小学校算数における加減文章題の難易レベルに関する研究
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(2) はじめに 1997年3月,国立教育研究所は「日本の中学生と世界各国の中学生を比較する と,日本では,数学の学力は高いけれども数学は嫌いだと言う生徒が多い。」と 報告した。それは,数学を学習する中学生に限ったことではなく,算数を学習す る小学生にもおそらくあてはまるであろう。算数は,ほかの教科に比べて「でき た・できない」, 「わかった・わからない」が児童自身ではっきり感じ取ること. ができる教科である。そのため,算数ができない児童にとっては,嫌いな教科・ 苦手な教科になってしまう。. 中でも,計算問題よりも文章題の方が嫌いだという児童はかなり多い。低学年 の場合,文章を読む力が育っていないことがその理由としてあげられることがあ る。しかし,ただ単に文章を読む力が育っていないためだとすれば,学年が進む にしたがって読む力も育ち,文章題が難しいと思う児童は減っていくはずである。 ところが現実は,学年が進んでもその数は,あまり変わらない。ということは, 文章を読む力以外の何かが関係しているはずである。 また,児童は, 「文章題は難しいものだ。」という先入観を少なからずもって. いる。そうなると,前向きに文章題に取り組むことができなくなる。したがって, 文章題に初めて接する低学年のときから意欲的にそれに取り組むことができるよ うにするためにも,児童にとって文章題が難しい要因を明らかにすることが大切 であると思われる。. では,低学年で学習する加法や減法の文章題が,児童にとって難しい原因は何 であろうか。それが明らかになれば, 「算数嫌い」の児童に対しても,適切な指. 導を行うことができるのではないか。これが,本研究を始めるきっかけである。.
(3) 【目. 次】. はじめに 第1章 本研究の目的と研究方法 一一一一一一一一一一一一一一……一一一一一一一一…一一一. 第1節 研究の目的 第2節 研究方法 1.基本的枠組み 2.研究方法 …. 鱒 闇 一 一 ■ 一 一 一 騨 一 一 一 一 一 一 一 ■ 一 一 ■ 一 ■ 一 一 一 一 卿 一 聯 鵬 一 一 一 一 一 騨 一 鱒 一 一 一 一 一 一 一 鞠 ,. 一 一 一 } 一 一 一 ■ ■ 一 一 一 帽 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 ■ 一 一 一 鱒 層 一 一 一 一 一 一 ■ 一 一 曜 一 騨 一 一 一 一 一 一. ■ 一 一 一 一 陶 一 一 一 ■ 一 一 一 一 〇 一 一 一 一 一 一 脚 騨 一 一 一 一 ■ 一 一 一 一 庸 一 旧 一 一 一 ■ 一 一 一 一 ■ 一 一 帥. 一 一 一 ■ 一 一 句 一 一 冒 一 一 ■ 一 一 一 } 一 一 一 一 零 騨 一 一 一 一 一 一 藺 一 一 一 一 一 ■ 一 一 一 一 一 一 暉 ■ 騨 曜 鼎 一 ■. 第2章 本研究に関する先行研究. 闇 一 一 一 一 一 一 一 一 鴨 一. 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一. 1. 1. 3 3. 4. @6. 第1節 加減文章題の分類. 6. 1.意味構造の違いによる分類. 6. 2.文脈の違いによる分類. 9. 第2節 加減文章題の難易. 12. 1.意味構造の違いによる難易. 12. 2.文脈の違いによる難易. 18. 第3章 加減文章題の難易レベル 一一一一…一……一…一一…一一一一一一……20. 第1節 加減文章題の難易レベルに関する実態調査 ……一一一…20 1.調査目的 …一一……………一一一一一一…一一一一一一…一一一一一……一・20. 2.調査方法 一一一………一……一一一一……一一一一……一一一一一一一……20. 3.調査結果 一一………一一一一…一一一一一………一……一一一一一一…一…23. 4.調査結果の分析と考察 一一……一…一一……一…一一一一…一…25. 第2節RileyとGreenoの難易レベル 一…一一……一一一…一一一一一一…30 1.18タイプの加減文章題 …一一一……一一一…一一一……一一…一…一30. 2.知識状態の3つのレベル ……一…一一一一…一一一一一……一一一…31. 3.知識状態の違いによる難易レベル …一一一…一…一一…一一一…34 第3節 難易レベル設定の妥当性 一…一一…一…一一…一一一一一一…一40. 1.問題タイプの分類方法 一一一…一…一………一一一…一………40 2.難易レベルの設定方法 一一一一…一……一一一…一一…一……一一…41.
(4) 第4章 加減文章題指導の現状と指導への示唆 一一一…一一一…一一一…一一一43 第1節 教科書に見られる加減文章題の現状 一…一一一一一一……一一一・43 1亭調査目的 一一…一一一…一一一……一…………一一……一…一一一一一一・43. 2.調査対象 …一一一一…一一一一……一…一一……一……一一……一…43 3.調査結果 一一…一一……一一一一一一一一一一一一一一一一…一一一一一一一一一一一一一一一一一・43. 4.調査結果の分析と考察 ……一一一一一一一一一一一一一一…一一…一…一…一46 第2節 加減文章題指導への示唆 一一一一一一一一…一一一…一一一一一一一一一一一一54. 1.レベル3問題の指導 一一…………一…一一一一一一……一一一一…一一54. 2.問題状況の違いを考慮した指導 一一一…一一…一一一…一一一……61. 62. おわりに. 引用・参考文献. 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一・. U4.
(5) 第1章 本研究の目的と研究方法 第1節 研究の目的. これまでに,児童が,加法または減法によって解かれる文章題(以下,加減文 章題と呼ぶ)を解決していくときに,どのような知識が必要で,どのような過程 を経るのかなどについて,多くの研究がなされてきている。それは,計算問題に 比べて,文章題を苦手とする児童が多いためであろう。しかし,加減文章題すべ てが,同じように難しいわけではない。例えば,塗師(1986)は,1年生を対象と して,加減文章題に関する調査を実施したところ, 【表1.1】のような結果を 得ている。. 【表1.1:調査問題と正答率】 調査問題 1. おとこのこが8にん,おんなのこが6にんいます。 みんなでなんにんいるでしょうか。. 2. 0.90. 2ねんせいは,75にんいます。1ねんせいは2ねんせいより4にん おおいそうです。1ねんせいはなんにんいるでしょうか。. 3. 正答率. 0.68. いうがみを3まいもらったので8まいになりました。 はじめいうがみをなんまいもっていたでしょうか。. 0.31. 4 ひろしくんはがようしを8まいもっています。ひろしくんはあきら くんよりがようしを3まいおおくもっています。あきらくんはがよ うしをなんまいもっていますか。. 0.19. (注)調査問題より筆者が抜粋し,番号をつけた。. 1と2の問題は,どちらも加法によって答えが求められる問題であるが,正答 率には大きな差がある。その原因はいくつか考えられる。例えば,1の問題は1. けた+1けたの計算で答えを導くことができるが,2の問題は2けた+1けたの 計算が必要であり,児童にとっては,2けた+1けたの計算の方が,当然難しい。 つまり,問題に使われている数値の違いが,正答率に影響したと考えられる。. また,2っの問題文を比較してみると,2の問題の方が長い。そのため,問題 文を読んで題意を理解するのは,2の問題の方が難しいであろう。よって,問題 文の長さも,正答率に影響を及ぼす要因かもしれない。. 次に,3と4の問題を見てみると,問題に使われている数値が同じであり,ど 1.
