第40回内科学研鑽会臨床病理検討会報告書 日時:平成 12 年 7月 14 日(金)午後 7 時 場所:名古屋大学医学部 鶴友会館2 階大会議室 症例:感冒様症状に続いて複視などの神経症状が出現した 35 歳の男性 主討論者:大澤雅子(愛知県厚生連海南病院) 司会:玉山昌徳(愛知県厚生連海南病院) <症例提示> 【症例】35 歳男性 【主訴】目のぼやけ、ふらつき。 【家族歴】父:高脂血症・狭心症・脳梗塞、母:高脂血症、妹:高脂血症。 【既往歴】幼少時に気管支喘息、6 歳時に左側扁桃腺炎(扁摘)、25 歳時に左顔面神経麻痺。 【生活歴】喫煙歴:20~30 本/日(15 年間)、飲酒歴:付き合い程度。 【現病歴】東京都出身。職業は機械製造業(デスクワーク)。20 歳代から会社の検診で高脂血症指摘、会社診療所 よりプラバスタチン10mg×2/日処方。1999年3月22日に乾性咳嗽・咽頭痛出現、発熱なし。以後夜間に乾性咳 嗽持続。4 月 3日起床後、目のぼやけ自覚。同日午後自動車運転中、目の回る感じあり。4 月 4日起床時、足のふ らつきあり焦点が合わず、両手掌のしびれ感も出現。4月 7日、当院受診。左上下肢運動失調あり。眼底正。左眼 の動きは各方向で不安定、特に左眼球外転・上転障害あり(特定の外眼筋障害は明確ではない)。胸部 Xp:CTR 44%、 肺野正、C-Pangle sharp。ECG:NSR・HR70。4月8日、当科入院。食欲良好。夜間排尿は0~1回程度。便通は1 回/日。過去最高体重 78kg(現在)。 【入院時身体所見】身長173.8cm、体重 77.85kg、体温36.8℃、PR 94/min(整)、 BP 138/80mmHg、RR 16/min。 皮膚正。口腔正。結膜正。表在リンパ節触知せず。頚部・胸部・腹部正。意識清明。見当識正。記憶正。歩行時 動揺あり、つぎ足歩行拙劣。四肢筋力正、筋トーヌス正、筋容積正。不随意運動なし。ロンベルグ徴候陰性。指 指試験・膝踵試験は左側拙劣。触覚は両手掌で軽度低下。痛覚正。位置覚正。振動覚は右上肢 4/8・左上肢 5/8・ 右下肢 5.5/8・左下肢 5.5/8。四肢腱反射はすべてで消失。両側バビンスキー反射陰性。項部硬直 なし。頚椎可 動域正。左眼瞼下垂あり。正中視で眼球位置正。輻輳時左眼内転せず。共同視で左眼球運動(特に外転上転)障 害あり。単眼視で左眼運動障害軽度。両側対光反射正。両側瞳孔同大。左右注視方向性眼振あり。その他の脳神 経学的異常所見なし。
【入院時検査所見】血液検査:WBC 9100/μl(Ba 0.4%, Eo 2.4%, Neu 60.4%, Lym 32.5%, Mo 4.3%),RBC 516 万 /μl,Hb 15.5g/dl,Ht 44.5%,Plt 28.1 万/μl,TP 8.3g/dl(Alb 5.2g/dl, α1 0.22g/dl, α2 0.72g/dl, β 0.78g/dl, γ 1.37g/dl),GOT 20IU/l,GPT 27IU/l,ALP 230IU/l,LDH 284IU/l,CPK 63IU/l,γ-GTP 44IU/l,UA 4.8mg/dl, BUN 11mg/dl,Cr 0.7mg/dl,Na 143mEq/l,K 4.0 mEq/l,Cl 101mEq/l,Ca 8.9mg/dl,P 3.4mg/dl,T-Cho 332mg/dl, TG 452mg/dl,CRP 0.25mg/dl,PT 10.6秒,APTT 30.0秒,ESR-60 10mm,ESR-120 24mm。尿検査:比重1.030,pH 5.0,G-,P-,OB 1+,keton-,bil-,uro±,白血球反応-。尿沈渣:正。髄液検査(5ml採取):圧 21/19cmH
