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「長期未着手都市計画道路が建物更新に与える影響 〜長崎市を事例として〜」

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長期未着手都市計画道路が建物更新に与える影響

〜長崎市を事例として〜

<要旨> 都市計画道路などの都市施設が計画決定されると、将来の事業実施の円滑化のため、その 区域内においては建築制限が課されるため、長期未着手都市計画道路では長期間の土地利 用制限により生じる逸失利益について補償を求める訴訟なども見られる。このように、長期 未着手都市計画道路は、区域内に生じる社会的損失の存在がこれまでも認識されている。 しかしながら、長期未着手都市計画道路が都市計画決定区域そのものではなく、そこに隣 接する立地へ与える影響や、見直しを行うことによる政策効果についてはこれまで十分に 検証されていない。 本研究は長崎市を事例として、長期未着手都市計画道路がいつ事業着手されるのか不明 であるという不確実性や、都市計画道路の見直し方針の公表による政策効果ついて、都市計 画決定区域内に加え、区域隣接地についても着目し、建物更新の意思決定についての考察、 GIS を用いた建物個別の詳細データによる実効容積率のシミュレーションに加え、実証分析 を行った。その結果、長期未着手都市計画道路の区域隣接地において接道条件が悪い立地で は建物更新が先送りされる傾向があり、老朽建築物による負の外部性の増加が助長される が、見直し方針を公表することにより不確実性が軽減され、区域隣接地の建物更新先送りは 解消される。また、建物の 50%未満が都市計画道路の区域にかかっている場合において建物 更新が前倒しされる傾向があり、事業実施の際に取引費用の増加が生じる可能性を有する ことを明らかにした。 これらの結果から、長期未着手都市計画道路の再評価による整備の必要性が低い路線の 不確実性解消や、見直しの結果、存続となった路線の建築制限による逸失利益への対策・不 確実性の軽減、事業実施時における取引費用の増加対策を踏まえた現行制度の改善につい て提言した。

2018 年(平成 30 年)2 月

政策研究大学院大学 まちづくりプログラム

MJU17705 片山 稔夫

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目次

第1章 はじめに ... 1 1.1 研究の背景、目的 ... 1 1.2 先行研究 ... 3 1.3 研究の構成 ... 4 第2章 都市計画道路の制度概要 ... 4 2.1 都市計画道路の手続き ... 5 2.2 都市計画道路の見直し状況 ... 6 2.3 建築制限の概要 ... 7 2.4 長崎市における都市計画道路の変遷 ... 8 第3章 長期未着手都市計画道路が建物更新に与える影響の考察 ... 9 3.1 長期未着手都市計画道路の不確実性による影響 ... 9 3.1.1 都市計画道路区域内の建物更新について ... 9 3.1.2 都市計画道路区域隣接地の建物更新について ... 10 3.1.3 建物更新が遅れることの問題 ... 10 3.2 仮説 ... 11 第4章 建築制限や道路整備による実効容積率の増減シミュレーション ... 12 4.1 実効容積率の増減シミュレーション ... 12 4.1.1 シミュレーション方法 ... 12 4.1.2 シミュレーション結果 ... 13 4.2 実効容積率増減の貨幣換算 ... 16 4.2.1 実効容積率の貨幣換算方法 ... 16 4.2.2 実効容積率シミュレーションの貨幣換算結果 ... 18 第5章 建物更新に与える影響の実証分析 ... 20 5.1 実証分析の方法 ... 20 5.1.1 分析方法 ... 20 5.1.2 使用するデータ ... 21 5.2 推計モデル ... 22 5.2.1 実証分析1(長期未着手都市計画道路による影響) ... 22 5.2.2 実証分析2(見直し方針公表による影響) ... 22 5.3 実証分析の結果と考察 ... 26 5.3.1 実証分析1(長期未着手都市計画道路による影響)の結果 ... 26 5.3.2 実証分析2(見直し方針公表による影響)の結果 ... 29 5.3.3 実証分析結果のまとめ ... 32 5.3.4 仮説に反する実証分析結果についての考察 ... 33 第6章 まとめ ... 36 6.1 政策提言 ... 36 6.2 今後の課題 ... 39 謝辞 ... 40 <参考文献> ... 41

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第1章 はじめに

1.1 研究の背景、目的 都市計画道路は都市計画法第 11 条で定める都市施設の1つであり、都市の骨格を形成す る都市交通の基幹的な役割を担いつつ、単に交通機能を有するだけではなく、安全な歩行者 空間や防災性の向上などの観点も踏まえて計画されている。また、都市施設として都市計画 決定が行われると、将来における事業の円滑な施行を確保するため、その区域内は都市計画 法第 53 条の規定により建築行為に対する制限1が課されることとなる。都市計画道路の多く は、高度経済成長期における都市の拡大を前提とした計画決定がなされており、平成 27 年 度末時点で全国の都市計画決定された幹線街路の計画延長は約 6.4 万 km にのぼるが、この うち約 2.1 万 km(計画延長の約 32%)が未着手路線となっている2。このような中、近年の 人口減少や社会情勢の変化によって都市計画決定から長期間が経過し、整備の必要性が低 くなった路線も多く存在しており、これらの路線による建築制限に関連した訴訟なども見 られる。 これらは、計画決定から長きにわたり再評価されることなく存続してきた長期未着手都 市計画道路であったが、平成 12 年頃から見直しの必要性が認識されはじめ、さらに平成 18 年頃から急速に見直しの機運が高まり、全国の地方自治体では長期未着手路線を必要性・実 現性の面から再評価し、その結果に応じて「変更」・「廃止」・「存続」のふるい分けを行う、 いわゆる「長期未着手都市計画道路の見直し」が進められてきた。しかしながら、平成 28 年3月末時点において全国 1,351 の地方自治体のうち 267 の地方自治体、約2割が見直し による検証を行なっていない状況である3。見直しに伴う代替整備や建築制限に伴う補償問 題などについて住民との合意形成に苦慮するなど、見直しの進捗には地域格差が見られ、全 国一律で問題解決が行われているとは言い難い状況である。 また、見直し実施都市における未着手路線の内訳は、見直し対象外および存続路線が 80%、 廃止路線が 16%、ルートや幅員の変更路線が 4%となっており4、廃止以外の路線については 建築制限による土地利用制限が継続することとなる。 このように、これまで長期未着手都市計画道路の問題としては都市計画道路の都市計画 決定区域内(以下、「区域内」と称す。)における建築制限による土地利用上の社会的損失が 1 詳細は 2.3 参照 2 国土交通省都市局(平成 29 年 7 月)「都市計画道路の見直しの手引き(第 1 版)」p92,p93 より。 3 国土交通省都市局(平成 29 年 7 月)「都市計画道路の見直しの手引き(第 1 版)」p95 より。 4 国土交通省都市局(平成 29 年 7 月)「都市計画道路の見直しの手引き(第 1 版)」p93 の各都道府県の未 着手延長、p96 の見直し実施状況から各都道府県の見直し完了路線延長を算出し、p98 の見直し状況によ る廃止・変更延長の合計値と見直し完了路線延長の差を存続路線延長としている。

