臨床報告
嗜鑛鷹49第犠、劉言〕
謬伝に問題のある膵・胆管合流異常の術式選択
一術後5年半写経平等からみた検討一
東京女子医科大学 消化器外科(主任:羽生富士夫教授) ハラダノブピ コ イマイズミ トシヒデ スズキ マモル ナカサコ トシァキ原田信比古・今泉 俊秀・鈴木 衛・中外 利明
コマツ エイジ キムラ タケシ ハトリ タカシ バニユウフ ジ オ小松 永二・木村 健・羽鳥 隆・羽生富士夫
(受付 平成2年12月18日) はじめに 膵・胆管合流異常に対する基本術式は膵液と胆 汁の相互逆流を防止する肝外胆道切除,胆道再建 術,・いわゆる分流手術である.しかし,術後に側 側遺残嚢腫による圧迫や膵頭部主膵管の変形によ る膵液流出障害を来し,急性膵炎発作や慢性膵炎 による落痛のため多次手術を必要とする症例もあ る.帯側の病変からみた分流手術の限界と膵頭切 除の適応を明らかにするため,以下の検討を行っ た. 対 象 1968年1月から1989年12月までの22年間に教室 で手術した膵・胆管合流異常は148例で,このうち 癌合併のない術後5年以上経過例は60例であっ た.60例中膵側に問題のみられた14例を対象とし た.対象の内訳は男2例,女12例,年齢は17∼55 歳平均30.9歳(最終手術時),初回手術からの経 過期間は5年6ヵ月から23年10ヵ月,平均14年2 ヵ月であった. 以下,14例の胆管および合流定め形態,既往手 術と膵側遺残病変,最終手術術式について検討し た. 成 績 対象症例14例の胆管形態についてみると全例に 先天性総胆管拡張症を伴っており,うち戸谷1型 が6例,戸谷IVA型が7例,円筒状拡張型が1例で あった.また膵・胆管合流形態では総胆管円筒状 拡張の1例が複雑な膵頭部膵管奇形を有していた が,他の13例はいずれも胆管が膵管に合流するい わゆる胆管型1)であった(表1). これら14例のうち12例は膵・胆管合流異常に対 して何等かの既往手術を受けていた.初回手術の 術式は胆管空腸側々吻合術が4例,胆管十二指腸 側々吻合術が3例,肝外胆道切除と肝管空腸母様 吻合術5例,同じく肝管十二指腸間空腸有茎移植 術が2例であった(表2). 術後帯側にみられた病変の内容は,膵側遺残嚢 腫および嚢腫内結石が7例,三石を伴う慢性膵炎 が5例,遺残嚢腫漏斗部変形を伴う急性膵炎が1 例,複雑な膵頭部膵管奇形遺残による急性膵炎が 1例であった(表3), 表4は膵側遺残病変を有する症例の一覧であ る.症例1か日9は膵側の病変が,症例10から12 は二言の病変が最:終手術の主な手術理由となった 症例である.また,症例13,14は膵側に病変を認 Nobuhiko HARADA, ToshiLide IMAIZUMI, Mamoru SUZUKI, Toshiaki NAKASAKO, Eiji KOMA−TSU, Takeshi K:IMURA, Takashi HATORI and Fujio HANYU〔Department of Surgery(Director:
Prof. Fujio HANYU), Institute of Gastroenterology, Tokyo Women’s Medical College〕:Surgical management for patients with anomalous arrangement of the pancreaticobiliary ductal system and with
表1 膵側遺残病変症例の胆管形態と合流形態 【胆管形態】 【合流形態】
戸谷1型
ヒ谷IVA型
筒状拡張 6例 V例 P例 胆膵管 型
@管 型
。雑奇形
13例 O例 P例 表2 膵側遺残病変症例の初回手術術式 バイパス術 胆管空腸側々吻合術 胆管十二指腸側々吻合術 分流手術 肝管空腸端側吻合術 肝管十二指腸間空腸有茎移植術 4例 3例 5例 2例 計 14例 表3 膵・胆管合流異常術後にみられた膵側の病変 膵側遺残嚢腫・嚢腫内結石 慢性膵炎・膵石 遺残嚢腫漏斗部変形・急性膵炎 複雑膵管奇形遺残・急性膵炎 7例℃ 5例 1例 1例 計 14例 めるものの全く症状がなく,経過観察中の症例で ある. 症例1,2および11は初回手術時,胆管空腸側々 吻合術あるいは胆管十二指腸側々吻合術(以下, バイパス術)が行われた.症例1は再手術時,拡 張胆管漏斗部に変形がみられ,剥離操作が困難で 術中主膵管を損傷したため膵頭十二指腸切除術 (以下,PD)を行った.症例2は膵頭部膵管の複雑 奇形を伴っており,初回手術時,膵液のドレナー ジ確保のためにはPDの適応と考えられたが12歳 という年齢を考慮し,総胆管を経由した膵液のド レナージを期待してバイパス術を行った.