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若者における津軽・沖縄民謡への親近 : 閉鎖的な音楽嗜好をもつ世代を対象とした嗜好実験調査を通して

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(1)

―― 閉鎖 的 な音楽 嗜好 を もつ世代 を対 象 とした嗜好 実験調査 を通 して一―

音楽教室 /Jヽ

Affinity for bouncing rhythal of frsugaru and

Okinawa folk songs by younger generation

Experirnental Studies of the Preference for Japanese folk songs―

Yoko OGAWA

1

問 題 提 起 昭和24年

,NHK放

送文化研究所がお こなった「 ラジオ音楽番組 の種 目愛好率」によると,「民謡・ 俗 曲」 を聞 きたい と選 んだ人の比率 は

,世

論調査総数の47.1%と い う比率 になっている。敗戦後4 年めに入 った 日本では

,長

,謡

,等

曲な どの邦楽 よ りも

,新

しくで きた軽音楽や娯楽音楽 とい うジャンルが徐々 に愛好 され始 めていたが

,民

謡 は依然 として根強い人気 をもっていた ようである。 年代別 にみて も

,20代

46%,30代

55%,40代

・50代で

58%と

どの年代 にも愛好 されていた こと が うかが える。それか ら20年後の昭和43年

,NHK放

送世論調査所がお こなった調査 :「好 きな音楽 の種 目一覧」では「 日本の民謡」 は49%と

,歌

謡曲の

67%に

次 いで

,相

変わ らず高支持率 を獲得 し ている。ところが

,更

に10年経 った昭和53年の同調査 によると,「好 きな歌や音楽の種類」の中で「 日 本民謡」の支持率 は

19%と

かな り落 ち込みを見せ始 め

,昭

和61年に実施 された「社会生活基本調査」 (総務庁統計局

)で

,成

人 の

1年

間の音楽行動のなかで「民謡」 を鑑賞 した比率 はわずか

1.3%,

平成

3年

の同調査では

0.9%と

いう極 めて低 い視聴率へ と下がって しまっている。 つ まり

,こ

14, 5年

の間に

,日

本人 の音楽 に対 す る嗜好が著 しく変化 した といえるだ ろう。昨 年度実施 した

,鳥

取大学学部

1年

生対象の「 日本民謡 に関す る調査」で も,「テンポがゆっ くりして いて眠 くなる」「民衆か ら生 まれた音楽であるのに

,私

たちにとっては とっつ きに くい」「退屈だな あ とい う感 じがする」 といった否定的な意見が数多 く寄せ られた。彼等の

80%以

上が民謡 をあま り 聞いた ことがないにも関わ らず

,で

ある。 小泉文夫 は

,彼

の著書の中で民謡 と流行歌 を比較 しなが ら『流行歌 はいかなる民衆 にもただちに ア ッピールす るものの

,生

活 との結び付 きが浅 く

,歴

史性 を持たないためにす ぐに忘れ られて しま 子 容

(2)

