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『十訓抄』『寝覚記』共通話における評語一覧

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Academic year: 2021

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(1)Title. 『十訓抄』『寝覚記』共通話における評語一覧. Author(s). 菅原, 利晃. Citation. 国語論集, 18: 14-46. Issue Date. 2021-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/11649. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 『十訓抄』『寝覚記』共通話における評語一覧. 31. 36. 利. 晃. ( 14 ). 原. 4 「評語」等には、※を付して、菅原が、評語の分類や教訓などを しるした。およそ次の3分類である。 ① 教訓 教え・戒めを説くもの。説示。 ② 感想 編者の単純な感想・批評。 ③ 補足 説明(原因説明・人物説明など)・出典・後日譚・そ の他①②にあてはまらないもの。. 18. −14−. 菅 凡 例 1 『十訓抄』の本文は、岩波文庫を用いた(底本:『十訓抄』第一類 の東京大学国文学研 究室蔵三巻本。ただし、第七と第十後半は 『 十 訓 抄 』第 三 類の橋 本 進 吉 蔵 本 )。 『 寝 覚 記 』の本 文 は、原 田 行 造『 中 世 説 話 文 学 の研 究 』桜 楓 社 刊 (底 本 :石 川 県 立 図 書 館 蔵 本)を用いた。傍書・返り点・読み仮名などは略。. 5 「主な他書の評語」には、同話・類話における評語を示した。. 6 引用書は以下の通り。 『今鏡』講談社学術文庫 『悦目抄』日本歌学大系四、風間書房 『栄華物語』新編日本古典文学全集 、小学館 『奥義抄』日本歌学大系一、風間書房 『源平盛衰記』有朋堂文庫 『江談抄』群書類従 『語園』室町ごころ 『古今著聞集』新潮日本古典集成、新潮社 『古事談』新訂増補国史大系 『五常内義抄』古典文庫(内閣文庫蔵本) 『今昔物語集』新日本古典文学大系 、岩波書店. 2 「 説 話 部 」は、 『 十 訓 抄 』の本 文 からとった。いわゆる 「 説 話 の素 体 」として話 ・事 実・事 件が終 止 しているところをとった。( )内 の 「標題」は、岩波文庫・十訓抄詳解を参考とした。 3 「 評 語 」は、話 ・事 実 ・事 件 と分 離 出 来 得 るもの・省 略 可 能 のも ので、全 文 示 した。 『 十 訓 抄 』の第 一 類 ~ 第 四 類 までで主 な校 異 がある場合は 〈 〉内に示した。(前)は 「説話部」の前にあるもの、 (後 )は 「 説 話 部 」の後 にあるもので、それぞれ 「 説 話 部 」と連 続 し ている。また、説話部のみで評語がない場合は(ナシ)と記した。 第 一 類 岩波 文 庫 第二類 『十訓抄本文と索引』笠間書院刊 第三類 『彰考館蔵十訓抄第三類本』和泉書院刊 第四類 『十訓抄詳解』明治書院刊. 27.

(3) 『三国伝記』中世の文学、三弥井書店 『沙石集』日本古典文学大系 、岩波書店 『正徹物語』岩波文庫「中世歌論集」 『続日本紀』新日本古典文学大系 、岩波書店 『井蛙抄』日本歌学大系五、風間書店 『撰集抄』岩波文庫 『続古事談』群書類従 『体源抄』日本古典全集 『東斎随筆』中世の文学、三弥井書店 『俊頼髄脳』新編日本古典文学全集 、小学館 13. 87. 『十訓抄 』 の評語 (後) これまた賢皇聖主の、あまね き御 恵 を黎 元 黔 首 までにをよぼ したまふこと、昔今かはらざ るゆ へなり。… … (この間 、金 言 ・和 歌 あり。)… … みだりがはしくあな づりかろしむべからず。 ※ 教 訓 (「 人 民 」にあ われみをも ち軽蔑するな). 85. 番 説 話 部 1 延 喜 のみかどは、冬 夜 御 衣 をぬぎて、 「 四 海 の民 をおも ひや るに、我ひとりあたゝか なるべから ず 。」とこそ仰 ら れけれ。 (延喜帝の御仁政) (第 一「 可 定 心 操 振 舞 一事 レ 二 一). 『長谷寺験記』続群書類従 下 『日吉山王利生記』続群書類従2下 『百人一首一夕話』岩波文庫 『袋草紙』袋草紙注釈、塙書房 『宝物集』新日本古典文学大系 、岩波書店 『発心集』角川文庫(『異本発心集』神宮文庫本). 40. 7 引 用 に際 しては、仮 名 遣 いはそのまま引 用 し、漢 字 の旧 字 体 ・ 異体字・俗字などは、新字体になおした。また、振り仮名や傍線 等は略した。. ( 15 ). 27. 『寝覚記』の評語 主な他書の評語 (前)よろづ思ひやりありて、人の (後 )此 事 或 説 ニ延 喜 仰 云 々。如 何 。 な げ き を も く るしみ を も しるべ (『 古 事 談 』第 一 王 道 后 宮 (一 条 )) し。 ※補足 (後 )人 として物 のあ はれを しら (ナシ) ざるは、木石のごとし。 (『続古事談』 第一王道) (「慈悲ふかかるべき事」) (前 )我 朝 にも 、政 す なほにして、 ※教訓(「人」にあわれみをもて) 民[ヲ]あはれみ給ふ御門おほく聞 へ給フめり。仁徳天皇は、高御座に のぼりて、 「 民 のかまどはにぎはひ にけり」といはひ、 (後 )一 条 の天 皇 と申 は、つゐに往 生の素懐をとげ、人にあき給へりし 君なり。 (『宝物集』 六) ※ 教 訓 (往 生 を遂 げるために政 直. −15−. 27.

(4) なれ) 2 我朝には、山蔭中納言筑紫 (後 )此 事 、如 夢 僧 都 の物 がたり (後)ちくるひの、かやうにあはれ (後 )帥 任 畢 テ京 ニ返 リ上 テ、此 ノ へくだりたまふに、みちに鵜 とて、ひと毎 にしりたれば、こま みをむくふ事かずしらず。人りん 児 ヲバ法 師 ニ成 シツ。名 ヲバ如 無ト 飼 がころさ むとしける亀 を かにしるさず。 ましてしるしあえざ るものなり。 付タリ。既ニ失タリシ子ナレバ、 「無 かひてはなちてけり。… …は ※記述に対する補足説明 (「をんをしるべき事」) キガ如シ」ト付タル也ケリ。山階寺 なちつる亀 、児 を甲 の上 にの ※前説話(四)に 「禽虫のたぐひ恩 ※記述に対する補足説明 ノ僧トシテ、後ニハ宇多ノ院ニ仕テ、 せて、船 にちかづく。とり上 を知ためしこれおほし」とあり。こ ※恩をしるべき例 僧 都 マデ 成 リ上 テゾ有 ケル。祖 ノ て見るに恙なし。 の説話の前に、漢武帝と鯉(四)、 ※教訓( 哀れを報いよ) 中 納 言 失 ニケレバ、継 母 子 無 クシ (山蔭中納言の亀) 隋 侯 と 蛇 (四 )、楊 宝 と 黄 雀 テ、此ノ継子ノ僧都ニゾ養テ失ニケ 心操振舞 事 四 )、孔 瑜 と白 亀 (四 )、また後 ル。事ニ触レテ何ニ恥カシク思ヒ出シ (第一「可 定 レ 二 一 」( 五) に、余 五 太 夫 と蜂 (六 )、京 極 太 ケム。 「 彼 ノ亀 、恩ヲ報ズルニシモ非 政 大 臣 宗 輔 と蜂 (六 )、老 法 師 と ズ。人ノ命ヲ助ケ、夢見セナドシケ 天 狗 (七 )、優 婆 崛 多 と 天 魔 ムハ糸 只 者 ニハ非 ズ。仏 菩 薩 ノ化 身 ( 八) 、と人間以外のものの報恩説 ナドニテ有 ケルニヤ」トゾ思 ユル。此 話が連続す る。最後は(八)で 「人 ノ山 蔭 ノ中 納 言 ハ摂 津 ノ国 ニ捴 持 倫のためしはうちまかせたる習な 寺 ト云 フ寺 造 タル人 也 トナム語 リ れば、敢てしるすべからず。」とし 伝ヘタルトヤ。 めくくっている。 (『今昔物語集』巻第十九第二十九 「亀、報山陰中納言恩語」) ※補足(後日譚・命名、亀の正体の 推定) ※亀の恩、髑髏の恩、などの一群の 一 つ。 「 仏 菩 薩 ノ化 身 ナドニテ有 ケ ルニヤ」という 仏 教 との結 び付 きが ある。 (後 )畜 生 ノ愚 ナル知 恩 ノ実 ヲ至 ス。是 併 観 自 在 尊 ノ御 方 便 ナリ ト。高 房 悦 ンデ 船 中 ニ懐 キ取 テ其. −16−. ( 16 ).

(5) 子 ノ命 ヲ続 ク。然 而 シテ所 願 ヲ果 サズシテ薨ズ。 (『長谷寺験記』下第十三) ※後日譚。 「 観 自 在 尊 ノ御 方 便 ナ リト」と仏教との結び付き。 (後 )彼 二 歳 の少 人 と云 は此 如 夢 僧 都 の事 也 。無 きが如 くして生 た れば、如 無 僧 都 とぞ名 づけたる。 (『 源 平 盛 衰 記 』巻 第 二 十 六「 如 無 附 毛宝放 亀 僧 都 烏 帽 子 同母 放 亀 レ レ 事」) ※補足(人物説明・ 命名由来) (後 )其 若 君 、おひたちて、法 師 に 成 て名 をば如 無 とぞ申 ける。彼 は 僧 都 までなりて、如 無 僧 都 と申 は 是也。 (『宝物集』六) ※一連の動物殺生禁断説話の一 つ。殺 生 禁 断 罪 障 懺 悔 により恩を 受けるという仏教的な補説。 ノ ナルダニ ヲ ヲ (後)畜類 愚 知 リ恩 誠 レ ス 是 併 レ ラ 至 。 観 自 在 尊 ノ波 浪 不 能 ノ 便也 ト テ 高房 悦 、 没 、即 得 浅 所 方 ノ ヲバ ニ 取 命 テ ヲ グ 其 子 船中 懐 継 。 (『 三 国 伝 記 』巻 七 第 二 十 七「 山 蔭 ノ 」 ) 中納言惣持寺建 立 事 ※「観自在尊」の 「方便也」であると いう 補 足 説 明 と後 日 譚 。 『長谷寺. −17−. ( 17 ).

