工芸教育における素材と教材(4)
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(2) . 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第4 3巻 第2号. 平成5年3月. lof Hokka ido Un Journa iver i ion(Sec ty ofEducat ion工C)Vo s t l .43 .2 , No. M [ ar ch ,1993. 工芸教育における素材と教材 (4). 加. 藤. 直. 樹・小. 福. 田. 隆. 平 征 真・佐. 雄・吉. 賀. 々. 宰. 木. 将. 夫. A Study onthe Materialsand Laming Materialsin Craf i tEducat on 偲) Naok iKATOH, Yukio KODA工RA M[asao YOSHIGA Takaαーasa FUKUDA Tsukasa SASAKI , , ,. は じ め に. この報告は, 「工芸教育の素材と教材」として, 工芸教育における種々の素材と教材の可能性 を実 } 践的な見地から述べ てきた一連の研 究の継続である 1 . これまでの研究では, 普通教育及び教員養成 における工芸教育 を基本に, 具体的な教材例を示してきた こうした中で 分節可能な制作工程 ‐ , , 段階的な技術 習得, 素材種による 作品の多様な表現 日常生活の希求を満たす機能性と い た 工 っ , , 芸教材の特性が導かれてきた. この報告では, 新たに社会教育としての工芸教育という視点を加えた 工芸教育やそれを含む美 . 術教育一般は, 個人の人格形成, 人間形成を最終的な目標としており それは単に学校教育 の中だ , けで完結するわけではない‐ 広く社会の中 での個的な展開を見ることによって 目標が達成さ れた , といえよう‐ 工芸教育は, 素材が多様 で, それに応じた表現の世界がある また 技術の習得段階に応じた表 , . 現も可能 であり, 日常の親しみ易いテーマをもとに手の巧撤性を高めたり 工芸の理解を深めてい , くことができる. こう したことから, 工芸教育の素材と教材は 学校教育のみならず 社会教育に , , おいても有意義なものであるといえる . 以下では, 具体的な教材例を紹 介する ‐. 1. 陶芸による鑑賞教材の作成. 工芸教 育では素材による物理的制約とともに材料的特性があり 紙 木 金属 土と い た素材 っ , , , , 別の教材を考慮 しなくてはならない. スコープがそれぞれ材料によっ て明快に分かれて いるので , それぞれの特性や 条件を考慮してシー クエンスを予想する必要がある . 紙と土はそれらの素材のなか でも比較的扱いやすい材料であり 小学校図画工作科においても紙 , が素材と して早い段階から導入される また 土も彫刻 の領域としては低 学年から取り扱 われてい , ‐ るが, 焼きものとしては高学年から 導入される . 焼きもの素材としての土は陶芸教材として扱われ 彫刻の場合のように心象表現を主体とする立 , 283.
