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名作再読、拾い読み(₃₇) 名作再読、拾い読み(₃₇)

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Academic year: 2021

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(前号からの続き)

 この報告者は、バーンハウス教授が兵役を終 えて大学に戻ってから2年目に大学院に入学した のですが、学位論文の指導を担当するのがバー ンハウス教授と決まった時、その決定に不満で した。その頃、教授は講義の時間を忘れたり、

講義の最中にふっと上の空になったりする欠点 が目立ち始めていたのです。

 大学院の新入生として彼が初めて教授の研究 室に顔を出した時、部屋の中は埃だらけで、煙 草の吸い殻で溢れかえった3つの灰皿の載ったデ スクの前で教授は居眠りしていました。教授は 初めのうちは誰もがやり尽くした実験を彼にや らせましたが、1カ月ほど経ってからある実験を して見せます。インク壷を震動させてデスクの 上や辺りを跳び回らせ、最後に真っ赤な高温状 態にして閃光と共に破裂させたのです。教授は 最初は自分の力を秘密にしておくつもりでした が、何か平和のために役立つことに使いたいと 思うようになり、それを自分の指導する大学院 生に見せて感想を求めたのです。教授はそれを サイコダイナミズムと名付けましたが、後に世 間を騒がせるようになった時には、マスコミに よって「バーンハウス効果」と呼ばれるように なりました。

 教授が政府に連絡すると、軍部の上層部は彼 の力を戦争に応用しようと考えます。教授と大 学院生は直ぐさま隔離されて連日政府関係者の 質問攻めにあいます。教授は砂漠に灌漑設備を 作ったり、人工雨を降らせたり、ダムを切り開 いたりするのに自分の力を応用したいと言うの ですが、バーカー将軍は自国防衛のことしか念 頭にありません。国務省のカスレル氏も将軍と 同意見です。話が平行線を辿るばかりか、事態 は自分の願いとは逆方向に進んでいくので、最 初は自分の能力の秘密を直ぐに打ち明けるつも りでいた教授も、次第にへそを曲げ始めました。

 将軍は教授に相談なく、ブレインストーム作 戦を企画します。ニューメキシコから10基のV2

ミサイルが発射され、50機の無線操縦のジェッ ト爆撃機が発進し、120隻の大艦隊がアリュー シャン列島に向かって模擬攻撃をするという作 戦です。将軍は次の週水曜日の10時に、標的艦 隊を沈め、V2ミサイルを地上に命中する前に破 壊し、アリューシャン列島上空に到達する前に 爆撃機を撃墜するようにと教授に命令します。

教授は不機嫌でした。

 作戦実施の当日、全員がテレビの画面を見つ めてその瞬間を待ちます。将軍の合図に従って 教授が精神を集中させると、テレビの画面には、

ミサイルが火を噴いて墜落し、飛行機は離陸で きず、戦艦からは黒い煙が立ち上がり、船上の 大砲はグニャリと曲がってしまった映像が映し 出されます。皆が興奮してテレビの画面に見入っ ている隙に、教授は部屋から逃げ出しました。

守衛室に教授を捕まえるよう連絡がいきますが、

銃器は既に破壊され、車はすべてパンクして動 けない状態でした。教授は完全に行方不明にな り、その後、世界のあらゆる国々の兵器が目に 見えない特殊な力によって破壊されるという現 象が続きます。

 クリスマス・イヴに、報告者に一通の手紙が 届きました。署名も無く意味不明の文章がタイ プされていたのですが、その謎を解いてサイコ ロを振ってみると、50回連続で7の目が出ました。

彼はバーンハウス教授の後継者として、戦争反 対のために姿を消す決心をします。

 この短篇には、広島・長崎への原爆投下に対 する疑問が示されており、笑いの中にもドレス デン爆撃を生き延びたカート・ヴォネガットの 思想的立場が明確に表されています。

参考文献

1. Kurt Vonnegut, Jr. “Report on the Barnhouse Effect” in

“Welcome to the Monkey House” (Random House, c1967)

2. カート・ヴォネガット・ジュニア著、浅倉久志訳『バー ンハウス効果に関する報告書』(伊藤典夫他訳『モン キー・ハウスへようこそ[2]』より)(早川書房、1989)

おざわ ふみひこ(情報サービス課)

名作再読、拾い読み(₃₇)

名作再読、拾い読み(₃₇)

『バーンハウス効果に関する報告書』(2) (“Report on the Barnhouse Effect”) 小澤文彦

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図書館員の文献紹介と      資料の活用

参照

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