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高血圧症,特にその病因について

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緒 〔虚 説〕 (東京女医大誌 第26巻 第1号頁.1−7・昭和31年1月)1

高血圧症,特にその病因にりいて

東京女子医科大学中山内科教室(主任 申山教授) 助教授 山 ヤマ 隠 田 ダ

喜 久

キ ク (受付 昭.和30年12月9日) 高血圧を呈する疾患は種々あり,色々の分類法 があるが主なものにMerri1(1), Dextner(2), Page and Corcoran(3),佐々(4)等の病因的分類法があ る。第一表は佐々氏よりのものである。 ng一一表 高血圧症の病因的分類 1 神経性高血庄 1 原因の明らかな高血圧症 1 心搏出量増大性心臓血管疾患 2 全身血管硬化性疾患 3 中事区神経系疾患 4 汎腎疾患および腎実質性疾愚 5 腎血管疾患および腎」血行障碍 6 腎周囲組織の疾患 7 EpinephrineおよびNor−epinephrine性高血

圧症

8 その他の内分泌疾患および内分泌性高血圧 皿 原因不明の高血圧症 1 本態性(良性)高血圧症 2 悪性高血圧症・ 馬 ’t 高血圧を呈する疾患を大別すると,ある疾病の 部分症状として高血圧のみられるもの即ち二次的 な症候性高血圧とs.一見原因不明で顕著な血圧上幽 昇を主徴として始まるものとの二つに分けられ, 前者は原疾患の族復をみれば問題とならす,一般 に高血圧症と呼ぶものは後者であって之が1911年 Frank(5)「の命名以来本態性高血圧症と呼ばれて いるものである。この本態性高一血圧症は更に.腎症 状出現の有無経過予後の良否等により良性,悪性 の二種に分類され,その分類規準としてKeith− Wagenerの法(6),.そめ他(7)がある。 この本態性高血圧症は高.血圧.を示す全疾患の約 80∼90%を占め,現在迄50数年にわたり色汝研究 され多くの旧蹟が出されて来ているが未だにその 成因,本態については多くの疑問が残されてい 「る。その上この疾患は大部分緩慢な経過をどる が,漸次全身の細動脈の変性,肥厚をおこし,結 局ぱ脳,心臓,腎臓の重篤な病変即ち脳卒中,心 不全,腎不全壁おこし犀に至るもので,現今世界 の丈明国での死因の第一位を占めているのであ る。我国では戦前は結核死が死亡の第一一位をしめ てV・たが戦後は高一血圧による死亡が第一位をしめ るに至り,昭和26年の統計では我国では高血圧症 の死亡実数はi34,000名,結核死は93,400,米国 では高血圧死亡数140,000となっており,更に高 」血圧症死亡を原因別にみると,米国では心臓死が 一番多V・が,我国では脳卒中が一番多く之が戦後 本邦死因の第一位をしめている(8∼13)。第二表は 2,3の学者による高血圧症の主要な死因統計を 示したものである。 第二表 高調圧症の死因(操旧道呼吸と循環 3.604.1955 より弓1用)

警告者

Christian Bell, Clawson Smith et al 渡 辺 中 沢

L獄

1311 ・[ 420 376 794 95 脳 死 25.0 19.2 14.9 34.0 47.0 心臓死 腎臓死 32.0 60.4 35.9 10.0 20.0 4.5 8.5 20.2 17.0 3.0 即ち医学の進歩特に抗生物質療法の目覚ましい 癸展にも拘らす本態性高血圧症は未だに治療面か ら取残され,しかも死因の第一位を占めているので あって,悪性腫瘍と並んで今世紀の医学の一大問 題と考えられる。一般に疾病はその原因及び病態 発現機構が判然とするなら,その原因を除去しそ の病態発現機構を阻止することにより治療が完遂

