論文内容要旨
Evaluation of deep venous thrombosis using dual-energy CT (dual-energy CT を用いた深部静脈血栓の評価)
THE SHOWA UNIVERSITY JOURNAL OF MEDICAL SCIENCES Vol.30 No.1 2018 年 掲載予定
内科系 放射線医学 山名啓太
Dual energy CT (以下DE-CT) は 2 つの異なる管電圧を利用し、任 意のエネルギーの仮想単色X線画像の作成が可能である。高エネルギー画 像によるアーチファクトの低減や、低エネルギー画像を利用した造影剤量 の減量、被ばく低下など様々な臨床応用が期待されている。しかし、エネ ルギーの変化に伴い、Noise Standard Deviation( SD )やアーチファクト 等が変化する。
下肢深部静脈血栓症(DVT)に続発する肺塞栓症(PE)はよく知られた 後遺症であり、死亡の原因にもなりうる。DVT患者の症状は多様であり、
診断は臨床所見だけに基づいて行うことは困難なことが多い。そのため、
画像的評価は確定診断に有用であると考えられる。
DE-CTのvirtual monochromatic imaging(以下VMI)では低電圧画像に おいてヨ-ドのCT値が高くなるため、造影CTにおいてヨ-ド造影剤による 血管の増強効果が増して血管の描出が向上すると報告されている。動脈の みでなく静脈の描出も向上することが期待され、血栓のCT値の上昇はわず かなので、濃染した静脈と血栓のコントラストが良好となり、DVTの診断 が容易となる可能性がある。そこで、今回我々は、DE-CTにおけるVMIの低 電圧画像がDVTの診断に有用かどうかの検討を行った。
本研究では昭和大学病院でPE/DVTプロトコールで撮影された29名の患 者データを使用した。そのうち4名にDVTを認めた。両側の大腿静脈及び周 囲筋組織におけるCT値を40keV、従来の撮影方法とで比較しCNR(contrast noise ratio)を計算した。 CNRは、大腿静脈および内転筋のCT値をそれぞ
れVV、ADとし、Nを内転筋のSD値とする式CNR=(VV-AD)/Nを用いて計算した。
また、深部静脈血栓を有したものについては血栓と対側の大腿静脈とのCT 値の比を算出した。全ての症例で、2名の放射線科医による3段階での視 覚評価 (3, good; 2, equivocal; 1, poor )を行なった。DVTの診断は、
40keV(静脈相)において少なくとも2つの連続する軸位断像で完全または 部分的な造影欠損部が見られるものとした。視覚評価、CNRは40keVでは従 来の撮影方法と比較し有意に高かった。また、DVTを有する症例において も血栓の描出は40kevでCNRの向上が得られた。DVTの描出は周囲の静脈が 強く増強されればされるほど良好となると考えられる。仮想低電圧画像で は血栓自体のCT値はわずかに高くはなるが、ヨ-ド程の大きなCT値の変化 はないので、結果的に血栓と造影された静脈のCT値の差は大きくなる。し たがって、血栓と造影された静脈のコントラストは大きくなり、描出が良 好になると考えられた。2名の読影医における視覚評価の平均スコアに軽 度の乖離はあったが、両者ともに40keVの視覚評価が従来の撮影方法より も優れていたので。この研究のlimitationとしては、DVT症例が4名と少な いので、DVT症例を大規模に調査し、実際のDVTの診断能がどの程度高くな るかの検討が望まれる。
低電圧の造影CTは静脈の増強効果を高めるために有用であり、DVTの検 出にも有用性が高い可能性があると思われた。