求められる学力の論点整理と学力状況を踏まえた実践 ―北海道X小学校での国語科・算数科の取組を例に―
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第66巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 66, No.2. 平 成 28 年 2 月 February, 2016. 求められる学力の論点整理と学力状況を踏まえた実践 ― 北海道X小学校での国語科・算数科の取組を例に ―. 因 雅仁・水上 丈実*・藤川 聡* 北海道教育庁胆振教育局 *. 北海道教育大学大学院教育学研究科. Summary of Issues for Required Academic Ability and Practice Based on the Academic Ability Conditions ― Focusing on a Case Study about Japanese and Arithmetic in X Primary School in Hokkaido ―. IN Masahito, MIZUKAMI Takemi* and FUJIKAWA Satoshi* Iburi Department of Education, Hokkaido Prefectural Board of Education *. Graduate School of Education, Hokkaido University of Education. 要 旨 本稿では,学力の要素として思考力・判断力・表現力の育成が求められた背景について確認 するとともに,2003年以降の国際調査及び国内の学力調査の精査を通じ,求められる学力の論 点整理を行った。さらに,児童の学力状況を踏まえた実践の在り方について,北海道X小学校 での国語科・算数科の取組を糸口に整理した。その結果,思考力・判断力・表現力を高める上 で重視すべき取組として,①効果的な言語活動を再確認すること,②教育評価の更なる充実を 図ること,以上の2点に集約された。特に②においては,思考力・判断力・表現力を適切に抽 出できるパフォーマンス評価について,学校での研究・推進の必要性が示唆された。. 幅広い知識や柔軟な思考力,判断力,異なる文化. 1.はじめに. や社会の人々と共存を図ることコミュニケーショ. 現在は,新しい知識・情報・技術が,政治・経. ン能力など,変化に対応する能力や資質が必要で. 済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の. ある。すなわち,学習指導要領で示す確かな学力,. 基盤として飛躍的に重要性を増す,いわゆる知識. 豊かな心,健やかな体の調和を重視する「生きる. 1). 基盤型社会の時代であると言われている 。そし. 力」であり,学校教育においてはそれらをバラン. て, このような新しい社会を担う子どもたちには,. スよく育むことが求められている2)。. 289.
(3) 因 雅仁・水上 丈実・藤川 聡. 近年に行われた国内外の学力調査の結果からは. 表2 思考力・判断力・表現力等の育成について. 児童生徒の学力低下が指摘されてきた。その中で. ・知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等 の育成のバランスを重視すること。. も,2003年のPISA調査において日本の国際的な 順位が急落したこと,いわゆるPISAショックは 記憶に新しい。PISA調査の結果では,児童の「思 考力・判断力・表現力等を問う読解力や記述式問 題,知識・技能を活用する問題」等に課題が見ら れたことを受け,児童生徒の思考力・判断力・表. ・確かな学力を育成するためには,基礎的・基本 的な知識・技能を確実に習得させること,これ らを活用して課題を解決するために思考力・判 断力・表現力その他の能力をはぐくむことの双 方が重要であり,これらのバランスを重視する 必要がある。. 現力等の育成が求められるようになった3)。 本稿では,それらの学力が求められた背景につ. また,平成20年1月に中央教育審議会より「幼. いて再確認するとともに,2003年以降の国際調査. 稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学. 及び国内の学力調査の精査を通じ,求められる学. 5) に関する答申が出さ 校の学習指導要領の改善」. 力の論点整理を行う。また,児童の学力状況を踏. れ, 「基礎的・基本的な知識・技能の習得」や「思. まえた実践の在り方について,北海道X小学校で. 考力・判断力・表現力」の育成等の学習指導要領. の国語科・算数科の取組を糸口に論じる。. の改訂の基本的な考え方が示された。 さらに学校教育法の改正及び平成20年度中央教. 2.求められる学力. 育審議会答申を踏まえ,平成20年3月に学習指導 要領が告示され,平成23年4月より完全実施と. ここでは,法令及び種々の文献から,学力とし. なった。学習指導要領総則においては,基礎的・. て求められる思考力・判断力・表現力とはどのよ. 基本的な知識・技能の習得と,思考力・判断力・. うなものかについて整理する。. 表現力等の育成について表2のように示してい る6)。. 2. 1 学力の要素. また,学習指導要領の第1章総則第1教育課程. 平成19年6月には学校教育法が一部改正され,. 編成の一般方針において「基礎的・基本的な知識. 第30条2項においては,「生涯にわたり学習する. 及び技能を確実に習得させ,これらを活用して課. 基盤が培われるよう,基礎的な知識及び技能を習. 題を解決するために必要な思考力,判断力,表現. 得させるとともに,これらを活用して課題を解決. 7) と示され, 力その他の能力をはぐくむ(後略)」. するために必要な思考力,判断力,表現力その他. 各学校で教育活動を進める際,基礎的・基本的な. の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態度. 知識や技能のみならず,児童生徒の思考力,判断. 4) を養うことに,特に意を用いなければならない。 」. 力,表現力等の育成に努めなければならないこと. と示され,学力の要素は表1のように定義された. が明確に位置付けられた。. といえる。. 上記の通り,学習指導要領及び中央教育審議会 の答申等からは各学校において児童生徒の思考 表1 学力の要素. ・基礎的及び基本的な知識及び技能の習得 ・知識や技能を活用して課題を解決するための思 考力・判断力・表現力 ・主体的に学習に取り組む態度. 290. 力・判断力・表現力等の育成が急務であることが 理解できる。今後,各学校においては基礎的・基 本的な知識・技能の習得と,思考力・判断力・表 現力等を車の両輪として,バランス良く育むこと ができる教育活動が求められている。.
