第 52 回日本神経学会学術大会
一般演題
会期:平成 23 年 5 月 18 日(水)∼20 日(金)
会場:名古屋国際会議場
Award(口演):受賞候補演題1
座長:東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻神経内科学 辻 省次
5月18日(水)8 : 30∼9 : 20 3A 会場(3号館3階 国際会議室)
AO-101
本邦における FTLD
!FUS の病理学的特徴:9剖検例の
検討
1東京都精神医学総合研究所,
2筑波大学大学院人間総合
科学研究科,
3岡山大学大学院医歯薬学総合研究科,
4東
京都立松沢病院精神科,
5慈圭病院,
6下総精神医療セン
ター,
7熊本大学大学院生命科学研究部,
8信州大学医学
部神経難病学,
9自治医科大学神経内科,
10東京都健康長
寿医療センター研究所,
11東京医科歯科大学大学院脳神
経病態学
○小林 禅
1,秋山治彦
1,新井哲明
2,横田 修
3,
土谷邦秋
1,近藤ひろみ
1,下村洋子
1,羽賀千恵
1,
長谷川成人
1,細川雅人
1,大島健一
4,新里和弘
4,
石津秀樹
5,寺田整司
3,女屋光基
6,池田 学
7,
小柳清光
8,中野今治
9,村山繁雄
10,水澤英洋
11【目的】本邦における FTLD"FUS(FUS 陽性封入体を
伴う前頭側頭葉変性症)の病理学的特徴を明らかにする.
【方法】FTLD と病理診断された66剖検例を再評価し,tau
陰性・TDP"43陰性であった10例のホルマリン固定パラ
フィン標本を抗 FUS 抗体で免疫組織化学的に検討した.
【結果】10例中9例で FUS 陽性の神経細胞内封入体が認
められ,FTLD
"FUS と診断した.HE 染色および免疫染
色(alpha"internexin,FUS)所見から亜型分類を行っ
た結果,9例中5例が basophilic inclusion body disease,2
例が neuronal intermediate filament inclusion disease,1
例が atypical FTLD
"U と考えられた.残りの1例では,
FUS 陽性の神経細胞質内封入体は少数である一方,FUS
陽性の変性突起を多数認め,分類不能であった.異なる
エピトープを認識する複数の FUS 抗体を用いて9例の封
入体の染色性を比較したところ,封入体は FUS のカル
ボキシル末端側部分を認識する抗体では染色されにく
く,FUS の中央部分を認識する抗体では染色されやすい
という傾向が明らかとなった.【考察】海外で最も頻度
が高いとされる atypical FTLD"U は我々の FTLD"FUS
9例の中では1例しか存在しなかった.またこれまでに報
告のない,変性突起主体の FUS 病理を示した例が1例存
在した.複数の抗 FUS 抗体を用いた検討により,FUS
の異常凝集,封入体形成には FUS
の立体配置変化(con-formational change)が関連していることが推察された.
AO-102
Cathepsin B 欠損による脊髄小脳変性症6型モデルマウ
ス小脳変性の促進
1東京医科歯科大学脳神経病態学,
2順天堂大学大学院医
学研究科神経生物学・形態学講座,
3東京医科歯科大学
脳統合機能研究センター
○海野敏紀
1,小池正人
2,内山安男
2,水澤英洋
1,
渡瀬 啓
3【目的】脊髄小脳変性症6型(SCA6)はプルキンエ細胞
(PC)変性を特徴とする優性遺伝性疾患で,変異アレル
では Ca
v2.1電位依存性カルシウムチャネル遺伝子のポリ
グルタミンをコードする CAG リピートが異常伸長して
いる.SCA6の病態として,伸長ポリグルタミン鎖を有
する Ca
v2.1チャネル(EXP"Ca
v2.1)のミスフォールディ
ングと関連した toxic gain of function の機構が考えられ
ているが,EXP"Ca
v2.1の蓄積・分解の機構は不明であ
る.我々はこれまでに EXP
"Ca
v2.1を小脳で軽度に過剰
発現する SCA6"MPI"118Q ノックインマウスの PC 細
胞質内封入体が,リソゾームマーカーと共局在すること
を明らかにしてきた.ここでは,SCA6病態におけるリ
ソゾーム酵素の役割を解明するため,小脳での主要リソ
ゾーム酵素の一つである cathepsin B を欠損する
Ctsb
ノックアウトマウスと SCA6"MPI"118Q KI マウスの交
配により,二重変異マウスを作成し,行動学的・神経病
理学的解析を行った.
【結果】
Ctsb
"!"マウスでは既報通り明らかな異常は認め
られなかった.MPI"118Q!118Q ;
Ctsb
"!"マウスは MPI"
118Q!118Q ;
Ctsb
+!+と比較して,早期より協調運動障
害を発症し,病理学的にも若齢より PC 脱落・封入体の
形成が認められた.
【結論】SCA6
"MPI"118Q KI マウスにおいて cathepsin
B の欠損は病態発症を加速した.cathepsin B は EXP"
Ca
v2.1の分解等の代謝過程に関与している可能性があ
Award(口演):受賞候補演題1
座長:東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻神経内科学 辻 省次
5月18日(水)8 : 30∼9 : 20 3A 会場(3号館3階 国際会議室)
AO-103
3xTg
!AD マウスにおけるアポモルフィンの抗酸化スト
レス作用と A
β 分解促進
九州大学医学研究院神経内科
○中村憲道,大八木保政,姫野恵理,副島直子,
本村今日子,栄 信孝,吉良潤一
【目的】我々は最近,アルツハイマー病(AD)モデル
マウス3xTg
"AD に対するアポモルフィン(APO)の有
効性を報告した(Himeno et al, Ann Neurology, 2010).
その治療効果には抗酸化ストレス作用,あるいは細胞内
Aβ 分解促進作用がかかわると考えられる.3xTg"AD
脳の酸化ストレス蛋白(ヘムオキシゲナーゼ1(HO"1))
及び p53蛋白レベルに対する APO の効果を検討する.
また,主要な Aβ 分解酵素のプロテアソーム,インスリ
ン分解酵素(IDE),ネプリライシン(NEP)に対する
APO の作用を検討する.【方法】APO"0,5,10 mg!kg
を週1回1ヶ月間治療した6ヶ月齢3xTg
"AD 脳で,HO"1
及び p53の免疫染色とウェスタンブロットを行った(n=
5). SH"SY5Y 細胞における20S プロテアソーム,IDE,
NEP の特異活性は各々の特異基質の蛍光強度で測定し
た.【結果】APO 治療3xTg
"AD 脳では,神経細胞内の
HO
"1及び p53の染色低下と蛋白レベル低下を認めた.
一方,培養細胞では,5
μM APO 処理によりプロテアソー
ム及び IDE 活性は有意に上昇したが,NEP 活性は変化
なかった.【結論】APO 治療において,抗酸化ストレス
作用と細胞内 A
β 分解酵素活性上昇作用の両方が示唆さ
れた.これらの作用がどのような細胞内シグナル経路で
結びついているのか,今後解明する必要がある.
