一
二
昭
昭
敏
数学教育 にお ける教 師教育教材 の
開発 に関す る研究
数学科教育教室筵
E
田 数学科教育教室矢 部 鳥取県算数・ 数学教材開発研究会*
A Study on the Development of「 reaching and Learning A/1aterials
for「
reachers in A/1athematical Education
Sh6Z6 SASADA,Toshiaki YABE,「 rOttori Mathematics Education Study Group*
I
研 究 の 目的 本研究 は,数
学教育 に志 しをもつ学生,ま
た,数
学教育 の実践 に携わ る教師に対 して,教
材開発 の視点 と教材研究 のあ り方 について,そ
の示唆 を与 えることを目的 とし,そ
のための教師教育用の 教材開発 と開発 の理論 の検討 を行 うものである。 今回の教育課程 の基準 は,小
学校 においては平成4年
度か ら全面実施 されてお り,ま
た,中
学校 において は平成5年
度か ら全面実施 され ることになっている。 この新 しい教育課程 の実施 に向 けて は,さ
まざまな教師への期待 と児童・ 生徒への願 いが盛 り込 まれている。本研究 との関わ りか らそ の重要な視点 を挙 げれば,そ
れ は評価への期待である。 従来,や
や もす ると子 どもをランクづ けし,他
者 との比較 を無意識 のうちに行 って きた評価 であ ったか も知れない。 また,こ
の ことは知 らず知 らずのうちに,子
どもの内に序アlJTヒを芽生 えさせて きた危惧 もない とは言 えない。 このような反省 に立 って,今
回新 たに打ち出された評価 の視点 は, 第1に,指
導の改善 に役立つ評価であること,第
2に,児
童・ 生徒 の学習の可能性 を仲長 させ る評 価であること,第
3に,学
習者の情意的な側面 に及ぶ評価であること,で
ある。つ まり,評
価 は教 師に とって も子 どもに とって も,共
に伸 び成長す る過程 としての評価 として とらえることがで き, また,評
価 はこれ らのね らいを達成す るための手段である,と
い う認識 に立つ ことがで きる。 教師が,具
体的な教材 に即 して評価 の視点 をもつためには,一
方で教育 目標 (教育内容)の
教育 奉安治真由美 (鳥取大学教育学部附属中学校教諭),矢木美明 (鳥取県青谷中学校教諭) 林 学 (鳥取大学教育学部附属小学校教諭),斎尾宏伸 (鳥取県八橋小学校教諭) 横山ひとみ (鳥取市修立小学校教諭),杉本仁詞 (鳥取県八東小学校教諭) 高木政寛 (鳥取県船岡小学校教諭)笹田昭三・矢部敏昭 :数学教育における教師教育教材の開発に関する研究 的価値 を分析 す ることが必要であ り
,他
方,そ
の上 に立 った算数・ 数学科の独 自の数学的価値 の追 求が必要 な もの と考 える。 したが つて,本
研究 は,こ
のような評価観 に立 って,望
ましい教材研究 と教材開発のあ り方 を追 求 し,教
師教育用 の教材研究・教材開発モデルの作成 とその実践的検討 を行 うものである。 そ こで, 本研究の目的 は,第
1に教師教育用の教材研究・教材開発 として,教
材開発の12の視点 を取 り上 げ る。第2に,教
材研究・ 教材開発の方法論的モデル を提示 し,そ
のモデルに即 した授業実施案 に至 る素材 の教材化 と授業 の構想 と設計の検討過程 を明示す るものである。 さらに,第
3に授業実施 案 と実施後 の評価・ 検討 を行 うものである。H
本 研 究 に お け る教 材 開 発 の 視 点 本研究 は,ま
ず算数・ 数学科 の学習 を通 して,子
どもたちに何 を教 えるのか,と
いう立場か ら考 察 をはじめることにした。それ は,何
を教 えるのか,
ということが教師の教材観 に関わ る問題 だか らである。そ して,こ
の ことは算数・ 数学科 のそれぞれの教材 に対 する数学的な価値の追求 を不可 欠 とし,算
数 。数学教育の目標 に関する分析 につなが る と考 えたか らである。 本研究 の方法 としては,杉
山吉茂氏の主張す る教材分析12の視点(りを基礎 として検討 をはじめた。 算数・数学教育 の目標 に述べ られている動詞 に着 目す ると,「知識・ 理解 に関すること」峰ヒカ に関 す ること」「態度・習慣 に関すること」の3つがあることがわかる。つ ま り,知
識・理解 に関す るこ とは,「∼ を知 る」「∼ を理解す る」「∼ を身 につける」 と述べ られているものに当たる。 また,能
力 に関することは,「∼の能力 を育てる」「∼ の能力 を養 う」「∼がで きるようにす る」に 当た り,さ
らに,態
度・ 習慣 に関することは,「∼ の態度 を育 てる」「∼ の態度 を養 う」 と述べ られ ているものに当たるである。 また,算
数・ 数学科の具体的な内容 について,そ
の対象 は大 きく「数学の発生や数学 を創造す る こと」「数学的知識 と技能」「数学の応用 と有用性」「数学の性質 と特徴」の4つに分類す ることがで きる。 そして,こ
れ らを理解,能
力,態
度 と組 み合せ ることによって,以
下 に示す教材分析の12の視点 が見 い出せ るのである。本論で は,こ
れ を「教材開発の12の視点」 と呼び,考
察 をさらに進める も のである。 教材開発の12の視点①
数学の発生や創造について知る
②
数学を創造することができる力を育てる
③
数学を創造
,発
展させようとする態度を仲ばす
④
数学的な知識
,技
能を理解する
⑤
数学的な技能を駆使する
⑥
数学的な知識
,技
能を知ろうとする意欲をもっている
⑦
数学的知識が有用であることを知る
③
場面や目的に応じて数学を用いることができる
⑨
数学を活用しようとする態度を身につける
⑩
数学のよさ
,特
徴
,価
値を知る
①
形式化したり
,一
般化したりすることができる
鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 35巻 第
1号
(1993) 6ユ
⑫
より単純
,明
瞭
,能
率的なものにしようとする態度を身につける
(視点⑦
,③
の下線部分は著者らが加筆したところである。
) これら教材開発の12の視点 は, 4分
類3項
目の組み合せによって導 き出されるのであるが,さ
ら にそれぞれの視点の見方について詳述する。視点①∼③ は,数
学の発生や数学を創造することに対 応する事柄であ り,視 点④∼⑥ は数学的知識 と技能,視 点⑦∼⑨ は数学の応用 と有効性,視点⑩∼⑫ は数学の性質 と特徴,に
それぞれ対応する事柄である。そして, 4つ
に分類 されたこれ らの算数・ 数学科の具体的な価値 に対 して,そ
の内わけがそれぞれ知識・理解,能
力,態
度 。習慣の 3つ の頂 目に分けられているのである。例 えば,視
点⑥ は「数学的知識 と技能」の分類項 目に属 し,か
つ目 標分析の「態度・習慣」 に関する事柄 に当たる。 また,視
点⑦ は「数学の応用 と有効性」の分類頂 目に対応 し,か
つ「知識・理解」に関する事柄に当たるのである。 このような視点を設定 して教材開発を行 う意義は,算
数・数学科の目標である数学的な考え方や 態度・ 習慣 といつたものについて,そ
の具体的な内容 に即 して明 らかにすることができるところに ある。 また,日
標の分析が具体的な教材 (内容)に
即 して明 らかにされることは,言
い換えれば評 価の視点 と場が常に設 けられることであ り,さ らに,実
践的な指導後の補いも可能になると考える。 Ⅲ 研 究 の焦 点 と研 究 方法 教育実習生が,実