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2 認識されてきた。 しかしながら、長期未着手という状態には、いつ着手されるかわからないという不確実性 も存在しており、周辺の土地利用に何らかの影響を与えることが懸念される。これまで、長 期未着手都市計画道路が存在することにより、都市計画道路の都市計画決定区域そのもの ではなく、そこに隣接する立地(以下、「区域隣接地5」と称す。)へどのような影響が生じ るかについて、見直しを行うことによる政策効果についてはこれまで十分に検証されてい ない。例えば、都市計画道路沿線における建物更新の意思決定においては、道路整備前後に おける実効容積率6は異なるため、建物更新にはサンクコスト、不確実性、先送り・前倒し 可能性を有しており、通常の建物更新サイクルから歪みが生じている可能性がある。 本研究では長崎市を事例として、都市計画道路の長期未着手状態による不確実性や、都市 計画道路の見直し方針の公表による政策効果について、区域内に加え、区域隣接地を含めた 建物更新に着目し、建物更新の意思決定についての考察、GIS7を用いた建物個別の詳細デー タによる実効容積率のシミュレーションに加え、実証分析を行う。 本研究の主要な結果は以下の通りである。区域隣接地であり、なおかつ接道条件が悪い立 地では、道路整備後に建物更新を行うことで土地の高度利用が可能となることから、建物更 新が先送りされる傾向がある。これは、老朽建築物が増加することを示唆しており、負の外 部性による社会的損失が問題となる。また、長期未着手都市計画道路の見直し方針を公表す ることにより、不確実性が軽減され、区域隣接地の建物更新先送りは解消される。 さらに、建物の 50%未満が長期未着手都市計画道路の区域にかかっている場合では、5.3.4 で述べるように道路整備が行われる前に建物更新を行うことで土地の高度利用が可能とな ることから、建物更新が前倒しされる傾向がある。これは、将来的に道路整備を行う際の用 地買収で違法建築物が発生する可能性があり、用地取得における取引費用の増大8が問題と なる。 これらの結果を踏まえ、長期未着手都市計画道路の再評価による整備の必要性が低い路 線の不確実性解消や、再評価の結果、将来的に整備が必要とされた路線の建築制限による逸 失利益への対策・不確実性の軽減、事業実施時における取引費用の増加対策を踏まえた現行 制度の改善が必要である。 5 都市計画道路の区域外であるものの都市計画決定区域に隣接しており、都市計画道路が整備されると実 効容積率が増加する立地として、概ね1区画となる都市計画決定ラインから 10m 以内を想定。 6 本稿では、様々な法規制を考慮した上で実効的に建つであろう建物の容積率を意味する。 7 Geographic Information System:地理情報システムの略称

8 用地買収により建築基準法における道路斜線制限違反となる可能性があり、違反部分は公共補償により

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3 1.2 先行研究 これまで、長期未着手都市計画道路について考察を行った研究はいくつか存在する。川崎 ほか(2008)は、長期未着手都市計画道路の建築制限に対する損失補償関連訴訟を取り上げ、 都市計画の効力持続についての実体的かつ手続的な合理性の問題であることを指摘してい る。高倉ほか(2009)では、長期未着手都市計画道路である越前市大正線を事例として、住民 の意識や意向にアプローチした研究手法により、見直しの必要性や、未着手状態で放置する ことが地権者・地域づくり、行政双方に負担を伴うことを論じている。また、小澤(2012) では、都市計画道路区域内における建築制限の影響と、建築制限の緩和政策の効果につい て、公示地価を用いて OLS 分析9および DID 分析10を用いて実証分析を行い、建築制限下にお いては土地利用自由度が減少するため地価も低下し、建築制限を緩和することにより低層 住宅地では地価が上昇するものの、商業系地域では地価が低下することを定量的に証明し ている。建築制限の緩和による商業系地域での地価低下については、建築制限の緩和が近い 将来事業実施が見込まれないことを意味するために道路整備への期待が減少するためであ ると分析している。 また、不確実性が存在する場合の土地利用や住宅投資の意思決定に関する研究として、齋 藤ほか(2008)では、中心商業地域における土地の商業的利用と駐車場としての利用につい て、リアルオプション理論に基づき経済環境の不確実性を加味したモデルを作成し、立地転 換のメカニズムを数値シミュレーションにより分析している。その結果、経済環境の不確実 性が高まると、商業から駐車場へ土地利用転換が進むことを明らかにしている。伊藤(2016) では、政策の不確実性を世論調査の政党支持率をもとにした政権運営の不安定指数により 推定し、政策の不確実性が高まると設備投資、住宅投資、耐久財消費などに負の影響を与え ることをマクロ経済学の視点から定量的に証明している。 老朽建物の負の外部性に関連するものとしては、中川ほか(2014)においてヘドニック・ アプローチ11により築 20 年を超えるマンションが集積する地域では外部不経済により戸建 て住宅価格を低下させることを定量的に明かしたものや、藤田(2017)では、老朽家屋12 は 100m 程度の範囲において、外部不経済により地価が低下することをヘドニック・アプロ ーチにより定量的に証明したものが存在する。 これらのように、都市計画道路の区域内における建築制限の影響、不確実性による土地利

9 Ordinary Least Squares regression:最小二乗法 10 Difference-in-differences:差分の差分法

11 対象の価格をさまざまな性能や機能の価値の集合体(属性の束)とみなし,回帰分析を利用して価格を

推定する方法。

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4 用や住宅投資の先送り、老朽建築物の外部不経済などは明らかにされているが、長期未着手 都市計画道路の不確実性に起因した建物更新への影響や、区域外である区域隣接地におけ る影響について、そのメカニズムを理論的に考慮した上で、定量的に実証した研究は見当た らない。 1.3 研究の構成 本稿の構成は以下のとおりである。 第2章では、都市計画道路の制度を取り巻く現状について整理する。 第3章では、長期未着手都市計画道路が建物更新に与える影響や都市計画道路の見直し 方針公表による政策効果について、都市計画道路との位置関係、用途地域、接道条件の違い などを比較しつつ建物更新の意思決定について考察を行い、「①長期未着手都市計画道路は 区域内の建物更新を抑制する」「②長期未着手都市計画道路は区域隣接地においても建物更 新を抑制する」「③建物更新抑制効果は住居系地域・商業系地域や接道条件により異なる」 「④建物更新に関する影響は見直し方針の公表により軽減する」の4つの仮説を設定した。 第4章では、建築制限による土地利用制限や、将来の道路整備によってどの程度実効容積 率が増減するのかを長崎市を対象とした建物別の諸条件からシミュレーションを行い、都 市計画道路との位置関係、用途地域、接道条件の違いごとに集計を行った。また、これらを ヘドニック・アプローチによる賃料ヘドニック関数を用いて貨幣換算している。 第5章では、第3章で設定した仮説について長崎市を対象に建物個別のデータを用いて 実証分析により検証を行った。プロビットモデルによる回帰分析を用いて都市計画道路と の位置関係、用途地域、接道条件の違いが分析対象期間内の建物更新確率にどの程度影響を 与えているか、また都市計画道路の見直し方針が公表されることによりその影響がどのよ うに変化するのかを定量的に分析している。 最後に第6章において、シミュレーションや実証分析を踏まえた現行制度の改善につい て政策提言を行うとともに、今後の課題を整理している。

第2章 都市計画道路の制度概要

本章では、都市計画道路の制度について都市計画法における手続きや見直しの状況、建築 制限の概要などを簡単に整理する。また、本稿で事例とする長崎市における都市計画道路の 変遷についても触れる。

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5 2.1 都市計画道路の手続き 都市計画道路は都市計画法第 11 条で定める都市施設の1つであり、都市の骨格を形成す る都市交通の基幹的な役割を担いつつ、単に交通機能を有するだけではなく、安全な歩行者 空間や防災性の向上などの観点も踏まえて計画されている。 歴史的には、1919 年に施行された旧都市計画法により、都市計画道路は都市計画事業と して土地収用可能な施設と定義されていたが、建築制限は導入されていなかった。旧法下に おいては都市計画決定権者が国13であったため、この当時に計画決定された都市計画道路に ついては国が決定している。その後、1968 年に新都市計画法へ移行したことに伴い、都市 計画決定権者が地方自治体となり、旧法下において計画決定された都市計画道路はそのま ま地方自治体へ引き継がれている。また、新法では都市施設を定義するとともに、「計画決 定」と「事業」を分離し、計画決定により建築制限を行うとともに、事業認可により土地収 用対象となる仕組みが導入されている。 現行の都市計画法において都市計画道路を含む都市施設を計画決定する際には、図1に 示すように、「都市計画の案の作成」、「公聴会の開催等」、「都市計画の案の縦覧等」、「都市 計画審議会への附議」を経て「都市計画決定告示」を行うこととなり、この時点から都市施 設の区域内では同法第 53 条の建築制限が生じることとなる。また、都市計画決定が告示さ れたことで直ちに事業が始まるわけではなく、事業着手の際には同法第 59 条の事業認可を 受ける必要がある。 なお、一旦決定した都市計画道路を変更もしくは廃止する場合においても、上記計画決定 の際と同様の手続きを行わなければならない。 図 1 都市計画決定手続きのフロー 13 都市計画地方委員会で審議し、内務大臣が決定していた。