(3) . 加藤直樹・小平征雄・吉賀将夫・福田隆真・佐々木宰. 体表現ではなく, 使用機能を意図した表現がなされる‐ 小, 中学校での陶芸の教 材はカリキュ ラム の点から考えると, 表現領域の学習であるが, 使用機能, 装飾機能という点を考慮するならば, 出 来上がりの作品の評価や鑑賞を意図して題 材設定をすることが望 ましいと考えられる. 2年の学習指導要領の改 また, 現在, 美術教育ではスコー プの不明瞭化 が進ん で来ている‐ 昭和5 者の4領域をを 鑑賞の5つの領域から前 工作・工芸 デザイン 彫塑 それまでの絵画 訂では, , , , , 表現領域としてひとつにまとめ た経緯がある. 更に小学校低学年の 表現領域には造形遊びが導入さ れ, それは平成元年の改訂においても拡大がなされた. つまり, 現在の美術教育では美術を対象と しながらその美術そのものが領域を不明瞭にしながら自由な発展をなしているといえる. 素材の拡 大, メディアの氾濫などは直接, 美術教育に影響を及ぼすものである‐ そう した状況において 工芸 の表現分 野も単なる適応表現・機能表現という枠組みでは 定義づけが困難な状態にあるといえる. 土の素材として立体表現をして 更に焼成, 柚がけを行うことで陶芸はあらゆる表現を含むともいえ る. そこで, 本研究では陶芸の教 材を以下の3つに分類して教材研究を行っ た. ①使用機能を 主体とする陶芸作品. ②使用機能と装飾機能を合わせ持つ陶芸作品 ③装飾機能を主体とした陶芸作品 ①は本来, 工芸の持つ特性 である使用機能を重視した陶芸作品の制作と鑑賞である。 題材例とし て図1~3がある‐この題材では使用機能を第一に考え,実際に日常 生活で使用するシチュ エーショ ンを想定しながら制作を行う. それらはほとん ど単 一の機能であり, 使用機能に応じて形態が決定 される. 表面加飾は適宜行われる. 鑑賞の観点としては機能に即した形態であるかいなか, また, 使用者の生活に適応した色や形か どうか, という点が考えられる. ②は現代の工芸作品では多くなされている. 本来, 工芸は何れの素材にしても, いかなる使用目 的にしても, 装飾を施してきた. これは人間の歴史が始まっ て以来, 続けられてきた行為であり, 逆に言えば, 工芸作品から装飾を取り除くと全く無味乾燥の物体と化してしまう. 工芸作品と物体 の境界は装飾性にあるとも言える‐ 私達の日常生活の工芸品はどれをとっ ても装飾機能を備えてお り, 工芸品とは装飾の多少の問題では なく, 装飾の有無の問題であろう. 陶芸作品の題材例として は図4~7である‐ これらは①と同じく単一の使用機能をもちながら必ず装飾がなされており, そ の装飾が使用 機能に対して, より精神性を加 味する役割を果たしているといえる. 鑑賞の観点とし て, 使用機能と装飾機能の適応が上げられる‐ ③は工芸作品ではあるが, 半ばオ ブジェ と見なされる作品である. この種の作品は彫刻との境界 線上にあり, 彫刻と工芸の何れと も解釈できる 二面性を持っている‐ 場合によっては, 使用機能を 全く有していないこともあり, 素材と制作工程が陶芸と同じ過程を経ているに過ぎないというもの もある. しかしながら, そこには陶芸の制作上の特質を備えていること がミニマムの条件であり, 工芸美術作品の領域の一つとして工芸品であるといえる. 題材例は図8であり, 鑑賞の観点として は作者の制作意図, 美術作品としての 造形要素や視覚言語, 素材や制作工程の特質という点が考え ら れ る‐. 以上のような陶芸作品の分類から, 教材としてのシークエンスを考えるならば, 造形表現や造形 技術, 造形感覚の発達段階を考 慮して, ①→②→③の順になると想定できる. ①と②はその区別 は 厳密ではなく, 装飾能力の発達の個人差を考えなくてはならない‐ し ,たがっ て, 鑑賞の観点も①② 重視する必要があろう‐ ての表現を ③では美術作品とし 機能と形態の関係を重視し では使用 ,. 284.
