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アトピー性皮膚炎児の学校生活における現状と課題

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Academic year: 2021

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(1)Title. アトピー性皮膚炎児の学校生活における現状と課題. Author(s). 津村, 直子; 渡辺, 智子; 山田, 玲子. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 60(1): 239-247. Issue Date. 2009-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/1014. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第60巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.60,No.1. 平成21年8月 August,2009. アトピー性皮膚炎児の学校生括における現状と課題. 津村 直子・渡辺 智子*・山田 玲子 北海道教育大学札幌校 医科学・看護学教室 *札幌市立厚別南中学校. Studieson an ActualCondition ofSchooILife inAtopicDermatitisanditsProblem TSUMURANaoko,WATANABETomoko*andYAMADAReiko DepartmentofClinicalScienceandNursing,SapporoCampus,HokkaidoUniversityofEducation. *AtubetuminamiJuniorHighSchool,Sapporo. 概 要 アレルギー疾患の増加に伴い,アトピー性皮膚炎も増加傾向と難治化が認められている。本研究は幼稚園,. 小・中学校,高等学校の養護教諭,大学の看護師を対象としてアトピー性皮膚炎児の学校生括での支障,症 状の誘発・悪化要因,保護者とのかかわり,養護教諭の対応等について面接聞き取り調査を行ったものであ る。 調査結果を校種別にみると,症状の誘発・悪化要因は年齢とともに変化しており校種別に差が見られたが, そ ̄うようかん. 変わらないものは保健室来室時の主訴(掻痺感,出血)と学校生括における支障(集中力の低下)であった。. また,幼稚園・小学校では症状の出現が不安定であるため症状への対処や自己管理を定着させる指導が,中 学校では塾や部活等で自己管理がおろそかになる生徒への指導や心理面への配慮が,大学生では自己管理を 行える年齢であるが,生活環境の変化による症状の悪化がみられるので,日常生活の見直しが必要であるこ とが把握された。さらに,アトピー性皮膚炎児の保護者に対する精神面での援助の必要性も理解された。. 5.7%,アトピー性皮膚炎5.5%,アレルギー性鼻. 【はじめに】. 炎9.2%,アレルギー性結膜炎3.5%,食物アレル. 近年,アレルギー疾患は増加の一途をたどって. ギー2.6%,アナフィラキシー0.4%であり,アレ. おり,その背景には大気汚染,室内汚染などの環. ルギー疾患はまれな疾患ではないことが示されて. 境汚染の悪化,食生活の変化,衣類の変化,スト. いる。. レスの増加などの要因が考えられている1)。文部. 学校においてもアレルギー疾患を抱える子ども. 科学省の調査2)では,2004年6月末時点での児童 生徒のアレルギー疾患の有病率は,気管支喘息. ぜんそく. への対応にあたり,子どもの状況を把握し,的確. な対応を図ることが求められている。文部科学省. 239.

(3) 津村 直子・渡辺 智子・山田 玲子. では,教職員などの学校関係者がアレルギー疾患 について正しい知識をもって児童生徒に対応する. ことができるように1999年にはアトピー性皮膚炎. ぜんそく Q&A3)の出版,2003年には喘息に関するパンフ レット4)を作成している。 アレルギー疾患の1つであるアトピー性皮膚炎 かゆ (atopicdermatitis:以下ADと略す)は痺みを. 【結 果】. 1.学校におけるアレルギー疾患 学校で把握しているアレルギー疾患を表1に示 した。AT)疾患とアレルギー性結膜炎はすべて の対象校でみられた。また,他のアレルギー疾患 を併せ持っているAD児は11人が把握していた。. 伴う特徴的な湿疹がみられる慢性疾患であり,増 加傾向と難治化5)が認められている。2004年の文 部科学省の調査2)ではADの有病率は,小学生 6.3%,中学生4.9%,高校生4.0%である。北海 道のAD有病率6)は小学校6.7%。中学校5.0%, 高等学校6.2%であり,全国平均より高率であっ. 表1 把握しているアレルギー疾患 アレルギー疾患 幼椎園 小学校 中学校 高等学校 人 学 計 アトピー性皮膚炎 2 3 3. 2 2 12. アレルギー性結膜炎 2 3 3 キカンシゼンソク 2 3 3 気管支喘息 アレルギー性鼻炎 ロ 3 3 食物アレルギー. 2 2 12 2. 2 2. 