小川容子 :若者における津軽・沖縄民謡への親近 うのが特徴である」が

,一

方 『民謡 は民衆か ら生 まれた ものであ り

,民

衆 に受 け入れやすい ことは 当然』(小泉

,1958)で

あるとまとめている。1980年代後半 にお こった民謡 ブームは

,小

泉の指摘通 り

,確

かに

,民

謡 と大衆の関わ りについて改めて気付かせて くれた現象ではあつた。 しか し

,そ

の ブームが去った今

,若

者世代 と民謡の間にで きたある種 のギャップは

,昨

今の音楽 ジャンルの多様 化 。複雑化

,更

に曲1曲ごとの流行のサイクルの短 さ といった種々の要因 によって

,ま

す ます拡が っているようである。 民謡 は

,け

れ ども

,学

生達が指摘す るようにすべてが「 ゆった りとしたテンポで

,朗

々 とした節 回 しをもって

,単

調」だ とい う訳ではない。例 えば津軽や沖縄地方 には

,テ

ンポが速 くぅ弾 みのあ る独特 な リズムパ ター ンをもった民謡が数多 くあ り

,い

わゆる若者世代が好むポピュラー音楽 と多 くの共通点を持 っている。 こうした民謡 に対 して若者 はどの ような興味 を示すのだ ろうか。 近年

,多

くの音楽教育学者や研究者 によって

,教

育現場で どのように日本伝統音楽 を教 えるか と いう指導法 についての研究が数多 くお こなわれて きた (小島

,1981;伊

,1992;桂 ,1994;茂

手 木

,1995;伊

能,1995)。 更 に

,伝

統音楽 に関す る世代 間 の感覚 の違 い を明 らか に した基礎研究

(Oku,1992;Ogawa,Kimura&Mito,1995)も

蓄積 されてきた。 しか し

,ポ

ピュラー音楽 との 共通項 といった視点か ら民謡 に対す る若者の嗜好 を扱 った基礎研究 は

,あ

まりお こなわれていない のが現状である。 本研究では

,以

上 の ことを踏 まえて

,民

謡 に対 して若者世代が どの ような嗜好反応 を示すのか, 民謡の種別 によってその反応 に違 いがあるのか,イ ヽ学生 と大学生の反応傾向は同 じなのか

,彼

等の 嗜好 と音楽熟達度や音楽授業 に対す る評価 との間に何 らかの関連 はあるのか

,

といった ことを明 ら かにす ることを目的 とした。被験者 は

,鳥

取大学学部生56名と広島大学附属小学校

5年

生73名。生 徒個々人の反応 を測定す るために

,MCRA(Multi Channel Response Analyzer)を

用い

,SAS

(Statistical Analysis System)に よる分析 をお こなった。音刺激 は

,民

謡の リズム (弾みがある かないか

)と

音構造 (陽音階

/陰

音階

/琉

球音階

)及

び曲への精通度 を考慮 した上で

,津

軽 よされ 節

,小

諸馬子唄

,よ

さこい節

,さ

んさ時雨

,多

幸 山

,小

浜節 の6曲を選 んだ。 以下

,実

,結

,考

察の順 にまとめる。

2実

験 被験者 鳥取大学学部生56名 (音楽熟達者28名

/非

音楽熟達者28名) 広島大学附属小学校

5年

生73名(音楽熟達者28名

/準

音楽熟達者23名

/非

音楽熟達者22名) 音刺激

Table l.MusicaI Stimuli

陽音階 (ラ ドレミソラ) 陰音階 (ミ ファラシ ドミ) 琉球音階 (ド ミファソシ ド) 陽音階 陰音階 琉球音階 弾 みの あ る 津軽 よされ節 よさ こい節 多幸 山 弾 み のな い 小諸馬子唄 さん さ時雨 小浜節

(3)

方法 大学生

,小

学生 とも6つのグループに分 けられ

,グ

ループごとに曲順 を変 えた音刺激

, 6曲

が呈示 された。教示 は以下 の通 りである。 「 これか ら音楽が聞 こえて きます。曲が始 まって『いいな

,

もっ と聞 きたいな』 と感 じた らスイ ッチを押 して くだ さい。『もう聞 きた くないな』と思った らスイ ッチか ら手 を離 して く ださい。曲が流れている間は何度で もスイ ッチを押す ことがで きます。音楽 は全部で6曲で す。」 個々人の反応 はそれぞれ別個 に