地指導に当たっての中核的能力 ともいえる教授スキルを効果的に獲得 してい く ためには,児
童・ 生徒 を視野に入れた教材研究 と教材開発の能力 と態度 を養ってい くことが極めて 重要である。そこで,本
研究では,教
授スキルの効果的獲得を促す教材開発の方式を追究 し,算
数・ 数学科における教材開発モデルを提示する。1
教材研究 と教材開発② 教育実習における教材研究や教材開発 は,ま
ず教科書教材の研究か ら始 まる。教科書教材 を研究 し,そ
れが担 う教育的価値 を分析 し,教
育 目標 (教育内容)に
たちかえる。そこで得た結果 を吟味 した上で,教
科書教材 を使 うことに問題ないことを確認できた場合,授
業で教科書を利用 し,研
究・ 分析で明確になった教育的価値や教育 目標 に沿って学習指導を展開する。 これがいわゆる「教材研 究」であり,下
図のフローチャー トでは,YESの
分岐ルー トに沿った矢線ルー トがそれを示す。 これに対 して,教
育 目標 (教育内容)ま
でたちかえるところまでは教材研究の場合 と同じである が,そ
こで得 られた結果を吟味してみると,教
科書教材では,そ
の展開や地域性などを考慮 して十 分 とはいえない場合がある。 この場合 は,そ
の不足点を補 った教材 を自ら作 るとか,教
育 目標 に合 った全 く新 しい教材を開発する。 これが,い
わゆる「教材開発」であ り,下
図のフローチャー トで は,NOの
分岐ルー トに沿った矢線ルー トが これを示 している。笹田昭三・矢部敏昭 :数学教育における教師教育教材の開発に関する研究
2
教材開発の5段
階 教材開発 は次の5段
階 を踏 み,そ
れぞれのステ ップが重要である。ち第 1段階
教材研究
①
指導内容の把握 。日標の吟味
第 2段 階
素材
(問題
)探
し
③
いろいろな資料から探す
②
重点内容の明確化
④
問題を実際に解く
第3段
階 素材 をアレンジして教材化する ⑤ 問題 (場面)を
変形 し,授
業にのせ られる問題にする 第4段
階 授業の構想 と設計 ⑥ 授業を流すための具体的な指導方法 。手順 を考 える 第5段
階 授業での実証 と修正 ⑦ 実際に授業する ③ 授業を反省 して,教
材の修正をする3
指導計画案・ 授業実施案の検討 (研究の焦点)2で
述べた教材開発の5段
階のうち,第
3段
階∼第5段
階における,素
材の教材化 と授業構想, 指導計画案の再三にわたる検討 と修正,さ
らに授業実践による実証 と修正,
これ らのプロセスは教 材開発では極めて重要である。 また,こ
のプロセスを体験することによって,教
材研究や教材開発 の視点が明確になり,教
師の教材開発の力量を一層高めてい くものと考 える。 そこで,本
研究では,(教
育内容)→
(指導計画案の検討・修正)→
(授業実施案)→
(授業実践 による検討・評価)→
(学習指導プログラム),
といったプロセスにおける「検討・修正」「検討 。 評価」にとくに焦点を当て,教
材開発の研究を行 った。その際に重要なことは,焦
点である「検討」 の視点 としては, 1で
論 じた「教材開発の12の視点」を活用 して,指
導計画案・授業計画案をそれ ぞれ検討 したことである。 この研究方法 と研究の焦点を図解すれば,次
のようなフローチャー トと なる。 教材 (教科書) 図1
教材研究 と教材開発鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 35巻 第
1号
(1993) (点線内は,回帰的プロセスで,通
常2, 3度繰 り返す)‖学習指導プログ必 ‖ 図2
教材研究・教材開発の方法論的モデル4
研究方法H.Ⅲ
l, 2, 3で
論 じて きた ことが,教
師教育用 として著者 らが構築 した,教
材研究 と教材開 発の理論であ り,方
法論的モデルである。 この理論 。モデルの妥当性や有効性 を検討す るために,教
育実践研究指導セ ンターの教材開発班 算数・ 数学 グループによる共同研究 として,平
成4年
9月 か ら6カ 月間にわたって,理
論的・ 実践 的検討 と考察 を行 った。その概要 は次の通 りである。 ① 「教材開発の視点」 と「教材研究・教材開発モデル」の検討(平
成4年
9月) ② 素材の発掘 と指導計画案(1次
案)の
作成 (「視点」か らの検討) (平
成4年
10月) ③ 指導計画案の再帰的検討 と授業実施案の作成(平
成4年
10月∼11月) ④ 授業実施 とその評価考察(平
成4年
■月∼12月) ⑤ 研究の総括的考察(平
成1月∼2月) Ⅳ 研 究 の 内容1
素材の教材化 と授業の構想 と設計 m。3で
既に述べた教材研究・教材開発の方法論的モデルに沿って,授
業実施案に至 るまでの素材 の教材化 と授業の構想 と設計の検討過程について述べる。 ここでは,そ
の事例 として,次
節の授業 実施案の中から,中
学校第2学
年「課題学習 (図形 と合同)」 を取 り上げて論述 したい。 中学校 における課題学習 は,生
涯 にわたる学習の基礎 を培 う観点に立って,自 ら学ぶ目標 を定め, 何をどのように学ぶか という主体的な学習の仕方を生徒に身につけさせることにある。そして,こ
れまでに学んできた数学的な知識や技能を駆使 して,数
学的な概念,原
理,法
則 を発見 し,獲
得 し てい く学習を構成することが大事である。また,本
単元「図形 と合同」では,基
本的な平面図形 に ついての理解を深めてい くわけであるが,そ
の際,図
形の性質の考察における数学的な推論の意義64
笹田昭三・矢部敏昭 :数学教育 における教師教育教材 の開発に関する研究 と方法 とを理解 し,推
論 の過程 を的確 に表現 してい くことが重要なね らい となる。(1)素
材 の教材化 本素材 として,ま
ず考 えた ものは,「正多角形 の各頂点か ら,そ
れぞれ等距離 に点 を とり,向
か い合 う頂点 と直線で結ぶ ことによって正多角形の内部 に作 られる多角形 を考察の対象 とす る」 と いうものである。 この素材 は,ど
んな正多角形 において も常 に,正
多角形 の内部 に作 られる多角形 は,正
多角形 になる ところに数学的な不思議 さがあ り,生
徒 に知的好奇心 を呼び起 こす ことがで きるであ ろう と考 えた点 にある。 しか し,素
材が見い出されたか らといって,教
材化で きたわ けで はない。本 素材 を教材化 してい くためには,上
述の素材 を「教材開発 の12の視点」か ら検討 し,教
育的価 値 及び数学的価値 の視点か ら考察 してい くことが必要である。 本素材 は,第
1に,正
三角形 の内部 に作 られ る三角形が正三角形 になることの発見が生徒 に期 待で き,ま
た,な
ぜ正三角形 になるのかの証明 には,既
習の三角形 の合同条件が活用で きる。つ まり,本
素材 は,既
習の知識や数学的な原理,法
則 を使 って,新
しい問題 を解決 しようとす る態 度 に当たる教材開発の視点が含 まれ るのである。第2に,正
三角形 において見い出された数学的 な性質 は,正
方形,正
五角形,正
六角形,…
…である正多角形 について も同様な法則 として生徒 に発見 され,ま
た,そ
の根拠 は三角形 の合同条件か ら導 き出せ る。つ まり,本
素材 は,数
学的な 発展 を可能 にする素材であるとい うことがで き,そ
の追究の過程 においては,類
推 の考 えが機能 す るのである。言い換 えれば,数
学 の もつ よさや数学 の性質,特
徴 に当たる教材開発 の視点が含 まれている。第3に,原
問題である正三角形 を出発点 として課題 は次々 と発展 し,ま
