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経営学の見直 しと異文化教育の効用

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ManagementJournal MJ,3:39150(2010) Received8thFebruary,2011

経営学の見直 しと異文化教育の効用

‑ モノからヒトへ ‑

So f tPo we r ‑ o r ie nt e dMa na g e ma nta ndEf f e c to fGl o ba lEduc a t i o n:

From Productsto People‑

桜美林大学

馬越恵美子

J.F.OberlinUniversity EmikoMAGOSHl

要 旨

本論 では、モノか らヒ トへの シフ トとい う視点 か ら経営学 を 見直 し、 ソフ トパ ワーの重要性 に関 して論 じたい. ますます グローバル化 する21世紀の ビジネス現場 では、異 なる価値 観 や文化的背景の人々と協働 できる蓮 しい ビジネス リーダー が必須である。 この観点 か ら、 そういった人材 を育 てるため に必要 である 「異文化教育」 について、留学の効用 を中心 に 論 じることとする。最後 に、最近の 日本企業の外国人雇用 や 海外派遣の動 きについても付言するO

キーワー ド●異文化教育、ソフ トパワー、経営学にお ける 「ヒト」、留学

Abstract

ThlSPaperfocusesontheshlftfrom productstopeopleln managementanddlSCUSSeSthelmPOrtanCeOfsoftpower lnmanagementlnthelnCreaSlngJyglobalizedeconomy andbusinessinthe21stcentury,itlSCrucialtocuLtlVate globalleaderswhocanworkeffectivelyinamultICUltura!

envlrOnment.From thlSStandpomt,tranSCUlturaleducat10n lSamust,andthISPaperelucldatestheeffectNeneSSOf studyabroadandtouchesontheveryrecenttrendofmajor Japanesecorpo「atl0nStOhlrenOn‑Japaneseemployees anddlSPatChthel「Japanesestaffoverseas

KeyWords+ transculturaleducation,softpower, people‑orlented management, studyabroad

(2)

40 マネジメント ジャーナル3号)

はじめに

「経営」 は、英語 の

ma na ge me nt

に相 当す る 言葉 であ り、広 くは組織体 の運営 を意味す る。

企業の場合 は、ある 目的の遂行 のため、意思決 定 をもって政策 を実行す ること、 また、その意 思決定者 (経営陣)を指 している。「経営」は 「ヒ ト、モ ノ、 カネ」の

3

本柱か ら成 り立つ と言わ れる。 これ まで、経営学 においては、 どち らか と言 うと、生産技術や生産現場 を重視 し、金融 や財務 に注 目するな ど、いわゆる 「モ ノ」と 「カ ネ」 に焦点が当て られて きた。その反面、人的 資源管 理

( huma nr e s o ur c ema na ge me nt )

早 組織行動

( o r ga ni z a t i o na lbe ha vi o r )

といった「ヒ

ト」 に関す る学問分野 は必ず しも主流 とは言 え ず、研究者 の数 も限 られていた。 しか し、近年、

経営のグローバル化が進むにつれ、人材育成や 人材活用 といったソフ トパ ワーの重要性が高 ま りつつあ り、経営学 において 「ヒ ト」 に関す る 分野が脚光 を浴 びるようになって きた。

ヒ トは文化 的 に多様 な背景 を有 す るが ゆ え に、その活用 は容易ではないが、多様 な人材 を 活かす ことが企業の競争力の鍵 を握 っているこ とも事実であ る。 また同様 に、「ヒ ト」 は調査 研 究 において も複雑 な要素 を伴 い、定量化す る のが難 しい分野で もある。 しか し、反対 に、 ま だ、未開拓 の部分 を残 してお り、幅広 い可能性 を有 してお り将来性のある分野であるともいえ よう。

「経営」 は利潤追求 とい う普遍 的 な命題 とと もに、社員の動機づけ とい う文化相対性 の二面 性 を持 っている。 この社員の動機づ け も、経営 学 における 「ヒ ト」の重要 な課題である。文化 と経営 を論 じているのが 「異文化経営論」 とい う分野であ り、その近接領域 として、多様 な人 材 を活かす経営であるダイバ ーシテ ィ ・マネジ メ ン トがある。 なお、異文化経営が企業の国際 化や海外展 開における多 国籍 の人材 の登用 か ら ス ター トしているのに対 して、ダイバー シテ ィ・

マ ネジメ ン トはひ とつの企業内の多様 な人材 を

起点 としている。 しか し、両者が 目指す ところ は共通 してお り、属性 を超 えた人材の活用 こそ が

、21

世紀 の 「経営 」 の要 であ る とい う考 え 方 は同 じである。

さらに、多様 な人材が活躍す るには、個 々人 が 「異文化」や 「多様性」 に対 して 「寛容」で あ り、かつ 「耐久力」がある必要がある。 この いわば、「異文化 力」 とも呼ぶ こ とので きる力 を持つ ことが、仕事 の上で も社会生活の上で も、

さらには人生のあ らゆる側面 において、 自らの 力 を発揮 し、社会 に貢献 し、 自らが輝 くことが で きるエネルギーの源泉 となる。このためには、

「教育」 の現場で も、「異文化力」 を培 うべ き努 力が必要 であ ろ う。今後 は、経営学 において、

モノや カネか らヒ ト‑ の シフ トが求め られてお り、 ヒ トを論 じる場合 には、必ず、多様 な価値 観 にかかわる 「文化」 を避 けて通 ることはで き ない。 さらには、「異文化力」 を育 む教育、す なわち 「異文化教育」 を促進す ることが、 ます ます重要 になるであろ う

