2009,第20巻,第4号,337‑350
順列操作の実行的理解と概念的理解:「対称性の理解」を中心に
阪 脇 孝 子 中 垣 啓
(早稲田大学大学院教育学研究科)(早稲田大学大学院教育学研究科) 〆
本研究では,順列操作の発達に関して,順列を実際に作成する際の「実行的理解」と,|││目列の組織性の 発見に関わる「概念的理解」とを区別し,一般化された概念的即解の発達指標として「対称性の理解」(中 垣,1979)が適切なものであるかどうかについて検討を行った。研究1では,幼稚園年長児,小学校2年 生,4年生,6年生,中学校2年生を対象として,ブロックを用いて順列を作成する課題(実行的理解に関 する課題)と順列の総数予測(概念的理解に関する課題)および対称性の理解を問う課題等を実施した。
その結果の分析により,対称性の理解が確立されている場合,複雑な課題であってもより安定した遂行 成績が得られる傾向が示された。研究2では,さらに研究lの結果を元に,概念的理解の確立に至る前 の移行的年齢層であると思われる小学校5年生を対象としてM様の課題を実施した。その結果の分析に より,研究1と同様の結果が得られた。これらの検討から,対称性の理解が順列操作の一般化された概 念的理解の発達指標として適切であるということが示された。
【キー・ワード】順列操作,発達段階,概念的理解
問 題
順列')の課題は,組合せなど関連課題とともに確率概
念の理解の前提として取り上げられる課題であり.数学 教 育 の 中 で も 重 要 な 意 味 を 持 つ 課 題 で あ る 。 こ の よ う な 課 題 そ の も の の 重 要 性 に 加 え , 発 達 的 な 観 点 か ら も こ れらの課題はしばしば取り上げられてきた。
発 達 的 な 観 点 か ら 主 に 取 り 上 げ ら れ て い る 問 題 は , Piaget&Inhelder(1951/1975)の示した発達段階の検証 とそれに対する批判である。Piaget&Inhelder(1951/
1975)は,順列の発達段階を大きく3段階に分けて考察 した。第1段階(〜7,8歳)は順列課題の実施時に組織 性が見られない段階,第2段階(7,8歳〜11,12歳)は 部 分 的 に 組 織 性 が 発 見 さ れ る 段 階 そ し て そ の 後 に 組 織 性 の 一 般 化 に 基 づ き 総 数 の 予 測 が 可 能 に な る 第 3 段 階
(12歳以降,最終段階は14,15歳以降)である。
一方で,Piaget&Inhelder(1951/1975)が示した発達
段階に対する疑問に結びつくような結果がしばしば示さ れている。特に,順列およびその関連課題2)について指 摘されてきた問題の1つは,順列nPr(nPrはn種類の要 素からr個を用いる順列のことである)およびその関連 課 題 に お い て , 形 式 的 に 同 じ 構 造 を 持 つ 課 題 で あ る に も かかわらず,、やrなど数の変動に伴い,課題が達成で き る 発 達 的 時 期 が 異 な っ た り , 同 一 対 象 者 に 課 題 を 実 施 し た 場 合 で あ っ て も そ の 難 易 度 が 異 な る と い う 点 で あ る。例えば,Fischbein,Pampu&Minzat(1970),Barratt (1975)は,それぞれ順列,べき集合3)の課題で,用い る 要 素 の 数 が 少 な い 方 が 遂 行 成 績 が 良 い こ と を 示 し た 。このような問題を検討するにあたり,Scardamalia (1977)は,順列・組合せの関連課題で,要素の数が異 なる複数の課題を用い,8−10歳,10−12歳,成人の3群 を対象に,発達を情報処理量の観点からとらえようとし たPascual‑Leone(1970)などの理論に基づいて分析を 行った。その結果,各年齢で適切な 情報処理量が要求さ れる課題であれば,低年齢層であっても課題の解決が可 能 で あ る と い う こ と を 示 し た 。 そ し て , 情 報 処 理 要 求 が より大きい課題が解決できなかったとしても,必ずしも 課 題 解 決 に 必 要 な 論 理 構 造 が 獲 得 さ れ て い な い と は い え ないと考えたのである。
さらに,|│偵列およびその関連課題の研究では,樹形図
l)順列とは,異なるn個のものからrllililを取り出し,順序性のある 配列を作る場合の,その配列のことを指す(日本数学会,2007の 記 述 を 参 考 と し た ) 。 英 語 文 献 で は 順 列 n P r の 、 = r の 場 合 に permutati()、''の語が用いられ,、≠rの場合には"arrangement,,の 語が用いられている(e、9.Fischbein&Grossman,1997)。しかし 国内ではいずれの場合も「順列」の語が用いられるため,ここで も一貫して「順列」の語を用いる。
2)順列,組合せなど関連した課題をまとめて英語文献では"combi‐
natol・iall〕roblem,'combinatorialreasoningtask,,等と表現している ことがある(e、gFischbein&Grossman,1997,Scardamalia,1977)。
ま た 特 定 の 課 題 単 独 で 用 い ら れ る の で は な く 複 数 の 課 題 を 混 合 さ せて実施することも多い。そのためここでは関連課題として組合 せその他の課題の結果を含める場合がある。
3 ) べ き 集 合 と は , 与 え ら れ た 集 合 か ら 作 ら れ る , す べ て の 部 分 集 合 を要素とする集合のことである(H本数学会,2007の記述を参考 とした)。例えば,関連する課題として,Barratt(1975)は4種 類の食べ物の中から,1種類,2種類,3種類,4種類を取る異なる 方 法 を 全 て 考 え さ せ る よ う な 課 題 を 用 い て お り , べ き 集 合 の 考 え 方 を 要 す る 課 題 で あ る と い え る 。
I ー 一 ー ー ー 一 一
畳 B 1 つ
− − − − − − − 1 r 一 ー . ー ー 一 − 1
類の要素からr個を用いる組合せのことである)を作成 した場合,作成された全組合せの中で用いられている各 要素の数はすべて同じ数であるという関係(Figurel)
についての理解である。中垣(1979)では,5種類のあ めの中から2種類あるいは3種類を選択して買う場合の 組合せを対象児に作成させた後,作成された組合せを隠 し,全体の組合せの中で各種類のあめがそれぞれ何個ず つ入っているかを問う課題を実施した。さらに,数の予 測の理由や,予測と実際に作成された組合せにみられる 要素の数が異なっていた場合,どちらが正しいか確認す る質問などを行った。そして実際に作った組合せを見な くても,各要素が全て同数使用されていると回答するこ とができ,かつ実際に作成した組合せが誤っていて各要 素が同数になっていない場合も,それに惑わされること なく,確信を持って各要素の同数 性の関係を理解できる 場合,すなわち必然性の意識を伴って同数性の規則を理 解できている場合,対称』性の理解があると考えたのであ
