第2章 ストーカー事案の実態及び現状分析
1 過去のストーカー事案と法改正の推移
これまでに全国で数多くの凶悪なストーカー事件が発生しているが、その中でも社会 的反響の大きかった事件やストーカー規制法の制定又は改正の契機となった事件につい て、概要を紹介する。
(1) 平成11年8月 愛知県西尾市女子高生殺人事件
愛知県西尾市の国道23号バイパスの側道において、女子高校生(当時16歳)が過 去に執拗に交際を求められていた同級生の男(当時17歳)に胸などを刺され殺害され た。男は、中学時代から女子高校生に好意を寄せており、「相手にされないので殺して やろうと思った。」などと供述した。
(2) 平成11年10月 埼玉県桶川市女子大生殺人事件
埼玉県桶川市のJR「桶川駅」前において、女子大学生(当時21歳)が元交際相手 の男(当時27歳)の兄が雇った男(当時34歳)らによって殺害された。翌年1月に、元 交際相手の死体が北海道で発見された。この事件がきっかけとなり、ストーカー問題に 係る社会の関心が一気に高まり、「ストーカー規制法」が制定された。
(3) 平成21年8月 東京都港区西新橋殺人事件
東京都港区西新橋において、耳かき店に勤務する女性(当時21歳)とその祖母(当 時78歳)が、耳かき店の常連客の男(当時41歳)によって殺害された。男は、店員と客 という関係に過ぎないにも関わらず、一方的に女性に好意を寄せ、「交際を断られ腹が 立ったので殺そうと思った。」と供述した。
(4) 平成23年12月 長崎県西海市殺人事件
長崎県西海市の民家で、その家に住む女性(当時56歳)とその母親(当時77歳)が、
女性の三女(当時23歳)の元交際相手の男に交際関係のトラブルの逆恨みから刃物で 刺殺された。
(5) 平成24年11月 神奈川県逗子市殺人事件
神奈川県逗子市のアパートの一室で、フリーデザイナーの女性(当時33歳)が、東京 都在住の元交際相手の男(当時40歳)に刃物で刺殺された。男は、その後、同じアパー トの2階の出窓に紐をかけて自殺した。
平成12年5月24日 ストーカー規制法の公布(平成12年11月24日施行)
第2章
男は、逮捕(執行猶予による保護観察)及び書面警告後、女性に対して、1,000通を 超える大量のメールを送りつけていたが、当時、メールの連続送信は、規制の対象外で あった。
また、保護観察所と警察との間で、加害者に付された保護観察所の特別遵守事項 のほか、問題行動の情報共有を始める契機となった。
(6) 平成25年10月 東京都三鷹市女子高生殺人事件
東京都三鷹市の路上において、女子高校生(当時18歳)が元交際相手の男(当時21 歳)に刃物で刺殺された。男は、殺害後に被害者のプライベート写真をインターネット に流出させるなどしたことから、「リベンジポルノ」に対する規制が問題となり、後に私 事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(平成26年11月27日法律第 126号)が制定された。
(7) 平成25年11月 千葉県市川市殺人事件
千葉県市川市の繁華街において、女性(当時22歳)が自身の子供(当時3歳)と交 際相手の面前で元交際相手の男(当時23歳)に刃物で刺殺された。女性は警察に相 談しており、警察は、男に対して口頭注意を行っていた。
(8) 平成28年5月 東京都小金井市女子大生刺傷事件
東京都小金井市の路上において、音楽活動を行っていた女子大学生(当時20歳)が ファンの男(当時28歳)に刃物で刺され、一時、意識不明の重体となった。
女子大学生は、ブログやツイッターに執拗な書き込みをされていると事件前に警察に 相談していた。
平成25年7月3日 改正ストーカー規制法の公布
(平成25年7月23日・同年10月3日施行)
・ 執拗な電子メールをつきまとい等行為に追加 ・ 警告の申出先となる警察署の条件を追加
平成28年12月14日 改正ストーカー規制法の公布
(平成29年1月3日・同年6月14日施行)
・ つきまとい等行為の手段にSNSを追加 ・ 親告罪の規定を撤廃、罰則強化など ・ 迅速な禁止命令書の発出
(9) 平成29年1月 長崎県長崎市殺人事件
長崎県長崎市の市道に止まっていた車内で女性(当時28歳)が元夫(当時30歳)に 腹部などを刺されて死亡した。女性は、元夫からのストーカー行為に対して、「報復が怖 い」との理由で警察からの元夫に対する警告を拒否していた。元夫は、女性を殺害し た後、自殺した。
第2章
2 全国及び京都府内におけるストーカー事案の実態
平成12年にストーカー規制法が施行されて以後、若干の上下変動はあるものの、認知 件数、検挙件数及び警告件数はいずれも増加傾向にある。
(1) ストーカー事案の認知状況
平成28年中の全国におけるストーカー事案の認知件数は22,737件であり、平成25年 以降は2万件を超え、高水準で推移している。