グローバル経 営のできる人材 の育成

さて、 日本企業が国内に留 まっていては、 ま た 日本人だけによる経営では立 ち行かない とい う事態が現在、深刻化 している。 円高は止 まる ところを知 らず、中国や韓 国な ど新興 国による グローバ ル競争 は生 き馬の 目を抜 く有様 で、そ の厳 しさが 日に 日に増 してお り、モノや カネの 面 のみ な らず、 ヒ トの面 で もグ ローバ ル な力 をつけることに真剣 にな らざるを得 ない状況 に 追い込 まれている。 これはピンチであると共 に チ ャンスで もある。

実際 にすでに 日本企業の中に もグローバル人 材 の養成 に本格 的に乗 り出 しているところがあ る。 た とえば、 日立製作所 は

2 01 2

年春 に入社 す る社員か ら、事務系 は全員、技術系 も半数 を 将来、海外赴任す ることを前提 に採用す るとい う。 また、若手社員 を対象 とした語学留学や海 外実務研修や海外 出張 も大幅 に拡充す る予定で

(3)

ある。来年の採用活動か ら、学生 に対 し、将来 海外赴任す る意思があるか どうか を確 認 した上 で、一定の語学力がある人材 をグローバル要員 として採用す る。 この ように早期 に海外 で経験 を積 ませ て、将来、管理職 として海外 に駐在 し た ときの即戦力 になる人材 を育て ようとい う試 みである (日本経済新 聞

,2 01 0 ) 0

グ ローバ ル経営 が で きる人材、 いわゆ る グ ローバ ル ・ビジネス ・リー ダーは、 フォー ドの 元会長兼

CEO

である トロ ッ トマ ン氏 の言葉 を 借 りれば、国際経験が豊富で、多様性 にコミッ トす ることがで きる人である。ちなみに、フォー ドでは将来有望 な幹部社員 に積極的に海外勤務 の経験 を積 ませ ている。勇気、持続力、チーム ワーク、品格 ともに、多様性へ コミッ トす る と い う姿勢が重視 されている。

ひと口にグローバ ル人材 といって もその定義 は簡単ではない。筆者は次の ように考 える。

「多様 な価値観 を受 け入 れ、異文化 に動 じな い人。基本的なビジネススキルを持 ち、英語で ビジネスがで きる人。組織ではな く、個人 とし て魅力のある人。会社 の看板がな くて も世界で 勝負 で きる人。 自分で判断で きる人。世界 を備 撤的に見 る広 い視野 を持 っている人

。 」

こんな人が果た しているのか、 と周 りを見渡 していると、何 人かそれに該当す る人が思い当 たる。それは、若い時 に海外生活 をした人、特 に、 自ら進 んで留学 をした人たちである。単 に 海夕日こ生活 した経験があるだけでは不十分であ る。 た とえば親の海外転勤 によ り、仕方 な く海 外 生 活 を した人 の中 には、英語 力 はあ る もの の、それ以外 の上記のグローバ ル人材 としての 要件 は満た していない人 もいる。反対 に短 くと

も自ら進 んで海外 に出た人の中には、その よう なグローバ ル人材 の素養 を持 った人 もい るので ある。つ ま り、語学力 ‑グローバ ル人材 ではな い。つ ま り語学力 は必要条件ではあるが、十分 条件ではないのである。

海外 に行 くことが容易 になった昨今、若者 は 海外 に積極 的 に留学 を しているのか とい うと、

経営学の見直しと異文化教育の効用 41

残念 なが らその反対 である。 日本 の若者 たちは 総 じて、世界か ら遠 ざか る傾 向にあるといって も過 言 で はあ る まい。大 学 院留学 も、 かつ て は企業 が積極 的 に欧米 の ビジネスス クールで

MBA

を取得 で きる よ うに社 員 を派遣 したが、

今ではそれは稀 なケースになっている。 アメ リ カの名 門 ビジネスス クールで は 日本人が減 り、

中国人や韓国人が幅 をきかせ ている。 また高校 の留学 はかつて狭 き門であったが、今では留学 生 を集め ることに高校留学機 関が躍起 になって いる。 また大学 において も留学のチ ャンスが少 なか らずあるが、海外 か らの留学生 は加速度的 に増 えているが、 日本か ら海外 に留学す る若者 の数 は停滞 している。 さ らにまた若手の研 究者 もかつては海外有数 の大学 院で博士号 を取得 し ようとい う動 きがあったが、最近では安易 に国 内の大学 院で学位 を取得 しよう とい う人が多 い。 また研 究者 で海外 に残 って、欧米の大学の 教授 になっている人 も少 な く、例 えば、経営学 の分野では数 えるほ どである。 イ ン ド人や中国 人はこれ とは正反対 に、多 くの研 究者が欧米の 一流大学でポス トを得 て、活躍 している。 この ような違 いはなぜ生 じるのだろ うか。海外 の人 と日本人の意識の違いがあるのではないか と推 測 される。 そこで、筆者が行 なった社員の タイ プの意識調査 におけるアメ リカとチ リと日本 と の比較 について、紹介 したい。

社員のタイプの意識調査 : アメリカとチリと日本の比較

先行研究 によれば、組織 には三つの タイプが いると言われている。つ ま り、必要不可欠 な人 と普通の人 と問題 のある人である。 これを企業 に当てはめれば、「必要不 可欠 な社 員」 と 「普 通の社員」 と 「問題 のある社員」 となる。