,ス

イ ッチボ ックス とコン トロールボ ックスを通 してコンピュー タに取 り込 まれ

,MCRAプ

ログラムによって計測

,分

析 された。実験終了後

,各

自の これ までの音 楽歴 について調査用紙 に記入す ると同時 に

,小

学校や中学校で受 けて きた音楽の授業 に関 して

5段

階評価 をするよう求 め られた。

3

結 果 次の表2は

,大

学生 。小学生別 に曲別のスイ ッチオン時間を示 した ものであ り

,表

3は

分散分析 の結果 を示 した ものである。 表3に示 した ように

,分

散分析 の結果,「被験者の年齢」「弾みがあるか どうか とい うリズム」「音 階」の3要因すべてに

1%水

準で有意 な差が認 め られた。つ まり

,年

齢別では

,大

学生 よ りも小学 生の方がスイ ッチを長 く押す傾 向にあ り

,

リズム という観点か らみる と

,ど

の被験者 も弾 みがある リズムの方 をより好 んでお り

,音

階の中では陽音階 と琉球音階への好 みが高い とい うことを示 して いる。更 に

,有

意傾向が認 め られた「被験者 の年齢 ×リズム」及び「被験者の年齢 ×音階」の交互 作用 は

,弾

みのない リズムに対 して も

,小

学生 はある程度興味 を示 していること

,陽

音階 と琉球音 階において

,小

学生の方が大学生 よりもスイ ッチを長 く押す傾 向にあることを表わ している。言い 換 えれば

,大

学生 は琉球音階に対 しては「 もっ と聞 きたい」 とい う興味 を示 しているものの

,陽

音 階 と陰音階に対 しては

,そ

れほ ど関心 を示 していないこと

,更

,弾

まない リズム をもった曲につ いては

,あ

まり好 きではない と感 じているようである。 しか し

,両

者 とも

,弾

む リズム をもった曲 に対 しては同 じような反応 を示 し

,特

に「多幸 山」(琉球音階

/弾

みのあるリズム)のスイ ッチオ ン 時間は

, 6山

の実験 曲中

,最

も長 くなった。 次 に

,ス

イ ッチオ ン時間が被験者の音楽経験や音楽評価 とどの ような関係 にあるのか

,被

験者別 に検討 した。 音楽熟達の度合いは

,学

校以外の音楽経験年数が現在

4年

以上

,あ

るいは過去 に

6年

以上 ある者 を音楽熟違者 とし

,経

験年数が

1年

以内

,あ

るいは無い者 を非音楽熟達者

,上

記の どち らにも該当 しない者 を音楽経験者 としてカテゴ リー分類 した。

5段

階で記入 させた

,こ

れ までに受 けた 日本音楽の授業 に関す る評価 (小学生の場合 は

,現

在の 音楽授業 に対す る評価

)は

, 5及

び 4と した被験者 を「肯定的に授業 を受 けとめている」 として高 評価群

, 3を

普通評価群

, 2及

び1を「否定的に受 けとめている」 として低評価群 と名づ け

,分

類 した。 表 4と 5は大学生の

,表

6と 7は小学生のスイッチオ ン時間 を

,そ

れぞれカテゴ リー別 に示 した ものであ り

,表

8はその相関係数 と有意差 を示 した ものである。 表8に見 られ るように

,大

学生

,小

学生 とも

,音

楽熟達度の度合 い とどのような民謡が好 きか と

(4)

小川容子 :若者における津軽・沖縄民謡への親近

Table 2. Average Of PS time(sec)and percentage

by undergraduates and elementary school children

Table 3. Analysis of Variance くunweighted― mean solution〉

曲 名 津軽よされ節 小諸馬子唄 よさ こい節 さん さ時雨 多幸山 小浜節 日 階 陽 音 階 陰 日 階 琉 球 音 階 リ ズ ム 弾 みの あ る 弾みのない 弾みのある 弾 み のない 弾 み の あ る 弾みのない 大 学 生 13.17(%) 39.38(sec) 8.62 17.24 14.50 27.26 1,76 3.53 34.23 49.29 9.71 27.76 小 学 生 27.54(%) 82.35(sec) 16.40 32.80 20.42 38.40 12.82 25.64 41.19 59.32 21.61 61.79