また、京都府の認知件数は、平成25年以降、400件を超え、高水準で推移しており、
平成28年中は、486件と法施行後最多であったが、平成29年は、9月末現在で520件 と既に昨年の認知件数を上回っている。
(2) ストーカー事案の検挙状況
平成28年中の全国におけるストーカー規制法違反による検挙は 769件、刑法犯・特 別法犯(ストーカー規制法違反を除く。以下「刑法犯等」という。)での検挙は 1,919件 と年々増加傾向にあり、いずれも法施行後最多となった。
また、京都府内におけるストーカー事案での検挙件数は、横ばい状態であるが、平成 29年9月末現在では65件と、既に昨年の検挙件数(51件)を上回っている。
平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 平成 27 年 平成 28 年 前年比 全 国 19,920 件 21,089 件 22,823 件 21,968 件 22,737 件 769 件
京 都 311 件 455 件 460 件 432 件 486 件 + 54 件
【ストーカー事案の認知状況】
※ 平成 29 年9月末現在(京都) 520 件(前年同期比+ 142 件)
(3) ストーカー事案の警告状況
平成28年中の全国におけるストーカー規制法に基づく警告は、3,562件で法施行後 最多であった。
また、京都府内における警告は、55件で前年比−7件であったが、平成29年9月末 現在では82件と、既に昨年の警告件数を上回っている。
平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 平成 27 年 平成 28 年 前年比 全
国
ストーカー 351 件 402 件 613 件 677 件 769 件 + 92 件 刑法犯等 1,504 件 1,574 件 1,917 件 1,872 件 1,919 件 + 47 件 京
都
ストーカー 15 件 17 件 25 件 19 件 16 件 -3件
刑法犯等 26 件 29 件 27 件 37 件 35 件 -2件
【ストーカー事案の検挙状況】
※ 平成 29 年9月末現在(京都) 65 件(ストーカー 24 件、刑法犯等 41 件)
(前年同期比 ストーカー+ 10 件、刑法犯等+ 16 件)
第2章
【ストーカー事案の警告状況】
平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 平成 27 年 平成 28 年 前年比 全 国 2,284 件 2,452 件 3,171 件 3,375 件 3,562 件 + 187 件
京 都 72 件 73 件 75 件 62 件 55 件 -7件
※ 平成 29 年9月末現在(京都) 82 件(前年同期比+ 44 件)
(4) ストーカー事案の禁止命令等の状況
平成28年中の全国におけるストーカー規制法に基づく禁止命令等は、173件で法施 行後最多であった。
また、京都府内における禁止命令等は、3件で前年比−1件であったが、平成29年6 月14日、禁止命令に関する規定が改正・施行されたことに伴い、今後、増加することが 予想される。
【ストーカー事案の禁止命令等の状況】
平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 平成 27 年 平成 28 年 前年比
全 国 69 件 103 件 149 件 145 件 173 件 + 28 件
京 都 4件 3件 4件 4件 3件 -1件
※ 平成 29 年9月末現在(京都) 2件(前年同期比−1件)
3 京都府内におけるストーカー事案の特徴等の分析
京都府内における過去5年間のストーカー事案の特徴等を分析、考察する。
(1) ストーカー事案の被害者 ア 被害者の性別
警察が認知したストーカー事案の被害者の約9割は女性であるが、多くのストーカー 被害者のカウンセリング等を行っているNPO法人「ヒューマニティ」理事長である小早 川明子氏は、「警察統計では女性が多いが、私が相談を受けている実態からは、男性 も女性と同じくらい被害に遭っている。」と分析している。
後述の大学生を対象としたアンケート結果でも「これまでにつきまとい行為を受けた ことがある。」と回答した男女比は、男性が35.9%、女性が64.1%となっており、警察が 認知している男女比とは大きく異なっている。
このことから考えられるのは、体力的に優位な男性の多くは、ストーカーの被害に 遭っていたとしても危険性の認識が低いため、警察に相談に行くことが少ないのでは ないかと考えられる。
平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 平成 27 年 平成 28 年 アンケート
男 性 27 件 34 件 41 件 50 件 54 件 155 人
