Nagoya City University Academic Repository
学 位 の 種 類 博士 (理学) 報 告 番 号 乙第1868号 学 位 記 番 号 論 第9号 氏 名 松村 昌典 授 与 年 月 日 平成 28 年 9 月 12 日 学位論文の題名 ブルー相を発現するキラルネマチック液晶の 偏光顕微赤外分光法を用いた解析方法の確立と 相転移による分子配向変化に関する研究 論文審査担当者 主査: 片山 詔久 副査: 藤田 渉, 三浦 均, 土川 覚
第4号 様 式(博 士)
学
位
論
文
内
容
要
旨
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氏 名 松村 昌典 提 出年月 日 平成28年5月2日主論文名
ブルー相 を発現す るキラルネ マチ ック液 晶の偏 光顕微赤外 分光法 を用 い た解析方法 の確 立 と相 転移 に よる分子配向変化 に関す る研究 (学位 論 文 中の 要 旨 と同 じ内容 で 可) 異 方 性 と流 動性 を持 つ 液 晶(LC)は テ レ ビや ス マー トフ ォ ン等 の液 晶 デ ィス プ レイ(LCD)に 応 用 され 、我 々 の生 活 に な くて は な らな い 物 とな っ た。 近年 、 ブル ー 相(BP)と 呼 ばれ る新 しい液 晶 の相 が 、ネ マ チ ック液 晶(NLC)に 代 わ りデ ィ ス プ レイ へ の 応 用 が 期 待 され て い る 。BPは キ ラル ネ マ チ ッ ク 液 晶 (N LC)の 等 方 相 とキ ラル ネ マ チ ック(N )相 の 間 で約1Kと い う温 度範 囲 で 発 現 し、1888年 にReinizerが 等 方 相 状態 の コ レス テ ロー ル ベ ン ゾエ ー トか ら冷 却 して い く過 程 で 初 め て観 察 され た。BPの 研 究 は 、古 くはX線 構 造解 析 や 電 子 顕 微 鏡 を用 い た解 析 よ り、LC分 子 が格 子 構 造 を形 成 して い る こ とが解 明 され て お り、近 年 で はLCD応 用 の た め発 現 す る温 度範 囲 の拡 張 や疑 似 的 デ バ イ ス 作 成 に よ る電 気 光 学 測 定 等 の研 究 が盛 ん で あ る が 、 分 子 配 向 に 関す る研 究 報 告 は な い。LCの 分 子 配 向 はLCDの 製造 に 関 して た いへ ん重 要 な フ ァ ク ター で あ り、 BPを 発 現す るN LCの 分 子 配 向 を解 析す る こ とは科 学 的及 び 工 業 的 に意 義 の あ る研 究 で あ る。これ らの 背 景 を も とに、本 論 文 で は相 転 移 に よ るBPを 発 現 す る N LCの 各相 を偏 光 顕微 赤外 分 光 法 よ り測 定 し、得 られ た ス ペ ク トル か ら分 子 配 向 を議 論 す る。 測 定 に使 用 した試 料 は、 ネ マ チ ック液 晶混 合 系(5CB/6CB/5OCB/7OCB) に、 キ ラル 剤 と してISO(6OBA)2を それ ぞれ5、6、7、8、9wt%添 加 し、 キ ラ ル 剤 濃 度 が異 な る3種 類 のN LCを 調 製 した。CaF2基 板 にPVA(平 面 配 向剤) とジ メチ ル オ ク チル ク ロ ロ シ ラ ン(垂 直 配 向剤)溶 液 を塗 布 した2種 類 の配 向 膜 基 板 を作 成 し、調 製 したN LCを2枚 の基 板 で挟 み 、 平 面 配 向セ ル と垂 直 配 向セ ル を作 成 した。作成 したセ ル をHot-stage(Mettler,FP82HT)に セ ッ トし、 赤 外 分 光 光 度 計(Perkin Elmer, Spectrum One)の 顕微 ス テ ー ジ に置 い て 、35.0 ∼42 .0℃ の範 囲 で毎 分0.3℃ で温 度 を変 え な が ら、 透 過 法 に よ り赤 外 スペ ク トル の測 定 を行 った。 