(6) 験記』 と類似。 (前)恩ヲムクヒケル事哀ニコソ。人ハ 情ケ有ベキニコソ。 (後 )サレバ、八 幡 ノ御 託 宣 ニモ、乞 食 ・癩 ・蟻 ・螻 マデモ哀 ムベシ。慈 悲 ヒロケレバ命長シト、ノ給ヘリ。 (『 沙 石 集 』古 活 字 十 二 行 本 ・巻 第 七(一五)「畜生之霊事」) ※(前)教訓(情あれ) ※(後) 補足( 八幡ノ御託宣) ※ 次に 「鳥獣恩知事」とあるが、五 つの鳥獣報恩譚を載せる。 3 此 御 時 一 の不 思 議 あ り け (後)匡衡、風月の才にとめるのみ (前)又世間の法にていはひごとを (後)此事秘事也。退席之後。匡衡 件 字 一 天令 伝 り。……後一条天皇是也。 ならず、かゝるこゝろばせふかゝり すべし。禁忌のことをばいふべから 私 令 勘 レ 二 レ 家云々。 ( 匡衡の才智) き。 ず。われを何ともおもはね共、心 (『江談抄』 二) 心操振 舞 事 人物評) にかゝる人 の為 には、かならず 失 ※補足(記述事情) (第一「可 定 レ 二 一 」 ※ 補 足( ル みなら 二 一) ※教訓(才智思慮あれ) あり。ことに、主君などの御まへ、 (後)匡衡風月の才に富 メの ※「 心 ばへふるまひともに優 なる もしはさ るべきよろこび事 のをり ず、かゝる心はせふかゝりき ためし」の一つ ふしは心 す べし。はかなき夢 物 が (『体源抄』十二下) たり恠 異 なども、人 のいひなしが ※『十訓抄』 と同じ。 らによりて吉にも凶にもなるため しおほし。才学なからん人はおと もせであるべし。あしざ まなるさ かしら は、中 〳 〵 に侍 るべき な り。 (後)匡衡風月のさいにとめるのみ ならず 、かゝる心 ばせもふかゝり けり。かや う のこと、かならず 学. −18−. ( 18 ).

(7) (後 )かくほどのこゝろばせこそか たからめ、蔵人が申やうまことに げびたりけむかし。 ※補 足. 問 のこうにもよらず心のいたると いたらぬとなり。 (「用意あるべき事」) ※(前)教訓(祝事をせよ。禁忌の 詞を言うな) ※(後)教訓(学問ではなく心がけ により才智思慮あれ) 4 成範民部卿、ことありてのち (後)有がたかりけり。 (後)かやうの心ばせは、うたよみ (後)有かたかりけり めしかへさ れて、内 裏 に参 た ※感想 ならず ともしつべきなり。およそ (『体源抄』十二下) りけ るに、… … 女 房 と りて ※ 前 後 の説 話 より「 才 智 思 慮 あ む かしはお り ふしな さ け につけ ※感想 見 るに、そ文 字 一 にて返 事 れ」 て、う たをよみかけ、返 しをもす をせられたりける、 ※「 心 ばへふるまひともに優 なる ることは、いかなる人 も心 あるた (成範民部卿の一字の返歌) ためし」の一つ ぐひはしける成 べし。をのづから 心操振舞 事 あはれなる一ふしをも、今の世に (第一「可 定 レ 二 一 」 二六) はよその事 になしてはつる、くち をしき事 なり。我身のよむまでは かな はず と も 、や ま と う たは、 みゝちかき道 なれば、其 ことはり はいか成 人 も、しりぬべき事 なる (べカ) か し。 (「用意あるべき事」) ※教訓( 思慮あれ) ※懐古・感想・教訓(和歌を知るべ し) (前)又さるべき人などの心をはか (ナシ) り み んと て、こと を あ ら はにせ (『続古事談』 第 五諸 道 ) ず 、ことや う にいひなしてとはん 事 を、す く〳 〵 とこゝろへたるも 5 肥 後 守 盛 重 は周 防 の国 の百 姓 の子 なり。… … 白 河 院 に まいらせられたりけるとぞ。 (肥後守盛重の夙慧). −19−. ( 19 ).

(8) (第一「可 定 心 操振 舞 事 思慮あれ) 心 をくれ成 べし。さ のみわれとか レ 二 一 」※教訓( 四 一) ※ 教 訓「 人 用 意 ふかく… … 心 を や う のこと を このみ いふも わ ろ くれなきよしとす」例の一つ し。人 のたばかりいはん事 を、あ んじはからふべきよう いばかりな り。 (「用意あるべき事」) ※ 教 訓 (高 貴 なる人 にも 正 直 に 申せ・用意あれ) 6 大 二 条 殿 、大 将 にてお はし (後 )さ や う にいそがしげなら む (前)又 、人のまぎらはしきとき、 ましける時 、……となんいひ 時 には、ひとに歌などよみかくま 我 大 事 に思 ふことなればとて、つ ける。 じきことなり。 ぶ〳 〵と人に物をいひかくべから (大 二 条 殿 の随 身 親 俊 の機 ※ 教 訓 (人 が忙 しそう な時 は 「 和 ず 。たゞきげんをしらず 、ふとく 敏) 歌」を詠み掛けるな) 心 におもはるゝのみならず 、わが 心操振舞 事 「 人 用 意 ふかく… … 心 を いふ事 を も 、人 のと ゞけ ざ るな (第一「可 定 レ 二 一 」※ 教 訓 四二) くれなきよしとす」例の一つ り。つかはれ人 などの物 を いひつ ぐにも心 す べし。きゝては返 事 し にく かるべき え さ ら ぬ事 な ど を ば、主君にいそぎたゞいまいひつた へず とも、ことなきさ まによくは からふべし。たゞかやうの事は、こ とにきげんにしたがひて、よく心 す べし。なか〳 〵 心 得 ず してあし き事もあるなり。 (「用意あるべき事」) ※教訓(人の多忙なる時言い掛け るな) 7 史 大 夫 朝 親 といふも のあ り (後)おかしき事またたとへむ方な (前 )又 人 のみぬところなればと けり。……大かに前駈・御随 かりけり。 て、あるまじきふるまひをばすま. −20−. ( 20 ).

(9) 身 頤 を と かず と いふこと な ※補足・ 感想 じき也 。ふるき人 のいはく、御 所 し。 ※ 教 訓「 人 用 意 ふかく… … 心 を 様などにはおもひかけぬところよ (史大夫朝親の烏滸) くれなきよしとす」例の一つ り 人 のふるま ひを のぞかせ給 ひ 心 操振 舞 事 て、人 のさ まをはからせ給 らん。 (第一「可 定 レ 二 一 」 四四) 又 いや しき下 ろう 、もしはいとけ なきものとてあなづりて、あしき 事 をしてみゆべからず 。人 の短 を ば 、いや しき げ す 、お さ な き も のゝくちよりいひもらす 故 なり。 かくれてす事、天しる地しるわれ しる人 しる、これを四 知 と言 。お もひのほかににはかなる事 などの あるとき、う ちとけて、はぢがま しきこともあり。 (わカ) (後 )かゝるあ り さ ま を は ら は るゝともおもはで、むかひをりけ り と な ん。手 にも ち たるも のを (わカ) は すれてもとむる事などもあれ ば、これもにはかにてあはてをるゝ ほどに、ゑぼしぬぎたる事わすれ けるもことはりなれども、かやう の事 は心 おく れなる人 のわざ な り。およそは人 のみるまじければ とて、ゑぼしをぬぐまでの事 はあ る ま じき ふ る ま ひ より 、かゝる ちゞよくにもおよべり。 (「用意あるべき事」) ※(前)教訓(振 舞に留意せよ・下. −21−. ( 21 ).

(10) 賎 なる者 を軽 視 した悪 い振 舞 を するな)・金言・説明 ※(後)補足(説話記述追加・ 行動 分析)教訓( 振舞に留意せよ) 8 源 経 兼 下 野 守 に て在 国 の (後 )これもまた、かたはらいたく (前)又、我は心ひく事なれども、 ( ナシ) 時 、あ るも の便 書 も ち て… おかし。 人 はさ も おも はぬ事 あ り。さ や (『袋草紙』雑談六四) ( は カ) … いよ〳 〵 腹 立 してかへりに ※感想 うのきげんをはからさずしてすゝ ※六四では、節信・経兼・重如の三 けり。 ※ 教 訓「 人 用 意 ふかく… … 心 を めいふ事は人の不受して思ふ也。 人 の数 寄 者 説 話 をまとめている。 (下野守源経兼の風流) くれなきよしとす」例の一つ (後 )さ や う にもてなしもなくて 三人の説話の最後に 「古ノ歌仙ハ皆 (かカ) 心操振舞 事 は る 〴〵しからずは、よびかへさ スケルナリ。然者能因ハ、人ニ、スキ (第一「可 定 レ 二 一 」 四六) ずともありぬべし。そのうへ、さや タマヘ。スキヌレバ秀歌ハヨムトゾ申ケ うの事けうにも入ぬべきすきじん ル。」とある。風流者譚の一つ。 などならでは、さなくともとぞお ぼへ侍 る。よろづにつけて、きげん を も 人 の同 心 す べき おも むき を も、はかりしらず して、人 をす ゝ むる事 、しんしや くあるべき事 な り。 (「用意あるべき事」) ※(前)説明 ※ (後 )補 足 (説 明 ・分 析 )・教 訓 (人の機嫌をはからずに物事をす すめるな) (前 )又 我 その能 有 とおもふ共 、 (前 )人 のとくをほむることは、い (前)或人語云、 人にゆるされ、世に所をかるゝ程 みじき会尺色代なりと思へる人も (後)優詞可 用 二 意 事 一 歟。 のみならず して、人 のしわざ をほ あり。其 人 に、むかひてや がて褒 (『袋草紙』雑談八四) めんとせん事も、いささか用意す 美 す るはかろめらるゝと思ひては ※伝承 べき物なり。 ら だち す る事 あ り。治 定 したる ※教訓( 優という詞は注意 9 参 河 守 知 房 が所 詠 レ の歌 を 伊 家 の弁 感 歎 して、… … 今 よ り 後 和 歌 を よ む べか ら ず。」といひけり。 (参河守知房の和歌). −22−. ( 22 ).