「必要不可欠 な社 員」 とは、文字通 り、 その 企業 に とって、 な くてはな らない社 員であ り、

組織 をまとめる力があ り、企業の経営の要 とな

(4)

42 マネジメント ジャーナル(3号)

る社員である。組織全体 の機能 を向上 させ、結 束力 を高 めて、成果 を上 げる。「この人 の変 わ りは誰 もで きない」 と誰 しもが思 うような、組 織 にとって もっ とも好 ましい タイプである

「普通 の社 員」 とは普通 の能力 を持 ち、企業 の成功 にはあ まり大 きな影響 を与 えない社員で ある。組織 の 目標 に対 して大 きな貢献は しない が、害 も与 えない。 自分か らイニ シアテ ィブは 取 らず に、単 に仕事 をこなす社員。言 われた仕 事 をや るが、 この人でなければ困る、 とい うこ

とはな く、他 の人が交代可能である。

「問題 のあ る社員」 とは、 トラブルメー カー であ り、企業 に吾 を与 える存在である。組織 の 目標 達成 に貢献 しない だけで な く、組織 にダ メージを与 える。組織 に忠誠ではな く、 また信 頼 もで きない。不満が多 く、 ミスを他人のせい に し、職場 の雰囲気 を暗 くす る。 この人がいな くなるといい、 と同僚 に思われている疎 ましい 存在 である。残念 なが ら、 どこの組織 に もそ う い う人はいるものである。

調査の概要

本調査 は、アメリカとチ リの学者 との共同研 究であ り、具体 的には次の ような形で行 なった。

ア メ リカの

MBA

の学 生

3 2

名 とチ リの

MBA

の学生

4 7

名 と日本 のマネジメ ン ト専攻の

4 6

名 の学 生 を対象 に、上記 の

3

つ の タイ プ に社 員 に関 して、 回答者 にそ れぞ れの タイ プの特徴 を10項 目挙 げるよう指示 した。 アメ リカに関 しては、三つの タイプの社員についてそれぞれ

3 2 0

の回答が得 られ、全体 の回答数 は

9 6 0

となっ た。 チ リに関 しては、「必要不可欠 な社 員」 の 回答 が

4 5 3

、「普通 の社 員」の回答 が

3 8 6

、「問 題のある社 員」の回答が

41 9

であ り、 回答総数 は

1 , 2 5 8

であった。 日本 に関 しては、三つの タ イプの社員 についてそれぞれ

4 6 0

の回答が得 ら れ、回答総数 は

1 , 3 8 0

であった。

その結果、面 白いこ とに、「必要不可欠 な社 員」 と 「問題のある社員」 に関 しては、 アメ リ カ ・チ リ ・日本の問にあ ま り差が なか ったが、

下記 に示す ように、「普通の社員」 に関 しては、

差がみ られた。 アメ リカは 「普通の社員」 に対 して、極 めて否定的なイメージであ り、チ リは アメ リカよ りは肯定的イメージであるが、 日本 の回答者 は突出 して、好意的な特徴 を挙 げてい た。つ ま り、 アメ リカとチ リに比べて、 日本 に おいては 「普通の社員」の評価が高い ことが明 らか になったのであ る

( Ki n,Ar i a s ‑ Bo l z ma nn

,

&

Ma go s h i , 2 0 0 9 )

0 調査結果

アメ リカの回答結果 をみ る と、「普通の社員」

については、次の

5

つの形容詞が最 も多い。

す なわ ち、1.平 均 的

2 .

怠惰

3 .

追 随 す る

4 .

無 関心

5 .

信頼で きる である。

チ リの 回答 者 は、「普通 の社 員」 につ い て、

次 の

5

つ の形容 詞 を挙 げ てい る。 す なわ ち、

1.コ ミッ トしない

2 .

内向的

3 .

勤勉 な

4.

責 任感のある 5,順応す る である。

日本 の 「普通の社員」に関 しての回答結果 は、

次 の5つ で あ る。 す なわ ち、1.普通 2.信 頼 で きる

3

.勤勉

4 .

友好 的

5 .

順応 す る である。

この ように、 日本の回答者 はアメ リカやチ リ に比べて、「普通の社員」 を高 く評価 している。

それ にはいろいろな原 因が あ る と思 われ るが、

ひ とつ には 日本 の社会が比較 的均質であ り、社 会 において 「中間層」が圧倒 的多数 を占めてい ることがあるだろ う。また、戦後 のキ ャッチア ッ プの経済 において、会社 の指示 を忠実 に実行す る中間管理職の存在が大 きな力 を発揮 し、その 姿勢が肯定的に社会 に受 け止め られていた こと

も一因か もしれない。

オランダの著名な異文化経営論の先駆者であ るホフステ イ‑ ド

( Ho f s t ede,1 9 91 )

は、国に よるビジネスのや り方 の違いをい くつかの次元 で切 って説 明 を してい る 1)。 ホフステ イ‑ ドに よれ ば、 日本 の カルチ ャーは 「集 団主義」。つ ま り、「出る杭 は打 たれる」 とい うわけである。

突出 した リーダーが明治維新 の ような一時期 を 除いて育 ちに くい風土であ り、会社 にあっては、

フォロワーである普通の社員が歓迎 される傾 向

(5)

