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統合失調症入院患者のストレス反応・認知機能障害改善に及ぼす音楽療法の効果

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Academic year: 2021

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(1)統合失調症入院患者のストレス反応・認知機能障害改善に及ぼす音楽療法の効果  学校教育学専攻 臨床心理学コース.    M07075C    石原冨士子 を中心とした「能動的音楽療法」の二つに大きく. 【問題と日的】.  統合失調症は主として青年期から成人前期に発. 分けることができる。現在までに音楽療法による. 病し,発病危険率がO.8%前後と精神障害のなか. ストレス軽減の報告がいくつかなされており,精. でも頻度の高い疾患である。病態及ぴ経過は多様. 神病に対する効果も期待されている。しかしなが. であると考えられているが,統合失調症の原因と. ら,統合失調症に対する音楽療法の先行研究がな. して現在,最も有力な説として挙げられているの. されていないのが現状である。. が「ストレスー素因説」である。ストレスー素因.  そこで本研究では,唾液アミラーゼをストレス. 説とは,特異的な生物学的脆弱性あるいは素因を. マーカーとして用いるとともに,統合失調症患者. 持っている統合失調症患者はストレスが引き金と. の主症状の一つである注意障害を測定するため. なり分裂病症状を呈するという学説である。スト. 内田クレペリン検査,ブルドン抹消検査,ストル. レスが非常に強ければ個体側の遺伝素因などの脆. ープ検査を実施した。それにより音楽療法による. 弱性が小さくても精神障害が起こるといった,僅. ストレス軽減の有無,受動的音楽療法・能動的音. かなストレスによる発症が示唆されている。. 楽療法のストレス軽減効果の比較及ぴ認知機能.  このような統合失調症の治療としてまず行われ. 向上効果の比較を行った。 【方法1. るのは,抗精神病薬投与である。投薬により,急 性期の激しい興奮や幻覚,妄想などは消えるが,.  ICD−10によって診断された統合失調症圏入. 「何もする気が起きない,続かない」といった意. 院患者22名を対象とした。22名はすべて慢性期. 欲の障害や,「喜怒哀楽がわかない,表現できない」. の男性患者で,実験期間中の服用薬剤に変化は無. といった感情の障害,r考えがまとまりにくい,周. かった。対象者22名は無作為に受動的音楽療法. 囲の出来事に関心が向かない,注意力が保てない」. 実施群12名と能動的音楽療法実施群10名に割り. といった特有な思考の障害(認知障害)などの陰. 当てられた。なお,受動的音楽療法実施群及び能. 性症状が現れることも稀ではない。そのため,薬. 動的音楽療法実施群の対象者の年齢,罹病期間,. で病気の勢いをおさえながら,薬で足りないとこ. 教育年数に関して分散分析で比較検討したとこ. ろを,リハビリテーション療法や芸術療法などの. ろ両群間に有意差は認められなかった。また,音. 心理社会的治療で補助し,より病気が治った状態. 楽療法開始前における唾液アミラーゼ活性値,内. に近づける必要がある。この心理社会的治療のひ. 田クレペリン検査,ブルドン末梢検査,ストルー. とつとして,現在注目を浴びているのが「音楽療. プ検査の結果についても分散分析で比較検討し. 法」である。芸術療法の1つで,リハビリテーシ. たところ,両群間に有意差は認められなかった。. ョンとしての役割も認められている音楽療法は,.  1回日は唾液アミラーゼ活性値測定及ぴ内田ク. 音楽を聴くことによる「音楽からの刺激」と他者. レペリン検査を2群に分かれて,2回目にはブル ドン抹消検査及びストループ検査を個別に行っ. とともに音楽を歌い,演奏し,そして聴くことに よる「他者からの刺激」が得られる療法であり,. た。. 音楽鑑賞を中心としたr受動的音楽療法」と患者.  音楽療法は受動群,能動群ともに病棟内のプレ. 自身が他者とともに演奏あるいは歌唱を行うこと. イルームにて毎週1回∼2回,休憩なしで約1時. 一164一.

