2007 年度 修士論文
アドホックネットワークにおける
OLSR 制御パケットの削減法
提出日: 2008 年 2 月 4 日
指導:後藤滋樹教授
早稲田大学 大学院理工学研究科 情報・ネットワーク専攻 学籍番号: 3606U051-9
鈴木 幹也
目次
1 序論 5
1.1 研究の背景 . . . 5
1.2 研究の目的 . . . 6
1.3 本論文の構成. . . 6
2 アドホックネットワーク 7 2.1 アドホックネットワークの概要 . . . 7
2.2 ルーティングプロトコル. . . 8
2.2.1 プロアクティブ型 . . . 8
2.2.2 リアクティブ型 . . . 9
2.2.3 ハイブリッド型 . . . 10
3 OLSRによる経路制御 11 3.1 OLSRの概要 . . . 11
3.2 MPR集合 . . . 12
3.3 OLSRのパケットフォーマット . . . 12
3.4 OLSRノードが管理するテーブル . . . 18
4 パケット削減法 20 4.1 提案手法の概要 . . . 20
4.2 提案手法の詳細 . . . 20
4.2.1 提案手法の規則 . . . 21
4.2.2 ノードの状況判断 . . . 22
4.2.3 制御パケット送信間隔の調整 . . . 22
4.2.4 提案手法の流れ . . . 24
5 実証実験 25 5.1 検証の目的 . . . 25
目次
5.2 検証の詳細 . . . 25
5.3 検証の結果 . . . 27
5.3.1 検証1 . . . 27
5.3.2 検証2 . . . 30
5.3.3 検証3 . . . 31
5.3.4 検証4 . . . 34
5.3.5 検証5 . . . 35
5.4 考察 . . . 38
6 結論 39 6.1 まとめ . . . 39
6.2 今後の課題 . . . 39
図一覧
2.1 マルチホップ通信 . . . 7
3.1 単純なフラッディングとMPR集合を用いたフラッディングの比較 . . . 11
3.2 OLSRパケットフォーマット . . . 13
3.3 OLSR HELLO メッセージフォーマット . . . 15
3.4 OLSR TC メッセージフォーマット . . . 17
3.5 OLSR MID メッセージフォーマット . . . 17
3.6 OLSR HNA メッセージフォーマット . . . 18
4.1 状況変化と対応処理 . . . 23
5.1 拡散的な移動. . . 26
5.2 集合的な移動. . . 26
5.3 ネットワーク範囲とping到達率 . . . 28
5.4 ネットワーク範囲とping応答時間 . . . 28
5.5 ネットワーク範囲と制御パケット量. . . 29
5.6 ノード数とping到達率 . . . 30
5.7 ノード数とping応答時間 . . . 30
5.8 ノード数と制御パケット量 . . . 31
5.9 拡散的な移動の移動速度とping到達率 . . . 32
5.10 拡散的な移動の移動速度とping応答時間. . . 32
5.11 拡散的な移動の移動速度と制御パケット量 . . . 33
5.12 集合的な移動の移動速度とping到達率 . . . 34
5.13 集合的な移動の移動速度とping応答時間. . . 34
5.14 集合的な移動の移動速度と制御パケット量 . . . 35
5.15 ノードの移動速度とping到達率 . . . 36
5.16 ノードの移動速度とping応答時間 . . . 36
5.17 ノードの移動速度と制御パケット量. . . 37
表一覧
2.1 アドホックネットワークのルーティングプロトコル . . . 8
2.2 プロアクティブ型の代表的なプロトコルと適するネットワークの条件 . . . 9
2.3 リアクティブ型の代表的なプロトコルと適するネットワークの条件 . . . 10
3.1 OLSRにおけるWillingness . . . 12
3.2 リンクタイプ. . . 16
3.3 近隣タイプ . . . 16
5.1 シミュレータのパラメータ設定 . . . 27
5.2 ネットワーク範囲と制御パケット削減率 . . . 29
5.3 ノード数と制御パケット削減率 . . . 31
5.4 拡散的な移動の速度と制御パケット削減率 . . . 33
5.5 集合的な移動の速度と制御パケット削減率 . . . 35
5.6 移動速度と制御パケット削減率 . . . 37
第 1 章 序論
1.1 研究の背景
無線通信技術の発展と、ノートPCや携帯電話のようなモバイルノードの普及により、無線ノー ド同士が即席で柔軟にネットワークを構築する、アドホックネットワークと呼ばれる技術が注目 されるようになってきた。アドホックネットワークとは、無線ノード同士が通信する際に、無線 の基地局などの既存のインフラストラクチャに依存せずに通信を行うことができる技術である。
さらにそれぞれのノードが中継機能を持つことによって、より柔軟にネットワークを構築するこ とを可能にしている。アドホックネットワークはインフラストラクチャに依存しないため、比較 的低コストで迅速にネットワークを構築できるという特徴がある。この特徴を活かして、会議中 での資料配付や、車両同士で情報をやりとりする車車間通信、センサー同士が情報をやり取りす るセンサーネットワークなどの日常的な状況での利用や、災害時にインフラストラクチャが使用 不可能になってしまった場合の、即席の通信手段としての利用が期待されている。また、身の回 りの様々なものにCPUや無線インターフェースを搭載し、それらがお互いに情報通信を行うユ ビキタスネットワークにおいても、この柔軟なアドホックネットワークの技術は有効であると考 えられている。
しかし、アドホックネットワークは本来、軍事目的として考え出された技術であり、実際に一 般的な場面で利用するためにはまだまだ解決しなければならない問題が多く残されているのが実 状である。各ノードが無線で通信するため、自由に動き回ることができ、そのためネットワーク のトポロジーが頻繁に変化してしまう。また、有線ネットワークにくらべ通信帯域が制限されて いたり、ノードの多くはバッテリーによって駆動しているため、電力にも気を使わなければいけ ない。さらにはインフラストラクチャを利用しなくてもネットワークを構築できるため、今まで のインターネットで用いられていた技術では不十分な場合もある。このように、アドホックネッ トワークには様々な課題が残されている。