(4) 求められる学力の論点整理と学力状況を踏まえた実践. 2. 2 思考力・判断力・表現力. 11) と示されている。これまでの研 記号,言語等」. 中教審及び学習指導要領では,思考力・判断. 究実践や日々の授業の中でも,児童が自分の考え. 力・表現力等を「基本的な知識及び技能を活用し. を表現する場を設定し,言語表現を中心に取組を. 8). て,課題を解決するために必要な」 力と示して. 進めてきた。言語による表現を基本としながらも,. いる。本節では思考力・判断力・表現力とは一体. 表情や身振り等の実際に姿・様子や文章,数,図,. どのような能力なのかについて確認したい。. 記号等による記述等,様々な表現活動を支える力. 2. 2. 1 一般に思考力・判断力・表現力とは. として表現力を捉えることができる。. 9). 大辞林第三版 には思考力・判断力・表現力に. 2. 2. 2 国語科における思考力・判断力・表現力. ついて,表3のように示されている。. 国語科における思考力・判断力・表現力につい て,水戸部(2009)は「平成20年1月の中央教育. 表3 思考力・判断力・表現力の意味 【思考力】思考する力,考える能力である。 【判断力】①正当な判断を下しうる能力。知性・ 感情・意志などが具体的な状況に正しく対応す る力。②〔ドイツ Urteilskraft〕カントの用語。 特殊なものを普遍的規則と結び付け,悟性と理 性あるいは意欲と認識を媒介する能力。美およ び目的はこれで把握されるとして,美学および 生命現象の学が構想される。 【表現力】①内面的・精神的・主体的な思想や感 情などを,外面的・客観的な形あるものとして 表すこと。また,その表れた形である表情・身 振り・記号・言語など。特に,芸術的形象たる 文学作品(詩・小説など) ・音楽・絵画・造形 など。 「適切な言葉で-する」 「-力」 「-方法」 ②外にあらわれること。外にあらわすこと。 〔英 語 representation や expression の訳語。ロプ シャイト「英華字典」 (1866~69年)に display の訳語としてある。また, 「哲学字彙」 (1881年) に presentation の訳語として 「表現力」 と載る〕. 審議会答申が指摘するように,思考力・判断力・ 表現力等の基盤となるのは言語の能力である。こ の言語の能力を育成する教科である国語科におい ては,その目標や内容を確実に定着することこそ が,子どもたちに思考力・判断力・表現力を育む 12) と述べている。水戸部の ことに他ならない。」. 言葉を換言すれば,国語科においては,全ての学 習内容を通して,思考力・判断力・表現力を育む ことができると捉えることができる。さらに水戸 部は言語活動を「国語科の目標や内容を確実に実 現するための,言い換えれば子どもたちが主体的 に思考し,判断し,表現する力を育成するための, 13) と述べ,思考力・ 不可欠な手立てなのである。」. 判断力・表現力を育成する上で,国語科の基本と なる言語活動の充実の必要性を指摘している。国 語科と言語活動,さらには言語活動と思考力・判 断力・表現力の育成の関連性が確認でき,各教科. 思考力・判断力に関しては,「思考する力,正 10). においても言語による活動を充実させることで思. 当な判断を下しうる能力」 との記載がある。児. 考力・判断力・表現力等を育成することができる. 童生徒は学習中,常に思考し,判断を重ねている. と捉えることができる。. が,それらを区別して捉えることは非常に難しい. 2. 2. 3 算数・数学科における思考力・判断. ことであることも事実である。しかし,児童の思. 力・表現力. 考が論理的であるのかどうかは,発言や行動,ノー. 算数科における思考力・判断力・表現力につい. トの記述,テストの際のパフォーマンス等,児童. て,笠井(2012)は,小学校学習指導要領の算数. 生徒の実際の活動の様子等から見取ることができ. 科の目標の中から,「日常の事象について見通し. る。現在,論理的思考力が注目されており,思考. 14) の記 をもち筋道を立てて考え,表現する能力」. 力を論理的に考える力として捉えることができる。. 載を抜き出し,「この部分は,算数科の思考力・. 表現 (力) に関しては, 「内面的な思想や感情を,. 判断力・表現力を育てることについて示してい. 外面的・客観的な形のあるものとして表すこと,. る」15)と述べている。また,算数科の思考力・判. さらにその具体的な表出物として表情や身振り,. 断力・表現力に当たる観点は, 「数学的な考え方」. 291.