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6 2.2 都市計画道路の見直し状況 都市計画道路の多くは、高度経済成長期における都市の拡大を前提とした計画決定がな されており、平成 27 年度末時点で全国の都市計画決定された幹線街路の計画延長は約 6.4 万 km にのぼるが、このうち約 2.1 万 km(計画延長の約 32%)が未着手路線となっている 14。近年の人口減少や社会情勢の変化によって都市計画決定から長期間が経過し、整備の必 要性が低くなった路線も多く存在しており、これらの路線による建築制限に関連した訴訟 なども見られる。 こうしたことを受け、国土交通省においては平成 12 年、18 年、23 年の 3 度にわたり、都 市計画運用指針15を発出し、「長期にわたり事業に着手されていない都市施設等の都市計画 については、見直しのガイドラインを定めるとともに、これに基づき、必要性の検討を行う ことが望ましいこと」、「都市計画決定当時の計画決定の必要性を判断した状況が大きく変 化した場合等においては、変更の理由を明 確にした上で見直しを行うことが望ましい こと」を助言している。 これらを受け、計画決定から長きにわた り再評価されることなく存続してきた長期 未着手都市計画道路であったが、平成 18 年 頃から急速に見直しの機運が高まり、全国 の地方自治体では長期未着手路線を必要 性・実現性の面から再評価し、その結果に応 じて「変更」・「廃止」・「存続」のふるい分け を行う見直しが進められてきた。なお、見直 しの対象路線の抽出方法は自治体間にばら つきがあり、対象の道路種別を全ての都市 計画道路としている自治体と、幹線街路の みとしている自治体はほぼ同数であるが、 対象とする未着手期間については 20 年以上 としている自治体が最も多い16 しかしながら、平成 28 年3月末時点にお 14 国土交通省都市局(平成 29 年 7 月)「都市計画道路の見直しの手引き(第 1 版)」p92,p93 より。 15 都市計画法の運用について国土交通省が地方自治法第 245 条の4の規定に基づき行う技術的な助言。 16 経済・財政一体改革推進委員会第 5 回 国と地方のシステムワーキング・グループ資料 1-3「都市計画 道路等に関する課題の点検、見直し(国土交通省)」p2 より。 図 2 都市計画道路見直しの検討の流れ (出典:都市計画道路の見直しの手引き(国土交通省))

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7 いて全国 1351 の地方自治体のうち 267 の地方自治体、約2割が見直しの検証を行なってい ない状況である17。見直しに伴う代替整備や建築制限に伴う補償問題などの住民との合意形 成に苦慮するなど、見直しの進捗には地域格差が見られ、全国一律で問題解決が行われてい るとは言い難い状況である。このようなことから、経済財政諮問会議18策定の「経済・財政 再生アクション・プログラム 2016」においても「都市計画に関する諸課題について検討す る中で、都市計画道路見直しについて、地域ごとの実情を把握した上で、推進方策の取りま とめを行う」との指摘がなされている。 また、見直し実施都市における未着手路線内訳は、見直し対象外+存続:80%、廃止:16%、 変更:4%となっており19、廃止以外の路線については建築制限による土地利用制限や、いつ 事業に着手するのかが不明確であるという不確実性を有している。一部の自治体において は、不確実性を軽減する対策として、概ね 10 年以内に事業着手する路線を「優先整備路線」 として公表しているものも見受けられる。 2.3 建築制限の概要 都市計画道路を含む都市施設の区域内では、将来における道路事業の円滑な施行20のため 都市計画法第 53 条の定めるところにより建築物の建設を行おうとする者は都道府県知事等 の許可を受けなければならない。また許可の基準として、同法第 54 条の基準(階数が2以 下で、かつ、地階を有しないこと。主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロツク造そ の他これらに類する構造であること。)を満たすものについては許可をしなければならない と定められている。 この同法第 54 条の「許可をしなければならない」という点は、同法第 53 条における建築 の許可について、同法第 54 条に定める許可の基準を超えるものについては都道府県知事等 に裁量が委ねられていることを示しており、全国の約2割の自治体21において、過度な権利 制限を避ける目的で建築制限を独自に緩和している。具体的には、「階数が2以下」という 同法第 54 条の基準を「階数が3以下」と緩和している自治体が多いが、商業地域で一定の 条件を満たしている場合「階数が4以下」まで緩和しているケースや、車庫に限っては地階 17 国土交通省都市局(平成 29 年 7 月)「都市計画道路の見直しの手引き(第 1 版)」p95 より。 18 経済財政政策に関する重要事項について、有識者等の優れた識見や知識を活用しつつ、内閣総理大臣の リーダーシップを十全に発揮することを目的として、内閣府に設置された合議制機関。 19 国土交通省都市局(平成 29 年 7 月)「都市計画道路の見直しの手引き(第 1 版)」p93 の各都道府県の未 着手延長、p96 の見直し実施状況から各都道府県の見直し完了路線延長を算出し、p98 の見直し状況によ る廃止・変更延長の合計値と見直し完了路線延長の差を存続路線延長としている。 20 事業実施時において、区域内に存する建物等の支障物件については移転補償を行うこととなるため、補 償費用や権利者との交渉における取引費用の削減を行い、事業の円滑な進捗が図られる状態とすること。 21 社会資本整備審議会 都市計画基本問題小委員会 第2回都市施設ワーキンググループ「都市計画道路の 必要性の点検」p11 より。

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8 であっても許可をするケース、都市計画道路の見直しにより廃止方針である旨を示した区 間については建築制限を適用しないケースなどが存在する。 このように、一部では地域の実情や必要性を踏まえた建築制限の緩和が行われているが、 本来であれば土地の高度利用が可能である商業系地域においては、権利者は建築制限によ り本来得られるべき収益が得られないといった逸失利益の発生は避けられない。 このようなことから、建築制限を問題として自治体を相手取った訴訟も起きている22 ケース1:計画区域に入らないため、階数や構造にかかわらず許可は不要 ケース2:計画区域に入り、3階建てであるため、構造にかかわらず不許可 ケース3:計画区域に入るが、木造2階建てであるため許可 ケース4:一部が計画区域に入るが、当該部分は鉄骨造2階建てであり、切り取りが可能であるため許可 図 3 建築制限の事例(出典:都市計画道路の現状と課題(長崎県)一部加筆) 2.4 長崎市における都市計画道路の変遷 ここでは、本稿で事例として取り上げる長崎市の都市計画道路について触れる。 長崎市における都市計画道路の整備は、戦後、原子爆弾投下や空襲などにより壊滅的な被 害を受けた都心部の再建を図るため実施された戦災復興計画基本方針に基づく戦災復興土 地区画整理事業(昭和 21 年計画決定)や、特別都市建設法である長崎国際文化都市建設法 に基づく長崎国際文化都市建設計画(昭和 26 年計画決定)、その後の都市改造を目的とした 土地区画整理事業などの市街地の整備と一体的に進められてきた23。その後、高度経済成長 期以降は、急激な車社会の進展に対応するため、主として幹線道路の整備を行っている。 一方、幹線道路以外の旧市街地内に計画された路線などについては長期未着手となった ものも存在していた。 このため、平成 18 年度から中心部の長期未着手都市計画道路の見直しに着手し、平成 21 年度に見直し方針の公表を行っている。また、平成 25 年度から見直し方針に従い、都市計 画の変更・廃止の手続きを行っている24 22 有名なものとして、盛岡訴訟(市道区域決定処分取消等請求事件:最判平成 17 年 11 月1日)や、伊東 訴訟(建築不許可処分取消請求:最判平成 20 年3月 11 日)などがある。 23 H29 長崎市の都市計画資料編、H18 長崎市都市計画道路見直し基準による。 24 一部の路線については見直し方針公表時点では廃止としていたものの、その後の検討により一部変更し て事業を行っている路線も存在する。 構造問わず 構造問わず 木造 or 鉄骨造

