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 レベル2の問題とレベル3の問題の違いは,問題をイメージすることに関係が ある。例として,変化3問題(レベル2)と変化5問題(レベル3)について考えて みる。これら2つの問題は,次のような問題である。

(変化3問題)

《 いけにきんぎょが16びきいます。そこへまたきんぎょを入れたので,

ぜんぶで24ひきになりました。あとからなんびき入れましたか。   》       (小学校教科書『新編新しい算数2下』,東京書i籍,1996,p.51)

(変化5問題)

《みち子さんは,ねえさんからおはじきを27こもらったので,ぜんぶで45こ になりました。おはじきははじめになんこありましたか。        》       (小学校教科書『新編新しい算数2下』,東京書籍,1996,p.54)

 変化3問題においては,問題文の叙述にしたがって,次のような順序で問題構 造をイメージしなければならない。

初めの数

 16

←加える一一一②    ↓

 変化3問題は,増えた数が問題文の中に明示されていないけれども,初めの数 は与えられている。そのため,「16ある」という【図4.3】の①の状態をイメ ージすることは,ほとんどの児童にとって容易であると言ってよいだろう。なぜ ならば,①の状態は,RileyとGreenoのレベル1の知識によって表象されるからで ある。それに対して,変化5問題は,初めの数がわからない。したがって,いく つかわからない数があるという【図4.4】の①の状態をイメージするには,

RileyとGreenoのレベル2の知識の表象が必要となる。つまり,初めの数が与えら れているかいないかによって,問題構造をイメージすることに対する困難さは違 ってくる。そのため,初めの状態をイメージできない変化5問題は,初めの状態 をイメージできる変化3問題よりも難しい。

 また,変化3問題は,①の状態からいくつか増えたことによって③の状態にな るという【図4.3】のような問題構造をイメージしなければならない。これは,

集合が変化したということを表象するレベル2の知識によって可能になる。そし て,イメージしたものをもとに,16にいくつ加えると24になるかを数えることに よって,変化3問題は解決できる。それに対して,変化5問題は,同じレベル2 の知識によって, 【図4.4】に示したような問題構造をイメージすることがで きたとしても,答えを得るためには, 「わからない数に27を加えて45になったと いうことは,45が全体であり,わからない数と27が部分である。」というレベル

3の知識が必要になる。したがって,変化3問題は問題構造をイメージすること が解決につながるけれども,変化5問題は問題構造のイメージだけでは不十分で,

さらに部分一全体関係を理解することが必要になる。

 以上のような理由から,レベル3の問題よりも,レベル2の問題を先に指導す る方がよいと思われる。

 比較問題については,D, E, F社において,1年生で指導されるレベル1の 比較2問題が,2年生で指導されている。そのうちD,F社では,難易レベルの 高いレベル2の比較3・4問題が1年生で指導され,難易レベルの低い比較2問 題が2年生で指導されるようになっている。それは,指導順序の逆転というより

も,以下で述べるようなことが原因であると考える。

 レベル1の比較問題は,2つの数量の違いを問う問題である。例えば,比較1 問題は,下のように「いくつ多いか」を問う問題である。

《  りすが8ひきいます。うさぎが3びきいます。どちらがなんびき  おおいでしょうか。      》    (小学校教科書『新編あたらしいさんすう1』,東京書籍,1996,p.39)

一50一

上記の問題で,問いの文が「どちらがなんびきすくないでしょうか」に変わると,

比較2問題になる。

 ところが,教科書を見てみると,調査の分析の対象にはしていないが, 「ちが いはいくつでしょう」という表現によって表された,比較1問題でも比較2問題 でもない問題もかなりあった。レベル1の比較2問題が2年生で指導されていた 3社(D,E, F社)では,この比較1でも比較2でもない問題と比較1問題ば かりが1年生で指導されるようになっている。その後,比較2問題は,わずか2

・3問掲載されるのみである。つまり,2つの数量の違いを問うレベル1の比較 問題としては, 「いくつ多いか」と「ちがいはいくつか」という表現ばかりが使 われ, 「いくつ少ないか」という表現はほとんど使われていない。また, 【表4.