しかし 術後4年目に膵頭部膵管内に非陽性結石が確認さ れ,急性膵炎を併発したため膵液のドレナージ不 良と判断し,PDを施行した.症例11は肝内結石に よる胆管炎が主な手術理由であったが,同時に膵 頭部膵管内に切石不可能な結石を伴う慢性膵炎が みられ,PDを施行した.また,症例3∼5および 10は初回バイパス術を受けたのち分流手術に変更 された症例で,症例6∼9および12は初回手術で 分流手術を受けた症例である.分.流手術後の9例 表4 膵・胆管合流異常術後5年以上経過主脚遺残病変症例 症 例 最終手術 No. 年齢 性 初回手術 途中手術 膵亡師奪 1。 37 男 バイパス術(他医) 嚢腫漏斗部変形 }性膵炎 PD 2. 17 女 バイパス術 膵管奇形遺残 }性膵炎 PD 3. 40 女 バイパス術(他医) 分流手術(他医) 遺残嚢腫・結石 やD 多 .4. 19 女 バイパス術(他医) 分流手術(他医) 遺残嚢腫・結石 竡c嚢腫破裂・膵石 PD 次 5. 23 女 バイパス術(他医) 分流手術(他医) 膵石・膵嚢胞・ 攝ォ膵炎 PD 6. 37 女. 分流手術 IHS切石・再吻合術 山石・慢性膵炎 十二指腸温存膵頭全切除 手 7. 35 女 分流手術 再吻合術 膵石・慢性膵炎 膵管空腸側々吻合 8. 55 女 分流手術(他医) 遺残嚢腫・結石 PD 術 9. 32 女 分流手術 遺残嚢腫・結石 ¥二指腸狭窄 空置的胃切除 例 10. 3q 男 バイパス術(他医) ①分流手術A肝左葉切除・ @右肝管形成再吻合 遺残嚢腫・結石 ¥二指腸狭窄 胃切除・嚢腫十二指腸 熨堰EIHS一石 11. 17 女 バイパス術(他医) バイパス再吻合(他医) 礎石・慢性膵炎 PD 12. 42 女 分流手術 遺残嚢腫・結石 遺残嚢腫切除・ フ管形成再吻合 経観 13. 26 女 分流手術 膵石 過去 例 14. 22 女 分流手術(他医) 遺残嚢腫・結石 PD:膵頭十二指腸切除術, IHS:肝内結石中6例に膵側遺残嚢腫および嚢腫内結石が,3例 に一石を伴う慢性膵炎がみられた.膵側遺残嚢腫 の再切除あるいは膵石の切石が困難な5例に対し てPDまたは十二指腸温存膵頭全切除術を,1例 に膵側遺残嚢腫再切除術を,1例に膵管空腸側々 吻合術を行った.また,十二指腸狭窄を来した2 例に対しては胃切除と嚢腫消化管内痩術を行っ た. 多次手術に至った12一中,最:終手術でPD,十二 指腸温存膵頭全切除術,膵管空腸側々吻合術,遺 残嚢腫再切除術,嚢腫十二指腸内痩術を行った11 例は,膵炎発作の再発もなく,術後経過良好であっ た.しかし,遺残嚢腫と嚢腫内結石で急性膵炎を 来し十二指腸狭窄に至った症例で,空置的胃切除 のみを行った症例は,現在も時折疹痛発作を認め 外来で慎重に経過観察を行っている. 症 例 症例5.23歳,女性. 8歳時,総胆管嚢腫の診断で嚢腫空腸側々吻合 術が行われていたが,その後も繰り返す腹痛発作 のため,17歳時に肝外胆道切除,肝管空腸端側吻 合術が行われた.しかし分流術後も症状の改善が みられないためERCP, CTを施行したところ膵 側遺残嚢腫と嚢腫内結石,および膵頭部膵管内に 結石がみられた(写真1,2).また膵尾部には仮 性嚢胞がみられた.分流手術後の膵側遺残嚢腫お よび唾石,膵嚢胞を伴う慢性膵炎と診断し,全胃 幽門輪温存膵頭十二指腸切除,尾側膵嚢胞切除, 残膵膵管切開膵管空腸側々吻合術を施行した(図 1).術後2年,蝉騒なく糖尿病の発症もなく社会 復帰している. 症例6.37歳,女性. 28歳時に膵・胆管合流異常,戸谷IVA型の先天性 総胆管拡張症の診断で,肝外胆道切除,肝管十二 指腸間空腸有茎移植術を行った.翌年,右肝内結 石を伴う胆管炎で,肝内結石切石と肝管空腸再吻 合術を行ったが,その後もしぼしぼ肝内結石形成 と胆管炎を繰り返し,空腸痩からの切石を行って いた.再手術の8年後,高アミラーゼ血症を伴う 腹痛発作にて入院.ERCPで膵頭部の膵癌(写真 3)と主膵管の慢性膵炎像がみられた.醜態を伴 写真1 症例5.最終手術前のERCP像:膵側遺残嚢 腫と結石による透亮像を認めた(矢印). 写真2 症例5.最終手術前のCT像:膵頭部に遺残 嚢腫(矢印)と嚢腫内結石を認めた. イ 亀
舩・孝i礁
〃 r:}ン .・ぞ切除範囲 再建法
図1 症例5:全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除,尾 側膵嚢胞切除,離離膵管切開膵管空腸側々吻合術写真3 症例6.最終手術前のERCP像:拡張した膵 頭部膵管内に膵石による透亮像がみられた(矢印). .纏.