2. た。北海道に多い理由7)として気密性の高い住宅 環境や食生活の変化が増加につながった可能性が 指摘されている。ADは重症になると日常生活 への影響は深刻で,学校でも特別の配慮が必要と. 粉症 ジンマシン 毒麻疹 その他. 2. 3 3. 7. 2. 5. 2. AD児の把握方法を表2に示した。園・学校独. なることがある8)。また,皮膚に症状が現れるこ. 自の調査用紙は日常の対応や宿泊行事・遠足など. とからいじめやからかいの対象となったり,自分. の特別活動時に事前に対策を行うことを目的に,. の容姿について悩んだりするなどの心理面でのサ. 養護教諭が把握したい内容を取り入れて作成され. ポートを必要とする場合もみられ9),学校教育に. たものである。. おいては教育的配慮が必要とされるケースも含ま. れている。. 本研究はAD児の学校生括の実態を把握し, 学校での対応を校種別に比較検討したものであ り,AD児の抱えている課題について考察する ことを目的としている。. 表2 AD児の把握方法 把握方法. 幼椎園. 園・学校独自の調. 小学校. 2 3 3. 園児り巳童生徒・ 学生との関わり. 調査に協力が得られた幼稚園2園,小学校3校,. 中学校3校,高等学校2校の養護教諭10人と,大 学2校の看護師2人に対して,2007年11月に面接. 12. 9. 2. 2 2. 2. 7. 2. 6. 3. 就学時健康診断票. 2. 健康調査票 計. 1人平均項目数. 計. 2 3. 就学時健康調査票. 対象者. 人学. 2 2 3. 健康診断票 保護者の申し出. 高等学校. 2 2 12. 査用紙. 健康カード. 【調査方法】. 中学校. 3. 2. 2. 2. 4. 6 7 2 2 12. 2 3 3 4.0. 5.0. 5.0. 3.0. 3.5. 4.3. 聞き取り調査を行った。調査内容はAD児の学 (複数回答). 校生括での支障,AD症状の誘発・悪化要因, ADに対する友人の理解と態度,保健指導,保護. 校種別にみると,すべての校種で複数の方法で. 者とのかかわり,養護教諭の対応等であり,予め. AD児を把握していた。幼稚園では調査用紙や保. 作成した調査用紙を用いて保健室で聞き取り調査. 護者の申し出に基づいて保護者と面接を行い,対. を行った。1校の調査時間は30分から40分であっ. 応を統一していた。特におやつに配慮が必要な場. た。. 合は入園前に保護者と面接を行っていた。/ト学校. 240.

(4) アトピー性皮膚炎児の学校生括における現状と課題. では就学時健康調査票,就学時健康診断票に目を. 4.学校生活での支障. 通して,給食に関わる内容は入学前に保護者と面. 学校生括での支障について表3に示したが,他. 接して確認を行っていた。健康カードは新一年生. 人にどう見られているかを気にしていることが多. と転入生について特によく見るであった。中学校. いとのことであった。. では宿泊研修・修学旅行の健康調査票からも把握 していた。生徒との関わりからでは,症状の悪化. 表3 学校生括での支障. や眠れないと訴えて保健室に来室した時に詳しく. 枚種. 本人から聞いていた。高等学校では学校独自の調 きおうれき. 査用紙のなかに既往歴を記載する欄があり,その 中で現在も継続している疾患を重点的に把握して. 小学枚. 中学枚 高等学枚. ADの症状悪化で保健管理センターに来室した時. 障. 集中力の低下,遊びに集中できない,集団行動への参. 幼稚園. いた。旅行,宿泊行事の時の健康調査票による把. 握も行っていた。大学では入学時の健康カードや. 支. 加制限 集中力の低下,症状出現の不安,症状への対処,友達 の中傷,給食の制限,肌の露出への抵抗感,勉強の遅 れ,集団行動への参加制限 集中力の低下,症状出現の不安,友人の中傷,給食の. 制限,勉強の遅れ. 集中力の低下. に把握していた。. 人 学 集中力の低下,症状悪化の不安,友人関係,肌の露出 への抵抗感,勉強の遅れ,集団行動への制限. 2.AD症状を誘発・悪化させる要因. 5.ADに対する友人の理解と態度. AD児に対する周囲の友人のADの知識・理解. AD症状を誘発・悪化させる要因は,幼稚園で は「水・砂・泥遊び,石けん,シャンプー,リン. の程度と態度については,幼稚園は「ADの知識. ス,食べ物,ハウスダストダニ」,小学校では「食. はないだろう。AD児の皮膚がかさかさしてい. べ物,ハウスダスト動物,発汗,皮膚の乾燥」,. ることにも気がつかないであろう。もし気がつい. 中学校では「ストレス,睡眠不足,発汗,皮膚の. てもどうしたの,痛いのと反応する程度である。」. 乾燥」であった。高等学校では「家庭の生活レベ. かゆ であった。/ト学校では「痺そうだからアトピーな. ル,気力・体力の落ちる時」であり,治療が十分. んだ」という程度の理解はある。「病名は知って. 行われているか,放置されているかどうかが影響. いる」「学級担任の対応次第ではないか」「病名と. しているということであった。大学では「生活リ. 症状は知っている」「理解の程度には個人差があ. ズムの乱れ,食生活の乱れ(コンビニ弁当やお菓. る」であった。中学校では「特別意識していなく,. 子),飲酒,喫煙,入浴方法の変化(ボディソー. 