第 1 章 序論
1.2 研究の目的
第 1.1節でも述べたように、アドホックネットワークは無線ノード同士が中継機能を持ち、自 立分散的にネットワークを形成する。これを可能とするために、アドホックネットワーク特有の プロトコルが必要になる。また、ルータのように経路制御を集中的に管理するノードの存在が保 証されないため、ルーティングのために多くの制御パケットが必要になる。その一方で、無線を 用いて通信を行うため有線に比べて帯域が制限されてしまい、制御パケットが通信へ与える影響 が大きくなる。制御パケットが多くなれば通常の通信パケットと衝突する可能性が高まり、結果 的に通信効率を低下させてしまう。さらに、一般的にアドホックネットワークを構成するノード は移動体を主としているため、制御パケットが多くなるほどバッテリの消費も大きくなり、ネッ トワークの利用性が低下してしまう。そこで、本論文ではネットワークの状態に応じて動的に制 御パケットを調整する方法を提案して、ネットワーク中を流れる制御パケットを削減することを 提案する。また、様々な状態のネットワークにおける提案手法の有効性を検証する。
1.3 本論文の構成
本論文は以下の章により構成される。
第1章 序論
本研究の概要について述べる。
第2章 アドホックネットワーク
アドホックネットワークについて解説する。
第3章 OLSR (Optimized Link State Routing)について ルーティングプロトコルOLSRについて解説する。
第4章 提案手法
動的な制御パケット削減手法について解説する。
第5章 実証実験
提案手法をシミュレーションによって検証する。
第6章 結論
本論文の結論を述べるとともに、本論文において残された問題点を今後の課題として提起 する。
第 2 章
アドホックネットワーク
2.1 アドホックネットワークの概要
アドホックネットワークとは、無線LANで広く使われているアクセスポイントを必要とせず、
無線通信機能を備えたノードのみで構成されるネットワークである。そのノードは、その無線範 囲内のノードはもちろん、無線範囲外のノードとも通信することが出来る。無線範囲外のノード と通信する場合には、図 2.1 に示すように中継ノードによって中継される。これをマルチホップ 通信という。
図 2.1: マルチホップ通信
アドホックネットワークにおける各ノードは一般的に移動体であるため、頻繁にトポロジーの 変化が起こる。アドホックネットワークは自己編成機能を持ち、適応性を備えているネットワー クであり、形成されたネットワークが管理者を必要とせず、勝手に違った形のネットワークにな り得る自立分散型のネットワークである。このため、トポロジーの変化が起こると各ノードが協 力して動的にネットワークを構築することができる。
第 2 章 アドホックネットワーク
2.2 ルーティングプロトコル
第 2.1節で述べたように、アドホックネットワークにおいて各ノードがその無線通信範囲外の ノードと通信する場合には、中間のノードが中継する。この中継機能を持たせる為にはアドホッ クネットワーク特有のルーティングプロトコルが必要で、現在でも様々なプロトコルが開発され ている。しかし、すべての場面に適するプロトコルはいまだに開発されておらず、今後もこのルー ティングプロトコルの開発は大きな課題である。
これまでに開発されたルーティングプロトコルは、表 2.1 に示すように3つの型に分類するこ とができる。これらのプロトコルはいずれもすべてのノードが自立分散的に動作することを想定 しており、集中管理を行うノードを必要としない。また、それぞれの型ごとに特徴があり、その 特徴が活かせる場面ごとに使い分けられる。
表 2.1: アドホックネットワークのルーティングプロトコル
分類 プロトコルの例
プロアクティブ型 OLSR, TBRPF, DSDV, MMRP リアクティブ型 DSR, AODV, TORA, ABR, DYMO ハイブリッド型 ZRP
2.2.1 プロアクティブ型
プロアクティブ型のルーティングプロトコルは、ネットワーク上の各ノードから他のすべての ノードへの、矛盾のない最新のルーティング情報を維持しようとする。そのようなプロトコルで は、各ノードはルーティング情報を格納するためのテーブルを1つ以上持つ。そして、ネットワー クトポロジーの変化に反応してネットワーク全体に経路の更新情報を伝送する。こうすると、通 信に先だって周囲のネットワークの状態を確認し把握することができる。それぞれのルーティン グプロトコル間の違いは、ルーティングに関連した必要なテーブル数と、ネットワークの構造に どのような変化があったかをブロードキャストする方式の違いである。プロアクティブ型のルー ティングプロトコルの特徴は、
• 通信を行う際に遅延が発生しない
• データの非通信時にも制御パケットが流れる
• 通信頻度の高いネットワークに適する
• リアクティブ型のプロトコルに比べて消費電力が大きい
第 2 章 アドホックネットワーク
といったことが挙げられる。これらの特徴から考えてプロアクティブ型のルーティングプロトコ ルではトポロジーの変更頻度に応じて更新間隔を調整する必要がある。更新間隔が長すぎると 経路情報が古くなり、短すぎるとそれだけオーバーヘッドが大きくなってしまう。ノードが移動 するようなネットワークにおいては場合によっては非常に効率が悪くなってしまうのがプロアク ティブ型のルーティングプロトコルの特徴である。よって、いかに効率良く更新情報を伝達する かが重要である。
代表的なプロアクティブ型のルーティングプロトコルと、それぞれに適したネットワークの条 件を挙げると表 2.2 のようになる。
表 2.2: プロアクティブ型の代表的なプロトコルと適するネットワークの条件 プロトコル名 適するネットワークの条件
OLSR ネットワーク規模が大きく、ノードの密度が高い環境で高い性能
TBRPF 通信量が多いネットワークで高い性能