(4) . 工芸教育における素材と教材 (4). 2. 社会教育としての陶芸教育. 工芸の中でも陶芸は土という素材を使用 し, 成形, 焼成などの制作過程を持つことで, 社会教育 においても有効な教材となると考えられる. 工芸の教材は素材と制作工程のプロセスに特性がある ことは, 先にも述べたが, ここでは, それらの特性が普通教育や教員養成だけでなく, 広く社会教 ) 育としても有効であることを以下に具体的事例を挙げて述べる.2 社会教育としての美術教育は現代 では多くの場で開催されており, カルチャーセンターや, 市民 講座のような公的機関だけではなく, 民間での陶芸, 染色, 絵画教室といっ たレベ ルで広く行われ てきつつある. これらの受講者は専門家を志す場合は少なく, むしろ, 教養的, 趣味的レベルでの 美術教育を受ける場合が多いが, 美術作品の制作にともなう達成感, 成就感と, それらを裏付ける 技術習得が教育内容となっている.. 山口大学教育学部では公開講座のひとつとして, 平成4年度に 「萩焼と陶芸教室」 と題して社会 人を対象とした工芸教育を行っ た. 受講生の年齢は30代~70代ま でとかなりの幅があっ たが,陶芸 制作に関してはほとん どが初心者であっ た. 日程としては5日間で,( 1 )成形,( 2 )素焼き,( 3 )施粘, ( 4 )本焼き,( 5 )講評と理論的概説を行っ た. ( 1 )成形では各自が5kg の粘土を使用し, 手びねりによっ て, 茶碗, 皿, 鉢, 壷, 花瓶などの制作 を行っ た. 大きさや点数の制限はなく, 自由に作りたいものを作るという内容にした. 手びねりの 技法の概略を指導することによっ て, ほとん どの受講生はある程度まで作品制作をすることができ た. 指導上の留意点としては, 粘土の脱気, 作品の厚さ, 焼成による収縮などをとりあげた. 陶芸 制作に興味をもつ初心者に対しては, 最小限の技術的な留意点を把握し, 造形上の問題点について は過度に指導するよりは, 自由に制作する意欲を持たせることが重要であろう. 受講生は5kg の粘 土をほとんど使用 し, 小さな皿, 鉢からやや大きめな花瓶のようなものま で制作を行っ た‐ (図9, 10 ) , 11,12. ( 2 )素焼きでは灯油窯を使用 し, 受講生自らが焼成に当たっ た. 陶芸の制作過程を知るうえ では, 焼成を直接行うことが, 陶芸の体験的認識につながると考えられる. 焼成温度等の技術的内容を把 握するには, 体験的な習得が効果的である‐ (図13 4 ) ,1 ( 3 )施紬では多数の種類の紬のなかから, コバ ルト, 絵柄, 透明粕, 白紬に限定して行っ た. 同種 の紬でも施柚と焼成によって微妙な変化を起こし,表現上の多様さを知ることができる.(図1 5 6 ) ,1 ( 4 )本焼きでは, 素焼きと同様, 受講生各自が灯油窯を使用 して焼成を行っ た. 時間的には素焼き の時よりもやや長めであるが, 温度の上昇 では素焼きよりも高く, 焼きものとしての陶芸の原理を 知るうえ では貴重な体験となっ た. ( 5 )講評と理論的概説では, ( 4 )までの経験的認識を整理するうえで有効 である. 今回の講座では 主 に初心者を対象としていたため, 経験的な習得に重点がおかれ, しかも成形, 焼成の技術的内容が 多くを占めていた‐ 造形的内容の習得は短時間では達成しにくいので, 経験的な習得の後に, 立体 の造形制作に関する講義を行うことによって, 今後の造形制作上の認識を深めることができた.(図 17 , 18 , 19 , 20). 以上のような陶芸制作の過程において, 公開講座のような社会教育 では次のような教育的意義が あると考えられる.. ①工芸教育への興味, 関心づけ 社会教育, 生涯学習にとっ ては自主的な学習態度が必要であり, 陶芸制作のように日用品から芸 285.