関心もないだろう」「特別な印象はなく,他の生. プの大量使用,シャワー浴)」等の1人暮らしに. かゆ 徒と変わらずに接していると思う」「病名と痺い. よる生活環境の変化であった。. という症状,食べられないものがある,皮膚がか さかさしているという症状は知っている」「多く. が他の生徒と変わらずに接しているが,いじめの. 3.保健室来室時の主訴 そうようかん. 保健室来室時の主訴はすべての校種で「掻痺感, れいあんぼう. 対象になった生徒がADの場合はADの中傷が. 出血」であり,その対応は冷奄法,ワセリン・歓. あることもある」「ADの友人に対して内心は汚. 膏の塗布,粁創膏の貼付であったが,幼稚園では. い,気持ち悪いという印象があるのではないか」. 汁や泥を拭き取り着替えを行っていた。また,申. であった。高等学校では「ADの友人に対しては,. ばんそうこう. そうようかん. 学校では掻痺感で眠れない場合は仮眠をとらせて. 教師が普通に接するようでなければ許さないとい. いる場合もみられた。大学では皮膚の乾燥に保湿. う態度であり,中傷やいじめはない。」「ADの友. や炎症を抑える薬の塗布,皮膚科の受診を勧める. 人に対しては,人の痛みを理解でき察することが. ケースもみられた。. できる生徒が多いので中傷などはない。」「いろい ろな生徒がおり,避けるといったことはなく,幅. 241.

(5) 津村 直子・渡辺 智子・山田 玲子. 広い人間関係を築ける雰囲気がある。」であった。. であった。中学校では宿泊行事の際に調査用紙に. 大学では「ADはアレルギー疾患で皮膚のトラブ. 記載のあることについて現状の把握を行い,対策. かゆ ルが持続する,痺くて大変ということを知ってい. を相談する。食生活,睡眠等の生活状況や症状に. る。」「目に見える症状なので大変だ,かわいそう. 応じて指導を行う。学級担任とADに関する情. だ,気の毒だと思っているだろう。」であった。. 報交換と共通認識を持つようにしているなどで あった。高等学校では保健室来室時に指導を行っ ているが,来室しない生徒については担任から情. 6.給食等の配慮 AD児への対応について,幼稚園のおやつ,小・. 報を得ていた。学級担任は日々のかかわりのなか. 中学校の給食における配慮については,「配慮して. で情報を得て指導を行っていた。大学では皮膚の. いる」が6人,「配慮していない」が2人であった。. 構造,予防や対処について個々にあわせた指導,. 校種別にみると,幼稚園では配慮しているが2. 治療の必要性とスキンケアの継続について,対症. 人であり,アレルギー疾患を把握する調査用紙で. 療法について指導を行っていた。. 食べさせないでほしい食品を抽出している。おや つを選ぶときは特定の園児のみ特別食を用意する. 8.保護者とのかかわり. のではなく,学級全員が食べられるおやつを選ん. 保護者との連携は,「連携している」が11人で. で保護者に食品を確認してもらっている。/ト学校. あり,連携していないは大学1人であった。. では配慮しているが3人であり,ADの児童と. 保護者との連携・かかわりについては,幼稚園. 保護者に給食の献立と材料表を渡し,保護者の判. では送迎時に毎朝園児の体調を詳しく聞いてお. 断で食べられないものについては本人が残してい. り,保護者の負担やストレスについては,「食事. た。中学校では配慮しているが1人であり,給食. に気をつかわなければならないこと」「遺伝の影. の献立と材料表を渡して食べられないものが多い. 響も考えられるので自分のせいではないかと思っ. ときは弁当を持参させていた。配慮していない2. ている」ことを把握していた。. 小学校では保護者の記入による調査用紙や保護. 人は現在ADによる除去食の必要な生徒はいな. 者からの相談,要望等で保健室来室時にかかわり. いという回答であった。. を持っていた。保護者の負担やストレスについて は,「スキンケアや食事の対応などでストレスが. 7.保健指導. あるだろう」と感じていた。中学校では保護者の. AD児に対する個別の保健指導の実施者を表4. 記入による調査用紙を確認し,必要な場合は連絡. に示した。. をとっている。保護者の負担やストレスについて 表4 保健指導の実施者. は,「重症でなければあまりないであろう」「症状. 実施者 幼稚園 小学枚 中学枚 高等学枚 大学 計 養護教諭 看護師 学級担什. 2. 3. 3. 2. 2. の悪化が見られる時に治療を受けていない時など 10. 2. 3. 医師. はADにもっと関心をもってほしいと思うこと. 2. 7. がある」とのことであった。高等学校では入学時 に重症の場合は保護者と個別面談を行っていた。. 保護者の負担やストレスについては,「長期欠席 保健指導の内容は,幼稚園では皮膚の清潔,. そうようかん. につながるような生徒の保護者はストレスがあ. 掻痺感に対する指導をその都度声かけを行ってい. る」とのことであった。大学では必要に応じて本. た。/ト学校では日常のスキンケアについて声かけ. 人と話し,学生から保護者の意見等を把握してい. を行う,処置時に日常の生活について指導を行う,. た。保護者の負担,ストレスについては「学生が. 機会があれば調子はどうか等の声かけを行うなど. 自分でADのケアができるので世話に関する負. 242.

