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実証分析2(見直し方針公表による影響)の結果

第5章 建物更新に与える影響の実証分析

5.3 実証分析の結果と考察

5.3.2 実証分析2(見直し方針公表による影響)の結果

実証分析1の結果、商業系地域においては長期未着手都市計画道路が建物更新に影響を 与えていることがわかった。実証分析2では、見直し方針公表前後の影響について DID 分析 を行うため、「50%以上区域内」、「50%未満区域内」、「区域隣接地」をトリートメントグルー プ、「その他立地」をコントロールグループとし、公表ダミーの交差項を「実証分析1」の 説明変数に追加している。推計結果は表 13 のとおりである。なお、プールド・クロスセク ションデータの集計にあたり2つのデータ整理方法により分析を行なっているが、ほぼ同 様の結果が得られているため以下はプーリング回帰プロビットモデル(2)による推計結果 に基づいて記載する。

推計の結果、各立地特性による見直し方針公表の平均処置効果は接道良好地区かつ 50%未

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満区域内である②の場合、見直し方針公表により更新確率が 1.0%減少し、接道良好地区か つ区域隣接地である③の場合、見直し方針公表により更新確率が 2.0%増加、接道不良地区 かつ 50%未満区域内である⑤の場合、見直し方針公表により更新確率が 3.9%増加、接道不良 地区かつ区域隣接地である⑥の場合、見直し方針公表により更新確率が 3.9%増加となった。

このうち③・⑥については 10%有意水準で建物更新確率が増加していることがわかる。

なお、50%以上区域内である①・④については見直し方針公表後の建物更新サンプル数が 不足しており推計ができないため除外している。

この結果をまとめたものを図 13 に示す。

図 13 見直し方針公表による建物更新確率の変化(商業系地域)

長崎市における長期未着手都市計画道路の見直しでは、大半の路線が廃止方針として公 表されたことから、長期未着手路線に起因した周辺環境の不確実性が大きく軽減されたた め、土地利用自由度増加への期待がなくなり建物更新を先送りするインセンティブが消失 したことや、このためこれまで先送りされてきた建物更新が実行に移されたことを示す可 能性がある。

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表 14 実証分析2の推定結果(商業系地域)

プーリング回帰プロビットモデル(1) プーリング回帰プロビットモデル(2)

被説明変数 各期中(8 年間)建物更新ダミー 各期中(4 年間)建物更新ダミー

推定結果 限界効果 推定結果 限界効果

説明変数 係数 S.E δF/δx S.E 係数 S.E δF/δx S.E 50%以上区域内ダミー -0.272 (0.196) -0.018 (0.011) -0.267 * (0.160) -0.009 * (0.004) 50%未満区域内ダミー 0.454 *** (0.153) 0.051 *** (0.022) 0.355 *** (0.114) 0.020 *** (0.008) 区域隣接地ダミー -0.116 (0.169) -0.009 (0.012) -0.036 (0.123) -0.001 (0.005) 接道不良ダミー -0.059 (0.097) -0.005 (0.008) -0.102 (0.079) -0.004 (0.003) 50%以上区域内ダミー

×接道不良ダミー 0.170 (0.281) 0.016 (0.030) 0.256 (0.224) 0.013 (0.015) 50%未満区域内ダミー

×接道不良ダミー -0.917 *** (0.344) -0.038 *** (0.006) -0.506 ** (0.237) -0.013 ** (0.003) 区域隣接地ダミー

×接道不良ダミー -0.643 * (0.328) -0.034 * (0.010) -0.527 ** (0.248) -0.014 ** (0.004)

50%以上区域内ダミー

×公表ダミー - - - -

50%未満区域内ダミー

×公表ダミー -0.434 (0.279) -0.026 (0.011) -0.357 (0.238) -0.010 (0.005)

区域隣接地ダミー

×公表ダミー 0.465 ** (0.235) 0.053 ** (0.035) 0.349 * (0.192) 0.020 * (0.014)

50%以上区域内ダミー

×接道不良ダミー

×公表ダミー

- - - -

50%未満区域内ダミー

×接道不良ダミー

×公表ダミー

0.888 * (0.504) 0.146 * (0.131) 0.543 (0.413) 0.039 (0.045)

区域隣接地ダミー

×接道不良ダミー

×公表ダミー

0.683 * (0.386) 0.095 * (0.079) 0.553 * (0.313) 0.039 * (0.034)

建物用途ダミー 0.072 (0.084) 0.006 (0.007) 0.104 (0.068) 0.004 (0.003) 鉄骨造ダミー -0.247 ** (0.120) -0.018 ** (0.008) -0.265 *** (0.101) -0.009 *** (0.003) コンクリート造ダミー -0.174 (0.127) -0.013 (0.009) -0.157 (0.105) -0.006 (0.003) その他造ダミー -0.197 * (0.107) -0.015 * (0.007) -0.114 (0.082) -0.004 (0.003) 築年数 -0.002 (0.003) 0.000 (0.000) -0.001 (0.002) 0.000 (0.000) 旧耐震ダミー -0.155 (0.159) -0.012 (0.011) -0.075 (0.137) -0.003 (0.005) 旧旧耐震ダミー 0.267 * (0.147) 0.021 * (0.011) 0.312 ** (0.129) 0.012 ** (0.005) 未登記ダミー 0.061 (0.160) 0.005 (0.014) 0.071 (0.143) 0.003 (0.006)

町丁目ダミー (省略) (省略) (省略) (省略)

年度ダミー (省略) (省略) (省略) (省略)

定数項 -4.516 *** (0.234) - -4.778 *** (0.208) -

対数尤度 -661.3587 -927.3366

Wald chi2 659.65 764.66

サンプル数 3,588 8,970

注1) ***、**、*は、推定された係数がそれぞれ1%、5%、10%水準で有意なことを示す。

注2) ダミー変数の限界効果δF/δx は、ダミー変数が 0 から 1 に離散的に変化したものを示す。

注3) 標準誤差 S.E はクラスター頑健手法を用いた頑健な標準誤差を示す。

注4) 50%以上区域内の公表後については建物更新数が極めて少なく推計できないため除外。

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