心身の統合的理解をもとにした教育支援に関する心の教育総合プラン-養護教諭と学級担任の連携を通して-
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(2) 目. 次. 第1章問題の所在と総合プランの目的 第1節現在の子どもを取り巻く諾問題 第2節学校における諾問題 1. 本校の現状と課題 2 2. 保健室から見える児童の心身の課題. 1. 3. 第3節総合プランの日的と方法. 5. 第2章心身の健全な発達を支援するための教育に関する 実践プログラム 第1節心身の健康に関する教育の全体計画 6 第2節養護教諭と学級担任の連携した支援の在り方 1. 養護教諭の段階的支援の実際. 8. 21 学級担任との有機的な連携. 9. 3. 具体的な支援の展開. 11. 第3節実践報告 1、 児童の実態調査 2. 発育測定時における保健指導. 13 17. 第4節まとめと課題. 22. 第3章心身の統合的理解をもとにした教育支援に関する 心の教育総合プラン 第1節心の教育実践総合プランの全体構造 第2節道徳教育分野 1. 実践報告. 24. 25. 第3節地域・家庭教育分野 1. 地域・家庭教育力の低下. 37. 2. 学校と地域・家庭の連携. 40. 3. 学校の援助態勢. 43. 4、 家庭への支援モデル 5. 事 例. 43 45. 6. 本校における地域・家庭教育に向けたアプローチの今後48.
(3) 第4節生徒指導・教育相談分野 1. メディアを介したコミュニケ」ションの課題. 49. 2. 携帯電話の所有状況調査. 50. 3. 考察と今後の方向性. 55. 第5節学級経営分野 1. 現代の子どものコミュニケ]ションの課題. 56. 2. 「学級崩壊」といわれる現象. 57. 3. 事 例. 57. 4. 学級担任との連携と支援の在り方. 64. 5. 「学級崩壊」を防ぐための対策. 65. 第4章総合考察と今後の課題. 引用文献. 謝 辞. 資 料. 67.
(4) 第1章問題の所在と総合プランの目的 第1節現在の子どもを取り巻く諾問題 今日の子どもたちは、豊かな社会の中で生活している。欲しいもの は手に入り、労せずして、情報や娯楽も得ることができる。しかし、 反面大切なものを失っていると思われる。それは、自然や友だち、自. 分の身体で体得する喜びや苦労そして何よりも大事な心の成長であ る。. 現代の子どもたちの多くは、生活の中で友だちと群れて遊ぶといっ た経験が少なく、遊びを通して人間関係を上手くつくれないところが ある。異年齢の友だちとの交流も少なく、友だちがいても同級生とい う並列的な関係がほとんどいう状況である。また、少子化の影響を受 けて、一人っ子の家庭が増えてきており、子どもたちが兄弟や姉妹の 中で、自然に育まれる我慢や思いやり、人間としての上下関係を学ぶ 機会が失われつつあることなどが、人間関係の希薄化の要因になって いると思われる。こうしたことを背景に、生活体験や社会体験の不足 もあり、子どもたちの人間関係を築く力や社会性の欠如が危惧される。. 人間関係の問題を引き起こす背因には、そうした他人との協調性のな さや他人への思いやりの欠如といったことがあげられる。. また、子どもたちは、今日の情報化社会の影響を大きく受けて成長 している。そのことが、子ども理解を難しくしている。そのひとつに、. 普通の子どもたちが「キレる」といった現象に見られるような、子ど もたちの耐性の欠如があげられる。子どもたちの多くに、基本的生活 習慣が身についていない様子も見受けられる。対人面でも、家庭の教 育力の低下を背景に、社会規範を守ることや公共心の欠如も課題であ る。. 子どもの問題行動は、いじめ、対人暴力・暴言、器物破壊といった 攻撃行動、夜遊びや万引きなどの非行、喫煙・飲酒、不登校、抑うつ など多岐にわたり、どれもが子どもの健全な発達に影響を与える重要 な問題である。これらの問題行動を防ぐには、多くの継続的な支援を 必要とする(安藤,2008)。. ・1・.
(5) 第2節学校における諾問題 1.本校の現状と課題 今の子どもたちの問題として、対人関係や対社会関係能力が低下し てきているとの指摘が多く聞かれる。その背景には、子どもたちを取 り巻く社会ネットワークである、家庭や地域の教育カが低下してきた ことが一つの要因にあると考えられる。. 本校の地域・家庭の実態を見ても、生活保護世帯や父子・母子家庭の. ため生活面で困難な状況を抱えている家庭が多く、子どもがおかれて いる家庭状況・環境には厳しいものがある。なかには、親が昼夜間わ ず働いており、時問的に子どもと関わることができないといった状態 で、家庭教育もままならい状況にある児童もいる。. そうした現実の状況下で、自分自身の自尊感情が低かったり、言語 コミュニケーションが苦手であったりして、相手に言葉で上手く自分 の意志を伝えることができない保護者も見られる。そのような保護者. の中には、言葉で伝えることより、r子どもには、カで言うことを聞 かせることの方が簡単で手っ取り早い」といった考えをもつ風潮がみ られる。. そのような環境の中で育つ児童の中には、親の姿を見て学び、結果 的には親のやってきた通りを再生産する行動がみられる場合がある。 つまり、暴力で解決する手段しか持っていない児童がいるということ である。今までそうした子たちは特別な子であって個別な問題として 扱われてきていたが、いつの間にか、それが特別な子ではなくなり、. 教師がそうした子の対応に追われるのが日常的になってきている状 況になりつつある。. そのような児童は、社会や家庭で基本的な「対人関係」や「社会」 に関するルールを適切に教えられないまま就学して、学校という集団 の中に入り「規則」を遵守することを要求される。自分が傷つくのを 恐れ、友だちとの関係に深入りせず、対人間のトラブルや集団内の葛 藤解決が苦手である。その結果、自分と気のあった仲間だけでつなが り、それ以外の仲間に関心を示さない。こうした状況が子どもの問題. ・2・.
(6) 行動を発生させる背因にあるのではないかと考察する。. 学校においては、問題が生じてからの対処だけでなく、日頃から児 童の健康な心身の発達を支援する健康活動を行っていかなければな らないと考える。児童の学校生活の中で一見些細なごとのように見え る問題でも、効果的な対策を行わないと事態がエスカレートしてしま い、またそれがあたり前で許される環境を作り出す可能性がある。問. 題が顕在化しているかどうかに関わらず、すべての児童の心身の健康 を増進し、問題行動を予防するための積極的な取り組みが必要である (安藤,2008)。. 2.保健室から見える児童の心身の課題 保健室では、日常的に担任や保護者からの「子どもの身体のことに. ついて」やr子どもの心や問題行動について」の相談を受けている。 その中で昨今目につくのが、児童や保護者に対する生活の乱れや基 本的生活習慣が身についていない状況である。本来は家庭が担うべき はずの身辺自立的な生活習慣の形成や服装、集団的規律の遵守などが、. 学校での指導に任されるようになってきている。また、保護者白身の 生活習慣や基本的マナーができていないことなども感じる。. そうした環境の中で育つ児童らには、コミュニケーション能力の未 発達さ、対人関係の希薄さ、指示待ち、耐性の低さがみられ、面倒く さがる、表情・感情が乏しい、自己中心的で思いやりがない、幼稚で ある、活力が低く疲れているといった行動様式が日立つ。. これらの児童の抱える諾課題は学校だけではとうてい解決できな い。まずは、早寝・早起き・朝ごはん・排便習慣といった基本的生活習. 慣を確立させ、宿題をすることや前日に学習の用意をし、忘れ物チェ. ックをするといった基本的な学習に臨むにあたっての基本的な態度 を児童に学ばせる必要がある。これらを達成するために、家庭と学校 がどのように連携を進めていけばよいかにっいて、学校全体で方略を 考えていかねばならない。. 一3一.