る。Piaget&Inhelder(1951/1975)においては部分的に
対象者に要素の同数性を確認させるような質問を用いて いる場合があるが,体系的に質問されているわけではな く , さ ら に 実 行 的 理 解 と の 区 別 は 明 確 に は さ れ て い な い。中垣(1979)において必然性の意識を伴った同数』性 の理解としての「対称性の理解」を,組合せの概念的理 解の基準として明確に定義したといえる。そして中垣 (1979)は対称性の理解をはじめとした「概念的理解」の 指標と,実際に組合せを作成する際の作成方略としての「実行的理解」との関係を検討し,実行的理解と概念的 理解が必ずしも一致しない段階があることを示した。
順列・組合せなどの関連課題に限らず,数学的課題一 般 に お い て , 課 題 解 決 手 順 的 な 知 識 を 示 す 手 続 的 知 識
(proceduralknowledge)が必ずしも概念的知識(concep‐
tualknowledge)を伴っているとは限らないことが考察
されている(SilverJ986;Hiebert&Weame,1986など)。型4)の方略の教示を行うことにより10歳程度でも順列 の総数の計算ができるようになるとする研究(Fischbein eta1.,1970),数字などを用いて,順序'性をもった作成 方略を誘発するような手続きによる効果を示した研究 (White,1984)などが見られる。これらの研究において も,訓練などの効果によりPiaget&Inhelder(1951/1975)
が示したよりも早い年齢層で課題の解決が可能になると いう,「発達段階」を想定することの意義が疑われるよ うな結果を示している。
しかし,これらの研究には,1つの問題点があると思 われる。それは,順列およびその関連課題の理解度を検 討するにあたり,樹形図型およびそれに類する「作成方 略」の習得,あるいはそれらの方略に裏付けられた課題 の正確な遂行を主たる判断基準としている点である。中
垣(1979)は,順列の関連課題である組合せ5)の課題を 取り上げ,Piaget&Inhelder(1951/1975)の組合せ操作
の発達段階の記述が主に組合せの作成方略を中心とした ものであることについて批判し,作成方略の理解とは別 に,概念的理解の基準を想定する必要性を指摘した。そ して概念的理解の基準の1つとして,「対称性の理解」を用いた。対称′性の理解とは,組合せnCr(nCrはn種
畳﹄斜
4)樹形図型の方略とは下記の図のように順列を作成する際,n個の 要素の中から1番目に配列することができる要素の選択肢,2番 目に配列することができる要素の選択肢……r番目に配列するこ とができる要素の選択肢を順に枝分かれした図に記載する方略の ことである。
口 品 廿 呆 T ゴ 吉 ? L 言 葉 : : : : 麗 巽
曲…[i古一.古
r 番 、 の 配 列 の 選 択 肢5 ) 組 合 せ と は , 異 な る n 個 の も の か ら 異 な る r 個 の も の を , 並 べ る 順番を区別せずに選び出したもののことである(日本数学会,
2007の記述を参考とした)。
掴E4つ
一 一 一 一 一 一 一 ③
i AAAA
rL
j派
Figurel紐合せの対称性
(A,B,C,D,Eの5つの要素から2つを取る組合せを例にあげ,組合せが正しく作成 されていれば用いられる各要素の数はすべて同じであるという関係性を示した。)
− 1 L ‐
IljllljO一一一一つ圭つニ
ワ一一一句︒一一C二︐二
一 一
E
1
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一 一 一 ノ
一一
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唾 甲
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唾
合 計 す べ て の 要素を4回 使用
L些」L些」Lg且JL2−L二J
一つ一一1一
一︽B−rll﹄ 111j一一 一つ一一ワ︼一一︵し一rll﹄ 111j一一 一一一つ一一刈畳一一両型一r11llllj一つ一一QJ−−D−rll﹄
Figure2順列の対称催
( 赤 , 青 , 黄 , 緑 の 4 種 類 の ブ ロ ッ ク か ら 2 つ を 取 っ て 2 階 建 て の 建 物 を 作 る 課 題 を 例 に あ げ , 順 列が正しく作成されていれば用いられる各要素の数はすべて同じであるという関係性を示した。)
順 列 ・ 組 合 せ の 課 題 に つ い て も , 同 様 に , 作 成 方 略 に 示 されるような手│││自としての理解と,概念的な理解を│X別 して検討する可能性が考えられる。Batanero,Navarro‐
Pelayo,&Godino(1997),Fischbein&Grossman(1997)
のように,組合せなど関連課題を含め,誤答の傾向など から,裏付けとなる理解の基盤の存在を想定して検討を 行 っ た 研 究 も 見 ら れ る が , こ れ ら の 研 究 は 順 列 ・ 組 合 せ などの作成方略の理解や発達段階と関連づけたものでは ない。
順列について検討するにあたり,Piaget&Inhelder (1951/1975)による記述をより詳細に吟味してみると,
組合せと比較して,「作成方略」よりも「対称性の理解」
に結びつくような「組織性(system)」の発見を重視した
記述をしているように思われる。前述のPiaget&Inhel‐
der(1951/1975)による,順列の発達段階の第2段階(7, 8歳〜11,12歳)は,要素が3つの場合に組織的方略に より│││貞列が作成でき,要素が4つの場合に同様の組織性 が探究されつつある段階として記述されており,要素の 数の多寡にかかわらず,一般化した理解に基づき総数を 予 測 で き る 段 階 と は 区 別 し て い る の で あ る 。 つ ま り , Piaget&Inhelder(1951/1975)に従えば,要素の多寡に よ っ て 遂 行 成 績 の 差 が 生 じ る の は 一 般 化 さ れ た 形 で 順 列 の 組 織 性 が 理 解 さ れ て い な い た め で あ る と 考 え ら れ る の である。しかし,Piaget&Inhelder(1951/1975)では各 発達段階と順列の概念的理解との関係が明確に記述され て い る と は い え な い 。
順列においても組合せと同様,全体のlll自列の中で各要 素の使用数はすべて同じという性質があるが(Figure2),