(5) 因 雅仁・水上 丈実・藤川 聡. 表4 筆者による算数科における思考力・判断力・ 表現力の捉え ①既習事項をもとに課題に対して見通しをもち, 筋道を立てて考える力 ②既習事項をもとに言葉,数,式,図,表,グラ フ等を適切に用いて問題を解決したり自分の考 えをわかりやすく表現・説明したりする力. られる。 なお,基礎的・基本的な知識・技能と思考力・ 判断力・表現力等を結びつけるのが,先ほども指 摘した「言語活動」である。現行の学習指導要領 においては,知識・技能を活用して思考力・判断 力・表現力を育む学習活動の具体的な例として 「観察・実験,レポートの作成,論述等」17)を示. であることを示し,算数科における思考力・判断. すとともに,中央教育審議会答申では,これらの. 力・表現力とは, 「日常の事象を数理的にとらえ,. 学習活動の基盤となる言語に関する能力を育成す. 見通しをもち筋道を立てて考え表現したり,その. るために,「国語科における基本的な力を身に付. 16). ことから考えを深めたりする力」 としている。. けさせること」18)と「各教科において,記録,要約,. これらのことを踏まえつつ,筆者らは算数科に. 19) に取り組むことを指 説明,論述等の学習活動」. おける思考力・判断力・表現力を表4の①,②と. 摘している。これらの言語による活動を,授業の. して捉えた。また,教科の目標及び評価の観点上. 中に意図的・計画的に位置付けることで,児童生. では「数学的な考え方」として位置付け,研究を. 徒が基礎的・基本的な知識・技能を活用しながら. 進めるものとする。思考力と表現力は相互に補完. 思考力・判断力・表現力を高めていくことができ. する関係である。つまり,考えたことを友達に説. るといえるだろう。. 明したり,文章にまとめたりすることで,考えの 良さや改善点に気付いたりする。また,文章に表 したり,メモにまとめたりする過程を通して,考. 3.学力問題の現状. えが整理されることがある。このように考える能. 2003年のPISA調査では日本の国際的な順位が. 力と表現する能力を一体として捉え,育成するこ. 急落を示したこと,いわゆるPISAショックより,. とが必要であると考える。. 日本の教育界においては学力低下の問題が指摘さ. 算数科の学習では,教科の特性から問題を解決. れてきた。本節では,PISAショックから6年後. したり,判断したり,推論したりする場面を日常. の2009年に実施されたOECDによるPISA調査及. 的に設定することができる。このような場面を通. びその2年度の2011年に実施されたTIMSS調査,. して学習させることで 見通しをもって考えたり,. 加えて2007年~2010年に実施された文部科学省に. 筋道を立てて考えたり,表現したりする力を高め. よる全国学力・学習状況調査の結果分析を通し. させていくことができる。また,算数科の学習の. て,現在の日本の児童生徒が抱える学力問題の現. 特徴として,既習事項を生かしながら帰納的に考. 状について明らかにする。. えたり,演繹的に考えたりする場面等を計画的に 設けることができる。さらに算数科の学習に系統. 3. 1 近年の国際調査より. 性があることが,筋道を立てて考えたり,説明し. PISA200920)の調査概要を表5に,結果の概要. たり,表現したりする能力を育成する上で有効で. を表6にそれぞれ示す。PISA2009の調査結果か. ある。教師が算数科の特性をおさえ指導に当たる. ら,日本の学力は改善傾向にあることがわかる。. ことはもちろん,児童自身に算数科の特徴や学び. 調査参加国の増加により,順位については参考程. 方を意識させることによって,思考力・判断力・. 度でしかないが,読解力に関しては,2006年調査. 表現力の育成が効果的に図られると考える。普段. の平均得点より統計的に有意に上昇している。し. の授業の中から,算数科の系統性を意識した指導. かし,必要な情報を見つけ出し取り出すことは得. や言葉がけ,活動のさせ方を工夫することが求め. 意だが,それらの関係性を理解して解釈したり,. 292.
(6) 求められる学力の論点整理と学力状況を踏まえた実践. 表5 PISA2009の調査概要. 表7 TIMSS2011の調査概要. ・義務教育修了段階の15歳児(高校1年生)を対 象とする。. ・日本の読解力,科学的リテラシーは,国際的に 見て「上位グループ」にある。. ・知識や技能を実生活の様々な場面で直面する課 題にどの程度活用できるかを評価する。. ・数学的リテラシーは「OECD平均より高得点グ ループ」にある。. ・読解力,数学的リテラシー,科学的リテラシー の3分野について,2000年以降,3年ごとに調 査を実施する。. ・前回調査と比較して,読解力は平均得点が前回 より大幅に上昇している。数学的リテラシーと 科学的リテラシーは,平均得点が前回より上昇 している。. ・2009年調査には,65カ国・地域から,約47万人 の15歳児が参加した。 ・日本では,平成21年6,7月に実施し,185校, 約6000人が参加した。 表6 PISA2009の結果の概要 ・日本の読解力,科学的リテラシーは,国際的に 見て「上位グループ」にある。 ・数学的リテラシーは「OECD平均より高得点グ ループ」にある。 ・前回調査と比較して,読解力は平均得点が前回 より大幅に上昇している。数学的リテラシーと 科学的リテラシーは,平均得点が前回より上昇 している。 ・質問紙調査では,読書活動について肯定的に回 答した割合は,ほとんどの項目でOECD平均よ りも多く,2000年調査よりも増加している。 ・2006年調査に比べてレベル2以下の児童生徒の 割合が減少し, レベル4以上の割合が増加した。 しかし,トップレベルの国と比べると下位層が 多い。. ・質問紙調査では,読書活動について肯定的に回 答した割合は,ほとんどの項目でOECD平均よ りも多く,2000年調査よりも増加している。 ・2006年調査に比べて,レベル2以下の児童生徒 の割合が減少し,レベル4以上の割合が増加し た。しかし,トップレベルの国と比べると,下 位層が多い。 表8 TIMSS2011の結果の概要 ・小学校では,各教科ともに前回調査に比べて平 均得点が有意に上昇するとともに,習熟度の低 い児童の割合が減少し,習熟度の高い児童の割 合が増加した。 ・中学校では,各教科ともに平均得点は前回調査 と同程度だが,習熟度の高い生徒の割合が増加 した。 ・質問紙調査の結果から,「勉強が楽しい」と回 答した小学生,中学生の割合は,前回調査と比 べて増加している。. 自らの知識や経験と結び付けたりすることがやや. かとなった。. 苦手であることが明らかとなった。. TIMSS2011の調査結果からも,日本の児童生 徒の学力は改善傾向にあることがわかる。しかし,. 3. 2 TIMSS調査. 質問紙調査の結果では「算数・数学,理科の勉強. 21). が楽しいかどうか」,「算数・数学,理科の学習が. を表7,表8にそれぞれ示す。. 好きかどうか」の設問において,いずれも国際平. PISA2009の調査結果から,日本の学力は改善. 均値よりも低い数値となっており,日本の児童生. 傾向にあることがわかる。調査参加国の増加によ. 徒の学習に対する意欲の低さが浮き彫りになって. り,順位については参考程度でしかないが,読解. いる。また, 「将来,自分が望む仕事につくために,. 力に関しては,2006年調査の平均得点より統計的. 数学や理科で良い成績をとる必要があると思うか. に有意に上昇している。しかし,必要な情報を見. どうか」についての設問においても,国際平均値. つけ出し取り出すことは得意だが,それらの関係. を大きく下回り,学習に対して価値を見いだせな. 性を理解して解釈したり,自らの知識や経験と結. い児童生徒の割合が多いことも明らかとなった。. TIMSS2011. の調査概要及びその結果の概要. び付けたりすることがやや苦手であることが明ら. 293.