2.2.2 リアクティブ型
リアクティブ型のルーティングプロトコルは、プロアクティブ型とは違い、送信元始動による いわゆるオンデマンド型のプロトコルである。オンデマンド型というのは、送信元のノードが要 求した時にのみ経路を作成するということである。あるノードにおいて宛先ノードへの経路が必 要になった時に、ネットワーク内で経路探索プロセスを始動する。このプロセスは、経路が見つ かるか、利用可能なすべての経路パターンを試し終えると終了する。いったん経路が発見され、
確立されると、宛先へのアクセスが不可能になるか経路が不必要になるまでは、何らかの手段に よってその経路が維持される。リアクティブ型のルーティングプロトコルの特徴は、
• 通信時に、経路を決定するまでの遅延が発生する
• データの非通信時には制御メッセージが流れない
• ノードの移動が頻繁なネットワークに適する という項目が挙げられる。
代表的なリアクティブ型のルーティングプロトコルとそれぞれに適したネットワークの条件を 挙げると表 2.3 のようになる。
第 2 章 アドホックネットワーク
表 2.3: リアクティブ型の代表的なプロトコルと適するネットワークの条件 プロトコル名 適するネットワークの条件
DSR ノード数、通信量、移動が少ない環境で高い性能 AODV ノード数、通信量、移動が多い環境で高い性能
2.2.3 ハイブリッド型
ハイブリッド型のルーティングプロトコルは、プロアクティブ型のルーティングプロトコルと リアクティブ型のルーティングプロトコルの両方の長所を取り入れた複合プロトコルである。ネッ トワーク内を複数のゾーンと呼ばれるエリアに分割し、ゾーン内ではプロアクティブ型のプロト コルを使用し、定期的な経路情報の更新はゾーン内のノードについてのみ行い、宛先ノードが送 信元のゾーン外にある場合はリアクティブ型のプロトコルを用いて経路を構築する。両方の特徴 を生かすことができるが、ノードが密集するような場合においてはゾーン内の管理すべきノード が多くなってしまいうために、逆にトポロジー管理が難しくなってしまうという問題がある。代 表的なプロトコルとしてはZRPが挙げられる。
第 3 章
OLSR による経路制御
この章では本研究において使用しているルーティングプロトコルOLSRについて述べる。
3.1 OLSR の概要
OLSR (Optimized Link State Routing)はRFC3626で提案されているプロアクティブ型の ルーティングプロトコルである。その基本的な特徴は第 2.2.1節で示した通りである。さらに、
OLSRの大きな特徴として、フラッディングを効率化するためのMPR (Multi Point Relay)集合 の概念を導入していることが挙げられる。フラッディングとは、宛先不明のノードへメッセージ を送信したり、ネットワーク中のすべてのノードへメッセージを送信する手段である。この時、
単純なフラッディングのメカニズムを用いた場合には、メッセージを受信したすべてのノードが そのメッセージの再送信を行うために、ネットワーク中に冗長なメッセージが多く流れてしまう。
しかし、OLSRではMPR集合を用いてフラッディングを行うことにより、冗長なメッセージを 削減し、フラッディングの効率化を図ることが可能になる。両者の比較を図 3.1に示す。
( a )単純なフラッディング ( b ) MPR集合を用いたフラッディング
図 3.1: 単純なフラッディングとMPR集合を用いたフラッディングの比較
第 3 章 OLSRによる経路制御
3.2 MPR 集合
MPR (Multi Point Relay)集合とは、OLSRプロトコルが動いているネットワーク上でメッ
セージのフラッディングを行う際に、再送信を行うノードの集まりのことである。この再送信を 行うノードは各ノードごとに選択される。例えば、ノードAとノードBというノードがあった とする。ノードAから発せられたメッセージを再送するべきノードの集合を「ノードAのMPR 集合」といい、ノードBから発せられたメッセージを再送するべきノードの集合を「ノードBの MPR集合」という。このように実際のMPR集合とは、ネットワーク中の各ノードにより、そ れぞれ選択された複数のMPR集合により構成されている。なお、あるノードをMPRとして選 択しているノードの集合をそのノードの「MPRセレクタ集合」という。この情報を管理するこ とにより、各ノードはどのノードから受信したメッセージを再送信すればよいかを把握すること ができる。
さらに、各ノードは「Willingness」という0〜7の範囲で定義された値を保持している。この 値は各ノードの再送信に対する積極性を表している。つまり、この値が大きければ大きいほど再 送信に対して積極的であり、他のノードからMPRとして選択される可能性が高くなる。また、
表 3.1に示すように、それぞれの値にわかりやすいように名前が付けられている。
表 3.1: OLSRにおけるWillingness 定数名 値
WILL NEVER 0
WILL LOW 1
WILL DEFAULT 3
WILL HIGH 5
WILL ALWAYS 7
3.3 OLSR のパケットフォーマット
OLSRのパケットは、図 3.2示したように1つのパケットヘッダと複数のメッセージヘッダか ら成り立っており、各ノードがUDP698番を使用して定期的に送信する。
第 3 章 OLSRによる経路制御
図 3.2: OLSRパケットフォーマット
以下に各フィールドの役割を示す。
• パケット長
メッセージまでを含めたパケットの長さを格納するフィールド
• パケットシーケンス番号
ノードから送信されたパケットのシーケンス番号を格納するフィールド
• メッセージタイプ
メッセージの種別を格納するフィールド、1〜127まで予約されている
• 有効時間
メッセージの有効期限を格納するフィールド
• メッセージサイズ
メッセージのサイズを格納するフィールド
• 起点IPアドレス
メッセージの発生源となるノードのIPアドレスを格納するフィールド
• TTL (Time To Live)
最大ホップ数を格納するフィールド
第 3 章 OLSRによる経路制御
• ホップ数
