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体温調節と自律神経系

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Academic year: 2021

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総 説

〔書略講、第難,矯〕

体温調節と自律神経系

山梨医科大学 副学長 イリ    キ     マサ     ミ

入 來  正 躬

(受付平成4年8月13日) Body Temperatllre Regulation and Autonomic Nervo腿s System    Masami IRIKI Yamanashi Medical University   Due to natural stimulation, non−uniform qualitatively diffgrent responses can be evoked童n functionally different sympathetic twigs and. also in functionally different fibers within a twig, a phenomenon which is known as‘‘regional differentiation of sympathet孟。 efferents”..The pattern of the responses differs according to the type of stimulat重on.   Due to cold stimulation, cutaneous sympathetic activity is augmented, while rena1, cardiac and splanchnic sympathetic activity is inhibited. The responses during fever evoked by the administration of exogenous and endogenous pyrogens are different from those evoked by cold stimulation, Le., splanchn重。 sympathet重。 activity is augmented during fever. This response is due to increased adrenal and splen童。 sympathetic activities.   Both fever and the sympathetic response can be evoked simultaneously by the microinfusion of PGE, the final mediator of pyrogens acting on the thermoregulatory center, in the hypothalamus. This indicates the existence of a common central regulatory mechanism in both responses.   In recent studies of fever, it has not been regarded as an abnormality of body temperature regulation, but rather as one of the manifestat圭ons of the host defense response. Such responses including the fever are collectively called“fever syndrome”. The response of sympathetic efferents during fever is therefore thought to play an important role in fever syndrome, for example, in the regulation of immune responses via increased splenic sympathetic activities.       はじめに  体内温は体温調節系の働きにより一定の狭い温 度範囲内に維持されている.体温調節系の異常に より,体内温が正常範囲を超えて上昇した状態に 発熱と高体温症があり,正常範囲以下に低下した 状態に低体温症がある.  本総説では,まず体温調節における自律神経系, とくに交感神経系の応答の特徴について述べ,つ いで発熱が引き起される機序と発熱におけ交感神 経系の応答の特徴とその役割についてまとめてみ たい.  1.交感神経系地域性反応  自律神経系は内分泌系とともにホメオスタシス 維持調節系において重要な役割を果している.調 節中枢よりの指令が両系により効果器に伝達さ れ,調節反応が引き起される.  自律神経系のうち副交感神経系の刺激に対する 応答は支配する臓器により異なるのに対し,交感 神経系の活動性は刺激に対し全身的に同一方向に 消長するとされていた.しかし1961年に我々は温 刺激に対して皮膚交感神経活動性が抑制されるの と同時に,内臓交感神経活動性が:充即し,冷刺激 に対しては逆の応答が引き起されることを見出し

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表1 正常,除脳および脊髄家兎での温,冷刺激(脊髄加温,冷却)に対する交感神

 経地域性反応のパターン(入来,19832))

Sympathetic efferents

Cutaneous ear Cardiac Sp}anchnic Intact Spinal cord warming モ盾盾撃奄獅 一十 十一 十一 Decereb. Spinal cord warming モ盾盾撃奄獅 一十 十  十一 SpinaHzed Spinal cord warming モ盾盾撃奄獅 _* ¥* 十_* 十* Q塞 十:Increase,一:Decrease,*:From indirect exper加ents, 発 熱 効果器 @血管運動,代謝,発汗   体温調節中枢 iセットポイント移動) メディエイター vロスタグランジンE 内因性発熱物質 hL−1, IFN, TNF @  など 活性食細胞 }クロファージ, @白血球など 外因性発熱物質 @紬菌,ウイルス,真菌, @腫瘍,炎症組織など 図2 発熱を引き起す機序の模式図(入構正躬,  19896)) き起される.このことは,体温調節の中枢として 作動し,同じ交感神経地域性反応のパターンを引 き起す神経網が,視床下部より脊髄にひろがって いることを意味している.  3.発熱の機序と発熱により引き起される交感 神経系地域性反応  発熱は,発熱物質などの作用により体内温が正 常範囲をこえて異常に上昇した状態である.図2 は,発熱を引き起すしくみをまとめたものであ る6).細菌内毒素などの外因性発熱物質が生体に 入ると,マクロファージなどの免疫活性細胞に働 き,内因性発熱物質が産生,放出される.インター ロイキン1(IL1),腫瘍壊死因子(TNF),イン ターフェロン(IFN)などのサイトカインが内因性 発熱物質として作用する.内因性発熱物質は血流 によって脳に運ばれ,メディエイターを介して体 温調節中枢に作用する.プロスタグラソジンE (PGE)がメディエイターの候補として最も有力 である.  発熱物質を投与したときの交感神経系の応答を 図3に示した7).LPS(lipopolysaccharide)は細 菌内毒素発熱の有効成分で,発熱の研究で用いら れる代表的な外因性発熱物質である.  LPSを無麻酔家兎に静注すると,直腸温が上昇 し,呼吸が著明に抑制される.皮膚温が低下し, 皮膚交感神経活動性の丁丁を示している.同時に 腎交感神経が抑制される.これと同じ応答パター ンが図3の2,3にみられるように,IL−1および TNFを静注したときにみられる7).  発熱物質投与後の体内温上昇期には,体内温調 節の基準値が上昇しているのに体内温はそのレベ ルまで達していないので,相対的に寒冷刺激をう けたと同じ状態となって皮膚血管収縮やふるえな