こ の 性 質 に 関 す る 必 然 性 の 意 識 を と も な っ た 理 解 ( 対 称 性 の 理 解 ) を , 実 際 に 順 列 を 作 成 す る 手 順 と し て の 「 実 行的理解」と区別することによりPiaget&Inhelder
(1951/1975)よりも明確な分析が可能になるであろう。
ま た , 順 列 の 総 数 を 予 測 す る 課 題 を 用 い て い て も , Fischbeinetal.(1970)のように決まった手続きを教示し た後に,教示された手順そのままを適用することにより
総数の計算ができるようになることを概念的理解の指標 のように扱うことは不充分であろう。例えば,より初歩
的な算術計算の問題ではあるが,Baroody&Ginsburg
(1986)は効率的な計算手続きの実行が必ずしも概念的 理 解 に 基 づ い た も の と は い え な い こ と を 示 し て い る 。 正 しい計算手│││自の実行と,順列の概念的理解に基づいた正 しい総数予測とを区別する必要がある。その上で,前述 の順列操作の発達に関するPiaget&Inhelder(1951/1975)の記述を参照すれば,正しい総数予測そのものが 順列の概念的理解の指標となるのではなく,対称性の理 解を中心とした順列の概念的理解確立後に正しく総数予 測の規則を理解できるということが想定される。
これらのことから,順列においても中垣(1979)が組 合せにおいて用いた,「対称性の理解」を一般化された 概念的理解達成の発達的指標として想定し,実行的理解 および総数予測課題の理解との関係を検討することが適 切ではないかと考えられる。
このような問題意識に基づき本研究では次の2点につ いて検討を行う。(1)順列操作の発達的変化について,
研究lでlll自列作成のための組織的方略の理解(以下,「実 行的理解」とする)および総数予測課題の理解と「対称 性の理解」の概念との関係を軸に検討し,順列の一般化 された理解達成の発達的指標として「対称性の理解」が 適 切 な も の で あ る か と い う 問 題 に つ い て 検 討 す る 。 特 に,前述の検討から,要素数の多寡により実行的理解を 問う課題の遂行成績に差が生じるのは概念的理解の基盤 と し て の 対 称 性 の 理 解 が 欠 け て い る た め で あ り , 対 称 性 の理解が確立するに伴い,要素数の多寡にかかわらず安 定した実行が可能になるのではないかという仮説(仮説 1),また総数予測課題は対称性の理解の確立に裏付け られているという仮説(仮説2)を中心に検証する必要 があるだろう。(2)さらに,研究2では前述の発達段階 の う ち 第 2 段 階 に 該 当 す る 年 齢 層 , つ ま り 部 分 的 な 組 織 性 が 見 ら れ る 年 齢 層 に 焦 点 を 当 て た 調 査 で , 研 究 1 の 発 達的調査の結果を再検証する。また本研究の中心的な問
面
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|緑
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一 一 iユーー砦F1一 一 〜
︑一戸1
〆一︾
一F
│ 黄 I | 青 I
﹁一﹂赤一
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1階各色 3回使用
因 固 因 図 : 鯛
黄 黄 圭月 青
題ではないが,研究1は1979〜1980年の調査,研究2は 2006年〜2007年の調査で,実施時期が異なる。Piaget
&Inhelder(1951/1975)の発達段階によれば第二段階の 後半に該当する年齢層を比較することにより異なった調 査時期においても発達的特徴について安定性が見られる かどうかを検討することができるであろう。
研 究 1
研究1では幼稚園年長児から中学2年生までを対象と した調査で,順列を実際に作成する際の方略の理解であ る実行的理解,順列の規則性理解の指標としての対称性 の理解,総数予測課題のそれぞれの発達的傾向を示し,
また対称性の理解の発達と他の二者の発達との関係につ いて前述の仮説1,2を中心に検討を行う。
方 法
対 象 児 都 内 公 立 幼 稚 園 年 長 児 1 9 名 ( 記 録 の 不 備 に より平均年齢等算出できず。年長児は標準的には5‑6歳 相当) 公立小学校2年生21名(平均8.2歳,標準偏差 0.28歳),4年生21名(平均10.2歳,標準偏差0.34歳),
6年生20名(平均12.4歳,標準偏差0.19歳,ただし記 録不備の1名を除いて算出),公立中学校の2年生20名
(平均14.3歳,標準偏差0.18歳)。
調査の実施時期1979年12月〜1980年3月に第二 著者が実施し,分析は第一著者を中心に行った。
課 題 と 実 施 手 順 実 行 的 理 解 を 問 う 課 題 と し て , 3 〜 4色の色付きブロックを使い(nPrの、),2〜3階建ての 建物を作る(nPrのr)課題を用いた。さらにそれに関連 して概念的理解を問う課題を扱った。詳細は下記のとお りである。
①実行課題3P2:赤青,黄の3種類のブロックを複 数個,種類別に対象児の前に並べる。そのうちの2つを 使って,まず実験者が対象児の前でブロックを2個縦に つなげたものを2階建ての建物の見本として見せる。そ して同様に2階建ての建物を作るように指示する。ただ し,1階も2階も同じ色の建物を作ってはいけないこと,
違 っ た 建 て 方 は 全 部 作 る こ と を 注 意 し , 対 象 児 の 実 行 中,必要に応じて作成上の注意を繰り返す。完成すると 6 通 り で き る 。 重 複 や 条 件 に 反 し た 建 物 を 作 っ て い る 場 合,それらを見つけて取り除くよう対象児に指示する。
気 が つ か な け れ ば , 面 接 者 が 指 摘 し て 取 り 除 く 。 ま た 違った建て方が全部作れていない場合は,不足分のうち の1つだけを面接者が作って,完成していないことを教 える。そして,いずれの場合も,今度はよく考えて,順 序 よ く 作 る よ う に 教 示 を 行 っ た 上 で , 2 度 目 の 実 行 を 行 う 。 ま た 1 回 目 で 成 功 し て い る が 最 高 レ ベ ル の 方 略 ( 後 述 の 方 略 分 類 を 参 照 ) で 作 成 し て い な い 場 合 , よ り 順 序 よく作るようにという教示のみを行い,2度目の実行を 行 う 。 原 則 と し て 最 高 レ ベ ル の 方 略 で 成 功 し て い る 場 合
Iま,2度目の実行を行わず次の課題を実施する。ただし 試行錯誤が多い場合など,理解の程度を確認するために 2度目の実行を行った場合がある。