(6) ちらも「8−3」という計算によって答えを求めることができる問題であるが,. 正答率には差がある。その原因として,1と2の問題と同じように,問題文の長 さが異なるということが考えられる。また,これらの問題は,問題の意味も異な る。3の問題は, 「初めにもつていた色紙が,もらったことによって増えた。」. という意味の問題である。それに対して,4の問題は, 「2人の色紙の枚数を比 べると,一方の方がもう一方よりも多く持っている。」という意味の問題である。 児童にとって,物をあげたりもらったりすることは,算数を学習する以前の小さ い子どものときから,日常生活の中で数多く経験してきている。それに対して,. 2人の持っている物を比べるという経験は少ない。このような日常経験の差が問 題の意味理解に影響し,正答率が変化しているとも考えられる。. さらに,1つの要因だけが異なれば,問題の難易はそれによって決定されるが, 異なる要因が複数になれば,問題の難易は容易には決定できない。例えば,数値 と問題文の長さが異なり,ほかは全く同じ2つの問題があるとする。その場合, けた数が大きくて問題文の長い方が,けた数が小さくて短い問題よりも難しい。 しかし,一方は,けた数が大きくて短い問題,もう一方は,けた数が小さくて長 い問題であれば,正答率にあまり差はないかもしれないし,どちらかが難しいか. もしれない。つまり,2つの要因のうちどちらか一方が問題の難易により強く影 響することも考えられる。教師が問題の難易に影響を及ぼすこのような要因の違 いを知っていれば,指導に際して,より強く影響する要因に配慮するといったよ うに,児童に対する指導方法も変わってくるはずである。. 以上のように,児童が普段接している問題は,いくつもの要因が重なり合って おり,それらの影響によって,問題が難しくなったり,易しくなったりする。し たがって,加減文章題にどのような要因がどのように絡めば,問題が難しくなる のかを明らかにすることは,加減文章題を指導する上で,重要なことである。児. 童にとって難しい問題を教師が把握することによって,それに対する指導上の工 夫も生まれてくる。そして,教師がそのような指導を心がけることで,児童の加 減文章題の解決が促進されると思われる。. そこで,本研究では,加減文章題の解決に影響を及ぼす要因に着目し,それぞ れの要因が,問題の難易にどのようにかかわっているかを明らかにすることを第 一の目的とする。そして,その結果をもとに,現在の小学校算数における加減文 章題指導の現状を検証し,それに対する示唆を述べる。. 一2一.
(7) 第2節研究方法 1.基本的枠組み 加減文章題の難易を考察するためには,まず,加減文章題の解決に影響を及ぼ す要因を明らかにしなければならない。そのために,Kulm(1984)の枠組みを導入. する。彼は,問題解決に影響を与えている要因として,次の4つをあげている。 (1)統語論要因(Syntax Variables). 統語論要因とは,問題文の中の単語や記号の配列の違いである。例えば,問題 文の長さや問題文に含まれるセンテンスの数,あるいは,登場する人物や物の数 が,これにあたる。. (2)内容要因,および,文脈要因(Content and Context Variables). 内容要因とは,叙述された問題についての数学的な意味の違いであり,文脈要 因は,非数学的な意味の違いである。数学的な意味については,整数論や確率論 といった特定の数学的内容領域に関することから,二項演算や逆演算といった数. 学的操作に関するものまで,広い範囲を含んでいる。また,文脈要因は,数学的 な意味を理解するための助けとなるかもしれないものであり,具体的記述か抽象 的記述かといった問題の記述の仕方や提示方法の違いがこれに含まれる。 (3)構造要因(Structure Variables). 構造要因とは,叙述された問題のすべての要素に関する数学的特性の違いであ る。例えば,解決にどのような手続きが必要かといった解決方略の違いや,何回 の計算によって解くことができるかといった演算操作の数の違い,あるいは使わ れているかっこの数の違いなどである。 (4)発見的行動要因(Heuristic Behavior Variables). 発見的行動要因は,先の3つとは異なる。上述の(1)∼(3)は,問題の叙 述に依存している。しかし,発見的行動要因は,問題を解く活動に影響を及ぼす ものであり,問題を解くのを助ける手続きやヒントをさす。したがって,先の3 つは,問題の叙述に依存して難易に影響を及ぼすが,発見的行動要因は,問題の 難易を決めるものではなく,単に問題に対する情報を与えるものである。例えば, 「図にかいてごらん。」といった助言がこれに含まれる。. 一3一.
(8) これら4つの要因の中で, (4)は,加減文章題の問題文そのものとは関連が ない。また, (1)は,文章題が文章で書かれていることからすれば無視できな い要因ではあるが,算数という面から見れば本質的とは思えない。したがって,. 加減文章題の難易に大きくかかわっている要因としては, (2)と(3)が考え られる。そして,これら2つの要因は,どちらにも数学的な要素が含まれており, 無視できない要因である。しかし, (3)は,算数全体を通じて,一般に共通す る要因であるのに対して, (2)には,加減文章題固有の要因が含まれる。そこ で,本研究では, (2)の内容要因,文脈要因に着目し,加減文章題の難易につ いて考察する。. また,内容要因である数学的な意味の違いが難易に影響を及ぼすということは, その問題の意味を理解するための概念的知識をもっているかどうかによって難易 が異なるということである。この数学的な意味は, 「意味構造」と呼ばれ,加減. 文章題では,結合,変化,比較の3つがあるとされている。つまり,こうした意 味構造の違いによって加減文章題の難易は異なるのである。したがって,本研究 では,内容要因として,意味構造の違いに焦点をあてて考察することにする。. 2.研究方法 まず,加減文章題の難易に関するこれまでの先行研究を概観する。そして,加 減文章題の難易にかかわる要因として,どのような要因が考察されてきたか,ま た,それらが加減文章題の難易にどのような影響を及ぼしているかを明らかにす る。. そして,先行研究には見られない視点も加味して,難易に影響を及ぼすと思わ れる要因に関し,実態調査を行う。これは,先行研究で得られた結果が妥当なも のかどうかを検証し,より確定的な難易を決定しようとするものである。つまり,. 先行研究と同じ結果が得られた問題の難易は,ほぼ正確なものであり,調査対象 の違いや指導法の違いといったことによって影響されないと言える。逆に,先行 研究とは違った結果が得られた問題の難易は流動的であり,先行研究では考慮さ れなかった要因が影響している可能性がある。また,先行研究で考慮されている 要因に,新たな要因を加えることによって,これらの要因の間に関連があるのか どうかも明らかになる。そして,これらの考察をもとに,加減文章題の難易を決 定する。. 次に,現行の小学校算数において,どのような指導がなされているかを明らか にするために,教科書に見られる加減文章題を分析する。それによって,問題点 が表面化し,指導にあたっての改善策を示すことができるであろうと思われる。. 教科書を使って加減文章題を学習する児童にとっては,そこから受ける影響は大. 一4一.