がある。

日本 の回答者 は、普通の社員 と必要不可欠 な 社員 の両者 に共通の特徴 を見出 してお り、普通 の中で も特 に秀 でている人が リーダーである と い う考 え方である。普通であることが良い、組 織 に危害 を与 えない社員は良い社員である、 と い うとらえ方である。 これに対 して、特 にアメ リカで は、全 員 を引 っ張 ってい くような強 い リーダーが望 まれてお り、それがで きない 「普 通の社員」 に対 しては否定的な特徴が多 く挙 げ

られている

さて、 グローバ ル化が否応 な しに進展 してい る今 日の状 況 を鑑みれば、 ビジネス も政治 も、

強い リーダー シップをもって国際舞台で対峠す ることがで きる人材 が求 め られてい る

「普通 がいい」 は もちろん、個人のライフス タイル と しては構 わないが、国民全体が 「普通」 を志 向 した とき、その国は弱体化す るのではないか と い う懸念 を持たざるを得 ない。

そ こで、 これか らの 日本 は、 もっ とグローバ ル人材輩 出のための教育 をす るべ きだ と思 う

そのためにはいい意味での 「エ リー ト教育」 を す るべ きではないだろうか。エ リー トとは本来、

人 に厳 しいので はな く、 自分 に厳 しい人 であ り、人の痛みがわかる、公の大 きな器 を持つ人 間の ことではないだろ うか。 まさに、noblesse oblige(ノブ レス ・オブ リージュ :高貴 な者 に

は高貴たることが課せ られる)が求め られるの である

「人 の心」が わか り、 自己責任 で判 断 を下す ことがで き、かつ 「多様 な価値観」 を受 け入れ て人 々 を束 ね る こ とが で きる リー ダー、 これ が グローバ ル ・リー ダーだ と思 う

「普通」 に 甘 ん じるこ とな く、「高貴 な リー ダー」が育つ 日本 になっていかなければな らない。そのため に教育の現場 は何 をしな くてほな らないだろ う か。

グローバ ル人材 として育つ ために、「広 い外 の世界 に対す る興味 を持つ こと」が まず必要で ある。それ を 「喚起す る」 ことが、教員 の大事

経営学の見直 しと異文化教育の効用 43

な責務である と思 う。ただ し、広 い世界 に関心 を持たせ るには工夫がい る。その方法 としてひ とつ考 え られ るのが、「ギ ャップイヤー」 の導 入である。英国で行 われているように、高校 を 卒業 して大学 に入 る前の 1年 を、海外や国内で ボランテ ィア として、過 ごすのである。筆者 の 回 りにも東京の養護施設で働 く医者 を目指す イ ギ リスの若者や北海道の農園で働 く ドイツの若 者 な どがいる。大学 に入 る前 にこの ような社会 経験 を積 む ことによ り、 目的意識 をもって充実

した大学生活が送れるのではないか と思 う。

次 にグ ローバ ル人材 と して活躍 す るため の

「異文化教育」 について述べ る

「異文化力」の ある 「ヒ ト」 を育てる道場 となる留学の効用 に ついて、大学や大学院での留学や海外 に駐在 し て仕事 をす る上で不可欠である 「異文化対応 の 基礎体力」 を養 うの に最適 であ る 「高校 留学」 に的を絞 って論 じたい。

異 文化教育としての留学の効用 : 高校留学を中心に考える

異文化理解の意義

多様性が ます ます求め られるようになった現 代 には、様 々な文化 に対す る知識や理解力 を持 つ柔軟性 に富 んだ人材が必要である。そ うした 人たちの多 くは、若 い時代 に異 なる価値観の中 に身 を置 き、考 える機会 を得 た ことがある と思 われる。高校時代 の留学 は、そ うい う機会 をよ り多 くの若者 に提供す る ものであ り、共存共栄 の世界の実現のために、極 めて重要 な教育の場 になる と言 えよう

高校 とい う比較 的若年時 に、 これ まで育 って きた環境 を離 れ、異 なる環境 に身を置 くことに よって、悩み、苦 しみ、葛藤す るとい う異文化 適応 のプロセス を体験す る。 この体験 は人間 と

しての成長 につ なが ることは間違いない。高校 生 とい う時期 は、 自我が確立 し、母語の能力 も 十分 にあ り、かつ まだ柔軟性 を持 った時期であ る。外 国語 を習得 し、異文化 を吸収す るには最

(6)

44 マネジメント ジャーナル(3号)

適の時期ではないだろうか。特 に交換留学 はボ ランティア精神 に支 えられてお り、留学生だけ でな く、受入家庭、学校、地域社会のすべてが 異文化交流 プログラムの参加者 となるため、相 互理解の促進 につながるのである。留学 を通 し て知 り合 った人々や、得た経験 は、その後生涯 を通 じて影響 を及 ぼす ことが多 い。留学が人 生 を変 えるほ どの影響力 を持つ体験 (lifetime experience)であることが、多 くの帰国生の体 験か らも実証 されている

高校 生 の交換 留学プログラム の現 状 にお ける問題点

このように高校時代の留学は人間的な成長 を 促 し、異文化 に対する感受性 と理解 を深めると い う大 きな意義があるものの、実際に送 り出す 側の高校 の現場では、必ず しも諸手 を上げて賛 成す るわけではな く、高校 によっては優秀 な生 徒 の留学 を阻止する動 きさえあるとい う問題が ある。高校生の数が減少 し、全体的には大学入 試が楽になったとはいえ、偏差値の高い名門大 学 に入学す ることは、依然 としてハー ドルが高 く、高校側 として も留学 を希望す るようなチ ャ レンジ精神がって優秀 な生徒 は、で きるだけ上 位の大学 に送 り込んで、受験教育の成果 を上げ たい という思惑 もあるのだろう。ある高校留学 機関の話 によれば、留学 に対 して否定的な意見 を持つ教師が留学希望者の足 を引っ張 るケース が多 くなっている、 とい うことである