(11) (第一「可 定 心操振舞 事」(後)優の詞も事によりて斟酌すべ を、いまさ らにいふもおかしき事 して使え) レ 二 一 (ママ) 五七) きにや 。是はまされるがほめける ありけり。り や う 人 まろは能 う (後)まことの数 寄人 と覚 ておもし (物 脱カ) をだにからくとがめけり。況 、を たよみ、道風 はいみじきかきなど ろく侍りき。 とれらん身にて褒美、中〳〵かた いはんがごとし。 (『井蛙抄』巻第六雑談) はらいたかるべし。人の善をもいふ (後)物をほむる事、我よりあがり ※感想(風流) べからず 。況 その悪 をや 。此 心 神 ざま、もしは色代すべきうとき人 明 也。 などには、心 す べき事 也 。是 はま ※(前)教訓(人のしわざほめん時 さ りたる人 の、ほむるだにもはら 用意せよ) だちけり。ましておとらん身 にて ※(後)教訓(ほめことばも事によ 褒 美せんは、中〳 〵かたはらいた って加減せよ)・ 分析・ 金言・ 感想 か る べし。お よそ う た にかぎ ら ※ 教 訓「 人 のしわざ をほめんとせ ず、人のぜんをもいふべからず、い ん事も、いささ か用意 すべき物な はんや あくをば、いはんや かたく り」の例の一つ 慎むべし。 (「用意あるべき事」) ※ (前 )説 明 ・教 訓 (むや みにほめ るべからず) ※ (後 )教 訓 (ほめる時 に注 意 せ よ) 近 比 、最 勝 光 院 に梅 盛 なる (後)此女房は俊成の女とて、いみ (前 )又 人 をあなづる事 や う かは (ママ) 春 、ゆへづきたる女 房 一 人 、 じき歌 よみにてありけるが、ふか れ ある事 なり。あるひは、まづし … … 人 〴 〵 あざ みてにげに くすがたをやつしたりけるとぞ。 くいや しきをもあなづる。あるひ けり。 ※教訓(人を侮るな) は、ふかくなるをもあなづる。あ (俊成卿の女の連歌) るひは、われよりもさ かりなるを 悔 人 倫 一事 」 もあなづる事 をも、いふことをさ (第 三「 不 可 レ レ 二 八) ばかりにこそと思 へり。大 かたふ かくなるもの、いや しきものなど の、ふるまふ事 はみないたづらご. 10. −23−. ( 23 ).

(12) とと思 へり。これはむちなる人 の おもふこと成 べし。おろかなるも のも一 のとくあり。かしこき人 も 一 のしつあり。ひたす らにおとし むることなかれ。なにばかりのこ とかはと思 ひて、いふまじきこと ばをもいひ、すまじきわざ をもし て、あなづるかつらにたふれして、 おもはざるほかのはぢがましき事 にあひ、いはるまじき物 にもあし くいはるゝなり。いにしへの人 は、 (ママ) 蒭 尭 蕘 にはかると いへり 。此 心 は、人 をあなづらず して、いや し きものにも物をとひてまなぶ事を はぢにせぬ也 。ゆへに黄 帝 は、牧 童のこと葉を信じ、徳宗は農夫の いさ めをききいれたまひけるとか や。 (「用意あるべき事」) ※ 説 明 ・金 言 ・教 訓 (人 を侮 蔑 す るな)・故事 ※「人をあなづる事やうかはれあ る事なり。……かしこき人も一の しつあり。」は 『 十 訓 抄 』第 三 小序 にあり。 ※「 おろかなるものも一 のとくあ り。かしこき人も一のしつあり。」 (ママ) および 「いにしへの人は、蒭 尭 蕘に. −24−. ( 24 ).

(13) はかるといへり。… … いさ めをき きいれたまひけるとかや 。」は 『十 訓抄』 第三の十二にあり。 其時 もりしげ、けんびいしに (前 )堀 川 院 御 時 、… … 院 おぼし (前 )又 、あ り のま ゝにふるま ひ (前 )堀 川 院 の御 時 、… … 院 、思 し て… … 此 次 第 院 きこしめし めしわづらひて、 て、たちまちにあしかるべき事 に 召しわづらひて、 て、ま こと にかんじ思 召 け (後)さて此男めしとはれければ、 は、はかりごとをめぐらすべし。か (後)さて、かの男は、召し問はせけ り。 ……興じもてあそびけり。 ならず不実なるにはあらず。かい れば、… … またかく付 けられにけ (盛重犯人を搦むる事) ※「堀川院御時、……院おぼしめ りつもこのおもむきをまもれり。 りとなむ。 (第 四「 可 誡 人 上 多 言 等 一しわづらひて、」までは 「美女沙金 我 がために、人 のためもそのや く (『古今著聞集』巻第十六興言利口 レ 二 事」三) ( 砂金) の事」「佐実の高言と仲政 あるべきゆへ 也。 五七五) との争いの事」あり。 (後 )いつはりはいましめあること ※「 堀 川 院 の御 時 、… … 院 、思 し ※「 さ て此 男 めしとはれければ、 なれ共、かやうの心ばせは世にま 召 しわづらひて、」までは 「美女沙 … … 興 じもてあそびけり。」まで じはるならひなり。きもをたてゝ 金の事」「佐実の高言と仲正との争 盛重の説話が続く。 よろづかやうに心むけのなりぬる いの事」あり。 ※教訓(多言をつつしめ) は、しかるべからず。たまさかにえ ※「 さ て、かの男 は、召 し問 はせけ さらぬことのはかりごとなればこ れば、… … またかく付 けられにけ そ、いみじき事にても侍れ。 りと なむ。」まで盛 重 の説 話 が続 (「用意あるべき事」) く。 ※ (前 )教 訓 (はかりごとめぐら ※ 『十訓抄』と同内容。 せ) ( ナシ) ※(後) 説明 (『続古事談』 第 五諸 道 ) (前)又我身のため、そのやくある ( ナシ) べければとて、高 貴 なる人 、もし (『古事談』第一王道后宮(花山) ) は徳行もある人などを、わろくお ( ナシ) としむる事 は、す まじき事 なり。 (『袋草紙』雑談九一) かへりてわがため、かなら ず あ し (前 )さ てもかの御 門 、世 をそむか きさいなんをうる事なり。花山法 せ給ふ事のおこり、いとあはれにか 皇、世をそむかせ給ける事のおこ なし。. 小 野 宮 殿 の御 母 、弘 徽 殿 の (前)さてこの帝、世をそむかせ給 女 御 とて… … 世 には七 日 関 ふ事 のおこり、いとあはれにかな 白とぞ申ける。 し。 (花山院御遁世の理由) ※感想 (第六「可 存 忠信・廉直旨 一※教訓(忠信・ 廉直あれ) レ 二 事」一〇). 11 12. −25−. ( 25 ).

(14) ( 26 ). ( 衍カ). (『古今著聞集』巻第十三哀傷四七 三) ※感想 ※ 『十訓抄』と同内容。 (前)我朝ニハ花山院計コソ実ニ御遁 世アリケレ。 (後 )実 ニ心 賢 カラン人 、有 為 ノ虚 妄 転変 ノ世 間ヲ捨 テ、無為 ノ実相 常 住 ノ仏 道 ニ入 ベキヲヤ。実 ニ遁 タ ル人 ノ賢 キ跡 ヲシタウ ベキナリ。 (『 沙 石 集 』巻 第 十 本 四「 俗 士 遁 世 シタル事」) ※この説 話の前後に遁世者説話が ある。 ※教訓(賢く遁世せよ) ニ 有テ、 ヲ ク (前)親方 礼 命 不 可 背 、 レ レ (『五常内義抄』礼第十九) ※ 重 華 の説 話 のみを載 せる。簡 素 な も のではな く 長 大 な 説 話 であ る。 ※教訓(親に礼をつくせ) (重華の孝行) (ナシ) (『宝物集』巻第五) ※「 重 華 の孝 行 」の前 に 「 父 母 に孝 養 して第 一 の懺 悔 となしたまふべ きなり。」とあり。仏 道 に入 るいる ために父 母 に孝 養 せよ、という 教. −26−. り、いとあはれにかたじけ けなく 侍りけり。 (後 )御 門 の御 事 は申 す もおろか なり。す べてわれよりとくもいた り、くらひもたかき人 を、かくた ばかりおとし入ぬれば、我が身に かならず其むくひあり。子孫まで も 因 果 のこと はり のがるゝ事 な し。よく心すべき事なり。 (「用意あるべき事」) ※(前)教訓(高貴なる人・有徳者 をおとしいれるな)・感想 ※(後)補足・教訓(同). 重 華 は頑 なる父 につかへ、珀 (前 )忠 孝 おなじことなれば、孝 (前 )現 当 二 世 のとくや くをねが 瑜は怒れる母にしたがふ。 子 のふるまひも、このう ちに侍 べ はん人、又父母師匠などのかたは (重華と珀瑜の孝行の事) し。 なる事もあり、もしはおもひもひ (第六「可 存 忠信・廉直旨 一(後 )董 永 が身 をう りし志 、郭 巨 がみぬるなどを、そのしそくもで レ 二 事」一七) が子をうづむ悲、とり〴〵なり。 しもめんぼくなく思ひて、人前に このたぐひは、唐のことなれば、孝 てもなめげなるふるまひをし、れ 子 伝 ・蒙求 などにしるせるにより いをおろそかにす るは、きわめた て、みな人 口 づけたるものがたり るひがごとなり。父 母 師 ていのれ なれば、くはしく書 のぶるにをよ い、さらにそれによるべからず。か ばず 。吾 朝 のこと、つねに人 口 に たはにもひがめる事 は、いまさ ら 有外、一両条申べし。 におどろかず 、ふかう のふるまひ ※(後)他説話・ 記述事情 を、人 は嘲 なり。かゝる父 母 師 匠 ※孝子の例の一つ。 には、ことにれいをいたし、心ざし. 13.