(9) きい。したがって,教科書に何らかの問題があれば,児童にとって不適切な指導 を行っているおそれがあり,文章題嫌いを増やす原因になりかねない。そのよう なことがないようにするためにも,教科書を調査することは重要であると考える。 そして最後に,教科書の調査だけでなく,研究全体から得られたことをもとに, 加減文章題指導への示唆を述べる。. 一5一.
(10) 第2章 本研究に関する先行研究 第1節 加減文章題の分類. 1.意味構造の違いによる分類 加減文章題は,意味構造の違いによって,大きく「結合」, 「変化」, 「比. 較」の3つに分類される。 「結合」は,2つの異なる数量を合わせるという意味 構造の問題である。また, 「変化」は,初めにあった数量が増える,あるいは減. るという意味構造の問題である。そして, 「比較」は,2つの異なる数量を比べ るという意味構造の問題である。. これら3つの問題それぞれは,未知数の位置と演算操作という要因によって, さらに細分化される。ここでは,14のタイプに分類しているVergnaud(1982)と岩 崎(1989)の研究について述べる。. (1)Vergnaudの研究 Vergnaud(1982)は,図や記号を用いて,問題の意味構造を説明している。そし. て,問題における未知数の位置の違いと,問題構造が加法的か減法的かの違いに よって加減文章題を分類している。ここでいう加法的構造とは,合わせる,増え る,大きいのような言葉で表された問題をさし,減法的構造とは,減る,小さい のような言葉で表された問題をさす。. 以下,彼の表記にしたがって,加減文章題の意味構造と,それらがどのように 分類されるかを示す。. ①結合問題. 圏}回. ②変化問題. ③比較問題. ⑤. 画. 回一一今回. 聖⑤. 彼の表記に使われている図や記号は,次のような意味を表している。 □:自然数. ○:方向数. →:変換. ↑:関係. }:同じ性質をもつ要素の合成. 一6一.
(11) 結合問題は,a, b, cのどこが未知数であるかによって2つのタイプの問題. に分かれる。前頁の図式の。は,2っの数量が結合した集合をさし,aとbは,. 部分集合をさす。また,aとbは,並列的な数量で,方向性がない。つまり,こ れら2つは,どちらを未知数としても同じ問題になる。したがって,cが未知数. であるか,aまたはbが未知数であるかによって,結合問題は2つのタイプに分 かれる。. 変化問題は6つのタイプの問題からなる。前頁の図式のaは初めの数量,bは 変化した数量,cは変化した結果の数量をさす。この問題には,初めの数量が増. 加するという変化と,減少するという変化の2つがある。これら2つの変化にお いて,a, b, cのいずれを求める問題であるかによって,3のタイプに分かれ る。したがって,変化問題には6つのタイプの問題がある。. 比較問題は,6つのタイプの問題に分かれる。前頁の図式のaは,比較の基準 となる数量,cは比較の対象となる数量, bは比較した差の数量をさす。この問. 題では,比較の基準となるaよりも,比較の対象となる。の方が大きいか小さい かによって,2つのタイプに分かれる。また,それぞれのタイプは,a, b, c. のいずれが未知数であるかによって,3つに分かれる。したがって,比較問題は 6つのタイプの問題からなる。. 以上のように,加減文章題は,14タイプに分類することができる。なお,下記 の【表2.1】に,これらタイプの問題の具体例を示した。 (2)岩崎の研究 岩崎(1989)は,Vergnaud(1982)の図式をもとに,14タイプの問題を記号化して. いる。彼は,問題外を構成している要素の頭文字をとって,結合をSSS(state −state−state),変化をSTS(state−transformation−state),比較をSRS (state−relation−state)と表している。そして,求める箇所を〔〕で囲み,問題. 構造が加法的か減法的かを+,一の符号で表している。. 彼の分類によると,14タイプの問題は,次のようになる。なお,●や■は,未 知数を表す。. 【表2.1:加減文章題の分類】 意味構造 結合. rSS. タイプ. 例. 結合1 SS〔S〕. 太郎くんはおはじきを8男持っています。. @ □. ヤ子さんは3個持っています。二人合わせ. @ ■ @ □. ケると何個になりますか。. 一7一.
(12) 結合2 S〔S〕S. と8個になります。太郎くんのおはじきは. □ □. STS. 3個あります。花子さんのおはじきは何個 ですか。. 圏. 変化. 太郎くんと花子さんのおはじきを合わせる. 変化1 ST+〔S〕 ○ ロー一〉■. 変化2 ST一〔S〕. □→■ ○ 変化3 S〔T+〕S ● ロー一〉□. 変化4 S〔T一〕S. □→□ ● 変化5 〔S〕T+S ○. ■→□. 太郎くんはおはじきを3個持っています。. 花子さんから5個もらいました。太郎くん はおはじきを何個持っていますか。. 太郎くんはおはじきを8個持っていました 花子さんに5個あげました。今,太郎くん はおはじきを何個持っていますか。. 太郎くんはおはじきを3個持っていました 花子さんから何個かもらったので,8個に なりました。花子さんは何個あげましたか. 太郎くんはおはじきを8個持っていました 花子さんに何個かあげたので3個になりま した。花子さんに何個あげましたか。. 太郎くんはおはじきを何個か持っていまし. た。花子さんから5個もらったので8個に なりました。太郎くんはおはじきを初めに 何個持っていましたか。. 変化6 〔S〕T−S. ■→□ ○. 太郎くんはおはじきを何個か持っていまし. た。花子さんに5厚あげたので3個になり ました。太郎くんはおはじきを初めに何個 持っていましたか。. 比較. 比較1 S〔R+〕S □. 1・ SRS. 太郎くんはおはじきを8個持っています。. 花子さんは3個持っています。太郎くんの おはじきは花子さんより何個多いでしょう ゥ。. 比較2 S〔R一〕S □. ・↑ □. 太郎くんはおはじきを8個年っています。. 花子さんは3個持っています。花子さんの おはじきは太郎くんより何個少ないでしょ うか。. 一8一.