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第3章 長期未着手都市計画道路が建物更新に与える影響の考察

本章では、長期未着手都市計画道路が建物更新に与える影響や都市計画道路の見直し方 針公表による政策効果について考察を行い、仮説を設定する。 3.1 長期未着手都市計画道路の不確実性による影響 長期未着手都市計画道路には「いつ事業に着手されるのかわからない」ものと、「概ね何 年以内に事業着手する予定と公表されている」ものの2つが存在する。本稿では、前者の 「いつ事業に着手されるのかわからない」というものに着目する。 いつ事業着手するのか分からない道路計画が存在することで、その計画路線沿線の土地・ 建物所有者にとっては、将来の周辺環境に対し不確実性が存在することとなる。また、建物 はたとえ木造であっても数十年、RC 造など25ではそれ以上の耐用年数を持つことや、取り壊 しにもかなりの費用を要する。これらの特性から建物更新は不可逆的な投資費用(サンクコ スト)が存在する。さらに、建物をいつ更新するのかという意思決定は所有者の自由であり、 都市計画道路の影響がない場合に、その土地と建物を所有する人が行うであろう判断と比 較して、建物更新を先送りまたは前倒しすることが可能である。 これらの性質を踏まえて、都市計画道路の区域内と区域隣接地に分けて、以下で考察を行 う。 3.1.1 都市計画道路区域内の建物更新について 都市計画道路の区域内における建築制限については、実効的な土地利用制限は建築基準 法上の集団規定26により異なるため、住居系の用途地域では小さく、土地の高度利用が可能 な商業系の用途地域では大きくなる。このため、一見すると住居系の用途地域では都市計画 道路の存在が建物更新に影響を与える可能性は少ないと予想される。 しかしながら、都市計画道路の区域内に建物が存在しているということは、将来事業着手 した際には支障物件となるため、起業者27から建物移転補償がなされることを意味する。例 えば木造住宅の場合、中古住宅市場では築 20 年程度で市場価値がゼロとされるケースが多 いが、公共補償においては標準耐用年数を 48 年28として補償費を算定する。また、標準耐 用年数を過ぎた建物であっても、経過年数と残耐用年数により算出した実耐用年数を用い 25 RC 造(鉄筋コンクリート造)や SRC 造(鉄筋鉄骨コンクリート造)のようにコンクリートを主要構造 部に使用した建物を指す。 26 建築基準法により建築物と都市の関係について定めたもの。代表的なものとして容積率や建ぺい率規 制、用途規制、高さ制限、接道義務や 2 項道路の後退などがある。 27 土地収用法により土地を収用することができる公共事業の施行者のこと。 28 国土交通省損失補償取扱要領による公庫建築程度(住宅金融公庫の融資を受けるにあたり、公庫が基準 としている木造住宅工事仕様書によって建てた程度の建物。)の耐用年数。注文住宅はさらに上位のラン クで耐用年数 60 年とされている。

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10 て 20%程度の現在価値が認定されることが多い。このため、都市計画道路が未着手の状態で 建物更新を行うと、従前建物への補償費を放棄することになる。 このように、都市計画道路の区域内については建築制限による土地利用制限に加え、補償 への期待から建物更新を先送りすることに対してメリットが生じ、建物更新に対し負のイ ンセンティブが生じる可能性がある。 3.1.2 都市計画道路区域隣接地の建物更新について 都市計画道路の区域隣接地については、建築制限による影響は生じないが、仮に道路整備 が行われると現状より高幅員な道路に接道することとなり、道路斜線制限29や2項道路30 よるセットバック、容積率の道路幅員制限31などの土地利用の制約が減少するため従前より 土地の高度利用が可能となる。この道路整備による実効容積率の増加は、指定容積率が高く 設定されてある商業系地域において大きく、また、現状で接道している道路の幅員が小さい 場合にも大きくなる。 このように建物を更新するのであれば、道路整備前よりも道路整備後の方が土地の高度 利用が可能となることから、建物更新を先送りすることに対してメリットが生じ、建物更新 に対し負のインセンティブが生じる可能性がある。 図 4 商業系地区における道路整備による実効容積率増加のイメージ 3.1.3 建物更新が遅れることの問題 では、建物更新が先送りされることでどのような問題が生じるのか。長期未着手都市計画 道路に起因して建物更新が先送りされることで影響を受けない地域と比較し、沿線には老 朽建築物が集積することとなる。これにより、中川ほか(2014)や藤田(2017)で実証され ているように老朽建築物には負の外部性が存在していることから、長期未着手都市計画道 29 建築基準法第 56 条に定められた、前面道路の反対側の境界線から、一定の勾配で示された線(道路斜 線)の範囲を超えて建築物を建築することができない制限。 30 建築基準法第 42 条第 2 項に定められた、幅員 4m 未満の建築基準法施行前から使われていた既存道路 を、特定行政庁が道路として指定したもので、道路の中心線から水平距離 2 メートル後退(セットバッ ク)した線を道路の境界線とみなす。 31 建築基準法第 52 条第 2 項に定められた、敷地の前面道路の幅員が 12m 未満の場合、建築物の容積率 を、前面道路の幅員に定められた数値を乗じたもの以下でなければならない制限。

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11 路における老朽家屋の増加により負の外部性が増加することとなる。 また、長期未着手都市計画道路区域内の建築制限については、金本ほか(2016)において 政府の失敗の典型である旨が指摘されている。このように、これまでは都市計画道路の区域 内における社会的損失は認識されていたものの、区域隣接地においても建物更新が先送り され、負の外部性が増加しているのだとすれば、社会的損失が過小評価されてきたこととな る。 なお、我が国における滅失住宅の平均築後年数は 32 年32であり、他の先進諸国に比べ極 端に短く住宅資源の有効活用の面からは非効率であると言われている。このため、建物更新 が先送りされることにより効率性が改善することも考えられるが、本稿で取り上げている 建物は高度経済成長期に建設されたものであり、耐久性や耐震性能、断熱性能が低い建物で ある可能性が高いため、建物更新の先送りについては社会的損失と捉えている。 3.2 仮説 前節までの考察から、以下の4つの仮説を導きだし、第5章で実証分析により検証するこ ととする。 ① 土地利用制限と補償への期待から建物更新を先送りすることに対してメリットが生 じ、建物更新に対し負のインセンティブが生じる可能性がある。 ⇒仮説①「長期未着手都市計画道路は区域内の建物更新を抑制する」 ② 区域隣接地では、道路整備前よりも道路整備後の方が土地の高度利用が可能となるこ とから、建物更新を先送りすることに対してメリットが生じ、建物更新に対し負のイ ンセンティブが生じる可能性がある。 ⇒仮説②「長期未着手都市計画道路は区域隣接地においても建物更新を抑制する」 ③ 実効的な土地利用制限は建築基準法上の集団規定により異なるため、住居系の用途地 域では小さく、土地の高度利用が可能な商業系の用途地域では大きくなる。また、道 路整備による実効容積率の増加は、指定容積率が高く設定してある商業系地域におい て大きく、また、現状で接道している道路の幅員が小さい場合にも大きくなる。 ⇒仮説③「建物更新抑制効果は住居系地域・商業系地域や接道条件により異なる」 ④ 長期未着手都市計画道路の見直しにより廃止方針が示された路線については建築制 限による影響は残るものの、将来の周辺環境に対する不確実性が解消する。一方、存 続や変更の方針が示された路線については、不確実性は依然として残る。 ⇒仮説④「建物更新に関する影響は見直し方針の公表により軽減する」 32 国土交通省住宅局 平成 28 年度 住宅経済関連データより。