た,正
n角
形 の内部 に作 られ る正多角形 の考察へ発展す ることが可能である。 さらに,内
部 に作 られ る図形 が正多角形であることの証明においては,形
式化 した リー般化 した りしてい く能力 に当た る教材 開発 の視点が含 まれ るのである。 以上の検討を経て,本
素材 は教材開発の12の視点の中から,視
点③「数学 を創造,発
展 させよ うとする態度 を伸ぼす」,視
点⑩「数学のよさ,特
徴,価
値」,及
び視点①「形式化 した り,一
般 化 した りすることがで きる」の 3つ の視点が設定 されるのである。 次に,本
素材を教材化 してい くためには,問
題 (場面)を
変形 し,授
業にのせ られる問題 にす ることが必要である。生徒 は,前
単元 までに三角形の合同条件 については学習 しているが,そ
れ を証明に適用することには慣れていない。 また,仮
定や結論か ら考 えて手順 を論理的に構成する といつた証明の進め方についても不慣れである。 そこで,正
多角形の基本図形である正三角形 を原問題 として取 り上げることにした。そして,65 原問題 を考察 してい く中で
,正
多角形 の内部 に作 られる図形の性質 に気づかせ,そ
れの証明 を考 え,さ
らに,証
明 した結果 を正多角形へ適用 してい くといった展開を考 えたのである。9)授
業 の構想 と設計 授業 を構想 し設計 してい くためには,問
題 (場面)の
検討 と合わせて,具
体的な指導方法 と手 順 を考 えることが必要である。前述 した通 り,本
素材 は正三角形 を原問題 として,正
方形,正
五 角形,正
六角形,…
…へ と課題 を次々 と発展 させ るに適 した素材である。 また,正
多角形の内部 に作 られる図形 の考察 に当たって は,生
徒 に数学的な発見 とその根拠 に基づいた論証 の進め方 を 指導す るに適 した課題 で もある。 そこで,一
般 の正多角形 まで発展 させ ることを考 えて,指
導計画案 として2時
間 を設定 した。 第1時
では,原
問題 である正三角形 の内部 に作 られ る図形の考察 に焦点 を当てることにした。 ま ず,生
徒 に題意 に即 した作図 を行わせ,次
に,作
図によって見 い出 された図形 を生徒同士で考察 させ ることにより,そ
の図形が正三角形 になることを発見 させたい。 そのために,課
題 の提示 は オープンな形で提示す ることにした。それ は,生
徒 に一層発見感が与 えられ ると考 えたか らであ り,さ
らに証明の必要性 ももたせ得 ると考 えたか らである。 その後,確
かに正三角形 になること の証明 を,三
角形 の合同条件 を適用 して論理的に組 み立てる論証 の進 め方 と意義 を指導する展開 を構想 した。第2時
で は,第
1時
において見い出された図形 の性質が,正
方形,正
五角形 において成り立つかどうかを問題とする課題を提示したとその証明においても
,生
徒は三角形の合同条
件 を適用す ることになる。 しか し,正
三角形の場合 と比べて,証
明の方法 は一段 と複雑 な もの と な り,生
徒 に とって思考 を十分 に働 かせ るに値す る課題であると考 えた。 さらに,そ
の後 の課題 の発展 として,正
六角形以上 の正多角形 を考察の対象 とし,生
徒 の主体的な学習への取 り組みを 期待する展開 を工夫 し,設
定 した。つ まり,一
般 の正多角形 において も成 り立つ性質 として見い 出された性質 を一般化 してい く授業 を意図 したのである。 以上,授
業実施案 に至 るまでの素材 の教材化 と授業 の構想 と設計 について述べて きたが,こ
の 検討の過程 において,教
材研究・教材開発の方法論的モデル は,教
材開発 の12の視点 と教材開 発 の5段
階のうち,特
に第3段
階 と第4段
階の機能 について,そ
の重要性が明 らかにで きた もの と 考 える。上述 の検討過程 は,他
の4つの授業実施案 について も同様 な検討 を繰 り返 し行 った もの であ り,詳
し くは次節 の授業実施案の作成 と実施後 の検討 を参照 されたい。2
授業実施案の作成 と実施後の検討 §1
小学校2年
「かけ算九九の構成」(1)教
材開発の視点 と教材観1)視
点について 視点⑤ について は,乗
法 に関 して成 り立つ性質であるところの,乗
数が1増
えれば積 は被乗 数分 だけ増 えること,交
換法則や被乗数 を既習の段 の被乗数 の和 として見 る分配法則な どを使 つて,乗
法九九 を構成 して行 くことにより,数
を多面的に見 ることが可能 となって くる。 これ は,以
後 のか け算 の学習 において も,一
つの数 を他の数の積 としてみるな ど,他
の数 と関係づ けて見 ることがで きた り,簡
単な3学
年のかけ算 にもフ監戦で きた りするよさをもっている。 ま た,こ
のような取 り組 みをす ることによって,第
3学
年以降の割 り算 において も生 きて くると66
笹 田昭三・ 矢部敏昭:数学教育 における教師教育教材 の開発 に関す る研究 考 えられ,数
を多面的 にみる態度 を養 うことは大切 な ことであると考 える。 視点⑥ について は,た
だ単 に「6の段 の九九 を構成 しましょう」で はな く,一
つの問題場面 を設定 しかけ算で立式 させ,発
展 させて「増 えると」「減 ると」とい う問題意識 を持 たせて九九 構成へ とつなげてい く。 これ は,そ
の場面・ 目的に応 じてかけ算 を用 いるよさにぶれ ることが で き,生
活の具体 的場面でか け算 を用いることが 自然 な状態で可能 になると考 える。 視点⑨ については,あ
る方法で問題が解決で きた ら他の方法で も解決で きないか,既
習の段 のかけ算 は使 えないかな どのいろい ろな見方がで きることに気づ くことを通 して,数
学 を活用 しようとす る態度 を養 ってい くことがで きると考 える。2)教
材観 について かけ算 は,一
つの大 きさが決 まっているときに,そ
のい くつ分 にあたる大 きさを求 めるとい う場合 に用い られ る演算である。 児童 は,第
1学
年で 2と びや 5と びの数 え方 をした り, 5個
ずつ10個ずつのように適当な大 きさをまとめて数 えた りす るなどの学習 を通 してかけ算の素地 を培 っている。 また,こ
れ まで のかけ算の学習 において同数累加 の簡潔な表現 としてかけ算の式 に表すよさや,か
け算九九 を 記憶することによって この結果が容易 に求め られるよさについて学習 して きた。 これ以後のか け算の学習 においては,具
体的な ことが らに即 してかけ算の式 に表 した り式 をよんだ りするこ とや,か
け算九九 を構成す る過程でかけ算 に関 して成 り立つ性質 を用いた数の表 し方をして効 率的にかけ算九九 を構成す ることに主なね らいがある。 これ は,か
け算九九表 を考察 して数 を 多面的にみ られ るようにす ることや,さ
らに計算の工夫,計
算の確 かめに生かす ことへ と発展 してい くために重要な点であると考 える。 そこで,指
導 にあたって は,ア
レー図をいろいろな角度か ら考察 しなが ら,か
け算に関 し成 り立つ性質 を用いて自力で九九 を構成 させたい。 その際,乗
数の1か
らの構成で はな く途中か ら扱 うことによ り,数
についての見方や考 え方 を深めてい くことがで きる と考 える。 また,か
け算九九 は乗法計算 における基礎的な技能であるので,十
分習熟 させ,さ
らに具体的な問題場 面 に活用で きるよう高 め,か