(13) 比較3 SR+〔S〕 ■. /・. 太郎くんはおはじきを3個持っています。. 花子さんのおはじきは太郎くんより5個多 いです。花子さんは何個持っていますか。. □. 比較4 SR一〔S〕 ■. ・!. 比較5 〔S〕R+S □. 1・ 比較6 〔S〕R−S □. ・1. 太郎くんはおはじきを8個持っています。. 花子さんのおはじきは太郎くんより5個少 ないです。花子さんは何個持っていますか 太郎くんはおはじきを8個持っています。. 太郎くんのおはじきは花子さんより5個多 いです。花子さんは何個持っていますか。. 太郎くんはおはじきを3個持っています。. 太郎くんのおはじきは花子さんより5個少 ないです。花子さんは何個持っていますか. この分類は,多くの加減文章題の研究において,基本的な枠組みとなっている。 また,我が国における分類(合併,求残,求差など)とも,本質的に変わらない。. そこで,本研究においても,この分類を使用する。. 2.文脈の違いによる分類 文脈の違いによって文章題を分類する場合,問題の状況に着目するか,問題を 提示する形式に着目するかによって,その方法は異なる。ここでは,状況に着目 しているCaldwell&Goldin(1979)の研究と,状況と提示形式の両方に着目してい るMinatoら(1993)の研究について述べる。. (1)CaldwellとGoldinの研究 Caldwell&Goldin(1979)は,問題状況が,具体的か抽象的か,事実的か仮定的. か,という点に着目している。彼らは,問題状況が現実の対象を用いて日常的な 文脈で記述されている問題を具体的な問題と呼んでいる。例えば,野球をしてい る子どもを素材とした問題は,具体的な問題である。それに対して,問題状況が 抽象的か象徴的な対象によってのみ記述されている問題を抽象的な問題と呼んで いる。数字だけを用いた文脈のない問題は,抽象的な問題である。一方,現実的 に起こる,あるいは起こった状況を記述している問題は,事実的な問題として分 一9一.
(14) 類されている。それに対して,あり得ない状況やこれから起こるかもしれない状 況を記述している問題は,仮定的な問題として分類されている。. そして,具体的か抽象的か,事実的か仮定的かの組み合わせによって,彼らは,. 文章題の問題を抽象的事実的問題,抽象的仮定的問題,具体的事実的問題,具体 的仮定的問題の4つの問題タイプに分類している。 この分類は,四則演算のどれを用いて解く問題であるかということとは,全く 関係がない。解決に必要な演算が加法であっても乗法であっても,鉛筆のような 具体的な対象を使って,現実的な状況の問題を記述することは可能である。また, 加法と乗法の両方の演算を用いて解く問題であっても,同様である。. したがって,本研究の対象である加減文章題に限って考えても,問題タイプは 上述の4つになる。以下に,加法的構造の問題を例として,これらの例題を示す。 ①抽象的事実的問題. ある数がある。この数に5を加えると,8になる。その数はいくつか。 ②抽象的仮定的問題 ある数:がある。もしも,この数に5を加えるならば,8になるだろう。その 数}まいくつカ」。. ③具体的事実的問題 ただしくんは,何枚かの折り紙を持っていた。あきおくんから5枚もらった ので,8枚になった。ただしくんは,三枚持っていたのか。. ④具体的仮定的問題. ただしくんは,何枚かの折り紙を持っている。もしも,あきおくんから5枚 もらったとすると,8枚になる。ただしくんは,何枚持っているのか。 (2)Minatoらの研究 Minato, Honma&Takahashi(1993)は,問題状況と問題を提示する形式に着目し て,文章題を分類している。. 彼らは問題状況を,児童の日常生活とどの程度関係があるかによって2つに分 けている。児童の生活との関連が深いあめやクレヨンを使って述べられている問 題は,具体的な問題である。それに対して,あまり関連のないタイルや点を使っ て述べられている問題は,抽象的な問題である。. また,提示形式も,図的か言語的かによって,2つに分かれる。彼らは,絵や. 一10一.
(15) 図によって表された問題を図的形式の問題と呼んでいる。こうした問題でも,. 「答えはいくっですか。」のような,問題として成立するために必要な最小限の 言葉は含まれている。また,絵や図がなく,言葉のみによって表された問題を, 言語的形式の問題と呼んでいる。. このような問題状況と提示形式の組み合わせによって,文章題の問題タイプは, 次のように分かれる。それは,図的具体的問題,言語的具体的問題,図的抽象的 問題,言語的抽象的問題の4つである。この分類も,Caldwell&Goldin(1979)の 分類と同様,解決に必要な四則演算に関係がない。したがって,加減文章題もこ. れらの4つに分類することができる。以下に,図的具体的問題と図的抽象的問題 の例を示す。. Oo豊●■. 0,豊●C. 1:㌫一・i二一._.. fO」,監℃ムρ禽り8「・ ▼◎a,に竃ゐ,轟9艦サ。. :. ■ ● ● ●. ● ● ● 6. ↓. ↓. 白白;∫. τゐqい,し」艦し亀轟亀●. 「o盈9艦2つの島,腰りQ,‘9●し象。. ε鰯50“,¢9じ轄.. ℃ゐ學亀ムこ魑..り¢サ,。. 臼,震「,.. 画1,こ. 團1}こ. 本研究においては,CaldwellとGoldinの分類とMinatoらの分類に共通している 具体的か抽象的かという状況の違いに焦点をあてる。CaldwellとGoldinが着目し た仮定的状況は,我が国の児童が全く接したことのない表現である。したがって, 本研究においては,仮定的か事実的かの違いは取り扱わないことにする。. ll.
(16) 第2節 加減文章題の難易. 1.意味構造の違いによる難易 意味構造の違いによって分類される加減文章題の14タイプの問題は,難易もそ れぞれ異なる。問題の難易は,理論的考察によって決められる場合と,実態調査 によって決められる場合がある。ここでは,前者の方法をとっているNesherら (1982)の研究と,後者の方法をとっているIshida(1987)の研究について述べる。. (1)Nesherらの研究 Nesher, Greeno&RiIey(1982)は,問題解決能力の発達段階を4つのレベルに分. け,どの段階に達していれば解くことができる問題かによって,各問題タイプの 難易を決定している。第1レベルは「集合の要素を数えること」ができる段階,. 第2レベルは「変化」が理解できる段階,第3レベルは「部分一部分一全体」関 係が理解できる段階,第4レベルは「方向的関係」が理解できる段階である。 そして,各レベルは,問題解決に必要な「経験的知識」, 「論理的操作」, 「数学的操作」の3つの要素によって特徴づけられている。 「経験的知識」は,. 問題の文脈を理解する知識である。また, 「論理的操作」は,集合,および集合 間の関係に関する知識である。そして, 「数学的操作」は,数や数式に関する知. 識である。以下に,発達段階の各レベルがこれら3つの要素によってどのように 特徴づけられるかを示す。. ①レベル1:集合の要素を数えること 経験的知識・・位置や所有の変化を表すような「加える」, 「あげる」,. 「とる」という言葉の意味が理解できる。 論理的操作・・集合の要素の数(基数)が理解できる。. 数学的操作・・集合の要素を数えたり,基数を見つけたりすることができる。. 2と3では3の方が大きいといったような,基数の大小が理 解できる。. 例えば,変化2問題は,レベル1として分類されている。その理由を次のよう な問題で考えてみる。. 12一.