②総数の保存課題:3P2の数を確認した後,同じ3P2 の課題でもブロックを積み上げるのではなく横に並べて 模様を作る場合に総数が変化するか,またブロックの種 類(nPrの、)は変えず,各色のブロックの数を増やした 場合に順列の総数が変化するかどうかを問う。
③実行課題4P2:緑も含めて4種類のブロックで違っ た2階建ての建物を作るよう指示する。3P2と同様の作 成上の注意を行う。完成すると12通りできる。
④4P2の対称性の理解に関する課題:作成された4P2 の建物を隠して,1階が赤,青,黄,緑になっている建 物はそれぞれ何通りできるかを質問する。ただし,作成 時 に , 1 階 の 色 を そ ろ え て 作 っ た 場 合 は , 実 行 時 の 記 憶 による回答を防ぐため,2階の色で質問する。さらに,2 階(または1階:最初の質問と反対の階)が緑の建物に ついても質問する。数が正しいかどうかにかかわらず,
す べ て 同 数 で あ る と い う 予 測 を し た 場 合 に は そ の 理 由 を 質 問 す る 。 順 列 が 完 成 し て い れ ば , す べ て 3 通 り で 同 数
になるはずである(Figure2)。ここで対象児が,確信を
持ってすべての要素が同数であると考えているかどうか を確認するため,中垣(1979)の手続きに準じて同数の 予測をしていたとしても,作成してある建物を確認させ て,予測と実際に作成してある建物とどちらが正しいか を 質 問 す る 。 対 象 児 が 作 成 し た も の が 誤 っ て い た 場 合 は,作成したものをそのまま見せ,また対象児が作成し た も の が 正 し か っ た 場 合 は , 実 験 者 が 同 数 で は な い 状 態 に 変 え た も の を 見 せ て 数 を 確 認 さ せ る 。 こ の 段 階 を 経 て なお,同数の予測の方を正しいと判断した場合のみ,対 称性の理解があると考える。さらに,確認した建物の誤 り に 気 が つ い た 場 合 , そ れ を 修 正 さ せ る 。 同 数 予 測 を し ていない場合は原則として対称 性の理解がないと考え,以降の質問を省略した場合がある。
⑤総数予測課題5P2.6P2:もう一度,4P2実行の数を 確認した後,黒も含めて5種類のブロックで2階建てを 作 っ た 場 合 に , 数 の 変 化 と そ の 理 由 を 問 う 。 「 全 部 で 何 通り」というタイプの回答も可とする。原則として正解 の場合のみ,白を含めて6種類のブロックで2階建てを 作った場合についても質問する(それぞれ8通り,10通
り増えることになる)。
⑥実行課題3P3:3P2の場合と同様の実施上の注意を 行う。完成の場合,6通りできる。
⑦総数予測課題4P4,5P5:3P3実行の数を確認した後,
緑 も 含 め て 4 種 類 で 4 階 建 て を 作 っ た 場 合 の 数 の 変 化 と 理由を問う。「全部で何通り」というタイプの回答も可 とする。正解の場合のみ,白も含めて5種類で5階建て を 作 っ た 場 合 , 4 種 類 で 4 階 建 て の 時 と 比 較 し た 数 の 変
化とその理由を質問する(それぞれ18通り,96通り増 えることになる)。
⑧実行課題4P3:3P2の場合と同様の実施上の注意を 行う。完成の場合,24通りできる。原則として3P2と同 様の条件で2回目の実行を行っている。
さらにここでは1回目の後に⑨の課題を挿入した。実 施状況によっては,2回目の実行の後に⑨の課題を挿入
した。
⑨4P3の対称性の理解に関する課題:作成された4P3 の建物を隠して,2階が赤,青,黄,緑になっている建 物はそれぞれ何通りできるかを問う。また,3階,1階,
2 階 が 赤 に な っ て い る 建 物 は そ れ ぞ れ 何 通 り で き る か を 問う。完成していればすべて6通りで同数になるはずで ある。以降の手続きは4P2の対称性の理解に関する課題 とほぼ同様である。原則として4P2で対称性がないと判 断された場合はこの質問を行わなかったが,参考'情報と して質問した場合もある。
課題②は上級の学年では省略した場合がある。また課 題⑥,⑦,⑧はこれ以前の課題の実施状況により,回答 が困難と思われた場合は省略した場合がある。
順列の作成順や並べ替え,その他回答内容は調査用の 用紙に記録した。
結果と考察6)
実行的理解に関しては,3P2は課題の理解を確実にす るための練習的意味を持つ課題であることから,ここで は4P2,3P3,4P3の結果を提示する。また総数の保存課題 に関しては中垣(1979)で示された結果を基に考えると,
順列の組織性が全く見出されない発達段階(第一段階)
か ら , 部 分 的 な 組 織 性 が 見 ら れ る 段 階 ( 第 二 段 階 ) へ の 移行と関連性があることが推測されるが,本研究では,
前 述 の よ う に 一 般 化 さ れ た 理 解 の 達 成 ( 第 三 段 階 ) の 発 達 的 指 標 に 焦 点 を 当 て て 検 討 す る た め , 総 数 の 保 存 課 題 に関する分析は省略した。
1)4P2,3P3,4P3の実行的理解について
方略レベルの分類は,全課題を通じて,最も高度な組 織的方略についてCS(CompletelySystematic),CSとは 異なるが一貫した組織性が見られる方略についてCS',
部 分 的 に 規 則 性 が 見 ら れ る が , 変 則 が 多 か っ た り 一 貫 性・合理性が低いもの,完成せず中途半端に終わってい るものについてN−CS(NotCompletelySystematic),規
則 性を見出すことが困難なものについてNS.(NoSys‐
tem)の名称を用いた。4P3のみ,N−CSに該当する方略 を さ ら に 3 段 階 に 分 類 し , よ り 高 次 で あ る と 思 わ れ る 順 にN−CS(IⅡ),N−CS(II),N−CS(1)の名称を用いた。
各 課 題 の 方 略 分 類 と 境 界 的 な 例 の 判 断 基 準 は 下 記 に 示 し たとおりである。
4P2の場合
①CS:赤青,赤黄,赤緑,青赤,青黄,青緑,…の
ように1色を固定して残りの色を順序良く組合せていく 方略。②CS′:赤青青赤,黄赤,赤黄,…などのように2
色組を作って順序を入れ替えるもの,あるいは赤青,赤 黄 , 赤 緑 , 青 赤 , 黄 赤 , 緑 赤 , 青 黄 , 青 緑 , 黄 青 , 緑 青,黄緑,緑黄のように,1色を決めて上,下に配置,残りの色を順序よく組合せるなど,CSの考え方とは異 なるが一貫して組織性が見られる方略。
③N−CS:部分的に規則性が見られるが,完成せず中 途半端に終わっているものや,変則が大きいもの。CS′