(7) 保護者の考え方は多様化しているものの、食事・衣服・身体的な世話、. 健康面への配慮、健康づくりなど子どもの立場から考えて最低限養育 に必要なことを、保護者の役割として実行してもらえるように、対話. を通しての保護者教育を学校全体で取り組んでいく必要があると考 える(ベネッセ教育研究所,2001)。. 心の問題や身体的不調を訴えて保健室を訪れる児童の数は年々増 加している。保健室は児童にとってストレスを癒し「ほっとできる場」. であり、養護教諭は、保健室に来る児童を見守り安心感を与え、元気 を取り戻すように働きかけている。一人ひとりの児童とじっくりと向 き合い、ゆっくりと話を聴き、児童の発するサインを受け止め、児童 に寄り添った援助を心がけている。児童の心と身体の両面への支援を 行う健康相談活動は重要な役割を担っている。そのような今こそ、養 護教諭が行う心の健康教育の必要性があり求められていると考える。. ・4・.
(8) 第3節総合プランの日的と方法 本プランは、小学校養護教諭の立場から、児童の心身の健康状態 を把握することによって、健康面や身体への訴えと心の問題の関連 を探り、その支援策を探るものである。児童の心身両面にわたる健 康に焦点をあてながら、その問題状況の背景を探り、それらへの取 り組みを具体的に考える。心と身体の両面からのアプローチが必要 な問題について、心と身体の関係(心身相関)を考慮した支援のあり 方について提言したい。. その方法として、次の①②のプロセスを踏むこととする。これら を通じて、養護教諭の視点を加えた学級担任の児童理解や対応に関 する知識・技術の向上に貢献し、児童への有効な教育援助につなげ ることを目指したい。①児童にアンケ]トを実施し、得られた結果 を分析したデ]タに基づいて児童の実態をまとめ、児童の実態との 関連を考えながら課題を整理する。②得られたデータをもとに、養 護教諭と学級担任のそれぞれの視点から、児童への具体的な対応に ついて話し合いを行う、という計画のもとに進める。. また、本プランは、本校の教育目標である「自ら考え正しく判断で きる、心豊かなたくましい子どもの育成」を推進するために、心の教 育諸分野の様々な角度からの取り組みを目指すものである。豊かな心 と他者を思いやる心、苦しみにも耐える強い心を持った児童を育てる ために、それぞれの教科・領域をはじめ、学校のあらゆる場で心を育 てる教育を展開していく。具体的には、児童にとって望ましい環境を つくり、児童の心身の健全な発達を支援するために、道徳教育分野、 地域・家庭教育分野、生徒指導・教育相談分野、学級経営分野から、. 養護教諭としてできる様々な働きかけを行い、学級担任と連携して児 童の心の教育に関する取り組みを行う。. 一5一.
(9) 第2章心身の健全な発達を支援するための教育に関する 実践プログラム. 第1節心身の健康に関する教育の全体計画 【保健室での集団に対してと個別の心身の健康に関する保健指導】. 保健室で集団や個別の保健指導の際に行う、心身の健康に関する教 育については、保健指導年間計画に基づき取り組んでいる。本年度の 保健指導年間計画を以下に示す(Table1)。. Tab1e1 保健指導年間計画 月. 4. 保健行事 定期健康診断 発育測定(身長. 保健目標. 自分のからだに ついて知ろう. 受ける. ・自分の発育の状況を知る ・健康診断で見つかった病気を 早く治す. ・体重・座高). 5. 視力検査 聴力検査 ぎょう虫検査 心電図検査 内科検診 歯科検診 定期健康診断 眼科検診 耳鼻科検診 尿検査. 保健指導内容 ・健康診断の意義を知り正しく. 基本的生活習慣 を見直そう. ・基本的生活習慣を見直す (食事・排便・睡眠). (1次・2次). 心とからだのつ ながりについて. 心臓精密検査. 知ろう. 6年修学旅行前. ・自分の心とからだの状態を知 る. (楽しい気持ち・不安や悩む気 持ち). 健康調査. 5年林間学舎前 6. 健康調査 定期健康診断 結核精密検診. プール前健康. 歯を大切にしよ う. ・歯について知る. ・正しい歯の磨き方を身につけ る. 調査. 梅雨時の健康に. ・梅雨時の衛生として食中毒に. 環境衛生検査 口腔状態調査. 気をつけよう. 気をつける ・頭じらみについて知る. プール水質検. 夏を健康に過ご. ・夏の病気の予防. 査. そう. D(M)F・下調査. 体重測定・頭髪 検査 7,8. (熱中症、プール熱等). ・健康診断で見つかった病気を. 学校保健統計. 歯科治療状況 調べ及び治療 勧告. 治療する. 誘惑に負けない 態度を身につけ よう. ・上手に断わる対処法について 知る. ・自分の気持ちを上手に相手に 伝える. ・6一.
(10) 9. 発育測定. 規則正しい生活. (身長・体重). をしよう. ・生活のリズムを回復する ・安全に気をつけて運動をする. ・自分でできるケガの手当を知 る !0. 視力検査. 目を大切にしよ. ・目について知る. う. ・目の病気や視力低下に気をつ ける. 11. 体重測定・姿勢. 姿勢を正しくし. 検査. よう. 生活実態調査. 学校生活を楽し. ・姿勢に気をつける. く送ろう. ・お互いについて理解する ・自分の気持ちを相手に上手く. 風邪、インフルエ. ・風邪、インフルエンザの予防. ンザを予防しよ. について知る ・衣服で体温調節をする ・部屋の換気の必要性を知る ・やけどの症状と手当について. 伝える 12. 歯科治療状況 調べ及び治療 勧告. 1. う. 発育測定. 冬を健康に過ご. (身長・体重). そう. 体力づくり. 寒さに負けない からだをつくろ. (縄跳び). 知る. ・運動の必要性について知り、 積極的にからだを鍛える. う. 2. 心身の健康調 査. ストレスに負け ない心身をつく. ・ストレスについて知る. ・ストレスの上手な対処につい て知る. ろう. ・心とからだのリラックスにつ 3. 発育測定. 耳を大切にしよ. (身長・体重). う. 学校保健のま. 一年間の健康に ついて反省をし. とめ. よう. 年間活動反省. いて知る ・耳の働きを知る. ・健康生活を送ることの大切さ を知る. 【教室での集団に対しての心の教育や保健学習】. 教室で行う心の教育や保健学習は、学級担任からの要請を受けて、 随時行う。担任と連携してティーム・ティーチング形式での授業を実 施する。本年度の実施について以下に示す(Tab!・2)。. ↑・bl・2 教室で行う心の教育や保健学習 実施 時期 7月. 3年. 教科 領域 道徳. 2月. 6年. 保健. 実施 学年. 内容等. 主題名 他者(ひと)の立場に立ってみる(1h) 内容項目2一(2)思いやり・親切 喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育(3h) ○喫煙と健康. ○飲酒と健康、薬物乱用と健康 ○誘われた時の対処 ・たばこや酒を誘われた時の効果的な対処 ・友たちからの圧カベの対処 ・コミュニケーションの3つのタイプ ・誘われた時の断り方の実際(ロールプレイ). ・7・.
(11) 第2節養護教諭と学級担任の連携した支援の在り方 1.養護教諭の段階的支援の実際 一人ひとりの児童への援助を効果的に行うには、児童を多様な視点 で捉え総合的に理解することが求められる。児童の心身の健康状態に より援助の程度は違ってくる。心と身体の関係を考慮した援助を提供 していかなければならないと考える。具体的に心身の健康に関する支 援について、段階ごとにまとめたものを以下に示す(Tab1.3)。. Tab1e3 三段階の心身の健康に関する支援 段 階. 支援の形態. 支援の対象. 具体的な支援の内容. 第. すべての児童が. ○保健指導や保健学習に. 一. 開発的生徒指導 」次的援助サー. 段 階. ビス (開発・予防的). より、自分の心身の健康. 対象. 状態に気づかせ理解さ せる。自分に適した健康. 的な生活習慣を身に付 けさせる。 第 二. 段 階. ○自分の健康を管理する スキルを身にっけさせ. 予防的生徒指導 二次的援助サー. 食事、排便、睡眠、. ビス. 態、生活のリズム. (予防的). の乱れている児. ・ ‘‘早寝・早起き、朝ごは. 童や頭痛、腹痛、 気分不良、顔色不 良、食欲低下、倦. ん”を定着させる。. ・疲れた時は、十分な睡. 怠感、集中カの低. ○心の状態と体の不調と. 運動、休養の状. 下など身体的訴 えのある児童な ど配慮を要する 児童が対象. る。. 眠をとる。. の関連を知らせる。. ○ストレスが心身に及ぼ す影響について知り、ス. トレスに上手に対処で きるようにする。. 第 一一. 段 階. 治療的生徒指導 三次的援助サー. 心臓病、腎臓病、. ○自分の健康状況(病気や. 喘息、アレルギ. 障害など)を受けいれ、. ビス (問題解決的). 」、アトピー性疾. 自分なりの付き合い方. 愚を持っ児童や 低身長や肥満の. を身につけさせる。. ○健康上の不安に対処す. 児童、不登校・保. る方法を知ることで、症. 健室登校の児童 など重度の援助 二一ズをもつ特. 状の改善や健康維持の ための方法を身につけ. 定の児童が対象. ・8一. させる。.