(17) Joeは,おはじきを8個持っている。. 彼は,Tomにおはじきを5個あげた。 Joeは,おはじきを何個持っているか。. 第1文は,Joeのもっているおはじきの集合の要素が8個であることを理解するこ とを要求する。これは,論理的操作によって可能になる。第2文は,減少を述べ ている「あげた」という言葉の意味を理解することを要求する。これは,経験的. 知識によって可能になる。そして,初めの8個の要素からなる集合から,5個の 要素を取り除いた最後の集合の要素を数えることによって答えが得られる(数学的 操作)。よって,変化2問題は,レベル1として分類される。. このように,レベル1の問題は,問題の叙述にしたがって,集合の要素を数え るだけで答えを求めることができる。. ②レベル2:変化 経験的知識・・原因と結果からなる出来事の連続が理解ができる。. 論理的操作・・最初の集合と結果の集合とを照合することによって,変化の 方向(増加か減少か)が理解できる。 数学的操作・・手続きとして,加法と減法が理解できる。. 例えば,変化3問題は,. レベル2として分類されている。その理由を次のよう. な問題で考えてみる。. Joeは,おはじきを3個持っていた。 それから,Tomは,さらにいくつかのおはじきを彼にあげた。. 今,Joeは,おはじきを8個持っている。 Tomは, Joeにおはじきを何個あげたか。. 第1文は,レベル1の論理的操作によって理解される。次に,第2文と第3文か ら,TomがJoeにあげたことによって, Joeの持っているおはじきが結果として8個. になったことが理解される(経験的知識)。また,最初の集合3個と結果の集合 8個とを照合することによって,おはじきが増えたという変化の方向が理解され. る(論理的操作)。そして,8個の集合から3個の集合をひくという減法の手続 きによって,答えが得られる(数学的操作)。. 一13一.
(18) また,比較1問題も,. レベル2として分類されている。その理由を次のような. 問題で考えてみる。. Joeは,おはじきを8個持っている。. Tomは,おはじきを3個持っている。 Joeは, Tomよりもおはじきを何個多く持っているか。. 第1文と第2文は,レベル1の論理的操作によって理解される。そして,この問 題は,Joeの持っている個数とTomの持っている個数という2つの数量を比較する のではなく, 「Joeの持っている個数から何個減らすとTomの持っている個数にな. るか。」と考えることができる。つまり,比較の問題ではなく, 「8個のおはじ きを3個にする。」という変化の問題とみなすことができる。したがって,この2. つの数量の関係は,8個の集合が変化した結果,3個になったとしてとらえられ,. レベル2の経験的知識と論理的操作によって理解される。その後,8個の集合か ら3個の集合をひくという手続きによって答えが得られる(数学的操作)。よって,. 比較1問題は,レベル2として分類される。. ③レベル3:部分一部分一全体 経験白勺矢ロ識・. ・部分一部分一全体スキーマを表象し,一連の出来事の中で, 何が未知数であるかが理解できる。. 論理的操作・. ・3つの集合の全体集合と部分集合の関係が理解できる。. 数:学的操作・. ・=. ナ結ばれた3つの数字の関係が理解できる。例えば,a+. bニ。ならば,c−b=・aであり, c−a=bであることが 理解できる。. 例えば,変化5問題は,. レベル3として分類されている。その理由を次のよう. な問題で考えてみる。. Joeは,おはじきを何個か持っている。. 彼は,Tomからおはじきを5個もらったので8個になった。 ∫oeは,初めに何個持っていたか。. この問題を解決するためには,未知数は初めに持っていた数であることを理解し,. 初めに持っていた数ともらった数5が部分集合であり,結果の数8が全体集合で あることを理解しなければならない。それは,レベル3の経験的知識と論理的操. 一14一.
(19) 作によって可能になる。そして,持っていた数をxとすると,x+5=8という 関係が成り立ち,8−5=xであることを理解することによって答えが得られる (数学的操作)。よって,変化5問題は,レベル3として分類される。. また,比較3問題もレベル3馳として分類されている。その理由を次のような問 題で考えてみる。. Joeは,おはじきを3個持っている。 Tomは, Joeよりもおはじきを5個多く持っている。 Tomは,おはじきを何個持っているか。. この問題は,レベル2の段階で考えると, 「3個のおはじきが5個になった。」. という変化でとらえられ,間違った答えを導く。しかし,レベル3の部分一全体 関係を理解できれば,Joeの持っているおはじきとTomの持っているおはじきの2. つの集合と,それら2つの集合の差集合という3つの集合の関係がわかる。それ は,次のようなことからレベル3の論理的操作によって可能になる。比較3問題 では,2つの集合の差集合という新たな集合を理解することが重要である。差集 合は, 「Tomは, Joeよりも5個多い。」という一文からつくり出される。この一. 文から,次の2つのことが理解されなければならない。1つは, 「Tomの方がJoe よりも多く持っている」という数の大小関係であり,もう1つは, 「5個多い」. という数量である。これら2つを理解することによって,Joeの持っているおはじ きの集合と差集合が部分集合であり,Tomの持っているおはじきの集合が全体集合 であるという部分一全体関係が明らかになる。したがって,比較3問題は,レベ ル3として分類される。. ④レベル4:方向的関係 経験的知識・・「より多い」や「より少ない」のような比較の方向的記述が 理解できる。2つの数量の問の関係を一方向からだけでなく, 逆からも理解することができる。. 論理的操作・・集合Aが集合Bよりも大きいということは,集合Bが集合A よりも小さいことであることが理解できる。. 数学的操作・・不等式を理解し,加法や減法によって等式に変えることがで. きる。例えば,a>bならば, a−cニbであり, b+cニ aであることが理解できる。. 一15一.
(20) 例えば,比較5問題は,レベル4として分類されている。その理由を次のよう な問題で考えてみる。. Joeは,おはじきを8個持っている。. 彼は,Tomよりもおはじきを5個多く持っている。 Tomは,おはじきを何個持っているか。. この問題を解決するためには,Tomの持っている数が, Joeと比較して多いのか少 ないのか,その数はいくつなのかを理解しなければならない。 「Joeは, Tomより も5個多い」ということは, 「Tomは, Joeよりも5個少ない」ということである。. これは,レベル4の経験的知識と論理的操作によって理解される。そして, 「Joeの数>Tomの数」であり, 「Tomは, Joeよりも5個少ない」ならば, 「8−. 5=Tomの数」であるということを理解することによって答えが得られる(数学的 操作)。よって,比較5問題は,レベル4として分類される。. 以上のような定義にしたがって,Nesherらは,14タイプの問題を各レベルに分 類している。それぞれの問題のレベルは, 【表2.2】のとおりである。 【表2.2:Nesherらのレベル】 《. 問題タイプ. レベル1. 結合1 結合2 変化1 変化2 変化3 変化4 変化5 変化6 比較1 比較2 比較3 比較4 比較5 比較6. ×. レベル2. レベル3. レベル4. × × × × ×. × × × ×. ×. × × × 》. (P.392). 一16一.
