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偶発学習及び意図学習の自由再生に及ぼすBGM文脈依存効果

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Academic year: 2021

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(1)

漁田俊子(静岡県立大学) 漁田武雄・林部敬吉(静岡大学)

(2)

 符号化対象となる焦点情報とともに存在する偶発的環境 情報をいう。(例:場所、背景色、BGM、匂い、声)  符号化時に存在した環境的文脈が、想起の際に存在する 場合に、存在しない場合よりもよりよく想起できる現象を環 境的文脈依存効果と呼ぶ。  環境的文脈依存効果 符号化対象となる焦点情報が、焦点情報の背景として存 在する環境情報とともに符号化されること。 想起の際に環境情報が検索手がかりとなる。 ※焦点情報=出来事の中心となる情報

(3)

 記憶にエピソード性を付与し、特徴づけエピソード間の 弁別に役立つ文脈  環境的文脈は実験セッションなどのエピソードを通じて 変化しないので、エピソード記憶要素全体と連合する ⇒環境的文脈はエピソード的文脈として機能する  環境的文脈を研究することはエピソード記憶の解明に とって非常に重要!!

(4)

 場所以外の環境的文脈について比較できる ◦ それぞれ、どのような機能を持っているか? ◦ それぞれの機能が類似or相違?  さまざまな場所には、視覚情報とともに、BGM、騒音、 環境音などの聴覚情報も存在している  トータルな環境情報の機能を解明するには、聴覚環 境情報の研究は不可欠

(5)

 意図学習と偶発学習のそれぞれで、BGM文脈依存効果が

生じるか否かを調べる

 BGM文脈依存効果は、

「偶発学習では生じる」が、「意図学習では生じない」 という可能性が示唆(Smith,1985; Balch et al,1992)  意図学習で、BGM文脈依存効果が生じるか否かを調

べることにより、BGMが他の環境情報とは異なる機能 を持つか否か明らかにすることができる

(6)

 BGM文脈の要因と項目強度の規定因である項目の反復回 数や学習時間の要因の関係を調べる  環境的文脈と項目処理の関わりには差異がある  項目強度の規定因の増加にともなって文脈効果の大 きさが増加(例:場所を中心とした複合文脈) ⇒項目への情報処理が、項目と文脈の連合に関与する  項目強度の規定因の変化にかかわらず、文脈効果の 大きさが変化しない(例:背景色文脈) ⇒項目への情報処理が、項目と文脈の連合に影響しない

(7)

 項目強度の規定因の増加にともなって文脈効果の大 きさが減少するという現象 脱文脈化 || 焦点情報+文脈からなるエピソード 記憶の文脈が取れることで、焦点 情報だけになること。 アウトシャイン || 強い手がかりが弱い手がかりの機 能を失わせる原理

(8)

 項目と文脈の関係のみを考慮する場合、項目と文脈 との接触時間が長くなると、脱文脈化が生じる ⇒BGM文脈手がかりの機能が低下する  同一文脈化での反復は、その文脈への依存性を高め るとされてきた(Smith, 1988, 1994)  従来の説明とは矛盾してしまうが、項目と文脈の関係 のみを考慮すると、このような説明しかできない

(9)

 項目と文脈以外の要因の関与を考慮する場合、より 強い手がかりによって、BGM文脈手がかりがアウト シャインされる  アウトシャインは再認において環境的文脈依存記憶 が生じにくいことを説明するのにも用いられている  再認ではテスト時の提示項目が項目手がかりとなる ⇒環境的文脈をアウトシャインしてしまう ※再認=項目を提示し、学習時にあったかどうかを判断

(10)

 自由再生の場合項目手がかりは提示されないうえ、 項目の痕跡強度そのものが自由再生ではあまり役に 立たないことが報告されている(Isarida,2005) ⇒学習時間によって、項目の痕跡強度が増加したとしても、自由再生で は、学習時間効果を引き出す程の強さがないことを示唆  項目手がかりや痕跡の強度に変わって想定できるの が意味的文脈手がかりである ※意味的文脈手がかり 現在処理している項目または項目群から派生する意味情 報からなる文脈

(11)

 当該項目 ・“カミ” と “鉛筆” ・“カミ” と “リンス”  それぞれ「紙」、「髪」という異なる意味的文脈とともに符号 化される  このような意味的文脈が再認や再生を規定することが報 告されている

(e.g., Light & Carter-Sobell, 1970) (e.g., Thomson & Tulving, 1970)

(12)

 項目強度規定因のうち・・・ ・「分散反復」や「累加的リハーサル」の場合 反復回数やリハーサル数の増加にともなって、多様な 項目と一緒に符号化される ⇒多様な意味的文脈手がかりがBGM文脈手がかりを アウトシャインする可能性を示唆 ※分散反復 反復と反復の間に他の項目の符号化が介在するような反復 ※累加的リハーサル 先行項目と後続項目を一緒にリハーサルするようなリハーサル