Source SS df

h/1S

A:被

験者

B:リ

ズム

AB

C:音

AC

BC

ABC

23.45 17.99 1.15 16.76 1.44 0.56 0.88 23.45 17.99 1.15 8.38 0.72 0.28 0.44 13.92 68.10 4.36 37.56 3.22 1.39 2.18 0.00**・キ 0.00**** 0,04* 0.00***キ 0.04* 0.25 0。12 1 1 1 2 2 2 2

*p<,05,*キ

p<.01,料

Fp<.005,***キ

p<.001

Table 4.Average of PS time(sec)and percentage by undergraduates(MusiCian vs NonmuSician) 曲 名 津軽よされ節 小諸馬子唄 よさ こい節 さん さ時雨 多幸 山 小浜節 立 日 階 陽 音 階 陰 音 階 琉 球 音 階 リ ズ ム 弾みのある 弾 み の な い 弾みのある 弾みのない 弾 みの あ る 弾みのない 日 楽 熟 達 者 16.04(%) 47.96(sec) 11.20 22.41 11.22 21.09 2.13 4.26 34.71 49.99 8.67 24.80 楽 者 立 日 達 非 熟 10.30(%) 30.79(sec) 6.04 12.08 17.78 33.43 1,40 2.79 33.75 48.60 10.74 30.73

(5)

Table 5.Average of PS time(sec)and percentage by undergraduates(Rating music ciass:Low vs Middie vS High)

Table 6.Average of PS time(sec)and percentage

by elementary school children(MusiCian vs Music― lerner vs Nonmusician)

い う民謡 に対す る嗜好 との間にはほ とん ど相関関係が認 め られず

,更

,音

楽授業 をどの ように受 けとめているか (受け とめてきたか

)と

いう授業 に対す る評価 と民謡 に対す る嗜好 との間 に も

,相

関関係 はほ とん ど認 め られなかった。 これは実験前の予想 と大 き く異 なることであつたが

,民

謡 を 授業で扱 う際には

,生

活や季節の行事 との関わ りといった,「身近 な もの」という視点か ら題材 に と りあげることが多いので

,地

域性 をフF除した今回の実験ではその影響 をとらえることがで きなかっ たのか もしれない。 で は

,以

下 に

,被

験者別 にまとめた大学生 と小学生 それぞれの嗜好 の特徴 を記す。 大学生 曲 名 津軽よされ節 小諸馬子 唄 よ さ こい節 さん さ時雨 多幸 山 小浜節 音

階 陽 音

階 陰 音 階 琉 球 音 階 リ ズ ム 弾 み の あ る 弾 みの ない 弾 み の あ る 弾みのない 弾 みの あ る 弾 みの ない 高 評 価 群 23.19(%) 69.35(sec) 12.96 25,93 22.88 43.02 1.35 2.71 55.73 80.26 18.82 53.82 普 通 評 価 群 10.16(%) 30.37(sec) 4.58 9.16 12.42 23.35 1.65 3.30 23.62 34,01 7.20 20.59 低 評 価 群 11.49(%) 34.35(sec) 11.64 23.27 12.49 23.48 2.16 4.32 36.31 52.28 7.87 22.51 曲 名 津軽よされ節 小諸 馬子唄 よ さ こい節 さん さ時雨 多幸山 小浜節 音

階 陽 音 階 陰 音 階 琉 球 音 階 リ ズ ム 弾 みの あ る 弾 みのない 弾 みのある 弾 みの ない 弾 みの あ る 弾 み の ない 楽 者 達 立 日 熟 27.53(%) 82.30(sec) 14.4 28.80 20.32 43.28 12.31 24.61 33.2 47.81 13.86 39.64 楽 者 験 立 臨 経 27.23(%) 81.43(sec) 21.56 43.12 17.86 38.05 14.32 28.63 44.8 64.56 32.47 92.85 楽 者 立 日 達 非 熟 29.13(%) 87.12(sec) 14.21 28.41 16.20 34.50 12.48 24.95 49.06 70.65 20.07 59.31