(21) (2)Ishidaの研究 Ishida(1987)は,14タイプの問題の難易を決定するために,実態調査を行って. いる。調査対象は,小学校の2年生と3年生の児童である。そして,各問題の正 答率を基準としながらも,ほかの様々な要因を総合的に考慮した上で,難易を決 めている。考慮された要因は,場面の難易,構造の難易,調査に用いた語や表現. の難易である。例えば,正答率ではレベル1とレベルづけされた変化4問題は, 構造の難易を考慮した結果,レベル2に変更されている。彼が調査に用いた変化 4問題は,次のような問題文であった。. たけしは,キャラメルを8こもっていた。そして,かれは,まさおにキャラ メルをなんこかあげた。いま,たけしはキャラメルを3こもっている。たけ しは,まさおにキャラメルをなんこあげたか。 (注)Ishida(1987)において英文で示されている問題を筆者が翻訳した。. この変化4問題では,問題の構造を理解していなくても,問題文の中の「あげ た」という言葉だけから減法を適用し,正しい答えを得ることができる。もしも, 問題の構造を正しく理解している人のみを取り上げて,それを正しい答えとする. ならば,変化4問題の正答率は下がる。したがって,変化4問題は,レベル2と して考えるのがよいであろう。. このような考察を行った結果,Ishidaは,14タイプの問題の難易を【表2.. 3】のように4つのレベルに分類している。 【表2.3:Ishidaのレベル】 《. 問題タイプ. レベル1. 結合1 結合2 変化1 変化2 変化3. ×. 変化4 変化5 変化6 比較1 比較2 比較3 比較4 比較5 比較6. レベル2. レベル3. レベル4. ×. × × × ×. × × ×. × × × ×. ×. 》 (P.7). 17一.
(22) 2.文脈の違いによる難易 加減文章題の文脈の違いによる難易は,実態調査の結果をもとに決定されるこ とが多い。ここでは,前節の分類にしたがって,問題状況と提示形式の違いによ る正答率の比較から難易を決定している研究について述べる。. (1)CaldwellとGoldinの研究. CaldweH&Goldin(1979)は,文脈の違いによる4タイプの問題(抽象的事実的 問題,抽象的仮定的問題,具体的事実的問題,具体的仮定的問題)について,実. 態調査を行っている。調査対象は,小学4,5,6年生である。各問題タイプそ れぞれに対する正答数を, 【表2.4】に示す(p.330)。. 【表2.4:各問題タイプの正答率】 《. 学年. 被験者. 4年生. 120. 5年生. 6年生. 135. 144. 問題タイプ. 正答数. 600. 抽象的事実的問題. U00. 鰹ロ的仮定的問題. U00. ?フ的事実的問題. U00. ?フ的仮定的問題. 675. 抽象的事実的問題. U75. 鰹ロ的仮定的問題. U75. ?フ的事実的問題. U75. ?フ的仮定的問題. 720. 抽象的事実的問題. V20. 鰹ロ的仮定的問題. V20. ?フ的事実的問題. V20. ?フ的仮定的問題. 105 P68 Q18 P91 204 Q49 R21 R05 281 R46 S19 S11. 問題数:. 》. (p.330). これらの結果から,CaldwellとGoldlnは, に,以下のようになるとしている。 1. 具体的事実的問題. 2. 具体的仮定的問題. 3. 抽象的仮定的問題. 4. 抽象的事実的問題 18. 4タイプの問題の難易は,易しい順.
(23) (2)Minatoらの研究 Minato, Hon皿a&Takahashi(1993)は,彼らの分類(図的具体的問題,言語的具. 体的問題,図的抽象的問題,言語的抽象的問題)にしたがって,各問題タイプに. 関する実態調査を行っている。調査対象は,小学2,3,4年生である。各問題 タイプの平均値を, 【表2.5】に示す(p.197)。. 【表2.5:各問題タイプの平均値】 《. 提示形式 状況. 学 年 2. 3. 4. 図的. 具体的. 10.07. 7.27. 8.98. 図的. 抽象的. 9.63. 7.19. 8.96. 言語的. 具体的. 9.62. 6,42. 8.68. 言語的. 抽象的. 8.92. 6.03. 8.43. 》 (P.197). Minatoらは,これらの結果をもとに,4タイプの問題の難易については言及し ていない。しかし,平均値の高い問題は易しい,平均値の低い問題は難しいと考 えれば,いずれの学年においても,難易の順序は,易しい順に以下のようになる。 1. 図的具体的問題. 2. 耳蝉抽象的問題. 3. 言語的具体的問題. 4. 言語的抽象的問題. 19.
(24) 第3章加減文章題の難易レベル 第1節 加減文章題の難易レベルに関する実態調査. 1,調査目的 前章で述べたように,加減文章題は,意味構造の違いによって4つのレベルに 分かれる。しかし,そのレベル設定は,必ずしも確定的なものとは言えない。. Nesherらによるレベル設定は,いくつかの調査結果を参考にしているものの,主 に理論的な考察によって決定されたものである。また,Ishidaの研究においては, 各問題に対する正答率を基準としてレベル設定しているが,おはじきやキャラメ. ルという具体的な問題状況のもとで,意味構造のみを変化させたときの難易を調 べている。. そこで,問題状況が変われば,意味構造の違いによる難易レベルが変化するの ではないか,ということが考えられる。本節では,それぞれの意味構造において,. 問題状況を変化させたとき,4つのレベルがどのように変わるかについての調査 とその結果について分析する。. 2.調査方法 (1)被験者. 岡山県内公立小学校2校. 2年生121名,3年生128名 (2)調査時期. 1996年12月中旬 (3)調査問題. NesherらとIshidaの両方の研究において,レベル設定が共通している問題タイ プを,それぞれのレベルから1つずつ選択し,実態調査のための問題を作成した。 選択した問題タイプは, 【表3.1】のとおりである。. 一20一.
(25) 【表3.1:選択した問題タイプ】 レベル. レベル1. タイプ. Ishidaの調査問題(注). 結合1 SS〔S〕. あきこさんは,おはじきを3こもっていま. す。さとみさんは,おはじきを5こもって. □ ■. レベル2. います。ふたりあわせると,おはじきはな んこになるでしょう。. ⊂]. 比較1 S〔R+〕S □. ↑・. あきこさんは,おはじきを8こもっていま. す。さとみさんは,おはじきを5こもって います。あきこさんがもっているおはじき は,さとみさんよりなんこおおいでしょう. □. レベル3. 変化5 〔S〕T+S. たけしくんは,キャラメルをなんこかもつ ていました。まさおくんが,たけしくんに. ○. ■→□. キャラメルを5こあげたので,たけしくん のキャラメルは8こになりました。たけし くんは,はじめになんこもっていたのでし ,. よつ。. レベル4. 比較6 〔S〕R−S □. ・↑ ■. たけしくんは,おはじきを3こもっていま す。たけしくんは,まさおくんより5こす くないそうです。まさおくんは,なんこも っているのでしょう。. (注)Ishida(1987)において,英文で示されている問題を筆者が翻訳した。. また,問題状況としては,前章で述べた先行研究に基づき,具体的状況と抽象 的状況について調査した。さらに,具体的状況については,分離量と連続量の2 つに分けた。したがって,問題状況は,次の3つになる。 【表3.2:調査問題の問題状況】. キャラメル… 具体的,分離量 水. … 具体的,連続量. 数. … 抽象的. そして,4つの問題タイプそれぞれに対して, (【表3.3】)を作成した。. 一21. 3つの問題状況の調査問題.