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どの対寒反応が引き起される8).発熱時の皮膚お よび腎交感神経の応答が寒冷刺激と同じパターン を示すことも,この観点から容易に理解される.  しかし,発熱物質投与後の交感神経地域性のパ ターンは,寒冷刺激の場合と全く同じではない.  図4に,直腸温,耳皮膚温,血圧,心拍数およ び内臓交感神経活動性の経過を,脊髄冷刺激と LPS静注によるものを比較して示した9).両者と も耳皮膚温が低下する(皮膚交感神経活動性充進) けれども,内臓交感神経活動性は寒冷刺激では低

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く℃) (mmHg) (●’。)) 一30  0   30  60  90  120  150  L80       Time(min) 図3 LPS(1), IL・1β(2),およびTNF(3)静注に対する直腸温(Tre),耳皮膚温(Tear),平  均血圧(MAP),心拍数(HR)および腎交感神経活動性(RSNA,投与前の値を100%として表示  する)の応答平均値±標準偏差(n=7)(Saigusa,19897》)

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一30 0  30 60 90      (B) 120 150 180(rni∩) 図4 脊髄冷却(A)およびLPS静注(B)に対する直腸温(Tre),耳皮膚温(Tear),  平均血圧(MAP),心拍数(HR)および内臓交感神経(Nspl,投与前の値を100%  として表示する)の応答.(Saigusa et al,19899))

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下するのに対し,LPS静注後は充進ずる.  内臓神経には節前線維も含まれ,機能の異なる 神経線維が集まっている.寒冷刺激の場合の内臓 神経活動性の応答は,血流の増減に対応してい る5).一方発熱では,副腎交感神経枝あるいは脾交 感神経枝の活動性並進が報告されているlo).副腎 交感神経活動性充進は発熱時のカテコラミン分泌 増加に関与するとされる.脾交感神経活動性充進 は免疫機能との関連が推定され,その生理学的意 義に興味がもたれている.これらの事実を考える と,発熱における内臓神経活動性充進は興味深い.  4.PGE2(発熱のメディエイター)により引き 起される交感神経系地域性反応  外因性発熱物質および内因性発熱物質は,前述 のように,静脈内に投与されると発熱を引き起す. これら発熱物質は,脳室内に投与されても発熱を 引き起す.異なった投与方法に共通の作用部位や 作業機序についての検討が行われている11).  いずれにせよ,これら発熱物質は,直接体温調 節中枢に作用するのではなく,メディエイターを   38 T−ear 38(℃)   36   34   32    (。’。) RSNA 1!0

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PGE2がLPS発熱などで最終メディエイターと

して作用しているとの説を支持している.  体内温を上昇させる中枢性機序と,交感神経系 の応答を引き起す中枢性機序と共通する部位があ るのか,換言するとその部位を刺激すると,体内 温の上昇と交感神経系の応答の両者が同時に引き 起される部位があるのかを検討するために,         PGE2 microinlection 500 ng

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  一30  −15   0   15   30   45  60        Time(min} 図6 PGE2微量注入に対する直腸温(Tre),耳皮膚温  (Tear),平均血圧(MAP),心拍数(HR)および腎  交感神経活動性(RSNA,投与前の値を100%として  表示する)の応答,注入部位を図右上に示す,  (Huang,199214))

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PGE2の脳内微量注入の実験を行った.  図6に,典型的な反応が引き起された例を示し た14).PGE2の500ngを挿入図の部位に微量注入す ると,直腸温が上昇し,耳温が低下し(皮膚交感 神経活動三民進),腎交感神経活動性が抑制され る.すなわち発熱物質投与後ならびにPGE2脳室 内注入により引き起されたと同様の反応が引き起 される.  図7は,PGE2500ngの微量注入により0.3℃以 上の直腸温上昇がみられた部位を黒丸で示し, 0.3℃以下の直腸温上昇しかみられなかった部位 を白丸で示してある.0.3℃以上の直腸温上昇がみ られた場合には,すべて交感神経系で同様のパ ターンの応答がみられた.これらの部位は視索前 野,とくに視索上核の附近に集中していた.  この実験結果は,視索前野の部位が最終メディ エイターであるPGE2で刺激されると,体内温上 昇(発熱)と交感神経系応答の反応が両者とも引 き起されることを示している. 11. ;: 2 ::』 :1:

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(7)