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第4章 建築制限や道路整備による実効容積率の増減シミュレーション

本章では実証分析に先立ち、建築制限による土地利用規制や将来の道路整備によってど の程度実効容積率が増減するのかを評価するため、長崎市を対象とした建物別の諸条件か らシミュレーションを行い、都市計画道路との位置関係、用途地域、接道条件の違いごとに 集計を行う。また、これらをヘドニック・アプローチによる賃料ヘドニック関数を用いて貨 幣換算を行う。 4.1 実効容積率の増減シミュレーション 4.1.1 シミュレーション方法 本シミュレーションには都市計画基礎調査33(H18)における建物現況調査(長崎市)、都 市計画道路(見直し前)(長崎市)、市道道路中心線(長崎市)、用途地域(国土数値情報34

の各種 GIS データを ArcGIS for Desktop35を用いて処理を行い実施している。また、3D で

の描写には ArcGIS 3D Analyst36を用いている。主なデータ作成手順は以下の通りである。 ① (長期未着手都市計画道路に含まれる建物面積)/(建物全体面積)により算出。 ② 商業系地域で前面道路幅員 W<4 であれば 4×60、W≧であれば W×60、住居系地域で前面道路幅員 W<4 であれば 4×40、W≧であれば W×40 にて算出。 ③ 用途地域による指定容積率と②で算出した前面道路容積率を比較し、小さい方を採用容積率とする。 ④ 前面道路幅員 W<4 のデータのみを抽出し、道路中心線から敷地までの距離を(4-W)/2 にて算出。 33 都市計画法第 6 条に基づく調査であり、人口規模、産業分類別の就業人口の規模、市街地の面積、土地 利用、交通量その他国土交通省令で定める事項に関する現況及び将来の見通しについての調査より、適切 な都市計画を策定するための基本的な資料を得ることを目的としている。 34 国土形成計画、国土利用計画の策定等の国土政策の推進に資するために、地形、土地利用、公共施設な どの国土に関する基礎的な情報をGISデータとして整備したもののうち、公開に差し支えないものにつ いて、「地理空間情報活用推進基本法」等を踏まえて国土交通省が無償で提供しているデータ。 35 米国 Esri 社開発の GIS ソフトウェアである。 36 3D データモデルの作成や高度な 3D 解析機能を可能とする ArcGIS Desktop の拡張製品。

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13 ⑤ 推定敷地面積として(建物面積)/(建ぺい率)を算出。その後、敷地反対側の道路境界から敷地 中央までの距離を√(敷地面積)+(道路幅員)+(セットバック量)にて算出。※敷地を正方形 と仮定。 ⑥ 敷地中央での道路斜線制限の高さを住居系地域では(前面道路反対側境界から敷地中央までの距離) ×1.25、商業系地域では(前面道路反対側境界から敷地中央までの距離)×1.5 により算出。 ⑦ 道路斜線平均建物高さを(敷地中央での道路斜線制限の高さ)/3により算出。※1階当りの高さ を3m と仮定。 ⑧ (建ぺい率)×2×(都市計画道路区域内比率)+(1-(都市計画道路区域内比率))×(道路斜線 平均建物高さ)×(建ぺい率)により算出。 ⑨ 建築制限損がない場合の実効容積率と建築制限下における実効容積率の差を、(採用容積率)-(建 築制限下における利用可能容積率)により算出。 ⑩ (指定容積)×(1-(都市計画道路区域内比率))により算出。 ⑪ 道路整備後の実効容積率と整備前の実行容積率の差を、(整備後の容積率)-(建築制限下における 利用可能容積率)により算出。 なお、本シミュレーションにおいては敷地形状が結果に大きな影響を与えるが、使用する データから個別の敷地形状が把握できないため、敷地形状は正方形であると仮定している。 このため、感度分析として間口:奥行=2:1、1:2のケースについてもシミュレーショ ンを行い、結果を示している。 4.1.2 シミュレーション結果 前節の方法により長期未着手都市計画道路の沿線建物を個別に計算を行い、次頁に道路 整備による実効容積率の増減について、増減する容積率を階数に換算した建築可能階数の 増減として、現況建物上に積み増す形で色分けして図示している。なお、(建築可能階数の 増減)=(実効容積率の増減)/(建ぺい率)として算出している。 住居系地域のシミュレーション結果を示した図 5 では、建築可能階数が1階未満の増加 に留まっており、1階以上増加するケースはほとんど見られない。 商業系地域のシミュレーション結果を示した図 6 では、部分的に都市計画道路の区域内 である建物においては、道路整備の際に用地買収を伴うため建築可能階数が1階未満の増 減が大半となっている。また、用地買収を伴わない区域隣接地では建築可能階数が1階以上 増加するケースが多い。接道不良な地区における区域隣接地ではさらに建築可能階数が増 加する結果となっている。なお、建築制限による実効容積率の減少についても同様に図示す ることが可能であるが、表示範囲内における対象建物が少数であるため本稿では省略する。

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14 図 5 道路整備が行われた場合の実効容積率の増減(住居系地域) 図 6 道路整備が行われた場合の実効容積率の増減(商業系地域) 次に、この建物個別のシミュレーション結果を用途地域別、接道状況別、都市計画道路と の関係別に集計し、平均値を示した。用途地域については、住居系地域・商業系地域の別に、 接道状況については接道良好・接道不良の別に、都市計画道路との関係については、建物の 50%以上が都市計画道路の区域内にあるもの(以下、「50%以上区域内」と称す)、建物の 50%

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15 未満が都市計画道路の区域内にあるもの(以下、「50%未満区域内」と称す)、都市計画道路 の区域外であり区域から 10m 以内に建物の一部もしくは全部があるもの(以下、「区域隣接 地」と称す)の別に分類している。なお、概ね1区画が区域隣接地となるように区域から 10m の距離としている。 表 1 シミュレーション結果の実効容積率集計(住居系地域・平均値) 表 2 シミュレーション結果の実効容積率集計(商業系地域・平均値) 図 7 シミュレーション結果の実効容積率集計(平均値)

