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実数と収束

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Academic year: 2021

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微分積分学 I

浪川 幸彦 April 24, 2007

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実数と収束

2.2 実数の定義[公理]と基本性質

自然数,したがって有理数はよく分かる気がする(本当は厳密に定義する必要があるが,

ここでは触れないことにする)。しかし実数は何であるか,考えてみるとはっきりしない。こ こでこれを厳密に定義することを考えよう。このとき前回定義した,収束の厳密な定義が必 要になる。

本当はさらに,これが実際に存在することを示す必要があるが,それにも立ち入らない。

Definition 2.2.1. 次の性質をみたす集合Rを実数体とよび,その要素を実数という:

I. 四則演算についての性質

i)(加法) x, y Rに対しそれらの和x+yが定義され,次の性質をみたす;

ia) x+y=y+x(可換法則);(x+y) +z =x+ (y+z)(結合法則) ib) 実数0が存在して,任意の実数a Rに対してa+ 0 =aとなる;

ic) 任意の実数aRに対してa+ (a) = 0となる実数aが(ただ一つ)存在する;

ii)(乗法) x, y Rに対しそれらの積xyが定義され,次の性質をみたす;

iia) xy=yx(可換法則);(xy)z=x(yz)(結合法則);(x+y)z=xz+yz(分配法則) iib) 実数1が存在して,任意の実数a Rに対して1a=aとなる;

iic) 任意の実数a6= 0Rに対してaa−1 = 1となる実数a−1 が(ただ一つ)存在する:

II. 順序についての性質

i) 任意の実数a, bRに対し,

a > b, a=b, a < b のうち一つ,しかもただ一つが成り立つ(全順序性)

(a > bまたはa=bのときa bと,a < bまたはa=bのときabと書く) ii)a b, bcならばa cである;

1

(2)

CA07s-3 2 iiia)abならばa+cb+cである;

iiib)a bかつc0ならばacbcである:

III. 完備性(Dedekindの切断の公理)

Rの空でない部分集合A, B R=AB, AB =φ(空集合),かつ任意のa A, bB

対しa < b とする(このような対A, B Rの切断という)。このとき実数 r Rが(ただ

一つ)存在して,すべてのaAに対しar,すべてのbB に対しr bとなる。

Remark. 有理数体Qは上記の性質I. II.をみたすが,III.はみたさない(例:A ={aQ;a <

2}, B ={b Q;b >

2})。つまりIII.が実数の本質である。

Theorem 2.2.2. Rは存在して,しかも一意的である。

Theorem 2.2.3. RQを含み,Qの加法,乗法,順序はRのそれに等しい。

これらは自然数の性質から導くので,ここで厳密に証明することができない。認めること とする。

Definition 2.2.4. 1) Rの部分集合 Aを考える。実数M があって,すべての a A に対し aM となるときAは上に有界であるといい,M Aの上界とよぶ。

2) Aが上に有界であるとき,(もしあれば)最小の上界のことをAの上限とよび,supA 書く。

Remark.「上」をすべて「下」に変えた概念・命題が存在する。いちいち記すのは省略する。

Aが上にも下にも有界であるとき,単にAは有界であるという。

Theorem 2.2.5 (上限公理(Weierstrass)). 上に有界なRの部分集合Aに対し,必ず上限が存 在する。

Corollary 2.2.6. 上に有界な数列は必ず収束する。その極限値は上界を超えない。

Theorem 2.2.7 (Archimedesの公理). 任意の正の実数a, b Rに対し,自然数n Nが存在 してa < nbとなる。

Theorem 2.2.8 (区間縮小法の原理). 二組の数列{an},{bn}があって,a1 a2 ≤ · · · ≤an

· · · ≤ bn ≤ · · · ≤b2 b1 かつlimn→∞(bnan) = 0であるならば,liman = limbn =cとな る実数cRが(ただ一つ)存在する。

Theorem 2.2.9. 実数の定義における性質I. II.をみたす集合Rに対して,次の条件は互いに

同値である:

1. III.

2. 上限公理

3. 有界単調数列の収束

(3)

CA07s-3 3 4. Archimedesの公理+区間縮小法の原理

Remark. ふつうはこれに 「Archimedesの公理+Cauchy列の収束」条件を加え,この5つが

実数の本質である完備性の表現であると捉える。存在の証明は無限小数によるものの他,有 理数の切断の集合とするもの(Dedekind)と有理Cauchy列の極限全体とするものの2種類 がある。

