Title
山火事跡地の植生の再生にかかわる種子の発芽特性( 内容の
要旨 )
Author(s)
, 敏
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第133号
Issue Date
1998-09-11
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2474
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(国籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及 び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 負 払 敏 (中華人民共和国) 博士(農学) 農博甲第133号 平成10年9月11日 学位規則第4粂第1項該当 連合農学研究科 生物環境科学専攻 岐阜大学 山火事跡地の植生の再生にかかわる種子の発芽特性 主査 岐 阜 大 学 教 授 菊 池 多賀夫 副査 静 岡 大 学 教 授 澤 田 均 副査 信 州 大 学 教 授 久 馬 忠 副査 岐 阜 大 学 助教授 安 藤 辰 夫 論 文 の 内 容 の 要 旨 山火事によって植生は顕著な損害を受けるが,埋土種子の少なくとも一部は生き残り,火 事後に飛来する種子とともに植生の再生に大きな役割を果たす。本研究では,山火事跡地の 植生の再生機構を明かにする研究の一部として,山火事跡地を想定した条件に対する種子の 発芽特性を取り上げている。日本の山火事跡地に実生で先駆的に出現する一般的な種は,文 献によると約40種であるという。そのうちの30種を取り上げて,播種前の加熱処理,発芽 培養途上の加熱処理,培養条件としての光照射などの諸条件を設定し,それらに対する種子 の発芽特性を解析して山火事に遭遇したときの種子の発芽反応の把握を目指した。 発芽培養の温度条件として,9時から19時までは25℃に保ち,19時から2時間かけて15℃ に下げ,その後21時から翌朝7時まで15℃を保ち,7時から9時までの2時間で25℃に上げて いる。この温度条件は各実験に共通で,論文の記述ではこの条件を一般条件と呼んでいる。 発芽実験によって得られた主な結果は以下のようであった。 1)温度を上記の一般条件とし,光を暗条件とした培養で,試験に供された30種のうち の15種が発芽した。そのうちの3種は1年程度の休眠の後に発芽したが,その他の12種に は休眠は特に認められなかった。 2)50℃,80℃,100℃,120℃,130℃,140℃,150℃に調整した熱風乾燥横に種子 を5分間入れて加熱前処理をしたあと発芽培養を行った。この処理で発芽が明らかに促進さ れた種が30種のうちに6種あった。加熱処理に中性の反応を示した種が15種あり,そのうち の9種は強い耐熱性を示した。残りの9種はこの実験では発芽しなかった。 3)一般条件では発芽しなかった15種に難発芽性を示した3種を加えた18種について一 定期間発芽培養を行った後,昼間50℃,夜間15℃の加熱処理を行い,再び一般条件に戻し -12一
て培養を継続した。この実験では,加熱処理の段階まで未発芽であった種子の発芽の誘導が, 7種で認められた。 4)朝7時から19時までの昼間に60,000luxの光を照射する明条件での培養を行い,暗条 件での結果と比較した(加熱処理なし)0明条件で発芽が促進された種が30種のうちの4 種で,明・暗いずれの条件でも高い発芽率で発芽する種が9種あった0 これらの発芽反応は,多くの種で,複数が複合して現れた0そのような発芽特性を種毎に 比較して,1)一般条件で容易に発芽し,加熱前処理に対して強い耐熱性を示し,光照射に 対しては中性の反応を示すノゲシなどの7種,2)同様の特性を持つが・光照射で発芽が促 進されるオニタビラコ,ダンドボロギクの2種,3)これらの2群に比べて耐熱性が弱いイ タドリなどの3種,4)加熱前処理による発芽促進性を持つ一方一般条件でも発芽するヤマ ハギなどの3種,5)加熱前処理による発芽促進性と発芽培養途上の加熱による促進性を併 せ持つヒヨドリジョウゴなどの3種,6)発芽培養途上の加熱によって発芽が促進されるヨ ゥシュヤマゴボウなどの4種,7)本研究では発芽がほとんど見られず,従って発芽の条件 を見いだせなかったアカメガシワ,サンシヨウなどの8種・を区別した0この7種群をさら にまとめると,1)一般条件で容易に発芽する種群,2)一般条件でも発芽できるが加熱処 理によってさらに発芽が促進される特性を併せ持つ種群・3)一般条件では発芽しない難発 芽性を持ち,加熱処理によって発芽が誘導・促進される種群,の3群となった0一般条件で 容易に発芽し,加熱による発芽促進性を持たない第1の種群は山火事跡地に限らず一般の先 駆種に共通するものと考えられる。