(6) アトピー性皮膚炎児の学校生括における現状と課題. 担やストレスはないが,ADの学生が引きこも. も多く,それぞれ78.2%,73.9%であった。次い. りなどの心のストレスを感じている場合は,保護. で小学生では「土・泥・ほこり」が48.7%,「プー. 者もストレスを感じるかもしれない。」とのこと. ル」「教室内の乾燥」が33.3%,「教室内の暖房」. であった。連携していない大学は,「学生も大人. が24.4%,「ストレス」が20.5%であった。中学. であり,学生の自主性を尊重し,保護者との連携. 生では「日光」が34.0%,「土・泥・ほこり」が. はとっていない。」という回答であった。. 26.1%,「不規則な生活」「体育着(ジャージ)」 が19.6%,「制服」が17.4%であった。 本調査では「食べ物,ダニ,ほこり,汗,水,. 【考 察】. 砂,泥遊び」などの抗原や物理的な悪化要因は幼 稚園,小学校に多く,中学校,高等学校では少な. 1.AD児について ADは長期経過をとる慢性疾患であり,その背. かった。これは中学生・高校生の発達段階に達す. 景にはアトピー素因の存在があり,すでに胎生期. ると自己のAD症状の誘発,悪化要因が理解で. に母親をとおして感作され,出生後は食物抗原や. き,自らそれらを回避して生活できるためと考え. 吸入抗原侵入により,アトピー性皮膚炎→気管. られる。また,幼稚園,小学校ではみられなかっ. 支喘息→アレルギー性鼻炎と次々とアレルギー. た「ストレス,睡眠不足」が中学校,高等学校で. 疾患が発生する。いわゆるアレルギーマーチ10). はみられるが,これは思春期であること,テスト. とよばれる経過をたどると言われていることか. や受験がストレスになっていること,塾や部活動. ら,AD児は他のアレルギー疾患を併せ持つこ. により多忙化してくることなどが原因と考えら. ぜんそく. とが多いと予想される。本調査では11人がAD ぜんモーく. れ,これらがAD症状を誘発・悪化させる要因. 児の併発を把握しており,疾患名は「気管支喘息,. になっていることが推察される。さらに,中学校. アレルギー性結膜炎,アレルギー性鼻炎,食物ア. から高等学校,大学と発達段階が進むにつれて「生. レルギー」などであり,AD児は皮膚の症状だ. 活のリズムの乱れ」があるという回答も得られ,. けでなく,呼吸器の症状,目・鼻の症状など複数. 不規則な生活がADの悪化要因として大きな割. の身体的症状が出現していることが推測される。. 合を占めていることが理解された。大学生は生活. また,食物アレルギーは食物の除去によってAD. リズムの乱れをはじめ,居住地の変化,食生活の. の湿疹病変が改善すること,経口負荷試験によっ. 乱れ,飲酒・喫煙習慣,ADの自己管理不十分,. て悪化することから,食物アレルギーとADの. 部屋の不衛生など,ADの悪化要因が多様化し. 関連が指摘されている11)。食物によるアレルギー. ていることが把握された。. 症状は皮膚・消化管・呼吸器のあらゆる場所でお. 大西ら14)の中学生を対象としたアンケート調. こるので,ADのすべてを食物アレルギーで解. 査では,アレルギー疾患の悪化要因として環境. 決することはできないが,少なくとも悪化要因の. 63.8%,ストレス41.7%,食事27.5%であり,環境,. ひとつとして考慮しておく11)ことが大切である。. 食事という外的要因とストレスという内的要因が アレルギー疾患の悪化要因としてあげられている。. 2.ADの悪化要因について. ADの明らかな抗原が判明している場合はそれ. 学校にはほこりやダニなどの悪化因子が多数存在. しており,必ずしも良好な環境ではない15)。また,. を回避することは治療上必要である12)。抗原の. 悪化要因として寒冷,温熱,乾燥,多湿があり,. 回避の対策を行うためにも抗原の把握は重要であ. 冬期には寒冷,乾燥,夏期には高温,多湿,紫外. る。笹鳴ら13)の調査ではADの小・中学生の. 線が問題となる16)。特に発汗は夏期における重. 89.2%が「学校生括の中にADの悪化要因があ. 要な悪化因子の1つであり,発汗や体温の上昇が. る」と報告しており,小・中学生とも「汗」が最. かゆ あると痺みが増強するので,学校では症状を悪化 243.