8.7% 7.5% 8.9% 11.6% 11.1% 35.9%※
女 性 284 件 421 件 419 件 382 件 432 件 178 人
91.3% 92.5% 91.1% 88.4% 88.9% 64.1%※
合 計 311 件 455 件 460 件 432 件 486 件 333 人
※ アンケート回答者の男女割合で換算した%を表示(性別欄無記入を除く)
【ストーカー事案の被害者の性別】
第2章
※ 全国と京都府の被害者の性別については、いずれも男性が全体の約1割、女性 が約9割と同様の傾向を示している。
平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 平成 27 年 平成 28 年
男 性 2,518 2,036 2,432 2,341 2,557
12.6% 9.7% 10.7% 10.7% 11.2%
女 性 17,402 19,053 20,391 19,627 20,180 87.4% 90.3% 89.3% 89.3% 88.8%
合 計 19,920 21,089 22,823 21,968 22,737
【全国のストーカー事案の被害者の性別】
イ 被害者の年齢
ストーカー事案の被害者は、20代が最も多く、次いで30代、40代となっている。
京都は、全国平均と比べると、10代、20代の割合が高い傾向にある。
京都は、「学生のまち」と言われ、多くの大学が所在し、大学生の占める割合が高い ことも影響していると考えられる。
【ストーカー事案の被害者の年齢】
平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 平成 27 年 平成 28 年 過去5年の平均
10 代 38 44 38 48 49 43.4 10.4%
20 代 116 166 191 170 185 165.6 39.5%
30 代 73 131 108 89 108 101.8 24.3%
40 代 40 76 73 72 88 69.8 16.7%
50 代 22 20 22 27 32 24.6 5.9%
60 代 14 4 15 10 12 11 2.6%
70 代 0 3 4 3 3 2.6 0.6%
年齢不詳 0 0 0 0 0 0 0%
密接関係者 8 11 9 13 9 -
合 計 311 455 460 432 486 -
※ 全国と京都府の被害者の年齢層を比較した場合、京都府の10代、20代の構成割合 は、全国平均よりも高い。
【全国のストーカー事案の被害者の年齢】
平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 平成 27 年 平成 28 年 過去5年の平均 10 代 1,781 1,941 2,102 2,043 2,065 1,986.4 9.4%
20 代 6,756 7,180 8,042 7,519 7,985 7,496.4 35.3%
30 代 5,373 5,674 5,940 5,674 5,658 5,663.8 26.7%
40 代 3,488 3,755 4,041 3,851 4,163 3,859.6 18.2%
50 代 1,306 1,310 1,487 1,516 1,499 1,423.6 6.7%
60 代 554 552 569 558 507 548 2.6%
70 代 137 164 199 214 273 197.4 0.9%
年齢不詳 64 80 28 23 21 43.2 0.2%
密接関係者 461 433 415 570 566 -
合 計 19,920 21,089 22,823 21,968 22,737 -
(2) ストーカー事案の加害者 ア 加害者の性別
ストーカー事案の加害者の性別は、8割以上が男性である。
緩やかではあるが、女性の加害者が増加傾向にある。
第2章
【ストーカー事案の加害者の性別】
※ 全国と京都府の加害者の性別については、いずれも男性が全体の85%前後、女性が 全体の約10%を占めている。
【全国のストーカー事案の加害者の性別】
平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 平成 27 年 平成 28 年
男 性 281 407 413 369 408
90.4% 89.5% 89.8% 85.4% 84.0%
女 性 26 40 39 53 58
8.4% 8.8% 8.5% 12.3% 11.9%
不明 4 8 8 10 20
1.3% 1.8% 1.7% 2.3% 4.1%
合 計 311 455 460 432 486
平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 平成 27 年 平成 28 年 男 性 17,103 18,316 19,593 18,819 19,089 85.9% 86.9% 85.8% 85.7% 84.0%