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されるわけである。しかし本態性高血圧症に於て はこの両者に関して未だに不明の点が存するので あって,本法に於ては,この本態性高1血圧症の病 因について,今迄に読んだ文献をもとにして2,3 疑問の点を中心として述べてみる。 正當三王,異常血圧 本態性高!血圧症の全貌については不明の点が存 するので,現在の所その定義については完全なも のがない。しかし血圧が正常血圧より高値を示す という事が根本となっている事には異論がない。 それ故本疾患を論ずるに当っては先ず正常一血圧と 異常血圧との境をどこに置くかとVOう事が問題と なる。正常!血圧の範囲は一般に多数の健康人につ いての一血圧測定の統計が基本となっている。しか し本症は高血圧が持続することが特徴で将来何ら かの障碍を惹起してくるものである。即ち異常一血 圧とするためにはただ1回のみの並上圧測定では不 充分であり,その経過,予後を長年にわたり追跡 することが必要である。現在多くの統計的観察が あるが,諸学者により正常血圧の範囲について多 少の差がある。これは人種,環境の差,経過,予 後等の関係があるためと思われる。本邦では渡辺 (9・14),一色(le),加藤(15)の業蹟あり,外・国では Hines(16), Fishberg(11), Robinson(17)等の報告が

ある。第三表は昭和23年の渡辺氏の統計(9)による 第三表 日本,人正常血圧 年 令 10 15 20 25 30

卓識熱幽謙

102 114 120 121 123 64 1 98 70ほ10 75 F 114 1 76 1 115 77 1 116 62 68 71 72 73 35 40 45 50 55 60’ 125 127 131 135 143 145 7g 1 11s 82 84− 86 88 89 122 126 131 138 145 75 77 80 82 86 90 正常血圧の範囲は 30才以下標準血圧士10mm Hg

・・批標靴圧{古ll舗1

本邦人の正常.血圧である。一般的に言って最高一血 圧が15Q∼140mm/Hg以上,最:低血圧85∼90mm /Hg以上のものを高血圧をみなしてV・る。最高血

圧150mm/Hg以上,最低血圧90mm/Hg以上は

各人とも高血圧とすることには異論がなV・ようで あって,之以上の血圧では後に持続性の高」血圧を おこし種々の障碍をおごすものが多いとされてい る(9・16)。 しかし正常血圧は年令と共に上昇するとするも の(14),年令とは関係ないとするもの(ユ6・17)両論が ある。又老年者では必ず生理的に老化現象として 動脈硬化を伴V・,そのため当然.血圧の上昇を示す ,ものであるが,この際老年者にみられる最高血圧 150∼160m皿/Hg程度のものが生理的であるか病 的であるかは未解決とされている。 叉血圧測定では最高,最:低の両者を測定してVO るが,従来は主として最高.血圧のみを注目してい た。しかし近年は高血圧症の予後には最低血圧の 上昇がより関係ある(12・18)といわれ,且ines(16)も 最高血圧140mm/Hg以上でも最低血圧80mm/H9 以下のものは20年の追跡調査で148人中1人も高 血圧症の発生をみなかったと述べている。今後は 更に最低血圧を中心とした研究が望まれる。更に は最:高血圧と最:低血圧との差即ち脈圧と高血圧症 との関係が検討されるべきものと思われる。この 点に関しての本邦での肥馬は殆んど見当らなv・。 次に血圧に関して問題となるのはその動揺性で ある。本学に於ける入聞ドックでの検査でも入院 当日の.血圧と翌日の血圧とではしばしば差がみら れる。昔から最高血圧は動揺しやすいと言われて V・るが,どの程度迄の血圧動揺は正常として許容 されるかは未確定である。ただ刺戟(温熱,薬品) に対し血圧が動揺する揚合20mm/Hg以上の動揺 は病的とされている。更に同一一人でも季節的に血 圧は動揺し夏季には低く,冬期にぽ上昇をみる (19・20)とV・われている。 以上の所見は主として統計的観察から出された ものであるが,生命の維持上一定の血圧で良好な 血液循環をなすことが必要なことはいうまでもな いことで,かかる点から循環力学的な見地より理 論的に正常血圧範囲を定め得るものと思われる。 しかしこの方面での研究(21)は最近になってはじ められている程度である。最後に,血圧に関し問題 となる点はその測定法の問題である。どのような 条件の下でどのような方法によって測定するかと いうことである。米英では一定の基準(22)が示さ れているが,本邦では未だ一一・A定の測定基準が示さ れておらす,各人勝手の方法で血圧を測定してい る現状である。本邦でも一定の基準を定めるべき ものと考える。