け算 を積極的に活用 してい こうとす る態度 を育ててい きたい。 修)指
導実施案1)実
施学年・実施年月 日 第2学
年 平成4年
11月 6日2)指
導 目標 ・ 乗法の構成原理や乗法の性質に関心 をもち,進
んで6の段 の九九 を構成 しようとする。 ・ 既習の九九 をもとに,乗
法の性質 を用い6の段 の九九構成 の仕方 を工夫す ることがで きる。 ・ 乗法の用い られ る場 で立式 し答 えを求めるとともに, 6の
段 の九九の正 しい唱 え方 を知 る。3)指
導過程1.問
題 を提示 す る。 しいのみ を 6こ つ けた首 か ざ りを見せ必要感 や興 味・ 関心 を もたせ る。 教師の主な働 きかけ 児童 の活動・ 反応1.問
題 を理解 し,課
題 をつかむ。鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 35巻 第
1号
(1993) 67
「―(問 題)―一――――一――――十一――十
一J一一___十
一―― ―十一一― ― ―十一―¬ │い しのみ 6こ ず つで くびか ざ りを作 ります。5つ作 るに は,い
しのみが何 こい るで し ょう。 │ ○大事 な数字 や言葉 を手掛 か りに立式 させ る。 ・ 机間巡視 し, 5× 6と 立式 した生徒 に は「 1つ 互 大 きさ」が6,「い くつ分」が5であ る ことをお 遣 える。匠
ま
ぞ
:ゝこ
招警
争
λ
暴
密雹
事
七
天
督
↓
孝
F三
ど
為
百
枚
参
み
し
ょ
ぅ
。
6× 5の 答 えの もとめ方 をい ろい ろ考 えて, 6の段 の九九 を作 ろう。コ
○ ○ 既習 の2∼5の段 のか け算九九 と同 じし くみや きま りが あ る ことに気 づかせ,見
通 しを立 て さ せ る。 既習 の2∼ 5の段 のか け算九九 や九九構成 の仕 方 は使 えないか考 えさせ る。 見 つ けた順 のや り方で答 えを求 めた り九九構成 した りせず,一
番 や りたい方法 や簡単 だ と思 う 方法か らや ってみ るよう指示 す る。 自分 の立 てた見通 しに従 って追及 させ る。 児童 の活動状 況 を座席表 に記入 し,必
要 に応 じ て,ヒ ン ト・ 指示 カー ドを提示 し個 に応 じた指 導 を行 う。 同数累加 で解決 してい る児童へ の手立 て もっ と手際 よい方法 はないか考 え させ,答
えが 6ずつ増 えてい ること, 6をたす 回数 が 1回 ず つ増 えていることな どか ら,前
の答 えに6をた して行 けばいい ことに気づかせ たい。 の方法 で解決 してい る児童へ の手立 て この方法 は分か りやすいが,既
習 の2∼5の段 のか け算 を使 って求 める方法 はないか考 えさせ, い ろい ろな見方がで きることに気づかせ る。6X5=3X5+3X5=30 6X5=5X6=30
方法で解決 している児童への手立て 友達 に説明で きるようことばで書かせて準備 さ せ るとともに,他の方法で確かめさせる。また, 早 く簡単 に見つけた り構成 した りで きるのはど の方法か考 えさせたい。2.結
果 や解決 の方法 を見通す。 ・6を 5回たす。 6を か ける数 の回数 をたす。 ・6を 5回た し,前
の答 えに6をたす (ひく)。 5× 6をして, 2の段 と4の段 の答 えをた し,〃 3の段 の答 えを2回た し, ・5の段 の答 えにか ける数 をた し,〃3.自
分 で追及す る。 ①同数累加 ・図で考える00000
00000
00000
00000
00000
00000
②同数累加 とかけ算の構成原理 ・ アレー図 悌はじ詞 ・乗数に±1をすれば ・6をたす6X5=6+6+6+6+6=30
6X6=6+6+6+6+・
6+6=36
6Xl=6
6X2=6+6=12
答 えが ±6にな る ので 前 の答 え に ±6をす る6X5=6+6+6+6+6=30
6X6=30+6=36
6X7=36+6=42
6X4=30-6=24
4から2の段 と4の段 の九 九 の た し算 を6X5=2X5+4X5=10+20=30
6X6こ2X6+4X6=12+24=36
3 '6=5+1
3. ○00000
00000
00000
00000
00000
③分配法則 ・6=2+
す る 。6=3+
笹田昭三・ 矢部敏昭 :数学教育における教師教育教材の開発に関する研究 ○ それ ぞれ の考 え方 の過程 を認 めた上で,よ り効 率 的 な方法 はないか追及 させ る。 ○ それ ぞれ の考 え方 の代表者 を机間巡視 で見 つ け, 発表 の準備 をさせ てお く。
4.被
乗 数や乗 数,積
の し くみや きま りに着 目させ なが らアイデアのすば らしさを認 め,自
分 の考 え との異 同 を明確 にさせた上 で,よ りよい考 え 方へ練 り上 げ させ る。Oア
レー図 (おはじき表)で
説明 させ,か
け算 の し くみや きま りについて,よ り理解 を深 め させ る。 ①単位量 に着 目させ,6=2+4,6=3+3,6生
5+1
な どに気づかせ九九構成 の見方 を広 げさせ る。 5。 本 時 の学習で分 か った ことを自分 の言葉で まと め させ学習 をぶ り返 らせ る。 ○発展 として, 6× 10, 6×■の答 えを見つ けさせ る。06の
段 の九九 の唱 え方 を知 らせ,全
員 で唱 えさせ る。 ○本 時 の学習 について「ぶ り返 リカー ド」に書 かせ, 自己評価 を促 す。 ④分配法則や交換法則 とかけ算の構成原理 ・分配法則 または交換法則を使って求めた答えに± 6を してい く。 ③交換法則 ・乗数 と被乗数を入れかえ既習の段のかけ算に直し て求める。乗数(2∼5),そ
の他は②の方法で求 め る。6X5=5X6=30
0考
えを隣席児童 に説明 し,明
確 にす る。4.み
んなで練 り上 げる。 ○ 自分 の考 え と比 べなが ら発表 を聞 く。O質
問 した り話 し合 った りしなが ら,全
員 で よ り手 際 よい方法へ と練 り上 げてい く。 5。 学習 をふ り返 る。 ①本時 の学習 で分 かった ことを ま とめ る。 ○本 時 の学習 で分 かった ことを使 って 6×10, 6× 11の答 えを見 つ け発表 す る。 ①6の段 の九九 の唱 え方 を知 り,練
習 す る。O「
ぶ り返 リカー ド」 に書 き,自
己評価 をす る。(3)指
導計画案・ 実施案の検討 かけ算九九の構成,教
科書で は具体物 の「一つ分 の大 きさ」の ものを「い くつ分」か順 に並べて あ り,□
×1→□X9へ
と構成す るようになっている。 この方法 を,以
下 に示す ように教材開発 の 3つの視点か ら検討 を加 えた。 視点① については,初
めか ら「□の段 の九九 を作 りましょう。」では,□
×1→□X9の
順 に計算 をすればよい という問題で しかな く,場
面や 目的に応 じて数学 を用いるという技能 を育 てて行 く問 題 とはな りに くい と考 えた。そ こで,児
童 の生活の中か ら興味・ 関心の もてる具体的な問題場面 を 設定 し,問
題 に必然性 をもたせ ることに した。生活科の一環 として「 とび出せ◇◇◇たんけんたい」 として児童たち と近 くの樗鉛公園 まで出かけ,秋
を袋いっぱいみつけて持 ち帰 り,そ
れ を使 って飾 りやお もちゃを作 るとい う学習の中に「 しいの実□ こずつで首かざ りを作 ります。□人分では,
し いの実が何 こいるで しょう。」 という算数の問題 を設定することにした。 視点⑨ については,こ
の問題場面で は,順