の よ う に 2 色 組 を 作 っ て 順 序 を 入 れ 替 え る が , 全 て の 2 色組が作れていない例などが該当する。CS,CS'との区 別基準として,原則としてCS,CS'は作成規則が一貫し ており実行に成功しているものを分類した。CS,CS'の 一貫した規則性に基づけば実行には成功するはずだから である。ただし,重複など実行の誤りが全体で1個以内 で前後の作成順あるいは配列順がCS,CS'の規則に照ら し て 大 き な 乱 れ が な い 場 合 , 厳 密 に い え ば 失 敗 で あ る が 不 注 意 に よ る も の と 考 え ら れ る た め , 成 功 と み な し て CS,CS'に分類した。それ以上の変則や誤りが発生して いる場合をN‑CS型とした。
④N、S、:規則性を考慮してl色を固定するという考 え方が見られないものや一貫した方略が見出されないも の。
3P3の場合
①CS:4P2同様。
②CS′:赤青黄,赤黄青,青赤黄,黄赤青,青黄赤,
黄青赤,…のように1色を決めて上,真ん中,下に配置,
残りの色を順序よく組合せる方略。
③N−CS:l色を固定する考え方が見られないが,一 貫して規則的に1色ずつずらす方略。
④N、S、:一貫した組織性を見出すことが困難である もの。あるいは1色ずつずらして作成していても中途半 端に終わっているもの。
3P3は作成数が少ないため,偶然でも実行に成功しう る。そのため,方略には全体的に一貫性のあるものを分 類した。
4P3の場合
①CS:赤青黄,赤青緑,赤黄青,赤黄緑,赤緑青,赤 緑黄,…などのように,l色を固定,2色目も固定して残 りをlll自序よく組合せていく方略。最初に1階で緑を固定 して,2階に黄,青,赤,黄,青,赤を順番に当てはめ,
3 階 に 残 り の 色 を 当 て は め る な ど , 配 列 は 異 な る が C S 的考え方の裏付けがあると思われる例もここに含めた。
6)統計はSPSS12.0J,SPSSExactT1ests12.0を用いた。
5(26.3) 7(33.3) 14(66.7) 9(45.0) 13(65.0)
②CS′:1色を固定し,残り2色を4P2のCS'と同様 の方略により組合せていくもの,あるいは1色を決めて 上,真ん中,下に配置,残りの色を順序よく組合せるな ど,CS的考え方とは異なるが一貫して組織性が見られ る方略。CSとCS'の配列が混合している場合はCS'に 分類した。
③N−CS(Ⅲ),:1色を固定する考え方が見られるが,
2色目以降が必ずしも組織的ではないもの。
④N−CS(Ⅱ):部分的に規則性が見られるが,中途半 端に終わっているものや,変則が大きいもの。原則とし て,N−CS(Ⅱ)型とCS,CS'を区別する基準は4P2にお いてN−CSとCS,CS'を区別する基準とほぼ同様であ る。ただし4P3は作成数が多いため,部分的な変則が発 生しても,その前後の作成順や配列順が一貫していれば CS,CS'に分類した。また,N−CS(II)型とN−CS(IⅡ)
型を区別する基準として,特定の色を固定してできる順 列が各色6パターン・4色分作成できるが,そのうちの 少なくとも1色分は全6パターンを作成できており,残 りの3色分もすべて5個以上作成しており,かつ配列の 混乱による重複が全体で1個までのものをN−CS(Ⅲ)
型とし,それ以上の変則が見られるものをN−CS(Ⅱ)型 とした。
⑤N−CS(1):3色組を作ってその中で色をずらして
いくなど,1色を固定する考えをもっていないが何らかの規則性が見出せるもの。
⑥N、S,:規則性を見出すことが困難であるもの。
な お , 途 中 で 並 べ 替 え を し た 結 果 方 略 が 変 わ っ た 場 合,原則としてより高次な方略を方略レベルとして採用 した。また,初回でCS方略を用いた者以外2回実行を 行ったが,2回の実行のうちより高次なものを方略レベ ルとして採用した。ただし3P3の実行課題においては,
全部作成しても6個しかないため,偶然でもCS方略の ような配列順になることがありうる。そのため,(1)1回 目の実行でCS方略の配列になったものの,試行錯誤が 多かったため,方略理解の有無の確認のため2回目の実 行を行い,2回目でも試行錯誤が多かったり,より低次 の方略を示す配列であった場合,(2)1回目の実行で試 行錯誤が多くCS以外の低レベル方略を用い,2回目の実 行の際もCSの配列になっても,度重なる作り変えの試 行錯誤があるなど,実行時の様子の記録を参照して方略 の理解が伴っているとは考えづらかった場合,Iまより低 次の方略に分類した。(1)により対応したのは年長2名 (10.5%),2年生2名(9.5%)で,いずれもN、S,に分類 した。(2)により対応したのは年長1名(5.3%)で,い ずれもN、S、に分類した。
4P2,3P3,4P3のそれぞれの方略レベルについて人数分 布はTable1,2,3に示した。前述のように原則として1 回目でCS方略の場合以外は2度目の実行を行ったが,
Tablel研究1422実行方略と課題の成否
mable2研究I3R3実行方略と課題の成否
実行1回 のみCS′
N 、 S 、 N − C S C S ′ CS
実 行 省 略 方略不明 0(0)
1(4.8) 4(19.0) 7(35.0) 2(10.0)
0(0)
0(0)
0(0)
3(15.0) 4(20.0)
畷雌雌雌帆
11(57.9) 5(23.8) 2(9.5)
0(0)
0(0)
3(15.8) 8(38.1) 1(4.8) 1(5.0)
1(5.0)
注.数字は人数。()内の数字は9fを示す。CS,CS'は一貫した規則性により実行しており,不注意によると思われる失敗を除けば 成功したものを分類。N−CSは確実性がより低いが規則性を持った作成をしており,基本的に成功したものを分類。N、S.は方 略に一貫性がなく,失敗もしくは成功していても試行錯誤的要素が強いものを分類。
注.数字は人数。()内の数字は%を示す。CS,CS'は一貫した規則性により実行しており,不注意によると思われる失敗を除けば 成功したものを分類。N‑CS,N、S・は方略に一貫性がなく,失敗もしくは成功していても試行錯誤的要素が強いものを分類。
3(15.8) 1(4.8)
1(4.8)
年長 2年生 4年生 6年生 中2
N 、 S 、 N − C S C S ′ CS
3(15.8) 3(14.3) 3(14.3) 1(5.0) 0(0)
2(10.5) 7(33.3) 14(66.6) 18(90.0) 18(90.0) 11(57.9)
8(38.1) 3(14.3) 0(0)
2(10.0)
0(0)
2(9.5)
0(0)
1(5.0)
0(0)
注.数字は人数。()内の数字は%を示す。方略と成功・失敗の関係については'n1blelと同様。
'mable3研究jI4R7実行方』際と課題の成否
、001,4P3: <、001;ただし実行1回の場合はCS'のみ分析 に含めた)。
2)対称性の理解について