(6)

312

小川容子 :若者における津軽 。沖縄民謡への親近

Table 7.Average of PS time(sec)and percentage

by elementary school children(Rating music class:Low vs Middle vs High)

Table 8.Correlation coefficient(r)

by undergraduates and elementary school ch‖ dren

(1)弾

みのない リズム よりも弾 みのあるリズムを好 む傾 向にある。 修

)琉

球音階 に対 してはかな り興味 を示 したが

,陰

音階 と陽音階に対 しては

,そ

れほ どで はない。

(3)6曲

の中で最 も関心 を集 めたのは「多幸 山」(琉球音階

/弾

みのある

)で

ある。

(4)学

校以外 の音楽経験 と嗜好 との間には

,相

関関係 はほ とん ど認 められない。

(5)こ

れ まで受 けてきた 日本音楽の授業 に対 す る評価

/関

心 と嗜好 との間 にも相関関係 はほ とん ど 認 め られない。 小学生

(1)弾

みのない リズム よりも弾みのあるリズム を好 む傾 向にあるが

,そ

の嗜好の差 は大学生 ほ ど顕 著ではない。

(2)「

小諸馬子唄」(陽音階

/弾

みのない

)や

「小浜節

J(琉

球音階

/弾

みのない

)に

対 して

,大

学 曲 名 津軽よされ節 小諸馬子唄 よさ こい節 さん さ時雨 多幸山 小浜節 音

階 陽 音 階 陰 音 階 琉 球 音 階 リ ズ ム 弾 み の あ る 弾 みの ない 弾 みのある 弾 みのない 弾みのある 弾 みの な い 高 評 価 群 29.92(%) 89.47(sec) 17.66 35.33 23.33 43.86 14.79 29.58 41.69 60.03 21.56 61.67 普 通 評 価 群 13.99(%) 41.84(sec) 9.69 19.38 4.43 8.33 1.63 3.26 40.88 58.86 19.48 55.72 低 評 価 群 15.32(%) 45.80(sec) 5.10 10.2 2.70 5.40 13.75 19.80 45.38 129.80 津軽よされ節 大 学生

r=0.26

p=0.06

小 学生

r=o.02

p=0.84

大 学生

r=o.11

p=0.41

小 学生

r=o.12

p=0.30

よさこい節 さんさ時雨 多 幸 山

小 浜 節 0.05 --0.00 0.70 0.98

-0,15 0.00

0.21 0.98 0.06 -0.24 0.66 0.08 0.05 0.05 0.69 0.69 小諸馬子唄 0.10 0,20 0。10 0.38

-0.14

0.32 0。15 0.21 0.11 0,40 0.26 0.03 0.15 0.26 0.00 0.98

-0.08

0.55 0.19 0.10 0.07 0.61 0。11 0.36

(7)