もうひとつは、留学の大衆化 による受け入れ 側の負担の増大 とい う問題である。交換留学の 大衆化 は、異文化理解の体験者のすそ野 を広げ たが、準備不足や本人 よ りも保護者の意向で参 加す る生徒が増 えた結果、現地でのサポー トの 負担 は大 きくな りつつある。語学力 もないまま 出発す る生徒が増 え、受入側が何 らかの規制 を 考 えは じめるところも出て きている。

さらに、英語圏偏重‑後戻 りしている、 とい う問題 もある。つ ま り。 日本では近年、英語教 育重視の政策が推進 され始めたせいか、せ っか く色 々な国に目を向けていた若者が、以前 より

まして英語圏指向にな りつつあるとい う問題が ある

また、保護者の過保護 による、異文化体験の 劣化 とい う問題 も起 こっている。つ ま り、子離 れので きない保護者が増 え、留学中に直接 コン タク トして体験 を台無 しにす るケース もあ り、

また子供可愛 さの余 り、留学機関に対 してあれ これ仔細 に渡 って指示 をす るような人 も出てい るとい う

これ らの問題は 日本が豊かにな り、海外 に行 くことが特別なことではな くなった現在 は、当 然起 こ りうる問題であ り、 さらには少子化 によ る親子 関係 の変化 も トラブルの新 たな火種 と なっている

留学を促進させるための具体方策と留学 団 体等の位置付け

以上のような問題 はあるものの、制度面か ら 見た場合、高校生留学の環境 は以前 に比べて整 備 されて きていると思われる。

例 えば、文部科学省 では、平成

1 5

3

月 に 策定 した

『英語が使 える 日本人』 の育成のた めの行動計画」 において、「毎年

1 0 , 0 0 0

人の高 校生が海外留学する」ことを目標 に挙げている。

具体的施策 として、「高校生留学交流団体が実 施する留学 プログラムや、留学先 に関する情報 提供活動 を支援す る」 とし、平成

1 5

年度 よ り 毎午

l , 0 0 0

人の高校生 に各

5

万 円の派遣支援金 の支給 を開始 した。

高校留学促進のためには、生徒 の動機付 けを 増やす とともに、学校 の教員、保護者等 に留学 の価値 を理解 して もらい、留学の推進役 になっ て もらうことが重要であるため、様 々な啓蒙活 動 を行 なわれてい る

。1 9 9 2

年 に設立 された全 国高校生留学 ・交流団体連絡 協議会 (高留連) には

1 3

団体が会員 となっている。主要 な活動 は

、1 3

団体 の プログラム要覧 の作成、高校 生 留学に関す る各種 プログラム ・ガイ ドライ ンの 策定、留学団体 と高校の先生方による研究協議 会 (高校生留学等 関係 団体 関係者研 究協議会) の開催 などで、文部科学省 と密 に連絡 を取 りな

(7)

が ら活動 してお り、各留学団体 において も、そ れぞれの方法で高校生留学促進のための

PR

活 動 を行 っている

さて、上記の団体 のひ とつである

AFS

は高 校生の交換留学 を主な活動 としている民間国際 教育交流団体で、世界中のボランテ ィアの支援 の もとで、異文化教育交流 を行 ってい る。現 在、加盟 国は

5 0

か国以上 に渡 り、交流 国は約

8 0

か国に及 んでいる

。AFS

は、第一次、第二 次世界大戦中に傷病兵の救護輸送 に携 わったア メ リカの ボ ラ ンテ ィア組織

、Ame r i c a nFi e l d Se r vi c e

(アメ リカ野戦奉仕 団)の活動 に端 を 発 している。悲惨 な戦争 を通 じて、真の相互理 解 こそが世界平和 を実現す るとの確信 を得 て、

1 9 4 7

年 に交換留学制度 をス ター トさせ、現在 はニュー ヨークに国際本部を置 き、世界各国 と 毎年約

1 1 , 0 0 0

人以上の交換留学 を実施 してい る。 日本 の活動 は

、1 9 5 5

年 に氷 川丸 で アメ リ カへ留学 した

8

人の高校生 に始 ま り、今 日では、

年間プログラム ・短期 プログラムを併せ、毎年

1 , 0 0 0

人近い交換留学 を日本全 国のボランテ ィ アに支 えられなが ら実現す るまでに発展 してい る

。AFS

で海外 に留学 した人達 (リタ一二一) には政界や実業界や学会など各界で活躍 してい る人が多い。 まさにリタ一二一は、 日本の社会 における貴重なグローバル人材である。

留学 の成果 と留学後 の進 学 や就職 等 の進 路

それでは、一般的に、海外留学はどのような 成果 をあげ、その後の就職にどの ような影響 を 与 えているだろうか。

この点について、近年、異文化 コミュニケー シ ョン学者 の ミッチ ・ハマーが全世界 の

AFS

留学生 を対象 に行 った調査 の結 果 に よる と、

1 0

ケ月間の留学 によって飛躍的に身 につ けた ものは以下の

5

項 目であることが実証 された。

① 異文化 を理解 しようとする力 (勤 受入国の文化の理解

③ 受入国の言語の習得

④ 異文化の人々と積極的に交流す る能力

経営学の見直しと異文化教育の効用 45

⑤ 国際的なネ ッ トワーク構築 と様 々な国の 友人 との友情

ハマーは調査 を総括 し、「留学のイ ンパ ク ト は非常 に大 きく、異文化 を理解す る力 を伸 ばす。

留学体験 は偏見や 自国主義 を減少 させ、他の文 化への興味を増大 させ る。 また、『私たちvs彼 ら』 というような対極論で文化 間の違いをとら えることがな くな り、共通点の発見 により文化 の壁 を越 えようとす る」と述べている。つ まり、