女 性 2,059 2,145 2,460 2,429 2,584
10.3% 10.2% 10.8% 11.1% 11.4%
不明 758 628 770 720 1,064
3.8% 3.0% 3.4% 3.3% 4.7%
合 計 19,920 21,089 22,823 21,968 22,737
イ 加害者の年齢
ストーカー事案の加害者の年齢は、20~40代が多く、全体の6~7割を占める。
【ストーカー事案の加害者の年齢】
平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 平成 27 年 平成 28 年 過去5年の平均
10 代 13 17 20 18 23 18.2 4.2%
20 代 88 105 118 108 97 103.2 24.1%
30 代 75 134 113 104 99 105 24.5%
40 代 77 93 88 105 95 91.6 21.4%
50 代 21 46 47 45 44 40.6 9.5%
60 代 24 23 45 30 25 29.4 6.9%
70 代 9 19 13 4 15 12 2.8%
年齢不詳 4 18 16 18 88 28.8 6.7%
合 計 311 455 460 432 486 428.8 100%
第2章
※ 全国と京都府の加害者の年齢については、いずれも30代が最多となっている
【全国のストーカー事案の加害者の年齢】
(3) 被害者と加害者の関係
ストーカー事案の被害者と加害者の関係については、交際相手が最も多く、全体の 半数近くを占める。
平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 平成 27 年 平成 28 年 過去5年の平均
10 代 612 773 894 858 865 800.4 3.7%
20 代 3,993 4,057 4,350 4,079 4,235 4,142.8 19.1%
30 代 4,965 5,377 5,534 5,158 5,041 5,215 24.0%
40 代 4,079 4,467 4,844 4,557 4,785 4,546.4 20.9%
50 代 1,998 2,080 2,309 2,261 2,424 2,214.4 10.2%
60 代 1,329 1,396 1,545 1,510 1,430 1,442 6.6%
70 代 505 523 654 615 681 595.6 2.7%
年齢不詳 2,439 2,416 2,693 2,930 3,276 2,750.8 12.7%
合 計 19,920 21,089 22,823 21,968 22,737 21,707.4 100%
【ストーカー事案の被害者と加害者の関係】
平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 平成 27 年 平成 28 年 過去5年の平均
配偶者※ 20 43 36 31 27 31.4 7.5%
交際相手※ 166 215 233 232 223 213.8 51.1%
その他家族 1 2 1 0 0 0.8 0.2%
その他の同居人 0 0 0 0 0 0 0%
知人・友人 29 66 59 54 70 55.6 13.3%
勤務先同僚 13 16 13 16 24 16.4 3.9%
その他職場関係者 8 13 20 8 8 11.4 2.7%
面識なし 19 20 27 18 31 23 5.5%
行為者不明 10 21 21 30 31 22.6 5.4%
その他 37 48 41 30 63 43.8 10.5%
密接関係者 8 11 9 13 9 -
合 計 311 455 460 432 486 -
※ 元配偶者、元交際相手を含む
※ ストーカー事案の被害者と加害者の関係については、交際相手や知人・友人等の顔見 知りが全体の7割以上を占める。
【全国のストーカー事案の被害者と加害者の関係】
平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 平成 27 年 平成 28 年 過去5年の平均 配偶者※ 1,843 1,923 1,959 1,690 1,712 1,825.4 8.6%
交際相手※ 10,458 10,933 11,641 10,888 10,667 10,917.4 51.5%
知人・友人 2,157 2,432 2,593 2,722 3,002 2,581.2 12.2%
勤務先同僚 1,800 2,091 2,367 2,490 2,677 2,285 10.8%
面識なし 1,149 1,221 1,322 1,281 1,597 1,314 6.2%