(15) をも尽 す べし。いと孝 行 の心 ざ し え。 をもよろこびをもはれ、みる人も ( 珀瑜の孝行) こをばほめ、父 母 をばいみじき子 (後 )子にあらざらん者、かくおも もちたるとくをかんじ思ふ物也。 ひ侍りなんや。 (「をんをしるべき事」) (『宝物集』巻第一) ※ 教訓 (父 母師 匠には礼 ・心 がけ をつくせ) 昔 、元 正 天 皇 御 時 、美 濃 国 ( ナシ) (前 )父 母 師 長 を う や ま ひお そ (ナシ) に貧 しく いや しき 男 あ りけ ※孝子の例の一つ。 るゝはその身にみやうがをかうぶ (『古今著聞集』巻第八孝行恩愛三 り。… … 同 十 一 月 に年 号 を るのみにあらず 、う ちみる人 も、 一一) 養老といへ り。 かんじ思 ふことなり。いかにあた ( ナシ) ( 養老の孝子) はぬ事をいふとも、人まへなどにて (『続日本紀』巻第七) 忠信・廉直旨 一 したがひなびくべし。おのづからあ (第六「可 存 レ 二 事」一八) らそひいさ むべき事も、うち〳 〵 のこと な るべし。父 母 師 長 な ど を、なめげ にいひくたす ことは、 たゞ孝 道 のぎ を そむく のみあ ら ず、たうざにおもくすべき人など もあれば、おそれある事なりとい へり。 (「をんをしるべき事」) ※ 説 明 ・教 訓 (父 母 師 長 に従 う べ し) 武 則 ・公 助 と云 随 身 父 子 あ (後) 聖徳太子の、用明の杖の下に ( ナシ) ( ナシ) りけり。……世おぼえいでに したがはせ給 ひけるを、おもひい (をんをしるべき事) (『古事談』第六亭宅諸道(馬術) ) けり。 でたりけるにや。 ※教訓(父母師長に従え) (後 )後 ニ脇 ナル者 有 テ… … 世 ニ広 ( 随身公助の孝行) ※補足(関連説話想起) ク此ノ事聞テ、讃メ貴ビケリ。 忠信・廉直旨 一※孝子の例の一つ。 公 助 、然レバ、我 モ思 エ有リ止 事 (第六「可 存 レ 二. 14 15. −27−. ( 27 ).

(16) 事」二〇) 無 キ舎 人 トシテ、子 孫 モ繁 昌 シテ 有リトナム語リ伝ヘタルトヤ。 (『今昔物語集』巻第十九第二十六 「 下 野 公 助 、為 父 敦 行 被 打 不 逃 語」) ※ 説 話 後 半 部 (後 日 譚 )「 後 ニ脇 ナ ル者 有 テ… … 世 ニ広 ク此 ノ事 聞 テ、讃 メ貴 ビケリ。」は 『 十訓 抄 』よ り詳細。 ※世人の評の前に 「菩薩ノ行コソ我 ガ身ヲ棄 テヽ四恩ニハ孝養 スレ。」と いう 高 僧 の評 があ る。仏 教 との関 連がある。 ※一連の孝行譚の一つ。 孔 子 の弟 子 に曽 参 といひけ (後 )これも理 也 。おや のていによ (後)是もことはりなり。かやうの (後 )これもことわりなり。おや の るは、… … いみ じき 不 孝 な るべきにや。 事 、ことによりてはからふべき事 気色によるべきにや。 り。」といましめたまへり。 ※感想・補足 なり。 (『古今著聞集』巻第八孝行恩愛三 ( 曽参父に打たるる事) ※孝子の例の一つ。 (「をんをしるべき事」) 一三) (第六「可 存 忠信・廉直旨 一 ※ 感 想 ・教 訓 (父 に打 たれる時 は ※ 感 想 ・補 足 (親 のよう す によるべ レ 二 事」二〇) 事情によって考慮せよ) きだ) ( ナシ) ( 『 語 園 』上 九 三「 曽 子 父 ニ打 ルヽ 事」) (前)又、不信の人の作善は、冥衆 ( ナシ) も、納受し給はぬなり。 ( 『 古 事 談 』第 五 神 社 仏 寺 (胤 間 (後 )す べて不 信 のと があ るため 寺)) し、かぞへつくすべからず。 (「仏神にいのるべき事」). 土 佐 国 に種 間 寺 と 云 山 寺 (ナシ) 有。……文字留 霊 ※天災の計り事、信力に過ぐべか 二 山 。 一 (種間寺のにはか辻風) らざる例の一つ。 忠信・廉直旨 一 (第六「可 存 レ 二 事」 二六). 16 17. −28−. ( 28 ).

(17) ※(前)説明 ※(後) 補足(不信の罪の例) ※教訓(不信あるな) 大 納 言 俊 明 卿 、丈 六 の仏 を ( ナシ) (前 )又 、あるひはことを成 敗し、 (ナシ) 造らるゝよしを聞て、……と ※廉直の例の一つ。 あ るひは物 を口 入 す るに人 の心 (『古事談』 第二臣節(俊明)) いはれけり。 ざしをうくる事は、しやうじきな (俊明卿の丈六の仏) らず 。ありのまゝなるだう りによ 忠信・廉直旨 一 るべくは、かならず おくりものを (第六「可 存 レ 二 事」三三) う くべきにあらず 。いさ ゝかも黄 金 を いみじう す る心 だにも あ る ならば、だう りひがみ侍 るべき事 う たがひなし。かたく辞退 してと らざるを、しやうぢきとす。まし て、物をとりてだうりをひがごと になし、ひがごとをだうりに口入 せむ事、仏神の御とがめ、のがるべ からず。たとひ一たんそのおくり ものを得てとめりといふとも、かへ りてそのわざはひかならずまさる さ ひなんおこす べし。いにしへの人 はたゞ人 の心 ざ しにおこせるだに も、みらゐをかへりみてとらざ り けり。 (「正直をさきとすべき事」) ※教訓(贈り物を受けるな) 小 野 宮 右 大 臣 実 資 とておは (後 )好 二正 直 一而 不 廻 有 精 誠 (前)又、物をおしむは欲心のもよ レ 。 しけ る。… … 鬼 神 の所 変 な 通 二於 神 一。と文 選 の東 征 賦 にか ほす ゆへ也 。す つべき を す てざ れ どを も みあ ら はしたまひけ ける、今 思 合 せられていみじ。さ ば、さ いなんをおこし身 をほろぼ. 18 19. −29−. ( 29 ).

(18) るとかや。 ればとて、いや しきたぐひ此 まね (賢人の右府) をす べきならねども、程 につきて 忠信・廉直旨 「 (第六「可 存 レ 二 一 賢 を見 ては等 からむことをおも 事」三四) へ。」とぞ。此殿若くより賢人の一 筋 のみ な ら ず 、思 慮 のこと に深 く、情人に勝れておはしけり。 ※詩歌 ・ 金言 ・ 補足(人物) ※廉直の例の一つ。 横 川 恵 心 僧 都 の妹 、安 養 の (ナシ) 尼 のも と に強 盗 入 にけ り 。 ※廉直の例の一つ。 … … さ ながら 返 してをきて 帰りにけり。 (安養尼の小袖) 忠信・廉直旨 一 (第六「可 存 レ 二 事」三六). 恵 心 僧 都 、金 峯 山 にまさ し (ナシ) きみこ有 ときゝて、… … つと ※廉直の例の一つ。 めていたるところとぞきく。」. 20 21. ( ナシ) (『古事談』第三僧行( 安養尼)) ( ナシ) (『古今著聞集』巻第十二偸盗四四 六). ( ナシ) (『古事談』第三僧行(源信)). ( 30 ). す 。りよく の心 を しや う ぢ き と す。 (後 )かや う のりよくも、いまのよ には、ことかはり侍るべきにや。 (「正直をさきとすべき事」) ※(前)説明・教訓( 欲をすてよ) ※(後) 補足 (後 )かゝるしや う ぢき、いま世 に はおこのあざけりありぬべし。いか にいみじき事 も、世 ににず じぎに かなはぬふるまひをば、人 これを もちゐず。人もちゐざればそのや く あ る事 な し。たゞし賢 を み て は、ひとしからんことをねがふべし といへり。まことにそのほどいたり なば、そしりをなす人あるべから ず。たとひそしりをなすとも、さ らにいたむ所 あるべからず 。しか あ れども、心 をばいにしへにひと しくして、ふるまひはいまのよにか なへるをよしとす。 (「正直をさきとすべき事」) ※ 補 足 ・金 言 ・教 訓 (世 に適 す る よう正直なれ) ( ナシ) (「正直をさきとすべき事」) ※ ただし、説 話 後 半 部 は 「 つとめ. −30−.