メッセージの発生源からのホップ数を格納するフィールド
• メッセージシーケンス番号
メッセージのシーケンス番号を格納するフィールド OLSRのメッセージタイプ
OLSRのメッセージには以下の4種類のメッセージがある。
• HELLOメッセージ
• TC (Topology Control)メッセージ
• MID (Multiple Interface Declaration)メッセージ
• HNA (Host and Network Association)メッセージ Helloメッセージ
HELLOメッセージは、各ノードが持つ情報の通知を目的として定期的に送信されるメッセー
ジであり、これにより周辺情報の収集を行うことができる。OLSRでは、各ノードは「ローカ ルリンク情報」という以下の5つの要素を含む情報を管理しており、HELLOメッセージを送受 信することにより「ローカルリンク情報」を構築する。また、HELLOメッセージを使用する場 合には、パケットヘッダのメッセージタイプに1を格納し、TTLを1にする(隣接ノードにの み送信するため)。
• リンク集合
直接的に電波が届くノードへのリンクの集合である。各リンクは2ノード間のアドレスの 組と有効時間により構成される集合
• 隣接ノード集合
各隣接ノードのアドレスや、そのノードへの再送信への積極度 (Willingness)により構成さ れる集合
• 2ホップ隣接ノード集合とそれらのノードへのリンク集合
隣接ノード集合のさらに先に存在するノードの集合とそれらへのリンクにより構成される 集合
第 3 章 OLSRによる経路制御
• MPR集合
MPRとして選択された隣接ノードの集合
• MPRセレクタ集合
自身をMPRとして選択しているノードの集合
図 3.3にHELLOメッセージのフォーマットを示す。
図 3.3: OLSR HELLO メッセージフォーマット
以下に、HELLOメッセージの各フィールドの役割を示す。
• 予約
予約フィールド
• HELLO発生間隔
HELLOメッセージの送信間隔を格納するフィールド(デフォルトは2秒)
• Willingness
ノードの再送信の積極度を格納するフィールド(デフォルトは3)
• リンクコード
リンク情報とノード情報を格納するフィールド
2bitのリンクタイプ(表 3.2)と2bitの近隣タイプ(表 3.3)の組み合わせで表現される
• リンクメッセージサイズ
リンクメッセージのサイズを格納するフィールド
第 3 章 OLSRによる経路制御
• 近隣ノードのインターフェースアドレス
近隣ノードのインターフェースアドレスを格納するフィールド
表 3.2: リンクタイプ タイプ リンクの状態
UNSPEC LINK 状態不明リンク
ASYM LINK 非対称リンク
SYM LINK 対象リンク
LOST LINK 切断リンク
表 3.3: 近隣タイプ
タイプ 近隣のノードの状態
SYM NEIGH 近隣ノード中に1つ以上の注目ノードへの対称リンクを持つものがある
MPR NEIGH 近隣ノード中に1つ以上の注目ノードへの対称リンクかつ
起点ノードのMPR集合を持つものがある
NOT NEIGH 近隣ノード中には注目ノードへの対称リンクが存在しない
TC (Topology Control)メッセージ
TCメッセージは、ネットワーク全体のトポロジーを各ノードに通知するためにフラッディン グされるメッセージである。各ノードはそのトポロジー情報を基に実際の通信経路を計算して、
経路表を構築する。ここでいうトポロジーとは、ネットワーク上に存在するすべてのノードのリ ンクではなく、MPRセレクタ集合から構築されるために、管理するリンク数は実際のリンク数 よりも少なくなる。
TCメッセージは、MPRとして選択されているすべてのノードによって定期的に送信され、
最低でも自分自身(MPRノード)とMPRセレクタ集合間のリンク情報が含まれている。この 情報から、ネットワーク上のすべてのノードはMPRとそのMPRセレクタの集合を知ることが できる。これにより、各ノードがネットワーク全体のトポロジーを把握することができる。また、
TCメッセージを使用する場合には、パケットヘッダのメッセージタイプに2を格納し、TTLは フラッディング範囲に応じて設定される。図 3.4にTCメッセージのフォーマットを示す。
第 3 章 OLSRによる経路制御
図 3.4: OLSR TC メッセージフォーマット 以下に、TCメッセージの各フィールドの役割を示す。
• 近隣広告シーケンス番号
近隣広告シーケンス番号(近隣ノードの変化を検知するたびに1ずつ増える)を格納する フィールド
• 予約
予約フィールド
• 近隣広告アドレス
MPRセレクタ集合を広告アドレスとして格納するフィールド MID (Multiple Interface Decraration)メッセージ
MIDメッセージは、ノードが複数のインターフェースを備えている場合に使用される補助的 なメッセージである。複数のインターフェースを備えるノードは、定期的にそのインターフェー スの設定を他のノードに通知する必要があるため、MIDメッセージをフラッディングすること によりこれを行う。なお、このフラッディングはMPR集合を用いて行われる。また、MIDメッ セージを使用する場合には、パケットヘッダのメッセージタイプに3を格納する。図 3.5にMID メッセージのフォーマットを示す。
図 3.5: OLSR MID メッセージフォーマット
第 3 章 OLSRによる経路制御
以下に、MIDメッセージの各フィールドの役割を示す。
• OLSRインターフェースアドレス
ノードが持つOLSRインターフェースのアドレスを格納するフィールド HNA (Host and Network Association)メッセージ
HNAメッセージとは、ノードがゲートウェイとして機能する場合に使用される補助的なメッ セージである。また、HNAメッセージを使用する場合には、パケットヘッダのメッセージタイ プに4を格納する。図 3.6にHNAメッセージのフォーマットを示す。
図 3.6: OLSR HNA メッセージフォーマット
以下に、HNAメッセージの各フィールドの役割を示す。
• ネットワークアドレス
ノードが所属するネットワークアドレスを格納するフィールド