に答 えを見つければ自然に九九構成がで き上がってい るとい うことにな り,簡
単 にで きて しまうと,他
の効率 よい方法 を既習事項 を使 って見つけていこ うとす る態度 は養いに くくなるということが考 えられた。 さらに視点⑤ について も,乗
数が1増
え れば積 は被乗数分増 えるという性質 を用いて容易 に構成 してい くことがで き,交
換法則 や分配法則鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 35巻 第
1号 (1993) 69
を用いることな どの見通 しが立 てに くいのではないか と考 えた。そ こで,「しいのみ□ こずつで首か ざ りを作 ります。班 の人数分 (本学級 は5人
)の
首か ざ りを作 るには,し
いのみが何 こいるで しょ う。」とい う問題 を設定 し,問
題文中の□ ×5を既習事項 を駆使 して解 くことか ら構成へ とつなげる ようにした。 実施後 の考察 として,必
要感や興味・ 関心の もてる問題 を設定す るという意図か ら,教
師が金色 のモール にしいの実6個
を通 した首かざ りをつけて授業 を始 めたため,児
童の問題への取 り組 みの 動機づけが出来,意
欲的で主体的な学習の展開 とな り,期
待 した反応 を得 る事がで きた。 課題 として,多
くの反応が得 られ るのはよいが,練
りあげの段階でそれぞれの考 えの説明 に時間 がかか り過 ぎ,十
分 な練 りあげの時間 を確保す ることが難 しい。今後,発
表力 をさらに伸 ばす必要 があると考 えられ る。S2
小学校3年
「円の概念の指導」(1)教
材開発 の視点 と教材観1)本
教材 における教材開発 の視点 本教材では,教
材開発の視点 として,①
「数学を創造することができる力を育てる」 と②「数学 を創造,発
展させ ようとする態度 を仲ぼす」の 2つ を中心に考 える。また,授
業展開を考える上で は,次
のようなことを念頭に置いて考 えることにする。 いろいろな数学的関係を内包するような図的モデルや物的な教具などから操作活動を媒介 とする概念形成を行 うことができる展開を考える。
①「数学を創造することができる力を育てる」視点について
この視点 は,図
-1の
ような現実 に近い場面 よ り数学 を抽 出す る ことがで きる力 を育 てるものである。図-1の
段階 は,算
数 の問題 というよ りも,生
活 の事象に結 び付いている問題である。子 どもた ちの,み
んなか ら等 しい点 を探すための意図的な働 きか け,即
ち,
人 巻尺や紐 をもって きた りす ることによって,事
象の数理化が行われ る。 それが数学 を創造す ることがで きる力 を育てることになる と考 える。円が始 めか ら与 えられていて,「円 とは,コ ンパスでかいたよ うな形です よ。さあ,円の性質 を探 しましょう。」とい う活動 よ りも, 円の概念 を自ら追究す る方が数学の創造 を体験 す ることにつなが ると考 える。 ②「数学 を創造,発
展 させ ようとす る態度 を伸 ぱす」視点 について この視点 は,現
実 に近い問題場面 を解決することによって,一
つの概念形成 を図るとい う態度 を 育てるものである。 また,日
常の事象 を数学 を通 してながめるとい う態度 を養 うものである。 さら に,次
に述べ るようなモデルを活用 して問題解決 を図 るような態度 を養 うことに もつなが る。大 き いものでやって失敗 するか も知れない場合 に,小
さい扱いやすい物 をモデル としてやってみる。 そ こでで きた正 しい ことを大 きい もの (現実の問題)に
返す とい うモデルの活用 も考 えられ る。2)教
材観 円形 の物体 は身 の回 りにた くさんあるけれ ども,その中心が明示 されている場合 はわ りに少ない。 一松信氏 は,「そうい う円形 の物体 の大 きさを表せ,
といわれた ら,そ
の『さしわたし』,す
なわち, その内で1番
遠 い2点
の距離 をとるのが,自
然 の着想で はなか ろうか。」と述べている。我々が,鳥
取砂丘の大 きさを聞かれた とき,「東西16キロ,南
北2キロ。」 と答 える。 これだけで大 まかな大 き 人 図-1
半径15m
・台70
笹田昭三・ 矢部敏昭 :数学教育における教師教育教材 の開発に関する研究 さを伝 えることがで きる。 これが さしわたしの例である。 また, このさしわた しは,駅
に対する径 にもなっている。径 とは「 まっす ぐ結ぶ道」のことである。円でい うと直径 に当たる。円 とは,さ
しわた しが どこも同 じ長 さの図形 といえるのである。大 きさを表す 自然 な着想か ら得 られた直径が 円の定義 にな らず,直
径 は半径 の2倍
と間接的に表 され る。そ こで,一
松信氏 は,「 1点0か
ら一定 の距離 にある点の全体」 とい う円の定義 に達す るには,「かな りの思考が必要だったろう。」 とも述 べている。 円の概念の指導 に関 して は,多
くの実践がある。 その多 くの実践 は,中
心 よ り円周 を決める授業 である。 ここで考 える授業 は,輪
投 げゲーム (円周上か ら輪投 げをす るとき,輪
投 げ台 をどこに置 けば不公平な く輪投 げがで きるか を考 える)を
通 して,円
の中心及 び半径・ 直径 を知 らせてい くと いう方法である。 この輪投 げゲームによる方法 は,数
学的定義 とは逆 の方法である。 即 ち,中
心か ら円周 を決 めるので はな く,円
周か ら中心 を決 めてい くものである。本時 は,図
― 1のような問題場面 を設定 し,円
の中心 を探す とい う活動 を行わせ る。 このような学習活動が「丸 い」 とい うことか ら「 どこかある1点か らの距離が一定」 とい う円の本質 を抽象化 してい く過程で 必要である。 121 指導実施案1)実
施学年 と実施年月 日 鳥取大学教育学部附属小学校3年 1組
平成3年
7月 1日2)指
導 目標 円 とは,中
心か ら等 しい長 さの点の集 まりであることを理解 させ る。3)指
導過程1.問
題設定 。缶の縁をなぞったような輪があります。その上に 立って輪投げをします。 自分が投げたい場所 に立 っ てそこにシールを貼 りなさい。投 げる場所 は変えて はいけません。(投げる位置か ら等距離 にな らないよ うに輪投げ台を置いてい く。) ・不公平が起 こらないようにするためには,ど
こに 輪投 げ台 を置 けばよいですか。 ・各班で一人,自
分が真 ん中だ と思 う位置にシール を貼 ってみんなか ら等 しい長 さになっているか確か めなさい。2.自
力解決 ・不公平が起 こらないように輪投げをするためには, どこに置 けばよいか,15分間考 えなさい。考えると きに使いたい道具があれば,先
生 に相談 しなさい。 ・ みんなか ら同 じ長 さの所 です。 ・ 真 ん中へんです。 ・ だいたい同 じだが,少
し違 う。2.自
力解決 ・ 巻尺 を使 って,直
径 らし き所 を1箇所測 り,そ
の 半分 の所 を中心 とす る。 ・ 巻尺 を使 って,直
径 らしき所 を2, 3箇
所測 り, 交わ る ところを中心 とす る。 ・ 床 にか いた輪 と同 じ大 きさの紙 を四半分 に折 って 直角 になった所 を中心 にす る。 教 師 の主 な働 きか け鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 35巻 第
1号 (1993) 71
3.集
団解決 。どのように考 えたか発表 しよう。4.思
考 実験 。今決 めた点 に輪投 げ台 を置 けば,人