(13)

 ・「学習時間」や「集中反復」の場合 当該項目と隣接する項目は学習時間や反復回数に よって増加しない →アウトシャインされにくいと予想される  このような点から、実験1では「分散反復」、実験2で は「学習時間」を項目強度の規定因として用いた

(14)

 目的

◦ 意図学習場面と偶発学習場面でのそれぞれで、BGM文脈 依存効果が生じるか否か

◦ BGM文脈依存効果が生じる場合、項目の提示回数の効 果との関係がどのようになるか

(15)

実験計画

◦ 学習の意図×文脈条件×提示回数の3要因混合計画を用 いた。 ◦ 学習の意図と文脈条件を実験参加者間要因 ◦ 提示回数を実験参加者内変数 

実験参加者

◦ 静岡県立大学短期大学部学生80名を、ランダムに学習の 意図条件×文脈条件の4群に割り当てた。 学習の意図=(意図学習、偶発学習) 文脈条件=(同文脈条件、異文脈条件) 提示回数=(1回、2回)

(16)

 材料 ◦ 連想価が90以上のカタカナ2音節綴り24個を相互に無関 連となるように選出し記銘項目とした。 10項目・・・1回提示項目 10項目・・・2回提示項目 4項目・・・初頭性効果の影響を除去するための緩衝項目 ※連想価 90%以上の人が何らかの連想をするような有意味な言葉 ※初頭性効果 最初のころに出た提示項目の単語がよく思い出せることで好成績を得ること

(17)

 BGM ◦ 実験参加者にとって未知と想定される1950‐60年代の映 画音楽からテンポを考慮して選定。 ◦ テンポの速い曲・・・2曲 ◦ テンポの遅い曲・・・2曲 ◦ 同文脈条件・・・符号化時とテスト時で同じBGM ◦ 異文脈条件・・・符号化時とテスト時で異なるテンポのBGM

(18)

 手続き ◦ 第1セッション  項目を1個あたり5秒(提示間隔0.5秒)の速さで提示  項目は全部で34個  初頭性効果の緩衝項目・・・4個  1回提示の10項目・・・10個  2回提示の10項目・・・20個 ◦ 第2セッション  口頭自由再生

(19)

 手続き ◦ 意図学習条件 ① 暗記の方法は実験参加者の自由 ② 暗記後30秒の暗算の後に口頭再生テスト ③ 再生の順序は任意 ◦ 偶発学習条件 ① 提示項目から連想される言葉を口頭で報告 ② 第1セッション終了後、30秒の説明の後に第2セッショ ンを行う (第2セッションの内容については実験参加者には教示しない)

(20)

 学習意図×文脈×提示回数の3要因の分散分析の結果、 提示回数の主効果のみ有意[F(1, 76)=306.26,p<.001]  学習意図と文脈の主効果は有意でない[いずれもF<1]  学習意図×文脈[F<1]  学習意図×提示回数[F<1]  文脈×提示回数[F(1, 76)=1.50, p>.20]  上の3つのいずれも有意ではない  2次の交互作用のみが有意[F(1,76)=6.45, p<.05]

(21)

 文脈×提示回数の下位分析を行った結果 ◦ 意図学習条件  提示回数の主効果のみ有意[F(1, 76)=57.48, p<.001]  文脈の主効果[F<1]も、交互作用[F<1]も有意ではない ◦ 偶発学習条件  提示回数の主効果が有意[F(1, 76)=4.71, p<.05]  交互作用が有意[F(1, 76)=4.71, p<.05]  文脈の主効果が有意でない[F<1]  単純主効果を求めた結果 ◦ 1回提示条件で文脈の効果が有意[F(1, 76)=4.22, p<.05] ◦ 2回提示条件では有意ではない[F<1]

(22)

 結果としてBGM文脈依存効果が意図学習では生じず、偶 発学習では生じうることを確認 ↓  偶発学習ではBGM文脈依存効果が生じうるが、意図学習 では生じないか、あるいは少なくとも、生じにくいと考えら れる  BGM文脈依存効果は、1回提示条件では生じたが2回提 示条件では消失した  この結果は、BGM文脈依存効果の大きさが、項目強度の 規定因の増加とともに減少することを示している

(23)

 唯一、意図学習条件と偶発学習条件で異なっていたのは、 保持期間に計算課題を行ったか否か・・・  計算問題によって文脈依存効果が消失したとは考えにくい。 意図学習条件の全体再生数が偶発学習とほとんど同じ ⇒逆向性干渉が関わっている?  しかしSC条件とDC条件では、SC条件のほうがより大きな干 渉が生じるとは考えにくい  さらに、本結果では手がかり過負荷の問題も関与しない

(24)