4P2,4P3それぞれの課題の対称性の有無について,学 年ごとの人数分布は'mable4で示した。原則として、調 査者の手続き誤りなどにより同数予測後の確認質問に不 備 が あ っ た 場 合 は 対 称 性 の 有 無 に つ い て 判 断 で き な い も のと考えた。ただし小4で1名,4P2の対称性理解の課題 で同数予測の確認質問に不備があったものの,正しい数 で 同 数 予 測 を 行 っ て お り , 理 由 説 明 も 正 し く , さ ら に 4P3の対称性理解の課題で同数予測後の確認質問にも正 しく答えている例があり,4P2でも対称性ありとみなし て分析に含めた。小2以下と小4以上の二群を比較する と4P2の対称性を理解していない者の人数が小2以下で 有意に多かった(Fisherの直接確率検定:P<、001)。4P3 の対称性有無に関しては,4P2の対称性に関する質問の lEll答状況などから判断して質問を省略したため,年長 児,小2では質問した人数そのものが少なくなっている。
中2では90%に対して質問をしているが,質問をした 対象児のうち対称性理解がある者は半数以下である。
3)方略の安定性と対称性の理解との関係
次に,冒頭で示した仮説1を検証するため,4P2と4P3 および3P3と4P3で一貫して組織的な方略を用いる傾向 と 対 称 性 の 理 解 と の 関 係 に つ い て 分 析 を 行 い , 結 果 は
実 行 省 略 方 略 不 明
実 行 1 回 の みCS'以外
実 行 1 回 のみCS′
N、S、N−CS(1)N−CS(Ⅱ)N−CS(IⅡ)CS′ CS
Tkible4研究14P2,4Rヲ対称性の有無
15(79.0) 11(52.4) 3(14.3) ()(0)
1(5.0)
2(10.5) 1(4.8)
3(14.3) 1(5.0)
1(5.0)
0(0)
0(O)
()(0)
0(())
4(20.0)
畷峨峨雌軸
0(0)
0(0)
1(4.8)
0(())
0(0)
2(10.5) 4(190)
2(9.5)
2(10.0) 1(5.0)
O(0)
2(9.5)
()(0)
2(10.0) 1(5.0)
0(0)
0(0)
5(23.8) 5(25.0) 6(30.0)
0(0)
0(0)
4(19.0) 9(45.0) 6(30.0) 0(O)
3(14.3) 3(14.3) 1(5.0)
0(0)
l(5.3) l(4.8) l(4.8) 0(0)
0(0)
年長 2年生 4年生 6年生 中2
時 間 的 制 約 や そ れ 以 前 の 課 題 の 回 答 状 況 に よ る 判 断 な ど から1回目でCS方略でなくても2度目の実行を行わな かった場合があり,区別して記載した。方略レベルとし て,CS,CS'は作成の規則性に一貫性があり,規則どお りに作ることにより必ず成功が見込める方略であり,そ れ以下の方略は,一貫性に欠け,実行の成功が保証され ない方略である。そのため前者を「高レベル方略」,後 者を「低レベル方略」として方略を二分した。さらに学 年について,2年生以下は,Piaget&Inhelder(1951/
1975)の発達段階に従えば第一段階および第二段階への 過渡期にあたり,一貫した実行方略の使用が見込めない 年齢層である。また4年生以上は第二段階および第三段 階最終期への過渡期にあたり,実行的理解に関しては確 立されつつある年齢層である。そのため,Piaget&
Inhelder(1951/1975)の発達段階と一致する結果が得ら れるかどうかを検証するために,2年生以下と4年生以 上で使用方略レベルに差が見られるかどうか検討を行っ た。なお,これ以降も同様の理由により方略をCS,CS 以上とそれ以下,また学年は2年生以下と4年生以止に 二分して分析を行った。いずれの課題でも2年生以下で は,低レベル方略の出現数が多く,4年生以上では高レ ベル方略の出現数が多い。小2以下と小4以上の二群で 比較すると小4以上の方が有意に高レベル方略を採用し ていた。(Fisherの直接確率検定:4P2:P<、001,3P3: <
0(O)
4(19.0) 11(52.4) 10(5().0) 14(70.0)
注.数字は人数。()内の数字は%を示す。2年生で1名.4P2で対称性があったが4P3の対称性質問を行わなかった対象者がいる。
4P3の対称性理解 4P2の対称 性理解
18(94.7) 16(76.2) 9(42.8) 10(50.0) 6(30.0)
対 称 性 あ り 対 称 性 な し 判 断 で き ず 対 称 』 性 あ り 対 称 性 な し 質 問 省 略 l(5.3)
5(23.8) 9(42.8) 5(25.0) 11(55.0)
18(94.7) 16(76.2) 7(33.4) 9(45.0) 2(10.0) 0(0)
0(0)
5(23.8) 6(30.0) 7(35.0)
Table5に示した。方略安定'性に関しては,対象となる 2課題の両方でCS'以上の方略を用いている場合,方略 の安定性があると考え,いずれか一方の課題で2度の実 行を行った上で低レベル方略と判断された場合は,他方 の実行を省略していても安定性なしとみなして分析に含 めた。実行を1回しか行っていないが,CS'方略であっ たものは,高レベル方略使用とみなして分析に含めた。
また対称性の理解に関しては,4P2と4P3の両方の課題で 理解がみられた場合に対称'性ありに分類し,少なくとも 一方の課題で対称性の理解がなかった場合は,他方の課 題 の 省 略 ・ 判 断 不 可 の 場 合 も 対 称 性 な し の 分 類 に 含 め た。上記記述以外の課題の省略により,安定性の有無も しくは対称性理解の有無を特定しきれないとみなした場 合は分析に含めなかった。
全体の結果に対して,4P2と4P3で方略の安定性と対称 性理解との関係を検討したところ,対称 性の理解がある 場合に有意に方略の安定'性がある人数が多いという結果 が得られた(Fisherの直接確率検定: <、001)。全体的 に対称性があるとみなされる人数が少ないため,学年別 の検定は行わなかったが,6年生以上では対称性がない 場合であっても,方略に安定'性がある率が50%前後で あり,対称性の理解がないと方略の安定性が確立されて いないというわけではない。しかし,対称性がある場合 にはより確実に方略は安定したものになっているといえ る。3P3と4P3で,同様に方略の安定性と対称性理解と の関係を検討したところ,対称性の理解がある場合に有 意に方略の安定性がある人数が多いという結果が得られ た(Fisherの直接確率検定: <、001)。学年別では,6年
生で対称性の理解がなく方略に安定性がある率が40%
程度であるが,おおむね4P2と4P3の方略安定性と同様 の傾向が見られる。
4)総数予測課題と対称性の理解について