嚇獣,麟
/忠魂,ボ鉾1
写真4 症例6.十二指腸温存膵頭全切除術,術中写 真:膵を門脈直上で切離し脱離,十二指腸より剥離 し,膵頭部のみを全切除した. / ●亀 〆 切除範囲 再建法 図2 症例6:十二指腸温存膵頭全切除,右肝管形成 肝管空腸再吻合術無職ぱ羅
轟轟
a げ鎌 欝飾 隔鰯陶
画騨
b 写真5 症例6.切除標本組織像:ルーペ像で拡張し た合流部主膵管(MPD)と膵実質の線維化がみられ た(a).弱拡大(x10)では腺細胞の脱落,萎縮と 不規則な線維化を認めた(b). う慢性膵炎急性増悪の診断で,十二指腸温存膵頭 全切除術,肝内結石切石,右肝管形成肝管空腸再 吻合術を行った(写真4,図2).切除標本の組織 像で膵は腺細胞の脱落萎縮と不規則な線維化がみ られ,慢性膵炎と診断した(写真5a, b).術後1 年,胆管炎,膵炎いずれも再発なく経過良好であ る. 症例12.42歳,女性. 32歳時に,妊娠を契機に発症した膵・胆管合流 異常,戸谷IVA型先天性総胆管拡張症の診断で,肝 外胆道切除,肝管空腸轟轟吻合術を行った.初回 手術時,嚢腫壁が菲薄で追求切除が困難なため, やむを得ず膵側の嚢腫の一部を遺残した.10年後写真6 症例12.最終手術前のCT像:膵頭部に遺残 嚢腫と嚢腫内結石を認めた(矢印). 写真7 症例12.最終手術前のPTCDおよびERCP 同時造影像:左肝内結石(黒矢印)と膵側遺残嚢腫 (白矢印)がみられた. グ へ 劉 PTCD 、
切除範囲
図3 症例12:膵側遺残嚢腫再切除,左右肝管形成, 肝管空腸再吻合術 胆管炎症状で来院し,CTで左肝内胆管の拡張,左 肝内結石,および膵側遺残嚢腫,嚢腫内結石を指 摘された(写真6).肝側病変に対しては,経皮経 肝的胆道鏡下切石術を行った後,左右肝管形成, 再吻合術を,膵側遺残嚢腫に対しては追求再切除 術を施行した(写真7,図3).嚢腫内結石の主成 分は蛋白質と多糖類であった.術後1年,経過良 好である. 考 察 膵・胆管合流異常,先天性総:胆管拡張症に対す る外科治療は,古くは嚢腫十二指腸側々吻合術な どいわゆるバイパス術が行われていた.しかし, 術後の繰り返す胆管炎や遺残胆道の発癌2)∼4)の問 題から革具胆道を遺残する術式は今日では捨て去 られ,現在では膵液と胆汁の相互逆流を遮断する 号外胆道切除,胆道再建術が基本術式とされてい る.しかし,術後長期経過例の中には胆管炎や肝 内結石などの引倒の問題のほかに,繰り返す膵炎 様腹痛発作などの膵側に問題があると考えられる 症例も経験される.今回検討した癌合併のない術 後5年以上経過例60例のうち,14例(23.3%)に 嫌々遺残嚢腫や,膵石を伴う慢性膵炎および急性 膵炎の発症の原因と考えられた膵頭部膵管奇形5) など,膵側の病変がみられた.うち8例に対して PDまたは十二指腸温存膵頭全切除術を,1例に 膵側遺残嚢腫再切除術を,1例に膵管空腸側々吻 合術を,また町田遺残嚢腫を伴う急性膵炎で十二 指腸狭窄を来した2例に対し胃切除と嚢腫消化管 内痩術を行った. 分流手術後の膵島にみられる問題には,膵液 drainageに対する評価の問題と手術操作による 遺残嚢腫および遺残膵石の問題があげられる.症 例5は初回のバイパス術後も繰り返した腹痛発作 に対して,膵側の病変の存在を考えずに分流手術 のみが行われたため,再手術後も症状の改善がみ られず結局多次手術が必要であった.一方,症例 6では初回分流手術後,肝内結石と胆管炎で肝管 空腸再吻合術と空腸痩からの切石を繰り返してい たが,術後9年目にして初めて胆管炎を伴わない 腹痛発作がみられた.症例5の経験から西側病変 の存在を疑い検査したところ転石を伴う慢性膵炎急性増悪と診断でき,膵病変に対する根治手術が できた.