(7) 因 雅仁・水上 丈実・藤川 聡. 3. 3 全国・学力学習状況調査. 表10 小学校国語の4年間の調査結果のまとめ (国立教育政策研究所23)より作成). 全国学力・学習状況調査22)の概要を表9に示. 内容及び成果と課題(成果○,課題▲). す。表9の分析について,「全国の児童生徒の学 力傾向」から述べたい。 過去4年間(平成19~22年度)の調査結果23) から,一定の成果として認められる内容及び,課 題として考えられる内容について表10にまとめ. ○「書くこと」における成果として,「内容に合わ せて小見出しを書くこと」 ○「言語事項」における成果として,「漢字を読む こと」 ○「問題形式」に即して捉えた成果として,「比較 的自由度の高い条件で記述すること」. た。表10は小学校国語科の結果である。なお,成 果と課題の定義は,過去4年間の調査において同. ▲「話すこと・聞くこと」における課題として, 「司 会の役割を果たしたり,立場や根拠を明確にし たりして話し合うこと」. じような趣旨の下に複数年度にわたって出題し, 正答率がおおむね80%を上回る内容を一定の成果. ▲「書くこと」における課題として, 「調べて分かっ た事実に対する自分の考えを,理由や根拠を明 確にして書くこと」. 表9 全国学力・学習状況調査の概要 ・義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観 点から,全国的な児童生徒の学力や学習状況を 把握・分析し, 教育施策の成果と課題を検証し, その改善を図ったり,学校における児童生徒へ の教育指導の充実や学習状況の改善等に役立て たりすることを目的とする。. ▲「読むこと」における課題として,「物語に登場 する人物についての描写や心情,人物相互の関 係を捉えること」 , 「目標に応じて必要となる情 報を取り出し,それらを関係付けて読むこと」 ▲「言語事項」における課題として,「複数の内容 の文を分析的・統合的に理解すること」. ・全国の小学校6年生, 中学3年生を対象とする。 調査方法は,抽出調査と希望利用方式があり, 抽出調査は約30%である。. として認められるものとし,正答率がおおむね 70%を下回る内容を課題として捉える。次に過去. ・調査内容は, ①教科に関する調査(国語, 算数・ 数学,理科)②生活習慣や学習環境等に関する 質問紙調査である。①教科に関する調査は,主 として「知識」に関する問題と,主として「活 用」に関する問題に区分され,A問題,B問題 とされる。. 4年間の国語A問題,国語B問題の年度別の平均 正答率を表11に示す。 過去4年間の平均正答率を比較すると,A問題 の平均正答率75.2%に対し,B問題の平均正答率. ・平成24年度は4月17日に全国一斉に実施され, 抽出調査を実施した小学校は5224校, 約26万人, 中学校は4471校,約44万人である。. は60.6%と低いことから,A問題よりもB問題に 課題があることがわかる。特に平均正答率が50% の年度もあり,改善を要する状況にあると言える。. 表11 過去4年間の国語A,国語B問題の年度別平均正答率 A主として「知識」に関する問題. B主として「活用」に関する問題. 問題数(問). 平均正答率(%). 問題数(問). 平均正答率(%). 平成19年度. 18. 81.7. 10. 63.0. 平成20年度. 18. 65.6. 12. 50.7. 平成21年度. 18. 70.1. 10. 50.7. 平成22年度. 15. 83.5. 10. 78.0. 過去4年平均. 17.3. 75.2. 10.5. 60.6. 年度. (国立教育政策研究所23),「全国学力・学習状況調査の4年間の調査結果から今後の取組が期待される内容のまとめ小学校 編」より抽出). 294.