5P2と6P2,4P4と5P5の総数予測課題の正答者数と正答 率をTable6に示した。ここでは理由説明も含めて考慮 し2問とも正しい判断をしている回答を正答とした。回 答した数値が正しくても理由説明の論理性が誤っている 場 合 は 誤 答 と し た 。 逆 に 正 し い 論 理 に よ り 理 由 説 明 を 行っている場合はケアレスミスなどにより回答の数値そ のものが誤っていても正答とみなした。5P2と6P2の総 数予測課題においては,実行方略と同様,4年生以上か ら正答率が高くなる。ただし6年生は4年生より正答率 が低くなっている。5P2と6P2の総数予測課題において6 年生の正答率が4年生より低かった点についてより詳細 な検討を行うため,5P2と6P2の総数予測課題に関する誤 答の内容分析を行った。赤,青,黄,緑の4種類のブ ロックを用いて4P2を作成した後,黒を増やして5P2を 作成した場合の総数を予測する課題について,6年生で 多く見られた種類の誤答は,まず①「黒以外の他の色と の 組 合 せ を 考 え て さ っ き よ り 4 通 り 増 え る 」 と い う 種 類 の回答で,順序の変更を考慮し忘れたものの,正答に近 い誤答であるといえる。さらに②「(4P2では1階もしく は2階の色が)どの色も3つずつあったから3つ増える」,
「(4P2では1階と2階を合わせて)どの色も6つずつあっ たから6つ増える)」,「3P2で6,4P2で12だから5P2は18 で6つ増える」のように,前の課題で見出された規則性 を誤用した回答があげられる。これらに分類される回答
mable5研究切実行方略の安定性と対称催の理解との関係
年 長
対 称 性 の 理 解
+
十
2年生
十
4年生
十
6年生
中2 +
全体 十
4P2と4P3の方略安定性
十
0(0)
0(O)
0(O)
0(0)
4(23.5) 5(29.4) 5(26.3) 9(47.4) 6(31.6) 10(52.6) 15(16.8) 24(27.0)
0(0)
16(100)
O(0)
18(100)
0(0)
8(47.1) 0(0)
5(26.3) l(5.3) 2(10.5) l(1.1) 49(55.1)
合計 0(0)
16(100)
0(0)
18(100)
4(23.5) 13(76.5) 5(26.3) 14(73.7) 7(36.9) 12(63.1) 16(17.9) 73(82.1)
3P3と4P3の方略安定性
+
0(0 0(0
0(0)
15(100)
0 ( 0 ) 0 ( 0 ) 0(0)16(100)
3(17.6) 5(29.4) 5(26.3) 8(42.1) 6(30.0) 10(50.0) 14(16.1) 23(26.4)
1(5.9)
8(47.1) 0(0)
6(31.6) 1(0.5)
3(15.0) 2(2.3)
48(55.2)
合計 0(0)
15(100)
0(0)
16(100)
4(23.5) 13(76.5) 5(26.3) 14(73.7) 7(35.0) 13(65.0) 16(18.4) 71(81.6) 注.数字は人数。()内の数字は鼎を示す。方略安定性は,2つの課題のいずれもCS'以上の高レベル方略を用いた者を+,
それ以外を−とした。対称性の理解については,4P2と4P3両課題で対称性ありと判断された場合に+,少なくともいず れか一方で対称性なしと判断された場合に−とした。課題の省略などにより判断できない場合は分析から除いた。
mable6研究I総数予測課題正夢者数
年長 2年生 4年生 6年生 中2
5P2,6P2 正 答 誤 答 l(5.3)
1(4.8)
10(47.6) 3(15.0) 15(75.0)
18(94.7) 20(95.2) 11(52.4) 17(85.0) 5(25.0)
4P4,5P5
正 答 誤 答 質 問 省 略 0(0)
0(0)
0(O)
0(0)
2(10.5)
16(84.2) 20(95.2) 20(95.2) 20(100)
17(89.5)
3(15.8) 1(4.8) 1(4.8)
()(0)
0(0)
注.数字は人数。()内の数字は%を示す。原則として5P2と6P2のlIIIj課題,4P4と5P5のIIilj課題にilI答したものを正答音とした。
中2で1名4P4で正解したが5P5を質問しなかった例があり,分析からは除いた。
Iま6年生でいずれも6名(30%)である。4年生につい ては,①に分類される回答は5名(23.8%)であり,さ らに種類は異なるが正答に近い誤答として,①'4P2か ら5P2の総数予測については正答しているが5P2から6P2 の総数予測のみ誤っている者が1名(4.8%)である。4
年生と6年生で,(正答)+(比較的正答に近い誤答①,
①')を含めた人数を比較すると4年生で16名(76.2%)
と6年生で9名(45.0%)となり,やはり4年生の方が 多い。一方,4年生で②に分類される回答は1名(4.8%)
であり,②がより6年生に特徴的な誤答であるといえる。
②のような種類の誤答は,実際に4P2と5P2を比較した
場合の数の差を検討するためには不適切な考え方ではあ るものの,ある種の規則性に従って考えたものである。このことから考えると,6年生は,見出された規則性を 誤って一般化したために結果的に誤答したのに対し,4 年生はもっぱら頭の中での実行に基づいて回答したため に正答することができたものと思われる。4年生から6 年生にかけて,実行方略への依存から概念的規則性への 依存と切り替わっていくことを示しているように思われ る。4P4と5P5の総数予測課題では2問とも正解したも のは中2の2名のみである。単なる計算の誤りではなく,
論理性を含めて正誤を判断していることからも考えて。
実行的理解と比べて,安定した理解の発達は遅れる傾向 にあるといえる。この2名はいずれも,4P2と4P3で対称
』性の理解があった。また,対称 性の理解と,5P2および
6P2の正答との関係をT1able7に示した。ここでは4P2と 4P3両方で対称性の理解が見られた場合を対称性の理解 あ り と 考 え た 。 冒 頭 で 示 し た 仮 説 2 を 検 証 す る た め ,5P2,6P2の総数予測課題の正答と対称性理解との関係を
検討したところ,対称性の理解がある場合に有意に総数 予測課題の正答者が多いという結果が得られた(Fisherの直接確率検定, =、003)。対称性の質問省略の場合の
分析に含む基準は3)の場合と同様である。5 ) 考 察
以上の結果から,全体的傾向として年長,2年生では 実行方略に安定 性がなく対称性もなく,4年生から除々
に実行方略の安定性,対称性の理解を獲得し,6年生,
中2頃では用いる要素の数が増えても,実行方略が安定 す る 傾 向 に あ る と い え る 。 実 行 的 理 解 に 関 し て は ,
Piaget&Inhelder(1951/1975)が用いたnPrで、=rの場
合とは課題が異なるため,直接的に比較することはでき ないが,方略のみの点から比較すればPiaget&Inhelder(1951/1975)が示したよりもやや早めに一般化がはじ まっているといえる。しかし対称 性の理解について4P3 の対称性に関しては中2になっても対称'性の理解を示す 者は半数をこえず,同学年で4P3での高レベル方略使用 率が80%(実行1回でCS'であった者を含む)であった ことを考えると,依然低いレベルにとどまっているとい える。さらに,総数予測課題は中2になってもまだ一般 化された形での理解が達成されていない。このように概 念的理解を指標として考えた場合,Piaget&Inhelder