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以上1血圧とV・うことに関しても未だ不明な点が 存しているのであって,正常一血圧を定めることに つV・ても今後更に血圧の実態調査の強化,血行循 環力学的な研究の進展が望まれる。 次に高血圧症の病因について述べてみる。病因 についての研究は大別して二つの方向からなされ ていると算えられる。一つは何故高血圧症が或範 囲に集積して発見され一一様な分布で発見せられな いかという方向からで,之では遺伝,環境が主と して問題とされてV・る。 もう一つの方向は体内でいかなる機構で高血圧 がおとるかという点から出発してV・るもので,神 経性,腎性,内分泌性の因子が問題とされている ものである。 高血感症と遺伝及び体質 高血圧症を扱ってv・ると誰でも気がつくtと は,高血圧或はその結果的疾患である脳卒中,心 臓死が家系的に集積してみられること及び高血圧 症の人には割合に馬面,短躯の肥満型の人が多い とV・うことである。で先ず遺伝性ということが頭 に浮ぶ。本症を遺伝の観点から系統的に研究した のはWeitz(23)で,遺伝統計学上本症はメンデル の優勢遺伝にあたると述べ,これより諸家の研究 があらわれたC19・24・25)。両親高血圧の家系では子 孫に高血圧の癸生が極めて高率にみられるもの で,高血圧症の発生に遺伝性の存することは疑の なV・事になっている。又高血圧症にかかりやすい 体質というものは高血圧遺伝子のあらわす特性と 極めて密接な関係にあり(25),本症を体質性高1血 圧症とのべている人(19・25)もある。本邦でも高1血 圧症の遺伝についてぽ中沢(19),宮尾(25)氏等のす ぐれた業蹟がある。しかし高血圧症の家系でない のに高血圧患者が発生することが稀でなく,又高 血圧症の発生が濃厚な遺伝性の認められる家系に 遺伝の法則をあてはめてみると優性遺伝に近い が,なお高血圧の発生は理論値と実測値との間に 差がみとめられ(19・25),叉一卵生双生児にみられ る高1血圧症でも,環境の異った所に育つたもの は,同一環境に育った群と比較すると高血圧発生 の一致率が悪いことが認められている(25)。した がって現在本症は遺伝的疾患であるが,一血液型や 色盲の如き判然とした遺伝とは異り,本症の発現 には:数十年を要するので,この間に高血圧遺伝子 の特性発現に対し何か他の因子が関与しているも のと考えられている。即ち高血圧家系であっても 必ずしも子孫に規則通りに高血圧症の発生をみる ものではなV・のである。この遺伝子以外に高血圧 症発現に関与する因子として一番強く考えられて いるのは環境の問題である(19・25)。 高血圧症と環境 環境につbて現在問題とされている主なものに つV・てのべる。 1 気候及び季節 日本での統計(19・27)では鹿児島県に一番高血圧 症少く,北方に行くに従い高血圧症発生率増加し てv・ると。又同一人でも冬季は夏季に比して血圧 の上昇がみられるとの事である(19・20)。たしかに 東南アジア,台湾等には高血圧少い様である。し かしスカンヂナビア人,Xスキモー人には高.血圧 が少いとのことであり,叉同一緯度の地方である が,秋田県では高血圧症発生多く,岩手県では高 血圧症少いこと認められている(エ9)。従って寒冷 が高血圧登生に関係ある如く思われ,たしかに実 験的にも氷水に手足をつけると血圧上昇をみる が,しかし寒冷のみが高血圧症発生の因子とも言 い切れない。Zスキモ一入の如く常に寒冷の土地 に住むものに高血圧症少く,我が国の様な所に比 較的多くに発生をみるのは,他にも因子が存在す る事を考えざるを得す,気候という事に関して は,寒冷という因子以外に四季の変化が存するこ とが影響しているのではないかと思われる。 2 食 習 慣 本邦に於て一村,一地方に脳卒中が特に多発す ることは遺伝以外に後天的原因を考証ざるを得 す,気候のみで説明し得ないとすれば次に問題と なるのは食習慣である。 (1)米食との関係 本邦では米産地に高血圧症多く (19⑳,米飯の偏食,大食の地は必ず脳卒中が多くしか も若い年令に多い。かかる地で,米飯大食の高血圧症 患者に米飯の減食を命じて症状の改善をみたとの報告 がある。しかし,米飯を多食する東南アジアの諸民族 には高血圧症少く,叉米国ではKempnerの米飯果実 食を高血圧症の治療に用い好成績を得ている。又本邦 でも相撲の力士は大食漢であるが,高血圧症をみな い。どうも米飯食と高血圧症との聞に直接の相関関係 を見出すことは困難である。そこで本邦での米飯食で 高血圧をみるものをよく調べてみると,その副食物が 単調で,味噌汁,漬物を主としており,食塩の過荊摂