2O, 無色透明,pH 8.5,比重 1.006,細胞数 4(N/L 1/3),タンパク 32mg/dl,糖 78mg/dl,細菌-,オリゴクローナ ルバンド-,ミエリン塩基性タンパク 0.5未満。頭部MRI(4月8日):下垂体茎長く下垂体体部菲薄・トルコ鞍 やや拡大、脳血管正。 【入院後経過】眼球運動障害・眼瞼下垂・運動失調・手掌触覚低下は入院後徐々に改善、手掌しびれ感・四肢腱 反射消失・四肢振動覚低下は継続。無治療経過観察。 4 月 12日、再度の髄液検査実施。圧 22/21.5cmH 2O,無色 透明,pH 8.0,比重 1.007, 細胞数 3(N/L 0/3),タンパク 46mg/dl,糖 64mg/dl,潜血 2+(トラウマティック タップ)。4 月13 日、TSH0.99μIU/ml, fT4 0.91ng/ml, サイログロブリン抗体-,LDL 974mg/dl(190-580), VLDL 492mg/dl(<210)。4 月20 日、3度目の髄液検査実施。圧 21/19cmH 2 O,無色透明,pH 8.0,比重 1.006,細胞数 3(N/L
0/3),タンパク 56mg/dl,糖 66mg/dl,潜血-。同日の神経学的所見は、歩行時ふらつきなし、つぎ足歩行やや 拙劣、筋力正、筋トーヌス正、筋容積正、不随意運動なし、ロンベルグ徴候陰性、指指・膝踵試験はほとんど左 右差なし(左側でわずかに拙劣?)、触覚正、痛覚正、位置覚正、振動覚は右上肢 4.5/8・左上肢5/8・右下肢 5.5/8・ 左下肢6/8、四肢腱反射消失、両側バビンスキー反射陰性、項部硬直なし、眼瞼下垂なし、眼球位置正、輻輳時左 眼内転せず、共同視で左眼球運動障害あるが入院時より軽度、単眼視で左眼運動障害軽度、注視方向性眼振あり、 両側対光反射正、両側瞳孔左右同大。4 月21 日、ある検査の結果が判明。 <症例に対する質問> 大澤(海南病院):リポプロテイン分画はどうか。LDLは 974mg/dl(190~580)、VLDL は 492mg/dl(<210)。 <主討論> 大澤(海南病院内科) プロブレムリスト #1 高脂血症 #2 複視→Miller-Fisher 症候群 #1 20 歳代より指摘、スタチン製剤を既に服用している。家族歴として父母妹にも高脂血症が存在。入院時 Tchol 332mg/dl, TG452 mg/dl, LDL974mg/dl, VLDL 492mg/dlと明らかに上昇を認める。これらより家族性高リポ蛋白血 症でリポ蛋白のパターンから家族性複合性高脂血症ではないかと考える。 #2:まず、病巣の局在診断を行う。この症例の脳神経系では、左動眼神経麻痺、左外転神経麻痺が存在してい る。質問の話によると協調運動障害は認められないということで、核性もしくは核下性障害と考える。全ての深 部腱反射障害、両手掌の触覚軽度低下と振動覚障害という所見を、末梢運動神経感覚神経障害と考える。歩行障 害、タンデムゲイト拙劣、ロンベルグ徴候陰性、位置覚正常という所見を、小脳症状と考える。注視方向性眼振 は混合性でもなく純回旋性でもない水平性で、脳幹部ではなく小脳症状を示唆する。以上まとめると、1)左動 眼神経・左外転神経の核性もしくは核下性障害、2)末梢運動神経障害、3)表在覚・振動覚の末梢感覚神経障 害、4)小脳失調となる。自律神経障害は調べられていないため不明。痛覚が保たれ、全深部腱反射消失し、病 的反射が認められないことは、上位ニューロンの障害ではなく、下位ニューロンの障害と考える。障害の原因診 断として、先天性、外傷、脳血管疾患、腫瘍、感染、中毒、変性脱髄アレルギー、内分泌代謝疾患、心因反応を あげる。この患者では、感冒様症状が先行し、神経症状が突然ではないが急性で数日でピークに達し、その後自 然軽快をしている。MRI では下垂体が菲薄化している以外に頭蓋内病変を指摘できない。障害部位が眼、小脳、末 梢感覚神経と 3 ヵ所に及んでいることからは、先天性病変、外傷、脳幹梗塞を含む血管性病変、腫瘍、MSなど の中枢性脱髄性疾患を考えにくい。アレルギーのはっきりとした既往はない。