(12) 三段階の心身を統合した支援の実践(相楽,2008)。 【第一段階の支援】. すべての児童を対象とした心身の健康状態の調査を実施する。児童 が調査用紙への記入を通して、自分自身の心身の状態を知り課題に気 づき、自助資源の発見を促進できる。 【第二段階の支援】. 心身の健康状態の調査結果をもとにしたフォローアップをする。調 査で得た情報から、援助の必要な児童を抽出し個別面接を設定したり、. 担任と連携して学級での健康観察を強化するなど予防的な援助を行 う。身体的訴えや症状を通して発している児童のSOSを見逃さず、早 期発見・早期援助につなげる。 【第三段階の支援】. 慢性疾患を持つ児童は、病気に対する不安や生活規制から情緒が不 安定になりやすい。継続的に日常生活のチェックを行いながら症状を. 観察し、担任や保護者と連携し、場合によっては主治医の協力を得な がら支援にあたる。. 長期欠席や長期欠席後に児童が学校生活に復帰する時などは、心身 の健康状態に配慮した援助を検討し、状況に応じて医療機関や教育相 談機関等と連携して対応にあたる。. 2.学級担任との有機的な連携 児童は悩みを時として、身体の変調を通して訴えることがある。例 えば、頭が痛い、お腹が痛いと訴えてきた場合、朝学校に行く時に母 親に叱られたとか、仲の良い友だちとけんかしてしまったなどの悩み が原因である場合もある。悩んでいることの大小はともかくとしても、. 悩みを言葉に表現できずに、身体の変調で訴えることはよくあること. である。保健室は健康面から子どものSOSのサインを早期に発見する ことができる場所である。また、児童にとって学校の中で「気楽に行 けて、体の痛みを訴えることができる場所で、そこにはいつも同じ顔 が迎えてくれて、安心して自分を出せることができる」場所でもある。. 一9・.
(13) 児童にとって保健室は、学校の中で教室とは異なる空間であり、保健 室の先生(養護教諭)は学級担任や教科担任とは違った立場にあり、評. 価者ではないという思いからか、ホッとし安心して自分を出すことが でき、「心の居場所」を求めてやってくる児童もいる。「子どもたちの 心のオアシス」となりえる場所であるといえる(山口,2007)。. 保健室での相談活動は援助対象の児童の早期発見・早期援助が可能 であり、第二段階の支援の役割を担っているところが大きい。学級で は、ややもすると児童のわずかな変化が見過ごされてしまい、気づい. た時には第三段階の援助対象となるまで問題が深刻化してしまって いるという場合がある。保健室では、身体的症状や訴えを丁寧にアセ スメントし、小さな兆候、SOSのサインを見逃さずに早期に発見し、 援助二]ズの高い児童への早期支援の開始に努めている。. 学級担任は日常的に児童と触れ合っているので、相談関係に入りや すいし、学校生活のあらゆる場面でいろいろな機会で相談活動ができ. やすい。また、児童の困難状態を早期に発見することができ、その援 助もタイムリーに行える。児童」人ひとりの家庭環境、素質、性格な ど理解しており、情報の収集がしやすいといった長所がある。. その反面では「教える一教えられる」という関係になりやすく、そ れにより児童が相談しにくい状況を生み出してしまったり、児童の申 には、学級担任を評価者として見ているので素直に自分を出しにくい といった場合などもある。また、学級担任は自分の学級の児童は自分 で何とかしなくてはならないという思いから、一人で抱え込んでしま う傾向になりがちで、担任自身が疲労四億に陥ってしまうといったよ うな好ましくない面もある(山口,2007)。. 学級担任は学級という枠で捉えて児童を見ているところがあり、養 護教諭は個人という視点で児童を見ているという違いがある。したが って、それぞれの特性を活かして、学級でできること、保健室ででき ることを具体化し、学級担任と養護教諭が有機的に連携して、効果的 な援助活動を展開していくことが、児童に寄り添った有効な援助につ ながっていくものと考えられる。. ・10一.
(14) 3 具体的な支援の展開 具体的な支援の展開を以下に図式化してまとめる(石原,1998)。. ①実態を把握する 一細やかに接する中で、児童から丁寧に話を聞く ○保健室来室時の児童の様子(観察、来室時の記録カード). ②問題点を明確にする 一身体の状況の調べるとともに身体化され た心の問題のチェックも行なう。児童を取り巻く周囲の状況がどう なっているのか、本人や保護者、周囲の児童がその状況をどう受け 止めているか把握する。 ○保健室来室時に聴取したことや担任や他の教師から生活の様子につ いての情報交換により探る。. ・要因の分析(疾病要因、生活要因、性格要因、環境要因など) ・背景の探索(悩みや不安、ストレス、生活のリズムの乱れなど). ③共通理解を図る 一心理的な支援を行う場合、様々な場面でのアフ ローチが必要となる。 ○教職員・保護者へ実態を矢口らせる。. ・職員会議や学年会での報告(個別に援助が必要な児童に対する対応に 関する教職員の共通理解) ・保護者との連携(学校での児童の様子を知らせ協力を依頼). ④指導目標・内容・方法を検討する 一とのような行動目標を設定す るか。. 学級担任と養護教諭で児童の実態と問題点を共通理解して、互いに 指導資料や情報の提供をするなど、協力をしながら具体的な支援策 を考える。 ○心理的な問題を抱える児童の支援は、まわりの児童の理解や支えが不 可欠であるので、集団への働きかけ(集団指導)が必要となる。 ・学級担任による学級での授業 ・養護教諭による全校一斉の保健指導や保健室で学級単位での保健指. 導 ○個人に対する継続的な働きかけ(個別指導)は、学級担任と養護教諭の 両者が、それぞれの役割を分担し連携してあたる。 ・学級担任による、個別指導(開発・予防的教育相談)(随時) ・養護教諭による、個別指導(予防・治療的教育相談)(随時). 一11・.
(15) ⑤指導計画を立て実践する テ」マ:心身の健康問題に関する指導 目標:心身の症状や問題状況の改善を目指した指導目標とする 指導内容例:問題状況に直面した時とのように対処するかなど 【集団指導】. ・学級担任による学級での授業(保健、学級活動、総合、道徳など) ・学級担任と養護教諭のティーム・ティーチングでの授業(保健、道徳、 総合、特別活動、学級活動など) ・養護教諭による全校一斉や学級単位の保健指導(基本的生活習慣の確 立、ストレスの対処など) 【個別指導】一随時 ・学級担任は児童の学校生活のあらゆる場面で指導 ・養護教諭は保健室来童児に対する相談的対応による指導. ⑥評価する一個別には来室者から聴取をし、集団に対しては調査を行 う。. ・12一.