生 よりも関心度が高い。

(3)「

多幸山」(琉球音階

/弾

みのある

)に

対する興味 はきわめて強い。 は

)学

校以外の音楽経験 と嗜好 との間 には

,相

関関係 はほ とん ど認 め られない。

6)現

在受 けている日本音楽 の授業 に対す る評価

/関

心 と

,嗜

好 との間 にも相関関係 はほ とん ど認 められない。 このように

,弾

みのあるリズム と琉球音階に対 しては

,大

学生

,小

学生 とも同 じように積極的な 関心 を示 したが

,弾

みのない リズムや陽音階に対 しては

,被

験者間で とらえ方が異 なっているよう である。 次 に

,そ

の例 として

,小

学生が「小諸馬子唄」の どの部分でスイ ッチを押 したか を時系列で示 し た ものを掲 げる (図1)。 この図か ら

,曲

が始 まった直後

(7-38sec)と

中間過 ぎ

(114-125sec)に

20人以上 の反応があ り

,こ

の部分が小学生たちの興味 を集 めた箇所であるといえる。 どち らも

,尺

人の前奏の後の「 こ もろ――」「黒 よ(あお よ

)―

―」とい う唄の入 り部分であ り

,母

音 を延 ぼす

,ぶ

るわせ るといった 独特の発声が開始 され る部分で もある。一方

,大

学生の場合 は

, 1割

の学生が冒頭か ら中間部 まで (12-128sec)ス イ ッチを押 し続 けていたが,そのほかの学生 は全 く関心 を示 さず

,中

には実験終了 後 に「聞 き続 けるのが

,

とて もえらい (大変である)」 と感想 を述べた者 もいた。 「小諸馬子唄」 は尺人 を伴奏楽器 にしているため

,こ

の管楽器特有の「鳴 り始めに必然的に生 じ る無音の瞬間」や「不確実なアタ ック

Jが

特色 とされる曲であ り

,更

,微

分音程 の「ユ レ」や「 こ もった」発声法 によって

,幽

玄且つ独特 な世界が構築 されている曲で もある。大学生で はな く小学 生達の中に

,こ

うした

,い

わゆる追分様式 に魅力 を感 じる生徒が多 くいた というのは

,非

常な驚 き であるが,「若年層の方が さまざまな様式 を受 け入れ る傾向にある」 とい う

A.LeBIanc(1991)の

説を支持す るものである ともいえる。 この点 に関 しては

,更

なる追研究が必要である。 小諸馬子唄 ∞ い 日 、 ∞ ω sec

Figure l Temporal change of the position where subleCtS pressed switch in Komoro― mago―uta

(Elementary school children)

0   5 2   1 慈 く ω ω H O ω = 日 ∞ 日 ヽ い 出 め Φ ﹁ や い 出 い や = Φ ∞ 出 卜 ヽ 出 ∞ = 出 ω O H O O H

(8)

