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博 士 ( 薬 学 ) 松 永 眞 幸 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 薬 学 ) 松 永 眞 幸

学 位 論 文 題 名

日 本 人 に お け る 新 規 C 珊 2D6 遺 伝 子 多 型 の 機 能 解 析 と      迅 速 判 定 法

学 位 論 文 内 容 の要 旨

  チトクロームP450 (CYP) 2D6は,降圧薬,p―遮断薬および三環系抗うつ薬など臨 床上多くの重要な薬物の代謝に関与している.本酵素の活性には大きな個人差があ り,その主な原因はCYP2D6遺伝子多型によるものであると考えられている.欧米人 では 低 代 謝能 群 であ るpoor metabolizer (PM)の 頻度は5〜10%であり, このPM の90u/o以上がCYP2D6*3,ッおよび 5で説明することができる.しかしながら,

日本人のPMの頻度は1%程度と低 いにもか かわらず ,これまで に報告さ れている CYP2D6遺 伝 子 多 型 で も 十 分 に 説 明 す る こ と がで き ない . ま た, 日 本 人に は CYP2D6*10と呼ばれ るPM程では ないもの のextensive metabolizer群より も代謝 能が低くなるintermediate metabolizer (IM)の原因となり得る遺伝子多型が高頻度 に存在す る.IMの原 因となる 遺伝子多 型をホモ 接合体で有 するヒト がCYP2D6で 代謝される薬物を投与すると,Cmaエが約6倍になり,これは臨床現場においても無 視することはできない.

  そこで本研究では,日本人における個人差の原因となる新規遺伝子多型の探索と CYP2D6酵素活性 の低下お よび欠失 の原因と なる遺伝 子多型を迅 速に判定 する方 法を確立することを目的とした.

1.日本人におけるCYP2D6遺伝子多型の網羅的な探索

  日 本人424名に おいてCYP2D6遺 伝子の5 一上流領 域,全エ クソンおよ びエク ソンイントロン接合部位の塩基配列をダイレクトシークエンス法により解析した.その 結 果,g.82C>Tとg.2950G>Cを 併せ持つCl′P2D6*舛アリル,C即|2D6 J〇アリ ルの変異に加え,g.3318G冫A((m383Lys)を併せ持つCyP2D6 j〇p3Jめアリルお よ ぴC即2D6゛JDア リルの変 異とg.1611T冫A(Phe120ne)を併せ持つCyP2D6,匆 アリルを見出した.CH 2D6 騨, J〇p3Jめおよびツタのアリル頻度はそれぞれ 0.1%,0.1%およびO.4%であった.

2. CYP2D6*44遺伝子多型の機能解析

  g.2950G>Cはエクソン6のスプライスドナーサイトの変異であり,スプライシングに     ‑ 971−

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影響を及ばすことが予想された.そこでin silico解析によルスプライスドナーサイトと してg.2993Gが新たな候補となり得ることを見出し た,このスプライスバリアントが実 際に 存在 するか否かを 検討するため,加vitro解析 によルスプライシングパターンを野 生 型 と 比 較 し た .CYP2D6 44で は , 正 常 な ス プ ラ イ シ ン グ 産 物 は 検 出 さ れ ず , g.2993Gをスプラ イスドナーサイトとするスプライスバリアント(SVl)およびイントロン 6で の ス プ ラ イ シ ン グ を 受 け な い スプ ラ イス バリ アン ト(SV2)を検 出 した .SV1お よ ぴSV2は, 共にフレームシフトにより未熟ストップ コドンを生じ,酵素機能を欠失する と考えられた.血vivo代謝試験として,デキ ストロメトルファン〇−mメチル化代謝効率 (MR)を 算 出 し た 結 果 に お い て も CYP2D6 *44を 有 す る 検 体 のMR値 は , 他 の Cl′P2D6遺 伝子 多型 群と 比較 して 高値 を 示し た. 以上 のこ とか ら, く7即2D6 騨 は PMを引き起こす遺伝子多型である可能性が高 いと考えられた.

3. CYP2D6*10(3318),*49の機 能解析

  変 異 型CYP2D6を 発 現 す る 大 腸 菌 株 を 用 い て デ キ ス ト ロ メ ト ル フ ァ ンo‑mメ チ ル 化 反 応 に 対 す る 速 度 論 的 解 析 を 行 っ た . そ の 結 果 ,CYP2D6.10(383)お よ び CYP2D6.49のmm値 は , そ れ ぞ れ 野 生 型 (CYP2D6. 1) の1.3% お よ び O.5% であ った .さ らに ,興 味深 いことにC靜.2D6 49をへテ ロ接合体で有する日本 人肝 ミ クロ ゾー ムサ ンプ ルか ら新 規代謝物と考えられるピーク を検出した.そこで,

LC/MS/MSにより新規代謝物の 同定を行った結果,7―ヒドロキシデキストロメトルファ ン で ある こ とが 示唆 され た, 以上 のこ とか ら,CyP2D6 j〇p3jめ お よびCyP2D6 匆 はCYP2D6の 酵 素 活 性 の 個 人 差 , 特 にCl俄D6 j〇 ア リ ル を 有 す る ヒ ト の 間 に 認 められる個人差の原因となるこ とを明らかにした.