内毒素一一→EP 免疫活性食細胞       (IL−1)       (IFN)       (TNF) 体内温上昇(発熱) 神経内分泌応答  AVP,ACTH,α一MSH,β一エンドルフィン,CRH,TRH 急i生期応答  血漿鉄↓,血L漿璽鉛↓,血漿銅↑  急性期蛋白↑,フィブリノーゲン↑ 免疫応答  T細胞による免疫応答の開始 行動性応答  睡眠,食欲不振,抑うつ,活動低下 プロスタグランジン合成 その他 図8 内毒素/内因性発熱物質EPにより引ぎ起される生体の応答(lriki,198817>)  5.発熱症候群と交感神経系応答  発熱は,少し前までは体温調節系の異常とし℃ とらえられ,この面からのみ検討されていた.し かし,IL1, TNF, IFNなどのサイトカインが内 因性発熱物質として働くことが明らかになり,さ らにこれらサイトカインの多様な作用と,その生 体の応答とくに生体防御反応における重要性が明 らかにされるとともに新しい観点からの発熱の研 究が始まった.すなわち発熱を細菌その他の侵襲 に対する生体防御反応の1つの症状としてとらえ て研究しようとする試みである.そしてこの研究 によって,発熱すなわち体内温上昇が生体の防御 反応にとって有利か不利かという数十年来不解決 であった問題の解決が期待されている151.          おわりに  我々はこのような発熱を伴う生体防御反応を総 括して発熱症候群とよぶことを提唱しており,発 熱症候群の研究の進展に努力している16)17).発熱 症候群で現在まで報告されている生体の多様な応 答のうち代表的なものを図8にまとめた.  このような観点からみると,発熱物質投与によ り引き起される交感神経系の応答は,単に体温調 節反応を引き起しているのみでなく,他の生体防 御反応などにも関与しているものと考えられる.  従って前述のように,内臓神経の活動性が冷刺 激では抑制されるのに,発熱物質投与後では促進 されるなど,温度刺激と発熱物質投与での反応が 異なることはとくに興味深い.発熱物質投与後の 内臓神経活動性促進は,生体防御反応と関連深い ものと推定される.  今後さらに,発熱における交感神経系の応答を, このような発熱症候群の研究という立場より追求 していきたい.          文  献  1)Walther O・E, Iriki M,βimon E:Antagonis.   tic changes of blood now and sympathetic   activity in different vascular beds following   central thermal stimulation. II. Cutaneous and   visceral sympathetic activity during spinal   cord heating and cooling in anesthetized rab・   bits and cats. PflUgers Arch 319:162−184,1970  2)入山正躬:交感神経系地域性反応一温度刺激と低   酸素刺激に対する反応を中心として一.日生理会   誌45:181−199,1983  3)Ir抽【i M, Simon E: Regional differentiation of   sympathetic efferents.、肋Integrative Control   Functions of the Brain, Vol 1,(Ito M ed>, pp221   −238,Kodansha, Tokyo(1978)  4)Blumberg HJ註皿ig W:Changes of renexes   in vasoconstrictor neurons supPlying the cat   hindlimb following chronic nerve lesions;A   model for studying mechanisms of reflex sym−   pathetic dystrophy P J Auton Nerv Syst 7:   399−411, 1983  5)KuHmann R, Sch6nung W, Simon E:Antag−   onistic changes of blood flow and sympathetic   activity in dif£erent vascular beds f◎110wing   central thermal stimulation.1. Blood flow in   skin, muscle and intestine during spinal cord   heating and cooling in anesthetized dogs.   PfiUgers Arch 319:146−161,1970  6)入内正躬:発熱の病態生理.日小児会誌 93:   2376−2379, 1989  7)Saigusa T: Participation of interleukin−1 and

(8)

tumor necrosis factor in the responses of the

sympathetic nervous system during

lipopolysaccharide-induced fever. Pflifgers Arch416I225-229, 1989

8) J. pa EN : ft pt th ts k- cag fi rb ts. e re *rp wa 27 :

397-401, 1990

9) Saigusa T, Huang XC, Iriki M: Regional

differentiation of sympathetic nerve activity during spinal cord cooling and fever caused by

LPS and PGE2. Thermoregulation: Research and Clinical Applications. (Lomax P,

baum E eds) pp91-94, Karger, Basel (1989) 10) Niijima A, Hori T, Aou S et al : The effects of interleukin-IP on the activity of adrenal,

splenic and renal sympathetic nerves in the rat.

J Auton Nerv Syst 36 : 183-192, 1991

11) Hashimoto M, Ishikawa Y, Yokota S et al :

Action site of circulating interleukin-1 on the

rabbit brain. Brain Res 540:217-223, 1991 12) Stitt JT : Prostaglandin E as the neural ator of the febrile response. Yale J Biol Med 59 : 137-149, 1986

13) Saigusa T, Iriki M : Regional differentiation

of sympathetic nerve activity during fever

caused by intracerebroventricular injection of

PGE2. PflUgers Arch 4!1I121-125, 1988 14) Huang X-C: Effects of hypothalamic

croinjection of PGE2 on body temperature and

sympathetic nervous activities in th.e rabbit. in preparatlon

15) Blatteis CM : Fever : Is it beneficial ? Yale J Biol Med 59:107-116, 1986

16) .A.asEM wt l ftptfittgy-agl.e#Lljll2tstri JfiliUhts.

Nve=, MJ6<

(1989)-17) Iriki M : Fever and fever syndrome-Current

problems. Jpn J Physiol 38:233-250, 1988

参照

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