(8) 求められる学力の論点整理と学力状況を踏まえた実践. また,A問題においても平均正答率が80%を下. さらに過去の調査との同一問題の正答率の比較. 回っている年度もあることから,充分に満足でき. 結果について,表14に示す。過去の調査とは,昭. る状況とは言い難い。. 和31~41年度の全校学力調査,昭和56~58年度,. 次に小学校算数科の結果を表12に,過去4年間. 平成5~7年度等に実施した教育課程実施調査,. の算数A問題,算数B問題の年度別の平均正答率. 平成19,20年度の全国学力・学習状況調査及び. を表13にそれぞれ示す。過去4年間の平均正答率. TIMSSを指す。各調査の対象学年や実施時期,. を比較すると,A問題の平均正答率76.9%に対し. 問題の全体構成等が異なるため,単純な比較がで. B問題の平均正答率は55.0%と,国語同様,A問. きないことに留意する必要があるが,同一問題の. 題よりもB問題に課題が見られる。また,A問題. 正答率の比較から,PISA調査やTIMSS調査と同. においても,平均正答率は80%を下回っており,. 様に,日本の児童生徒の学力は改善傾向にあると. 充分に満足できる状況ではない。. いえる。. 表12 小学校算数の4年間の調査結果のまとめ (国立教育政策研究所23)より作成). 4.北海道の児童生徒の学力状況. 内容及び成果と課題(成果○,課題▲). 過去5年間の北海道の全国学力学習状況調査の. ○「数と計算」 における成果として, 「整数, 小数, 分数の四則計算をすること」 , 「分数の意味と表 し方を理解すること」. 平均正答率及び全国平均との比較結果を表15,表 16に示す。なお,平成23年度は震災の影響のため, 全国調査は見送られ,道独自で実施したことから. ○「量と測定」における成果として, 「角の大き さを求めること」 , 「示された図形の面積を求め ること」. 表14 過去の調査との同一問題の正答率の比較結果 (国立教育政策研究所23)より作成). ▲「数と計算」における課題として, 「乗法や除 法の意味を理解すること」. ・平成24年度の小学校調査の結果から,過去の調 査との同一問題9問(国語6,算数3)のうち, 2問は過去の正答率と比べて大きな差がなく, 6問は今回の方が高く,1問は低くなっている。. ▲「量と測定」における課題として, 「求積に必 要な情報を取り出し面積を求めること」 ▲「図形」における課題として, 「図形の性質を 基に事象を判断すること」. ・平成24年度の中学校調査の結果から,過去の調 査との同一問題10問(国語5,数学5)のうち, 2問は過去の正答率と比べて大きな差がなく, 6問は今回の方が高く,2問は低くなっている。. ▲「数量関係」における課題として, 「計算の順 序についてのきまりなどを理解すること」 , 「割 合の意味を理解すること」. 表13 過去4年間の算数A,算数B問題の年度別平均正答率 A主として「知識」に関する問題. B主として「活用」に関する問題. 問題数(問). 平均正答率(%). 問題数(問). 平均正答率(%). 平成19年度. 19. 82.1. 14. 63.6. 平成20年度. 19. 72.3. 13. 51.8. 平成21年度. 18. 78.8. 14. 55.0. 平成22年度. 19. 74.4. 12. 49.6. 過去4年平均. 18.8. 76.9. 13.3. 55.0. 年度. (国立教育政策研究所,全国学力・学習状況調査の4年間の調査結果から今後の取組が期待される内容のまとめ小学校編よ り引用). 295.
(9) 因 雅仁・水上 丈実・藤川 聡. 表15 小学校における国語・算数のデータ比較 年度. 国語A(知識). 国語B(活用). 算数A(知識). 算数B(活用). 北海道. 全国. 北海道. 全国. 北海道. 全国. 北海道. 全国. 平成19年度. 79.4. 81.7. 58.0. 62.0. 76.8. 82.1. 58.6. 63.6. 平成20年度. 60.5. 65.4. 46.4. 50.5. 66.4. 72.2. 47.7. 51.6. 平成21年度. 66.0. 69.6. 45.9. 50.5. 74.1. 78.7. 51.5. 54.8. 平成22年度. 79.0. 83.3. 71.2. 77.8. 67.2. 74.2. 43.8. 49.3. 平成24年度. 77.4. 81.6. 51.1. 55.6. 68.7. 73.3. 54.3. 58.9. (北海道教育委員会,全国学力・学習状況調査結果報告をもとに筆者が作成). 表16 中学校における国語・算数のデータ比較 年度. 国語A(知識). 国語B(活用). 算数A(知識). 算数B(活用). 北海道. 全国. 北海道. 全国. 北海道. 全国. 北海道. 全国. 平成19年度. 80.5. 81.6. 70.0. 72.0. 68.6. 71.9. 57.6. 60.6. 平成20年度. 72.7. 73.6. 59.0. 60.9. 60.4. 63.1. 46.0. 49.2. 平成21年度. 76.1. 77.0. 72.6. 74.5. 61.1. 62.7. 55.4. 56.9. 平成22年度. 74.2. 75.1. 61.2. 65.3. 60.9. 64.6. 39.1. 43.3. 平成24年度. 74.0. 75.1. 63.7. 63.3. 60.0. 62.1. 46.9. 49.3. (北海道教育委員会,全国学力・学習状況調査結果報告をもとに筆者が作成). 当該データは除外している。. に導いているのである。しかし,北海道の児童生. 過去5年間の調査結果をもとに,北海道と全国. 徒の学力に目を向けると,学力低下の問題は改善. の平均正答率を比較すると,ほぼ北海道の平均正. されていないのが現状である。教育の機会均等の. 答率は全国の平均正答率を下回っていることが分. 原則から,全ての児童生徒は一定水準の教育を受. かる。PISA調査やTIMSS調査の結果から,全国. ける権利を有している。地域によって学力差が生. 的に児童生徒の学力は改善傾向であると示した. じることは避けなければならず,北海道において. が,北海道の児童生徒の学力は,全国の平均正答. は,依然として学力向上に向けた取組が急務であ. 率と比較すると依然として差があることが分か. ることがわかる。. る。若干ではあるが全国平均との差が狭まってい るが,北海道の公立学校が抱える学力低下の問題 は改善傾向に向かっているとは言い難い。さらに 平成24年度の北海道教育委員会,全国学力・学習 状況調査の結果報告から表18のことが明らかと なった。 日本の学力は,2003年,2006年のPISAショッ クを境に,改善傾向にあると言われている。その 背景には,各学校が学力低下の現状を真摯に受け 止め,教育施策に目を向け,組織的な協力体制を 構築し,各学校の努力のもとで授業改善が行われ ているからに他ならない。現場の努力が学力向上. 296. 表17 北海道の児童生徒の全国学力・学習状況調査 の結果概要 ・北海道は,小中10教科中,中学国語Bを除く9 教科において,全国平均を下回っている。 ・北海道は,平成22年度調査と比較すると,中学 国語Aを除く9教科において全国平均との差が 縮小傾向である。 ・北海道は,下位25%の正答数の範囲に入る児童 の割合が,全教科で全国の割合よりも多い。 ・北海道は,全国と比べて,正答率に5ポイント 以上の差がある設問数が極めて多い。(小学校 で60問中24問が該当する).