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取が認められ,米飯大食でも高血圧症発生少い所で は,その副食が海藻その他の蛋白質が豊富に含まれて いるととが認められる。即ち単調な副食物,塩分の過 剰摂取が問題の様に思:われる。 ② 食塩との関係古くから食塩摂取制限が高血圧 症治療に効果がある事知られており,又実験的にも食 塩投与によって動物に高血圧を発生せしめ得る(28,29) tとが認められている。それ故食塩の過剰摂取は高血 圧発生の一因子とされている。それ故本邦での米飯大 食による高血圧は米飯大食そのものではなく,・副食と しての食塩過剰摂取が原因とされている(19・27)。しかし 食塩過剰摂取は高熱環境下の作業員にもみられるが, とれには高血圧発生多いとの報告はない様で,食塩過 剰摂取のみで高血圧の発生をすべて説明し得るもので もない。 ㈲ 蛋白質との関係,米飯食が高血圧症発生に関係 ないとすれば,蛋白質摂取はどうであちうか。腎臓炎 では1血圧の上昇を来し,蛋白質過剰摂取は禁忌であ る。従って漠然と高血圧症には蛋白質:摂取が悪いので はないかと思われている様である。しかし之には実験 的根拠がなく,第二次欧洲大戦での経験ではブタペス ト‘CIOヶ月聞食肉の図取が不能となり,市民に蛋白質 欠乏がみられたが,高血圧症患者の数にはこの期間増 減がなかったとの事(30)であり,叉エスキモF入は主 として肉食であるが高血圧症少く,叉本邦でも東北の 三陸沿岸地方は魚肉を多く摂るが高血圧症少く,逆に 蛋白質摂取量の少い秋田県農民に高血圧症多くみられ ている。従って蛋白質摂取は直接高血圧症発生とは関 係ないものの様である。 ㈲ 脂肪との関係 脂血者に高血圧症患者が多く, 脂肪を多く摂取すると肥満すると考えられている。脳 動脈硬化は血圧の上昇を来し,との動脈硬化と脂肪中 のコレステリンは大いに関係あるといわれている。し かし肥満者でも正常血圧のものもあり,逆に痩せた入 でも高血圧をみるとと珍らしくなく,又過コVステリ ン血症を示すネフ・Fゼ,.黄疸では血圧の上昇をみる tとは殆んどない。それ故脂肪過剰摂取と高血圧症と の聞には直接的な関係はなさそうであるが,高血圧症 の発生に対し,蛋白質,脂肪の中間代謝異常が大いに 関係ありとしている入(31)もある。 ⑤香辛料,酒,煙草との関係 昔から轡型,嗜好 品が高血圧症に対し問題とされている。たしかに之等 のものは食慾を増進し,血管反応を起しやすいので高 血圧症には悪影響を及ぼす。しかし唐辛子をよく食す る朝鮮入や,カv一を食する印度,東南アジアの民族 に特別高血圧が多いとの報告’も見当らず,叉本邦での 研究でも酒,煙草が特に高血圧症に悪いという関係も 見出されていない(19)。案外に長寿の入に酒,煙草を 嗜む入が多いもので,高血圧症でも従来酒,煙草を嗜 んでいた場合には之を厳禁する必要はなく,1目1合 以内の日本酒,コツプニ杯のビーフレ,5,6本の煙草は 許可してもよいとの説さえある(32)。 以上食習慣についてみると高血圧症竜台に関係のあ るのは食塩の過剰摂取であって,その他の物について は直接関係があるとの確かな根拠が見当らない。しか し乍ら全然無関係ではなさそうにも思われる。 高血圧症発生の年次統計(14・15)をみると本邦では戦時 中は高血圧症減少し,戦後再び上昇を示している6こ の原因が何によるかは即断しがたいが,戦時中の食糧 事情の悪化が大いに関係あると思われるのであって, 食物と高血圧症発生との関係は,食塩過剰摂取の外 に,不均衡な食品の過食というととが大いに考慮され てよいものと思う。 3 肉体労働 次に環境として問題となるのは労働である。肉 体的過労は循環系に負荷を与えるので高血圧症に は悪影響がある。日本では一戸当りの耕地面至大 なる農家に高血圧が多いとの報告もみられるが, 都市に於ては肉体労働者と智的労働者との間に一血 圧の差がみられす,更に力士の如き肉体労働激し きものに特に高血圧症多v・こともなく(19),又前 述の如く戦時中は肉体的労働が増加してV・たと思 われるのに高血圧症はかえって減少をみており, 高.血圧症発生と肉体労働との間にはそれ程密接な 関係が存しないと思われる。 4 精神的労働 次に問題となるのは社会的わずらわしさ即ち世 智辛さである。高一血圧症患者は一寸しk精神的興 奮や不眠等によって.血圧の動揺を来し易く,頭 痛,顔面蒼:白,四肢の蕨冷等を来し易い。又文明 の高度な地域程高血圧症が多くみられ,野純な土 地では極めて少い。アフリカに住む黒人には高1血 圧少V・が,米国に永住した黒人には高血圧の発生 が多くなっているとの事である。それ故緊張した 精神生活の連続即ち世智辛い世の中であくせくと した生活を営む事は高血圧症の発生を助けるもの と老えられ,本態性高血圧症の原因,誘因として 精神的因子が強調されてv・る(33)。 しかし精神的 療法のみで治癒しなVb高1血圧症が相当に存在する ものである。 以上主に注目されている環境因子について述べ たが,未だ不明の点が多く,その他の環境因子の