中毒の暴露歴もない。アルコール 歴もない。内分泌代謝疾患もない。結局残るのはinflammatory disease だが、脳脊髄液に炎症所見はなく、axon 及び myelin の炎症性疾患と思われる。炎症性疾患でこのように障害が3カ所に及ぶものに、Guillann-Barre 症 候群、Miller-Fisher 症候群、Bickerstaff型脳幹脳炎がある。Guillann-Barre 症候群では小脳症状があわない。 進行性の脱力もない。Bickerstaff 型脳幹脳炎とすると、進行する意識障害がなく、脳神経障害は動眼神経と外転 神経麻痺のみで、多彩ではないことから否定的。Fisher 症候群とすると、眼筋麻痺・小脳性運動失調・腱反射消 失が存在していること、眼筋麻痺・小脳性運動失調が急速に進行するが1週間ほどで停止していること、先行感 染と思われる症状があること、左右対称性軽度感覚障害及び髄液細胞蛋白解離を認めることは、その診断基準を 満たす。そこでプロブレムをMiller-Fisher 症候群と展開する。4 月21 日に報告された検査結果は、血清の抗GQ1b 抗体と思われる。3月22日から乾性咳嗽と咽頭痛が出現しているとのことだったが、マイコプラズマ抗体につい ては調べたか。 主治医:調べなかった。
<主討論に対しての質疑> 司会:神経系で障害部位につき再度述べて下さい。 Dr.大澤:動眼神経外転神経の核性、核下性障害。深部腱反 射のすべてにおいて消失し、末梢運動神経障害がある。末梢感覚神経には表在覚障害と振動覚障害が存在するが 痛覚障害はない。すべての腱反射消失、病的反射が認められないことから上位ではなく下位ニューロンの障害と 思われる。あとは小脳失調。自律神経系については症例呈示者より調べていないとのことなので不明。 司会:この病巣障害診断についてはどうか、議論は。 三島:眼の動きだが、核性ないし核下性の障害の場合は片眼視した時にも障害がでるのではないか。この人は片 眼視をした時には動いているが、両眼視をすると動かなくなるという記載だと思う。核性ないし核下性に神経の 障害がある場合は両眼視しようが単眼視しようが動かない、それが動いてしまうというのはどうなのか、という ことが一つ。それから、反射は消失しているのでlower motor neuron の障害だといわれたが、lower motor neuron に障害があればまず初めに動かなくなる。この人の筋力は正常と記載されているのでそれが少しおかしい。筋の 容積も最終的には減ってくる。それは経過を待つしかない。腱反射のルートはsensoryで上がっていって、motor で戻る。つまりlower motorとするのはおかしい。 渡部:改善していった時の様子をみると振動覚の低下や深部腱反射の低下が残っているが、その割には失調とか 眼球運動は早期に改善している。腱反射の低下というのは運動神経ではなくて感知する方、上行性の知覚線維の 障害だと思う。 この症例でわからないのは脳幹とか小脳とかがどうなっているのかが分からないのが再三問題に なっている。Fisher症候群とBickerstaff型脳幹脳炎の一番の違いは腱反射のように思うが、これらは症候群で あって、病因や神経病理の違いがきちんとわかっていないと思う。 司会:障害されているのは3つの部位、つまり動眼神経外転神経中脳付近の脳神経核のあたり、末梢神経、小脳 である。病態的にはFisher症候群でよいと思う。疑問に思うのは、Guillain-Barre 症候群は末梢神経の脱髄病変 であると理解しているが、Guillain-Barre の一亜型とされるFisher 症候群は小脳あるいは脳幹あたりに脱髄病変 があるということになる。MRIを見ても脳幹や小脳病変がなさそうなのでいったい何が起こっているのかがよくわ からない。 