4. CYP2D6酵 素 活 性 の 低 下 ・ 欠 失 の 原 因 と な る 遺 伝 子 多 型 の 迅 速 判 定 法   本 研 究 に お け る9種 類 の 日 本 人 のCYP2D6酵 素 活 性 の 低 下 お よ び 欠 失 の 原 因 とな る遺伝子多型をキャピラリー式サーマルサイクラーによルハイブリダイゼーションプ ロ ー ブ 法 を 用 い て 迅 速 判 定 法 の 開 発 を 行 っ た . 全 欠 損 型 で あ るCYP2D6*5の 判 定 法 は ,CYP2D6遺 伝 子 と 偽 遺 伝 子(CYP2D8)の コ ピ ー 数 の 比 を 求 め る こ と に よ り , CYP2D6*5の 有 無 を 判 定 し た .CYP2D6*5ア リ ル 以 外 に 日 本 人 に お い て 酵 素 活 性 を 低下 さ せる 遺伝 子多 型(CYP2D6ッ , J〇 *14, *18,*21,*41,*44および*49)に つ いて も 同一 反応 条件 下で ,一 塩基 多型 ある いは 塩基 挿入 部分 を 検出 する こと に成 功 し た . こ の 方 法 に よ り9種 類 の 遺 伝 子 多 型 を1時 間 で 同 時 に 検 出 す る 系 を 確 立 した .

  以 上 , 本 研 究 に よ っ て 日 本 人 に お け るCYP2D6の 酵 素 活 性 低 下 お よ び 欠 失 の 原因となる遺伝子多型の予測率を 上げることができ,テイラーメイド医療を目指した迅 速 判 定 法 を 開 発 し た . 本 論 文 『 日 本 人 に お け る 新 規CYP2D6遺 伝 子 多 型 の 機 能 解 析 と 迅 速 判 定 法 』 に 含 ま れ る 研 究 成 果 は 薬 学 に お け る 基礎 およ ぴ応 用の いず れ に おい ても 優れ てお り, 博士 (薬 学) の 学位 を受 ける に充 分値 する もの と認 めた .

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

日本人 における 新規 CYP2D6 遺伝子多型の機能解析と      迅 速判定法

  チトク 口ームP450 (CYP) 2D6は ,降圧薬,p一遮断薬 および三 環系抗うつ薬など臨床上 多くの 重要な薬 物の代謝に 関与して いる.本酵素の活性には大きな個人差があり,その主 な 原因 はCYP2D6遺 伝 子多 型 によ る も ので あ る と考 え られ て い る, 欧 米人 では低代 謝能 群 で あ るpoor metabolizer (PM)の 頻 度 は5‑10%で あ り , こ のPMの90%以 上 が CYP2D6*3, ゛4お よ び 5で 説 明 す る こ と が で きる . し かし な がら , 日 本人 のPMの 頻 度 は1010程 度 と低 い に もか か わら ず , これ ま でに 報 告 され て い るCYP2D6遺伝 子多型で も 十 分 に 説 明 す る こ と が で き な い . ま た , 日 本 人 に はCYP2D6*10と 呼 ば れ るPM程 で はない もののextensive metabolizer群 よりも代謝能が低くなるintermediatemetabolizer

(IM)の 原因とな り得る遺伝 子多型が 高頻度に存在する.IMの原因となる遺伝子多型をホ モ 接 合 体 で 有 す る ヒ トがCYP2D6で代 謝 され る 薬 物を 投 与す る と ,Crnaエ が 約6倍に な り,こ れは臨床 現場におい ても無視 すること はできな い.

  そ こ で 本 研 究 で は , 日 本 人 に お け る 個 人 差 の原 因 とな る 新 規遺 伝 子 多型 の 探索 と CYP2D6酵 素 活 性 のPMお よ びIMの 原 因 と な る 遺 伝 子 多 型 を 迅 速 に 判 定 す る 方 法 を 確立す ることを 目的とした .

1.日本人 におけるCYP2D6遺伝子多型 の網羅的 な探索

  日 本 人424名 にお い てCYP2D6遺 伝子 の5 一 上流 領 域, 全 エ クソ ン およ び ェ クソ ンー イント口 ン接合部 位の塩基配 列をダイ レクトシ ークェンス法により解析した.その結果,

g.82C>Tとg.2950G>Cを 併 せ 持 つCYP2D6 44ア リ ル ,CYP2D6 10ア リ ル の 変 異 に 加 え,g.3318G>A (Glu383Lys)を 併 せ持 つCYP2D6 10 (3318)ア リル お よ びCYP2D6 10ア リ ル の 変 異 と g.1611T>A (Phe120lle)を 併 せ 持 つCYP2D6*49ア リ ル を 見 出 し た . CYP2D6*44,*10(331酌 お よび ッ タの ア リ ル頻 度 は それぞ れO.l%,0.10̲10およ び0.4%で あった.