(19) と う たひ出 たりけ れば、涕 ていたる所 なりとう ちいづるより 泣してかへ りたまひにけり。 して、心 しや う ぢきにて、往 生 を (恵心僧都と歌占) とぐべきよしをさま〴 〵いひけれ 忠信・廉直旨 一 ば、ます 〳 〵 なをくしてつゐに往 (第六「可 存 レ 二 事」三七) 生 をとげ給ひけりとなん。」と改 変されている。教訓(正直なれ)の 付加。 光 明 山 と云 山 寺 に、老 たる (後)故に維 摩 経 には、 「 質 直これ (前 )八 幡 大 菩 薩 は、かたじけな (後 )僧 涙 を流 して、その後 、年 毎 尼ありけり。……いかにもあ 浄土なり。」とときたまへり。法華 く正 直 のかう べにや どらむと、ち に、必ず日吉の社へ 詣でけるとぞ。 るまじ。」とぞ仰られける。 経には、 「柔和質直者」といひ、又 かわせ給 ひ、春 日 大 明 神 はわが このこと、仏 の御 教 へに叶 ひて、 (日吉明神の御託宣) 「 質 直 以 柔 輭 」とものべて、こゝろ こゝろをしら んとおもはゞ、だう 目 出 度 く侍 り。しかれば則 ち、維 忠信・廉直旨 一う るはしからむもの、仏 みたてま りをしるべし。我 身 をしらんとお 摩 経 には、直 心これ浄 土 と説 き給 (第六「可 存 レ 二 事」三八) つるべきよし、寿量品のいくほどな もはゞ、だうりをしるべし。わが身 ふ。円 融 の妙 法 には、質 直 意 柔 軟 らぬ偈 の中 に、二 所 までをしへた これだうり也。す なはち、我 心な とも、又 は、柔 和 質 直 者 とも宣 べ まへり。又 八 幡 大 菩 薩 恭「 正 直 の りともたくせんし給 へり。これも 給 へり。心 う るはしからんものゝ仏 ものの首にやどらむ。」とちかは 正 直 のだう りをあらはし給 へり。 を見 るべき由 を、寿 量 品 の偈 の僅 せたまふにあはせて、 しやうぢきとだうりとは、ことば かに一 枚 ばかりなるに、二 ヶ所 ま ありきつゝきつゝみれどもいさ ことなりといへども、そのいはれお で教 へ給 へり。自 我 偈 とて、諸 神 の ぎよき なじかるべし。又 浄 土 にまう で、 めで給ふも、思ひ合はせられて、貴 ひとのこゝろをわれわすれめや 如 来をおがみたてまつらん事も、 く侍り。南無阿弥陀仏。 とよませたまへるたのも しさ よ。 しや う ぢきの心 なくては、かなふ (『異本発心集』「ある禅尼に、山 かゝれば、二 世 ののぞみをかねて べからず 。経 には、質 直 の心 す な 王の御託宣の事」) とげむ事 、なをからむにはしくべ はち浄土とも、柔和質直の人、ほ ※後日譚・感想・経典佳句・ 感想 からず。 と け を お がみ たてま つるべしと (後 )僧 なみだを流 て。其 後 は年 こ ※経典佳句・ 金言・和歌・ 教訓(正 も、とかるゝがゆへなり。又御神の とに日吉へぞ詣ける。されば経には 直なれ) あらたなる御おしへ も侍り。 質直意柔軟とも。また柔和質直者 ※廉直の例の一つ。 (「正直をさきとすべき事」) ともあり。心 のう るはしから むも ※ 金 言 ・説 明 ・教 訓 (正 直 なれ)・の。仏を見奉るべきよしを。寿量品. 22. −31−. ( 31 ).

(20) 経典佳句 偈 一 紙 の内 に。ふた所 まで教 へ給 へ り。自 我 偈 とて神 明 仏 陀 の納 受 し 給ことも。思ひあ はせられて貴ぞ侍りける。 (『日吉山王利生記』 第六) ※後日譚・ 経典 佳 句 ・ 感想 白川院は、花ざかり雪の朝、 (後)この宮は、御冷泉院后、大二 (前)又、うち〳〵の食事をば、人 ( ナシ) 必 御 ら むじて、… … 違 はざ 条関白の御女也。入内の夜、院隠 にみ す べから ず 。く わ ぶむ な る (『古今著聞集』巻第十四遊覧四七 りけり。 れさ せたまふによりて、頓て尼 に も、あざけりあり。無下なるもみ 五) ( 白川院の雪見) 成り、小野に籠り居させ給て後、 ぐるしき物 なり。たゞし、そう ち (後 )その舎 人 の名 は信 貞 とかや 、 (第七「可 専 思 三) かす かなる御 有 様 也 けれども 、 うなどは、麁品 なる事 は、かなら 殿 上 人 は何 某 の弁 とかや 、たしか レ 二 慮 事 一 」 (又カ) 御もてなしゆうに、用意深くまし ずはゞかるべからず。人 客人の饗 にも聞 き侍 らざ りき。その小 野 の 〳〵けり。 応 は、ねんごろなるべきを、大 や 寺 などは、なほ遺 りて、三 昧 行 ふ ※補足(人物説明・ 後日譚)・ 感想 う なるもわろし。たひや う なるべ 僧もまだかすかに侍なり。 (るカ) ※教訓(もてなしに用意あれ) き事 を、真 深 のす ぎた に もあし (『今鏡』小野雪見御幸) き事 なり。きたるべきよしかねて ※補足(人物説明・寺説明) や くそくなけれども 、さ も あら しぬべき事を、かねてよふゐのおく れたるも無下なり。世にまじはる な ら ひ、かや う の事 に人 の心 ぎ はゝみゆるものなり。 (後)此宮は、御冷泉院のきさき、 大 二 条 関 白 の御 むす め也 。入 内 の夜、御門にはかにかくれさせ給 ひにけり。や がて御 出 家 ありて、 小 野 と いふ所 にこも りゐさ せ給 て、後は無下にかすかなる御有様 なりけれども、御 もてなし、とき. 23. −32−. ( 32 ).

(21) 六 条 前 斎 院 と聞 へさ せ給 け る宮 の御 所 に、… … 御 しわ ざ也。」とぞ申ける。 ( 六条前斎院の鞠の座の雪) (第七「可 専 思 四) レ 二 慮 事 一 」. 成 明 親 王 の、位 に即 せ給 た り け るに、… … 御 覧 じわ か ざりけるにや。 (村 上天 皇のあはせたきもの の御歌) (第七「可 専 思 八) レ 二 慮 事 一 」. 24 25. (後 )宮 の御 高 名 、鞠 足 の不 覚 に てぞ有ける。 ※補 足 ※教訓(思慮あれ). (後 )此 御 息 所 、御 心 おきて賢 く おはしましける故 に、彼 みかどの 御 とき、梨 壷の五人に仰せて、万 葉集をやはらげられけるも、この 御 すゝめとぞ。順 、筆 をとれりけ る。 ※補 足 ※教訓(思慮あれ). にとりて御 よう いふかくいう にぞ おはしましける。 (「用意あるべき事」) ※(前)教訓( 饗応には用意あれ) ※(後)補足(人物説明・後日譚)・ 感想 (前 )又 や う ありげなる事 のきと しらぬをば、いかなる故 ぞとよく あんじもし、人 にもたづねとふべ きなり。たゞしらず と思 ひて、や す 〳 〵 とさ てあ る事 はあ しきこ となり。 (「用意あるべき事」) (後)無下の事なりとぞいひける。 ※ (前 )教 訓 (知 ら ぬ事 は考 え尋 ねよ) ※(後) 説話追加 (前)又、歌は本朝のことわざ、神 (前 )はかなくて年 月 も過 ぎて、こ 明仏陀権者化人も、これによせて の御方々、…… 心 ざ しをあらはし給 へり。わが国 (後 )さ ればこそ、なほ心 ことに見 にむまれて此 道 にたづさ はら ざ ゆれと、思 しめしけり。いとさこそ らんは、おもてをかきにしてたて なくとも、いづれの御 方とかや 、い らむがごとしといへり。いにしへは、 みじくしたてて参りたまへりけるは しるもしらぬもやまとうたによせ しも、勿 来 の関 もあらまほしくぞ て、心 ざ しを あ ら はしけ る成 べ 思されける。 し。いまのよには、う たよみとてべ (『栄華物語』月宴) ちの物 に思なして、さならぬは一 ※人物紹介・人物評 かう なさ けをわす れたる世 にな (前)次に、沓冠折句の歌といへるも. −33−. ( 33 ).

(22) 四 条 大 納 言 、寛 弘 二 年 の ( ナシ) 比 、月 来 恨 あ りて出 仕 も し ※教訓(思慮あれ) 給 はず 。… … 依 て是 を用 ひ られけり。 (四条大納言の辞表) 思 九) (第七「可 専 レ 二 慮 事 一 」. さきに申たる賢人のおとゞ、 ( ナシ) 他 事 の賢 には似 ず 、… … 振 ※この後、関連説話あり。 舞 に付 て、はから れ 給 にけ ※教訓(思慮あれ) り。. 26 27. (ナシ) (『古事談』 第二臣節(実資)) ( ナシ) (『東斎随筆』好色類). れり。むねむのことなり。 のあり。十 文 字 あ る事 を、句 の上 (後)かや うのくつかぶり、おりく 下におきて、詠めるなり。あはせ薫 などのうたは、かならずうたよみ き 物 す こしと いへる事 を 据 ゑ たる (るカ) なら ず とも みし り べき事 なり。 歌、 此 御 返 事 にたゞ御 返 事 のう たに (『俊頼髄脳』) てありけん、かたはらいたくも侍 ※沓冠折句の例として る物かな。 ( ナシ) (「用意あるべき事」) (『奥義抄』) ※(前)説明・金言・感想 ※和歌のみ説話なし ※(後)教訓(沓冠・折句の和歌を (前 )沓 冠 の折 句 の歌 と云 ふ物 あ 知れ)・感想 り。 ※教訓(和歌に携われ) (『悦目抄』) ※沓冠折句の例として (後 )あはせ薫 物 すこしといふ沓冠 にてありし也。 (『正徹物語』下) ※沓冠折句の例として (後 )是 以 和 歌 之 思 高 巧 出 事 者 、 有興 レ 云々。 (『袋草紙』雑談九三) ※ 感 想 (和 歌 の理 想 が高 くことば が巧みに出るものは興趣深い) 。 ※和歌に関する評語。 (後 )さ しも英 才 共 も思 ひよらざ りけるを、女ばうの身にて此風情 をさ づけらる、いみじかりける心 なりけり。 (「用意あるべき事」) ※感想 ※教訓( 用意あれ) (後 )賢 者 の一失 とは、かゝること なるべし。 (「よろづを堪忍すべき事」) ※補 足. −34−. ( 34 ).