(26) 3:調査問題】. 【表3.. (1) たけしくんは,キャラメルを3こもっています。まさおくんは,キャ. (7) たけしくんの水とうに水が入っています◎まさおくんが,たけしくん. ラメルを5こもっています。二人あわせると,キャラメルはなんこでし. に水を541あげたので,たけしくんの水とうの水は,841になり ました.たけしくんの水とうには,水がなん41入っていたのでしょ. り. より。 (しき). う。. (しき). (こたえ). (こたえ). (2) たけしくんは,キャラメルを8こもっています。まさおくんは,キャ. (8) たけしくんの水とうには,水が341入っています。たけしくんの. ラメルを5こもっています。たけしくんのほうが,なんこ多いでしょう. 水とうは,まさおくんの水とうより水が54Z少ないそうです。まさ. おくんの水とうには水がなん41入っているのでしょう。. (しき). (しき). (こたえ). (こたえ). (3) たけしくんはデキャラメルをなんこかもっていました。まさおくんが. (9) 3と5をあわせると,. たけしくんにキャラメルを5こあげたのでたけしくんのキャラメルは. (しき). いくつになるでしょう。. 8こになりました。たけしくんは,はじめになんこもっていたのでしょ り. り。. (しき). (こたえ). (こたえ). (4) たけしくんは,キャラメルを3 こもっています。たけしくんは,まさ. (10) 8と5では, 8のほうがいくつ大きいでしょう。. おくんより5こ少ないそうです。. (しき). まさおくんは,キャラメルをなんこも. っているでしょう。 (しき). (こたえ). (こたえ). (5) たけしくんの水とうには,水が34Z入っています◎まさおくんの. (ll) ある数に5をくわえると8になりました。. 水とうには,水が541入っています。二人の水とうの水をあわせる. だったのでしょう。. はじめのある数は,いくつ. (しき). と,なん41になるでしょう。 (しき). (こたえ). (こたえ). (6) たけしくんの水とうには,水が84Z入っています。まさおくんの. (12) 3は, ある数よりも5小さい数です。ある数は,いくつでしょう。. 水とうには,水が541入っています。たけしくんの水とうの水のほ. (しき). うがなん41多いでしょう。 (しき). (こたえ). (こたえ). 一22一.
(27) 3.調査結果 各問題に対するそれぞれの正答率は, 【表3.4】, 【表3 .5】に示すとお りである。. 【表3.4:2年生の各問題ごとの正答率】 水. キャラメル. 数. レベル1. 問題(1). [0.934(0. 248)]. 問題(5). [0.. 868(0. 339)]. 問題(9)[0. 926(0. 262)]. レベル2. 問題(2). [0.868(0. 339)]. 問題(6). [0,. 752(0. 432)]. 問題(10)[0. 818(0. 386)]. レベル3. 問題(3). [0.479(0. 500)]. 問題(7). [0.. 512(0. 500)]. 問題(11)[0. 669(0. 470)]. レベル4. 問題(4). [0.653(0. 476)]. 問題(8). [0.. 545(0. 498)]. 問題(12)[0. 587(0. 492)]. (注) [ ()]内の数字は,標準偏差を示す。. 【表3.5:3年生の各問題ごとの正答率】 キャラメル. 水. 数. レベル1. 問題(1) [1 (0 )]. 問題(5) [0.977(0.151)]. 問題(9) [0.992(0.088)]. レベル2. 問題(2) [0。953(0.211)]. 問題(6) [0.953(0.211)]. 問題(10)[0.945(0.227)]. レベル3. 問題(3) [0.594(0.491)]. 問題(7) [0.609(0.488)]. 問題(11) [0.797(0.402)]. レベル4 問題(4) [0.758(0.428)]. 問題(8) [0.656(0.475)]. 問題(12)[0.648(0.477)]. (注) [ ()]内の数字は,標準偏差を示す。. これを各レベルごと,各問題状況ごとにグラフに表すと, 【図3.1】から 【図3.4】のようになる。. 1. 1. b.ご、_. 0.8. 一ボ舷こ= 、. 0.6. 0.4. 、. 、、 A数問題. 0.8. 、 「■、 、. 「噺. 、■ 、 .一.一・.塵 圏一 キャラメル問題. 0.6. 、. 、、、数問題 、 、 、. へ 鮎 一.一・一》翼 水問題 キャラメル問題. 0.4. レベル1 レベル2 レベル3 レベル4 レベル1 レベル2 レベル3 レベル4 【図3,1:2年生のレベルごとの正答率】 【図3.2:3年生のレベルごとの正答率】. 一23一.
(28) レベル1 1匿 1. 一一_一一一一 静………….菌レゼ………’口薗 0.8一 ㍉一・鴨㌔. 一.一._一・一・一一■ α8 レベル4 ,■ ・・. ロ導ン・外6=⊃⊃⊃⊃=二凝デ1一. レベル3 0.4 0.4. キャラメル水 数キャラメル水 数 【図3.3:2年生の問題状況ごとの正答率】 【図3.4:3年生の問題状況ごとの正答率】. この調査結果をもとに,各レベル間と各問題状況間の正答率の差をt検定した。. そして,正答率の高いものから順に並べて,有意差のみられたところを矢印で表 すと,次のようになる。. 【表3.6:各問題状況ごとの難易】. 易. キャラメル. 水. 数. (2年生) (3年生). (2年生) (3年生). (2年生) (3年生). レベル1 レベル1. レベル1 レベル1. レベル1 レベル1. ↓ ↓. ↓ ↓. ↓. レベル2 レベル2 レベル2 レベル2 レベル2 レベル2 ↓ ↓. ↓ ↓. ↓ ↓. レベル4 レベル4 レベル4 レベル4 レベル3 レベル3 ↓ ↓ 難. ↓. レベル3 レベル3. レベル3 レベル3 レベル4 レベル4. 【表3.7:各レベルごとの難易】. レベル1 (2牲) (3耽). 易. キャラメル キャラメル. レベル3. レベル4. (2年生) (3牲). (2牲) (3年生). 数 数. キャラメル キャラメル. レベル2 (2牲) (3年生) キャラメル キャラメル,水. ↓. 難. ↓ ↓. 数 数. 数 数. 水 水. 水. ↓. 水 水. 数 水. キャラメル キャラメル. 水 数. 一24一.