(5) . 加藤直樹・小平征雄・吉賀将夫・福田隆真・佐々木宰. 術作品までの幅広い作品を対象とする分野では,学習への取り組み方が多様にあるので 多数の人々 , が興味や関心をもちやすい内容 である‐ 今回の講座においても, 易数の応募者があっ たことは そ , の 例 であ る.. ②素材の柔軟性 陶芸の素材である粘土や磁器は, その成形において, 様々 な造形方法を備えている 手びねり , . 板づくり, ロクロ成形といっ たように, 技術習得の段階に対応することが できる .. ③制作過程の分節化. 技術の習得において, 陶芸制作はその過程が, 前述のよう に成形 素焼き 施柚 本焼きといっ , , , た分節化が可能 であり, ひとつひとつの段階を順 次, 習得することができる また 成形段階では ‐ , ② の よう に 幅 広 い 方 法 を も っ て る の で, 土 と いう ひ と つ の 素 材 に よ っ て 教 材 と して の ス コ ー プ と , シー クエ ンス の両 面 を 含ん でい る と 考え られる .. ) ④達成感と成就感3. 美術教育全般の特性 として,作品を制作することによっ て達成感と成就感を得ることが できるが , 特に陶芸教育においては顕著である. 陶芸の制作対象は実用的な機能を持つ日用品から 装飾的機 , 能をもつ置物, さらには芸術的機能をもつ美術作品までの幅広さを有しているので 制作者は各自 , の制作対象物と目標 を柔軟に設定することができる. したがって, 達成目標の設定も個人の段階が 細分化され, 達成感を得ることが比較的容易となる. さらに, 細かな技術的習得によっ て造形的な イメージを具体化することができ, 成就感を得ることが可能である また, 焼成はある程度の偶発 ‐ 性を含んでいるので, 窯出しの結果の出来上りの楽しみをもっ ている . このように社会教育にとっ て陶芸教育は幅広 い年齢層を対象とすることができ, 生涯教育として 有効な教材 であると考えられる.. 3. 木材工芸の教材. 工芸の表現は, 機能に関わるもの である, それは, 直接的に実用性としての機能であっ たり 美 , 的な側面によるものなどである‐ 造形の領域的な概念が, 材料やメディ アの急速な発達によっ て取 り除かれつつある昨今においては, 工芸の表現も複雑化しているといえる したがっ て 工芸の世 . , 界やその意身もまた複雑なものになっている‐ 工芸は, 日常生活における必要物の自給にルーツを持つために, 現代においても身近な生活品の 制作を示したり, あるいはその対極として個人作家の表現技術を駆使した鑑賞としての工芸品の制 作をも示す‐ また, 伝統的な素材と技術の継承としての工芸や, 新素材による現代的な工芸もある . 工芸の美を日常 の雑器に見いだし, 民芸運動を提唱した柳宗悦は, 造形芸術および工芸 を次のよう ) に 分 類 した.4. 貴族的工芸 鞘賞 工 芸 鑑 1 、. 造. 個人的工芸. 民衆的工芸 本的工芸 286. ÷ 「」実用工芸.
(6) . 工芸教育における素材と教材 (4). こう した柳の工芸の分類は, 様々な解釈が成り立つ分類の中のあくまでもひとつ であり, すべて の工芸を説明しきれるものではないが, 民衆的工芸, すなわち民芸を工芸の正道と主張する立場を 越えて, ニュ ートラルな視点か ら現象としての工芸の一面を捉えているといえるだろう . さて, 工芸教育は, このような造形芸術における工芸をモデルとしているわけだが, その教材化 にあたっ ては, 工芸の制作過 程を通して得られる教育的事項を, 教材の構造に照合するという プロ )例えば ひとつの教材には 技術的な習得…事項 素材の特性の理解 セスを経なければならない.5 , , , , 機能的な問題といっ たものが構造化の軸として設定でき, 最終的にはものづくりを通して文化を学 ぶという 目標がある‐ こう した中で, 学習者は次第に自己の表現を獲得していく が, 同時に工芸に 対する意識や世界観を培っ ていく. そのためには, 教材そのものがもつニュ ートラルな立場が必要 に な る‐. 