(16) 第3節実践報告 1.児童の実態調査 (1)心身の健康に関するアンケート調査 児童の心身の健康状態の実態を把握するために、心身の健康に関す る調査を実施する。児童の心身に焦点をあて、健康面に関する状況や 身体的な訴えについて情報を集め検討を行う。. ①実施時期 2009年3月3日(5.6年)、4日(3.4年)、5目(1,2年)の発育測. 定時15分程度。. ②対象 全校児童(1年生∼6年生). ③方法 心身の健康に関するアンケート(記名式の質問紙,別紙資料①参 照)を保健室にて、クラス単位で全校クラスに実施した。(アン ケート実施後に、2で述べるストレスに関する指導を行った。). ④質問項目と構成 ・自分自身のことについて尋ねる質問については、「心の健康と生 活習慣に関する指導(文部科学省,2003)」を用いた。ただし、必. 要であると思われる質問項日を一部追加した。 ・ストレス時の対処の仕方の調査には、rNISE∬」(JKYB研究会, 2005)を用いた。ただし、必要であると思われる質問項目を一部 追加した。. (追加した質問項目は、本校の児童の心身の健康の実態を調査す るために、保健室で把握している児童の具体的な心身の健康の 課題に関するものである。). ○自分自身のことについて尋ねる質問(全40項目)(文部科学省, 2003). ・自己効力感に関する質問9項目一追加賀間なし。 ・身体の訴えに関する質問7項目一(夜、ぐっすり眠れない)、(つか れやすい)、(食欲がないことがおおい)を追加した。. 一13・.
(17) ・不安傾向に関する質問13項目一(友だちはみんなやさしい)を追加 した。. ・不適応行動に関する質問1/項目一(自分はイライラしている)、(約. 束を守らなくてもよいと思う)を追加した。. ○親や先生に叱られた時や友だちに仲間はずれにされた時の対処法 について、尋ねる質問12項目(JKYB研究会,2005)に、(だれか(友 だち,きょうだい,親,先生)にあたる)、(物にあたる)、(ねる)の3. 項目を追加した。. ※質問はいずれも(よくあてはまる・ややあてはまる・あてはまらな い)の3件法とした。. (2)分析方法及び結果. 1)分析方法. 心身の健康に関するアンケートの各質間項目を、文部科学省 (2003)に示されている心の健康を把握する4つの指標の分類をもと にして、「自己効力感」「身体の訴え」「不安傾向」「不適応行動」に. 分類した。心の健康を把握する4つの指標については以下に示す (Table4)。また、ストレス時の対処の仕方の質問項目は、JKYB研 究会(2005)をもとにし、「対処行動」として分類した。. 各質間を肯定的な回答から3点、2点、1点として点数化し、それ ぞれの分類された項目ごとに単純合計し、得点間の相関及び学年間差、. 性差、学年・性差について検討をした。分析には、SPSS(Windows 版)V.r.12を使い、それぞれの検定の有意水準は5%とした。. Tab1e4 心の健康を把握する4指標 (文部科学省,2003) 自己効力感. 身体的訴え 不安傾向 行 動. 現在の環境下における自己への信頼感、ストレス の抵抗力や対応の原動力となる資質 精神的ストレスから生じる、頭痛、腹痛、下痢、 吐き気等の身体的症状 言いようの無い焦燥や無気力、理由なき自己嫌悪 感等、精神的なストレス等がもたらす心理的症状 けんかや破壊、無為や欠席等の種々の問題を引き 起こす、ストレスと関連して生じる問題行動. ・14・.
(18) 2)分析結果(別紙資料②③参照) 【各項目の学年間差、性差及び相関】. ①自己効力感 学年間で有意差(P=O.000)が見られた。学年間の差について詳し く見ると、1年一2年間(P=O.033)、4年一5年間(P:O.000)、5年一6 年間(P=O.OOO)に有意な差がみられた。. 「自己効力感」一「身体の訴え」間(r=一〇、178)、「自己効力感」. 一r不安傾向」間(r:一〇.394)、r自己効力感」一r不適応行動」 間(r=一0,217)は、それぞれ負の有意な相関が、「自己効力感」一 「対処行動」間(r=O.276)は正の有意な相関が見られた。. ②身体の訴え 学年間差、性差、学年・性差はともに見られなかった。 「身体の訴え」一「自己効力感」間(r・一〇.ユ78)、「身体の訴え」一. r対処行動」間(r=一〇.209)は負の有意な相関が、r身体の訴え」一. r不安傾向」間(r・0,369)、r身体の訴え」一r不適応行動」間(r =O,331)は正の有意な相関が見られた。. ③不安傾向 学年間で有意差(P=O.OOO)が見られた。学年間の差について詳し く見ると、1年一2年間(P=O.000)、2年一3年間(P=0,004)、5年一6 年間(P=O.001)に有意な差がみられた。. 「不安傾向」一「自己効力感」間(r=一0,394)、「不安傾向」一「対 処行動」間(r=一〇.443)は負の有意な相関が、「不安傾向」一「身 体の訴え」間(r=O.369)、「不安傾向」一「不適応行動」間(r=O.448). は正の有意な相関が見られた。. ④不適応行動 学年間で有意差(P・0.O00)が見られ、また学年・性差(P・O,023). も見られた。学年間の差については、1年一2年間(P=O.000)、5年 一6年間(P・0.O04)に有意な差がみられた。学年・性差については、 2年の男女間(P・O,016)、3年の男女間(P=O.023)で交互作用が見ら れた。. 一15・.
(19) r不適応行動」一r自己効力感」間(r=一〇.217)、r不適応行動」 一「対処行動」間(r=一〇.475)は負の有意な相関が、「不適応行動」. 一「身体の訴え」問(r=O.331)、「不適応行動」一「不安傾向」間 (r=O.448)は正の有意な相関が見られた。. ⑤対処行動 学年間で有意差(P・0.O03)が見られ、また学年・性差(P・0,044). も見られた。学年間の差については、1年一2年間(P=O,O04)、5年 一6年間(P・O.O09)に有意な差がみられた。学年・性差については、 3年の男女間(P=O.001)で交互作用が見られた。. r対処行動」一r身体の訴え」間(r=一〇.209)、r対処行動」一r不 安傾向」聞(r・一0,443)、r対処行動」一r不適応行動」間(r:一〇.475). はそれぞれ負の有意な相関が、「対処行動」一「自己効力感」間(r =0,276)は正の有意な相関が見られた。. 【「対処行動」と他の要因との間の関係】. ①対処行動の得点が高い群では、自己効力感の得点が高く、身体の 訴えの得点、不安傾向の得点、不適応行動の得点は低い。. ②対処行動の得点が低い群では、自己効力感の得点が低く、身体の 訴えの得点、不安傾向の得点、不適応行動の得点は高い。 (3)結果及び考察(別紙資料②③参照). 自己効力感の高い学年(1年)は、不適応行動が低く、対処行動が 高い。逆に、自己効力感が低い学年(5年)は、不適応行動が高く、. 対処行動が低い。このことから、5年生には自己効力感を高め、不 適応行動を減少させ、対処行動を高める必要があることがわかった。. 実際に5年生は、児童同士のトラブルも多く、自分たちで解決する こともできないという実態がある。トラブルの解決にあたっては、. 児童には丁寧な説明をするように心がけるよう、5年の学年担任団 と話し合い指導につなげている。ストレスの対処を上手に行うこと. によって、これらの課題を克服することが期待できる。発達段階の. 一16・.
(20) 差や学年の雰囲気(カラ])などの他の要因も考えられるが、このよ. うに顕著に現れている学年に対しては、結果をもとに効果的に働き かけていくことで問題の改善が期待されると考える。. 全体的にみると、自己効力感は不安傾向との相関が強く現れてお り、自己効力感を高めることで不安が減っていくことが期待できる. という結果であった。身体の訴えは不安傾向や不適応行動との相関 が強く、不安が高くなれば、身体の反応や不適応行動として現れる という危険性を示した。不安傾向には、不適応行動や対処行動との. 相関も見られた。これらは、不安が高まれば不適応行動をとりやす くなるということを示しており、不適応行動を減らすには、適切な. 対処行動がとれるようになることが必要であることがわかる。スト レスに上手く対処することができることで、不安や不適応行動を減 らすことができると考えられる。. 2.発育測定時における保健指導. ①指導内容 ストレスが心身に及ぼす影響について. ②指導時間 30分(「心身の健康に関するアンケ」ト」回答後、同一日に実施). ③ねらい ストレスの原因、ストレス状態が起こったときの身体や心の反応 を知り、ストレスを和らげたり、ストレスに強くなる方法、自己 コントロールの方法を身につける。. ④指導形態 アンケート終了後、保健室において、クラス単位での実施。 ⑤指導上の留意点 ・ストレスのメカニズムを説明し、ストレス状態をふり返り、自分 なりのストレス対処法を考えることができるように支援する。 ・ストレスは必ずしも悪いものではなく、それを成長のバネにする ことが、できるということを理解できるように指導する。. ・17・.
