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そのようなものについても、私たちは、それを「人物」と呼ぶかもしれない

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Academic year: 2021

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四次元主義と人物の同一性

中山康雄(大阪大学大学院人間科学研究科)

 

 人物(person)とは何なのか? そして、「人物」という類述語により、私たちは、どの ように対象を個別化できるのか? これらの問いに対し、「人物は、通常、記憶の連続性と 身体の連続性という二条件を充たしているもの」と答えることができるだろう。しかし、

場合によっては、完全な記憶の連続性や完全な身体の連続性が充たされない対象があるか もしれない。そのようなものについても、私たちは、それを「人物」と呼ぶかもしれない。

それは、「人物」という語が他の多くの語句と同じように、必要十分条件により定義された 語ではなく、プロトタイプ的に使用される語だからである。特に、記憶の部分的非連続性 や身体の部分的非連続性が現れた場合でも、私たちは、記憶の連続性と身体の連続性のど ちらを重視するかにより、異なる対象を人物として同定することがありうる。人物分岐の パズルは、そのような場合のひとつを描いているのである。そして、このようなパズルを わかりやすく記述するために、私たちは名前を用いる。すると、人物同定の基準が複数あ るので、この名前の解釈の仕方が多義的となるのである。

 私は、本発表において、人物分岐のパズルに関して四次元ワーム説を擁護した。私が主 張する四次元メレオロジーという存在論は、対象は四次元的広がりを持つとする四次元ワ ーム説の一種である。対象は三次元的であると考える三次元主義者は、四次元時空的広が りの関係について記述できず、彼らにとりこのパズルを解くことは困難である。また、対 象は四次元的広がりを持つが日常的対象は時間的段階の中に存在すると主張する T. Sider のような四次元段階論者は、複数のタイプの擬同一性(genidentity)関係を必要とし、見 通しのきかない複雑すぎる記述を生み出してしまうだろう。しかし、私たちは、同一性関 係という根本概念を混乱させるべきでない。本発表で示したように、人物分岐のパズルは、

同一性関係を維持しつつ名前を多義的に解釈することにより解決できる。そして、実際、

名前の多義性は、日常でもよく見られるものである。このように、四次元メレオロジーは、

多義的名前を考慮に入れることにより、人物分岐のパズルに対するもっとも自然な解法を 提供できるのである。

参照

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