(23) (女事に賢人なし) 思 慮 一事 」一 (第 七「 可 専 レ 二 二) 此 の故 にや 、源 信 僧 都 の… (前)一切の罪をおかすこと、物に ( ナシ) …とあり。 忍びえぬがいたす所なり。 (「よろづを堪忍すべき事」) (源信僧都堪忍を授ける事) ※教訓(堪忍せよ) ※教訓(堪忍せよ) (第八「可 堪 忍 諸事 事 小 レ 二 一 」 序) 〈『十訓抄』第一類・第三類に は欠文。第四類をのせる〉 このゆへにや、もろこしにはお (前 )かゝれば聖 教 を… … 忍 辱 第 ( ナシ) ほくの直 にて、忍 といふ文 字 一なり。 (「よろづを堪忍すべき事」) を 書 て、守 にしたる人 有 け (後 )しかればあれたる軒 に… … ※ただし、前後に金言あり。評語 り。 まじきとぞ。 はなし。 ( 唐の人忍の文字を買う事) ※前後に金言・ 経典 佳 句 。 ※教訓(堪忍せよ) (第八「可 堪 忍諸事 事 小 ※教訓(堪忍せよ) レ 二 一 」 序) 大 納 言 行 成 卿 、いまだ殿 上 (後 )一 人 は忍 をたもたざ る故 に (前 )又 、物 を思ひしのばず して、 (後 )行 成 補 二職 事 一任 二弁 官 一。多 人にておはしける時、さねか せんどをうしなひ、ひとりは忍を 心のまゝにしんゐをおこして、しや 以失 礼 漸尋知之。後勝 傍 。 レ 。 二 倫 一 たの中 将 、… … 大 ばんを く 信 ず るによりて、褒 美にあづかる う がいをう しなひ、はう いつじや コレ携 文 二 書 之 一 所 致 レ 也。 ひけるよし人いひける。 事を得たり。 けんのふるまひをして、人 に思 お (『古事談』第二臣節(行成) (行成卿と実方中将の口論) ※補足( 説明) とされ、なをおとすことあり。宝 ※後日譚・ 補足 (第 八「 可 堪 忍 諸 事 一事 」※教訓(堪忍せよ) 積 経 にいはく、もし人 くどくをつ (ナシ) レ 二 一) くること、須弥山のごとくにすと (『東斎随筆』 鳥 獣 類) も、一 たびしんゐをおこせば、一 (後)実 方の中 将の頭 になり給はぬ とき にみなせう めつす といへり。 思 ひの残 り てお はす るな ど 申 す 又は、一念嗔意のほのうは、倶 も、まことに侍らば、あはれに恥か (眤カ) 眼 功 のぜ んこんを や く と も いへしくも末 の世 の人 は侍 る事 かな。. −35−. ( 35 ). 28 29 30.

(24) り。人 にしんゐをおこさ す るふる (『今鏡』 敷島の打聞) まひをしつれば、わが嗔 意 をおこ ※感想 せるに同 じ。悲 しき哉 や 。せつな (前)少将……被 分 レ たり。 の妄 執 にひかれて、おこる所 のし ※説明(土地の説明) んゐを忍 びえず して、そこばくの (後 )実 方 三 年 の間 名 所 々 々 を注 自 他 のぜんこんをや きう しなへる しけるに、阿 古 野 の松 ぞなかりけ 事 、後 世 のさ はりのみならず 、た る。……(以下別説話) ちまちにたう ざ にても、いのちを (『 源 平 盛 衰 記 』巻 第 七「 日 本 国 広 ほろぼしちじよくをかうぶる事か 狭事」) ぞへ 尽すべからず。 ※説明・別話 (後 )行 成 卿 もさ こそほいなく侍 (前 )実 方 朝 臣 叔 父 済 時 の養 子 と りけめ。なれども、よく思 ひしの なりて…… びて叡 感 にあづかるのみならず 、 (後 )一 旦 の不 礼 を咎 めさ せ給 へれ 官 職 を給けり。実方 は、しんゐを ど、もとより才 ある人 なりければ 心 のま ゝにして面 目 を う しな ひ 憐 れませ給 ひ、… … (以 下 後 日 譚 て、遠 所 にて命 おはり、妄 執 によ が続く) りて他 生 をおさ へそこなひける、 (『百人一首一夕話』巻四) くちおしき事なり。 ※説 話の増幅(後日 譚)・和歌 にま (「よろづを堪忍すべき事」) つわる説話 ヲ 時ハ ※ (前 )説 明 ・経 典 佳 句 ・教 訓 (善 (前)人ノニクケニ物 云 、ヲトラ テ テ 不 可 云 指 憎 云 根 を失 わないよう 忍 びて嗔 意 を シト、サシ憎 、 レ レ 、 ハ カニ おこすな) ハ、… … 何 事 モ、サキニ、憎 ト ※(後)人物評・ 感想 成ベシ ヲ セル人如 此、 …… (後) 穏便 存 レ ノ クケ ニ (『五常内義抄』義 第二「人 ニ ヲ ハ ノ 事」 物 イ ン時 之 ) ※教訓(人を憎むな) 三 条 の内 大 臣 の御 も と に、 (後 )いまのよには、おぼえず にお (前)又、人の腹立する時は、我心. 31. −36−. ( 36 ).

(25) 客 人 参 り たりけ るに、と な はするなどやそしり聞えなまし。 をもいましめて、ともにしんゐを りに公 重 の少 将 ゐら れたり 此殿は、ことに道心おはしけると おこす ことなかれ。いかりて争 へ けるが、……その客人のひと かや 。誠 いみじくこそ。京 極 のげ ば、ぜひはきこへず して、じたのし にかたりける。 ん大納言のまさとしのきや うの、 つをあらはす もの也 。人 のいかる (三条の内大臣の雅量) す ゞろにはら あ しくて、いつとな ときは、いかなるわがだう りあり 忍 諸 事 一事 」くはをくひつめて、いかりておはし と思 ふとも、人 のいふところのだ (第 八「 可 堪 レ 二 二) けるには、似給はざりける人也。 うりをうけひきて、嗔意をやめん ※感想・補足(人物評・ 他人評) と思ふべし。それに、りふじんなる ※教訓(道心ありて堪忍せよ) 事 もあるときは、人 のしつはあら はれ、我 身 はとく とな る事 も あ り。さ す がによそにても、ぜひは ( ゝカ) き ら わかるゝ事也。 (後 )いまのよには、ふかくにおは す るな ど や 、そしり き こえ な ま し。この殿 は道 心 ふかくおはしけ るとかや 。およそ、いきほひもひ ろき人などは、われよりもさがり ざまなる人には、いみじき便りを もちたれども、あらそひまけたる をば、物に心えておとなしき人と こそ申 侍 れ。わづかなる人 にしが ちたる、さらにかうみやうにあら ざる也。 (「 「よろづを堪忍すべき事」」) ※ (前 )教 訓 (人 が怒 る時 は嗔 意 をやめんと思え) ※(後) 補足(人物評・ 説明) 高 陽 院 姫 宮 と申 は、鳥 羽 院 (後 )物 をなげくも悦 も、気 色 に (後 )又 物 を け しから ず な げ く. 32. −37−. ( 37 ).

(26) の御むすめ、びふく門院の御 もてあまるは、けしからぬよりあ も、みぐるしき事 なり。心 ばへも はらなり。… …「 いみじき事 る態なり。高陽院のやうは、あま てしづめぬ人は、何ごともはな かな。」といはれけり。 りに男遠く、男女ならびゐたる絵 〴〵しくけしからぬなり。あやし (高陽院の御有様) かきたる扇をば、すてられけると きしづのめや う のものゝなげきた 忍 諸 事 一事 」かや。かへりてよづかぬ様に申なし るは、となりざ ともくるしきまで (第 八「 可 堪 レ 二 三) けれど、むかしびたらんかたは、 なきとよみて、かくてはたへ てもあ いみじきためしにや侍らん。 ら じとき こゆれども 、一 日 二 日 ※ 補 足 (説 明 ・後 日 譚 )・感 想 (懐 過 ぬれば、さ るなげきのありつる 古) かとだにおもはれぬこそおかしけ ※教訓(嘆き喜びは度を過ぎない れ。 ようにせよ) (後 )物 をなげくもよろこぶもけ しきにもてあまるは、けしからぬ よりあるわざ なり。賀陽院は、あ まりにとをじろくおはして、男 女 ならびゐたるゑかけるあふぎをだ にす て給 へる、かへりて、よづかぬ さまに申なしけれども、物ふかく むかしびたらんかたは、いみじき ためしに申けるとかや。 (「 「よろづを堪忍すべき事」」) ※(前)「心ばへ……おかしけれ」は 『十訓抄』第八第四からの引用。 ※ (前 )教 訓 (度 を 越 して嘆 く な)・ 他説話(賎の女の悲嘆の事) ※(後) 補 足( 説明)・感想(懐古) ※ (後 )教 訓 (嘆 き喜 びは度 を過 ぎないようにせよ) 西 行 法 師 、おとこ成 けると (後)是等は理こそかはれども、み (後)又じぎをそむくは、交衆の法. 33. −38−. ( 38 ).