作 成 したN LCセ ル を偏 光 顕 微 鏡 下 で温 度 を コ ン トロー ル しな が ら観 察 した とこ ろ 、 キ ラル 剤 濃 度 が7wt%の 場 合 のみ 、加 熱 過 程 で はN 相 か ら39.8℃ で BPIIIに 、41.0℃ で 等 方 相 に相 転 移 し、冷 却過 程 で は40.8℃ でBPIII、40.2℃ (システム 自然科学研究科)様 式4(博 士)
学
位
論
文
内
容
要
旨(2/2)
氏 名 松村 昌典 提 出年月 日 平成28年5月2日主論文名
ブルー相 を発 現す るキラル ネマチ ック液晶 の偏 光顕微赤 外分光法 を用い た解析 方法 の確立 と相転移 による分子配 向変化 に関す る研 究 でBPII、39.8℃ でBPI、38.0℃ でN 相 へ 相 転 移 して い く様 子 が 観 察 され た。 一 方、5、6wt%セ ル で はBPの 発 現 は確 認 で きず 、8、9wt%セ ル で は 冷 却 過 程 でBPIIIの み 観 察 され た。 分 子 の 垂 直 方 向 へ の 立 ち上 が り変 化 に つ い て は平 面 配 向セ ル 中の ネ マチ ッ ク 液 晶 のCNとCH2伸 縮振 動 の吸 光 度 比(CN/CH2)と 温 度 変 化 の関係 か ら検 討 した 。分 子 が垂 直 方 向 に 立 ち上 が っ て い くほ ど、CN伸 縮 振 動 の 吸 光 度 は小 さ く な るがCH2伸 縮 振 動 の 強度 は ほ とん ど変化 しな い こ とか ら、CN/CH2が 小 さい ほ ど分 子 は垂 直 方 向 に 立 ち上 が って い る と考 え られ る。 キ ラル 剤 濃 度 が7wt% のセ ル に お い て 、加 熱 過程 で はN 相 か らBPIIIへ 相 転 移 した とき吸 光 度 比 が減 少 し、 さ らに冷 却過 程 で はBPIか らN 相 へ 相 転 移 した とき に も この比 が 減 少 した こ とか ら、加 熱 前 は 基板 面 に対 し平 行 配 向 だ っ た分 子 が 、BPIIIへ 相 転 移 した こ とで 垂 直 方 向 に立 ち上 が る分 子 が増 え、 冷 却 後 分 子 は加 熱 前 の 平行 配 向 に戻 らず 、BPIか ら相 転 移 したN 相 で は基 板 面 に対 し さ らに垂 直 方 向 に立 ち 上 が る こ とが示 され た。 ま た 、偏 光 測 定 の結 果 、 冷 却 過 程 のBPIか らN相 へ 相 転 移 した とき配 向変 化 が 見 られ 、BPIで は 見 られ なか った 各 偏 光 角 にお け るCN伸 縮 振 動 の 吸光 度 差 が 、N 相 で は偏 光角130度 で 吸 光 度 が 最 も大 き くな り、分 子 が130度 方 向 に 平 行 配 向 して い る と決 定 で きた 。 上 記 の 非 偏 光 測 定 の 結 果 と合 わせ る と、 加 熱 前 で は 基 板 面 に対 し垂 直 で あ っ たN 相 の らせ ん軸 が 、 冷 却 後 らせ ん軸 が基 板 面 に平 行 方 向 に傾 い た と決 定 で き た。 上記 の 分 子 配 向変 化 は 、BPIを 発 現 しな か っ た他4つ の キ ラル 剤 濃 度 で の セ ル で は観 察 され な か っ た こ とか ら、BPIの 格 子 構 造 と配 向膜 の状 態 がBPIを 発 現す るN LCの 相 転移 に よ る分 子 配 向変 化 に 関与 して お り、 冷 却 後 のN 相 の ら せ ん 軸 の挙 動 に影 響 を与 え て い る こ とが 明 らか に され た。 (システ ム自然科学研 究科)別記様式