• ネットマスク
ノードが所属するネットワークのサブネットマスクを格納するフィールド
3.4 OLSR ノードが管理するテーブル
OLSRプロトコルが動いているノードは、第 3.3節で説明した「ローカルリンク情報」の他に 次の2つのテーブルを管理している。
• TC (Topology Control)テーブル
• ルーティングテーブル
第 3 章 OLSRによる経路制御 TC (Topology Control)テーブル
TC (Topology Control)テーブルはネットワークのトポロジーの情報を管理するテーブルであ
る。ここで言うトポロジーとは、第 3.3節でも述べたとおり、ネットワーク上に存在するすべて のノードのリンクではなくMPRセレクタ集合から構成される。このテーブルはMPRにより定 期的にフラッディングされるTCメッセージにより作成される。
ルーティングテーブル
ルーティングテーブルは任意の2ノード間の経路情報を管理するテーブルであり、TCテーブ ルを基に作成される。TCメッセージのフラッディングによりすべてのノードはすべてのノード のMPR集合を知ることができる。あるノードのMPR集合がわかるということはそのノードま での最後の1ホップの経路がわかるということだから、結果的にすべてのノードのトポロジーを 把握することができる。これに、Dijkstraのアルゴリズムを適用して最短経路を求める。
第 4 章
パケット削減法
本論文で提案する手法について述べる。
4.1 提案手法の概要
OLSRはプロアクティブ型のルーティングプロトコルであり、第 2.2.1節でも述べたとおり、
非通信時にも制御メッセージが流れている。流れている制御メッセージとしては、ネットワーク に存在するすべてのノードが定期的に送信するHELLOメッセージ、MPRノードが定期的に送
信しているTCメッセージ、状況に応じてMIDメッセージ、HNAメッセージがある。なお、HELLO メッセージの送信間隔はデフォルトで2秒、TCメッセージの送信間隔はデフォルトで5秒となっ ている。これらのメッセージがネットワーク中に頻繁に送信されるために、結果的に帯域を圧迫 してしまう。しかし、ネットワークの状況によってはそこまで頻繁に制御メッセージを送信する 必要が無い場合がある。そこで、各ノードがネットワークの状況に応じて、動的に制御パケット の送信間隔を調整することによって、冗長な制御パケットを削減する手法を提案する。
4.2 提案手法の詳細
本提案手法は、移動していないノード、もしくはネットワークから離脱する可能性の低いノー ドの制御メッセージの送信間隔を長くすることにより、ネットワーク中に流れる制御パケットの 削減を実現する。ただし、本提案手法においてのノードの移動、ネットワークからの離脱につい ては以下のように定義するものとする。
• ノードの移動
自身が移動している場合はもちろん、自身が停止している場合でも、隣接するノードが移 動していれば相対的に見て移動していると考え、そのノードも移動しているとする。つま り、あるノードが移動していた場合、隣接するノードはすべて移動しているものとする。
第 4 章 パケット削減法
• ネットワークからの離脱
本提案手法におけるネットワークからの離脱とは、通信圏外へ移動した場合を指し、各ノー ドのバッテリ残量切れによる離脱は考えないものとする。つまりネットワークから離脱す る可能性の低いノードとは通信圏外へ移動する可能性の低いノードのことを指す。
各ノードはネットワーク中では様々に状況が変化する。その場にとどまり続けるノードもあれ ば、頻繁に移動するノードがあったり、移動したり止まったりといったノードも存在する。その ため、動的に制御メッセージの送信間隔を調整するためには、各ノードが、状況変化に柔軟に対 応する必要がある。その手段として、本提案手法では、各ノードがローカルに持つ情報(ローカ ルリンク情報)を定期的に参照し、状況変化を把握するよう提案する。
なお、提案手法において調整の対象とする制御メッセージはHELLOメッセージのみとする。
4.2.1 提案手法の規則
本提案手法では次に示す5つの規則を前提とする。
規則1 各ノードは2秒間隔で自身の状況判断を行う
OLSRにおけるHELLOメッセージはデフォルトはで2秒間隔で送信される。そのため本提案
手法で各ノードの状況判断の間隔を2秒間隔とした。
規則2 MPRとして選択されたノードは調整対象から外す
MPRノードは、TCメッセージを送信したりメッセージを積極的に中継したり非常に重要な 役割を果たすノードである。このノードの制御メッセージ送信間隔を長くしてしまった場合、そ の遅れがネットワーク全体に与える影響が非常に大きくなってしまう。そのため、本提案手法で はMPRとして選択されているノードに関しては通常通りの処理を行うものとする。
規則3 MPRでなければ状況に応じた処理を行う
MPRで無い場合は自身の状況に応じた処理を行う。状況とそれに応じた処理については後述 する。
規則4 調整する送信間隔は最小値2秒、最大値5秒とする
本提案手法で、HELLOメッセージの送信間隔を調整する際、最小値はデフォルトの2秒とし、
最大値は5秒とする。これはTCメッセージの送信間隔がデフォルトで5秒とされているからで ある。TCメッセージはネットワークのトポロジーの情報を含む。これらの情報のすべての基に
第 4 章 パケット削減法
なるものはHELLOメッセージであり、その送信間隔がTCメッセージの送信間隔より長くなっ てしまうとトポロジの正当性が低下してしまう可能性があるため、本提案手法では最大値を5秒 とした。
規則5 HELLOメッセージの送信間隔に応じて有効時間も調整
HELLOメッセージの送信間隔を変更したら、それに応じて有効時間も動的に調整する。
4.2.2 ノードの状況判断
各ノードは第 3.3節で述べた「ローカルリンク情報」を基にして各自の状況変化を把握する。
「ローカルリンク情報」のうち、本提案手法で参照するのは以下の3つである。
• 隣接ノード集合
この情報から、自身が移動したかどうかを判断する。隣接ノード集合が変化していれば移 動したものとする。
• MPR集合