数 が6人にな って も,不
公平 が起 こらないか考 えな さい。 ・7人, 8人 , 9人…37人 …で は, どうか予想 しな さい。「 もし,不
公平 にな らない とした ら…だ。」 も し不公平 にな る とした ら…だ。」とい うよ うに考 えな さい。 ・ 一人 が一 つの輪 の上 にシール を貼 りなさい。 (中心 に紐 を固定 して回 し,中
心 と輪 の上 の点 との 長 さが等 しい ことを確認 す る。) 5。 ま とめ ・輪投 げ台 を置 いた点 と,君達 が立 ってい る点 とは, どんな関係 にあ りますか。 (用語「 円・ 半径」 と円の定義 を知 らせ る。)3.集
団解決 ・ 巻 尺,紐
を使 つて等 しい長 さにあ る点 を探 した。 '一 番長 い長 さを求 め,そ
の半分 の点 を決 め,そ
の 点 か らみんなの所 まで の長 さを測 ってみ る と,長
さ が 同 じになった。 ・ 直角 を作 るの と同 じ折 り方 を して,直
角 の所 か ら み んな までの長 さを測 ってみ る と,同
じ長 さにな っ た。4.思
考実験 ・ 不公平 は起 こらない と思 う。 ・ もし,不
公平が起 こらない とした ら,台
か ら円周 上 の点 は,お そ ら く等距離 の はず だ。・ もし不公平 に な る とした ら,今
までの4人, 5人
の位置 がずれ る か ら,お
か しい。 だか ら,中
心 は動 か ない はず だ。 5。 まとめ ・ すべ ての長 さが同 じになってい る。(3)指
導実施案の検討 と考察1)指
導計画案がで きるまで 数学的な定義 に基づいて,円
を構成 してい くのか,そ
れ とも中心 を発見 させ,そ
こか ら円を眺 め させ,数
学的な定義 を得 させ るのか,ど
ち らが「数学 を創造する」 とい う立場 に近 いのか議論がな された。結論 として,後
者の方が,児
童が もっている概念 を分析す る有益 な習慣 を与 えることにつ なが ると考 えたのである。定義 を発見 した後で,定
義 に基づいて,円
を構成 した り,定
義 に基づい て考 えた りす る力 をつ ければよい と考 えたのである。2)実
施後 の考察 ①輪投 げゲーム とい う場面設定 について 算数の問題 というよりも,子
どもたちの生活 に結び付いている問題である。 そのため,不
公平 な 場所 に置いた輪投 げ台 を中心 らしき所 に置 くとい う活動がす ぐ行われた。 この ことか ら,中
心 を探 す とい う課題 は理解 しやすい ものであった と考 える。 ②中心を予想する場面について この場面は,自
分が真ん中だと思 う位置にシールをはり,そ
こで本当にいいのか検証 していこう とする態度を育てることにつながる。 これは,「数学 を創造,発
展 していこうとする態度を仲ばす」 というね らいに当たると考える。なぜなら,最
初のシールは直観かも知れないが, 2つ
日, 3つ
目 のシールは,実
測に基づいて誤差 を縮めようとする活動になるか らである。 ③巻尺や紐 を持 って来た場面について72
笹田昭三・矢部敏昭 :数学教育における教師教育教材の開発に関する研究 事象の数理化,即
ち,公
平であるための条件 (みんなか ら長 さが等 しい点)を
探 す という活動が 行われた場面である。 この場面の学習活動 によって,「数学 を創造することがで きる力 を育 てる」こ とを主たるね らいにする授業 になった と考 える。 また,中
心 らしきところを見つ けて遊 んでいる班 がみ られたので,他の方法でその点が中心か どうか検証 させ るとい う指導が必要であった と考 える。 ④円 と同 じ大 きさの円盤 を4つ折 りにして,中
心 を決 めた場面 について 円盤 を4つ折 りにするとい う発想 は,「直角」を作 ることと,折
り紙遊 びか ら理解 しているであろ う「折 り返 しの原理」か ら生 まれた と考 える。 この操作活動か ら発見 された仮 の中心か ら, 4人
ま での長 さを測 り,同
じ長 さであることを確認す るとい う活動がなされた。 ここで, 5人 , 6人 , 7
人・・ 。と増や し,点
をとり,仮
の中心か ら,新
たに とった点 までの長 さが同 じであるか どうか思 考実験 をすることによって,仮
の中心が真 の中心 となることを理解 させ ることがで きた。最後 に, 中心か ら円周 まで紐 を貼 り,円
周上 を回 るとい う活動す ることによって,仮
の中心か ら,ど
の円周 上の点 までの長 さが等 しい ことを理解 させ ることがで きた と考 える。これ らの活動 は,「形式化 した り,一
般化 した りす る」とい う活動 として捉 えることがで きる。 これ は,「数学 を創造,発
展 させ よ うとす る態度 を仲 ばす」 ことにつなが る ものである。 ⑤黒板でのまとめの場面 について ここで は,今
日の授業で得た円に対す る見方 を引 き出 し,円
の定義及び「円,中
心,半
径」の用 語 を指導 した場面である。 §3
小学校4年
「小数のかけ算」(1)教
材開発 の視点 と教材観1)視
点 について 本教材 は,以
下 に示す2つの視点③,⑤
か ら教材開発 を試みた ものである。 視点③ では,乗
数が小数 に変わった として も,既
習の内容である(整数)X(整
数)の
乗法の形式 は保存 し,小
数の場面 において,単
位 の考 えを用いて処理す ることがで きることが大切 となる。 こ の視点で は,数
学的な知識 を,場
面や 目的 に応 じて,選
択・ 活用 し,多
様 なアプローチ をしなが ら よ りよい ものを求 めてい くことをね らっている。 視点⑤で は,既
習の数学的技能 を,見
通 しをもちなが ら,駆
使 して問題解決 にあた ることをね ら っている。図や表 に表 し単純化 した り構造化 した りして考 えることや,計
算法則 を用 い10倍して10 で割 ることで,整
数 として考 えることがで きるな どの数学的な技能 をどう使 うことがで きるか,場
の設定が大切である。 そこで,内
容面で は,問
題把握 において,既
習の (整数)× (整数)を
どう適用 して,
どのように 説明するかが重要なポイン トになる。1/1ヽ数)× (整数)に
おいて も,整
数同士 と同 じ構造であるこ とを明 らかにする必要がある。 次 に,方
法面で は,式
表示 は形式的には分かるが,既
習事項 にどう結 びつけて考 えるようにで き るかである。 そのために,見
通 しの段階で,結
果の見通 しとして,小
数 を切 り捨 て と切 り上 げをし た整数のかけ算 をして,そ
の間 に積があることに気付 くことである。 また,自
力解決す る際 には, 図や表 を用いて単純化 した り,線
分図に表 して構造化 した りすることによって,多
様 なアプローチ が可能 になる。特 に,数
直線 を使 って分割 された1単
位 のい くつ分 とい う見方 は, 1つ
分が小数の ときで も適用で きることが分か る。力日えて,理
解 の方法で,関
係的理解がで きるように,具
体的な 操作 な どの活動や思考実験 を用いることが大切である。鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 35巻 第
1号 (1993) 73
また,思
考面及 び態度面で は,既
習内容 のうち,帰
納的 に2倍 , 3倍
と整数 と同様 にして考 えて い くこともあるが,数
学的なアイディアを生か してい き,そ
のよさがわか るような考 え方 に着 目す ることが大切 である。数理的な処理 のよさを追究 してい く数学的な思考や態度 は,筆