AO-104
凝集阻害分子の遺伝子治療によるポリグルタミン病モデ
ルマウスに対する治療効果
1国立精神・神経医療研究センター・神経研疾病4部,
2自
治医大・神経内科,
3神戸大・神経内科
!分子脳科学
○ポピエルヘレナ 明子
1,藤田寛美
1,山本和弘
1,
武内敏秀
1,村松慎一
2,戸田達史
3,和田圭司
1,
永井義隆
1【目的】ポリグルタミン(PolyQ)病では,異常伸長し
た PolyQ 鎖を含む蛋白質がミスフォールディング・凝
集を生じ,その結果神経細胞内に封入体を形成して最終
的に神経変性を発症すると考えられている.我々はこれ
までに,PolyQ 凝集阻害ペプチド QBP1や Hsp40,Hsp
70などの分子シャペロンが,PolyQ 病モデル動物の神経
変性を抑制することを遺伝学的交配により示している.
本研究では体外からの投与による治療法の開発を目指
し,ウイルスベクターを用いた凝集阻害分子の遺伝子治
療の可能性を検討した.【方法・結果】1週齢のハンチン
トン病モデルマウスの線条体に QBP1あるいは Hsp40を
発現するアデノ随伴ウイルス5型ベクター(AAV5)を
注射したところ,AAV5"QBP1では封入体形成が著明に
抑制(8週齢:線条体51%減,大脳皮質44%減 vs 対照)
されたが,神経症状に対する治療効果は認めなかった.
一方 AAV5"Hsp40でも封入体形成は著明に抑制(大脳
皮質79%減)され,さらに寿命短縮,体重減少,運動障
害,握力低下などに対して治療効果を発揮した.驚くべ
きことに,AAV5"Hsp40ではウイルス非感染細胞の封
入体形成も抑制(47%減)されており,non"cell
autono-mous な治療効果が示唆された.
【考察】本研究は,PolyQ
病に対する凝集阻害分子を用いた遺伝子治療法確立の可
能性を示している.
Award(口演):受賞候補演題1
座長:東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻神経内科学 辻 省次
5月18日(水)8 : 30∼9 : 20 3A 会場(3号館3階 国際会議室)
AO-105
FTDP
!17が疑われた日本人75症例における PGRN と
MAPT 遺伝子解析
1順天堂大学医学部附属順天堂医院脳神経内科,
2順天堂
大学老人性疾患病態・治療研究センター,
3福岡大学神
経内科,
4順天堂大学放射線科,
5東京都医学研究機構東
京都精神医学総合研究所,分子神経生物学研究チーム,
6東邦大学医療センター佐倉病院神経内科,
7独立行政法
人国立病院機構宮崎東病院神経内科,
8東京都保健医療
公社荏原病院神経内科,
9三重大学神経内科,
10鈴鹿医療
科学大学保健衛生学部医療福祉学科
○大垣光太郎
1,李 元哲
2,高梨雅史
1,石川景一
1,
小林智則
3,中西 淳
4,野中 隆
5,長谷川成人
5,
岸 雅彦
6,吉野浩代
2,舩山 学
1,塩屋敬一
7,
横地正之
8,佐々木良元
9,小久保康昌
9,葛原茂樹
10,
本井ゆみ子
1,富山弘幸
1,服部信孝
1【目的】日本人における
PGRN
と
MAPT
変異の意義を検討する.
【方法】臨床的に frontotemporal dementia and parkinsonism linked to
chromosome 17(FTDP"17)が疑われる日本人患者75例(67家系,孤
発25例)で progranulin(
PGRN
)と microtubule"associated protein tau
(
MAPT
)の解析を行った.
【結果】
PGRN
解析では1症例で新規変異を認めた.
MAPT
解析では9
症例(6家系,孤発2例)で3種の既知変異と1種の新規変異を認めた.
MAPT
新規変異は両親に変異がなく
de novo
変異であった.Aquried
pendular nystagmus,visual grasping,tonic upward fixation after eye
closure などの特異な異常眼球運動を伴う若年発症の PSP 患者では全
例(6例)で
MAPT
変異を認めた.特異な異常眼球運動を伴い若年発
症の PSP phenotype を呈する
MAPT
変異陽性患者群と特異な異常眼
球運動を伴わない PSP 患者群を群間比較したところ,
MAPT
変異陽
性患者群で両側 Brodmann area 8(BA8)の有意な血流低下を認めた.
【結論】
PGRN
,
MAPT
変異の頻 度 は1.5%(1!67),9.0%(6!67)で
あった.本邦を含むアジアから初めての
PGRN
変異の報告である.孤
発例における
MAPT
の
de novo
変異は初めての報告である.異常眼
球運動,若年発症の PSP,BA8の血流低下は
MAPT
変異の hallmark
となる可能性があり,家族歴がなくとも臨床像や画像を検討し,積極
的に
MAPT
解析が考慮されるべきである.
Award(口演):受賞候補演題2
座長:慶應義塾大学神経内科 鈴木則宏
5月18日(水)9 : 30∼10 : 10 3A 会場(3号館3階 国際会議室)
AO-106
クロウ・フカセ症候群における自己末梢血幹細胞移植後
の中・長期予後の検討
千葉大学病院神経内科
○三澤園子,澁谷和幹,金井数明,磯瀬沙希里,
関口 縁,那須彩子,桑原 聡
【目的】クロウ・フカセ症候群における自己末梢血幹細
胞移植療法(PBSCT)の中・長期予後について検討す
る.
【方法】対象は PBSCT 後1年以上経過を追跡できたクロ
ウ・フカセ症候群18例(移植時平均年齢:51歳,perform-ance status(PS)中央値:2).臨床症状,血清 VEGF
値,神経伝導検査所見の推移,再発の有無について検討
した.
【結果】PBSCT 後の平均観察期間は3.7年(1!7.4年).全
例で臨床症状,神 経 伝 導 検 査 所 見 の 改 善 傾 向,血 清
VEGF 値の低下を認めた.移植前の PS が4であった3例
は全例1まで改善し2例で社会復帰を果たした.4例が再
発し,PBSCT から再発までの期間は1!7年,治療前の PS
は2例で1であった.再発の4例全例がサリドマイド療法
に移行し,うち1例は再移植を予定している.
【考察】若年のクロウ・フカセ症候群において PBSCT
は有効な治療手段であり,特に重症者においては劇的な
改善を期待できる現時点では唯一の方法である.しかし,
移植後数年以内に再発を認める症例も存在する.軽症例
では移植関連死のリスクを特に考慮すべきであり,適応
に関して今後の検討が必要であると考えられた.