(21) ・発達段階に応じた指導の在り方を工夫し、どの学年にも理解でき るよう配慮する。(内容を学年毎に平易な伝え方にしたり、内容 に違いをもたせた。). ⑥評価・事後の活動 自分の心身の状態を振り返り、自分に適した対処方法を見つけ、 日常生活で積極的にストレス対処法を実践できるように促す。. ⑦指導案(展開の概要)(高学年を対象としたもの) 導. 学習活動 ストレスについて. 入. 理解する。. 主な発間 ○ストレスとは、」どのよ. うなものなのでしょう か?日常生活をふり返 りながら考えてみまし よう。. 教師の支援 ・ストレスは誰にでも あるもので、ある程. 度自分でコントロ 一ルすることが可 能であることを説 明する。. 展 開. 良いストレスと悪 いストレスについ て知る。. ○良いストレスと悪いス トレスについて考えて みましょう?. たとえば「あなたはダ メね!」と言われた場 合でも、ショックで落 ち込み私はダメな人間 だと思ってしまう人と わりと平気で今度がん ばろうと思える人がい る。人によって受け止. ・同じ刺激でも反応の 仕方で良いストレス にも悪いストレスに もなることを説明す る。. め方に違いがある。. 同じ人でも、その時の 状況によって、受け止 め方が違ってくる。. ○ストレスの原因を探っ. ・児童の反応を見なが. (ストレスはこん. てみましょう。(ストレ スはこんな時に). ら、ゆっくり丁寧に、 繰り返し伝える。. な時に). 身体にかかるストレス. ストレスの原因を 探る。. と心(気持ち)にかかる. ストレスについて考え てみましょう。. 身体と心が起こす ストレス反応につ いて知る. ストレスのメカニ. ズムについて知 る。. ○そのときの身体や心の 状態をふり返ってみま しょう。. 態を知る。. 返ることができる ようにする。. ○ストレスのメカニズム を知り、身体に与える 影響を考えてみましょ う。. 自分のストレス状. ・ストレス状態をふり. ○あなたの心元気です か?ストレスたまって いませんか?心を元気. ・18・. ・長くストレスが続く. と身体の症状や病 気として現れてく. ることを説明する。 ・ストレス対処方法の 意味を説明する。.
(22) にするためには、上手 にストレス解消するこ とが大切です。. 自分にあった「ス トレス対処法」を 考える。. ○自分にあった「ストレ スに対処する方法」を 考えてみましょう。. ○いろいろなストレス対 処のためのアイデアを あげてみましょう。. 友だちの「ストレ ス対処法」を聞く。. ストレスの原因に なる「悪口につい て」の対処の仕方. ○友だちのストレス対処. ・自由に意見を出し合. えるような雰囲気 をつくる。. ・発表内容を肯定的・ 中立的に理解し、わ. かりやすくまとめ て伝え返す。. 法を聞きましょう。. ○友だちの心を傷つける 悪口についてどう思い ますか?. ・言葉一つで友だちを 傷つけることも、助. けることもできる ことを具体的に説. を考える。. 明する。 ま. 自分のストレス度. と. をチェックする。. め. ○あなたのストレス度を チェックしてみましょ. ・ちょっとお疲れ気味. の人やSOSになった 人は、ストレスが溜. う。. まっている状態な ので、これ以上溜め. ないように自分に あったストレス解 消法をすることを. 伝える。. 自分のストレスに 対処する方法につ いてふり返る。. ○自分にあった「ストレ ス対処法」を行いまし よう。. ○他人に迷惑をかけるよ うなストレス解消法は 正しくないことを伝え. ・ストレスは誰にでも あるが、それに気づ き、ストレスを和ら げる方法をもって、. それを実行するこ とが大切であるこ とを伝える。. る。. ※指導の際に使用したパワーポイントは、別紙資料に示す。 (資料④参照). ⑧児童の様子. ストレスが心身に及ぼす影響. 心身の健康に関するアンケート 記入時の児童の様子. について保健指導の様子. ・19・.
(23) 【ストレスの概念】. ストレスとは「外部刺激(ストレッサ])に対して生じる生体内のひ. ずみ状態で非特異的に示される汎適応症候群」を指し、「生体に生じ る生物学的歪み」として観察可能な生理学的現象を示している(山中,. 2002)。ストレッサーはストレスを引き起こす外部環境からの刺激で ある。. (ア)外的ストレッサ]:温度・湿度・騒音・過労・感染・外傷・化学物質な. どの環境要因 (イ)内的ストレッサー二怒り・不安・恐怖・悲しみなどの心理的要因 (ア)(イ)を受けると ↓. (ウ)非特異的反応(ストレスを受けた時に生じる生体反応)が起こる。 【中学年への指導時の配慮】. ストレスのという言葉を知っている児童は多くいるが、その意味を 尋ねると何となく答えることができる程度の児童がほとんどで、スト レスについて正確に答えられる児童はいない。導入時に、児童が何と. なく捉えているストレスの意味の中から、近いものを例として取り上 げ、具体的なものからストレスを理解させるよう工夫した。. 身体と心が起こすストレス反応については、ストレス状態が長く続 くと、身体の症状(肩こり、吐き気、食欲不振など)が現れたり、免疫. 力(体を守るカ)が低下して病気になる場合もあることを知らせる程 度とした。. 【低学年への指導時の配慮】. ストレスという言葉を聞いたことがある児童は数名いるが、その意 味を尋ねるとはっきり答えられない。児童の日常生活の中での場面を ふりかえり、具体的な例をあげながらストレスを理解させるよう、導 入時に時間をかけた丁寧な説明を行った。. 身体と心が起こすストレス反応については、ストレスがかかるとイ. ライラするなどの身体の症状や気持ちが落ち込むなどの心の状態を あげて、簡単にストレス反応についてふれる程度とした。 一20・.
(24) 【指導中や指導後の児童の様子】. 指導中は、どの学年の児童も、関心を示し自分の経験にあてはめ ながら、とても熱心に聞いており、興味深く参加する様子が見られ た。指導の中で、児童らからストレス対処のいろいろなアイデアが 出されていく中で、自分自身でストレスの対処法を見つけ出す児童 もいた。また、友だちのストレスの対処を知って、自分の対処との 違いを知り、新たな発見をする児童も見られた。ストレス度のチェ ックシートを、事前に保健だよりに掲載して児童に配布していたの で、指導時にはすでに自分のストレス度をチェックしていた児童も 多かった。. 3月初旬の実施であった為、卒業を控えた6年生は、進学に向け 学習面での追い込みもあり、かなりストレスブルな状態の児童もお り、受け止め方は様々であった。なかには、指導した後の目に、ス. トレス状態にある6年生の児童が、保健室に「ストレスが溜まって いる」と訴えて相談に来た。また、高学年の女子で、友だちとの関 係(女子同士)が上手くいっていないことが原因で、r嫌な気分(ムカ. つく、不安など)になって」いて、保健室に「この頃、毎日、ストレ ス溜まるわ。」と愚痴をこぼしに来た児童も数名いた。. 一21・.