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存在も考慮すべき’ものと思われるが現在の所塞冷 の気候,食塩の過剰摂取,不均衡な食餌の過食, 緊張した精神生活の連続等が高血圧症発生に関係 があると考えられている。しかしいすれも単独の 因子のみでは高血圧の発生を説明し得ないのであ って,多くの環境因子が入りまじって関一与してV・ るものと考えられる。今後更に環境因子を確かめ るためには,血圧の実態調査を広V、地域にわたり 広V・項目について長年月をかけて行うことが最も 肝要と考える。 次に高一血圧は体内のいかなる機構によっておこ るかという観点からの病因説について述べてみ る。一般的に言うと一血圧上昇は,1末梢血管系の 抵抗の増大,2動脈壁の弾力性の減少,3血液粘 稠性の増加,4心搏出量の増加というごとで生す る。所が本態性高血圧症ではすくなくとも初期に は上記4項目中2,3,4の所見が認められないの であって,本態性高血圧症発生は1の因子によっ ておこるものとされている。この末梢血管系の抵 抗の増大とbうことがいかなる原因によっておこ るかということが高血圧症の病因として種々研究 されているわけで,その研究方向は三つに大別し うる。即ち二次的症候性高血圧はその原病別に分 類すると,心性,腎性,脳神経性,内分泌性の4 つのものに大別し得られるが,このうち心性のも のは末梢一血管系の抵抗増大という因子とは直接関 係がないので除外し,他の三つの原病既知な症候 性高血圧にならって,蓮池,「神経性,内分泌性の 三つの方面がら本態性高血圧症の原因が追究され てV・るのである。しかも1血圧は循環せる血液の血 管内の圧であって,血圧上昇ということはカの問 題であって形の問題ではなく,高血圧症に於ては 多くの他の疾患と異IJその主症状を示す病変は死 亡後には認められなv・。従って死後剖検により病 因を解釈することは無理があり,血圧上昇機転に 関する面心は主として生理学,臨床家の方面がら なされている。即ち何らかの原因により細動脈の 緊張漸進乃至攣縮がおこり末梢血管の抵抗増加し 血圧上昇をみるという機能説にしたがって研究さ れ,その原因として神経性,腎症,内分泌性の因 子が追究されているのである。 5 神経性因子 ・前にも述べた如ぐ種々な精神的影響で血圧の上 昇を来すものよく見られ,精神的療法,鎮静剤投 与で症状の改善をみる高血圧症がしばしばみられ る。又聞脳を中心とした疾患では高血圧を伴うも のあり,叉交感神経は.血管の収縮を司っている。 脳圧充進をみる疾患には高血圧をよく伴う。そし てHerringの有名な頸動脈洞神経切除即ち調圧 神経切除により実験的高血圧発生が成功してV・ る。この実験的神経性高.血圧では本態性高血圧症 の初期の所見と相似た点が多く,本態性高血圧症 の発生に神経性因子』の関与は確実とされてV、る。 しかしながら実験的神経性高血圧症は永』く高血圧 を維持し得す,又本態性高血圧で自律:神経遮断剤 の無効のものもあり,叉本態性高一血圧症では頸動 脈洞神経の機能は正常である等のごとが認められ ている(34・35)。したがって本症の発生に神経性因 子の関与は確実と思われるが,之のみで本症の成 因を説明し得るとも思われな㌔㌔