AO-107
パーキンソン病の注意制御障害の神経相関
1東北大学医学系研究科高次機能障害学,
2岡山県立大学
保健福祉学部保健福祉学科,
3山形大学医学部高次脳機
能障害科,
4山形保健医療大学作業療法士学科,
5東北大
学医学系研究科神経内科,
6東北大学医学系研究科保健
学,
7埼玉県立大学医療福祉学部作業療法学科,
8東北大
学医学系研究科量子診断学,
9東北大学加齢医学研究所
機能画像医学研究分野,
10東北大学病院高次機能障害学
○西尾慶之
1,澤田陽一
2,鈴木匡子
3,平山和美
4,
武田 篤
5,細貝良行
6,石岡俊之
7,糸山泰人
5,
高橋昭喜
8,福田 寛
9,森 悦朗
10背景:パーキンソン病(PD)におけるセット転換障害
は,前頭前野!線条体回路が遂行機能に関与しているこ
とを示す神経心理学的証拠であると長年考えられてき
た.しかし,これを裏付ける神経画像学的証拠はこれま
でほとんど提出されていない.一方,近年認知神経科学
研究の分野では,セット転換能力は注意制御機能を中軸
とする複合的な認知プロセスであることが示唆されてい
る.
目的:PD における注意制御障害の神経相関を明らかに
する.
方法:60名の PD 患者と30名の健常高齢者に複合文字
(compound letter)を用いた視覚注意課題を施行した.
60名の PD 患者に対して FDG!PET を施行し,安静時
局所脳ブドウ糖代謝を測定した.視覚注意課題と安静時
局所脳ブドウ糖代謝が相関を示す脳部位を検討した.
結果:PD 患者では健常高齢者にひして注意制御課題の
成績が有意に低下していた.注意制御課題の成績は,前
頭眼野を含む背外側前頭前野の安静時糖代謝と相関を示
した.
考察:本研究によって,PD における注意制御障害が,
背外側前頭前野の機能異常と関連していることが直接的
に示された.背外側前頭前野の機能異常が線条体病変に
起因する2次的なものであるのか,前頭前野病変そのも
のに起因するものであるのかについては,他の神経画像
モダリティーを用いた見当によって明らかにされる必要
がある.
Award(口演):受賞候補演題2
座長:慶應義塾大学神経内科 鈴木則宏
5月18日(水)9 : 30∼10 : 10 3A 会場(3号館3階 国際会議室)
AO-108
認知障害を伴うパーキンソン病における donepezil のア
セ チ ル コ リ ン エ ス テ ラ ー ゼ に 対 す る 結 合:[5
!
11C
!
methoxy]donepezil を用いた PET 研究
1東北大学サイクロトロン・RI センターサイクロトロン
核医学研究部,
2東北大学医学部機能薬理学,
3東北大学
サイクロトロン・RI センター核薬学研究部,
4東北大学
医学部高次機能障害学,
5兵庫中央病院神経内科,
6宮城
病院神経内科,
7東北大学医学部神経内科
○平岡宏太良
1,岡村信行
2,船木善仁
3,四月朔日聖一
1,
田代 学
1,加藤元久
2,林亜希子
4,山崎 浩
5,
西尾慶之
4,久永欣哉
6,藤井俊勝
4,武田 篤
7,
谷内一彦
2,森 悦朗
4【目的】
donepezil はアセチルコリンエステラーゼ阻害薬で,抗認知症
薬として臨床で広く使用されている.donepezil を
11C で標識し
た[5
"
11C
"methoxy]donepezil(以下
11C
"donepezil)はアセチ
ルコリンエステラーゼの脳内分布を視覚化するために開発され
た PET 用のトレーサである.[
11C]donepezil"PET により認知
障害を伴うパーキンソン病(以下 PDCI)の患者におけるコリ
ン神経系の障害の評価を行い,認知障害との関連を解析した.
【方法】12名の PDCI 患者及び年齢,性別を合わせた13人の健
常高齢者に[
11C]donepezil"PET を行った.大脳皮質全体の平
均分布容積を半自動化した方法で測定した.PDCI 患者に対し
ては認知機能検査も行った.
【結果】
PDCI 群では大脳皮質全体の平均分布容積は健常高齢者群に比
べて平均22.1%の割合で減少していた(p<0.05).PDCI 群内
におけるサブグループ解析では,認知障害が重度の群(Clinical
Dementia Rating≧1)では認知障害が軽度の群(Clinical
Demen-tia Rating=0.5)に比べて平均分布容積が低い傾向があった.
【結論】
PDCI 患者においてはコリン神経系の障害がみられ,認知障害
の重症度と相関傾向を認めた.[
11C]donepezil"PET は認知症
の臨床研究に様々な活用が可能と思われる.
AO-109
rt
!PA 静注療法後24時間の血圧変動は転帰規定因子とな
るか:SAMURAI rt
!PA Registry
1
国立循環器病研究センター脳血管内科,
2自治医科大学
医学部循環器内科,
3自治医科大学医学部神経内科,
4杏
林大学脳神経外科,
5中村記念病院脳神経外科,
6広南病
院脳血管内科,
7川崎医科大学脳卒中医学,
8神戸市立医
療センター中央市民病院脳卒中センター,
9国立病院機
構九州医療センター脳血管内科,
10聖マリアンナ医科大
学神経内科,
11国立病院機構名古屋医療センター神経内
科
○遠藤 薫
1,苅尾七臣
2,滑川道人
3,古賀政利
1,
塩川芳昭
4,中川原譲二
5,古井英介
6,木村和美
7,
山上 宏
8,岡田 靖
9,長谷川泰弘
10,奥田 聡
11,
宮城哲哉
1,峰松一夫
1,豊田一則
1【目的】rt"PA 静注療法を施行された急性期脳梗塞症例において,投
与24時間の血圧変動と転帰の関連について検討した.
【方法】2005年10月"2008年7月に10施設で rt"PA 静注療法を施行され
た急性期脳梗塞症例600例を登録した(SAMURAI rt"PA Registry).
rt"PA 投与直前,投与終了時(1時間後)および4時間毎の血圧を24
時間後まで計8ポイントで測定した.血圧変動の要素として,収縮期
血圧(SBP)における最大値"最小値(Max"Min),標準偏差(SD),
successive variability(SV)を検討した.評価項目は症候性頭蓋内出
血(sICH)の発症,3か月後転帰良好(mRS0"1,発症前 mRS2"6例
を除く)および死亡とした.
【結果】600例の Max"Min,SD,SV の平均はそれぞれ42±18,14±6,
17±7mmHg であった. これらはいずれも単変量解析において sICH,
mRS0"1,死亡にそれぞれ有意に相関した.年齢,性別,来院時 NIHSS,
発症から治療開始までの時間, 高血圧, 糖尿病, 脂質異常症の既往,
心房細動の有無,入院時の ASPECTS スコアで補正しても,sICH に
対する SV を除く全てで有意に相関した(OR(!10mmHg)は sICH :
Max"Min 1.39,SD 2.68,mRS0"1 : Max"Min 0.84,SD 0.66,SV 0.68,
死亡:Max
"Min 1.36,SD 2.61,SV 1.77いずれも p<0.05).rt"PA 投
与直前の SBP はいずれにも有意な相関を示さなかった.
【結論】rt"PA 静注開始後24時間の血圧変動は症候性頭蓋内出血の発
症,3か月後の転帰良好および死亡と関連する.
Award(口演):受賞候補演題3
座長:国立精神・神経医療研究センター病院 糸山泰人
5月18日(水)10 : 20∼11 : 00 3A 会場(3号館3階 国際会議室)
AO-110
CIDP および IVIg 治療反応性にかかわる遺伝子発現解
析
名古屋大学神経内科
○飯島正博,小池春樹,川頭祐一,冨田 稔,
橋本里奈,祖父江元
【目的】CIDP の病態と IVIg 治療反応性にかかわる病態
を遺伝子発現解析から検討.