留学体験 は異文化 に対す る意識 を大 きく変 え、

異文化適応能力培 うものであるということが体 験的にだけでな く、学術 的にも実証 された とい

うことは大 きな意義がある

帰 国後 の進学、就職 につ いては

、AFS

日本 協会が

1 9 9 5

年か ら

2 0 0 4

年 までに同プログラム で留学 した高校生に実施 したアンケー ト結果の なかに、興味深 いコメン トがあるので、紹介 し たい。

「留学 しなかった ら今 の大学 に来たい と思 わ なかっただろうし、英語力や思考力 などの点で 今の大学に入 る能力 もなかった と思 う。大学で も

1

年 チ リに留学 し、社 会学 を専 攻 した こ と も、異なる文化で暮 らした影響である。 自分の 行 き方 に大 きな影響 を与 えたことは確 かだ し、

その影響 に対 して感謝 と誇 りを感 じる

」 (ノル ウェーに留学 した男子生徒)

「自信が持てたおかげで、何事 に も積極 的に 取 り組む姿勢が身についた。他 国か らの留学生 との交流 を通 じて、英会話力 もつ き

、TOEFL

ス コアも

5 0

ほど上がった」 (チェコに留学 した 女子生徒)

「視野が広が り、価値観 は考 え方が大 きく変 わったことで、 自分が 目標 に していることや必 要 としてい るこ とを他 人 に説 明で きる ように なったので、面接や大学でのディスカッション などで とて も役 に立 っている。相手が理解 しや すい話 し方 を工夫するなど、相手のことを考 え た行動がで きるようになった

」 (エクア ドルに 留学 した男子生徒)

これ らの生の声 は、上述 したハマーの調査結

(8)

46 マネジメント ジャーナル3号)

果 を裏づけるものと思われる。

人 生 や キ ャリアに対 す る留 学 の 影 響 と効 果 留学機 関のあるホームページには、次の よう に記 されている。

「プログラムに参加す る生徒 は、 自分が長年 馴染 んだ環境か ら一時的に離れ、異なる生活様 式、考 え方などを体験することで、国際社会に 必要な感性や知性 を獲得 します。異文化体験 は、

人 との関わ りを重ん じる心 を育て、異 なる文化 に対す る感性 を養い、世界の様々な出来事 に対 す る幅広い視野 を育成 します。」

自らの経験 に照 らして、 まさにこの とお りで あると思 う。それでは実際に留学が人生に与 え た影響 について、筆者 自らの経験 を紹介 したい。

第‑に、生 き方に人それぞれ幅があることが わか り、「生 きることが楽 になった」 とい うこ とである。実は留学す る以前の 自分は、周囲の ことが気 にな り、友達の言動に惑わされて、 自 分 を見失 うことが多かったが、アメ リカの高校 に留学 し、多様 な価値観 に触れ、いかに自分が 小 さ く狭 い了見であることが身にしみてわかっ た。その結果、器が大 きくな り、度胸が据わ り、

人の 目を気 にせずに、 自分の信 じる道 を歩むこ とがで きるようになった。

第二 に、 いい意味で 「自己主張 で きる よう になった こ と」であ る。英語 で言 うところの

a s s e r t i ve

である。留学す る前 は、何 も言 わな くて も周 りが察 して して くれ る とい う環境 に あったが、ホームステイ先ではきちん と表現 し ない とお腹がすいていることす らわかって もら えない、 という、文字通 り 「ひもじい思い」 を した。 また きちんと自己弁護 しない と、誰 もか ばって くれる人はいない、 とい う痛い経験 もし た。 しか し、 しっか り人 と対峠 し、意見 を述べ れば、それな りに評価 して くれるとい うことも わかった。

第三 に、「自分 と日本 を客観 的 に見つ め る」 機会 を得 たことである。筆者の留学先 は ミネソ

タ州 とい う厳冬の地で、スクールバスに乗 り遅

れて とぼ とぼ家 まで雪道を歩いて帰 ったことが ある。 自分 とは何 なのか、人生 とは何 なのか、

日本 とは、 アメリカとは、世界 とは ・・・など など、 自分の心の底 を見つめなが ら自問 し歩い た時に、雲の切れ 目か ら見 えた、一筋の太陽の 光 は

、4 0

年経 った今で も忘 れ るこ とがで きな い。それは、 自分 はどう生 きるべ きか、 という 問いかけをは じめて したことであった。そ して それ以来、人生の節 目、節 目で、 自分で考 えて 切 り開いてい くことがで きるようになったので ある。 この18歳 とい う若い ときに、親元か ら はなれ、異文化 の環境で、 しっか り自分 と対峠 したことが、今の自分の原点になっている、 と 思 う。 これは何物 にも代 えがたい貴重 な経験で あった。

そ して、 もうひとつつけ加 えるな らば、それ らの経験か ら、「すべてに対 して感謝の念」 を 持つ ことがで きるようになったことである。 自 分がこうして生 まれたことに対する感謝、親に 対す る感謝、友達に対す る感謝、祖 国 日本 に対 す る感謝、そ して、 こんな至 らない 自分 を受け 入れて くれたホス トファミリーに対する感謝で ある。「自分が好 きにな り、周囲が好 きにな り、