学習者は, 教材の構造やその構成要素, すなわち指導者がハー ドルとして設定した事項を意識 し ながらつくるというよりは, 教材そのものが持つ工芸の世界を意識しやすい. いわばその教材から 垣間見ることができる工芸の地平を強く印象付ける‐ したがっ て, 教材においては, 個々の特殊的 な題材を扱いながらも, 広く工芸一般に遡及できるように構造化されなくてはならないだろう . 木材工芸では, 木という素材を用いながらも, 技術的な世 界によってそれぞれの分野が成り立つ . 例えば指し物, 曲げ物, 挽き物といっ たように技術によっ て独自の分野がある さらに 伝統的な . , 木工や, 現代的な造形感覚と遊びの要素が含ま れた木工など, 表現方法にも幅がある このことは . , 木材工芸の世界の複雑さを示 している一方で, 木材という素材を基に様々な表現が可能 であるとい うことをも意味している. 単に技術的な向上や, 作品の完成度を問題にするだけ ではなく 木材と , いう素材から, 新たな表現分野を開拓していくことで, 教材としての可能性も生 まれてくると考え ら れ る.. ここ では, 木材工芸を通して自分自身の表現やスタイ ルを獲得していっ た作品例を紹介する 作 . 品はいずれも高校生の制作によ る. テーマは自由とし, 設計から完成に至るまで自分自身で行っ た . 指導者は設計や加工についての質問に応じたり, 技術的なサポートを行っ た 制作期間は約1年間 . である‐ 図21は, 細い丸棒を用いて飛行機 ををかたちづく っ た照明 である. 本体に板材を用いず, 丸棒 で表し, 中心に蛍光管を組み込んだ点が効 果的である. 羽の部分はステンレスパイ プ で表して いる. 図22は, 楢の原木から材を切り出し, 削りこんで仕上げた椅子である 薄い挽き板では表せ ‐ ない重量感が感 じられる‐ 座板や背板, および脚部の曲面を考えながら全体の バランスに注意した . 図23は, 傘立てである. 三角 形の各頂点に木 で作っ た傘が柱として配置されている 発想の豊かさ ‐ , 丁寧な仕上げによっ て, 単なる実用性を超えた工 芸の楽しさが感じられる 図24は, 色の異なる木 . 材を集成し, 全体を人形の形にしたキャ ビネ ッ ト. 頭部, 胸部が蓋, および扉として開閉し 脚部 , は引きだしになっ ている. 木材の色を効果的に利用 している‐ 図25は, キリンの遊具である 象恢 . によっ て模様を表している. 作者は女性 であり, この作品を作る以前にキリ ンの竹馬 キリンのニ , 輪車をシリーズで制作してい る. キリンというモティ ーフと幼児のための遊具というテーマで制作 を 続 け て い る. 女 性 ら し い 観 点 と 優 しさ がう か がえ る 図 26 は カ タ ツ ム リ を モ テ ィ ー フ に し た 照 . ,. 明器具である. 本体の中心部に電球が配置されているの で, 本体から放射状に 光が放たれるように な っ て い る.. 以上6つの作品例を紹介したが, 既成の工芸にとらわ れない自由な発想が見ら れ, なおかつ日常 生活の希求に真塾に答えようとする姿勢が感 じられる. 工芸の教材は ともすると技術的な完成度 , にとらわれ過 ぎたり, 機能的な側面が教材としての条件によっ て制約を受けがち であるが 工芸が , 果たすべき役割や, 自分自身の工芸観を喚起することによっ て, 工芸の教材や, その表現の拡がり 287.
(7) . 加藤直樹・小平征雄・吉賀将夫・福田隆真・佐々木宰. を期待することができる.. 鋳金技法による機能をもたせた作品の制作. 4. 筆者は前々回の報告で, 鋳金技法による金工の作品の制作例として, 技法の工程にもふれながら )そこでは 「技法」の「目的」 「身近にあるものを ブロンズにしてしまう」という課題例を紹介した.6 , 「 か 形を造るのではなく身近にあるもの 明快にするために作品の原 と 特徴」 をできるだけ単純かつ ら借りるあるいは 拾う 又は選ぶことにした. その結果, 紹介したような様々ないわ ばオブジェ が生 ま れ た.. 本稿 では, 鋳金による真銑のロウソク立てとナベ 敷きの作品制作を通して教 材研究を行う. 「真銑によるロウソク立て・ナ ベ敷きの制作」. ●実践報告 1 ( )題 材 に つ い て. 