 目的 ◦ 偶発学習でBGM文脈依存効果が生じるか否か。 ◦ BGM文脈依存効果が生じる場合、学習時間の場合でも、 項目強度規定因にともなって、実験Iと同様に文脈依存効 果が減少するか否か。 ◦ 実験IIでも実験Iと同様の結果が生じる場合、項目規定因 の増加にともなって他の手がかり効果が強くなり、BGM文 脈依存効果をアウトシャインするというより、脱文脈化が生 じたと考える方が妥当。

(25)

 実験計画 ◦ 文脈条件(SC,DC)×学習時間(4秒, 8秒)の2要因実験 参加者間計画を用いた。  実験参加者 ◦ 静岡県立大学短期大学部学生で、実験Iに参加していない 80名を、ランダムに4群に割り当てた。  材料 ◦ 連想価が90以上のカタカナ2音節綴20個を相互に無関連 となるように選出し記銘項目とした。

(26)

 BGM ◦ 実験Iと同じものを用いた。  手続き ◦ 偶発学習課題を用いた。 ◦ 第1セッションでは、1項目あたり4秒あるいは8秒(提示間 隔0.5秒)の速さで、20項目を提示した。 ◦ 提示の速さは、実験参加者間で変化させた。 ◦ その他の手続きは、実験Iと同様とした。

(27)

 文脈×学習時間の2要因分散分析の結果・・・

 文脈の主効果[F(1, 76)=5.51, p<.05]、学習時間 の主効果[F(1, 76)=7.20, p<.01]がともに有意で あった。

(28)

 2つの学習時間の両方においてBGM文脈依存効果が生 じた。  学習時間の関数として文脈依存効果の大きさは変化せず、 学習時間にともなってBGM文脈依存効果が減少するとい うことはなかった。 ↓  実験Iの2回反復条件において文脈依存効果が生じなかっ た結果は、項目と文脈の関係のみでは困難であり、本来 の文脈依存効果が他の要因によって抑制された可能性 が高い。  反復にともなって文脈依存効果の大きさが減少するという 実験Iの結果は、BGM文脈に特徴的な現象とはいえない。

(29)

 本研究によって、偶発学習で生じるBGM文脈依存効 果が、意図学習では生じない結果を得た。  これまでの研究ではいずれも偶発学習を用いていた。 意図学習では、不明確な報告(Smith, 1985)に今回 の結果が加わることになった。  以上を総合して、BGM文脈依存効果が意図学習では 生じないか、あるいは非常に生じにくいと結論できる。

(30)

 意図学習ではBGM文脈依存効果が生じにくい理由を明確 化するには、さらに研究を続ける必要がある。  意図学習における項目間連合によって文脈依存効果の 大きさが著しく減少することが(Smith&Vela, 2001)のメ タ分析で見出されていることから、BGM文脈依存効果が 抑制されてしまった。  BGMの特性から、意図学習ではBGMが聞こえにくくなり、 偶発学習ではより聞こえるのであれば、意図学習でBGM 文脈依存効果が生じにくくなる可能性がある。

(31)

 BGMは項目の学習に集中するとほとんど意識されな くなるという特性があるが、これは場所文脈と類似し ている。

 しかし場所文脈では、意図学習で多くの文脈依存効

果が報告されている(Smith, 1988; Smith &Vela, 2001)。

 BGM文脈依存効果が、他の環境情報よりも弱いとい う前提が必要となる。

(32)

 本研究の第2の目的として、BGM文脈依存効果の大きさ と項目強度の規定因の関係を調べた。  実験1の2回反復条件におけるBGM文脈依存効果がア ウトシャインされた可能性が高い。 ↓  項目強度の規定因の関数として文脈依存効果の大きさ が変化しないという見方が有力。  少なくとも、文脈依存効果の大きさが増加することはない。

(33)

◦ 音楽が気分を誘導することは多くの研究で気分誘導 に音楽が用いられていることからも明白。 ◦ 気分も文脈依存効果と類似した気分依存効果を引き 起こすことが報告されている。 ⇒BGM文脈依存効果と気分依存効果の違いは? ◦ 結論付けるにはBGM文脈依存効果のデータ不足!? ◦ 文脈も気分も心的文脈も、外的に操作することで内的 に表象されるため、相互の関係を考慮することが重要。

(34)

 今後の検討課題 ◦ 背景色文脈や場所を単独で操作した文脈でリハーサル数、 分散分析などの項目強度の規定因との関係。 ◦ BGMは他の環境情報と異なり物理的に一定ではないという ことが、どういう意味を持つのか。 ⇒楽曲の断片的な物理情報と連合? 楽曲全体の印象やイメージ、気分、心的文脈との連合? ◦ 定常的に存在する聴覚環境情報(雨音、波の音、鳥のさえず りなど…)の効果について。

参照

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