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16 集計結果から、住居系地域では建築制限による実効容積率の減少は小さく、また道路整備 後の実効容積率については 50%以上区域内である①、④については、道路整備時点において 敷地の大半が道路用地となることから大幅な実効容積率の減少となっているが、その他の ケースでは変化が小さい。これは、都市計画道路の区域内であっても建築制限のあるなしに 関わらず一定の土地利用が可能であり、仮に道路整備がなされたとしても土地利用の自由 度増加は限定的であることを示している。 一方、商業系地域では、50%以上区域内である①、④について建築制限の影響により実効 容積率が大きく減少していることがわかる。また、接道条件の違いを見ると、接道不良の場 合には2項道路によるセットバックの影響や道路斜線制限の影響により既に使用できない 容積が生じているため、接道良好と比較すると建築制限による実効容積率の減少は小さい。 さらに、道路整備後の実効容積率については 50%以上区域内である①、④については、住居 系地域と同様に道路整備時点において敷地の大半が道路用地となることから大幅な実効容 積率の減少となっているが、区域隣接地である③、⑥については前面道路容積率や道路斜線 制限により抑えられていた実効容積率が、道路整備により指定容積率まで利用できるよう になることを表している。このため、商業系地域における区域隣接地では、道路整備後に土 地利用を行うことに大きなメリットが生じることとなる。 4.2 実効容積率増減の貨幣換算 本節では実効容積率の貨幣換算方法とその結果を示す。 4.2.1 実効容積率の貨幣換算方法 前節で算出した建物個別の実行容積率の変化分を床面積換算し、実効容積率の貨幣換算 を行う。ここでは、ヘドニック・アプローチによる賃料ヘドニック関数を次式の推定モデル を用い OLS 分析を行うことにより導出する。なお、賃料ヘドニック関数の推計にあたっては 公益社団法人西日本不動産流通機構より提供いただいた長崎市におけるマンション賃貸成 約データを用いている。 賃料 単価= + 築年数 + 最寄りバス停までの距離 + 最寄り駅までの距離 + 鉄骨造ダミー + コンクリート造ダミー + 旧耐震ダミー + 旧旧耐震ダミー + ~ 小学校区ダミー + ~ 成約年ダミー + ~ 用途地域ダミー + 被説明変数には賃料 m2単価を用いている。また、説明変数にはシミュレーション結果の 貨幣化を行えるように、都市計画基礎調査の建物個票データと整合できるもののみを用い ており、各種ダミーは該当すれば1、そうでなければ0をとるダミー変数としている。αは

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17 定数項、βは係数、εは誤差項、iは賃貸物件である。なお、使用するデータは 2009 年〜 2017 年までに成約した物件のプーリングクロスセクションデータであり、前節のシミュレ ーションデータとの整合のため長期未着手路線が通過する小学校区のみのデータを用いて いる。変数の説明は表3、基本統計量は表4の通りである。 表 3 変数の説明 変数名 説明 賃料 m2 単価 成約賃料のm2 単価 築年数 建物の築年数 最寄りバス停までの距離 対象物件から最寄りバス停までの距離 最寄り駅までの距離 都象物件から最寄り鉄道駅までの距離 鉄骨造ダミー 建物構造が鉄骨造であれば1、そうでなければ0をとるダミー変数 Co 造ダミー 建物構造がコンクリート造であれば1、そうでなければ0をとるダミー変数 旧耐震ダミー 1971 年から 1980 年の間に建築されていれば1、そうでなければ0をとるダミー変数 旧旧耐震ダミー 1971 年以前に建築されていれば1、そうでなければ0をとるダミー変数 小学校区ダミー 小学校区を対象とするダミー変数 成約年ダミー 成約年を対象とするダミー変数 用途地域ダミー 用途地域を対象とするダミー変数 データ出典:マンション賃貸成約データ(公益社団法人西日本不動産流通機構) 表 4 基本統計量 変数名 平均値 標準偏差 最小値 最大値 賃料 m2 単価 1414.776 442.218 654.736 2666.667 築年数 24.290 11.112 0 58 最寄りバス停までの距離 252.914 199.011 6 2000 最寄り駅までの距離 2082.791 615.273 1031.809 3644.646 鉄骨造ダミー 0.160 0.368 0 1 Co 造ダミー 0.525 0.501 0 1 旧耐震ダミー 0.136 0.344 0 1 旧旧耐震ダミー 0.043 0.344 0 1 小学校区ダミー (省略) 0 1 成約年ダミー (省略) 0 1 用途地域ダミー (省略) 0 1 推計結果を表5に示す。説明変数を都市計画基礎調査の建物個票データと整合できるも ののみに限定していることから自由度修正済決定係数も低い値を取っているが、実効容積 率のシミュレーションを貨幣換算するために用いるための概算の目安として使用する。

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18 表 5 賃料の推計結果 被説明変数:賃料 m2 単価 推定結果 説明変数 係数 S.E 築年数 -17.584 *** (3.132) 最寄りバス停までの距離 -0.155 (0.139) 最寄り駅までの距離 -0.387 *** (0.132) 鉄骨造ダミー 10.713 (81.252) Co 造ダミー 142.671 ** (64.473) 旧耐震ダミー -11.966 (86.739) 旧旧耐震ダミー 147.030 (159.041) 小学校区ダミー (省略) 成約年ダミー (省略) 用途地域ダミー (省略) 定数項 2533.696 *** (325.635) 自由度調整済決定係数 0.610 サンプル数 162 注1) ***、**、*は、推定された係数がそれぞれ1%、5%、10%水準で有意なことを示す。 4.2.2 実効容積率シミュレーションの貨幣換算結果 表4で得られた賃料ヘドニック関数により、長期未着手都市計画道路沿線の建物個別の 賃料単価を推計し、前節で算出した建物個別の建築制限による実効容積率の減少および道 路整備後の実効容積率の増減に建物の建築面積を乗じて床面積換算したものから各建物の 賃料増減を導出した。これを、住居系地域・商業系地域、接道良好・接道不良、50%以上区 域内・50%未満区域内・区域隣接地の別に集計し、さらに長期未着手都市計画道路の延長 10m 当りに換算したものを表6、表7、図8に示す。 表 6 シミュレーション結果の貨幣換算化(住居系地域) 表 7 シミュレーション結果の貨幣換算化(商業系地域)

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19 図 8 シミュレーション結果の貨幣換算化(計画道路 10m 当り・月額) 住居系地域において建築制限の逸失利益は 16,278 円/10m・月(感度分析 10,593〜28,376 円/10m・月)となっており、商業系地域においては建築制限の逸失利益は 70,253 円/10m・ 月(感度分析 51,847〜102,088 円/10m・月)となっている。 また、事例としている長崎市での建築制限により生じる全体の逸失利益は賃料換算で 32,935,347 円/月となっている。 図 9 シミュレーション結果の貨幣換算化(平均値) また、建物当りの平均値については図9に示す。商業系地域における⑥接道不良・区域隣 接地については道路整備が行われると建物1棟当り 348,511 円/月(感度分析 347,807〜 358,705 円/月)相当の実効容積率の増加が期待されるが、実際には建物を建設するコスト も生じるため、建物建設コストと期待利益を考慮した上で収益性が高い場合において建物 更新を先送りするインセンティブが生じるものと考えられる。

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第5章 建物更新に与える影響の実証分析

本章では、第3章で設定した仮説について長崎市の建物更新を対象に実証分析により検 証するとともに、都市計画道路の見直しによる政策効果について定量的に明らかにする。 5.1 実証分析の方法 5.1.1 分析方法 建物の更新については同一物件による都市計画道路の影響を直接観察することは不可能 である。また、建物は同一財ではないため、単純に都市計画道路との関係を比較したとして も、それ以外の条件の違いが影響している可能性があり、都市計画道路の影響とは言い切れ ない。このため、今回の推計モデルでは、建物更新に大きな影響を与えると予想される建物 の用途、建物の構造、築年数、耐震性能、地域性、年次などをコントロールした上で、「長 期未着手都市計画道路の影響」や「見直し方針公表の政策効果」について、「実証分析1」 と「実証分析2」の2つのモデルを構築し分析する。なお、前章のシミュレーションで示し たとおり、用途地域によって都市計画道路が土地利用に与える影響が大きく異なるため、住 居系地区、商業系地区に分けて分析を行うこととする。 図 10 都市計画道路に関する立地分類 分析では、データ観測期間内に建物を更新していれば1をとるダミー変数を被説明変数 とする。被説明変数が離散変数であるため、プロビットモデルを構築し、長期未着手都市計 画道路の影響や見直し方針公表が建物更新に有意に影響を与えるのかについて検証する。 具体的には、図 10 に示すように分析対象建物を長期未着手都市計画道路の区域から 50m 以 内とし、「その他立地」をベースとし、「50%以上区域内」、「50%未満区域内」、「区域隣接地」 に該当すれば1をとるダミー変数を説明変数に加えることで分析を行う。