(25) 第4節まとめと課題 深刻化する子どもの現代的な健康課題の解決に向けて、学級担任 や教科担任等と連携し、養護教諭の有する知識や技能などの専門性 を保健教育に活用することがより求められていることから、学級活 動などにおける保健指導はもとより専門性を生かし、ティーム・ティ. ーチングや兼務発令を受け保健の領域に関わる授業を行うなど保健 学習への参画が増えており、養護教諭の保健教育に果たす役割が増 していると述べられている(文部科学省,2008a)。. 養護教諭は保健室に来る児童の対応はもちろん、教室において集 団を対象とした心身の健康に関連した教育に関わっていくことが望 まれる。その際には、日頃、保健室で発育・発達段階の違う児童らと 接していることから得られる情報や、健康診断・健康観察・相談活動・. 個別の保健指導などを通して得た児童の健康実態を把握しているな ど、児童の様子を幅広くとらえることができる養護教諭の特性を生 かし、心身の健康に関連した学習を提供していきたい。. 養護教諭が予防教育としての教科指導に果たす役割として、①児 童の保健室での体験を生かす。②保健室での個別指導で捉えた課題 や情報を保健の授業に生かす。③健康診断・健康観察・健康相談活動. などの結果を児童の指導に活用する、などが考えられる。これらの 保健室の機能を生かすことで、全校に心身への配慮に目を向けるこ とついて発信し、それを通じて児童自らが実践力を身に付け、より 適切な行動がとれるように働きかけていきたいと考えている。. 今後、心身の健康調査でわかったことを、学校全体で共有し、学 級担任との連携・情報交換に活用し、児童への養護教諭による指導や. 担任とのティーム・ティ』テングによる全体指導にっなげていこう と考える。. 養護教諭から学級担任への働きかけとしては、①∼③が考えられ る。これらを通して学級担任からの情報を得るなど、養護教諭と学 級担任が情報交換を上手く行い、連携しながら具体的な指導につな げていくための方策を考えていきたい。. 一22一.
(26) ①保健室一担任間の連絡カードの使用により、効果的に情報交換を 行う。. ②心身の健康調査の結果から個別に問題が見られる児童について は、個人カルテのようなものを作成して経過を観察しその情報を 担任に提供する。. ③保健室での気になる児童の様子や教室での気になる児童の様子 について、担任との話し合いの中で聞くなどを通して、積極的な 働きかけを行う。. ・23・.
(27) 第3章心身の統合的理解をもとにした教育支援に関する 心の教育総合プラン. 第1節心の教育実践総合プランの全体構造 児童の心身の健康調査で明らかになった課題の解決に向けて、児童 の心身の健全な発達を支援するために、心の教育に関する取り組みを. 行う。児童の心身の健康に焦点をあてて、身体の訴えと心の問題、心 と身体の関係(心身相関)の問題について改善を図るために、養護教論. と学級担任のそれぞれの特性を生かし、有機的に連携して効果的な援. 助を行う。心の教育諸分野へ働きかけ、学校のあらゆる場で心を育て る教育を展開する。実践総合プランの概要を図にまとめる(Fig.1)。. 心身の統合的理解をもとにした教育支援 養護教諭と学級担任 の有機的な連携 道徳教育分野 道徳の授業. 地域・家庭教育分野 虐待が疑われる児童 に対する支援 等. 他者理解等. 〃 児童の心身の健康 ・身体の問題 ・心の問題. ・心身相関の問題等. σ 生徒指導・教育相談分野. 学級経営分野 危機的状況にある 学級への支援 等. 携帯電話の利用に関す る問題 等. Fig.1. 心の教育実践総合プラン全体構造. 一24・.
(28) 第2節道徳教育分野 1.実践報告 子どもたちの心が荒れることなく、健全で豊かな心をもった人間と して成長して欲しいという願いが筆者には強くある。特に、他者の心 を尊重し、自分も他者も共に大切にできる、やさしい思いやりある子 たちに育って欲しいと思っている。地域や家庭で子どもたちの心を育 てることが十分に果たせないのであるなら、学校教育がそれを担って いかなければならない。児童の社会性の発達を促すために、まずは、 自分と他者との相互理解と相互尊重をすることで、好ましい人問関係 を築くための取り掛かりとしたい。. 児童の道徳性は、日々の人間関係の中で培われる。学校や学級にお ける人的な環境は、主に教師と児童及び児童相互のかかわりにおいて. 形成される。人間関係に関する指導においては、特に道徳の内容の2 の視点「主として他の人とのかかわりに関すること。」に含まれる内 容項目が実践できるような状況をつくるように心掛ける必要がある。 指導の基本方針として、「児童には、年齢相応の発達の課題があると ともに、個人差も大きいことに留意し一人一人の感じ方や考え方を大. 切にした授業を工夫する。そして、児童が自分の生活や自己の生き方 を主体的に考えられるようにする。」ことが求められる(文部科学省,. 2008。)。これらを踏まえ、社会性が育ち始める3年生を対象に、児童 の発達や個に応じた指導を工夫し、発達段階に合わせた発達課題を取 り入れた授業を試みた。. 【発達課題を取り入れた道徳の授業】. ①目時:2009年7月16目(木)4時間目 ②対象:3年2組(男子13人、女子11人、計24人) ③主題名:他者(ひと)の立場に立ってみる. 内容項目2一(2)思いやり・親切. ④主題設定の理由: 1)価値について. ・25・.
(29) 児童の日常の行動と関係する、やさしさや思いやりといった個人の 内面にある心の働きは、自分が体験してわかるもので、そうした経験 が少ないとなかなか理解できない。それらは知識として教えてできる ようになるものではなく、自分がやさしくされた経験、親切にされた. 経験や自分に対しての気遣いや共感された等の経験から感じて学ん でいくところが大きい。. 児童に日常の生活の中で自分を取り巻く周りの他者の存在に気づ かせ、その人たちの考えていることや感じていることについて関心を 持たせ、それらと関わることを通して他者への意識を深め、他者の立 場に立って考えることができるようになる心構えを育てたい。. 2)児童観 筆者が観察するところ、クラスの課題として、勉強時間と休み時間 のけじめをつけることができていない児童がいる。また、自分が話し やすい限られた相手とだけの友だち関係の児童が多いために、クラス の友だちのことに対して無関心になっていたり、一人で単独行動を取 りがちになったりするといったことが見られる。まず、相手の話を聞 き、次に自分の気持や考えを上手に伝えるなど、自分たちで相互に話 し合うことができるようになるという課題があり、他者の視点でもの. を見ることができない自己中心性が残っている児童が多くいるので はないかと思われる。. 3)題材観・指導観 自分や身近な他者の理解について学ぶ学習を考えた。人と付き合っ ていくためには、他者の気持ちを知ることが大切であることを気づか せるために、他者の視点取得を目指した。そこで、相手の立場に立っ. て推測することを学ぶために、簡単なものから難しいものまでの4つ の課題を取り入れた学習内容とした。具体的には、①教師が演じる物 語を見て、出来事の経緯を登場人物の視点で見て、その行動を推測す る。(サリーとアンの課題)②3つの山(色の異なる円錐)を見せて、. 一26・.
(30) ものの見え方を推測する。(三ツ山課題)③マンガの登場人物の立場 に立ち、他の登場人物の考えていることを推測する。(人の気持ちや. 考えを推測する課題)④クラスの友だちの立場に立ち、友だちの気持 ちや考えを推測する。(身近な人の気持ちや考えを推測する課題)で 構成した(小池,2−O05)。なお、①サリーとアンの課題と②三ツ山課題. は、子どもの認知を問う問題であり、発達に遅れのある児童をスグリ 』ニングする目的を兼ねている。. 学習体験を通じて、他者の思いが必ずしも自分と同じではないこと. や他者から見た自分を知り、自分白身への新たな気づきを促したい。. ⑤本時のねらい ・友だちを理解する際に、友だちの立場に立つことの難しさとその 重要性に気づかせる。. ・友だちの気持ちを知ろうとすることは、人と付き合っていくため には大切であることに気づかせる。. ⑥本時の展開 導 入 5. 分. 学習活動 〔心の理論課題〕5分 サリーとアンの課題を教師 が演じるのを見て、赤・青 のどちらの箱を探すか自分 の答えを書く。. 指導上の留意点. ・ワークシート①を配布す る。. ・自分の思った通りを書くよ うにうながす。. ・選んだ(赤・青)箱を挙手さ. 準備物 人形・箱. 2つ(赤 ・青). ワーク. シー ト ①. せる。 展 開. 35 分. 〔三ツ山課題〕10分 ○教卓の(円錐)模型を見 る。. ○その三ツ山模型を先生か ら見た時と横の人形から 見た時とのように見える か推測し絵を描く。. 3つの円錐. ・教卓の上の円錐は山である と説明し、黒板側にいる先 生と模型の横にいる人形に は山がどう見えているか描 くよう指示する。. (白・緑・. 茶)人形. ワーク. シー ト ①. ・色は塗らなくてもいいが、 何色なのか書くように指示 する。. ○正解の絵と自分の描い た絵を比べてみる。. ・全員が書き終えたところで. 三ツ山の正解の絵を見せ る。. ・正解に近い絵を描けた人. は、先生や人形の視点に立 って見ることができたこと. 一27・. 正解の 絵.