(27) き、かなしくしける女子の三 な も のにた へ忍 び た るたぐ ひな にあらず。たとひわが進 退すべき 四 歳 ばかりなるが、… … 西 り。 つかはれ人 なりとも、さ るべきお 住後にひとに語りける。 ※補足(例証説明) りふしにそむくべから ず 。いはん (西行法師の堪忍) ※教訓(物に堪えよ) や主君もしはおそれあるべき人の 忍 諸 事 一事 」 まへにて、じぎをかへりみず してふ (第 八「 可 堪 レ 二 四) るまふ事 なかれ。す べてしゆにつ ら な り て、ひ と り そ む く べから ず 。ともにまじはりて、物 をあら そはざ れ。さ るべきあそびなどを して、けう をなさ ん所 にては、身 にとりてたとひいかに口をしき事 ありとも、その日のさはりをなす 事 なかれ。そのざ にのぞまぬさ き によくはから ひて、あ しかるべき 所 へは、出 べからず 。まじはりいな んのち は、お ぼ ろけ の事 な ら ず は、ことなきさ まにもてしづむべ し。 (「用意あるべき事」) ※「 さ るべき あ そび… … しづむべ し。」は 『 十 訓抄 』第 七 の二 七 から の引 用 (不 覚 に思 慮 な き も のの 例) ※ 教 訓 (時 宜 (機 会 状 況 )にそむ くな・心 外 の事 があっても差 し障 りのないようにせよ) (ナシ) (「人をうらむべからざる事」). 仁 和 寺 の大 御 室 の御 時 、成 (後)いみじかりける人なり。 就 院 の僧 正 の、… … 法 師 関 ※感想. 34. −39−. ( 39 ).

(28) 白とぞいわれ給ひける。 ( 成就院僧正の振舞) 怨 一) (第九 「可 停 レ 二 望 事 一 」 六 条 修 理 太 夫 顕 季 卿 、あづ (後 )かゝるためしをきくにつけて (前)いかにあわぬ事ありとも、た (ナシ) まのかたにそりやうの有ける も、ほど〳〵につけて、たのめらん や す く人 を 恨 むる事 なかれ。た (『古事談』 第一王道后宮(白河)) ニ タラムニ ニ ト ム を、… … かしこくぞ、とのみ 人 を ば 、一 たんつら き 事 あ ると とひことはりきはまれる事のさを (前)人強敵 値 ハ、彼 勝 ム 思ヘ テ ニ 思はれけり。 も、う らみをなさ ず して、そのは ひもいでき、たのめをける事 のお 不 可 思 勝 ト ハ、我返 敵 ホ レ レ 、 ヲ テ ニ フラシム 敵 カ (六 条 修 理 太 夫 顕 季 卿 と館 からひを待べし。 もはず なるへんがへもあれ、たのめ ロホサルヽ也、徳 以 ノ 弱 怨 テ 敵 コ ノヽ の三郎義光の領地争い) ※ 教 訓 (恨 みをなさ ず に考 慮 せ る人のはからひなどはさるやうこ レハ、敵 心 ロ止ムナリ、 怨 二) よ) そあらめと心ながくしのびてすぐ ……(以下金言等) (第九「可 停 レ 二 望 事 一 」 ノ カラム事 ヲハ すべし。 (後 )サレハ只 物 強 後 カ 、 ……(以下金 (後 )さ う な く 恨 み 申 た り しか 悪 カルヘシ、墨子 云 ば、かゝる御 はからひもあらじと 言)然レハ敵ナリトモ不 可 悪 レ レ ニ ヒ ぞおぼへ侍り。ほど〳〵につけて、 (『 五 常 内 義 抄 』義 第 八「 強 敵 遇 ノ 」 たのめらん人 は、一 たんつらき事 タラム時用意 事 ) あ りと も 、恨 みを さ き たてず し ※(前)教訓(強敵に勝とうと思う て、そのはからひをまつべしとぞお な) ぼへ はべる。 ※(後)教訓(敵でも憎むな) (「人をうらむべからざる事」) ※(前)全文『十訓抄』第九小序か らの引用。 ※ (前 )教 訓 (道 理 にあ わなくと も人を恨むな) ※ (後 )補 足 (後 日 譚 想 定 )・教 訓 (恨みをなさずに考慮せよ) む かし、佐 理 卿 大 弐 、任 は (後) 目出たかりけり。 (前 )心 を そ のみ ち に よ せ て、 (後) めでたかりけり。 (づカ) てゝ昇 られける道にて、…… ※感想 た ゝ さ はるににたれども、心 ざ (『 古 今 著 聞 集 』巻 第 七 能 書 二 九 彼やしろの額をかゝれたりけ ※「 管 弦 の徳 、神 かんの例 」の一 しをもつぱら にし、そのこう をこ 二). 35 36. −40−. ( 40 ).

(29) るも、 つ。 う とし、功 をつまざ れば、いたゞ ※感想 (りカ) (佐理卿大弐の額) きにのぼ か 、そこをきはむること (後 )三 島 社 ノ額 ト六 波 羅 蜜 寺 ノ (第十「可 庶 幾才能・芸業 一 なし。とくいたり、まことあら は 額トハ、此人筆跡也。 レ 二 ( 陀 カ) 事」六八) るゝときは、神明仏 施 も是にめ (『東斎随筆』神道類) で給 ふ。冥 につけ顕 につけ、かな ※補足 らず其身を益するなり。 (「身をおさむべきやう」) ※説明 ※教訓(その道に徳あれ) ※ この前 に 「 又 、人 は学 業 をもつ ぱらにすべし。」とある。 成 道 卿 、年 比 ま りを このみ (後 )何 事 をも好 むとならば、底 (後)そのとくいたりて、其精あら ( ナシ) 給ひけり。……いみじく美し を極て、かやうのしるしをも現す はれにけるなり。 (『古今著聞集』巻第十一蹴鞠四一 げにぞ有ける。 計 にぞ、せまほしけれど、かゝる (「身をおさむべきやう」) 〇) ( 成道卿の鞠の精) 例、いと有り難し。 ※補足(説明) ※類話 (第十「可 庶 幾才能・芸業 一※感想 ※教訓(その道に徳あれ) (後 )かの大 納 言 のたまひしは、… レ 二 事」六九) ※教訓(何事もきわめよ) ※ この前 に 「 又 、人 は学 業 をもつ … (この間 他 説 話 ・後 日 譚 )… … い ※「 管 弦 の徳 、神 かんの例 」の一 ぱらにすべし。」とある。 とゞめでたく貴くぞ侍る。 つ。 (『撰集抄』巻八第一九) ※他説話・後日譚・感想 唐 太 宗 の臣 、王 珪 申 て… … (前 )抑 、人 縦 ひ和 歌 管 弦 す ぐれ (前)かくのごとく、きの一のうす と云り。 たりとも、才 幹 の愚 かに、風 月 の ぐれたれども、才幹おろそかなれ (王珪の詞の事) かけ ぬれ ば 、猶 し侮 ら はしく 、 ばあなづらはし。 (第十「可 庶 幾才能・芸業 一軽々しく覚ゆ。 (後)又、様々の芸能才幹も、まづ レ 二 事」七三) (後 )故 に蘇 秦 は、股 を … … (以 心 操 をとゝのへて、そのう へのかざ 下 、説 話「 蘇 秦 ・董 生 ・太 宗 」あ りなり。かるが故に、心操・才幹・ り)然 らば則 、史 書 ・全 経 をも学 芸能の徳をそなへんとおもふべし。 びしり、詞 花 ・翰 棠 をも嗜 みて、 相経には、無尽の相どもをいひ. 37 38. −41−. ( 41 ).

(30) 旧 記 にくらからず 、古き跡を不 レ〳〵かく、但貧福は心にありとい 耻 して、君 道 にもかなひ、身 徳 と へ り。 もせんこと、実 の至 要 なり。但 、 (「身をおさむべきやう」) 又次ざまの人は、させる才芸にた ※(前)教訓(才幹あれ) らずとも、心おきてのさか〳〵し ※ (後 )教 訓 (心 掛 けを 正 して徳 き、世 にある道 に取て、第 一 の能 をそなえよ) 也 。様 〳 〵 の芸 能 も 、先 心 操 斉 えての上 のことなり。されば相 経 にも、無尽 の相どもを云て、終り には、 「 但 、貧 福 心 に有 」と かけ り。 ※(前)教訓(才幹・風流心あれ) ※(後)別説話・教訓(心掛けを正 して学べ) ※「 人 縦 ひ和 歌 管 弦 す ぐれたり とも、才 幹 の愚 かに、風 月 のかけ ぬれば、猶 し侮 らはしく、軽 々 し く覚ゆ」例の一つ。 故 に蘇 秦 は、股 を さ して眠 (前)別説話「唐の王珪の詞の事」 (前)又、人は学業をもつぱらにす を驚かしまなび、董生は、帷 (後 )(別 説 話「 太 宗 の事 」の後 に)べし。まなばざれば、道をしらず。 をたれて、外を見ず してつと 然らば則、史書・全経をも学びし みちをしらずしては、人をも身を めけり。 り、詞 花 ・翰 棠 をも嗜 みて、旧 記 もおさむることなし。物をならひ 一 生 をおくるあいだ、 (蘇秦と董生の事) にくらからず 、古 き跡 を不 耻 レ し しる事 は、 (第十「可 庶 幾才能・芸業 一て、君 道 にもかなひ、身 徳 ともせ 官 をものぞみ、身 をもてらす べき レ 二 事」七三) んこと、実 の至 要 なり。但 、又 次 はかりごとなり。しかるを、わか ざまの人は、させる才芸にたらず くさかんなる時をすぐしては、な とも、心 おきてのさ か〳 〵 しき、 にのかひあら ん。としたけ、よは 世 にある道に取 て、第 一の能 也。 ひかたぶきぬれば、たま〳 〵みる. 39. −42−. ( 42 ).

