搬 に 加 え てNO供 給 に よ る 血 管 拡 張 作 用 が 期 待 さ れ る 人 工 酸 素 運 搬 体 で あ る 。

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SNO‑PEG‑Hb (250mg/kg,i.v.)は虚血再灌流後4日目のL1.P形成を投与時間依存性に改善 し 、Day2投 与群 で は2VO群との 問に有 意差が認 められ た。NO供与 能を持 たないPEG‑Hb (250mg/kg,i.v. )のDayO投与は、逆に、LTP形成障害を増悪した。これはPEG‑HbのNO 捕捉作用によって局所脳血管が収縮し、結果として脳血流低下が生じた可能性を示してい る。 これら の事実は 、虚血 再灌流直 後のお そらくeNOSを 介するNO産生が虚 血後脳に対 して 保護的 に働いて いるこ とを間接 的に示 している 。SNO‑PEG‑Hbがエ ダラポ ンより遅 い治療時間域を示したことは、虚血後発生するフリーラジカル種の動態の違いを反映して いるものと思われる。

  以上、2VOラットについての多角的評価から、虚血再灌流後における脳機能障害の指標 としての海馬歯状回シナプスLTPの有用性が明らかになった。さらに、エダラポンおよび SNO‑PEG‑Hbが 、それ ぞれ異な った治療 時間域 を以って、脳虚血再灌流後の海馬I」TP形 成障害を改善することが明らかになった。これらの事実は、フリーラジカル種の、虚血再 灌流 障害に おける時 間的に異なった役割を示唆しており、エダラポンとSNO.PEG.Hbの 併用 も視野 に入れた 脳循環 障害の新 たな治 療戦略の 可能性を 示すも のと考え られる。

  公開 発表後、 副査佐 々木秀直教授からHb修飾体とエダラボンの効果発現の時間的な差 異ならびにエダラボンによるNOS isoiforms抑制のパターンの違いについて、また、副査 神 谷 温 之 教 授 か ら2VOによ るLTP障 害 の メカ ニ ズ ムとSNO‑PEG‑Hbの臨 床 応 用に 際 し ての副作用について質問がなされた。さらに、主査吉岡充弘教授からは、現在の脳梗塞に 対す る治療戦 略として のエダ ラボンの 有用性 ならびに エダラ ボンとSNO‑PEG‑Hb併用治 療の可能性について質問がなされた。これらに対して申請者は、実験成績と過去の文献を 引用し、概ね適切に回答した。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに 十分な資格を有するものと判定した。

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参照

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