人生 をポジティブに捉 え、何事 も前向 きに積極 的に生 きることがで きるようになった。」 これ が最大の成果であると思 う。そ してこれは、大 学ではな く、高校時代の留学で得 られた宝であ る。

高校生の留学 は、年齢が若いこともあ り、 ま た受 け入 れ側 の負担 も大 きい こともあ り、確 かに多少の リスクはあるものの、それ以上 に大 きな価値 と意義がある。大学 に入学す る前の

1

年 をボ ラ ンテ ィアや海外 で過 ごす イギ リスの ギャップ・ギ ャップイヤーの ように、 日本で も、

一人で も多 くの若人に高校生留学のチ ャンスが 与 えられることを筆者 は切 に願 う。それを通 じ て人間的に成長 してか ら大学 に入学すれば、在 学中の

4

年間が もっと充実 した ものになるであ ろう。 さらには就職において も、 自分の 目で見 て判断 し、その後の人生 において も、自らのキヤ

(9)

リアパ ス を しっか りと描 くこ とが で きるだ ろ う。またその ような人間力 を持 った人 は、グロー バ ル人材 として も最適で、企業の第一線で リー ダーシ ップを発揮す ることがで きるだろう。そ の ようなチ ャレンジ精神旺盛 な若者が増 えるこ とに よって、 日本が もっ と元気 な社 会 にな り、

世界 に役立つ国になることは間違 いないが、実 際に企業の戦力 に育 って、成果があが るまでに 時間がかかることも事実である。

日本企業における外国人活用の本格化

日本企業が実際 どの程度、異文化 の活用 を進 めているか といえば、残念 なが ら、変化 は緩や かで、危機感 も薄い と思 われ る。「日本 に異文 化 は必要 ない

「外 国人 は必要 ない」 とい う声 を耳 にす ることもある。「同 じであ ること」 を 媒介 に した心地 よい コ ミュニケー シ ョンに慣 れ て しまうと、 日本か ら一歩外 に出て、異質 なこ とが当た り前の世界 に入 ると、そ こで切瑳琢磨 す ることが容易ではない。また、こうした コミュ ニケー シ ョンしか経験 していない と、相手がた とえ外 国人であって も、同 じ企業、同 じ組織 に 属 してい る とい うだけで、「これ くらい言 えば わかって くれるだろ う」とい う線 を、低 く見積 っ て しまいがちである。

しか し、最近、 日本企業 における外 国人 トッ プや ス タ ッフの登用 に関す る新 しい動 きが 目 立 って きている。た とえば、 日本板硝子 はアメ リカの化学大手企業の元上席副社長 を社長 に迎 え入れた。執行役員の半数以上 も外 国人 とな り、

また 日産 自動車では取締役

9

人の うち

4

人が外 国籍 であ る。 コマ ツで は

2 01 2

年 まで に、 中国 にあ る主要子 会社

1 6

社 の トップ全員 を中国人 にす る方針 を決めた。横河電機 は

2 01 0

4

月、

シンガポール法人社長の トニー ・リー氏 を兼務 で本社 の執行役員に抜擢 し、工作機械 のツガ ミ も、 中国生産子会社 トップの唐東雷氏 を同年、

本社 の取締役 ・常務執行役員に登用 した。堀場 製作所 も同年、アメリカのイ ンテル元副社長 を

経営学の見直しと異文化教育の効用 47

専務執行役員 に迎 え入 れ、東洋エ ンジニア リン グ も

2 0 0 9

年、海外 イ ンフラ営業担 当の常務執 行役員 に、 イ ン ド人の幹部社員 を登用 した。野 村 ホールデ ィングで も

、2 01 0

年 に外 国人

2

名 を取締役 に就任 させ た。その うちの一人、 クラ ラ ・フアース氏 はロン ドン証券取引所 出身の女 性 である。

トヨタ自動車 は海外生産拠点の トップの

3

割 を外 国人 にす る計画であ り、伊藤忠商事 は海外 拠点 に占める現地人社 員の比率 を

3

割か ら

5

割 に引 き上げる。 ダイキ ンは中国でエ アコンの開 発者 を

1 6 0

人採用 し、パナ ソニ ックは 日本 国内 の 日本人採用 は厳選す る ものの、 グループ全体 で

1 1 0 0

人の外 国人 を採用 し、一部 の幹部候補 には 日本で最長

2

年の研修 を行 ない、 日本のマ ネジメ ン トの理解 を深 め させ る とい う。東洋エ ンジニア リングはイ ン ドで正社員の技術者 な ど

1 7 0

人程 度 を採 用 し、 グル ー プ全 体 で は

2 0 1 1

年 まで に採用 す る人員の85%が外 国人 になる。

フ ァース トリテイ リングは

2 01

1年 に新卒 で採 用す る

6 0 0

人の半数 を外 国人に し、楽天 も新卒 採用 の 1割か ら

2

割 を外 国人 にす る予定である。

一方、資生堂 は国籍 を問わず、職種 や職責、

実績 な どを世界共通の尺度で評価す る人事制度 を

2 01 0

年度 中 に導入 し、花 王 も経営幹部 の育 成 システムを 日本 と海外 で一体化す る。経営の グローバ ル化 をいち早 く進 めた旭硝子 では、す でに世界 中の社員 を国籍 を問わず公平 に評価す る制度 を取 り入れ、成果 を挙 げてい る。 また、