3】のB,C社において,比較2問題が一度も掲載されていないということにつ いても同様のことが言える。つまり,B, C社に掲載されているレベル1の比較 問題は, 「いくつ多いか」と「ちがいはいくつか」という表現のみが使われてお

り, 「いくつ少ないか」という表現は5年間を通じて全く使われていない。

 レベル1の比較問題の後に指導される比較3・4・5・6問題は, 「○こ多 い」や「○こ少ない」という関係表現で表される問題である。比較問題を理解す るためには,これら2つの数量の関係を正しくとらえることが重要になってくる。

比較問題を学習する最初の段階で,「ちがいはいくつか」といったあいまいな表 現ではなく, 「多い」や「少ない」という表現によって表された問題に接する方 が,2つの数量を比べるという比較問題は理解しやすい。また,レベル1の問題 を学習するときに「多い」や「少ない」といった表現形式で書いている問題に接 している方が,その後で指導されるレベル2や3の問題を解決するときにも,

「多い」や「少ない」という2つ数量の関係表現に意識が向けられやすい。した がって,比較1問題の問題文と比較2問題の問題文とを明確に区別し,指導する

ことが必要であると思われる。

(3)掲載数

 前述のように,難易の低いレベル1の問題は,どの学年においても,最も多く 掲載されている。その理由としては,次のようなことが考えられる。整数につい ての加法や減法の指導は, 【表4.4】のようないくつもの段階に分けて行われ

る。

【表4.4:整数の加法・減法の指導段階】

1けた±1けた(繰り上がり・下がりなし)…  1年生          ↓

1けた±1けた(繰り上がり・下がりあり)…  1年生          ↓

      2けた±2けた      …  2年生          ↓

      3けた±3けた      …  2年生

これらそれぞれの段階において導入される問題は,結合1問題や変化2問題のよ うな難易レベルの低い問題である。また,3年分以降に指導する小数や分数の加 法・減法の指導段階は, 【表4.5】のようになっている。

【表4.5:小数・分数の加法・減法の指導段階】

(小数)    小数第1位      ↓

小数第2位,小数第3位

(分数)   分母が同じ(真分数)

      ↓

    分母が同じ(仮分数,帯分数)

      ↓         分母が違う

…  3年中

…  4年生

…  3年生

…  4年生

…  5年生

小数や分数においても,整数と同じように難易レベルの低い問題を用いて導入さ れることが多い。そのため,難易レベル1の問題は,繰り返し指導され,掲載数

も多くなっている。

 学習指導要領において,2年生の指導での重点とされている逆思考の問題,す なわちレベル2や3の問題の掲載数が,レベル1の問題の掲載数よりも少ないと いうことは,数の上ではレベル1の問題の方が重視されていると言える。3年生 以降で指導される小数や分数の場合には,加法・減法の理解が主たる目標ではな いため,難易レベルを考慮して問題を掲載していないと思われる。しかし,1,

2年生で指導される整数の場合には,加法や減法についての理解にもかなりの重 点が置かれている。にもかかわらず, 【図4.1】や【図4.2】からもわかる ように,現状では,レベル1の問題が圧倒的に多い。児童にとって演算決定の困       一52一

難であるレベル2や3の問題数を2けた±2けたや3けた±3けたの問題を学習 する段階で,もっと増やす必要があると考える。

第2節 加減文章題指導への示唆

 加減文章題指導への示唆については,これまで考察してきたことをもとに,次 の3点を述べる。

 1.レベル3問題の指導

 加減文章題は,問題の難易によって3つのレベルに設定される。最も難しいレ ベル3の問題はどのように指導すればよいかについて述べる。

 2.問題状況を考慮した指導

 実態調査から,問題状況の違いによって,正答率に変化が生じることが明らか になった。問題状況を考慮した指導とはどのような指導かについて述べる。

 3.難易レベルを考慮した指導

 教科書での調査から,変化問題と比較問題について,難易レベルと合っていな い指導がなされていることが明らかになった。それに対する改善策を考える。

 上記のうち,3については,前節の第4項(2)においてすでに述べた。した がって本節では,1と2について述べる。

1.レベル3問題の指導

 レベル3問題(結合2,変化5・6,比較5・6)が,ほかの問題と比べて難し いのは,部分一全体関係を理解することが必要だからである。第3章の第2節で 述べたようにRileyとGreenoは,レベル3の問題を解くために必要な知識として,

部分一全体関係の表象をあげているごまた,第2章の第2節で述べたように,

Nesherらのレベル設定においても,結合2問題と変化5・6問題の解決には,部 分一部分一全体の知識が必要であるとしている。したがって,レベル3の問題の 指導については,部分一全体関係をとらえさせることが重要になる。

 学習指導要領では,低学年においては具体的な操作などの活動を通して加法及 び減法を用いることができるようにすることを目標としている(小学校指導書算数 編,p.17)。また,2年生で学習するレベル2や3の問題(逆思考の問題)は,問題 場面に対応した図や数直線を用いて理解できるようにすることが大切である(小学 校指導書算数編,p.77)。

 したがって,レベル3問題の部分一全体関係を理解させるための有効な手だて 一54一

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