(7) 津村 直子・渡辺 智子・山田 玲子. させないような環境の設定9)も重要である。抗原. ておき,必要時に患部に当てて使うことは有用22). を除去した清潔な環境を碇供することはアレル. である。また,冷奄法を行いながらAD児の心. ギー疾患の児童生徒に対する基本的な配慮であ. かゆ 理状態を観察し,痺みの要因について本人に洞察. り,エアコンや空気清浄器,加湿器の設置などに. させることも必要である。. れいあんぼう. よる清潔な環境作りも必要である。 4.学校生活での支障について 集中力の低下はすべての校種に見られるが,山. 3.保健室来室時の主訴について. そうようそうは ADは掻痺が著しく,掻破による皮疹の憎悪が. そうようそうは さらに掻痺を増強させ,掻破へと悪循環をきたす17). 本ら23)は岸みをおこす刺激には物理的・化学. かゆ 的・心理的刺激などがあり,痺みが起こることに. そうようかん. 疾患である。また,掻痺感をがまんすることは緊 張を伴い,疲労や体力の消耗につながる。掻痺感. よりいらいら感・不安感・集中力の低下・作業能 そうようかん. のために十分な睡眠がとれない状況では体力の消. そうは 力の低下・不眠・食欲不振による栄養不良・掻破 ずいはん. による二次感染などの随伴症状を引き起こすと述. 耗もさらに大きい18)。特に夕方から夜間睡眠時. べている。赤坂ら24)も岸みのため落ち着きがな. そうよう に掻痺がひどくなり,睡眠障害を引き起こすこと. くなることを指摘しており,集中力の低下はAD. もまれではない19)。睡眠は日常生活で消費され たエネルギーを補給し,さらに明日への心身の活. かゆ の症状である痺みによるいらいら感,不眠による そうようかんそうは ものと推察されるので,掻痺感を軽減させ,掻破. 動エネルギーを蓄積するという意味をもち,健康. を防止し,できるだけ早期に症状を軽減させるこ. を維持するうえで欠くことのできないものであ. とが集中力の低下などの根本的な解決につながる. る。特に小児期は睡眠時間も成人に比べて長く,. と考える。. 睡眠中に成長ホルモンが分泌される。睡眠不足は. また,友人の中傷は小学校,中学校にみられ, らくせつ. 成長・発達に影響を及ぼすと同時に,心身の疲労,. 皮膚の乾燥や落屑などが要因と思われる。AD. 抵抗力の低下から,症状の悪化と回復の遅延を引. は皮膚に症状が現れる疾患であることからいじめ. そうようかん き起こすことになる20)。本調査では掻痺感で眠. やからかいの対象となる場合もある。また,学童. れない時は保健室で仮眠をとらせている場合もみ. 期は学校生括を基盤にした友人関係であり,性的. られ,睡眠に対する配慮も必要であることが理解. 成熟も進むため自己の容姿に関心をもち,他人の. された。. 目を気にする時期であり,劣等感,自己否定につ. 岩田12) かゆ はADの一大特徴である痺みは何か物. ながる20)場合も考えられ,身体的な症状だけで. 事に集中しているときにはなく,逆にほっとした. なく,精神面の援助も重要になってくる。実際に. 時や自分の欲求が通らずいらいらした時に顕著に. は中傷的発言・態度がなくてもADの児童・生徒. 出現すると述べているが,本調査でも幼稚園では. は精神的負担を感じているということを担任,養. かゆ 「何かに夢中になっている時には痺いことを忘れ. ていることが多い」という回答が得られている。 そうよう. 護教諭は受け止めて対応することが必要である。 症状出現への不安は小学校,中学校にみられ,. 掻痺はいらいらした時,不安な時,困った時,寂. 学校生括において症状の出現,悪化した時に養護. しい時など精神的な変因21)も大きく影響してい. 教諭は対処してくれる,安心感を与えてくれる存. るので,物理的な要因だけでなく心理的なストレ. 在であることが大切である。また,AD児は学. スの把握も重要である。. 校生括での支障や不安,精神的ストレスなどを養. かゆ 痺みに対しては体をさする,軽くかいてやる,. 護教諭や学級担任に訴えるとは限らないので,養. 気をそらせる,冷やす等が有効である19)といわ. 護教諭はAD児が様々な支障を感じて学校生括. れており,本調査でも冷奄法が行われていた。ぬ. を送っていることを理解し,声かけ,処置等にあ. れタオル,保冷剤などを保健室の冷蔵庫に保管し. たることも必要である。. れいあんぼう. 244.