(10) 求められる学力の論点整理と学力状況を踏まえた実践. 5. 2 X小学校における成果と課題. 5.北海道X小学校における取組を例に. 5. 2. 1 学力向上に向けた対策及び成果. ここでは,北海道内のX小学校(学級数8,児. 上記の課題を受け,X小学校では平成25年度よ. 童数77名)において,国語科及び算数科を窓口に. り学力向上に向けた校内研修を再編した。そこで. 学力向上に向け取り組んだ事例を紹介する。. は,算数科を窓口に「思考力・判断力・表現力の 育成」に焦点を当て,問題解決的な学習や学習評. 5. 1 X小学校における現状. 価を研究の視点に位置付けて授業実践を推進し. X小学校では,平成20年度から平成25年にかけ,. た。その結果,平成25年度の全国学力学習状況調. 国語科を窓口に児童の言語能力,特に表現力の育. 査のB問題の平均正答率は全国平均を上回り,学. 成を目指して取り組み,児童が自分の思いを進ん. 力テストの思考・判断・表現の平均正答率につい. で発表したり,小集団交流では,個々の考えをも. てもこれまでの結果を上回る結果となり,学力の. とにより良い考え方を練り合ったりする活動を取. 向上,とくに思考力・判断力・表現力における一. り入れてきた。また,自己評価や相互評価を継続. 定の成果を得た。. 的に行うことで,自分の伸びを実感したり,自ら. 5. 2. 2 学校評価にみられる課題. の考えや感想をまとめたりすることができるよう. 校内テストや全国学力学習状況調査において成. になってきた等,学習活動の充実においては一定. 果が得られたものの,学校評価においては以下の. の成果を得てきた。. 課題が見られた。平成26年度に実施したX小学校. 反面,X小学校における平成25年度の学力テス. の学校評価では,保護者及び教職員の約半数が「本. トの結果を調査したところ,全学年で知識や技能. 校児童には未だ思考力・判断力・表現力等が充分. の観点の平均正答率に比べ,思考・判断・表現の. に身に付いていない」と評価していること,また,. 観点の平均正答率が極めて低かった。. 各学級担任が普段の児童の学習の様子について意. また,平成24年度の全国学力学習状況調査にお. 見交換を行った結果,「筋道を立てて考えを深め. いても,B問題における平均正答率が全国平均を. たり,自分の考えを表現したりすることが苦手な. 下回っており,校内テストと同様の課題が見られ. 児童が多い」との見解が複数見られた。校内研究. た(表18に,X小学校における全国学力・学習状. を推進することで学力テスト等の点数は上昇して. 況調査の結果を示す)。さらに平成25年度末に実. いるものの,通常の授業の中で生きて働く力を育. 施したX小学校における学校評価では,教職員評. む必要が問われており,全ての児童に対して思考. 価及び保護者評価の結果から,本校の児童は筋道. 力・判断力・表現力等を育成するために具体的な. を立てて考える力や自分の考えを表現する力が充. 手立てを講じる必要がある。. 分に身に付いていないことが明らかとなった。 表18 X小学校における全国学力・学習状況調査の結果(国語・算数) 年度. 国語A(知識). 国語B(活用). 算数A(知識). 算数B(活用). X小学校. 全国. X小学校. 全国. X小学校. 全国. X小学校. 全国. 平成19年度. 78.4. 81.7. 56.0. 62.0. 79.2. 82.1. 58.6. 63.6. 平成20年度. 63.5. 65.4. 48.4. 50.5. 74.3. 72.2. 49.5. 51.6. 平成21年度. 68.0. 69.6. 46.8. 50.5. 78.1. 78.7. 53.5. 54.8. 平成22年度. 82.0. 83.3. 74.2. 77.8. 72.3. 74.2. 46.8. 49.3. 平成24年度. 83.4. 81.6. 52.1. 55.6. 74.7. 73.3. 53.6. 58.9. 297.
(11) 因 雅仁・水上 丈実・藤川 聡. 6.今後に向けて求められる取組. を正確に理解し伝達する,③概念・法則・意図な どを解釈し,説明したり活用したりする,④情報. 前述の論点整理及びX小学校での実践を糸口. を分析・評価,論述する。⑤課題について構想を. に,思考力・判断力・表現力の育成に向け,今後. 立て実践し,評価・改善をする。⑥互いの考えを. に求められる取組について述べる。. 伝え合い,自らの考えや集団の考えを発展させ 26) の6つの活動を示している。 る」. 6. 1 効果的な言語活動の再確認. 同答申では,「これらの学習活動の基盤となる. X小学校では,国語科を窓口に児童の言語能力,. ものは,数式等を含む広い意味での言語であり,. 特に表現力の育成を目指し学校全体で取り組んで. 言語を通した学習活動を充実させることにより,. いた。さらに, 算数科を窓口に「思考力・判断力・. 思考力・判断力・表現力等の育成が効果的に図ら. 表現力の育成」に焦点を当て,問題解決的な学習. れることから,いずれの各教科等においても記. を積極的に推進した。ここでは,それらの取組の. 録・要約・説明・論述等の言語活動を発達の段階. 意義を確認しながら,今後求められる言語活動の. 27) としている。 に応じて行うことが重要だ」. 在り方について述べる。. X小学校では,これらに示された配慮事項や活. 平成20年小学校学習指導要領総則においては基. 動例に即した地道な実践を行っていた。学習指導. 礎的・基本的な知識及び技能を活用して課題を解. 要領及びその解説の趣旨を適切に理解し,生徒の. 決に必要な思考力・判断力・表現力等の育成が求. 状況に即して実践することが学力向上につながる. められている。これまでも述べてきたとおり,そ. という結果を示したといえよう。. の手立てとして明確に位置付けられているのが言. ただし,言語活動の充実は,「児童生徒の思考. 語活動の充実である。. 力・判断力・表現力等の育成のみを目的としてい. 現行(2008年告示)の学習指導要領では,思考. るのではなく,各教科等の目標の実現のためにお. 力・判断力・表現力の育成のために,言語活動の. いても必要であること」28)に留意する必要があ. 充実を求めている。指導計画の作成等に当たって. る。