渡部:我々の病院での討論では過去の顔面神経麻痺はどういうものであったか、また眼球運動障害はよくなった とのことだが、その後どうなったかということが多発性硬化症との鑑別の上で問題になった。 司会:今回が初発だったのか経過を見ないとわからないが、多発性硬化症なら、小脳症状や眼球運動障害はあう が、腱反射消失があわないと思う。 <事前に寄せられたプロブレムリスト> 三澤健太郎(聖隷三方原病院総合内科) #1 家族性高脂血症 #2 眼球運動障害→フィッシャー症候群 #3 多発ニューロパチー→#2 #2は脳幹梗塞も考えますが、#3が説明しにくいので。 谷藤(岩手県立大東病院) #1 家族性高脂血症 #2 急性多発性神経症 鑑別疾患:ギラン・バレー症候群?多発性硬化症? 村井(北九州小文字病院内科) #1 視力低下・ふらつきなどの神経症状 #2 25歳時左顔面神経麻痺 #3 高脂血症でプラバスタチン服用中 #4 家族歴・両親共に高脂血症 #1 詳しい神経学的な診察で、左眼球運動の障害と左上下肢運動の失調。#3、#4から動脈硬化による脳血管 性疾患を考える必要があるが、バビンスキー陰性があわない。眼球運動は、外転・上転障害が目立ち、左右注視
方向性眼振有り。MRAの所見やGuillain-Barre症候群(特にFisher症候群)を思わせる。#2に見られる25歳 時の左顔面神経麻痺の詳細は不明であるが、症状の消長と考えることができ、脱髄性疾患の特徴に合致する。本 症例は 感冒様症状に続 いて神経症 状が出現してい ることから 、 Guillain-Barre 症候群 を思わせ、その中 でも、 Fisher 症候群を考えたい。 #3 原因不明の症状が見られる場合には常に、内服中の薬剤の副作用を考慮する必 要があるが、プラバスタチンの副作用とする根拠は今のところない。今回の神経症状は、高脂血症とは直接関係 なく起こったものと考える。しかし、#4の家族歴から、遺伝性家族性高脂血症についての検討も必要である。 以上を総合して、次のようにプロブレムを修正する。 修正したプロブレムリスト:#1 Fisher 症候群 #2 高脂血症 #1に対しては、血清GM1・GM2 抗体・IgG 抗GQ1b 抗体や、Campylobacter jejuni・サイトメガロウイルス・EB ウイルス・肺炎マイコプラスマに対する抗体の検査 などが必要。 <その後の経過報告> 主治医:この症例の特徴は両側均等の眼球運動障害ではなかったことであった。右眼の動きは単眼視で正常であ った一方、左眼の動きは単眼視で不十分、両眼視でより一層不十分であった。このことから、片側性の連絡路お よび核性または核下性の障害が考えられた。Miller-Fisher症候群と虚血との鑑別が当初から議論になった。高コ レステロール血症はかなりの程度であり、虚血の危険因子に十分なり得た。最終的には、Fisher 症候群を最も疑 った。発症 11 日目の血清分析を獨協医科大学神経内科神経免疫班へ依頼した。結果は、抗GM1抗体、抗 GM2 抗体、 抗GD1a 抗体、抗GD1b 抗体、抗GT1b-IgG抗体、抗GT1b-IgM 抗体、抗GQ1b-IgM抗体のいずれもが陰性。抗GQ1b-IgG 抗体は2+で陽性であった。血清学的に、Fisher症候群を示唆する結果であった。経過観察のみで軽快したため、 2週間で退院とし、外来観察とした。眼球運動は眼科における観察で、2000 年初めにはほぼ完治が確認された。 2000年10月の内科再診で、眼球運動正、四肢腱反射正、四肢筋力振動覚正であった。抗GQ1b抗体は約1ヶ月後 の再検で陰性化した。 <主治医のプロブレムリスト> #1 高脂血症[1999.4.8] #2 片側性動眼外転神経麻痺[1999.4.8]→#4[1999.4.22] #3 片側運動失調[1999.4.8]→#4[1999.4.22] #4 自己免疫性神経炎[1999.4.22] <総合討論> 司会:研鑽会のプロブレムリストを作る。 #1 高脂血症→家族性高脂血症とする。#2のプロブレム名をどう するか。病歴の中に記載はなかったが眼球運動障害があり、タイトルにも複視とあったので複視としてよいか。 渡部:プレブレムというのはいったい病気はいくつあるのかとまず考えて、そしてその名前はなにかと考えてい くわけだが、今回のように感冒のような症状の後におこった一連の症状所見を2つのプロブレムに分けるのか、 1つのプロブレムにするのかで、議論が分かれた。結局、病気は1つであろうから、プロブレムは1つにして名 前はどれを代表してつけるかということではないかということで一致した。 司会:いくつかの症状所見があったが、おそらく1つの疾病によるもので、一元的に考えるべきだと思う。そこ で眼球運動、失調のどれをもって代表させるか。 三島:症状の起こりかたの同時性から神経症候は同一疾病と考え、1つのプロブレムとする。症状を挙げるか所 見を挙げるか。この患者では大きく分けて、失調と眼球運動障害と感覚障害の3つの症候があるが、3つを別々 にプロブレムとする必要はない。何がこの場合に最も特徴的かと考えて、その症状ないし所見をプロブレムとす る。症状なら複視であるし、所見なら左右共同視障害や片側眼瞼下垂であろう。複視でよいと思う。
<内科学研鑽会のプロブレムリスト> #1 高脂血症→家族性高脂血症 #2 複視→Miller-Fisher 症候群 <追記> 司会:Fisher 症候群の病態については現在どのようなことが知られているか。 主治医:疫学的には、Guillain-Barre 症候群が下痢などの消化器症状に引き続いて起こるのに対し、Fisher は呼 吸器感染に続いて起こることが多いとされる。まず、Guillain-Barre症候群では先行感染の 30%がGM1様リポ多 糖を有する Campylobacter jejuni と言われている。抗GM1抗体が運動神経に発現している GM1ガングリオシドに 交叉結合し、神経を障害する。神経筋接合部前シナプス側、Ranvier 絞輪脊髄運動ニューロンにGM1 エピトープが 存在する事が知られている。一方、Fisher 症候群は外眼筋麻痺・失調・腱反射消失を三徴とする Guillain-Barre 症候群の亜型で、そのほぼ全例において急性期には抗 GQ1b-IgG抗体が血清中に検出される。動眼神経・滑車神経・ 外転神経の傍絞輪部にGQ1b抗原が局在し、抗GQ1b-IgG抗体がこれらに結合して外眼筋麻痺を引き起こしている 可能性がある。四肢の重篤な末梢性神経麻痺を呈し、Guillain-Barre 症候群と診断される症例で外眼筋麻痺を部 分症状としてきたすもの、Fisher 症候群の三徴のうち外眼筋麻痺はしめすが他の二徴候(運動失調と深部反射消 失 ) の 1 つ な い し 2 つ を 欠 く 症 例 、 Fisher 症 候 群 の 特 徴 を も ち な が ら 中 枢 神 経 症 状 を 伴 う も の ( い わ ゆ る Bickerstaff型脳幹脳炎)などでもきわめて高率に急性期に抗GQ1b-IgG抗体が出現するといわれている。GQ1b エ ピトープは、眼球運動を支配する脳神経(動眼・滑車・外転神経)の髄外部分の傍絞輪部ミエリンに認め、他の 脳神経・末梢神経に認めないという報告がある。また、抗GQ1b-IgG 抗体が運動失調を引き起こす機序は正確には 分かっていない。抗GQ1b モノクローナル抗体がラット小脳のglomerulusに結合するという報告がある。それと は異なる抗 GQ1b モノクローナル抗体が、後根神経節の一部の大型神経細胞に結合するという報告もある。これら が失調の機序を説明できるかもしれないと言われている。 <参考文献> 1. Ann Neurol 1992;31:677-679 2. Br J Ophthalmol 1998;82:916-918 3. 日本内科学会雑誌 1998; 87: 617-622