三菱商事 で は

1

0年 ほ ど前 か ら、外 国籍社員 を 本社 に出向させ る試み を始め、当初 は試験的に

1

0人か ら

2 0

人 を呼 び寄せていたが

、2 0 0 8

年 に 制度化 し

、3 0

人 に増 や して い る。 さ らに毎年 世界か ら40人か ら50人の優秀 な幹部候補 を集 めて、「グローバ ル ・リー ダー シ ップ ・プログ ラム

( GL P)

」 とい う研 修 を行 なってい る。 こ れ らを基 に、す で に

3 0 0

人以上 の優 秀 な外 国 籍社 員の人事管理のデー タベース を作成 してお り、海外 人材 のキャリアア ップ と登用 の準備が 整 いつつあ り、今後 もさ らに本社 出向の人数 を

(10)

48 マネジメント ジャーナル(3号)

拡大す るとい う

この ように、以前 は 「国際化」 とい うお題 目 のお飾 りに過 ぎなかった外 国人社員が、 日本企 業の戦力 として本格 的に登用 されつつあ り、職 場 に も変化が訪れている。た とえば、 日本経済 新 聞社 が

2 01 0

5

月 に

2 0

歳 以上 の男 女

1 0 0 0

人 を対象 に行 なった調査 では、職場 に外 国人が い る と答 えた回答者 が34%に及 び、その傾 向 は若年層 ほ ど顕著である。 また外 国人の役職の 割合 も多 く、 同 じ職場 の外 国人役 職が社 長 や 役 員や管理職 である割合 が

1 5 %

近 くであった。

外 国人社員が ます ます身近 にな り、 また 自分が その部下 になる割合が大 きくなっていることが わか る。

さて、 ナ ンシー ・ア ドラー (NancyAdler,

1 9 9 7 )

によれば、文化的多様性 は組織 にメ リッ トとデメ リッ トをもた らす。メ リッ トとしては、

多様性 によ り創造性が増大 し、広 い視野 と多 く の優 れたアイデ ィアが生 まれ、 よ り効果的な解 決策 と優 れた意思決定が実現す る。 その一方、

デメ リッ トとしては、多様性 によ り、組織 の一 体感が欠如 し、信頼性 の醸成が困難 とな り、 コ ミュニケー シ ョンが複雑化 し、合意形成が難 し く、意思決定に要す る労力 と時間が増大す ると

いっ。

日本経済新 聞社 の同調査で も同様の点が指摘 されている。た とえば、外 国人がいることで ど んなプラス面があ るか とい う問い に対 しては、

職場の活力が増 し切碇琢磨 して 自分 も磨 かれる とい う答 えが多 く見 られた。 またマイナスの面 に関 しては、以心伝心が難 しいことが指摘 され た。 ア ドラー の調査 は

1 9 9 0

年代 で あ るか ら、

それか ら10年以上 たった現在 で も同 じ問題が あることがわかる。つ ま り、職場の文化的多様 性 には一長一短があるが、海外 の売上比率が ま す ます拡大 し、現地 に生産拠点 を移す企業が増 える今 日では、外 国人社貞の活用が特別のこと ではな く、経営戦略の中心的課題 となって きて いることか ら、今後の職場 はます ます多様性が 広が ることは間違いない。その道営 をうま くや

るには、異文化力 を備 えた管理職、多様性 にコ ミッ トで きる トップ、英語力 を使 い こな し、外 国人 と日常的に机 を並べて切瑳琢磨 し、 タフに マネジメ ン トがで きる 日本人のグローバル人材 が必要不可欠 になるだろ う。 このためには、経 営学 は、 ます ます、 ヒ トとい うソフ トパ ワーを 重視す ることが求め られる。

おわりに

本論では、経営学 を見直す とい うテーマの基 で、経営 におけるモノか らヒ ト‑ のシフ ト、 ま た ソフ トパ ワーの重要性 に関 して論 じた。 さら に

、21

世紀 に ます ます グ ローバ ル化 す る ビジ ネスの現場で、異 なる価値観や言語や文化 的背 景の人々 と、協働す ることがで きる蓮 しい ビジ ネス リーダー を育てるために必須である異文化 教育の必要性 について、留学の効用 を中心 に論 じた。経営学 において、「ヒ ト」 をよ り重視 し、

多様 な価値観 を持つ人々 と共 に仕事 をす ること がで きる人材 を育てることが、内向 きにな りつ つある日本 を今一度、立て直す起爆剤 となるこ

とを信 じて、筆 を置 きたい。

[注]

1) Hofstedeの 日本語表記にかん しては、これま でホスステ ッ ドやホフテ‑ ドという表記 が多かった。 しか し、本論ではより原語に 近いと思われるホフステイ‑ ドを用いた。

[参考文献]

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Hofstede,Geert,Cultuz‑e'sconsequences,Sage Publications

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(11)

経営学の見直しと異文化教育の効用 49

Hofstede,Geert,CultuTe'sconsequences: Znternatl'onalDl'fferencesl'n workRelated

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浅川和宏 『グローバル経営入 門』 日本経済新 聞社、

2003年。

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林 吉郎 『異 文化 イ ンター フェイス管 理』 有斐 閣、

1985年。

船川淳志 『人気MBA講 師が教 えるグローバ ルマ ネジャー読本』 日経 ビジネス人文庫、2003年。

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馬越 恵美子 『心根 [マ イ ン ドウェア] の経営学』 新評論、2000年。

参照

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