(8) アトピー性皮膚炎児の学校生括における現状と課題. ADは適切に対応すれば大部分の症例は小学校. いになるので,仲間はずれにならないような配慮. 卒業までに自然治癒するといわれているが,一方. が必要であり,コピー料理を用いた代替食26)の. では思春期から成人期にかけて難治性成人型AD. 利用が望ましい。札幌市では「学校給食における. の増加25)が指摘されている。本調査の大学生の. 食物アレルギー対応の手引き」27)を2008年8月に. AT)には難治性のものも含まれていると考えら. 作成し,除去食,代替食の献立が紹介されている. れ,症状悪化へ強い不安を抱えていると推測され. ので,今後AD児の学校給食に広まることが期. るので,継続した精神面での支援が大切である。. 待される。しかし,札幌市教育委員会の調査28)29) では,食物アレルギーのある児童・生徒は1991年. 5.ADに対する友人の理解と態度について 本調査から園児はADについて理解できる発. では小・中学生とも2.2%であったが,2007年で は小学校6.9%,中学校7.9%と3倍強に増えてお. 達段階に達していないが,小学校,中学校,高等. り,原因となる食物の種類が多くなり,代替メ. かゆ 学校,大学ではADという病名と痺い,皮膚が. ニューも複雑化しているため,栄養士,調理師な. 荒れる,食べられないものがあるなどの主な症状. どの人手不足30)により,個別のメニューの対応. についての知識,理解はあるが,その程度には個. には時間がかかると思われる。. 人差があることが把握された。また,AD児に. 宇理須ら31)は食物が関与したADであれば原. 対する友人の態度は学級担任の影響が大きく,ク. 因食物の除去は必要な治療となるが,患者にとっ. ラスの児童・生徒に疾患・症状についてきちんと. て除去食は種々の負担があり,必要最小限の除去. 説明しているとAD児が中傷やいじめの対象に. とすべきである。幼少期に食物アレルギーで食べ. ならないことが理解された。しかし,本調査にお. られなかったものがすでに寛解していることなど. いてAD児は学校生括において「友人の中傷的. が考えられるので,専門医によって除去すべき食. 発言・態度」「肌の露出」「友人関係」などに支障. 物の診断・試験を受ける必要があると述べてい. を感じているという結果が得られているので,周. る。また,石上20)らは,食物アレルギーがAD. 囲がADを特別意識していない場合でも,AD児. の原因となる場合はアレルゲン除去をすることに. は友人関係にストレスを抱えており,実際に支障. なるが,食事制限は子どもの成長・発達を考えた. を感じているということを担任や養護教諭は受け. ものでなければ効果は期待できない。どの食品が. 止めて心理的ストレスの軽減を図ることが必要で. アレルゲンとなっているかをきちんと検索し,保. ある。特に学級担任の対応が重要であり,養護教. 護者と子どもの除去食に対する正しい知識と理解. 諭と連携して共通理解を図ることが必要と考える。. を得ることが必要であると述べている。食物アレ. ルギーの原因32)は年齢によって異なり,0∼3 6.給食等の配慮について. 学校生括での支障に給食の制限があげられてい. 歳のトップは「鶏卵」「乳製品」「/ト麦」であるが, 7∼19歳では「甲殻類」「鶏卵」「そば」と様変わ. ることから,給食時間がAD児にとってストレ. りしており,乳幼児期に発症した子どもの8∼9. スに感じている場合も推測されるので,給食時の. 割は原因食物を食べない生活を続けることで6歳. 配慮については,他の児童・生徒が不審に思った. ころまでに治るといわれている。乳幼児の食物ア. り仲間はずれにならないような関係作りが必要で. レルギー33)は成長とともに治ることも少なくな. あり,学級担任の役割は重要である。養護教諭は. いので,定期的に正確に原因食材と症状を見極め. 栄養教諭・学級担任と連携してADの児童・生. る必要がある。. 徒にとって最もよい学校給食の方法を考えなけれ ばならない。. AD児に対する特別食はAD児にとって特別扱. これらのことから食物がAD症状の誘発・悪化 要因となっているADの児童・生徒は,専門医に よって除去すべき食物の診断・試験を定期的に受. 245.