課題. ①花あるいは植物をモチーフにして真鍬による鋳造のロ ウソク立てかナ ベ敷を作る.. ②道具としての実用 的機能を備えること. この実践は入学間もない美術科の1年生の授業として行われた. 筆者は1年生の最初の授業を行う 際, 毎年必ず 「工芸という言葉から思い浮かぶ物」 について質 問してみる. たいていの場合, 陶器, 木彫り, 染め物などの答えがまず返っ てくる. 少し考えた後 にうるし塗り, 皮革工芸などまで思い付くが, あとは出てこない. 工芸に対する学生の認識はこの 程度が現状である. 金工に限らず, 工芸の分野は素材と技法が深く結びついていることもあっ て, 作り方が想像 でき にくい種類のもの程なじみ が薄いということであろう. したがっ て鋳金による実材制作は大学1年生を対象とするには 無理がありそうに思われる. しか し筆者は多少の無理は承知 しながらあえて 「頭で考える前にまず体で実感してみる」 という方法を とることにした. やっ てみて魅力を感ずるとすれば, 知識や基礎的技法の研究は後からでも良いの ではないかというの がこの実践の目論見でもある. ( 2 )素材, 用具 (設備) ・原型用素材……ロウ (手びねり用, 蜜ロウ十樹脂) ・鋳型用素材……再生石膏, 焼石膏, 金あみ ……針金, カッ ターナイフ, 筆, コンロ, 柄杓, ボール, ゴム手袋, 釘 ・型焼成設備……陶芸用窯 (電気) ・制作用具. ・鋳込み用地金…真銑 ・鋳込み用溶解設備, 仕上げ工具その他略 t ( 3席 i作技法について ・原型制作……ロウの手びねり ・鋳型制作……石膏型 ・仕上 げ. … … ヤ ス リ に よ る み が き, 鋳 ぱ な し. ロウ型鋳造のあらましは, 前述した報告を参照していただくことにして略す. ただし今回の実習 ではロウ原型を石膏などの原型からロウに置き換えるのでなく, 直接に手びね りにより, ロウを板状にしたり, ひもにしたり, まるめたりして直接加 工して作る方法にした. 粘 288.
(8) . 工芸教育における素材と教材 (4). 土を使っ た造形は子供の頃から誰 でもやっ たことがある 粘土をロウに持ちかえて造形する作業は ‐ 容易 であり, 楽しいものである. ロウ素材のやわらかさ, 温度 (手のひら) に対する反応などを利 用して自在な形を作ることを主眼に置いた‐ 仕上げは金ヤスリと紙ヤスリによ る手作業の研磨にとどめた. t 4席 ( J作の流れ ①課題の主旨説明 ⑤鋳型作り. ②アイ デアスケッ チ. ⑥鋳型の焼成. ⑦鋳込み. ③ロウ作り. ④ロウによる原型制作 (図27 ) , 28 ⑧型の割り出し ⑨仕上げ ⑱完成(図29 , 30 , 31 , 32 ,. ) 33 , 34. 能力の向上を計るという場合, 一般的には基礎的な段階からの学習の積み重ねが重要である し . かし美術や音楽などの創造力 (あるいは想像力)や直感を大事にする分野における学習にあっ ては , 積み重ねが必ずしも効果を表さない場合もあると 思われる.つまり時としてあきを生むことがある . 特に, 技術上作業工程が多く, 複雑な場合などは, 知識として理解しても全体的な工程の把握が で きず, 興味をそ ぐこともある. 鋳造の技法は, 鋳型づくりの工程 で失敗することが多く, 説明を聞いても解りずらいところも多 い. この様な場合, 「とにかくやっ てみてから考えよう」 という方法は時に有効 である . 今回は7名の参加者の中, 2名の作品が鋳型づくりの工程で不充分なところがあっ たらしく 型 , 割をおこして仕上げ上困難なものがあっ たが (図33 ) それぞれレリーフ彫刻, オブジェ として , 34 形体を生か した. 又技法上の特異点として, 共同作業の工程が多く チームワークも必要になって , くる‐ さらには金属の溶解といっ た普段には できない体験などもある 参加者の多くから 初めて ‐ , の体験にともなう作業上のとま どいや苦労とともに, 鋳込みや割り出しの作業における様々な緊張 感や感動が語られた‐ 工芸の仕 事にふれる入口の課題として, ふさわしいか どうかの問題はさらに検討しなけれ ばなら ないが, 鋳造技法を体験する中 でものづくりのよろこびが少し でも感じられたとすれば成功 であっ た と 考 え る.. この実践には美術科工芸研究室の3, 4年生の多くの協力があっ たことを付記しておく .. 289.
