流体中における柔軟物体の挙動に関する研究
著者
横山 真男
学位授与大学
東洋大学
取得学位
博士
学位の分野
工学
報告番号
甲第240号
学位授与年月日
2009-09-25
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00003951/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja学位請求論文論旨 流体中における柔軟物体の挙動に関する研究 機能システム専攻博士後期課程3年 46AOO51001横山真男 柔軟な物体は外力を受けてどのように変形し、またその変形が物体内外の環境にどのような影響をも たらすのかを明らかにすることが本研究のテーマである。流体との相互作用に着目し、柔軟物体の流体 力による変形とその変形に伴う流れ場への影響を取り扱い、特に、柔軟物体の変形や振動における内部 流動を考慮にいれ、内外の流れと物体の連成問題について研究を行った。これまでの柔軟物体と流れに 関する研究では、外部流れによる流体力が物体の変形に対する唯一の外部強制力として扱われ内部流動 による影響は考慮されていなかった。例えば赤血球や液滴などは内部に流体を含んでいるが、変形と内 部流動の関係にまで踏み込んで議論された研究はない。またそれらのような変形と内部流動の関係を調 査するにあたって、物体や流体の物性値を様々に変えて実験や観測をすることは困難である。本研究で は柔軟物体や流体の物性値を様々に変えることが可能な数値シミュレーションを用いて柔軟物体の変 形特性について解明を行った。本研究の成果は、バイオエンジニアリングおける血液中の細胞の変形や 振動を利用した〃-TASにおける混合、医療におけるマイクロロボット開発に適用でき、本論文の後半 では幾つか適用例としてシミュレーションを行った結果について述べる。 〃#︶ 本論文の構成は以下の通りである。
章章章章章章章
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序論 柔軟物体のモデルと数値シミュレーションの手法 流れ場における柔軟物体の変形 柔軟物体の変形と内部流動 柔軟に変形する容器の壁面振動による内部流体のカオス的混合 蠕動運動を行う柔軟物体の運動特性 結 論 f︶ 第1章は序論で、これまでの先行研究の概要と現時点の課題についてまとめ、本研究における目的を 記述した。生体工学やロボットエ学などの分野において、柔軟な物体を取り扱った研究が多岐にわたっ て行われており、柔軟な物体の変形とそれにともなって誘起される流れといった外部要因との相互作用 についての知識の取得は広い分野で望まれている。本研究では冒頭で述べたように、これまでに考慮さ れなかった内部流体についても外部の流れ場や変形と同時に数値計算をするといった新しい試みで、柔 軟な物体と流れ場の連成問題を取り扱った。 第2章に、柔軟な物体の変形を扱うにあたっての共通なモデル化と計算手法、シミュレーションシス テムについてまとめて記述した。本研究における柔軟物体の構造モデルとしてバネとダンパーによるMass・Sprmg・Damper(MSD)モデルを用いた。先行の諸研究においても弾性膜や赤血球など柔軟な物
体 を M S D モ デ ル に よ っ て 表 わ し シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ り 解 析 し た 例 が 多 い 。 こ れ は バ ネ 強 さ と ダ ン パ ーの減衰係数で表せるので振動特性を規定し易いという利点があるからである。柔軟物体の壁面の座標 や速度については、壁面を離散化し各代表点の質点にかかる力の運動方程式をたて、その連立運動方程 式を4次のルンゲクッタ法で解いた。流れ場については2次元の非圧縮性粘性流体のNavier-Stokes方 程式をGelerkin法による有限要素法で解いた。以上のようにモデルと数値計算については、既存の確 立されたかつシンプルな手法を用いることで異なる対象物体や条件にも応用しやすいようにした。変形 による流れ場へのフィードバックは、変形する壁面の移動速度を流れ場の境界における流れ関数に変換 して、その境界条件によって流れ場を再計算することで流速を与えることにした。そして変形後の壁面 (流れ場の境界)の形状に合わせてメッシュ交点を移動させて流れ場を再計算した。シミュレーション システムはMicrosoftVisualStudioC++を用いてプログラミングし、シミュレーション結果のグラフィ ック表示のほか実行時間や各種物性値のパラメータ変更をGUIでできるようにしている。 第3章では、血液中の細胞や液滴のように流体を内部に含む柔軟物体を想定し、物体の変形と外部お よび内部流れの3つの連成問題を数値計算により解き、柔軟物体が一様流におかれたとき柔軟物体がど のように変形し、またその変形が物体内外の流れ場にどのような影響を与えるかについて解析した(図 1)。従来の研究とは異なり変形する物体内部の流れも同時に弱連成による方法で解いているのが特徴で ある。結果、初期形状が円柱の柔軟物体は流れ方向に対して直角方向に長軸をもつ楕円柱に変形した。 物体外側の流れを見ると、物体後方では変形しない円柱の時に発生するカルマン渦列と同様の渦列が形 成され、その渦の径は変形しない円柱より大きくなった。柔軟物体の抵抗係数を求めたところ1.12で あり、円柱の抵抗係数より大きくなった。その変形量は物体の柔らかさに応じて増加し、抗力係数も増 加 す る 傾 向 に な っ た 。 こ の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 結 果 よ り 流 れ か ら の 力 を 受 け て 受 動 的 に 変 形 す る 物 体 は 抗 力が増加することが分かった。魚や鳥などは能動的に流体中を進むため抵抗の低い形状になっているが、 このように流れからの受動的な力を受けて流されるときは抗力が増すといった結果になった。 V 第4章において、上記の変形によって柔軟物体内部に誘起される流れ場について詳細な調査を行なっ た。柔軟物体が一様流からの圧力を受けてから定常状態に至るまでの間に、柔軟物体はバネの弾性によ りモード2で振動し、内部には振動周期に同期して方向の変わるサドル流れが誘起された。柔軟物体の f︶
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ションを行った。医療分野における内視鏡カプセルのようなマイクロロボットの研究開発においてミミ
ズ型ロボットの検討が行われているが、効果的な制御方法についてはまだ明らかになっていない。ミミ
ズのような蠕動運動における本体の物性値や管路の摩擦といった外部要因と運動の関係を知ることは、
そのようなマイクロロボットの開発に貢献できるはずである。本研究では、効果的な運動制御方法の検
証として、動力源として一つのバイブレータによる正弦波振動による加振を想定し、その加振周波数や
加振位置、柔軟物体の長さや弾性、管路との摩擦などが運動に及ぼす効果についてパラメトリックなシ
が 分 か っ た 。 前 進 す る と き の 摩 擦 が 大 き い と 平 1.2 均 移 動 速 度 が 遅 く な っ た 。 ま た 後 退 す る と き の