【方法】AAN および EFNS!PNS 基準で definite な CIDP
10例と Control1例について,生検神経の RNA を cDNA
ヘ逆転写し,ビオチン標識したサンプルをマイクロアレ
イへハイブリダイゼーションし遺伝子発現量を解析.治
療 反 応 性 は IVIg 治 療 前 後 の INCAT group に よ る
ODSS で1点以上の改善を認めたものを responder,そ
れ以外を non"responder と定義.これらについて fold
change,gene ontology analysis 等による解析を施行.
【結果】CIDP と Control 間で fold change が2倍以上の
変動を呈した遺伝子について gene ontology analysis を
施行した結果,炎症・免疫応答,傷害応答にかかわる遺
伝子群の発現変動が明らかとなった.また治療反応性別
では,responder で前述の CIDP に特徴的であった炎症
にかかわる遺伝子群の変動が non"responder より顕著
であるのに加え,ホメオスターシスに関与する遺伝子群
の変動が示された.一方 non
"responder では細胞外構
造にかかわる遺伝子群の変動が顕著であったが,炎症等
に関連する遺伝子の変動は認められなかった.
【考察】CIDP の病態に炎症・免疫機序がかかわること
が mRNA レベルで明らかとなった.治療反応性別に
re-sponder では CIDP と同様に免疫・炎症機序がより顕著
であったのに対し,non"responder ではシュワンや炎症
細胞以外の要素が病態に関与する可能性が示唆された.
AO-111
オリゴデンドロサイト前駆細胞の分化促進抗体による中
枢神経系髄鞘再生誘導の試み
1慶應義塾大学神経内科,
2慶應義塾大学総合医科学研究
センター,
3(株)免疫生物研究所研究開発部,
4慶應義塾
大学解剖学教室
○中原 仁
1,前田倫子
2,前田雅弘
3,相磯貞和
4,
鈴木則宏
1【目的】多発性硬化症(MS)等の中枢神経系脱髄疾患に
対する髄鞘再生療法は未だ開発途上にある.一方,髄鞘
を生合成するオリゴデンドロサイトの未熟細胞,オリゴ
デンドロサイト前駆細胞(OPC)が MS 病巣において
も数的十分に残存していることが明らかとなっている.
我々は OPC からオリゴデンドロサイトへの分化におい
て,免疫グロブリン Fc 受容体
γ 鎖(FcRγ)への刺激が
その起点となることを同定した(Nakahara et al., Dev
Cell(2003)).本研究では抗体による FcR
γ の刺激を通
じた髄鞘再生誘導の可能性を検証した.
【方法】FcRγ に対する複数のモノクローナル抗体を合成
した.次に,in vitro で培養マウス OPC を用いて,そ
れら抗体による分化誘導能を評価し,選択された抗体に
ついて,MOG 誘導型実験的自己免疫性脳脊髄炎(MOG"
EAE)マウス計10例,並びに0.2% Cuprizone 誘導化学
的脱髄モデルマウス計10例を用いて,抗体投与の有無に
よる臨床症状の変化等の予備的解析を行った.
【結果】抗 FcRγ 抗体 clone ex5A1は in vitro において,
低濃度・短時間に OPC をオリゴデンドロサイトへ分化
誘導することが確認された.更に in vivo における予備
的解析により,同抗体投与により MOG
"EAE マウスの
臨床症状が改善し,化学的脱髄モデルマウスの髄鞘再生
が誘導されることが示唆された.
【考察】FcR
γ を標的とした抗体医薬は MS 等の中枢神経
系脱髄疾患における新規髄鞘再生医薬となる可能性が示
唆された.
Award(口演):受賞候補演題3
座長:国立精神・神経医療研究センター病院 糸山泰人
5月18日(水)10 : 20∼11 : 00 3A 会場(3号館3階 国際会議室)
AO-112
アストロサイトパチーと二次性脱髄に関する実験的・病
理学的検証
1東北大学多発性硬化症治療学,
2ウィーン大学・神経免
疫学,
3東北大学・神経内科,
4米沢病院・神経内科,
5国
立精神・神経センター病院
○三須建郎
1,Hans Lassmann
2,高井良樹
3,
西山修平
3,高橋利幸
4,中島一郎
1,藤原一男
1,
糸山泰人
5【目的】視神経脊髄炎(NMO)は,抗アクアポリン4(AQP
4)抗体が関連する中枢神経系の炎症性疾患である.我々
は,NMO の活動期病変では AQP4やグリア線維性酸性蛋
白(GFAP)の脱落を認める事を報告した.今回,NMO
の特にミエリン塩基性蛋白(MBP)の比較的保たれる早
期炎症性病変において各種マーカーの発現について検討し
た.
【方法】NMO(5例)および対照群の剖検標本,およびリ
ポ多糖 LPS による実験的脱髄モデルを用いた.それぞれ
に対し,AQP4,MBP,GFAP の発現を免疫組織学的に検
討した.また,NMO 病変において,GFAP と C9neo,TPPP
と TUNEL 法の二重染色を施行し,病変部におけるアスト
ロサイトとオリゴデンドロサイトの関連を検討した.
【結果】広範な AQP4陰性病変では GFAP 陽性アストロサ
イトは有意に減少していたが,一方病変周辺の境界領域に
は足突起の断裂や腫脹などの変性所見を伴うアストロサイ
トが多数認められた.LPS モデルも同様のパターンを示し
遅発性に脱髄を生じた.
GFAP と C9neo の二重染色により,病変にはアストロサ
イトの足突起や細胞表面に C9neo が陽性となる特異な染
色像が認められた.TPPP 陽性オリゴデンドロサイトは
GFAP と同様に病変部で減少する傾向を示し,TUNEL 陽
性 TPPP 陽性のオリゴデンドロサイトが多数認められた.
【結論】疾患概念上,NMO はアストロサイトの広範な脱
落を特徴とするアストロサイトパチーであり,脱髄は二次
的である事が示唆された.
AO-113
dysferlinopathy の遺伝子・細胞移植治療法開発
1熊本大学神経内科,
2東北大学神経内科
○中間達也
1,木村 円
1,菅 智宏
1,山下 賢
1,
青木正志
2,前田 寧
1,内野 誠
1【目的】三好型筋ジストロフィー・LGMD2B の根本治療
を実現するため,患者由来細胞を用いたモデルの作成と
移植治療のために基礎的な知見を得ること.
【方法】インフォームド・コンセントのもと
dysferlinopa-thy と診断された患者より皮膚線維芽細胞を採取,さら
に iPS 細胞を樹立.調節型 myoD の存在下で骨格筋へ
分化誘導し dysferlin 欠失を確認,細胞レベルでの表現
型を検討した.さらに全長型および短縮型 dysferlin を
発現するレンチウイルスベクターを作成し
ex vivo
遺伝
子治療を行った.これらの細胞は dysferlinopathy モデ
ルマウスへの移植を行っている.