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21 なお、「実証分析1」では長期未着手都市計画道路に起因する周辺環境の不確実性が建物 更新にどのような影響を与えているのかを実証するため、長期未着手都市計画道路の見直 し方針公表(2009 年 10 月公表)の影響がない 1997 年〜2009 年を分析対象とする。プロビ ットモデルでは 1997 年、2006 年、2014 年のデータから 1997 年〜2009 年の 13 年間×1期 のクロスセクションデータを作成、プーリング回帰プロビットモデルでは 1997 年、2006 年、 2014 年のデータから 1998 年〜2009 年の4年間×3期のプールド・クロスセクションデー タを用いている。 また、「実証分析2」では 1997 年、2010 年の8年間×2期のプールド・クロスセクショ ンデータを用いたモデルと、1998 年〜2017 年の4年間×5 期のプールド・クロスセクショ ンデータを用いたモデルとしており、見直し方針公表前後の影響について DID 分析を行う ため、「50%以上区域内」、「50%未満区域内」、「区域隣接地」をトリートメントグループ、「そ の他立地」をコントロールグループとし、公表ダミーの交差項を「実証分析1」の説明変数 に追加している。 なお、「その他立地」をコントロールグループとした理由としては、都市計画道路による 建築制限の影響や、道路整備による実効容積率の変化が生じないためである。 図 11 分析対象期間とデータ整理期間(上:分析1 下:分析2) 5.1.2 使用するデータ 使用するデータは、都市計画基礎調査(1997 年,2006 年,2014 年)における建物現況調査 (長崎市)をベースとし、ArcGIS を用いて建築確認 (2014 年〜2017 年)(長崎市)、都市計 画道路(長崎市)、指定道路情報案内システム(建築基準法上の道路種別)(長崎市)、用途 地域、小学校区(国土数値情報)を座標情報をもとに紐付けを行なっている。

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22 5.2 推計モデル 5.2.1 実証分析1(長期未着手都市計画道路による影響) 実証分析1の推計式は以下のとおりである。説明変数の説明を表7に、基本統計量を表8、 9に示す。なお、αは定数項、βは係数、εは誤差項、iは建物固有、t は時間を表す。 建物更新 = = { + %以上区域内 + %未満区域内 + 区域隣接地 + 接道不良 + %以上区域内 ×接道不良 + %未満区域内 ×接道不良 + 区域隣接地 ×接道不良 + 建物用途 + ~ 建物構造 + 築年数 + 旧耐震 + 旧旧耐震 + 未登記 + ~ 小学校区 + ~ 年度 + } 5.2.2 実証分析2(見直し方針公表による影響) 実証分析2の推計式は以下のとおりである。説明変数の説明を表7に、基本統計量を表 10 に示す。なお、αは定数項、βは係数、εは誤差項、iは建物固有、t は時間を表す。 建物更新 = = { + %以上区域内 + %未満区域内 + 区域隣接地 + 接道不良 + %以上区域内 ×接道不良 + %未満区域内 ×接道不良 + 区域隣接地 ×接道不良 + %以上区域内 × 公表 + %未満区域内 × 公表 + 区域隣接地 × 公表 + %以上区域内 ×接道不良 × 公表 + %未満区域内 ×接道不良 × 公表 + 区域隣接地 ×接道不良 × 公表 + 建物用途 + ~ 建物構造 + 築年数 + 旧耐震 + 旧旧耐震 + 未登記 + ~ 小学校区 + ~ 年度 + }

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23 表 8 変数の説明 変数名 説明 出典 建物更新ダミー 次期時点において建物が更新されていれば1、更新されていなければ0をとるダミー変数 ① 50%以上区域内ダミー 建物の 50%以上が都市計画道路の区域内であれば1、そう でなければ0をとるダミー変数 ② 50%未満区域内ダミー 建物の 50%未満が都市計画道路の区域内であれば1、そうでなければ0をとるダミー変数 区域隣接地ダミー 都市計画道路の区域境界から 10m 以内の建物であれば1、そうでなければ0をとるダミー変数 接道不良ダミー 建物直近の道路が 4m 未満であれば1、そうでなければ0 をとるダミー変数 ③ 50%以上区域内ダミー ×接道不良ダミー 50%以上区域内ダミーと接道不良ダミーの交差項 ②・③ 50%未満区域内ダミー ×接道不良ダミー 50%未満区域内ダミーと接道不良ダミーの交差項 区域隣接地ダミー ×接道不良ダミー 区域隣接地ダミーと接道不良ダミーの交差項 50%以上区域内ダミー ×公表ダミー 50%以上区域内ダミーと公表ダミーの交差項 50%未満区域内ダミー ×公表ダミー 50%未満区域内ダミーと公表ダミーの交差項 区域隣接地ダミー ×公表ダミー 区域隣接地ダミーと公表ダミーの交差項 50%以上区域内ダミー ×接道不良ダミー×公表ダミー 50%以上区域内ダミーと接道不良ダミー、公表ダミーの交 差項 50%未満区域内ダミー ×接道不良ダミー×公表ダミー 50%未満区域内ダミーと接道不良ダミー、公表ダミーの交 差項 区域隣接地ダミー ×接道不良ダミー×公表ダミー 区域隣接地ダミーと接道不良ダミー、公表ダミーの交差項 建物用途ダミー 建物用途が住宅系であれば1、そうでなければ0をとるダ ミー変数 ① 鉄骨造ダミー 建物構造が鉄骨造であれば1、そうでなければ0をとるダ ミー変数 コンクリート造ダミー 建物構造がコンクリート造であれば1、そうでなければ0をとるダミー変数 その他構造ダミー 建物構造が木造・鉄骨造・コンクリート造でなければ1、 そうでなければ0をとるダミー変数 築年数 建物の築年数 旧耐震ダミー 1971 年から 1980 年の間に建築されていれば1、そうでなければ0をとるダミー変数 旧旧耐震ダミー 1971 年以前に建築されていれば1、そうでなければ0をと るダミー変数 未登記ダミー 未登記等により築年数が不明であれば1、そうでなければ0をとるダミー変数 小学校区ダミー 小学校区を対象とするダミー変数 ④ 年度ダミー 観測年を対象とするダミー変数 ① 【データ出典】 ① 都市計画基礎調査における建物現況調査 GIS データ、建築確認 GIS データ ② 都市計画基礎調査と都市計画道路を GIS にて処理 ③ 都市計画基礎調査と指定道路情報案内システムデータを GIS にて処理 ④ 都市計画基礎調査と小学校区を GIS にて処理

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表 9 基本統計量(実証分析1:住居系地域)