(9) . . 目肝隆真・佐々木宰 加藤直樹・小平征雄・吉す罰寺夫・ネ. 、. . . ,. -湯. 1▲. 図. プ コ っ ‘. 図. , ー 〆 縛 ◆. ゞ . ,“ . ばい . 入 〆 』も、 . ・. プ ツ. 図. ′. . . /ノ ーー 」 ′ f.ー・LI. ノ. ・ ご .ふき 二!r も: -. に 参 戦 藷 -}議 熱. . -- L . 蚕【 げ ; 〜 ... - rト ノ . \. 壷. U. 図. ‘ ー. 」 」. . し 挿. 一. 一輪挿 し. 図5. 記 認い キ註 三≦. ・ もも, た, ・ ーな ・. . ‐ \ ノ r \ r r r ’ L\. 290. 灰皿 図3.
(10) . . 工芸教育における素材と教材 (4). ー. - \ /. ー-・ i --. ′ ラ . - /三 一零「テ. . 図8 図7. ′ ′ ; ノ; ・」. . . オ ブジェ. 瓶. ±“ ¥ ー r卵 ≦ミ美 i キト・ デ 喜. . . 成形. . . . ひもづく り. . , ・ .. キ ;露座 ー. ′ ン ‐ . rL q ‐ , ′ ・ , ▼ ン. 扇ご 『. 図9. . 図10 成形. ・. b ヤ 十 一 -- 惑キ ー“ ▲“ +.も ト ー ‐ .. ひもつやく り. --一噛一 一- - -=1 -- - t LW監ぶ た , =L n』. , . “-》. 【. . だな. ; そ 瀬 ぎ 襲 湯 爵 図11 成形. ひもづく り. 図12 成形. ひもづく り. 291.
(11) . . . 加藤直樹・小平征雄・吉賀将夫・福田隆真・佐々木宰 」 . 「 r」 . l ′ I {デー す も、 E 1 ;; \ q - ● iも . 、r ;しき- 亀 I きき ’ ,当ず r』{, , E L L ふ も1 鈍器…詳 ゞ L 」 , . 、メー L- - -- ・ . 、 ・ . . 、デ ブ・ じ -. ー ふit-? 艦デ. 幸 ー. .々. . 図14 素 焼きの窯 出し. 図13 素焼きの窯出し. . /≦ 聾 ,彰 一/ 唖. 十二. ′ . . \\ ,精細r ) . . . . - . ー. 畷溝 噂!1十 」. L. れ . -一 メド ・メゴ;』-』 三リ. - ー. 図16 施粕. 図15 施粕. 轟た ヤー ナ -気. . 1 . f r - , ; 7 ,. ー. . 7 受講生作品 図1. 292. メ 峰 ′.. -. . . . . ョー. . き -≦ 三 E - .焼 を- 一、 . r 窒g i t “窒 ムー ”. ‘ . . 、 r. ミ. ー ー ー- -こす ト. キ. . 構. 一三 講 評臨 まゞ 、. . 、 : ! , ご :. 8 受講生作品 図1. ▼. . 付記 三一. . . -ー J ・ . .
(12) . . 工芸教育における素材と教材 (4). -,と. . ‐ ・ ・ ●. 三 三. . . 「裸の椅子 」 図22 . 図21 照明器具 「ラ ン プレー ン」 図. 「. 翌. 嘘二. , ハ . 夢 r 舗 . 叢非韮山 1. . . .- - .., . ネ. ビ ヤ . 4 2. 図. 叫図. 「 十. 「傘 の傘立て 」. 23. 図2 0 受講生作品 図19 受講生作品 =- 図 仏 ‘. . ・ プ . ≦ 』4 r 、 . ^ー 一 ‐・ . 郷.