小川容子 :若者 における津軽 。沖縄民謡への親近

4

考 察 以上

,若

者世代が どのように日本民謡 を とらえているのか

,そ

の嗜好 の実態 を明 らかにす るため に大学生 と小学生 を対象 に実験調査 を実施 し

,MCRAを

用いて分析 をお こなった。その結果

,被

験 者の嗜好 は音楽熟達度や音楽授業への評価度 とはほとんど相関がない ものの

,年

齢 によって有意 に 異なること

,し

か もリズムの違 いや音構造の違いによって大 き く影響 を受 けていることが明 らかに なった。年齢別 にみると

,大

学生 は弾 まない リズム よりも弾みのあるリズムに対 して積極的に「快」 の反応 を示 し

,小

学生 は両者 に興味 を示す ことが分かった。更 に

,琉

球音階を強 く支持す る大学生 に対 し

,小

学生 は陽音階 と琉球音階の どち らも好 んでいることが明 らか になった。全体 として

,大

学生 よ りも小学生の方が

,

どの曲に対 して も

,よ

り肯定的に受 けとめる傾 向がみ られた。 年齢 の別な く圧倒的に支持 されたのは

,弾

みのあるリズム と琉球音階 をその構成音 とす る

,沖

縄 民謡 の「多幸 山」であつた。 この曲の反応時間が

,な

,長

くなったのか。 その理由 として

,沖

縄 音楽の独 自性 と

,現

代 の若者世代 の「微分化」(山田

,1996),更

,陽

音階 との親近説(東川,1990) をあげておきたい。 九州の南 に広が る奄美

,沖

,宮

,八

重 山 とい う南西諸島は

,そ

の音楽様式や ジャンル形態に おいて本上の音楽 とはかな り異 なってお り

,且

,島

それぞれが極 めて独 自性の強い音楽文化 を保 持 している地域である。1970年以降多 くの研究者達 によって

,こ

の南島 (沖縄

)音

楽 は

,中

国やポ リネシア

,そ

の他東南 アジア諸国か らさまざまな文化の影響 を受 け

,そ

れ によって独 自の音楽文化 を作 り上 げてきた ことが明 らか にされた。 その一方で

,―

バ ン ドグループか ら発信 された沖縄音楽 が若者世代 に熱狂的に受 け入れ られ

,1980年

代 の「島唄」ブーム を巻 き起 こした ことは

,記

憶 に新 しい。 山田によると

,現

代 の若者 は

,音

楽か ら意味(メ ッセージ)を聞 き取 るのではな く

,F音

楽 を皮膚 感覚 に収東』させ

,Fさ

まざまに戯れなが ら流れている音の響 きに

,身

体 を

,そ

の表層 において反応 させてい く』 とい う。つ ま り

,実

験で扱 った「多幸山

Jは

,本

上の音楽 とは異なる沖縄音楽の独 自 性 と若者 に受 け入れ られ るさまざまなアスペ ク ト:オフビー トの効 いた リズム

,に

ぎやかな器楽伴 奏

,波

ノ リのようなスイング感 な ど:を併せ もった音楽 として (あるいは「響 き」 として

)と

らえ られたのではないだ ろうか。 また一方

,東

川 によって

,琉

球音階が陽音階 と非常に近い関係 にある という理論 も発表 されてい る。東川 は『第一琉球類2シャープ均 による「A Cis D E Gis A」 と陽類 ナチュラル均「

ACDEGAJ

とは

,

ドが半音 シャープしただけの違 いであ り

,容

易に転類で きる関係 にあるので はないか』 と説 明 している。「多幸山」が支持 された原因は

,こ

のように

,

リズムや ビー ト

,音

,旋

律進行 といつ たさまざまな要因に寄因す ると思われるが

,今

後 は

,奄

美や宮古 といった沖縄 の別 の地域 の民謡 と の比較

,東

南 アジア諸国の音楽 との比較 とい う多方面か らのアプローチによって

,こ

の点 を立証 し ていきたい と思 う。 若者世代が質問紙の中で明 らかにした,「のんび りしていて

,面

白 くないJといった民謡 に対する イメージは

,彼

等がそれ と意識 しないうちに

,民

謡 に対す るある種 の固定観念 となって定着 しつつ あるように思われ る。実験で扱 つた「多幸山」が圧倒的な支持率 を得た ことは

,こ

の沖縄民謡が, 最近のポピュラー音楽 といかに多 くの共通点 をもっているかを明 らか にした と同時 に

,我

々教師が 日本の民謡 をどのように指導すべ きか

,

とい う大 きな課題 に関 して

,一

つの方向性 を示 した と思わ

(9)

れ る。わが国の民謡 は

,そ

の種類 が きわ めて豊富 で あ り

,曲

それ ぞれが実 に奥 の深 い世 界 を もって い る。本 実験 で明 らか になった結果 が

,民

謡 を

,そ

して 日本音楽 を教 える際の

,一

つ の手 がか りに な る こ とを願 ってや まない。

本研究 を行 うにあた り,実験に協力 して くださった広島大学教育学部吉富功修助教授 をはじめ

,参

加 して くださつ た鳥取大学教育学部学生,広島大学附属小学校の先生方

,及

び生徒の皆 さんに心より感謝申し上げます。

引用文献

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(10)

Table 3. Analysis of Variance  くunweighted― mean solution〉
Table 5.Average of PS time(sec)and percentage by undergraduates(Rating music ciass:Low vs Middie vS High) Table 6.Average of PS time(sec)and percentage by elementary school children(MusiCian vs Music― lerner vs Nonmusician) い う民謡 に対す る嗜好 との間にはほ とん ど相関関係が認
Table 7.Average of PS time(sec)and percentage by elementary school children(Rating music class:Low vs Middle vs High) Table 8.Correlation coefficient(r) by undergraduates and elementary school ch‖ dren (1)弾 みのない リズム よりも弾 みのあるリズムを好 む傾 向にある。 修 )琉 球音階 に対 してはか

参照

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2013

[振興事業]