この情報も、移動の有無を判断する。MPR集合が変化していれば中継経路に変化があっ たということだから、移動したものとする。
• MPRセレクタ集合
この情報から、自分自身が他のノードからMPRとして選択されているかいないかを把握 する。
各ノードはこれらの情報を基に、自分自身の状況を判断し、それに対応する処理を行う。なお、
これらの情報の変化とは、要素自体の変化ではなくそのエントリの数の変化のみを見ている。
4.2.3 制御パケット送信間隔の調整
各ノードの状況とそれに対応する処理について述べる。各ノードの状況判断はそれぞれが持つ
「隣接ノード集合」と「MPR集合」の情報を基に判断する。これらの情報から、各ノードの状 況は図 4.1のように9通り考えられる。なお、図 4.1中に制御メッセージ送信とあるが、これは 移動があった場合に、そのトポロジの変化を速やかに隣接するノード、もしくはMPRノードへ 告知する必要があるためである。また、ここで制御メッセージを送信した場合、制御メッセージ 送信タイマをリセットすることにより、最低でも2秒間隔でしか制御メッセージが流れないよう にした。これにより、提案手法を用いた場合の制御パケットの量が、既存手法においての制御パ
第 4 章 パケット削減法
ケットの量を上回る可能性を最小限に抑えることができる。ただし、非常にまれではあるが提案 手法を用いた場合のほうが上回ることもある。各状況に対応する処理は次の通りである。
• どちらにも変化が無ければ移動がなかったということなので、ネットワークからの離脱の 可能性が低いと考える。そのため送信間隔を1秒増やす⇒1
• MPRに変化が無い場合、隣接ノードが増えればネットワークからの離脱の可能性は低い と考える。そのため送信間隔を1秒増やす⇒2
• MPRに変化が無い場合、隣接ノードが減れば、ネットワークから離脱する可能性が高く なると考る。そのため送信間隔を1秒減らす⇒3
• MPRが増加した場合、トポロジーを構成するためにより多くの情報が必要になるため送 信間隔を短くする必要がある。そのため隣接ノードの状況に関わらず送信間隔を1秒減ら す⇒4、5、6
• 隣接ノードが増えるか変わらずにMPRが減るということは、中継せずに直接送信できる ようになったということであり、ネットワークからの離脱の可能性は低いと考える。その ため送信間隔を1秒増やす⇒7、8
• どちらも減少している場合、ネットワークから離脱する可能性が高い考える。そのため送 信間隔を1秒減らす⇒9
図 4.1: 状況変化と対応処理
第 4 章 パケット削減法 4.2.4 提案手法の流れ
これらの考え方を基に、各ノードが以下の手順の処理を行うことにより、本提案手法が実現さ れる。
(1) 自身がMPRとして選択されているかいないかを判断
(2) MPRならば通常通りの処理
(3) MPRでなければ状況に応じた処理
(4) 2秒間隔で (1) 〜 (3)を繰り返し行う
第 5 章 実証実験
様々なネットワークの状況において、提案手法の動作を検証し、その有効性を示す。
5.1 検証の目的
本提案手法が、OLSRをベースとしたアドホックネットワークにおいてどのような影響を及 ぼすかを検証する。具体的には、提案手法を用いることによって、既存手法と同等の性能を維持 したままで制御パケットの削減を実現できることを示す。
5.2 検証の詳細
本検証では、まったく同じ状況のネットワークにおいて、提案手法を使用しない場合(既存手 法)と提案手法を使用した場合を比較する。なお、検証にはNS2シミュレータを用いる。
検証するネットワークの状況
検証するネットワークの状況は、ノードが移動体であるため無限のパターンがある。そこで、
今回は以下のようにノードの移動が無い場合、ある場合に分類して数パターンのネットワークを 検証した。以下の5パターンのネットワークを検証することで提案手法を用いた場合の一般的な 傾向を考察することが出来る。
• ノードの移動がないネットワーク
– ノード数を固定し、ネットワーク範囲を変化させる – ネットワーク範囲を固定しノード数を変化させる
• ノードの移動があるネットワーク
第 5 章 実証実験 – 図 5.1のようにノードが1点から拡散するように移動する場合(拡散的な移動)
– 図 5.2のようにノードが1点に集合するように移動する場合(集合的な移動)
– ノードがランダムに移動する場合
図 5.1: 拡散的な移動
図 5.2: 集合的な移動
以上5パターンについてそれぞれを検証1〜検証5として検証を行う。
測定する項目について
各検証ごとに既存手法と提案手法を比較する際に、以下のような測定を行いその結果を基に比 較、考察を行う。
• ping到達率
ネットワーク中の任意の1ノードから他の全ノードへpingを送り、その到達率を測定 する。pingは0.2秒間隔で300回ずつ送信する
第 5 章 実証実験
• ping応答時間
各ノードへのすべての応答時間を平均したものを平均応答時間とし、測定する。
• 制御パケット量(制御メッセージ量)
すべてのノードから送信された制御パケットの総数を制御パケット量とし、測定する。
ここでいう制御パケットとはHELLOメッセージ、TCメッセージを含めたすべての制御 メッセージのことを指す。
シミュレーションの主なパラメータについて
NS2シミュレータにおいては、主要なパラメータを以下のように設定して行った。なお、シミュ レータへのOLSR拡張については一般にソースの公開されているUM-OLSRを用いた。
表 5.1: シミュレータのパラメータ設定
パラメータ 設定
インターフェース 無線のみ アンテナタイプ オムニアンテナ
MAC層 IEEE 802.11
プロトコル OLSR
最大通信可能距離 100m
ネットワークの範囲 50m×50m〜500m×500m ノードの数 5〜30
移動速度 1m/s〜15m/s
5.3 検証の結果
以下に、書く検証の詳細な条件と結果を示す。ここで使われる制御パケットとは、HELLOメッ セージ、TCメッセージ等のOLSRで使用される制御メッセージの総称とし、単にパケットとは 測定用のpingのパケットを指すものとする。
5.3.1 検証1
ノード数を25個に固定し、ネットワークの範囲を50m×50m〜500m×500mまで50m間 隔で広げていく。このときの既存手法と提案手法でそれぞれ測定した。なお、ノードはランダム に配置した。各測定結果は次の通り。