(31) 様 〳 〵 の芸 能 も、先 心 操 斉 えて 事 も 耳 にとまら ず 、心 におさ め の上 のこと な り 。さ れ ば 相 経 に らるゝ事 なし。道 をたて、家 をも も、無尽 の相どもを云て、終りに おさ むべき人 をば、いとけなくい は、 「但、貧福心に有」とかけり。 まだ物 の心 わきまへず とも、其 道 ※(前)別説話 をおしへしらすべし。およそむまれ ※(後)別説話・ 教訓( 心 掛け がたう してむまれ、あひがたう し を正して学べ) てあへり。幼 稚 にしても老 窮 にし ※「 人 縦 ひ和 歌 管 弦 す ぐれたり ても、いたづらにたはぶれ、いたづ とも、才 幹 の愚 かに、風 月 のかけ ら に眠 りて、光 陰 を 過 る事 なか ぬれば、猶 し侮 らはしく、軽 々 し れ。 く覚ゆ」例の一つ。 (「身をおさむべきやう」) ※ 教 訓 (学 業 に専 心 せよ・無駄 に 時間を過ごすな) 小一条左大将済時卿の六代 (後 )(別 説 話「 秦 の昭 王 の后 の狐 (前 )いまはそのかたらひにはした ( ナシ) に当 りて、宗 綱 宮 内 卿 師 綱 裘 」「 義 光 の郎 党 季 方 の廉 潔 」「 山 がはず して、そのおくりものをさ (『古事談』 第四勇士(季春)) と云人有けり。白河院に仕へ林 房 覚 遊 の臆 病 」 「 往 生 要 集 の ま〴〵にかまへとる。けつく、りや ※師 綱 よりも季 春 を重 視 。そのた けるが、させる才幹はなかり 文 」の後 に)抑 、季 春 国 民 たりな う はう よりとりて、あなたこなた め 「第四勇士」に収録されている。 罪 科 既 に にせいばひをなして、のちは、だう けれども 、偏 に奉 公 を 先 と がら、国 司 を奉 射 レ 事、 して、私を顧り見ぬ忠臣なる 違 勅 の者 なり。宥 めゆるさ るべき りのさ たにおよばず。おくり物の によて、…… 後に君聞 食て、 故なければ、国司の清簾、正しく おほきかたにつく事 、たゞ冥 の照 いみじく御かむ有けるとぞ。 章条のさす所也。 鑒 をいたまぬのみにあらず 、人 の (陸奥守師綱の忠直) ※別説話・ 補足(人物評) あざ けりをかへりみず 、不 当 のき (第十「可 庶 幾才能・芸業 一※「 人 縦 ひ和 歌 管 弦 す ぐれたり はまり成べし。 レ 二 事」七四) とも、才 幹 の愚 かに、風 月 のかけ (「正直をさきとすべき事」) ぬれば、猶 し侮 らはしく、軽 々 し ※説明 く覚ゆ」例の一つ。 「させる才幹は ※教訓(贈り物を受け取るな) なかりけれども 、偏 に奉 公 を 先 として、私 を顧 り見 ぬ忠 臣 なる」. 40. −43−. ( 43 ).

(32) 故に認められた師綱の話。 ※教訓(才幹がなくとも心掛け をただせ) 朝 成 卿 、検 非 違 使 別 当 の (後 )如 此 自 業 自 得 のたぐひ レ の、 時 、中 納 言 を 所 望 の間 、石 は、誠に憐愍の及ところにあらざ 清水に詣て、……はたして中 るべし。然 而 大 納 言 所 望 時 本 意 納言に任じ畢。 をとげず、悪霊に成給にけり。 (朝成卿の祈願) ※後日譚 (第十「可 庶 幾才能・芸業 一※「 人 縦 ひ和 歌 管 弦 す ぐれたり レ 二 事」七五) とも、才 幹 の愚 かに、風 月 のかけ ぬれば、猶 し侮 らはしく、軽 々 し く覚 ゆ」例 の一 つ。悪 業 故 に昇 進 出来ないところを才学によって望 みを果たした話。. 後冷泉院御時、源中納言経 (後)是又、法の理と云ながら、無 衡 卿 、検 非 違 使 別 当 にて、 下 に慙 愧 なき 心 のほど、罪 深 く ……其末絶にけり。 覚ゆ。 (中納言経衡卿の無慈悲) ※補足 (第十「可 庶 幾才能・芸業 一※教訓( 慚愧の心あれ) レ 二. 41 42. (前 )又 、経 衡 卿 のいへるごとく、 ( ナシ) 自 業 自 得 果 のたよりも 侍 べき に ( 『 古 事 談 』第 五 神 社 仏 寺 (石 清 や。 水)) (後 )如 此 の自 業 自 得 果 のたぐひ ※ 「経成卿」とする。 は、まことに憐 愍 におよばざ るべ (後)サレバ神明道理ヲステ給ハヌナ し。しかれども、大 納 言 所望 のと ルベシ。八幡 ノ別 当戒信カタリケル き、ほんゐをとげずして悪霊とな ナリ。 り給ひにけり。おかす ところのと (『続古事談』 第 二 臣節 ) が、なをきはまらず して、そのう ※補足(伝承) (ちカ) たがひのう ら は、君のため世のた ※「経成卿」とする。 めさ してそしりあるまじくは、其 つみをなだめかろしむる事 、ひと つの徳 政 なるべし。あ まねきじひ なるべし。およそ、つみをからくお こなふは、とがなり。 (「慈悲ふかかるべき事」) ※(前)説明(前話からの関連) ※(後)後日譚・ 説明 ※教訓(慈悲をもって罪を軽く裁 け) (前 )又 、ざ んきの心 なきも人 倫 にあらず。 (後 )自 業 自 得 果 といひながら 、 無 下 に慚 愧 のなき心 のほど、つみ ふかくおぼゆ。. −44−. ( 44 ).

(33) 事」七六) ※前々からの教訓(才幹がなくと (「慈悲ふかかるべき事」) も心掛けをただせ)を引き継ぐも ※教訓( 慚愧の心あれ) の。 (ママ) 承平の比、平将かど、東国に (前)又 賞あるべからん事、あなが (後 )いにしへの才 幹の意 楽もかく (ナシ) て謀叛起したりけるに、…… ちに止められても、詮なかるべし。 かはれり。 (『古事談』 第四勇士(将門)) 子 孫 を失 はんと誓 て失 られ ※「 賞 あ るべから ん事 、あながち (「正直をさきとすべき事」) (前 )下 野 国 住 人 俵 藤 太 秀 郷 は、 にけり。 に止められても、詮なかるべし」の ※感想(懐古) 将 門 追 討 の… … (以 下 討 伐 の経 (征夷大将軍忠文の勧賞) 例の一つ。 緯) (第十「可 庶 幾才能・芸業 一※教訓(賞を勧めよ) (後)爰に忠文大悪心を起して、面 レ 二 事」七八) 目なく内裏を罷出けるが、天も響 き地も崩るゝ計の大音声を放云け るは、口 惜 事 也 、同 勅 命 を蒙 て同 朝敵を平ぐ、一人は賞に預り一人 は恩 に漏 る 、小 野 宮 殿 の御 計 、 忘 されば家門衰 生々世々 不 可 レ レ 、 弊 し給 て、其 末 葉 たら ん人 は、な がく九条殿の御子孫の奴婢と成給 ふべしとて…… (『 源 平 盛 衰 記 』牟 巻 第 二 十 三「 貞 盛将門合戦附勧賞事」「忠文祝 神 レ ) 附追使 門 二 出 事 一 」 ※ 反 乱 平 定 の経 緯 、忠文 の憤 りが 詳しい。 勘 解 由 相 公 有 国 卿 、若 かり (後)彼 修因 感果の、無 限 前 )又 あ るもんにいはく、ひとへ(ナシ) レ 政事の ( ける比 、父 豊 前 守 に… … 今 中 にも、かや う の事 に付て、猶 冥 にだう りをたつれば、かならず し (『古事談』第二臣節(有国)) 被返 」と云けり。 慮各別也。いはんや人間おや。然 つありといへり。だう りにて、しか (後 )その流 れの人 の、才 も位 も高 レ たる也。 (有国、泰山府君を祭る事) ば、賞 をば勧 め、刑 をば宥 て、慈 もひがごとなるべきや う あり。ひ くおはせし人 の語 られ侍 りける。 幾才能・芸業 一悲を先とせん事、定て上は天意に がごとにて、だう りなるべき いは (『 今 鏡 』昔 語 第 九 祈 る験「 有 国 泰 (第十「可 庶 レ 二. 43 44. −45−. ( 45 ).

(34) ※. (すがわらとしあき/北海道教育大学札幌校准教授). 達 し、下 は人 望 に叶 はんも のを れあり。や うにより事にしたがひ 山府君を祭る事」) や。 て、よく思ひはからふべき事なり。 ※補足(伝承) ※「 賞 あ るべから ん事 、あ ながち (後)冥慮なを一唯ならず。いはん に止められても、詮なかるべし」の や 几 夫 を や 。おろかなる心 を も 例の一つ。 て、わが思ひえざるだうりを一す ※教訓(賞を勧め刑を宥て慈悲 ぢにだうりと思ふべからずなり。 を先とせよ) (「正直をさきとすべき事」) ※(前)金言・教訓(道理不道理に 思慮あれ) ※(後)教訓(自分だけが正しいと 思うな) ) (. の研究成果の一部である。 C 19K02827. ( 46 ). 事」七九). 本稿は、科研費基盤研究. −46−.

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参照

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