つまり,言語活動自体が目的ではなく,あく. の配慮すべき事項には, 「各教科等の指導に当たっ. までも各教科等の目的を達成したり,児童生徒の. ては,児童の思考力・判断力・表現力等をはぐく. 思考力・判断力・表現力等を育成したりするため. む観点から,基礎的・基本的な知識及び技能の活. に言語活動が用いられることを指摘しており,各. 用を図る学習活動を重視するとともに,言語に対. 学校においては,言語活動を教育課程や単元計画,. する関心や理解を深め,言語に関する能力の育成. 授業計画の中に意図的・計画的に位置付けること. を図る上で必要な言語環境を整え,児童の言語活. が求められているといえよう。. 24) との記載がある。言語に 動を充実させること」. 関する能力を育成する中核的な国語科において,. 6. 2 教育評価の更なる充実. 「話すこと,聞くこと」「書くこと」「読むこと」. X小学校では,問題解決的な学習を取り入れた. のそれぞれに記録,要約,説明,論述といった言. 効果的な言語活動を展開させていた。また,それ. 25). しており,児童生徒の思考力・. らに加えて学習評価の研究にも力を入れていた。. 判断力・表現力等の育成に向けて,国語科を中心. 思考力・判断力・表現力等の育成においては,言. として各教科等において言語活動の充実が必要不. 語活動の充実と併せて,教育評価の工夫・改善は. 可欠であることがわかる。. 重要な要素の一つである。. また,平成20年中央教育審議会の答申では,思. 文部科学省の調査結果29)によれば,各教科に. 考力・判断力・表現力等を育むための例として. おける「知識や技能」の学習評価を円滑に実施で. 「①体験から感じ取ったことを表現する,②事実. きていると感じている教師の割合は,80%を超え. 語活動を例示. 298.
(12) 求められる学力の論点整理と学力状況を踏まえた実践. ているのに対し,「思考・判断」の学習評価に関. 今後は,本研究では,診断的評価,形成的評価,. しては,小学校では約26%,中学校では約30%の. 総括的評価の三視点からさらなる教育評価の工. 教師が学習評価を円滑に実施できているとは思え. 夫・改善が求められる。. ないと感じているとのことである。また,同調査. 中央教育審議会は,2010年度指導要録の改訂に. において,小・中・高等学校の保護者の約38%が. 関わって,「思考力・判断力・表現力等を評価す. 「評価に,先生の主観が入っているのではないか. るに当たって,『パフォーマンス評価』に取り組. 不安を感じている」との課題があり,教育評価に. ん で い る 例 も 見 ら れ る 」32)と 示 し て お り, パ. おける妥当性や信頼性,客観性を高める必要があ. フォーマンス評価を推奨している。また,田中. る。. (2010)は,「パフォーマンス評価」が学校にお. これらの課題を受け,文部科学省は「児童生徒 30). ける教育課程改革を推進するための牽引車の役割. の学習評価の在り方について(報告)」(2010). 33) と述べ,その重要性を示 を担おうとしている」. において,教育評価の基本的な考え方や今後の方. している。さらに香川大学附属高松小学校(2011). 向性について具体的な指針を示している。特に学. は,研究実践の結果から,「子どものゴールの姿. 習指導要領に示す内容に照らしてその実現状況を. が具体的になり,指導計画に役立つ」「評価基準. 評価する,目標に準拠した評価を引き続き着実に. を示すことで,指導の目的が明確になる」「何が. 実施することや新しい学習指導要領の趣旨や改善. 期待され,高く評価されるかを子どもに示すこと. 事項等を教育評価に適切に反映させること等を示. ができ,教師と共有できる」34)と,パフォーマン. していることからも,学習指導要領との整合性を. ス評価の有用性を示している。また,西岡(2012). 図った教育評価が求められており,特に思考力・. は,「思考力・判断力・表現力等を保障するため. 判断力・表現力等の指導に際して,児童生徒の学. には,学力評価において,パフォーマンス課題を. 習活動や成果を適切に評価する必要があるといえ. 取り入れることが求められていると言えるだろ. るだろう。また,同報告の「4.観点別学習状況. う」35)と述べ,思考力・判断力・表現力等の育成. の評価の在り方について」では,「思考・判断・. におけるパフォーマンス課題の重要性を示してい. 表現の評価に関する考え方」が示されている。こ. る。さらに,山口(2011)は「よりリアルな課題. こでは, 「各教科の内容等に即して思考・判断し. であるような高次の思考・判断,スキルなど(=. たことを記録,要約,説明,論述,討論等といっ. パフォーマンス)の評価は,量的な形では難し. た言語活動等を通じて評価するものであることに. い。」36)と述べ,思考力・判断力・表現力等を客. 31) と示され,思考力・判断 留意する必要がある」. 観テストで評価することの難しさを指摘している。. 力・表現力の評価と言語活動を関連させて実施し. 技能や知識・理解については,ペーパーテスト. ていく必要があることが確認できる。. やノート,ワークシート等の記述から概ね児童の. 前述のとおり,X小学校においては思考力・判. 習熟状況を評価することができる。しかし,思考. 断力・表現力の育成を目的とした校内研修を実施. 力・判断力・表現力の見取りについては教師の主. しており,学力テスト等の結果から一定の成果を. 観のみで児童の活動の様子を評価しまう可能性が. 得ている。X小学校で思考力・判断力・表現力を. ある。そこで,教師の主観に頼らず,思考力・判. 育む効果的が得られた要因に,課題解決学習で用. 断力・表現力を客観的に評価できる明確な評価規. いた「パフォーマンス評価」が大きな役割を示し. 準が必要であり,その評価規準を質的に判断する. たと考えている。. 基準が必要となる。その評価規準とその評価規準. しかし,普段の授業の様子からは,全ての児童. を質的に判断する基準を合わせて示したものが. に各学年の発達段階に応じた思考力・判断力・表. ルーブリックである。広島大学附属東雲小学校. 現力が身に付いているとは言い難い状況である。. (2012)は,「ルーブリック評価を活用すること. 299.