第 5 章 実証実験
図 5.3: ネットワーク範囲とping到達率
図 5.4: ネットワーク範囲とping応答時間
図 5.3、図 5.4より、既存手法と提案手法の間に大きな性能の差は見られない。つまり、提案 手法により制御パケットを削減してもネットワークの構築に大きな問題はないと言える。また、
図 5.3から見て分かる通りネットワークが250m×250mより大きくなるとping到達率が大きく 減少する。OLSRをベースにしたネットワークは既存手法でもノードの通信可能範囲の2倍程 度のネットワーク範囲までが最適なネットワークであり、それは提案手法を用いても変わらない 事が分かる。
第 5 章 実証実験
図 5.5: ネットワーク範囲と制御パケット量
図 5.5から、提案手法を用いることで制御パケットが効率よく削減できていることがわかる。
具体的に、既存手法と比較して提案手法でどの程度制御パケットを削減できたかを削減率として 算出した。結果を表5.2に示す。表5.2からネットワークの範囲に依存して制御パケットの削減率 も変化するのがわかる。特にネットワークの範囲が狭いほど効率よく制御パケットを削減できて いる。400m×400mあたりで削減率が増えている。これは、範囲が広くなりすぎると各ノード の通信可能範囲を超えてしまい、中継しても25個すべてが通信できないような部分的なネット ワークが複数存在しているためである。結果的にそれぞれの部分の範囲が狭くなってしまってい るため、より多くの制御パケットが削減されている。
表 5.2: ネットワーク範囲と制御パケット削減率 ネットワーク範囲 制御パケット削減率(%)
50m×50m 57.59
100m×100m 53.81 150m×150m 40.35 200m×200m 22.39 250m×250m 15.14 300m×300m 12.71 350m×350m 13.33 400m×400m 14.11 450m×450m 23.80 500m×500m 26.51
第 5 章 実証実験 5.3.2 検証2
ノード範囲を200m×200mに固定し、ノード数を5〜30まで5個間隔で増やしていき既存 手法と提案手法でそれぞれ測定した。各ノードはランダムに配置されるものとする。各測定結果 は次の通り。
図 5.6: ノード数とping到達率
図 5.7: ノード数とping応答時間
図 5.6,図 5.7より、検証1と同様に既存手法と提案手法の性能に大きな差は見られず、問題
第 5 章 実証実験
なくネットワークを構築できているといえる。ネットワークの範囲とは違い、ノード数がはping 到達率にそれほど大きな影響を与えていないことも分かる。
図 5.8: ノード数と制御パケット量
また、検証1と同様に図 5.8から制御パケット削減率を算出した。結果を表 5.3に示す。表か ら分かるように制御パケットの削減率はネットワークの範囲ほどはノード数に依存していないこ とがわかる。今回はネットワーク範囲を200m×200mに固定したが、検証1の結果と合わせる と、範囲が狭ければさらなる制御パケットの削減が期待できる。
表 5.3: ノード数と制御パケット削減率 ノード数 制御パケット削減率(%)
5個 33.74
10個 30.89
15個 26.39
20個 27.60
25個 25.80
30個 30.07
5.3.3 検証3
ノード数25個、拡散的な動き(図5.1参照)でネットワーク範囲50m×50mから500m×500m まで広がるように移動。その際の速度を1m/s〜15m/sまで2m/s間隔で速くしていき、既存手
第 5 章 実証実験
法と提案手法についてそれぞれ測定し比較した。なお、速度はすべてのノードにおいて等速であ り、すべてのノードが同時に移動を開始する。各測定結果は次の通り。
図 5.9: 拡散的な移動の移動速度とping到達率
図 5.10: 拡散的な移動の移動速度とping応答時間
図5.9から分かるように、ネットワーク中のノードが拡散するように移動するような場合には、
既存手法より、提案手法のほうがpingの到達率が悪くなってしまう。これはルーティングの際 に正確なルーティングエントリが見つからず破棄されるパケットが増えているからである。また、
第 5 章 実証実験
図5.10のping応答時間に関してはばらつきはあるものの比較的提案手法の方が短くなっている。
この理由は、本来なら衝突を避けるために再送するべきパケットの一部が、ルーティングエント リ不足により破棄され、再送を待つ時間が短縮されたためにこのような結果になっている。
図 5.11: 拡散的な移動の移動速度と制御パケット量
検証1、検証2同様に図 5.11から制御パケット削減率を算出した。結果を表 5.4に示す。ノー ドが移動しているにもかかわらず多くの制御パケットが削減されてしまっているのが分かる。こ のため正確なルーティングが行えずping到達率も既存手法に劣る結果となってしまっている。
表 5.4: 拡散的な移動の速度と制御パケット削減率 移動速度(m/s) 制御パケット削減率(%)
1 35.68
3 17.53
5 11.98
7 21.54
9 9.93
11 15.97
13 18.03
15 15.39
第 5 章 実証実験 5.3.4 検証4
ノード数25個、集合的な動き(図5.2参照)でネットワーク範囲が500m×500mから50m× 50mまで狭まるように移動。その際の速度を1m/s〜15m/sまで2m/s間隔で早くしていき、既 存手法と提案手法についてそれぞれ測定し比較した。検証3と同様、すべてのノードは等速であ り、すべてのノードが同時に移動を開始するものとする。各測定結果は次の通り。
図 5.12: 集合的な移動の移動速度とping到達率
図 5.13: 集合的な移動の移動速度とping応答時間
ネットワークが集合的に移動するような場合、図5.12、図5.13から提案手法を用いてもほぼ既
第 5 章 実証実験
存手法と同等の性能を維持できることが分かる。
図 5.14: 集合的な移動の移動速度と制御パケット量