【結果】患者皮膚由来線維芽細胞および iPS 細胞は調節
型 myoD によって筋分化が誘導され筋管細胞を形成,
dysferlin の欠失を確認した.
dysferlin
遺伝子導入を行
いタンパクレベルでの発現の回復を確認.治療した
dys-ferlin 陽性細胞で表現型の改善が示唆された.
【考察】dysferlinopathy への自家幹細胞移植治療に向け
て遺伝子・細胞移植治療の有効性が期待出来る.
【結論】本研究で提示した遺伝子・幹細胞移植治療モデ
ルは,疾患遺伝子・変異・病期によらず DMD 以外の遺
伝性筋疾患の根本治療にも応用できる可能性を示した.
O1-101 本邦における周期性四肢麻痺の臨床的検討 1鹿児島大学病院神経内科,2大勝病院
迫田俊一
1,樋口逸郎
1,有村由美子
1,有村公良
2,高嶋 博
1 【目的】本邦における周期性四肢麻痺の臨床像および遺伝子変異の特徴を 明らかにする.【方法】遺伝子解析を行なった高 K 性周期性四肢麻痺(Hy-perPP)10例,正 K 性周期性四肢麻痺(NormoPP)10例,低 K 性周期性 四肢麻痺(HypoPP)26例,甲状腺中毒性周期性四肢麻痺(TPP)10例の 臨床像を比較検討する.【結果】HyperPP の多くは遺伝子変異,ミオトニー, 正常な発作時 K 値,発作の誘因を有していたが,NormoPP の多くは変異, ミオトニー,誘因を有していなかった.変異を有する少数の HypoPP は 起床時発作・夜間発作と誘因を呈していたが,変異のない多くは少数例 とは逆の傾向を示した.検索した範囲で変異のなかった TPP は起床時発 作と筋肉痛を多くに認め,初回発作が甲状腺機能亢進症の認知に先行し ていた.【結論】欧米では NormoPP を HyperPP と同一視しているが, 今回の検討では両者の病因と病態に違いがあるように思われ,今後も症 例を蓄積して検討する必要がある. O1-102 自己貪食空胞性ミオパチーの臨床病理学的解析と全国実態調査 1奈良県立医科大学神経内科,2東京医科歯科大学難治疾患研究所,3国立 精神・神経医療研究センター病院小児神経科,4大阪赤十字病院神経内 科,5国立精神・神経医療研究センター疾病研究第一部杉江和馬
1,木村彰方
2,小牧宏文
3,金田大太
4,上野 聡
1,
西野一三
5 【目的】自己貪食空胞性ミオパチー(AVM)は,筋鞘膜の性質を有する特異 な自己貪食空胞(AVSF)を伴う筋疾患で,代表疾患として Danon 病や過剰 自己貪食を伴う X 連鎖性ミオパチー(XMEA)がある.病態や発症機序は未 解明なため,疾患概念確立に向けて診断基準作成を試みた.また全国での実 態調査を行った.【方法】対象は,当該研究機関で管理する,海外例を含む Danon 病17家系51例,XMEA 1例,X 連鎖性先天性 AVM 7例,乳児型 AVM 2例,成 人型 AVM 1例で,臨床病理学的に解析した.また厚労省科研費 AVM 研究班 で,全国2,617の神経内科,循環器科,小児神経科の専門施設に対してアンケー ト調査を施行した.【結果】Danon 病は X 連鎖性優性遺伝で,男性は10代,女 性は30代で発症した.ミオパチーと肥大型心筋症を示し,4例で心臓移植が行 われた.XMEA と先天性 AVM はミオパチーのみで心筋障害は稀であった. 今回の臨床情報と既報告から,各臨床病型の診断基準を作成した.また本基 準を用いて施行した全国での実態調査では,未発表・疑い例を含めて,Danon 病16例,XMEA 5例,先天性 AVM 5例を新たに見出した.【結論】AVM は超 稀少疾患で身体的障害は高度であるが,臨床病型により発症年齢や合併症, 生命予後は大きく異なる.詳細な実態調査から臨床病態の解明を目指す. O1-103 抗 Mi!2抗体陽性筋炎症例の病理学的特徴に関する検討 1虎の門病院神経内科,2東京大学神経内科橋本明子
1,清水 潤
2,岩田 淳
2,上坂義和
1,辻 省次
2 【背景】抗 Mi!2抗体陽性筋炎症例は,皮疹を合併し,治療反応性良好と いう臨床的特徴を有する.特徴的筋病理所見を明らかにすることは,抗 体陽性症例の筋障害機序を明らかにする上で有用である.【目的】抗 Mi! 2抗体陽性筋炎症例の病理学的特徴を明らかにする【方法】筋生検を施行 された炎症性筋疾患連続症例211例を対象とし,凍結筋病理所見観察,電 顕観察を行った.血清スクリーニング後,抗 Mi!2抗体陽性群の筋病理変 化を調べた.【結果】抗 Mi!2抗体陽性筋炎症例は12例(5.7%)(男性4例, 女性8例)であり,症状出現時年齢は46±18歳(19!65歳),生検までの期 間は6±10か月(2週間!6か月)であった.筋病理所見では,筋線維の大 小不同を6例,中心核増加を7例,浮腫を7例,筋線維間網の乱れは8例に 認めた.壊死再生線維が高度7例,中等度3例,軽度2例であり,1つの筋 線維での壊死再生同時所見を認めた例は7例存在した.中等度以上の炎症 細胞集簇を認める症例は10例あり,全例で MHC class1の異所性発現を認 めた.間質増加(3例),perifascicular atrophy(3例),核凝集(1例),小 血管への補体沈着(1例)は乏しく,肥大線維,正常筋線維への侵入像を 認める症例は無かった.電顕観察での小血管の小管状封入体(7例),小 血管破壊像(2例)は少数のみ認めた.【考察】抗 Mi!2抗体陽性症例の筋 病理所見では,小血管への補体沈着や血管破壊を伴わない壊死再生同時 所見が特徴的であった. O1-104 ナトリウムチャネロパチーの診断に有益な筋電図所見 1首都大学東京神経内科,2大阪大学神経内科,3三重大学神経内科,4名古 屋大学大学院神経遺伝情報学,5老人保健施設ホスピア玉川木下正信
1,穀内洋介
2,久保田智哉
2,高橋正紀
2,
佐々木良元
3,大野欽司
4,廣瀬和彦
5 【目的】ナトリウムチャネロパチー,paramyotonia congenita(PMC)及 び potassium!aggravated myotonia(PAM)の報告は本邦では極めて少 ない診断に苦慮する場合が多い.PMC 及び PAM 症例に針筋電図を施行 し,その診断・病態に極めて有益な所見を得たので報告する.【方法】対 象は,1)女性.5歳頃より寒冷時に有痛性の muscle stiffness を自覚し, SCN4A gene の解析から Thr1313Met の変異を認め PMC と診断した.2) いとこ同士の関係である男性と女性.ともに4,5歳頃より運動開始時, 寒冷時及び果物摂取後に上記1)の PMC の症例と同様の症状を有し,女 性例の遺伝子解析から Gln1633Glu の変異を認め PAM と診断した.安静 時室温及び4℃の冷水下で針筋電図(EMG)を施行した.【結果】上記の PMC の症例も PAM の症例も安静時にはミオトニア放電を認め,最大収 縮時及び寒冷下での spasms 状況下では,持続性の Piper rhythm 様の EMG 所見が検出された.【考察】ナトリウムチャネロパチーでは安静時 にミオトニア放電,spasms 下では Piper rhythm 様の EMG 所見が特徴 的と考えられた. O1-105 縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(DMRV)自然歴研究 1国立精神・神経医療研究センター神経内科,2国立精神・神経センター医 療研究センター神経研究所一部森まどか