'mable7研究I5R2,622の総数予測調ノ題正答と対称性の 理 解 と の 関 係
総 数 予 測 の 理 解 合 計 対 称 性 の 理 解 十
年長 +
十
2年生
十
4年生
+
6年牛:
中2 十
全 体 十
O ( 0 ) 0 ( 0 ) 0 ( 0 ) 1(5.6)17(94.4)18(100)
0 ( 0 ) 0 ( 0 ) 0 ( 0 ) 1(5.3)18(94.7)19(100)
3(14.3) 7(33.3) 2(10.0) 1(5.0)
6(30.0) 9(45.0)
2(9.5)5(23.8)
9(42.9)16(76.2)
3(15.0)5(25.0)
14(70.0)15(75.0)
1(5.0)7(35.0)
4(20.0)13(65.0)
11(11.2)6(6.1)17(17.3)
19(19.4)62(63.3)81(82.7)
合計30(30.6)68(69.4)98(100)
注.数字は人数。()内の数字は%を示す。総数予測は5P2,6P2とも 正答の者を+,それ以外の者を一とした。対称性の理解につい ては,記号の意味は'E1ble5と同じ。
(1951/1975)が示した,順列発達の最終段階が14,15 歳から始まるという年齢基準と矛盾しない結果が得られ たといえる。また,実行方略の安定性と対称性の理解に は有意な関係が見られた。ただし方略の安定性があるか らといって対称』性があるとは限らず,ここで扱った課題 の 方 略 の 安 定 性 は 対 称 性 の 理 解 に 先 行 す る と 考 え ら れ る。さらに,総数予測課題と対称性の理解にも有意な関 係がみられ,かつ総数予測課題の一般化された理解の発 達が実行的理解より遅れることから,総数予測課題の発 達は対称性の理解の確立に裏付けられると考えられる。
研 究 2
研究1の結果を考慮して,実行方略をほぼ一般化して おり,かつ対称 性の理解の確立に先立つ移行的年齢層と 考えられる小学校5年生を研究2であらためて取り上げ,
研究1の結果を再検証する。研究2で示す調査は,子ど も同士の2人組で課題について話し合う相互作用前後の 認知的変化を検討した調査の事前テストとして実施した ものであるが,研究1では,後半の課題の省略が多いた め,研究lの結果を検証するために,研究1との共通部 分を取り上げるものである。
方 法
対 象 児 都 内 の 公 立 小 学 校 で 同 一 学 級 に 属 す る 5 年 生 38名および補足的に募集した小学校5年生9名を合わせ て合計47名(平均11.1歳,標準偏差0.32歳)である。
なお,当初の参加者は48名であったが,1名は筆記式課 題の回答に不備があり,さらに転校のため個別面接調査 には参加しなかったため,下記の全課題を実施した47 名のみを分析対象とした。
調 査 の 実 施 時 期 同 一 学 級 所 属 の 対 象 者 に 関 し て は 2006年10月〜11月にかけて,補足募集の対象者につい ては,2006年12月〜2007年1月にかけて,第一著者中 心に調査を実施した。
課題と実施手順課題には筆記式で実施したものと個 別面接により実施した課題がある。課題詳細と実施手順 は下記のとおりである。
個別面接課題は,研究1で実施したブロックの課題と
│司様で,一部課題を追加,削除して再編成した。詳細は 下記のとおりである。①実行課題4P2,②総数予測課題
5P2,6P2,③総数予測課題4P3,④実行課題4P3,⑤4P3
の対称性の理解に関する課題,⑥総数予測課題4P4・そ れぞれの課題実施時の手続きは,研究1の場合とほぼ同 じである。ただし,本研究では対象者が小学校高学年で あるため,実行時の注意や確認の手続きは簡略化した部 分がある。また筆記式課題として,数字カードの順列,組合せ,場合の数に関して実行的理解を問う課題と,概 念的理解を問う課題との2タイプの課題を実施した。個 別面接課題は,同一学級に属する対象児童に関しては,
筆記式課題を実施した翌日〜約1ヶ月後の期間中に順次 実施した。補足で募集した対象児童では,原則として筆 記式課題の直後に面接課題を実施した。ただし1名の み,児童の都合により筆記式課題の約2週間後に面接課 題を実施した。なお,最初に個別面接を実施した5名に 関しては①と②の間に4P2の対称性の理解に関する課題 を実施し,ここで対称性の理解があると思われた者の み,4P3の対称性の理解に関する課題を実施したが,時 間的制約の問題に加え,4P2のように要素の数が少ない 場合は高学年では概念的理解ではなく実行時の記憶に基 づいて回答することも可能であると思われたため,以降 はこの課題を省略した。記録は研究1と同様,記録用紙 に順列の作成順や並べ替え,回答内容を記録したほか,
ビデオとICレコーダーを用いた。
結果と考察
ここでは,研究1と比較するため,研究1と同一の課 題に焦点を絞って分析結果を示す。
1)4P2,4P3の実行的理解について
方略の分類は,研究lの4P2,4P3と同様である。方略 の人数分布はそれぞれTable8に示した。4P2と4P3の各 課題でCS'以上の高レベル方略を用いた人数に差が見ら れるかどうか検討を行ったところ,4P2のみでCS,CS'の 高レベル方略を用いた者が有意に多く,両課題で方略の 使用に差があることが示された(McNemar検定:
'<,001)。4P2で高次の方略を用いていても必ずしも4P3 にその方略が適用されていないといえる。また4P2で CS'以上の方略を用いた人数について,′mable8で示した 小5の結果と'I1ablelで示した研究lの小4,小6の結果 を3条件で比較すると,学年間の違いは有意ではなかっ
た(Fisherの直接確率検定:カー694)。同様に4P3で
CS'以上の方略を用いた人数について,研究1では課題 の省略があるため厳密な比較とはいえないが,′mable8 で示した小5の結果と'mable3で示した研究1の4年生,6年生で課題を実施した対象児の結果を3条件で比較す ると学年間の違いは有意ではなかった(Fisherの直接確
率検定:′=、567)。なお研究1で実行が1回のみ,方略
がCS'の場合は高レベル方略使用として分析に含めた。2)対称性の理解について
対称性の理解の有無の基準は,研究1の場合とほぼ同 じである。ただし,課題の実施手順として記載したよう に,最初に調査を実施した5名のみ,4P2の対称性の理 解に関する質問を行っている。4P2で対称性を理解して いると思われた場合のみ4P3の対称性の質問を追加で実 施した。この場合,4P3で対称性がないと判断された場 合は対称性なしと分類した。4P2の時点で対称性がない と判断された場合は,全体として対称 性なしと判断し た。ただし,4P2の対称性課題において反応がやや暖昧 であった児童で,4P3の質問を行ったところ対称性の理