症例12では初回手術時,膵頭部の炎症が きわめて高度で拡張胆管漏斗部を遺残せざるをえ なかったが,10年後肝内結石による胆管炎で手術 した際に,塾側の遺残嚢腫を合流部まで追求し再 切除することで,膵側の病変に対しても根治的な 手術ができた.本症例のごとく膵側の症状がみら れず,膵液drainageが保たれていると判断され る場合には,遺残嚢腫の再切除で十分根治的と考 えられる.症例5および6では初回手術直後はみ られなかった膵管内結石,県側遺残嚢腫内結石や 慢性膵炎が症状発現時にはみられ,経過とともに 膵実質が荒廃したと推察される.すなわち本来膵 液のdrainageが不良であった症例や手術時に嚢 腫を遺残させた症例では,長期経過のうちに膵液 のうっ滞をひきおこし,膵石の形成や急性膵炎を 繰り返し,尾側膵の荒廃に至ると考えられる6). 軍側に問題のある症例に対する外科治療の原則 は,この膵液うっ滞をいかに改善し良好な流出路 を確保するかである.分流手術の際の拡張胆管漏 斗部の処理に関しては諸家により様々な工夫が報 告されているが7)∼9),羽生ら10}11)は膵・胆管合流異 常に膵石が合併する場合,膵液のdrainage sys− temが保たれている例では分流手術のみで経過 は良好であるが,同時に複雑な膵奇形や膵管奇形 を有して膵液のdrainage systemの不良な例で は,PDが最も根治的な術式であったと報告して いる.初回手術前に膵液のdrainage systemが保 たれているかどうかの判断はきわめて困難で,現 状では複雑な膵管奇形を有する症例以外は,一期 的に膵頭切除を施行するかどうかは判断に逡巡せ ざるを得ない。しかし,分流手術後長期経過例の 中にこのような:国側の病変が生じている以上,初 回手術前に膵液のdrainage systemを予測し膵 頭切除の適応を決めることが今後の課題であろ う. 一方,本疾患が良性疾患である以上,PDを行う 場合でも臓器機能温存のため切除範囲を最小限に とどめる配慮もなされるべきである.術後の消化 吸収機能の障害を軽減するため全胃幽門輪温存膵 頭十二指腸切除術は好個の適応と思われる.さら に最近,今泉ら12)は全胃全十二指腸を温存し膵頭 部のみを全切除する新術式を報告しており,症例 によっては選択されるべき術式であろう. 結 語 膵・胆管合流異常の術後5年以上経過例で,膵 側遺残嚢腫や膵石を伴う慢性膵炎などの,膵病変 を合併した14症例の手術成績を検討し,以下の結 論を得た. 1)多次手術症例12例中11例に最:終手術で膵液 のdrainage systemを確保する手術を行い良好 な成績を得た. 2)分流手術のみでは膵液の流出障害を来すと 危惧される症例に対しては,初回手術時から膵頭 切除の適応をも考慮する必要がある. 文 献 1)戸谷拓二:膵・胆管合流異常の定義とその問題点, とくに診断基準をめぐって.胆と膵9: 1139−1144, 1988
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creatic terrninal choledochus !2−years after primary excision of a giant choledochal cyst.
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10)羽生富士夫,今泉俊秀,中村光司ほか:膵・胆管 合流異常の手術.胆と膵 9:1205−1213,1988 11)羽生富士夫:膵胆管合流異常の臨床.東女医大誌 58 :1009−1032, 1988 12)今泉俊秀,羽生富士夫,鈴木 衛ほか:膵と胆管 を十二指腸吻合で再建しえた十二指腸温存膵頭全 切除の新術式.胆と膵 11:621−626,1990