1,中村治雅
1,山本敏之
1,大矢 寧
1,西野一三
2,
村田美穂
1目的)縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(distal myopathy with rimmed vacu-oles,DMRV)への治験が目前に迫る現在,遺伝子診断された患者の自然歴・病 状は historical control として重要である.DMRV 自然歴記載のための定量評価を 行った. 方法)GNE 遺伝子変異を持ちインフォームドコンセントを得られた 成人 DMRV 患者を対象に自然歴評価・治療効果判定に適切な項目につき考察し た.昨年作成した患者記載方式による ADL スコア表 distal myopathy functional scale(DMFS)について,医師評価や運動機能評価との相関を評価し,患者記載 方式及び運動機能の指標としての妥当性を考察した. 結果)14名,44.3±15.3歳 (23!68),男性7人,女性7人の患者が参加した.初発症状出現は25.9±9.7(14!56)
歳,独歩可能1名,杖・装具での介助歩行可能4名,歩行不能9名であった.呼吸 機能検査では%VC は重症患者で軽度低下傾向があり(109±14.1%,n=12)粗大 運動評価尺度(Gross motor function measurement,GMFM)と相関があった(CC : 0.66).DMFS では患者記載方式は医師記載方式と相関があること(ICC=0.957, 95% CI : 0.64 to 0.99,n=13),DMFS スコアは GMFM と対応することがわかっ た(CC : 0.953). 結論)自立歩行が可能な患者はごく一部であり,DMRV 評価 には歩行によらない評価尺度を主にする必要がある.DMFS は運動機能と相関し, 患者記載方式でも医師記載方式との差が少なく一定の信頼性が得られた. O1-106 血清リポ蛋白ベクターを用いた後根神経節細胞への siRNA デリバリー方 法の開発 1東京医科歯科大学大学院脳神経病態学,2東京医科歯科大学大学院脊椎脊 髄再生医学
朴 文英
1,仁科一隆
1,桑原宏哉
1,平井高志
2,宇野佳孝
1,
町田 明
1,仁科智子
1,吉田規恵
1,榎本光裕
2,水澤英洋
1,
横田隆徳
1 【目的】血清リポ蛋白の生理的内在性経路を利用した腰部クモ膜下腔への 注射による後根神経節細胞への short interfering RNA(siRNA)のデリ バリー法を開発する.【方法】ビタミン E 結合蛍光標識 siRNA を単独, または血清リポ蛋白と結合させてマウス腰部 L3∼L4のクモ膜下腔に注射 を行った(n=3).3時間後に頚髄,胸髄,腰髄各レベルの後根神経節を 採取して,蛍光顕微鏡で siRNA がどのレベルの脊髄の後根神経節まで到 達して神経細胞に取り込まれているか調べた.【結果】血清リポ蛋白をベ クターとして用いることにより,頸髄から腰髄に至る全てのマウス脊髄 後根神経節細胞において蛍光の発現が観察され,siRNA が導入されてい ることが確認できた.【考察】血清リポ蛋白と結合させて腰部クモ膜下腔 に注射することにより,全脊柱レベルで後根神経節細胞にビタミン E 結 合 siRNA をデリバリーさせることに成功した.この方法は RNAi を用い た難治性神経因性疼痛に対する新規治療法の可能性を示している.O1-107 末梢神経障害患者血清と反応する P0関連抗原の同定 1東京薬科大学薬学部機能形態学教室,2岐阜大学大学院医学研究科神経内 科・老年学分野研究,3九州大学大学院医学研究院神経内科,4鎌ヶ谷総合 病院千葉神経難病医療センター・難病脳内科
馬場広子
1,山口宜秀
1,林 明子
1,犬塚 貴
2,木村暁夫
2,
吉良潤一
3,河村信利
3,湯浅龍彦
4 【目的】末梢神経障害患者血清が反応する約36 kDa の末梢神経タンパク質の同定 および病態との関連性を解析した.【方法・結果と考察】ラット坐骨神経ホモジ ネート,膜・可溶性・髄鞘画分を SDS ポリアクリルアミドおよび陽イオン界面活 性剤を用いた2次元電気泳動で分離し,抗36 kDa 抗体陽性患者血清でウエスタン ブロットを行った.陽性スポットを質量分析法で解析した.これらの結果,36 kDa 分子は末梢神経髄鞘特異的な P0タンパク質(MPZ:約30 kDa)に63アミノ酸付 加された分子であることがわかった.患者血清と反応する抗原部位を含む12アミ ノ酸ペプチド部分を同定した.組織染色の結果,この分子は MPZ と同様に末梢 神経のコンパクトミエリンに存在することがわかった.また,ウサギやマウスへ の抗原ペプチド投与で容易に高力価の抗体が得られ,抗原性の高い分子であるこ とが示された.ペプチドを用いた ELISA 法により慢性炎症性脱髄性神経炎患者51 例中13例,ギラン・バレー症候群22例中3例に抗体が検出された.前者で特に高 い抗体価を有する例が見られた.また,糖尿病性神経障害2例,多発性単神経炎1 例においても比較的高い抗体価が観察された.精製抗体を反応させた髄鞘は,コ ントロール IgG と反応させた髄鞘に比してマクロファージへの貪食が促進される ことから,患者血清中の抗体による脱髄病態の修飾の可能性が示唆された. O1-108 末梢神経障害研究モデルとしての,ニューロン・シュワン細胞株共培養 系の確立 1東京都神経科学総合研究所発生形態部門,2東京都神経科学総合研究所分 子神経病理部門三五一憲
1,柳澤比呂子
1,河上江美子
2,渡部和彦