その他 1,103 1,069 1,264 1,130 1,083 1,129.8 5.3%
行為者不明 949 987 1,262 1,197 1,433 1,165.6 5.5%
密接関係者 461 433 415 570 566 -
合 計 19,920 21,089 22,823 21,968 22,737 -
※ 元配偶者、元交際相手を含む
(4) 平成26年中に京都府警察が認知したストーカー加害者の動勢
※ 継続中については、加害者が特定できていない場合や行為の再発はないが、加害者の 性格等を考慮して、対応の終結とはしていないもの。
平成26年中に認知したストーカー加害者の動勢
第2章
研究会では、警察がストーカー事案を認知した後、対応を終結するまでにどのような動勢 をたどるのかなどについて調査するため、相談から一定期間が経過している平成26年中の ストーカー相談について調査することとした。
平成26年中に当府警察が認知したストーカー事案は、460件であり、うち、220件(47.8%)
は被害者に対する防犯指導のみで終結している。加害者に何らかの形で警察が接触したの は、 232件(50.4%)で、加害者に接触しなかったのは、被害者が警察から行為者に指導す ることを希望していなかった場合や加害者が特定できていない場合などがある。
加害者に何らかの形で接触した 232件のうち、口頭注意で終結したケースが 144件 (62.1%)、ストーカー規制法に基づく書面警告(以下「書面警告」という。)を実施したケース が44件(19.0%)、事件検挙したケースが 44件(19.0%)であった。書面警告した44件のうち、
書面警告後、行為が収まったと認められるのは39件(88.6%)、行為が収まらず検挙された事 例は4件( 9.1%)で、禁止命令に至った事例が1件( 2.3%)であった。
書面警告後、行為が収まらず検挙された4件のうち、禁止命令書を発出したのは2件で、
うち1件は再度検挙された。
検挙した44件のうち、検挙後に行為が収まった11件と検挙後に書面警告した後に行為が 収まった31件を併せると、行為が収まっていると認められたのは42件(95.5%)であった。検 挙後、書面警告したのは33件(75%)であるが、警告後、行為が収まらず検挙したのが2件で、
この2件は禁止命令後も更に検挙している。
このようなことから、書面警告により約9割は行為が収まっており、書面警告等による一 定の効果が確認できる。
しかしながら、書面警告後にも検挙されることを顧みることなく、更なるストーカー行為を 行う者も多く、加害者の強い執着心や支配意識が感じられる事案も多くあった。
4 ストーカー規制法による書面警告・禁止命令事案の分析結果
平成26年中に書面警告を受けた加害者77人のうち、禁止命令にまで及んだ5人を除 いた72人及び平成25年3月から平成28年10月までに禁止命令を受けた14人について調 査・分析を行った。
(1) 加害者の性別について
書面警告より、禁止命令の方が女性の割合が多い。
(2) 加害者の年齢について
書面警告については、20代~30代が58%と半数を超えている。
禁止命令については、40代が最も多く、50代と合わせると約半数となっており、40歳 以上の中高年が警察からの警告を受けてもストーカー行為を継続している傾向がある。
(3) 被害者の年齢について
書面警告については、10代~20代が52%と半数を超えている。
禁止命令については、加害者と同様、40代が最も多い。
第2章
(4) 加害者の職業について
書面警告、禁止命令とも無職者の割合が高いが、特に禁止命令は、4割を超える。
(5) 加害者の前科について
書面警告、禁止命令とも前科の有無は、概ね半々であり、一般的な前科者の割合か ら考えると、前科者が書面警告以上のストーカー行為に走る傾向が高いと思われる。
(6) 別人へのストーカー・DVについて
加害者が、対象被害者以外の者に、ストーカー行為等を行ったかについて、本件行為 の前後を調査したところ、書面警告、禁止命令とも対象被害者以外の者に対してストー カー行為を行っている者が約1割であり、特定の者への執着が強い傾向にある。
(7) 加害者の生活状況について
書面警告、禁止命令とも、独身が半数以上であり、禁止命令は、書面警告に比べ、親 族同居が多く、夫婦が少ない。
(8) 関係について
交際を完全に解消しない状態のものもあれば、交際解消後のものもあり、また被害 者は交際を解消したと思っていても、加害者が交際を解消したと思っていないものもあ るため、元を含んだ関係として調査している。顔見知りの関係が約9割であるが、禁止 命令では店客関係が多く、ホステスと客など接客業でのストーカー事案が多かった。
第2章
(9) 口頭注意時の反応