しかし,その多くに種子の強い耐熱性が認められ,この 点に山火事との関連が認められ,注目される0第2と第3の種群はともに難発芽種子を持ち, 加熱で発芽が誇尊・促進される0しかし,有効な加熱処理は第2の種群では,培養に対する 前処理としての加熱であり,第3の種群では主として培養途上における加熱であった0この 結果によって,加熱の効果が有効に発現されるために特種子が置かれている状況が問題とな ることが明らかになった。 山火事跡地における実生の発生には,強い耐熱性や加熱による発芽促進性のように,多く の種で何らかの形で熱が関わっており,さらに加熱による発芽促進効果については種子の貯 蔵環境が関与することがわかった。 審 査 結 果 の 要 旨
日本の山火事跡地に実生で先駆的に出現する一般的な種は,文献によると約40種
であるという。そのうちの30種を取り上げて,播種前の加熱処理,発芽培養途上の
加熱処理,培養条件としての光照射など,山火事とその跡地を想定した諸条件を設 定してそれらに対する種子の発芽反応を解析し,山火事跡地に発芽してくる種の種 子発芽様式を明らかにすることを目的にした研究である・ 発芽培養の温度条件は,9時から19時までの昼間■は25℃,21時から翌朝7暗まで の夜間は15℃で,移行時の2時間でそれぞれの温度に調節しているが,この温度条 件は各実験に共通で,論文の記述ではこの条件を一般条件と呼んでいる0発芽実験によって得られた主な結果は以下のようであった0 1)温度を上記の一般条件とし,光を暗条件とした培養で,試験に供された30種
のうちの15種が発芽した.。そのうちの3種は1年程度の休眠の後に発芽したが,そ
の他の12種には休眠は特に認められなかった。 2)50℃,80℃,100℃,120℃,130℃,140℃,150℃に調整した熱風乾燥機に種子を5分間入れて加熱前処理をしたあと発芽培養を行った。この処理で発芽が
明らかに促進された種が30種のうちに6種あった0加熱処理に中性の反応を示した
種が15種あり,そのうちの9種は強い耐熱性を示した0
3)一般条件では発芽しなかった15種に難発芽性を示した3種を加えた18種に
っいて一定期間発芽培養を行った後,昼間50℃,夜間15℃の加熱処理を行い,再 び一般条件に戻して培養を継続した0この実験では,加熱処理の段階まで未発芽であった種子の発芽の誘導が,7種で認められた0
4)朝7時から19時までの昼間に60,0001uxの光を照射する条件で培養を行い,暗条件での結果と比較した(加熱処理なし)0明条件で発芽が促進された種が30種
のうちの4種で,明・暗いずれの条件でも高い発芽率で発芽する種が9種あった0
これらの発芽反応は,多くの種で,複数の反応が複合して現れた0そのような発芽特性を各々の種について比較し,発芽試験に供された30種を7群に区分した・そ
れをさらに要約して,1)一般条件で容易に発芽する種群,2)一般条件でも発芽
できるが加熱処理によってさらに発芽が促進される特性を併せ持つ種群,3)一般
条件では発芽しない難発芽性を持ち,加熱処理によって発芽が誇導・促進される種 群にまとめた。一般条件で容易に発芽し,加熱による発芽促進性を持たない第1の 種群は一般の先駆種に共通するものと考えられるがその多くに種子の強い耐熱性が 認められ,山火事との関連で,この点が注目されるとしている0第2と第3の種群 はともに難発芽種子を持ち,加熱で発芽が誘導・促進されるが有効な加熱処理は第 2の種群では.,培養に対する前処理としての加熱であり,第3の種群では主として 培養途上における加熱であった0この結果から,加熱の効果については種子が置か れている状況が問邁となることを指摘した。山火事跡地における実生の発生には多くの種で何らかの形で熱が関わっているこ
とが示されたが,一般条件で容易に発芽するという先駆植物共通の特性を持つ種群に強い耐熱性を認めたこと,加熱による発芽促進効果の発現には種子の貯蔵環境が
関与し,その条件は種間で異なることを見いだしたことは本研究による新知見とし て評価される.以上について,審査委貞全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の学
位論文として十分価値あるものと認めた・[学位論文の基礎となる学術論文]
叢敏・津田智・菊池多賀夫・1997・室内に11年間保存されたヌルデを含む先駆性
種4種の種子の発芽能維持.植物地理・分類研究,45:103-107・
-14-叢敏・菊池多賀夫,・1998・山火事跡地の植生の再生にかかわる種子の発芽特性. 植物地理・分類研究,46:149・159.(印刷中)