算形式 を作 り だす ことにつなが るのである。 さらに,自
分の解決の様子 をふ り返 る場 を設定することが必要であ る。 そして,児
童のそのような態度 を評価 してい くことが,態
度面 を育 てることになる。2)教
材観 について 小数 は,整
数 だけで数値化す ることがで きない事象 を とらえるために整数 と同様 の構造 をもとに 拡張的発展的 に考 え出された数である。 児童 は, 3学
年で,か
さや長 さの端数部分の表現 として小数 を学習 し,1/10の
位 の小数 の力日法計 算や減法計算 をす る小数の理解 を図っていて, 4学
年で は,1/1000の位 まで拡張 し,小
数が整数 と 同じ十進数であることを扱い,そ
の上で1/1000の位 の小数 の加減計算 を学習 して きている。 本単元では,小
数の乗除の うち,1/Jヽ数)× (整数),(小
数)■ (整数)の
乗除計算 と(整数)■ (整 数)=(小
数)の場合 を扱い,Jヽ数 の数 としての理解 をいっそ う深 めてい くことをね らい としている。 この計算で は,被
乗数,被
除数の小数 を1/10,1/100な ど位 を単位 として考 えさせ ることによって数 値化 して とらえ,そ
の結果 をもとに 1を 単位 とした見方で見直 してい き,整
数の乗除計算 と同 じよ うに対処すれ ばで きるとい うことの理解 をね らっている。 また,手
順 を形式的におさえるので はな く,単
位 の考 え と関係づ けなが ら形式化 をはか ることも重要 なね らいである。 121 指導実施案1)実
施学年 。実施年月 日 第4学
年 平成4年
11月 26日2)指
導 目標 1/Jヽ数)× (整数)の意味 を理解 し,小
数 に1位
数 をかける簡単なかけ算がで きる。3)指
導過程(1次 1時
間 日)1.問
題場面 の提示と
Eヒ
煙
仝れ■
4全/E_■
ず
lPと
ります
! ○中の量が見えないので,匠
コの中に入る適当な数 をあてはめましょう。 ○匡コ を使って,式
を考えよう。○匠コの中に
,数
を入れて考えよう。
O(整
数値 だ けの場合)少
数 の場合 は どんな数が考 え られ ますか。O液
肥 が3.6珍 入 りの ジ ョロだ と,ど んな式 にな りま すか。O今
まで の計算 とどこが違 い ますか。I(小
数)× (整数)の
求 め方 を考 えよう。│
2,結
果 や解 決 の見通 し 03.6× 4の答 えは どれ くらい にな るか予想 しよう1.問
題 の設定場面 を理解 し,課
題 をつか む。 全部 で何 をあ るので し ょう。 i02,3,5,15,1.8・
・・OE×
4 ・22の
とき,2×
4 ・1.5¢ の とき,1.5× 4 ・32の
とき, 3× 4 03.6× 40か
け られ る数が小数 にな ってい る。2.結
果 や解決 の見通 しを立 て る。 03.6× 4の結果 の予想 ・4×4=16
・3×4=12
・12よ リラ(き く, 16よ り/jヽさい 教 師 の主 な はた らきか け 15く らVゝ74
笹田昭三・矢部敏昭 :数学教育における教師教育教材の開発に関する研究 03.6× 4の計算 の仕 方 を考 えよ う。 ○見通 しの立 たない児童 に は,情
景 図や ヒン トカー ドを与 えて,自
分 の見通 しを持 たせ る。3.見
通 しに従 って,自
力 で解決 ・ 机 間巡視 をし,座
席表 を使 い,児
童 の考 えを把 握 す る。 ・ 累力日だけや図だけの考 えで終わ っている児童 に は0。1を単位 とした見 方がで きるように支援する。 ・解決 の見通 しの立 たない児童 には,助
言 を した リヒン トカー ドを与 えた りす る。 (印刷 した ます,線
分 図 な ど)4.集
団で解 決Oど
の よ うに考 えたか,発
表 しよう。 ・単位 の考 えを認 め,そ
の よさに気付 くよう支援 す る。 ・ 既習の内容 を活用 してい る点 を評価 してい く。 ・ 図や表 を利用 して,わ
か りやす く説明 している 点 を認 めてい く。 ・ 必要 に応 じて,数
学的 な考 え方 の よさをお さえ る。 ○問題 の答 えをは じめに立 てた見通 しと比 べて確 か め よう。 5。 学 習 の ま とめ と練 習 03.6× 4の計 算 の仕 方 をいってみ よ う。 ○ 同 じよ うに0.2× 6の計 算 の仕 方 を答 えな さい。 ○練 習問題 を しまし ょう。 0.6×7= 2.4×
3=
6.ぶ
り返 り ○今 日の学習 をふ り返 って,算数 日記 を書 きなさい。 03.6× 4の解決 の仕方 。た し算 でや ってみ る をを dを に して考 え る ・0.12をも とに して考 え る。線 分 図 を使 う 。3.6を 3と 0.6に分 けて考 え る
。図 を書 く 。10倍して10で割 る
3.見
通 しに従 って 自力 で解 決 ・3,6+3.6+36+36=14,4 ・3.6+3.6=72 72+3.6=108 108+3.6=144
'3.6 Xl→36 36X2→
7.2 36X3→10836X4→
144と '10倍として整数にして10で割る ・3.6を=36祀 36X4三144 144肥=1442 ・36を は0,1をが36こ, 36X4=144 0.1が 144こで144を 0 1 2 3 4 0.1が 1 36こ 1 36こ 1 36こ 1 36こ 4。 それ ぞれ の考 えを出 し合 い,よ りよい方法 をみ んなで練 り合 う。 ・ た し算で,
・ 10倍 して,10で割 って 。図 を書 いて, 1こ分が0.1で36こ 4こ 分 だ と0.1 が144こで, 14.4珍 ・ ゼを d¢ に直 して,36制が4こ で,36×4=144
144dゼ =14.4を・ 線分図 を書 いて ・3.6は 0.1が36こと考 えて
,3.6×
4は0.1が36× 4で144こ。 0.1が144こで14.40は
じめ立 てた見通 しと比 べ てみ る 。答 えは予想 と同 じ くらいだった。5.学
習 の ま とめ をす る 03.61ま 0.1が36,36を 4倍して144 0.1が144こで14,4 00.2は01が 2, 2を
6倍して12 0。 1が12こで1.20練
習問題 をす る ・0,6×7=4.2
・2.4×3=7.2
6.算
数 日記 を書 く ○ 自己 の学 び をふ り返 り,自
己評価 す る。 俗)指
導計画案 。実施案の検討1)検
討のプロセスについて ①問題提示の過程 をふ り返 って よい問題づ くりの視点 として,ど
んな素材 を開発す るかが問題 になる。身近 な数値 ということが 上 げられ るが,教
科書主体 の問題づ くりでは,児
童 の実態やね らい とする数学的な考 え方 を狭 い範 囲で しか とらえることがで きない場合がある。 まず,数
値 をどうす るのかを問題 にした。純小数 と鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 35巻 第
1号
(1993) 75
して0.3X4,帯
小数 として3.2×4,繰
り上が りのある帯小数 として3.6× 4を児童 の実態 に合わせ て,問
題 の数値 を考 えなければな らない。ある程度 の抵抗があると同時 に,ね
らいに沿 った もので なければな らない。始 めに隣学級で,純
小数 を扱 った授業 をしてみると,な
るほ ど内容的には理解 されるが,小
数のかけ算 の単元全体 の見通 しは立 てに くいようであった。 素材 については,問