(13) . . 加藤直樹・小平征雄・吉賀将夫・福田隆真・佐々木宰. . ,. . . ミき溺愛ニリ. 「キリンの三輪車」. . ノー. 旧 ′ .. . . 図25. キ さも ダニす ぎー. . \ r 、r イて \ ノ キノ , 「. 図26 照明器具 「カ タツムリ」. 図28 ロ ウ原形づく り. 図27 ロウ原形 づく り. 1. せ. ‐. ‐濯ぎ; - ; \ 三rも.ご靴下罰弄り, 「 r 一軒 な ・ , ・デイき鱒直磨 ナ . ±三 一 滅 尊 き宝. ‐ 鯖雲 ョ饗iEキ 謹諦経≧も一 翼; ‘ を愛さ÷キ . ゞ.ラ ー▼ rlも汁二 とき : 電離なー蒔きもぎミ - 二 キキごごご≧一翼挙り 、恐声冊裏 - ・. 二 ・. ′ 1. ′ { 櫓r 州 . ・、. . ・ “二. “ ‐ 1 . ・ 、▼ ー 「. 図29 ロ ウソク立て. 294. ・. 、. .、. 図30 ロウソク立て. ・. 「一■.
(14) . 工芸教育における素材と教材 (4). \. ; ー誓詞;;; ー L ′ r- r - - 、-ご 『 「 一喜. … - ” .-- - - -. ‐.. ・ ー ー 4 - ・ = ,主 ,! 、 - - . ‘; -. 1. 十 一. . 図32 ナ ベ 敷き. 図31 ロ ウソク立て. ‐ニ 呈さ ≧ ;; ÷→ 墓誌ニメ.一ニ .. . . ぎ 平キ ー 」 三 ’. 1 .′. リニー ー. . 響瞳勝 三 離籍 誓. ,. 図33 レリーフ. 図34 オ ブジェ. )王. ) 小平征雄 福田隆真 佐々木宰 1. 「工芸教育における素材と教材( 1 ) 」. 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第42巻. 第 1 号 1991. 加藤直樹 小平征雄 吉賀将夫 福田隆真 佐々木宰 「工芸教育における素材と教材( 2 ) 」北海道教育大学紀要(第 1部C) 第42巻第2号 19 9 2 加藤直樹 小平征雄 福田隆真 佐々木宰 「工芸教育における素材と教材( 3 ) 」 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第43巻第1号 19 9 2 2 ) ここでは平成4年度山口大学教育学部公開講座 「萩焼と陶芸制作」 の実施をもとに述べる この公開講座は一般 . 社会人を対象とし, 1 99 2年7月に5日間の日程で, 萩焼の制作と造形理論の講義を行った. 対象者は2 9才~7 3才 までの広範囲に渡り, 39名が参加した. 担当講師は吉賀将夫 (陶芸) , 川口政宏 (山口大学教授 彫刻) , 福田隆真 295.
(15) . 加藤直樹・小平征雄・吉賀将夫・福田隆真・佐々木宰 (美術教育) の3名が当たった. ) 達成感と成就感の区別は明確ではないが, 美術教育において想定できることは, 作品制作での表層的な出来上が 3 りに到達する場合が達成感であり, その延長上にあって, 充実感を伴う成功感を含んだものが成就感であると考え ら れる.. ) 柳宗悦 工芸文化 新装・柳宗悦選集第3巻 春秋社 197 2 P IS 4 4巻第3号 日本 ) 福田隆真 佐々木宰 「高等学校工芸の教材の構造化についての考察」 日本教科教育学会誌第1 5 9 90 を参照 教科教育学会 1 2 ) ) 加藤直樹 小平征雄 吉賀将夫 福田隆真 佐々木宰 「工芸教育における素材と教材( 6 」 北海道教育大学紀要 99 2 (第工部C) 第42巻第2号 1. 参考文献 97 2 柳宗悦 工芸への道 新装・柳宗悦選集第1巻 春秋社 1 前田泰次 現代の工芸 岩波: 書店 19 7 5 91 真鍋一男 宮脇理 監修 「造形教育事典」 建畠社 19 石原英雄 監修 橋本泰幸 福田隆真編集 「美術・工芸教育の理論と実践-新しい教師のために-」. 福村出版. 1991. 付. 記. 本稿の作成に当たり, 1は小平, 2は吉賀, 福田, 3は佐々木, 4は加藤が執筆し, 全体を加藤が編集した. (加藤直樹:本学助教授釧路分校 小平征雄:本学助教授函館分校 吉賀将夫:山口大学教授教育学部 福田隆真 山口大学助教授教育学部 佐々木宰:北海道音威子府高等学校教諭). 296.
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