    ―973−

也 吉

之 満

授 授

授 授

   

   

(4)

2. CYP2D6*44遺伝子多型の機能解析

  g.2950G>Cは エ クソ ン6の スプ ラ イ スド ナ ーサ イ ト の変 異 で あり , スプ ライ シングに 影響を及ぼ すことが 予想され た.そこ で沈silico解析によルスプライスドナーサイトとし てg.2993Gが 新た な 候 補と な り得 る こ とを 見 出した. このスプ ライスバ リアント が実際 に存 在 する か 否 かを 検 討す る た め,in vitro解 析に よ ル スプ ラ イシ ン グ パターン を野 生型と比較した.   CYP2D6 *44では,正常なスプライシング産物は検出されず,g.2993Gを ス プ ラ イ ス ド ナ ー サ イ ト と す る ス プ ラ イ ス パ リ アン ト(SVl)お よ びイ ン ト口 ン6で の ス プ ラ イ シ ン グ を 受 け な い ス プ ラ イ ス バ リ ア ン ト(SV2)を 検 出 し た .SV1お よ びSV2 は,共にフ レームシ フトによ り未熟ス トップコドンを生じ,酵素機能を欠失すると考えら れた . 血vivo代 謝 試 験と し て, デ キ スト ロ メト ル フ ァンO‑脱メ チ ル化 代 謝効率(MR)を 算 出 し た 結 果 に お い て もCYP2D6 44を 有 す る 検 体 のMR値 は , 他 のCYP2D6遺 伝 子 多 型 群 と 比 較 し て 高 値 を 示し た .以 上 の こと か ら,CYP2D6*44はPMを引 き 起こ す 遺 伝子 多型である可能性が高いと考えられた.

3. CYP2D6*10(3318),*49の機能解析

  変異 型CYP2D6を 発 現す る 大腸 菌 株 を用 い てデ キ ス ト口 メ ト ルフ ァ ン〇 ― 脱メ チル化 反 応 に 対 す る 速 度 論 的 解 析を 行 った . そ の結 果 ,CYP2D6.10(383)お よびCYP2D6.49の VmヨxK.m値は,それ ぞれ野生型(CYP2D6.1)の113%およびO.5%であった.さらに,興 味 深い こ と にC即.2D6 匆を ヘテ口接合 体で有す る日本人 肝ミクロ ゾームサ ンプルか ら 新規 代謝物と考 えられる ピークを 検出した .そこで,L(胤S/MSにより新規代謝物の同定 を行 った結果,7―ヒドロ キシデキ スト口メ トルファ ンである ことが示唆 された.以上の こ とか ら ,Cl′P2D6゛J〇p3jめ お よびCyP2D6 匆 はCYP2D6の 酵 素活 性 の個 人 差,特に く7即2D6 JDアリルを 有するヒ トの間に 認められ る個人差の原因となることを明らかにし た.

4.  CYP2D6酵 素 活 性 の 低 下 ・ 欠 失 の 原 因 と な る 遺 伝 子 多 型 の 迅 速 判 定 法   本 研 究 に お け る9種 類 の 日 本 人 のCYP2D6酵 素 活 性 の 低 下 お よ び 欠 失 の 原 因 と な る 遺 伝 子多 型 を キャ ピ ラリー式 サーマルサ イクラー によルハ イブリダ イゼーシ ョンプ□ ー ブ 法 を 用 い て 迅 速 判 定 法 の 開 発 を 行 っ た . 全 欠 損 型 で あ るCYP2D6*5の 判 定 法 は , CYP2D6遺 伝 子 と 偽 遺 伝 子(CYP2D8)の コ ピ ー 数 の 比 を 求 め るこ と に より , の′P2D6芍 の有無を判定した.C珊 2D6 5アリル以外に日本人におしゝて酵素活性を低下させる遺伝子 多型(C珊12D6 4, j〇 Jt J8, 2J, 4J,ッ4およびッ9)についても同一反応条件下で,

一 塩 基多 型 あ るい は 塩 基挿 入 部分 を 検 出す る こと に成功 した.こ の方法に より9種類 の 遺伝子多型を1時間で同時に検出する系を確立した.

  以上 , 本研 究 に よっ て 日本 人 に おけ るCYP2D6の 酵 素活 性 低 下お よ び欠失の 原因とな る遺 伝子多型の 予測率を 上げるこ とができ,テイラーメイド医療を目指した迅速判定法を 開 発し た ,本 論文『日 本人にお ける新規CYP 2D6遺伝子多 型の機能 解析と迅 速判定法 』

(5)

に含まれる研究成果は薬学における基礎および応用のしゝずれにおいても優れており,博士

(薬学)の学位を受けるに充分値するものと認めた.

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参照

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