(31) を指摘する。. ・この課題では他者の視点で ものを見る体験を目的とし ているので、厳密に正確な 絵でなくても、位置が正し ければ正解とする。. 〔五コマ漫画課題〕10分 ○ワークシ」トに書かれて いる漫画のストーリーを 間く。. ・ワークシート②を配布す る。. ・漫画のストーリーを読みあ. ワーク. シー ト ②. げる。. ○「郵便屋さんが考えた子 どもが泣いている理由」 をワークシートに書く。. ○ワークシートの記入した ことを発表する。. ・郵便屋さんにはとれないよ うな視点(プレゼントを見 て車にひかれた大のことを 思い出したなど)三コマま での出来事が理由として発 表された場合は「郵便屋さ んは三コマまでの出来事を 見ていなかったのに、どう して犬が車にひかれたこと 知っているの」とたずねる。. ・郵便屋さんが実際にどのよ うなことを考えたのかは、. 分からないので、この課題 には正解はない。. ・ただし、三コマまでの出来 事を理由として書くことは 間違いであることを指摘す る。. ・三ツ山課題はものの見え方. の推測であったのに対し て、五コマ漫画課題は人の 考えていることを推測であ ったことを説明する。 ・ものの見え方の推測より、 人の考えていることの推測 の方が難しかったのではな いかとたずねる。. 〔グループでクイズ〕15分. ○ワークシートの質問に. ついて、自分の感じるこ とや考えることを書く。. ○班のメンバーの回答を 予想し書く。. ・ワークシート③を配布す る。. ・3∼4人の班に分ける。. ・自分の回答を班のメンバー. に見せないように注意す る。. ○班ごとに自分の回答を 発表する。. ○班の他のメンバーの回 答は予想通りであれば、. ・時間がなければ!つの班を 代表にして発表させる。. ・予想が的中している子が少 ないことを確認し、他者の. 一28一. ワーク. シー ト ③.
(32) 気持ちを推測することが難. ○をする。. ○心の理論課題、三ツ山課 題、五コマ漫画課題、グ. ま と. め 5. ループでクイズを通し てどのようなことに気 をつけたか考える。. 分. ○まとめの話を聞く。. しいことを指摘する。 ・ 「その人になったつもりに. なる」などの意見が出るよ うに発問を工夫する。. ・最後のグループでクイズの 結果か、他人の気持ちを推 潮することが難しいことを 確認する。. ○今日の授業で学んだこ と生活の中でどう役立 つかなど、授業の感想を. ・友だちの気持ちを知ろうと することは、人と付き合っ ていくために大切であるこ とを気づかせる。. 書く。. ワーク. シー ト ③. 感想欄. ※指導の際に使用したワークシートは、別紙資料に示す。 (資料⑤参照). 【課題の内容】. 〔サリーとアンの課題〕. ユ.サリーとアンが部屋で遊んでいました。 2.サリーが人形を箱に入れて部屋を出て行きました。 3.サリーがいない間に、アンがその人形を別の箱の中に移しました。 4.サリーが部屋に戻ってきました。 5. rサリーは人形を取り出そうと、最初にどこを探すでしょう?」 と質問する。. 困 仮. 鰯一. 人形. 嫡 Eヨ 注:観海者と人馴ま三ツ山。方向を向く,賜中直動がたいようにすら.. 握:上出昌見た團. 画1−5 三ツ山の記震側. 国1・4 =ツ山認国顯6Φ授業者・人形の配置倒. 〔5コマ漫画のストーリー〕. 1コマ目:可愛がっていた犬がいました。 2コマ目:ある目、その犬が車にはねられてしまいました。 3コマ目:その子はとても悲しみました。 4コマ日:数目後、郵便屋さんがプレゼントを届けてくれました。 5コマ目:そのプレゼントは車のおもちゃでした。 それを見てその子は泣き出してしまいました。. 一29一.
(33) 【まとめの説話】. 自分の思ったことを友だちが同じように思っているとは限らない ことが分かりましたね。. みんな自分と同じ考え一や思いだったら、別に話さなくてもいいんだけ. れど、みんな自分と同じように考えたり思ったりしていないというこ となので、相手を知るためには、相手に聞くことが大切です。その人 と話をしないと分からないということです。. 自分の考えや思いを相手も思っていると思って押し付けるのはど うなんでしょう?相手の気持ちが分かったつもりでいると、もめごと. になってしまうかもしれません。相手はそうは思っていないのに想像 で無理に何かをされたりすると、ケンカのもとになってしまうかもし れません。このクラスの人たちもよく保健室にケンカやもめごとでケ ガしてやってくることがあります。話を聞いてみると、ちょっとした 意見の違いや勝手な思い込みがもとになっていることが多いです。. そこで今日勉強したことから考えると、「自分が思っていることを 相手が思っているとは限らない」でしたよね。こうしたケンカやもめ ごとにならないためにはどうしたらいいと思いますか?. 自分の思いを相手が思っていると思い込まないで、「ちょっと待て よ!」と考えることをしてみましょう。相手になったつもりで考える ことで、相手に同情したり、相手と同じ気持ちになったり、相手の気 持ちに気づくことができます。そうすると手が出る、足が出るといっ. たケンカにならなくて、言葉で話し合い解決することができるように なります。相手の気持ちを考え思うようにして欲しいと思います。相 手の気持ちを思いやることができる人になってください。. ・30・.
(34) (1)結果及び考察. 1)結果の分類 ワークシートの記入結果を分類したものを以下に示す。 ワークシート① 問題1 正解は赤の箱。 男子(人) 女子(人) 合計(人) 得点 回答 1. 青い箱. 21. 10. 11. 赤い箱. 間題2 (1)先生から見た山の絵は、緑一白一茶が正解である。 □ ’ u. 、 [ ’. ^. I 1. 」. ’ 一 ■ ■ ■. ■■[ ■ o I 、. ’1I’ 1. ’ ■ 1. ,. ’. ’ i ■. ,. 阯 ’. …. 〕. 回答内容 無回答. 得点 1. 2. 山が1つしか書けない. 3. 茶一白一線(提示している、自分から見えている山の配置) 茶一緑一白(自分から見える配置以外で正しい山の配置でもない) 緑一白一茶. 4 5. (2)人形から見た山の絵は、緑一茶一白が正解である。 得点 1. 2 3. 4 5. 回答内容 無回答. 山が1つしか書けない 茶一白一線(提示している、自分から見えている山の配置) 茶一緑一白(自分から見える配置以外で正しい山の配置でもない) 緑一茶一白. 得. 発達段階と三ツ山の課題の達成度. 点. (小池,2005). 問題2一(1). 男子. 女子. 合計. と2一(2)の. (人). (人). (人). 2−2,3−1. 1. 2. 3. 3−3. 3. 2. 5. 3−4,3−5. 6. 2. 8. 回答の組合 せ. 1. 発達段階I(4歳以下) 「別の角度から見たらどう見えるか」 と言う質問の意味が理解できない。 発達段階■。(4∼6歳). 2. 3. 自分の視点と別の視点との区別ができ ない。別の角度から見たらどう見える のかを聞かれても、常に自分から見え ている山の配置を答える。 発達段階■b(4∼6歳). 一31・.