変数名 クロスセクション プールド・クロスセクション 平均値 標準偏差 min max 平均値 標準偏差 min max 建物更新ダミー 0.0508 0.2197 0 1 0.0169 0.1290 0 1 50%以上区域内ダミー 0.0630 0.2429 0 1 0.0630 0.2429 0 1 50%未満区域内ダミー 0.0755 0.2642 0 1 0.0755 0.2642 0 1 区域隣接地ダミー 0.2036 0.4028 0 1 0.2036 0.4027 0 1 接道不良ダミー 0.8597 0.3473 0 1 0.8597 0.3473 0 1 50%以上区域内ダミー ×接道不良ダミー 0.0468 0.2112 0 1 0.0468 0.2111 0 1 50%未満区域内ダミー ×接道不良ダミー 0.0604 0.2382 0 1 0.0604 0.2382 0 1 区域隣接地ダミー ×接道不良ダミー 0.1701 0.3758 0 1 0.1701 0.3757 0 1 建物用途ダミー 0.7323 0.4428 0 1 0.6808 0.4662 0 1 鉄骨造ダミー 0.0744 0.2624 0 1 0.0677 0.2513 0 1 コンクリート造ダミー 0.0582 0.2341 0 1 0.0527 0.2233 0 1 その他構造ダミー 0.2117 0.4086 0 1 0.2607 0.4390 0 1 築年数 23.7390 25.7645 0 127 25.0544 26.7941 0 136 旧耐震ダミー 0.1576 0.3644 0 1 0.1548 0.3617 0 1 旧旧耐震ダミー 0.6896 0.4627 0 1 0.6722 0.4694 0 1 未登記ダミー 0.3004 0.4585 0 1 0.3119 0.4633 0 1 町丁目ダミー (省略) 0 1 (省略) 0 1 年度ダミー - (省略) 0 1 表 10 基本統計量(実証分析1:商業系地域) 変数名 クロスセクション プールド・クロスセクション 平均値 標準偏差 min max 平均値 標準偏差 min max 建物更新ダミー 0.0858 0.2802 0 1 0.0286 0.1667 0 1 50%以上区域内ダミー 0.0847 0.2786 0 1 0.0847 0.2785 0 1 50%未満区域内ダミー 0.1210 0.3262 0 1 0.1210 0.3261 0 1 区域隣接地ダミー 0.1901 0.3925 0 1 0.1901 0.3924 0 1 接道不良ダミー 0.4593 0.4985 0 1 0.4593 0.4984 0 1 50%以上区域内ダミー ×接道不良ダミー 0.0407 0.1976 0 1 0.0407 0.1976 0 1 50%未満区域内ダミー ×接道不良ダミー 0.0463 0.2101 0 1 0.0463 0.2101 0 1 区域隣接地ダミー ×接道不良ダミー 0.0858 0.2802 0 1 0.0858 0.2802 0 1 建物用途ダミー 0.3239 0.4681 0 1 0.3517 0.4776 0 1 鉄骨造ダミー 0.2246 0.4175 0 1 0.2023 0.4018 0 1 コンクリート造ダミー 0.1929 0.3947 0 1 0.1773 0.3819 0 1 その他構造ダミー 0.1600 0.3667 0 1 0.2245 0.4173 0 1 築年数 21.1968 24.4301 0 127 22.1743 25.4669 0 136 旧耐震ダミー 0.1455 0.3527 0 1 0.1381 0.3450 0 1 旧旧耐震ダミー 0.6622 0.4731 0 1 0.6473 0.4778 0 1 未登記ダミー 0.3200 0.4666 0 1 0.3337 0.4716 0 1 町丁目ダミー (省略) 0 1 (省略) 0 1 年度ダミー - (省略) 0 1

(27)

25

表 11 基本統計量(実証分析2:商業系地域)

変数名

(1) (2)

平均値 標準偏差 min max 平均値 標準偏差 min max

建物更新ダミー 0.0504 0.2189 0 1 0.0236 0.1519 0 1 50%以上区域内ダミー 0.0847 0.2785 0 1 0.0847 0.2785 0 1 50%未満区域内ダミー 0.1210 0.3261 0 1 0.1210 0.3261 0 1 区域隣接地ダミー 0.1901 0.3924 0 1 0.1901 0.3924 0 1 接道不良ダミー 0.4593 0.4984 0 1 0.4593 0.4984 0 1 50%以上区域内ダミー ×接道不良ダミー 0.0407 0.1976 0 1 0.0407 0.1976 0 1 50%未満区域内ダミー ×接道不良ダミー 0.0463 0.2101 0 1 0.0463 0.2101 0 1 区域隣接地ダミー ×接道不良ダミー 0.0858 0.2802 0 1 0.0858 0.2801 0 1 50%未満区域内ダミー ×公表ダミー 0.0605 0.2384 0 1 0.0484 0.2146 0 1 区域隣接地ダミー ×公表ダミー 0.0950 0.2933 0 1 0.0760 0.2651 0 1 50%未満区域内ダミー ×接道不良ダミー ×公表ダミー 0.0231 0.1503 0 1 0.0185 0.1348 0 1 区域隣接地ダミー ×接道不良ダミー ×公表ダミー 0.0429 0.2027 0 1 0.0343 0.1821 0 1 建物用途ダミー 0.3724 0.4835 0 1 0.3698 0.4828 0 1 鉄骨造ダミー 0.1931 0.3948 0 1 0.1988 0.3991 0 1 コンクリート造ダミー 0.1734 0.3786 0 1 0.1814 0.3854 0 1 その他構造ダミー 0.2414 0.4280 0 1 0.2253 0.4178 0 1 築年数 23.8760 26.5785 0 140 24.4869 27.0560 0 144 旧耐震ダミー 0.1469 0.3540 0 1 0.1421 0.3492 0 1 旧旧耐震ダミー 0.6204 0.4854 0 1 0.6177 0.4860 0 1 未登記ダミー 0.3122 0.4634 0 1 0.3198 0.4664 0 1 町丁目ダミー (省略) 0 1 (省略) 0 1 年度ダミー (省略) 0 1 (省略) 0 1

(28)

26 5.3 実証分析の結果と考察 5.3.1 実証分析1(長期未着手都市計画道路による影響)の結果 推計結果は住居系地域については表 12、商業系地域については表 13 のとおりである。 ここで、都市計画道路の影響について「50%以上区域内」、「50%未満区域内」、「区域隣接地」 の接道条件別に分析を行う。分析の結果得られた推計式において、「50%以上区域内」、「50% 未満区域内」、「区域隣接地」、「接道不良」のダミー変数のみを「0」又は「1」で変動させ、 その他の変数を平均値で固定することで、その比較を行うこととする。具体的には①「50% 以上区域内ダミー」、②「50%未満区域内ダミー」、③「区域隣接地ダミー」、④「50%以上区 域内ダミー×接道不良ダミー」、⑤「50%未満区域内ダミー×接道不良ダミー」、⑥「区域隣 接地ダミー×接道不良ダミー」を組み合わせに応じて「0」又は「1」を代入し、それ以外 の説明変数には、それぞれサンプルの平均値(表9および表 10 の基本統計量で示す平均値) を代入して建物更新確率を推計した。 なお、クロスセクションデータとプールド・クロスセクションデータの2つのデータ整理 方法により分析を行なっているが、ほぼ同様の結果が得られているため以下はプーリング 回帰プロビットモデルによる推計結果に基づいて記載する。 住居系地域については接道良好な地区においていずれにも該当しない立地と比較して ①:50%以上区域内の建物は更新確率が 0.4%低い、②:50%未満区域内の建物は更新確率が 0.1%高い、③:区域隣接地の建物は更新確率に差がない結果が得られたが、いずれも統計的 に有意な水準でなかった。また、接道不良な地区においていずれにも該当しない立地と比較 して④:50%以上区域内の建物は更新確率が 0.2%高い、⑤:50%未満区域内の建物は更新確 率が 0.8%高い、⑥:区域に隣接する建物は更新確率が 0.3%低い結果が得られたが、いずれ も統計的に有意な水準でなかった。このように住居系地域においては着目する①〜⑥の立 地特性においては建物更新確率に統計的に有意な水準で影響を与えているケースは確認で きない。 商業系地域については接道良好な地区においていずれにも該当しない立地と比較して ①:50%以上区域内の建物は更新確率が 0.5%低い、②:50%未満区域内の建物は更新確率が 2.4%高い、③:区域隣接地の建物は更新確率に差がない結果が得られ、このうち②について は 1%有意水準で建物更新確率が高いことがわかる。また、④:50%以上区域内の建物は更新 確率に差がない、⑤:50%未満区域内の建物は更新確率が 0.8%高い、⑥:区域に隣接する建 物は更新確率が 1.8%低い結果が得られ、⑤・⑥において 5%有意水準で建物更新確率が高い ことがわかる。この結果をまとめたものを図 12 に示す。

表 9 基本統計量(実証分析1:住居系地域)
表 11 基本統計量(実証分析2:商業系地域)
表 12 実証分析1の推定結果(住居系地域)
表 13 実証分析1の推定結果(商業系地域)
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参照

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