表 5.5に制御パケット削減率を示す。移動速度が遅ければネットワークの範囲は広いままであ るため、この結果からも検証1で得られた結論と同様、ネットワーク範囲が狭いほうが効率的に 制御パケットを削減できるということが言える。
表 5.5: 集合的な移動の速度と制御パケット削減率 移動速度(m/s) 制御パケット削減率(%)
1 2.82
3 6.25
5 16.01
7 15.28
9 20.99
11 22.12
13 25.38
15 23.06
5.3.5 検証5
ノード数25個、ネットワーク範囲200m×200mで固定し、その中で各ノードがRandom Way
Pointモデルに従い移動する。その際の移動速度を1m/s〜15m/sの間で2m/s間隔で早くして
第 5 章 実証実験
いき、既存手法と提案手法でそれぞれ測定し、比較した。なお、移動速度はすべてのノードにお いて等速であり、常に移動しているわけではなく、移動・停止をランダムに行うものとする。各 測定結果は次の通り。
図 5.15: ノードの移動速度とping到達率
図 5.16: ノードの移動速度とping応答時間
図 5.15、図 5.16から、移動速度に関わらず全体的に既存手法よりも提案手法のほうがやや性 能が劣っているが、それほど大きな差はない。また、OLSRはプロアクティブ型であるので移 動するネットワークにはあまり適していない。図 5.15、図 5.16から既存手法でさえ、速度が少
第 5 章 実証実験
し速くなるだけで極端に性能が劣化しているのが分かる。全体的な傾向としては提案手法を用い ても既存手法と同じような傾向をたどっているため、移動するネットワークであっても既存手法 と同等の性能を維持できているといえる。
図 5.17: ノードの移動速度と制御パケット量
他の検証と同様、図 5.17より制御パケット削減率を算出した。結果を表 5.6に示す。表から分 かるとおり移動があるネットワークでは制御パケットの削減率も大きく減少することが分かる。
これは、本提案手法でネットワーク的な移動があった場合には臨時で制御メッセージを送信する という手法をとっているため、頻繁に移動する場合はそれだけ多く臨時の制御メッセージが送信 されてしまうからである。ただし、臨時の制御メッセージを送信したら、タイマーをクリアする ため基本的には既存手法より多くの制御メッセージが流れることは無い。
表 5.6: 移動速度と制御パケット削減率 移動速度(m/s) 制御パケット削減率(%)
1 18.30
3 7.26
5 5.79
7 2.31
9 3.86
11 3.53
13 2.86
15 1.60
第 5 章 実証実験
5.4 考察
検証1〜検証5の結果より、本提案手法を用いることにより、ノードの移動がないネットワー クにおいては、本来のネットワークの性能を落とすことなく効率良く制御パケットを削減できる ことが分かる。また、その効果はノード数にではなく、ネットワークの範囲に大きく依存するこ とが分かった。特にネットワークの範囲が狭い場合には大きな効果が期待できる。しかし、ノー ドの移動があるネットワークの場合、極端に広がっていくような移動をすると逆にネットワーク の性能を劣化させてしまうことも分かった。それ以外の移動に関しては、多少性能の劣化は見ら れるものの大きく劣るわけではない。また、検証の結果より提案手法を用いることで、各ノード が自立的に状況を判断して処理していることも確認できる。
本来、OLSRを含むプロアクティブ型のプロトコルをベースとしたアドホックネットワーク は、第 2.2節で述べたように、頻繁にノードが移動するネットワークには適していない。これは 検証3〜検証5の既存手法の結果からも明らかである。また、OLSRに限って言えば、大規模 で密度の高いネットワークで高い性能を発揮するのが大きな特徴である。本提案手法も、このOLSR の特徴が顕著に出ていることが分かる。これらの点を考慮すると、本提案手法はOLSRをベー スにしたアドホックネットワークにおいて、十分に有効な手法であると言える。
第 6 章 結論
6.1 まとめ
制御メッセージの削減と信頼性の間にはトレードオフの関係がある。制御メッセージを極端 に減らしてしまうとトポロジーを把握できず正確なルーティングテーブルも作成できないため信 頼性を著しく低下させてしまう。しかし、本論文での提案手法のように、各ノードがその都度ネッ トワークの状況に応じて動的に制御メッセージの量を調整することにより、信頼性をほぼ保った ままでネットワーク中を流れる制御パケットを削減することができる。また、検証の結果、本論 文での提案手法は、多少の例外はあるものの様々なネットワークの状況に柔軟に適応できている。
6.2 今後の課題
より詳細なローカル情報の参照
本提案手法において、各ノードの状況判断材料として、ローカルリンク情報を用いた。しかし、
今回参照したのは各情報に含まれるエントリの数の変化であり、具体的な要素の変化までは着目 していない。様々なネットワークの状況変化に適応させるためには、これらの具体的情報も参照 する必要がある。
ノード移動時の性能改善
検証の結果から分かる通り、ノードの移動が頻繁になるとやや既存手法に劣る場合がある。プ ロアクティブ型のプロトコルをベースにしているため、移動するネットワークに向いてないもの の、より性能を改善するためには、各ノードで移動速度や移動の方向などを把握する必要がある。
謝辞
本修士論文の作成にあたり日頃より御指導を頂いた早稲田大学理工学部の後藤滋樹教授に深く 感謝致します。また、貴重な助言、多大なる御協力を頂きました後藤研究室の諸氏に感謝致しま す。
参考文献
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[10] 熊谷佑紀, 大野優樹, 須藤崇徳, 阪田史郎『アドホックマルチキャストにおける位置情報を利 用した制御パケット削減方式』2007年電子情報通信学会総合大会, 2007.
参考文献
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http://www.isi.edu/nsnam/ns/
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