⑨)。けれども,結果として,Joeのおはじきが何個になったかがわからず,ブロ ックは3個のままなので,この段階ではまだ答えを得ることはできない。そして,
「Joeは,今,おはじきを8個持っている」が提示されると, 【図3.15】◇の結 果の集合を表象することにより,集合一変化スキーマが完成し,問題が理解され る。最後に, 「Tomは,彼におはじきを何個あげたか」が提示されると,3個のブ ロックにいくつたすと8個になるかを数えることにより,答えを導く。
初め
集合一変化
変化
◇
「Tomは,彼に,おはじきを5個あげた」が提示されると, Joeのおはじきの増え た数である5個の集合をレベル1の知識によって表象する。そして,レベル2の 知識によって【図3.16】◆の集合一変化のスキーマを部分的に構成する。しか
し,初めに持っていた数量を答えとして導くことはできない。それから, 「Joeは,
今,おはじきを8個持っている」が提示されると,レベル1の知識によって,結 果の集合を表象する(【図3.16】◇)。それを集合一変化のスキーマに加える
ことにより,集合間の関係を表すネットワークを構成する。しかし,この段階で は, 「何個かあったおはじきが,5個増えたことによって,8個になった。」と いうことしかわからない。未知数である初めに持っていた数量を特定するために は,初めに持っていた数量と増えた数量が部分であり,それらを合わせた結果の 数量が全体であることが理解されなければならない。つまり,部分一全体関係を 表象する必要がある。この部分一全体関係を集合間の関係に加えることによって,
【図3.16】◇のようなネットワークを構成する。最後に, 「Joeは,初めに何個 おはじきを持っていたか」が提示されると,いくつに5を加えると8になるかを 数えることによって,答えを導く。
4
初め 部分
合一変化
◇
特定化 合
数量 特定化
変化 部分
↓/
集合
数量
。分一全
。果 全体
【図3.16:レベル3知識を使う変化5問題】
このように,レベル2の知識によって構成したネットワークに,部分一全体関 係を加えることを必要とする問題は,レベル3の知識を使って解くことができる。
(2)18タイプの問題の難易レベル
以上のように,RileyとGreenoは,解決者がもっている知識状態によって,18タ イプの問題を3つに分類している。レベル2の知識をもっているならば,レベル
1の知識を使って解くことができる問題も解くことができる。また,レベル3の 知識があれば,レベル1やレベル2の知識を使って解くことができる問題も,当 然,解くことができる。
そこで,その問題を解くために必要な知識の中で,最も低い知識レベルを難易 レベルとして設定する。すなわち,結合1Rや変化2などの問題は,レベル2の 知識やレベル3の知識によっても解くことができるけれども,最も低いレベル1
として分類する。また,結合3Rや比較4などの問題は,レベル3の知識によっ ても解くことができるけれども,レベル2として分類する。
したがって,18タイプの問題のレベル設定は,次の【表3.8】のようになる。
ただし,RileyとGreenoは,カテゴリーの同じ問題タイプでは,同じレベルの知識 を要求する問題タイプならば,難しさにおいても同じであるが,カテゴリーの異 なる問題タイプでは,同じレベルの知識を要求する問題タイプであっても,難し さにおいて同じではないとしている。
【表3.8:RlleyとGreenoのレベル】
問題タイプ レベル1 レベル2 レベル3 問題タイプ レベル1 レベル2 レベル3 問題タイプ レベル1 レベル2 レベル3
結合正R × 結合2R × 結合3R 結合4R 結合5R 結合6R
変化1 × 変化2 ×
× 変化3
× 変化4 × 変化5 × 変化6
×
×
比較1 × 比較2 × 比較3 比較4
× 比較5
× 比較6
×
×
×
×
本節第3項で述べた彼らの分類における結合2Rの問題は,第1文に明記され ていない数を含んでいる。これは,レベル1の知識では,表象することができな い。しかし,第1文を理解できなくて無視したとしても,残りの文は,レベル1 だけの知識によって表象され,答えを導くことが可能である。したがって,レベ ル1の知識を使って解くことができる問題となる。
また,結合3R問題と結合5R問題は,問題文の提示順が異なる。2つの問題 は,JoeとTomが合わせて持っているおはじきの集合(全体集合)とJoeの持ってい るおはじきの集合(部分集合)が与えられており,Tomの持っているおはじきの集 合(部分集合)を求める問題である。結合3R問題は,求める量も「何個か持つ 一38一
ている」という表現で明記することにより, 「部分集合,部分集合,全体集合」
の順で提示されている。そのため,何が部分集合で,何が全体集合かが,自然に 特定される。しかし,結合5R問題は, 「全体集合,部分集合」の順で提示され ている。結合した全体集合を先に提示し,部分集合を後に提示すると,答えとし て問われている対象を「部分集合」として理解し,特定しなければならない。そ のため,解決者自身による部分一全体関係の表象が必要になる。したがって,結 合5R問題は,結合3R問題よりも難しいとして,レベルづけされる。
また,比較1と2の問題は,問題文に明記されている集合について,一文ごと にネットワークを構成することによって解くことができる問題であるから,レベ ル1として分類されている。また,比較3と4の問題は,集合一比較パターンの 表象が必要であるから,レベル2に分類される。比較5と6の問題は,さらに部 分一全体関係の表象が必要となるため,レベル3として分類されている。