 「解析概論」(高木貞治著)は微分積分学の教科書として有名であるが,その冒頭の実数

論でArchimedesの公理を無視するという誤りを犯している。具体的には1/n0 (n→ ∞)

を証明なしに使っている(11ページ)。厳密な推論を行うことはそれほど難しい。

前回の出席レポートについて

●問題:1 = 0.999. . .を証明して下さい

[解答例]

0.999· · · = 0.9 + 0.09 + 0.009 +· · ·

= 0.9(1 + 0.1 + (0.1)2+ (0.1)3+· · ·)

= 0.9 lim

n→∞

1(0.1)n 10.1

= lim

n→∞

(1(0.1)n) = 1

[講評]:約100名の出席者中上のような数学的な証明を与えた解答はちょうど1/4でした。

60名がいわゆる通俗的な「証明」を書いています。そのほとんどは 1/3 = 0.333. . . . 両辺を3倍して1 = 0.999. . . .

x= 0.999. . .とおき,両辺を10倍すると10x= 9.999. . . . 最初の式を引いて9x= 9. えにx= 1.

というものでした。しかしこれらは「証明」とは言えません。いずれも“. . .”のきちんとし た数学的定義を与えずに議論しているからです。上の解答例での第1行目がそれに当たりま

す。特に1/3 =は問題を言い換えているだけで,何もしていません。後者の「証明」は形式

的に小数点以下が消えますが,そうしていいことはきちんとした定義を元に示されなければ なりません。無限級数の足し算引き算をするときに注意が必要なことはご存じのはずです。

数学的な定義がはっきりしないままの推論は「説明」であって,「証明」ではありません。

ただし新しいことを見つけるために,ある程度無謀な議論をしてみるのは許されることで す(これをheuristicな議論と言います)。しかしその場合にも最終的には数学的に厳密な議 論によって正当化しなければなりません。

●ゼノンの背理のうち,アキレスと亀の話を説明し,その「正しい」解釈を与えて下さい。

[解答例][ゼノンの主張]アキレスの走る速さが亀より速いとしても,アキレスが亀のいた 地点に達するときは亀はすでに前にいくらか進んでいる。アキレスが再びその時の亀の地点

(4)

CA07s-3 4 に達したとき,亀は再び前にいくらか進んでいる。このようにしてアキレスが亀の1ステッ プ前にいた所に到達するたびに亀はさらに前に進んでいるので,アキレスはいつまでも亀に 追いつくことができない。

[解釈]この考察では時間が考慮されていない。アキレスが各ステップで亀の前にいた地点 に到達するための時間を考慮する必要がある。例えばアキレスの速さが亀のそれの2倍であ るならば,追いつくために要する時間はステップ毎に半分になっていく。したがってこのス テップを積み重ねてもそれに要する時間は,最初にアキレスが初め亀のいた地点に到達する のに要した時間の倍を超えることはない。時間がちょうど倍になったときにアキレスは亀に 追いつく。つまりゼノンの主張はアキレスが亀に追いつくまでは追いつくことができないと いう当たり前のことを言っているに過ぎない。

[講評]多くの人がほぼ正しい解答を与えていました。ただとても有名な話なのに,知らな いという名大生がかなりいるのはちょっと残念な気がします。インターネットで検索をする などして調べてみて下さい。

なお必ずしも追いつくとは限らないことにも注意しておきましょう。もちろん解答のよう に速度の比を一定にしておけば必ず追いつくのですが,追いつき方によっては,例えばアキ レスの速さがどんどん亀のそれに近くなるように工夫すると,いつまでたっても追いつかな い,ということもあり得ます。

ゴールデンウィークの宿題

次々回講義(5月8日)までの間に,何でも結構ですから(ただし教科書,演習書,雑誌 記事の類はダメ),数学に関する本を1冊読み,それについてレポートを書いて下さい(選 んだ理由,内容の紹介,内容に対する意見,そこから自分の得た新たな知見・考え方等)。

・長さはA4レポート用紙2〜3枚(ワープロ印刷),3〜5枚(手書き)程度(もっと長くて もいい)。提出は5月8日授業時。電子メールによる提出も可(ただしファイル様式はpdf,

MSWordのいずれか)。

・レポートには学生番号・氏名および読んだ本の著者名・書名・出版社名を最初に必ず明記 してください。

・このレポートは返却しません。

連絡先

研究室:理1号館506号室

オフィスアワー:木曜日11:30〜12:30(それ以外の場合は事前にアポを)

E-mail : [email protected]

Tel.: (052-789-) 4746

参照

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