(2) 間を1O回にわたって行った。受動群については,. 実施の有意な効果が見られた。また,脱数,脱数. 毎回,音楽療法実施前に唾液アミラーゼ活性値の. 平均の2指標においても音楽療法繰り返し実施の. 測定を行った後,受動的音楽療法としてグラッシ. 効果が見られた。なかでも平均時間に関しては,. ック曲及び歌謡曲を鑑賞した。音楽鑑賞終了後に. 受動群,能動群共に時間短縮され成績の向上がみ. 再び,唾液アミラーゼ活性値を測定した。一方,. られたが,とくに能動群に関しては受動群に比べ. 能動群は音楽療法実施前に唾液アミラーゼ活性値. て大幅に時間短縮され,大きな成績の向上がみら. を測定した後,能動的音楽療法として,実施時間. れた。また,1往復あたりの最小時間に関しては,. の前半30分間は歌を歌い,後半20分は楽器演奏. 群間と繰り返しの間に有意な交互作用が見られ,. を行い,終了後に再度唾液アミラーゼ活性値を測. 能動群において大きな時間短縮が認められた。. 定した。. 4.ストループ検査(認知機能検査).  10回にわたる音楽療法終了後に両群の各被験.  群問と繰り返しの間に有意な交互作用が見ら. 者に対して内田クレペリン検査,ブルドン抹消検. れた。また,ストループ検査の所要時間は受動群. 査及びストループ検査を行った。. において変化は認められず,能動群のみ有意に低. 【結果】. 下した。. 1.唾液アミラーゼ活性値(ストレス反応検査). 【考察】.  毎回の音楽療法実施前に比べ,実施後において.  音楽療法は実施直後において,受動的・能動的. 唾液アミラーゼ活性値は有意に低下した。また,. という形態にかかわらずストレスの軽減に効果. 音楽療法の種類の効果と1回毎の効果との間に有. 的であり,受動的音楽療法は能動的音楽療法に比. 意な交互作用が見られた。. へさらにストレス軽減効果があるということが. 2.内田クレペリン検査(認知機能検査). 明らかになった。しかしながら,1O回程度の実施.  休憩後最大差のみで,受動群と能動群との間に. においては,その効果が累積されることはなかっ. 有意な差が見られた。また,全平均作業量,休憩. た。さらに長期にわたる音楽療法の体験がストレ. 前平均作業量,休憩後平均作業量及び休憩前初頭. スそのものを軽減させる効果があり,その結果唾. 努力率において音楽療法10回の繰り返し実施後. 液アミラーゼ活性値を減少させる結果を生じる. の成績が有意に高くなった。さらに,全平均誤謬. か否かの問題は今後の課題として残された。. 量,休憩前の平均誤謬量,休憩後の平均誤謬量,.  また,ストレス軽減効果が大きい受動的音楽療. 休憩前最大差,休憩前動揺率及ぴ全変動係数にお. 法は認知機能の中でも実行機能に効果的であり. いて群間と繰り返しの問に有意な交互作用が見ら. 注意集中ができる。それに対して能動的音楽療法. れた。全平均誤謬量は,受動群において音楽療法. は認知機能の中でも持続的注意及び選択的注意. 10回の繰り返し実施後に有意に減少したのに対. に効果的で情報処理速度が増していることが示. して,能動群では音楽療法実施後に有意な増加傾. 唆された。しかしながら,これら注意の集中や持. 向が見られた。休憩前の平均誤謬量についても,. 続に反映される認知機能の改善が統合失調症の. 受動群において音楽療法10回の繰り返し実施後. 陰性症状の改善や日常生活の改善にプラスの効. に有意に減少したのに対して,能動群では音楽療. 果を及ぼすか否かは検討できなかった。この問題. 法繰り返し実施後に有意な増加が見られた。. もまた,今後の検討課題として残された。. 3.ブルドン抹消検査(認知機能検査)  平均時間,最大時間,最少時間,最大時間と最. 主任指導教員 藤田継道. 小時間の平均時間,最大時間と平均時間との差,. 指導教員 藤田継道. 最小時間と平均時間との差,及び最大時間と最小 時間との差の平均時間において音楽療法繰り返し. 一165一.

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