(9) 津村 直子・渡辺 智子・山田 玲子. けることが必要であり,その必要性を養護教諭が 判断した場合は保護者に勧めることも大切である。. な保健指導が必要である。 中学校,高等学校ではADの症状に関するこ とよりも,精神面・心理面のケアについての連携. 7.保健指導について AT)はセルフケアが最も重要な疾患15)である. が多い傾向がみられた。これは中学生の発達段階 になるとAT)の症状への対処は本人が行えるよ. ので,学童期のAD児が生活の大半を過ごして. うになっているということ,思春期に入り,より. いる学校はAD児を支援する環境整備が必要で. 人の目を気にするようになっているということが. あり,養護教諭だけでなく学級担任をはじめとす. 影響していると推察される。片岡10)は,ADは. る教職員と協力して取り組むことが必要である。. 生活環境,社会環境および精神状態により重症度. 本調査では,個別の保健指導の実施者は,幼稚園,. が左右されると述べており,思春期には情緒的に. 小学校では養護教諭だけでなく学級担任も行って. 不安定であるのでADの症状が悪化されやすいと. おり,疾患の理解や日常生活において自己管理が. 考えられる。また,思春期のストレスによりAD. できるように学級担任も支援する働きかけは重要. の悪化を招き,さらに二次的なストレスを増大さ. であることが理解された。/ト児の場合は自分自身. せるという悪循環を断つように働きかけることが. そうよう で意識的に掻痺動作を抑制したり,コントロール. 重要である。そのためには友人や教師が疾患を正. することが困難であるため,湿疹の悪化と皮膚の. しく理解し,協力的な支援を行うことはAD児の. そうは 掻破を繰り返し,皮膚の状態の改善が伴わないこ. 治療への積極的な姿勢につながる9)と思われる。. とがある34)。学級でAD児と一緒に過ごしてい. る時間の長い学級担任がAD児を観察し,必要 に応じてセルフケア能力を高める保健指導を行う. 8.保護者とのかかわりについて. AD児の日常生活は,自宅での治療,皮疹の観. ことは効果的である。中学校,高等学校ではセル. 察,衣類,食事,環境など,母親の協力が必要で. フケア能力が高くなってくるので,生徒の自主性. ある。本調査でも園児のADは保護者による管理. を尊重し,学級担任のかかわりは少ないと思われ. や対応が中心となると回答があったことから,養. る。また,学校生括の支障に友人の中傷的態度を. 護教諭は疾患の理解と協力・支援だけではなく,. あげていることから,特別視されたくない,AD. 保護者のストレスを受容することも大切である。. を隠したいという心理に配慮していることも考え. 保護者の負担,ストレスについては,ADは. られる。さらに,幼稚園,小学校は担任制,中学. 慢性に経過し,毎日の生活行動に何らかの制限や. 校,高等学校は教科制という教育システムも影響. 努力を必要とすることが多く,それが長期に及ぶ. していると思われる。. ため,継続することは並大抵でない18)ことを理. 保健指導の内容は,疾病の理解,皮膚の構造な. 解し,母親の気持ちに寄り添いながら家族の大変. どの知識やスキンケアの必要性を発達段階にあわ. さや努力を認めて受け入れ,必要に応じて協力・. せて指導していくことが大切である。AD児の. 支援していく姿勢が大切である。. 皮膚11)は外界の刺激に敏感であり,皮膚のバリ ア機能の異常,すなわち,保湿作用をもつ角層内 のセラミドの異常が指摘されており,保湿を中心. とした日常のスキンケアが不可欠である。スキン. 【おわりに】. AD児の学校生括に関する先行研究は,ADの. ケアをはじめとする日常の生活管理は長期的に継. 児童・生徒を対象にした研究が多いが,本調査は. 続しなければならないので,AD児は自分の体. 学校においてAD児とかかわりの多い養護教. は自分で管理するという疾患に対する積極的な姿. 諭・看護師を対象に,AD児の学校生括につい. 勢を持つことが大切であり,継続して行えるよう. て調査を行ったものである。. 246.