6 腎性因子

上記神経性因子のみで説明困難であるとすれば 他に体液性に直接叉は割接的に末梢細動脈に作用 して並L圧上昇を来す機転を考えざるを得なV・。そ こで次に問題となるのは腎性因子である。種kの 腎疾患で高血圧の認められるのは周知の事実であ って,1818年Volhardは腎虚血の結果或化合物 が腎より生じ之が細動脈の攣縮をおごし高血圧を 来すとの説を出した(36)。その後1934年Goldblatt によって両側細動脈狭窄による実験的高並エ圧の惹 起に成功し37),腎が体液性の機序により高血圧 をおごすとして大V・に世論を集めた。そしてその 後高1h1圧症発生に対する腎の役割が色々と研究さ れ,種々腎より昇圧物質がとり出されるに至って V・る(34・38・39)。しかし本態性高血圧症では初期に は腎血流量に変化なく,又腎に組織学的病変が認 められす腎虚血.が考えられなV・が,実験的腎高血 圧症では,腎虚血,腎一血流量減少が根本的原因で ある。又実験的腎高.血圧症では一血中に昇圧物質が 認められるが,初期本態性高血圧症では血中に昇 圧物質が認められなV・。そして叉実験的腎高血圧 症より抽出された昇圧物質を用いては長期聞の高 血圧をつくり得なV・。 更に両側腎捌出動物に於ても高!血圧症を惹起し うるとの報告もある(34・40、。それ故高血圧症発生 に対して,腎性因子の関与は疑問視される点が多 いが,本症の進展には腎性因子が極めて密接な関 係を有することは確実の様であって,高血圧症の

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約10%はその経過中に腎症状の悪化を来し,悪性 高血圧症の大半は重篤な腎不全の状態で死亡して kり,今日でもなお本症の発生に腎性因子が重要 視され色々と研究されているのである。 7 内:分泌性因子 腎性因子以外に体液性因子として重要視される のは内分泌性因子である。Basedow氏病, Cus− hing氏病,末端肥大症, Pheochromocytoma・ 糖尿病等の内分泌性疾患に高血圧の発生がみら れ,又婦人では更年期以後に血圧上昇をみるもの が多い。しかし本態性高血圧症では血中PBI(蛋 白結合沃度)の増量が認められす甲状腺機能昂進 の証拠がなく,糖尿病ではランゲルハンス氏島の 機能低下が高血圧に関係あるのではなく,反ラ氏 島国(甲状腺,下垂体,副腎)の機能:昂進が血圧 上昇に関係あるものといわれ,叉去勢婦人とそう でなV・者との間に響胴旺発生率に差がなV・といわ れ結局内分泌三宮で高血圧と関係ありと考えられ るものは主として下垂体,副腎であろうとして研 究されて来ている。このうちPheochromocyto− maによる高血圧はアドレナリン分泌によるとい われるが,アドレナリンの作用は心搏出量を変化 させ,交感神経系の興奮状態をおこし,叉選択的 に脈管の収縮をおこす等本態性高.血圧症の時の状 態と異るため,アドレナリンは高血圧症における 昇圧物質とはみなされす,したがって高血圧症に 関与する副腎はアドレナリンを分泌する髄質では なく,皮質の部分が主であるとされて来ている。 又下垂体では,高血圧を伴う疾患は前葉が主であ るため,1血圧に関与するのは前葉の部分とされを の中から色々昇圧物質を研索されたが発見され す,近年の内分泌学の進歩と共に.下馬体疾患に 由来する高血圧は前葉より分泌されるACTHを介 するものと考えられて来てV・る。そして実験的に