2 【目的】ニューロン・シュワン細胞のクロストークを詳細に解析しうる系を 構築するため,不死化シュワン細胞株 IFRS(immortalized Fischer rat Schwann cells)1とニューロンとの共培養を試みた.【方法】3ヶ月齢 Fischer ラット(1匹)の末梢神経初代培養系から不死化シュワン細胞株 IFRS1を樹 立し,5%牛胎仔血清,neuregulin"β(20 ng!ml)ならびに forskolin(5 μM) を含む培養液にて継代維持した.3ヶ月齢 Wistar ラット(20匹)から単離 した後根神経節(DRG)ニューロン(0.5"1×104!ml)や,PC12細胞(1"5× 103!ml)をコラーゲンコートした培養皿上に撒布し,アスコルビン酸(50 μg!ml)ならびに neuregulin"1 isoform SMDF(25 ng!ml)を含む無血清培 養液中で,IFRS1(1×105!ml)と共培養した.【結果】共培養28日後にお こなった免疫二重染色で,ニューロンマーカーβIII tubulin 陽性の神経線維 の走行に一致して,髄鞘蛋白 P0陽性シュワン細胞が節状に連なる像が観察 された.さらに Sudan Black B 染色ならびに電顕により,髄鞘が形成され ていることが確認された.【考察】DRG ニューロンや PC12細胞との共培養 系において,IFRS1は髄鞘形成能を有することが明らかとなった.株化シュ ワン細胞による成熟動物ニューロンとの共培養系の確立はほとんど前例が なく,種々の末梢神経障害の病態解明や治療法開発に有用と考えられた. O1-109 ヒト臍帯細胞からのシュワン細胞の誘導と神経再生への応用 1九州大学大学院医学研究院神経内科,2東北大学大学院医学研究科細胞組 織学分野,3京都大学大学院理学研究科生物科学専攻生物物理学教室松瀬 大
1,北田容章
2,小濱みさき
2,西川幸希
3,
若尾昌平
2,藤吉好則
3,吉良潤一
1,出澤真理
2 【目的】臍帯由来の間葉系細胞を分化誘導し,シュワン細胞様細胞の誘導を試 みる.また,誘導された細胞を用いて成体ラット坐骨神経切断モデルへの移植 実験を行い,神経再生への応用について検討する.【方法】ヒト臍帯から間葉 系細胞を採取,培養し,種々の試薬,栄養因子を投与することでシュワン細胞 様細胞の誘導を行った.また成体ラット坐骨神経切断モデルを作成し,誘導し た細胞の移植実験を行い,機能的,組織学的解析を行った.【結果】誘導後の 細胞は正常ヒトシュワン細胞と類似の形態を示し,シュワン細胞のマーカーで ある P0等の発現が,RT"PCR および免疫組織化学にて確認された.移植3週間 後の誘導細胞移植部の外観は,神経様の実質組織が移植部全長にわたって確認 された.組織学的解析では,誘導細胞移植群では多くの軸索が再生し,またそ の軸索が移植細胞によってミエリン化されていることが確認された.坐骨神経 機能評価である Walking track analysis では,誘導細胞移植群は正常ヒトシュ ワン細胞移植群と同等の機能改善を認めた.【考察】臍帯由来の間葉系細胞は 非侵襲的に採取可能であり,その利用には倫理的問題が少ない.臍帯バンクも 利用可能であり,細胞移植治療を考える上で非常に有望な細胞である.本研究 で機能的なシュワン細胞がヒト臍帯から誘導可能であることが示され,本シス テムは神経疾患に対する新たな治療法として有用であると考えられた. O1-110 ラット末梢神経虚血・再灌流傷害モデルにおける感覚障害に対する HGF 治療の効果 1 (財)額田医学生物学研究所,オタゴ大学内科,2防衛医科大学校整形外 科額田 均
1,土原豊一
2,Denise McMorran
1,根本孝一
2 【目的】末梢動脈閉塞症に伴う痛み・灼熱感,血行再建術後に出現するしびれな どの感覚障害に対しては早急な治療法の確立が望まれる.今回は末梢神経障害に 対する治療の一環として,HGF 遺伝子導入治療の可能性を検討した.【方法】Wis-tar 系雄ラット(n=76)右後肢に,虚血(4時間)・再潅流を惹起した.虚血直後 に100μg の human HGF 遺伝子を組み込んだ HVJ"リポソームベクターを前脛骨 筋内に経皮的に注射して逆行性に神経内へ導入した.導入は1週毎に繰り返して 合計3回行った.治療の評価は感覚閾値の定量評価,電気生理学的検査,神経線 維別知覚閾値検査,後肢の血流量及び皮膚温を測定した.さらに疼痛マーカーで ある ATP 受容体(P2X,P2Y)mRNA の発現量を RT"PCR で評価し,後根神経 節(L4"6),坐骨・脛骨神経の病理学的検討を加えた.【結果】HGF 群では,感 覚障害は HGF 導入後2週目より有意(p<0.01)に改善した.また,導入1週間後 から足底の血流量及び皮膚温は有意(p<0.05)に増加し,電気生理学的検査は3 週目から有意(p<0.05)に改善した.HGF 群では P2Y1,P2X3の mRNA,およ び神経線維別知覚閾値検査でも導入後1週で有意(p<0.05)に改善した.病理学 的には HGF 群で再生線維がより著明に認めた.【結論】HGF 遺伝子の逆行性神 経内導入により感覚障害の改善が認められた.ATP との相関した回復を示したこ とより,本法は虚血再灌流障害に対する有効な治療法となりうると考えられた. O1-111 メタボリック・シンドロームは女性の糖尿病患者における手根管症候群 の危険因子である 1東京医科歯科大学医学部附属病院検査部,2東京医科歯科大学医学部保健 衛生学科,3東京医科歯科大学大学院分子内分泌内科学,4東京医科歯科大 学大学院脳神経病態学叶内 匡
1,山田和輝
2,平田結喜緒
3,水澤英洋
4,横田隆徳
4 目的:下肢での検討でメタボリック・シンドローム(MetS)が糖尿病患者にお けるニューロパチーの増悪因子であることを昨年報告したが,上肢における検討 をさらに加える.方法:年齢及び糖尿病罹病期間をマッチした,MetS の糖尿病 患者群(DM"MetS)76名(女性27名,男性49名)とそうではない糖尿病患者群 (DM)58名(女性21名,男性37名)で,正中神経及び浅橈骨神経の末梢神経伝 導検査を行ない,両群で統計学的に比較.男女別でも検討した.結果:両群間で 検査直近の HbA1c に有意差はなかった.男女を合わせた両群間ではいずれの神 経も末梢神経伝導検査の結果に統計学的有意差を認めなかった.男女別では,女 性群において,正中神経の遠位潜時が DM"MetS 群(4.6±1.1 ms)で DM 群(4.0± 0.9 ms)より有意に長く(p=0.03),手掌"手関節間の感覚神経伝導速度も DM" MetS 群(33.3±10.1 m!s)が DM 群(39.5±8.9 m!s)より有意に遅かった(p= 0.02).また手関節刺激での感覚神経活動電位の振幅は DM"MetS 群(23.3±16.4 μV)で DM 群(39.8±22.6 μV)より有意に低振幅だった(p=0.009)(値は全て 平均値).他のパラメーターは両群間で有意差なく,男性群では全てのパラメー ターで両群間での有意差を認めなかった.結論:メタボリック・シンドロームは 糖尿病患者において女性に限り手根管部での伝導障害の増悪因子となりうる. O1-112 糖尿病性有痛性ニューロパチーにおける免疫修飾療法について 中部労災病院神経内科上條美樹子,深見祐樹,下野哲典,横井孝政,梅村敏隆,
榊原敏正