(10) アトピー性皮膚炎児の学校生括における現状と課題. その結果,年齢とともに変化しているものは AD症状の誘発・悪化要因であり,校種により差 がみられたが,変わらないものは保健室来室時の そうようかん. 主訴(掻痺感,出血)と学校生括における支障(集 中力の低下)であった。. 校種別にみると,幼稚園・小学校では症状の出 現が不安定であるため症状への対処や自己管理を 定着させる指導が行われていた。また,学級担任. の協力が不可欠であることが理解された。中学校 の思春期では,塾や部活等で多忙になり自己管理 がおろそかになる生徒への指導や,友人の中傷に 傷つく生徒の心理面への配慮が重要であり,大学 生は自己管理を行える発達段階であるが,生活環 境の変化による症状の悪化がみられるので,日常 生活の見直しが必要であることが理解された。さ らに,AD児の保護者に対する精神面での援助 の必要性も理解された。. 11)岩崎栄作:アトピー性皮膚炎とは;病因をめぐって,. 小児看護,20(8),986−991,1997 12)岩田力:アトピー性皮膚炎の治療;治療の取り組み. 方,小児看護,20(8),1000−1003,1997 13)笹嶋由美ほか:学校生括がアトピー性皮膚炎の児童・ 生徒におよぼす影響,小児保健研究,58(4),450−457,1999 14)大西晴子ほか:中学生の睡眠とアレルギー疾患との 関連について,小児保健研究,61(1),59−65,2002 15)山本八千代ほか:アトピー性皮膚炎息児の学校生括 に関する調査,小児保健研究,66(4),586−591,2007 16)十字文子:日常生活に対する援助;清潔・スキンケ. ア,小児看護,20(8),1031−1036,1997 17)岩佐繁子ほか:アトピー性皮膚炎息児の掻痔への対 応と家族指導,小児看護,16(6),673−677,1993 18)大矢智子:アトピー性皮膚炎息児のアセスメントと. 看護計画,小児看護,16(6),704−707,1993 19)遠藤薫,青木俊之:アトピー性皮膚炎の治療と予後,. 小児看護,16(6),694698,1993 20)石上史江ほか:息児・家族に対する長期のフォロー. アップ,小児看護,20(8),1037−1041,1997 21)岡部俊一:アレルギーと心理的ストレス,小児看護, 20(8),1047−1050,1997 22)文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課:学. ノ稿を終えるにあたり,お忙しい中調査にご協力. を賜りました養護教諭ならびに看護師の方々に深 く感謝申し上げます。. 校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン, 49,日本学校保健会,2008 23)山本かおりほか:乳児期の重症アトピー性皮膚炎息. 児の看護,小児看護,20(8),971−977,1997 24)赤坂徹ほか:アレルギー疾患息児の心理と看護,小 【引用文献】. 児看護,18(8),949−955,1995 25)阿南貞雄:アトピー性皮膚炎の治療と看護,小児看. 1)鳥居新平,石黒彩子:アレルギー疾患増加の背景, 小児保健研究,18(6),674−677,1995. 2)アレルギー疾患に関する調査研究委員会:アレル ギー疾患に関する調査研究報告書,3,文部科学省,2007 3)文部科学省監修:学校生括におけるアトピー性皮膚. 炎Q&A,日本学校保健会,1999 4)西牟田俊之監修:ぜん息をもつ児童生徒の健康管理 マニュアル,環境保全再生機構,2003 5)高嶋宏哉:学童期のアトピー性皮膚炎,学校保健の. ひろば,21号,70−71,2001. 護,18(7),835−840,1995 26)北海道新聞:アレルギーの子の給食,2004.2.2. 27)札幌市教育委員会:学校給食における食物アレル ギー対応の手引き,札幌市教育委員会,2008 28)北海道新聞:増える食物アレルギー 上,2008.7.30 29)北海道新聞:増える食物アレルギー 中,2008.7.31 30)北海道新聞:道内の学校給食 アレルギー対策人手 がカギ,2007.4.2 31)宇理須厚雄ほか:アトピー性皮膚炎の治療;食物抗. 原除去療法,小児看護,20(8),1004−1008,1997. 6)北海道新聞:食物アレルギー全国1位,2007.4.12. 32)朝日新聞:子どもの食物アレルギー④,2009.2.24. 7)北海道新聞:アトピー10年で倍増,2002.11.24. 33)朝日新聞:広がる「食物負荷試験」,2008.2.24. 8)大矢幸弘:アトピー性皮膚炎,健康教室,57(14),14−17,. 34)佐藤朋子,山元恵子:アトピー性皮膚炎息児の日常生. 2006. 活指導と家族への対応,小児看護,1疎6),661−665,1993. 9)深澤美章恵,山本昌邦:通常の学級に在籍するアト ピー性皮膚炎の児童・生徒への教育的配慮について,. 育療,NO.35,20−24,2006 10)片岡祐子:アレルギーマーチの経過をたどる2歳児. の看護,小児看護,16(6),666−672,1993. (津村 直子 札幌校教授) (渡辺 智子 札幌巾立厚別南中学枚養護教諭) (山田 玲子 札幌校講師). 247.

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参照

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