(35) 自分の視点とは違う視点があることに 気づいてはいるが、明確に答えること はできない。. 発達段階皿a(7∼9歳) 自分の視点とは違う視点があることに 気づいてはいるが、明確に答えること. 4. 5−3,5−4. 1. 2. 3. 5−5. 2. 3. 5. はできない。. 発達段階皿b(9∼10歳) 自分と反対側の位置から見える山の配 置だけでなく、右側または左側の位置 から見える山の配置についても答える ことができる。つまり、三ツ山の課題 に正解することができる。. 5. ワークシート②. 問題3 登場人物の考えていることの推測する 郵便屋さんにはとれないような視点、例えば「プレゼントを見て、 車にひかれた犬のことを思い出したから」など、三コマ目までの出来 事が理由としている場合は間違いである。郵便屋さんが実際にどのよ うなことを考えたかは、この漫画からはわからないので、この課題に 正解はない。 得 点 1. 2. 回答内容 無回答. 三コマ目までの出来事が理由として書い. 男子. 女子. 合計. (人). (人). (人). O. 工. 1. 3. 1. 4. 10. 9. 19. ている. 泣いている理由がわからない. 3. どうしたんだろう 何が欲しかったのかな うれしくなかったのかな 車が嫌いなのかな 辛いことでもあったのかな うれしかったのかな 嫌なことがあった. 何でだろう喜ぶはずなんだけど 僕が何かしたかな 車と関係のある事故があったのかな. 車の嫌な思い出があるのかなノ. ・32・.
(36) ワークシート③. グループでクイズ1,2(全6間)友だちの考えていることを推測する。 相手の気持ちを予想できた得点の. 相手の気持ちを予想できた得点 (0−18). 分類 ○ 無回答. 1 X(予想がはずれている) 2 △(予想が半分あたっている). 3 0(予想が的中している). 男子総得. 女子総得. 合計総得. 点. 点. 点. 142. 80. 222. 男子平均. 女子平均. 全体平均. 得点. 得点. 得点. 10,92. 7.28. 9.25. 【児童の感想】. ・友たちのことを考えてあげる ・ケンカがないクラスにしたい ・難しかったと思う. ・友だちとの手をださないことがわかった ・おもしろかった ・これから授業中にケンカをしないようにしたいです ・おもしろかった ・人の気持ちがいろいろなひとによって考えが違うんだなあと思いました ・難しかった ・楽しかった. ・もっと相手のことを思わなっくっちゃ ・山を書いたりするのが、難しかった ・人の気持ちを理解して人の話を聞いて、手や足を出さないクラスにしたい ・気持ちがわかる勉強と思う ・いろいろなことがわかった ・勉強が楽しいってわかった ・みんなの気持ちを考えるのも難しいと思った ・友だちの気持ちを知ること ・すぐに、けったりたりしたら、あかんと思う ・これから授業中や給食中、ケンカがないクラスがいい ・わかったこと、気持ちは見えないもの ・これから人の心がわかるようになりたい ・楽しかった、何でも聞いてみないといけない ・これからケンカがないクラスにしたい. ・33一.
(37) 2)結果の考察 自分や他者の考えや欲求、情動、意図などといった心の存在や動き についての理解を「心の理論」とよんでいる(久保,2003)。ここでい. う「心の理論」は、人が他者の心の動きを類推したり、他者が自分と は違う信念を持っていることを理解したりする機能を指している。誤. 信念の課題を自閉症に応用するために、より簡便化したものがrサリ ーとアンの課題」である。「心の理論」課題は、子どもにどれだけ人 の気持ち(心)を理解する能力が育っているかを検査するためのもの である。. 「心の理論」課題は通常4,5歳程度になると答えることができる と考えられている。しかし発達が遅れていると、他者が自分と違う見 方・見解を持っていることを想像することが難しいために、自分が知 っている事実をそのまま答えてしまう。授業に取り入れた「サリーと. アンの課題」は3∼4歳の幼児は失敗するが、5∼6歳になると他者の 知識や信念を自分のそれと混同することなく考慮することができる ようになって、この質問に正答できるようになるものである。 問題1で「赤い箱」と回答した児童は、24人(男子13、女子一11)中 21人(男子!1、女子10)で、「青い箱」と回答した児童は3人(男子2、. 女子1)であった。「赤い箱」と答えた児童21人おり87,5%の児童が 「心の理論」課題を通過している結果となった。一方、「青い箱」と. 答えた児童3人はこの課題を通過できていないといえる。発達課題を 到達できていない児童については、個別に丁寧に対応していく必要が ある。. 「三ツ山課題」は、ピアジェとインヘルダ」が子どもの自己中心性 を確認するために開発したものである。前操作期(2∼7歳)の特徴で. ある「自己中心性」を実験的に示す課題で、3つの山から成る模型を 見せ、視点を変えるとどのように見えるかを問う。発達段階で子ども が異なる反応を示すとしている(小池,2005)。. 「自己中心性」とは、自分の視点でのみものを見る傾向のことを指 す。自己中心的な直感的思考をする、前操作期(2∼7歳)の子どもに見. ・34・.
(38) られる特徴で、この段階にいる子どもは他者の視点に立って理解する ことができない。この「自己中心性」は発達の過程で消えていくとい う特徴があり、具体的操作期(7∼12歳)に入ってくる頃に、晩中心的. な思考ができるようになる。ピアジェらの主張では、発達段階皿bの 子どもは、自己中心性が消えているということであるが、その後の研 究で彼らが考えた年齢よりもっと早い段階で、自分の視点と違う視点 があることに気づいていることを示したものもあり、発達には個人差 があることを十分に考慮しなければならない(小池,2005)。. 問題2の回答結果を、ピアジェらの発達段階と三ツ山の課題の達成 度に照らしてみると、低い発達段階であるI3人(男子1、女子2)、■. a5人(男子3、女子2)、ub8人(男子6、女子2)の児童が多く、この クラスは平均的な学齢発達段階よりもやや低い傾向にあるといえる。 なかには発達段階皿a3人(男子1、女子2)、皿b5人(男子2、女子3) の高い段階にある児童も見られた。合計得点の平均は3.08、男子得点 の平均は3.00、女子得点の平均は3.18であり、女子の得点が高かっ たが、性差について下検定を行った結果(P=O.744)で有意な差は見ら れなかった。. 問題3の登場人物が考えていることを推測する5コマ漫画課題では、 「心の理論」課題が通過できていない児童は、無回答か間違った回答 をしていた。合計得点の平均は2,75、男子得点の平均は2.77、女子. 得点の平均は2,73で男子がほんの少し高い結果であった。パ検定を 行った結果(P・O.387)で性差は見られなかった。. グループでクイズ間題の友だちの考えていることを推測する課題 では、「心の理論」課題が通過できていない児童は、無回答が、相手 によって違うことが推測できないためか同じことを書いていた。高次 の発達段階にいる児童にも、友だちの気持ちを推測することの難しさ が見られた。合計得点の平均は9.25、男子得点の平均は10.92、女子. 得点の平均は7.28で平均得点では男子の方が女子に比べて3.64高く、. 男子の方が多くの友だちの気持ちを想像できていたという結果であ った。下検定を行った結果(P・0,021)で男女に有意な差が見られ、全体. 一35一.
(39) 的に見て、発達段階の高い児童の得点が高い傾向にあると思われた。. 児童の感想を見ると、友だちの考えていることを推測する課題(グ ル』プでクイズ問題)の得点の低い児童は、「難しかった」「楽しかっ. た」「おもしろかった」などの簡単な感想であるが、中得点の児童の 多くは、最後の説話が印象に残っているためか、「ケンカのないクラ スにしたい」「友だちに手をださないことがわかった」「けったりした. らあかんと思う」などの感想を述べた。得点の高い児童は「人の気持 ちがいろいろな人によって違うと思った」「もっと相手のことを思わ なくてはいけない」「友たちのことを考えてあげる」「みんなの気持ち を考えるのも難しいと思った」「わかったこと、気持は見えないもの」. など授業の内容を理解できている感想が見られた。「人の気持ちを理 解して人の話を聞いて、手や足を出さないクラスにしたい」といった、. 具体的にこれからの生活に生かしたいと考える児童も見られた。. 学級集団の中で高次の段階にある児童に、他の児童がふれ刺激され ることで、全体的な成長が期待される。指導上、高次の段階の児童の 意見を全体に伝え、その大切さを説明することにより、全体の段階の 向上促進につながると考えられる。. ・36一.
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