題場面 を どう設定す るか は,液
量 を使 うことによって,操
作的な活動が期待 で きた り,数
量 を図示 して とらえた りす ることがで きるメ リッ トがある と考 え,牛
平レヾックの200記 を0.2を として,6日
分 にす ることも考 えた。しか し,帯
小数 における問題 は,河ヽ数 のか け算のよさ が感得で きるので,な
じみが少ないが,液
肥 を使 うことにした。その際,ジ
ョロを素材 に使 うよう にしたのは,問
題場面 を最初 に児童 に見 えないようにして,数
量 を既習 の整数値 か ら,小
数値 まで の範囲で児童 による問題づ くりが可能 になると考 えた。条件不足の ものか ら,整
数の場合 を想定 し, 既習の範囲でで きるか け算の演算決定 を基盤 においた。 このことによって,児
童 は数の範囲 を無理 な く小数 にまで拡張 しようと考 えたのである。 ②「数学的な考 え方」 を生かす指導 について 「数学的な考 え方」 として児童 は意識 してい ることはないのであるが,教
師が教材 に向か うとき に,学
習内容やね らいばか りでな く,数
学的な考 え方や数学的な態度 についての指導観 をしっか り もっておかなければな らない。つ まり,教
材研究 の確かさが大切である と考 える。 本時の数学的な考 え方や数学的な態度 の主な ものは,ア
)単
純化の考 え…河ヽ数 を整数 に置 き換 え て,見
積 りがで きる,図
や表 にして考 える。イ)力日法 の考 え…累加の考 えで,自
分 な りに解法で き る。 ウ)帰
納的な考 え…2倍 , 3倍
として整数の場合 と同様 にして考 える。工)式
についての考 え …10倍して,後
で10で割 るとい う式変形 して考 える。オ)単
位 の考 え…lWを
単位 として考 える, 0。12を
単位 として考 える。力)基
本的な性質 の考 え…3.6を 3と0.6に分 けて考 える。 キ)構
造化 の 考 え…線分図に書いて考 える。 とな り,こ
のような考 え方 は,教
材研究 の視点 を発端 として考察 を 深める機会 となったのである。2)指
導実施案の検討・考察 ①児童の多様な考えを練 り上げる際の時間設定や,一
般化の視点での教師サイ ドの事前の反応予想 を含めて教材研究において,練
り上げる段階の取 り扱いや取 り上げ方をあらか じめ意図してお く必 要がある。また,児
童の実態把握 を十分 し,学
習中の机間巡視 を通 して座席表などに記録 してい く ことが必要である。 ②数学的な考 えを教師が明確にしてお くと,そ
のよさを示して,児
童に感得させることがで きる。 児童の主体的な活動 とはいっても,教
師が十分おさえておかないと,児
童 は単 に活動 しているだけ になってしまう。主体的な学習活動 を支援する教師のあり方を十分に考 えてお く必要がある。 ③見通 しをもった指導をするために,教
師が各段階で どう比較検討 してい くか,
どう一般化させて い くか,
どう発展的内容 につなげるかを考慮 しておかなければならない。 §4
小学校6年
「立体」(1)教
材開発の視点 と教材観1)本
教材 は,以
下の 4つ の視点か ら教材開発 を試みるものである。 視点④「数学的な知識,技
能 を理解する」について 三角柱を作成することをねらいとして,展
開図を考 えることになる。直観力 と念頭操作 を通 して なるべ くた くさんの展開図を考 え出していきたい。考 え出された展開図を各構成要素に着 目して,笹田昭三・矢部敏昭 :数 学教育 における教師教育教材の開発に関する研究 位置関係
,つ
なが りな どを考察す ることで,三
角柱 についての理解 を深めてい くことがで きる。 ま た,構
成,分
解 などの操作活動 を通 して,三
角柱 と展開図を統合的にみた り,ど
の展開図が簡便で あるか考 えた りす ることで,論
理的な思考 を深 めてい くことがで きる。 それが,立
体図形 について の見方,考
え方 を豊かにし,概
念 を深 めてい くことになる。 視点⑤ 「数学的な技能 を駆使す る」 について4学
年での立方体 の展開図についての学習経験 を生か し,三
角柱 の展開図 はどこの辺 を切 り開い ていけばよいか,念
頭操作 の中で分解 し,そ
の過程で構成 し,各
構成要素の位置関係 を確かめなが ら考 えてい くことになる。 また,展
開図 は,ユ
ニー クに,そ
して合理的にか くことがで きることも 大切だ と考 える。例 えば, 3つ
の側面 を くっつけてか く場合や離 してか く場合,
どのようにすれば 簡単で,正
確 にか くことがで きるか,そ
の ときの底辺 をどこにつければよいかな どを考 えて作図 し てい くことが大事 な能力,技
能 と言 える。 そして,底
面 をか く場合 は,既
習事項 である三角形の作 図方法 を生かす ことになる。 視点⑥ 「数学的な知識,技
能 を知 ろうとする意欲 をもっている」 について 新 しい評価 の観点 と関連 して考 えるな らば,関
心・意欲 。態度 と捉 えることがで きる。 ここで は 上記の④,⑤
の視点 に立 った学習 に興味 をもって,意
欲的に取 り組 む ことである。三角柱 か らその 展開図 を考 えるとき,よ
りた くさんの展開図を見つけようとすること。 よ り構成,分
解が しやすい 展開図 を考 えること。 よ り合理的に展開図をか こうとすること。そして,
これ らの活動 を楽 しんで 行 なうことであると考 える。 また,他
の多角柱や円柱 についてはどうだろうか と発展的に考 えてい こうとす ることも大事 にしたい。 視点③「場面や目的に応 じて数学 を用 いることがで きる」 について 例 えば,基
本的な立体 の表面積 を求める問題 において,展
開図 を頭 に浮かべ る ことで,能
率的 に 求める方法 を見つけ出す ことがで きる。 また,生
活 の中で は,運
動会の とんが り帽子な どを作成 す る際,使
用す る厚紙 な どの大 きさを展開図に分解 してみることで見積 もることもで きるのである。2)教
材観 本教材 は,基
本的な立体図形である角柱,円
柱及 び角すい,円
すいの概念形成 をね らい としてい る。 そのために,こ
れ らの立体図形 を平面 に表現 した り,平
面か ら立体 を想定,作
成 しなが ら,立
体図形 についての理解 を深め,立
体や空間 に対する豊かな感覚 をもてるように してい く。 指導にあたっては,実
物模型 の立体 の観察 を通 して,そ
の特徴 について自由に表現 させ,立
体 に 関する興味,関
心 を喚起 させたい。 そ して,そ
れぞれの立体 の共通点や相違点 に気づかせ,観
点 を もって,仲
間わ けなどがで きるように したい。 また,構
成要素や位置関係 に目を向 けて考察 し,特
徴や性質 について整理 し,立
体図形 に対す る理解 を深 めたい。 さらに,立
体図形 を平面図形 に表す 方法 として,展
開図な どを考 えてい くが,分
解,構
成 という念頭操作や具体的操作活動 を通 し,相
互 の関係 を捉 えるようにし,立
体図形 に対 する見方や考 え方 を豊かにしてい きたい。 似)指
導実施案1)実
施学年 と実施年月 日 第6学
年 平成4年
11月 18日2)指
導 目標 ・ 角柱 とその展開図を筋道立てて考 えることを通 して,そ
の相互関係 をつかむ。 ・ 角柱 の展開図か らか き方が分か り,そ
れを組 み立 てて角柱 を作 ることがで きる。鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 35巻 第