(13) 因 雅仁・水上 丈実・藤川 聡. によって,これまで学力評価において比較的に捉. いて」 (答申)http://www.mext.go.jp/B_menu/shingi/. えにくいとされてきた思考力や判断力,観察・洞. Chukyo/Chukyo0/toushin/__iCsFiles/Afieldfile/. 察力,表現力等,(中略)具体的かつ客観的に評 価することができるようになり,個々に応じた具 37). 2009/05/12/1216828_1.pdf(最終閲覧2015年2月) 6)前掲1) ,p.3 7)前掲1) ,p.19. 体的な指導を行うことが可能になる。」 と述べ,. 8)前掲1) ,p.3,及び前掲5). ルーブリックの活用による有用性を示している。. 9)松村 明・三省堂編修所,2006,大辞林第三版電子. パフォーマンス評価は多くの文献でその有用性 が確認されている。思考力・判断力・表現力の育 成において,課題解決学習におけるパフォーマン ス課題と併せて,思考力・判断力・表現力を適切 に抽出できるパフォーマンス評価の研究を学校規 模で取り組むべきであるといえよう。. 版,三省堂 10)前掲9) 11)前掲9) 12)水戸部修治,笠井健一ほか,2012,授業における思 考力・判断力・表現力,東洋館出版社,p.17 13)前掲12) ,p.18 14)文部科学省,小学校学習指導要領算数編,p.8 15)笠井健一,2012,算数科における「思考力・表現力」 を高める授業評価,VIPRESS12号,光文書院,p.7 16)前掲15) ,p.7. 7.まとめ. 17)前掲1) ,p.19. 本稿では,重視すべき学力の要素として,思考. 18)前掲5) ,p.24 19)前掲5) ,p.25. 力・判断力・表現力が求められた背景について確. 20)OECD,2009,PISA調査(生徒の学習到達度調査). 認した。また,2003年以降の国際調査及び国内の. 21)OECD,2011,TIMSS調査(国際数学・理科教育動. 学力調査の精査を通じ,求められる学力である思 考力・判断力・表現力の育成に関わる論点整理を. 向調査) 22)文部科科学省,2012,全国学力・学習状況調査 23)国立教育政策研究所,2012,全国学力・学習状況調. 行った。さらに,生徒の学力状況を踏まえた実践. 査の4年間の調査結果から今後の取組が期待される内. の在り方について,北海道X小学校における国語. 容のまとめ 小学校編,東洋館出版社. 科・算数科の取組を糸口にまとめた。その結果, 思考力・判断力・表現力の向上のために重視すべ き取組として,①効果的な言語活動の再確認する こと,②教育評価の更なる充実を図ること,以上 の2点に集約された。特に②においては,思考力・ 判断力・表現力を適切に抽出できるパフォーマン ス評価について,学校全体での研究・推進させる ことが重要であると考えられる。今後,更なる実 践と教育効果の検討を重ねたい。. 24)前掲1) ,p.52 25)前掲1) ,p.54 26)文部科学省,2011,言語活動の充実に関する指導事 例集~思考力・判断力・表現力等の育成に向けて~, pp.5-6 27)前掲5) ,p.25 28)前掲5) ,p.25 29)前掲5) ,p.26 30)文部科学省,2010,学習指導と学習評価に対する意 識調査(委託調査) 31)文部科学省,2010,児童生徒の学習評価の在り方に ついて(報告) 32)文部科学省,2010,小学校,中学校,高等学校及び. 参考文献 1)文部科学省,2008,小学校学習指導要領解説総則編, p.1,東洋館出版社 2)前掲1),p.1 3)前掲1),p.1 4)総務省,学校教育法,第2章,第30条2項 5)中央教育審議会,2008,「幼稚園,小学校,中学校, 高等学校及び特別支援学校の学習指導要領の改善につ. 300. 特別支援学校等における児童生徒の学習指導及び指導 要録の改善等について(通知) ,p.33 33)田中耕治,2011,パフォーマンス評価 思考力・判 断力・表現力を育む授業づくり,p.1,ぎょうせい 34)香川大学教育学部付属高松小学校,2011,活用する 力を育むパフォーマンス評価,p.21,明治図書 35)西岡加名恵,2008,逆向き設計で確かな学力を保障 する,p.14,明治図書 36)山口陽弘,2012,教育評価におけるルーブリック作.
(14) 求められる学力の論点整理と学力状況を踏まえた実践. 成のためのいくつかのヒントの提案,群馬大学教育学 部紀要,人文・社会科学編第62号,p.160 37)広島大学付属東雲小学校,2012,小学校教育に求め られる基礎・基本を問う,東洋館出版社 付記:本稿は,因雅仁による平成26年度北海道教育大学 教職大学院マイオリジナルブック(MOB),『思考力・判 断力・表現力の育成を図る教育評価の充実』の第Ⅰ章「研 究テーマの設定理由」に補筆・修正を加え再構成したも のである。. (因 雅仁 北海道教育庁胆振教育局) (水上 丈実 旭川校教授) (藤川 聡 旭川校准教授) . 301.
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