九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
標的タンパク質特異的ラベル化のための反応基の探 索とコバレントドラッグ開発への応用
渕田, 大和
http://hdl.handle.net/2324/1931853
出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(創薬科学), 課程博士 バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
近年、可逆阻害剤と比較して様々な利点を有することからコバレントドラッグの開発が注目を集めて いる。しかしながら、標的以外のタンパク質と非特異的に反応して副作用を引き起こすことが懸念され ており、その研究の進展が大きく妨げられてきた。
これに対して、博士論文申請者の渕田大和氏は、当研究室で開発を進めてきた「ペプチドタグ・亜鉛 錯体プローブペア」を用いて標的以外のタンパク質との非特異反応を抑制できる低反応性基を探索し、
コバレントドラッグへと応用することを着想した。
第一章では、ペプチドタグ・亜鉛錯体プローブペアを利用した新しいアッセイ系を構築した。このア ッセイ系は、連続アスパラギン酸配列と亜鉛錯体プローブとが強く相互作用し、共有結合の形成が促進 されることを利用したものであり、プローブ上に求電子性反応基を導入することで生理的条件下におけ る様々な反応基の反応性評価が可能となった。申請者は、本アッセイ系を利用して 20 程度の反応基を 評価し、α-クロロフルオロアセトアミド (CFA) が、コバレントドラッグに広く利用されているアクリ ルアミド型のマイケルアクセプターと比較してシステイン残基と穏やかに反応することを見出した。
第二章では、CFAの有用性を示すためEGFRを標的タンパク質としてコバレントドラッグの開発やそ の機能評価を行った。申請者は、既存の不可逆的EGFR阻害剤のafatinibを参考にCFAを有する様々な 阻害剤をデザインし、afatinibと同程度の阻害活性を有する化合物の開発に成功した。さらに、gel-based ABPP (activity based protein profiling) により、CFAを有するEGFR阻害剤の誘導体が、生細胞内におい
てafatinibより高い選択性でEGFRをラベル化することを見出した。さらに、申請者はヒット化合物の
構造最適化を行い、in vivoにおいても優れた抗腫瘍活性を示す阻害剤の開発に成功した。
第三章では、CFAを有する第三世代EGFR阻害剤の開発を行った。申請者のデザインしたコバレント ドラッグは、既存の第三世代EGFR阻害剤のosimertinibと比較して優れた変異型EGFR阻害活性を示し、
野生型のEGFR阻害に基づく副作用を軽減できることが期待された。さらに、この阻害剤はin vivoにお いても中程度の抗腫瘍活性を示した。
以上のように、申請者の渕田大和氏は「ペプチドタグ・亜鉛錯体プローブペア」を利用した独自のア
氏 名 渕田 大和
論 文 名 標的タンパク質特異的ラベル化のための反応基の探索とコバレント ドラッグ開発への応用
論文調査委員 主 査 九州大学大学院薬学府 教授 王子田 彰夫 副 査 九州大学大学院薬学府 教授 佐々木 茂貴 副 査 九州大学大学院薬学府 教授 平井 剛
副 査 九州大学大学院薬学府 准教授 麻生 真理子
ッセイ系により優れた標的タンパク質選択性を示す CFA を見出し、CFA を有する選択性の高いコバレ ントドラッグの開発に成功した。これらの結果は、CFAがコバレントドラッグ研究に貢献できる新規な 反応基になると期待できるものであるため、博士 (創薬科学) に値すると認める。