【目的】遠位対称性有痛性糖尿病性ニューロパチーに対する免疫修飾療法と して IVIG 療法並びにステロイドパルス療法の有効性を比較検討した.【方 法】下肢優位の疼痛・灼熱痛を伴う糖尿病性ニューロパチー12例を対象と した.髄液蛋白は10例で上昇,神経伝導検査では全例下肢優位の軸索障害 に二次性脱髄所見が混在していた.IVIG 投与群(400mg!kg!day 5日間)8 例,ステロイド投与群(ソルメドロール1000mg!day 3日間)4例とし,投 与前後の VAS スコアならびに疼痛行動評価スコアにより治療効果を判定 した.【結果】治療前の VAS スコアは IVIG 群8.5±0.5,ステロイド群8.0± 0.8と有意差を認めなかった.IVIG 群では治療30日後 VAS5.2±1.4.120日 後1.4±0.7と低下した.ステロイド投与群では投与7日後に VAS4.0±1.1と 早期に有意な改善を示したが,4例中3例で30日以内に再燃,120日間に2"4 回の再投与を要した.ステロイド投与により一過性血糖上昇を認めたが, 短期インスリンにてコントロール可能であった.120日後の疼痛行動評価ス コアは両群ともに有意に改善した.【考察】軸索障害型糖尿病性有痛性ニュー ロパチーに対して IVIG,ステロイドパルスともに有効性が示された.ステ ロイドパルス療法は血糖管理面から長期・頻回投与に難点があるが,即効 性を有し経済性に優れることから,導入療法として有力であり,症例によ り IVIG との組み合わせによるオーダーメイド治療の可能性が考えられた.O1-113 免疫介在性腕神経叢炎における MRI 拡散強調画像の有用性とγ グロブリ ン大量療法の有用性 北野病院神経内科
山崎博輝,近藤誉之,峠 理絵,朝山知子,里井 斉,
斎木英資,青柳信寿,尾崎彰彦,松本貞之
【背景】免疫介在性腕神経叢炎は,臨床型や神経生理検査などにより神経痛性 筋萎縮症,Peronage"Turner 症候群,多巣性運動ニューロパチーなどと診断 される.しかし,感覚障害の有無や分布,被障害筋の広がり方は多様で,上 記疾患の範疇に入らない場合も存在する.また,腕神経叢炎は日常的に行わ れている検査法では確認しにくく,診断も容易ではない.【対象,方法】肩, 上肢痛や腕神経叢上神経幹障害で説明可能な筋力低下を呈した5例に対し,腕 神経叢 MRI を試行した.MRI 拡散強調画像を検討するとともに,γ グロブリ ン大量療法(IVIG)の効果を検討した.【結果】棘下筋,棘上筋,三頭筋, 大菱形筋,上腕二頭筋などの筋力がさまざまな組み合わせで障害され,腕神 経叢上神経幹障害よりも広範な障害を伴う.障害筋の中では,棘下筋筋力低 下が最も検出が容易で共通していた.MRI 拡散強調画像では,腕神経叢ある いは腕神経叢から頸髄神経根につながる高信号を全例で確認できた.MRI"T 2,MRI"T1では異常を確認できず,造影効果もなかった.IVIG を施行した3 例で有意な感覚障害の改善と筋力の回復を認めた.一例は自然回復をした.【考 察】IVIG などの免疫療法で治療可能であるにも関わらず,本疾患群は頸椎症 など他疾患と誤診されやすい.片側性の上肢の運動感覚障害に対しては腕神 経叢炎に留意した診療が必要であり,腕神経叢 MRI はその診断に有用である. O1-114 シャルコー・マリー・トゥース病患者における装具使用効果の歩行分析 による検討 1公立七日市病院神経内科,2群馬大学医学部附属病院リハビリテーション 部,3鹿児島大学神経内科老年病学大竹弘哲
1,和田直樹
2,宗宮 真
2,長嶋和明
1,藤田清香
1,
田中聡一
1,高嶋 博
3,白倉賢二
2 【目的】シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)患者の歩行において, 装具の効果や経時的変化について解析する.【方法】症例は CMTX1の40歳 男性.前脛骨筋の筋力が左でより低下し,内反変形は右に強い.ADL は自 立し,外出時に短下肢装具を使用していた.38歳時に摩擦制動継手付き短 下肢装具(以下 DB),市販の足関節サポーター(以下,SP),装具なしで の解析を行い,今回は油圧制動継手付き短下肢装具(以下 GS)と SP,装 具なしで解析した.5m の歩行を行い,三次元動作解析装置(VICON612) で下肢関節の角度,鉛直方向の位置,速度などを計測した.装具装着の条 件で一元配置分散分析の後 Dunnet の T3検定にて比較し,約2年の経過で の比較は Wilcoxon の符号付き順位検定にて検討した.【結果】遊脚初期の 足関節の底屈は DB 又は GS 使用下で有意に制動された.膝関節の伸展は 初回にはむしろ SP 又は DB 使用時に有意に大きくなり,2回目の右膝伸展 は SP 使用時に有意に軽減していた. 歩行周期の距離と時間因子や速度は, 初回の解析で有意差がなかった.2回の試行で装具なし歩行を比較すると, 下肢関節角度,1歩行周期での距離と時間因子などに2年間で有意な変化は なかった.【結果】短下肢装具は下垂足や膝の過伸展の軽減に有効であった. O1-115 神経・筋疾患患者に対する装着型ロボット HALTMを用いた研究 新潟病院神経内科中島 孝,会田 泉,樋口真也,三吉政道,米持洋介
【目的】脊髄性筋萎縮症(SMA),シャルコーマリートゥース(CMT), 筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経原性筋萎縮を来す疾患群に対す る治療法が望まれているが,現時点では存在しない.これら疾患群の両 下肢の障害の緩和方法を検討するために, 患者が筋収縮を意図した際に, 装着型ロボット HALTM(hybrid assistive limb)が表面筋電図などの情報をもとに適切なアシスト量を決め,患者の筋収縮を助けることで,安全 に歩行訓練ができるかどうかを検証する必要がある.【方法】SMA,CMT などの神経・筋疾患10例に対して,HAL の通常モデル装着して,電極の 装着方法,HAL と関節運動の評価,安全性の評価などに関して検討をお こない,さらに,神経・筋疾患に適した HAL の開発のために,HALTM 開発者と共同研究し,生体電位データを共有し,神経・筋疾患用 HAL の 開発を依頼した.【結果】神経・筋疾患患者が HAL を使用する際の表面 筋電図の電極位置のスクリーニング方法を確立した.SMA3型や CMT な どの患者で,表面筋電図の電位が検出しにくい場合でも HAL が駆動でき るような神経・筋疾患用 HAL の開発に成功した.安全な HAL 装着歩行 の方法を確立した.【考察】今回,神経・筋疾患患者に対して,HAL が 安全に利用できることが証明され,今後,HAL 装着歩行によって,機能 補完以上の効果,疾患の自然経過を改善する治療効果が得られるかどう か検証する目的での治験が可能になると考えられた. O2-101 アルツハイマー病,レビー小体病の髄液バイオマーカーと神経病理学的 所見との対応 1東京都健康長寿医療センター高齢者ブレインバンク,2東京都健康長寿医 療センター神経内科,3国立精神・神経医療研究センター臨床検査部