(29) これらの結果をまとめると,次のようになる。. ○キャラメル問題では,両学年ともに,レベル4がレベル3よりも有意に正答率 が高い。したがって,レベル3のほうが難易度が高い。 ○水問題では,有意な差は見られないものの,両学年ともに,レベル3の方が, レベル4よりも正答率は低い。 ○数問題では,両学年ともに,レベルが上がるにつれて,正答率が低くなってお り,レベルの変化はない。. ○問題状況の違いによって正答率に有意な差が見られたのは,レベル3とレベル. 4の問題においてである。レベル3では,両学年ともに,数問題が,水問題と キャラメル問題よりも有意に正答率が高い。レベル4では,3年生において, キャラメル問題が,水問題と数問題よりも有意に正答率が高い。. 4.調査結果の分析と考察 (1)具体的状況における難易逆転の原因. キャラメル問題において,2年生でも3年生でも,正答率の高い順に並べると. レベル1,レベル2,レベル4,レベル3という結果が得られ,それぞれのレベ ル間に有為な差が見られた。したがって,キャラメル問題では,レベル3の方が レベル4よりも難しいという,難易レベルの逆転が起こっている。また,水問題. においても,レベル3とレベル4の間に有意な差はないものの,レベル3の方が 正答率が低いという結果が得られた。なぜこのような結果になったのか,その原 因を考察する。. キャラメル問題については,意味構造,数値,文の数など,ほとんどIshidaの 研究で用いられた調査問題と同じものである。ただし,筆者の調査問題(キャラ メル問題)は,英文の問題(Ishida(1987))を翻訳して作成したものなので,オ. リジナルの問題文と多少異なっている可能性がある。また,Ishidaの研究とは問 題の出題順序が違っており,そのことが影響を及ぼしたのかもしれない。. 問題文の違いや出題順序の違いなどの影響がないとして,なぜキャラメルや水 などの具体的な問題ではレベル3のほうが難しくなったのかを考えてみる。レベ. ル3(変化5)とレベル4(比較6)の意味構造は,次の図のように表せる。. レベル3(変化5) レベル4(比較6) □. ○ ○↑ ■→□ ■ ■… 答:えとして求める量. 【図3.5:レベル3とレベル4の意味構造】 一25一.
(30) 問題文の叙述の順序については, 「初めに数が与えられ(既知事項),次にそ. の数との関係が示され(関係事項),最後に求めるものをきく(求答事項)」と いう順序が,児童の自然な思考の流れに沿ったものである。. 【図3.6:子どもの思考の流れ】. レベル4(比較6)では, 【図3.7】のように問題が叙述されている。これ は, 【図3.6】の流れと一致しており,児童にとっては,具体的な場面として 考えやすい問題であると言える。 ②. まさおより. ●●●●● 5こ少ない 関係事項 ①. ③. たけし ● ● ●. まさお ?. 何こもっているか 求答事項. 3こもっている 既知事項. 【図3.7:レベル4(比較6)の文章構成】 しかし,. レベル3(変化5)では, 【図3.8】のような文章構成になってい. る。. ②. まさお ●●●●●. 5こあげた 関係事項 ①. ③. たけし ?. たけし. ●●●●●●●●. 8こになった. 何こかもっている 求答事項. 既知事項. 【図3.8:レベル3(変化5)の文章構成】. 一26一.
(31) これは, 【図3.9】に示すように, 【図3.6】とは逆の順序で問題が叙述 されていることになる。そのため,児童は, 「キャラメルをなんこかもっていま した」という状況を最初にイメージしなければならない。. 【図3.9.レベル3(変化5)の思考の流れ】 キャラメルや水といった具体物を使った問題では,その問題の具体的イメージ がつくりやすいと思われる。しかし,レベル3では,その状況自体が不自然であ るために,問題のイメージ構成が児童にとって難しい。 「最初に何個もっている. かわからないのに,後になって8個もっていることがわかる」というような状況 は,児童の日常生活において自然に発生するようなものではない。したがって, この状況を具体的な場面としてイメージすることは,多くの児童にとって,非常 に困難なことであると思われる。このことが,キャラメル問題と水問題において. レベル3の方を,レベル4よりも難しくさせている原因であると考える。 (2)レベル3における問題状況の難易逆転の原因 先行研究で述べられているように,具体的な問題の方が,抽象的な問題よりも 易しい。しかし,調査では, 【表3.7】からわかるように,レベル3において キャラメルや水という具体的な問題の方が,数という抽象的な問題よりも有意に 難しいという結果が得られた。その原因を考察してみる。. キャラメル問題と水間題の問題文は,数問題の問題文よりも長い。そのため,. 問題文を読んで意味構造を理解するためにかかる作業記憶への負担は,数問題よ りも大きくなると思われる。しかし,キャラメル,水のような具体的な量につい. ての問題なので,その問題状況をイメージすることは,数問題よりも易しいと思 われる。. 文章題を解決する上で本質的に重要なのは,作業記憶への負担の大きさよりも 問題に述べられている状況を具体的にイメージし,理解することができるかどう. かということである。このことは,レベル1,2,4での正答率を見ると,問題 文が長くても具体的な状況のキャラメル問題,水問題の方が,おおむね,数問題 よりも,児童にとって易しいという調査結果にも現れている。. ところが,レベル3の具体的な状況の問題文では, 「なんこかもっていまし. 一27一.
(32) た」というような不自然な状況を,児童はイメージしなければならない。前述し たように,この不自然な状況をイメージすることは,キャラメルや水が登場する 具体的,日常的状況においてであるが故に,かえって難しいものになっているの である。. 一方,数問題は,問題状況そのものが, 「数の計算」の世界でのことであり,. キャラメル問題などのように,現実世界でのことではない。したがって,児童は. 現実世界での具体的イメージとして問題状況をとらえる必要がない。問題状況が 初めから抽象的な「数の計算」の世界で設定されているのだから,例えば,. ○+5=8というような式を想い浮かべるだけで,問題状況の把握はできたこと になる。このように,形式的な型(○+5=8)で,問題状況が把握されたなら ば,答えを求めるための演算決定は,「数の計算」世界の知識を利用するだけで. 可能になる。つまり,○=8−5ということは, 「式状況」とでも呼ばれるもの から,容易に導き出される。. 一般的には,現実世界での状況を用いた文章題の方が,問題状況に対する具体 的イメージ構成の容易さから,易しくなると思われる。しかし,レベル3では,. 不自然な状況設定が,児童のイメージ構成を妨害し,そのことが,抽象的な状況 である数問題よりも,正答率を低くしたものと考えられる。. (3)レベル設定の問題点. 調査前の予想では,調査結果によるレベル設定は,先行研究と一致すると考え ていた。なぜならば,調査問題を作成するにあたり,2つの先行研究でレベルが 一致している問題タイプを選択したからである。Nesherらの研究とIshidaの研究 では,レベル設定の基準が異なっている。前者は,理論的考察によってレベル設 定を行い,後者は,実態調査をもとにしている。その両者において,同じレベル の問題であれば,問題のレベルは「正確である」と言ってもよいだろう。しかし 結果は,先行研究とは異なるレベル設定になった。. 筆者の調査においては,4つの問題タイプのみのレベル設定を行っている。も しも,別の問題タイプを選択すると,その問題のレベルはどうなるであろうか。. 別の問題タイプで調査をすれば,先行研究と一致したレベル設定になり,レベル のずれは,起こらないという可能性もある。したがって,上記の(1)と(2) において,2っの先行研究と調査結果の間でレベル設定が異なった原因を考察し たが,その考察の結果を裏づけるような調査がさらに必要であると思われる。. あるいは,別の問題タイプで調査をした結果,やはりレベルのずれが起こった. としても(1)や(2)の考察と同じことが原因になっているとは限らない。問 題を具体的にイメージしゃすいかどうかといったこととは違うほかの原因がある. 一28一.
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