第3節難易レベル設定の妥当性
Nesherら, Ishida,筆者のレベル設定とRileyとGreenoのレベル設定には,いく つかの相違点がある。その相違点を明らかにするために,加減文章題をどのよう に分類したかということと,その難易レベルがどのように設定されているかとい う2つの観点から比較してみる。それによって,加減文章題の難易は,どのよう に設定されることが妥当であるかを明らかにする。
1.問題タイプの分類方法
Nesherら, Ishida,筆者の分類と, RileyとGreenoの分類では,問題タイプの数 が異なる。NesherらとIshidaは,結合問題を2つに分類している。また,本研究 においても,同じ枠組みを使用している。それに対してRileyとGreenoは,6つに 分類している。
RileyとGreenoの分類によると,同じ意味構造の結合問題であっても,問題文の 提示順を変えることによって,その問題を理解するために必要な知識レベルが変 わるということを示している。変化や比較の問題の提示順を変えると,どうなる であろうか。例えば,変化1問題を下のように変えて考えてみる。
Joeは,おはじきを3個持っていた。
Tomは,彼におはじきを5個あげた。
Joeは,何個のおはじきを持っている
か。
Tomは, Joeにおはじきを5個あげた。
Joeは,おはじきを3個持っていた。
Joeは,何個のおはじきを持っている
か。
初めに, rTomは, Joeにおはじきを5個あげた」が提示されると,レベル1の知 識によって,Joeのおはじきが5個増えたという,変化した数量についての集合を 表象する。次に, 「Joeは,おはじきを3個持っていた」が提示されると,レベル
1の知識によって,初めに持っていた数量についての集合を表象する。そして,
rJoeは,何個のおはじきを持っているか」が提示されるけれども,答えを得るた めには,変化した数量に初めの数量を合わせると結果の数量を求めることができ る,という集合一変化パターンを表象しなければならない。したがって,レベル
2の知識がなければ,解けないということになる。
このように,レベル1の知識によって解ける問題の提示順を変えることによっ て,問題を理解するために必要な知識は,レベル2になることもある。あるいは,
逆に,レベル3の問題の提示部を変えることによって,低いレベルであるレベル 一40一
2の知識によって問題解決できるようになる場合もあるかもしれない。つまり,
同じ意味構造で,文章表現もほとんど同じ問題であっても,単に問題文の提示順 を変えるだけで,その問題理解の難易は,難しくなったり,易しくなったりする 可能性がある。今後は, 「提示順を変える」ということも,文章題解決に影響を 及ぼす要因の一つとして考えていく必要があるであろう。
2.難易レベルの設定方法
Nesherら, Ishida,筆者の調査と, RileyとGreenoとでは,設定しているレベル の数が異なる。前者が4つのレベルで設定しているのに対して,後者は,3つに 設定している。
また, 「結合」, 「変化」, 「比較」の3つのカテゴリー間の関係にも違いが ある。前者は,3つのカテゴリー14タイプの問題を問題解決の難易でレベル設定 をしている。したがって,同じカテゴリー問はもちろん,異なるカテゴリー間の 問題であっても,難易を比較することができる。つまり, 「結合1問題よりも,
比較1問題の方が難しい。」といった比較ができるのである。しかし,Rileyと Greenoは,問題を理解するために必要な知識状態の違いによって難易レベルを設 定し,同じ知識レベルによって解かれる問題であっても,カテゴリーが異なれば 難易を比較することはできないとしている。それは,問題を理解するためのカテ ゴリー特有の知識があり,カテゴリーが異なれば必要となる知識も異なるからで ある。例えば,結合5R問題と比較5問題は,どちらも同じレベル3の知識によ って解かれる問題である。しかし,結合5R問題を理解するために必要なレベル
3の知識をもっていたとしても,比較という異なる意味構造の問題では集合間の 関係が変わり,比較5問題を理解するために,同じレベル3の知識をもっていな い可能性がある。そうなると,結合問題では,レベル3の知識を使って問題を解 決することができるが,比較問題では,レベル3の知識をもっていないために解 決することができなくなるのである。したがって, 「結合5R問題と比較5問題 は,どちらが難しいという比較はできない。」ということになる。
前述のように,Nesherら, Ishida,のレベル設定と筆者のレベル設定の問でず れが生じている。しかし,そのずれは,RileyとGreenoの考えによって解決するこ
とができよう。Nesherら, Ishida,筆者の調査問題における抽象的な問題におい ては,変化5問題がレベル3,比較6問題がレベル4となっているが,具体的な 問題においては,変化5問題がレベル4,比較6問題がレベル3となっている。
しかし,RileyとGreenoが言うように,変化5問題と比較6問題は,異なるカテゴ リーの問題であるから,難易を比較することはできない。そうだとすれば,レベ ル設定そのものが無意味である。また,同じカテゴリーの比較1問題と比較6問