ACTHや副腎皮:質からのホルモンDOCAの投

与により高th1圧をつくることに成功し(41・4P・),1937 年Selyeは副腎皮質機能昂進を本態性高血圧症 の成因に結びつける適応症候群なる説を出した (41)。即ち人間生活中におこるすべての外的刺戟 Stress(過労,心労,中毒等)ばその刺戟の種:類 如何に拘らす人間に対して同一反応を惹起する。 このStressに対する反応は生体の防衛反応であ るがこの際Stres6に対し最も敏感に反応するの

は下垂体で,之によりACTHを分泌し, ACT

Hは副腎皮質を刺戟してそのホルモン分泌を促 す。この時副腎物質からのホルモン分泌の調和が

破れ,DOCAの分泌増加を来すと, DOCAの作

用により腎障碍と高血圧を惹起すると説明し,一 応高血圧症の成因を解明するものとして大V・に反 響を呼んだのである。しかしその後DOCA, AC ・THによる実験的高血圧発生には食塩の投与を必 要とすること,叉実験的内分泌性高血圧惹起のた めには生体内分泌:量としては考えられぬ程の大量 のホルモンを必要とすること,本態性高血圧症で は初期には尿中にCorticoid排泄の増加をみなv・ こと,叉本態性高血圧症の初期には腎障碍がみら れないが,実験的内分泌性高血圧では必ず腎障碍 をみる虚心より,この適応症候群なる概念を高血 圧症発生の因子としてそのままあてはめることに は疑念が持たれている(43)。 以上体内昇圧機転として神経性,四六,内分泌 性の因子について述べたが,いすれも高血圧症発 生に密接な関係を認めるが,しかしいすれも単独 には高血圧の雛生を解明し得るに至っていなV・。

8 ATPase M

所が昭和28年に京大前川教授が新たな観点から 薪説を出された。即ち高」血.圧がおこるためには末 稚細動脈の抵抗がおこることが必要であるが,こ のためには脈管の筋肉の収縮を必要とし,この収 縮をおこすためには莫大なエネルギーを要する。 このエネルギー発生の源はATPにあって, ATP −ATPase系の障碍によって高エネルギーが発生 し脈管の収縮をおこし高血圧を来すというのであ る。即ちATPaseが特に腎から一血中に遊離する のが高エネルギー発生をもたらし高血圧をおこす のであって,木の葉の散るのは万有引力によるも ので,風が吹くから散るとか,枯れて落ちるとV・ うのは誘因にすぎす,従来の高血圧の成因に対す る諸説は木の葉に対する風の如きもので,このA TPase説が万有引力に相当する高血圧症の真因で あると発表さ.れたのである(4の。興味ある学説で あるが,未だ諸人の追試が少く,その真価は今後 の批判にまつべきものと思われる。 以上色々と述べたが,高血圧というものは正常 状態ではなく異常状態であって,生体の調和が破 れたものとも疑えられるのである。かかる観点か らみれぼ,一血圧の低V・方への調和の破れというも

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のも考えられるわけで,低一血圧症,降圧物質(体 内での)の研究も必要と考えられるが,この方面 での研究(34・45)は本邦ではあまり多くなV・様であ る。 総 括 以上本態性高血圧症の病因について今迄の主な 丈献をもとにして述べたが,近年の学問の進歩に も拘らす,未だに本症の病因については一元的な 解釈を下しうるものは見出されてV・なV・。しかし ながら上述の如く色k’と関係のある因子が取出さ れており,現在の所一等の諸因子が色k’と組合さ つて高血圧症の発生に関与しているものの様であ る。今後の学問の進歩につれて本態性高血圧症と V・うものはいくつかの疾患に分類される可能性が あり,本疾患は単一疾病ではなく一つの症候群で ある様にも思われる。結論として本疾患は遺伝を 基盤とした体質性疾患で種々の環境因子,神経性 因子,体液性の腎性ならびに内分泌性因子の多方 面の関与のもとにその発生をみるものといって差 支えなV・ものと思う。 引 用 文 献

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参照

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