書面警告、禁止命令とも反感は1割強と指導に納得していないケースも見られる。一 方、表面上では、自認・反省しているケースは多いが、反省しているように見えても内面 では執着心を持ち続けていたため、書面警告、禁止命令に至っており、反省している素 振りを見せても「油断・安心できない。」ということを表している。
(10) 書面警告時の反応
双方とも口頭注意時より、反省している傾向にある。書面警告については、この後、
行為が収まっていることから「書面警告」が有効であるように思われるが、禁止命令に 至った事案でも書面警告時は8割以上が反省心を示していることを考えると、被害者へ の定期連絡をはじめ、一定期間は適切な保護措置が必要であると考える。
28
第2章
5 大学生を対象としたストーカーに関するアンケート結果
京都府内に所在する7大学に協力いただき、大学生に対して、ストーカーに関するアン ケート調査を実施した結果は以下のとおりである。
(詳細については、本報告書末尾の資料を参照)
(1) 実施期間
平成28年11月から平成29年1月までの間 (2) 実施大学
府内の大学等(7校)
(3) 回答数
有効回答数 1,982人(アンケート回答者 2,046人)
男性 1,193人(60.2%)、女性 768人(38.7%)、無記入21人(1.1%)
(4) アンケート結果(抄)
5 大学生を対象としたストーカーに関するアンケート結果
京都府内に所在する7大学に協力いただき、大学生に対して、ストーカー に関するアンケート調査を実施した結果は以下のとおりである。
(詳細については、本報告書末尾の資料を参照)
(1) 実施期間
平成28年11月から平成29年1月までの間 (2) 実施大学
府内大学等(7校)
(3) 回答数
有効回答数 1,982人(アンケート回答者 2,046人)
男性 1,193人(60.2% 、女性 768人(38.7% 、無記入21人(1.1%)) ) (4) アンケート結果(抄)
男 性 女 性
1661人(84%) 1024人(85.8%) 623人(81.1%)
1162人(59%) 721人(60.4%) 426人(55.5%)
427人(22%) 246人(20.6%) 178人(23.2%)
男 性 女 性
238人(12%) 173人(14.5%) 58人(7.6%)
131人(7%) 97人(8.1%) 31人(4%)
105人(5%) 77人(6.4%) 24人(3.1%)
何度でも電話やメールをしてもよい 120人(6%) 87人(7.3%) 31人(4%)
何度でも相手の家に行ったりしてよい 30人(2%) 24人(2%) 4人(0.5%)
男 性 女 性
友人・知人 1,619人(82%) 920人(77.1%) 681人(88.6%)
親・兄弟 379人(19%) 142人(12%) 234人(30%)
警察 71人(4%) 48人(4%) 23人(3%)
男 性 女 性
339人(17%) 155人(13%) 178人(23%)
つきまとい行為等に関する実態調査
質 問 全 体
「つきまとい行為等」を受けたこと等がある
全 体
男女交際の在り方に関する意識 質 問
ストーカー被害者が避難するシェルターの存在を知らない ストーカーに関する講義等の受講等の経験がない
交際を拒否されていても
警察への相談に関する意識
相手との別れ話がもつれた場合の相談先 ストーカーに関する知識
質 問 全 体
質 問 全 体
ストーカーについて取り締まる法律の存在を知らない
交際相手のスマートフォンにGPSアプリをインストールすることは 許される(「どちらかといえば許される。」を含む。)
交際相手に対して「バカ、死ね、殺したろか」等の暴言を浴びせる ことは許される(同上)
理由があれば交際相手を殴ってもよい(同上)
(5) アンケート結果からの考察
ア ストーカー規制法や各種制度の認知度が低いことから、更なる広報啓発が必要で ある。
イ 交際相手に対する束縛心がストーカーに繋がる傾向にあるところ、多くの学生が 交際相手を束縛しており、個人を大切にするという意識や暴力に対する許容と寛容 性に関する教養が必要と思われる。
ウ 交際関係がもつれた際に相談する先は、約8割が友人・知人であり、警察への相 談は4%に過ぎなかったが、相手がしつこい場合や友人や家族からの勧めがあった 場合には、警察への相談を行う者が7割以上いたことから、必ずしも警察へ相談す ることのハードルが高いとは言えない。
今後は、当事者以外の友人・知人、親兄弟が警察等に相談するといった仕組みづ くりが重要となってくると思われる。
また、当事者以外の者が被害者に対して、警察への相談を強く勧めることが被害 防止につながるといったことを広報することも必要である。
エ つきまとい等に遭っている学生は全体の17%で、警察認知の実態からは、暗数が 多いと思われる。
中学生の頃に被害に遭ったと答えた者が50数名いたことから、中学生等の低年 齢からの啓発が重要となってくる。