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政治・経済情勢と人権の視点からみた企業の方向性

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Academic year: 2021

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(1)人権 問題研究 資料. 第18号. 政 治 ・経 済 情 勢 と人 権 の視 点 か らみ た企 業 の方 向性 人権問題研究所 教授. 北. 口. 末. 広. 1、 今 日 の 政 治 ・経 済 状 況 と 人 権 本 稿 で は今 日の経 済 ・政 治 状 況 と い う面 か ら人 権 にっ い て 考 察 して い きま す。 今 日の政 治 ・経 済 状 況 を人 権 とい う視 点 か ら考 察 す る と、 「人 権 と経 済 」、 「人 権 と政 治 」 は密 接 に関 わ って い る ことが 理 解 で き ます 。 そ こで まず 今 日の 政 治状 況 を概 括 して い きます 。. 崩壊寸前の国家財政 端 的 に言 え る こと は、 国 家 財 政 が 崩 壊 寸 前 で あ る とい う こ とで す。 国債 依 存 度 は 戦 時 中 の水 準 に匹 敵 して お り、 借 金 を 返 す た め に 借 金 を 重 ね る とい う状 態 に な って い ます 。 国 、 地 方 自治 体 合 わ せ 、700兆 円 を 超 え る赤 字 国 債 が 存 在 し、 国 民 一 人 当 た り約500万. 円 の借 金 に な って い ます。. イ ギ リス中 央 銀 行 で あ る イ ング ラ ン ド銀 行 は、 そ の レポ ー トで、 世 界 の金 融 危 機 の発 震 源 とな り得 る国 に ア ル ゼ ンチ ン、 トル コ と と もに 日本 を上 げ て い ます 。 世 界 か ら日本 の 金 融 情 勢 はそ の よ う に見 られ て い る とい う こ とで す。. 1990年 代 以 降 の世 界諸 国 の 国 債 発 行 額 の約90%を. 日本 が 占め て お り、 国 際 と い. う借 金 を 積 み 重 ね て い る国 が 日本 で あ る とい う こ とで す。 日本 の税 収 は約40兆 それ に対 して 赤 字 国 債 は700兆 円 を超 え て お り、 税 収 約40兆. 円、. 円 の 内 、 約20兆 円 を. 借 金 返 済 の た め の 国 債 費 に当 て て い る状 況 で す。 借 金 を返 す た め に借 金 を重 ね る と い う状 態 が 続 いて お り、 い まだ に赤字 を重 ね て い る の で す。 日本 の赤 字 国 債 は増 え 続 けて い ます 。 この よ うな状 況 で も 日本 の財 政 が維 持 で きて い る の は個 人 金 融 資 産 が 約1400兆 一26一.

(2) 政治 ・経済情勢 と人権 の視点か らみ た企業 の方向性 円 あ るか らで す 。 家 計 に例 え る と、 息 子 の貯 金 か ら親 が 借 金 を して家 計 が 成 り立 っ て い る状 況 で す 。 そ して 息 子 か ら借 金 が で き な くな る と他 の人 、 っ ま り他 の国 か ら 借 り な けれ ば な らな い と い う こ とで す 。 これ らの逼 迫 した状 況 を冷 静 に見 て い く必 要 が あ り ます 。 っ ま り、 過 去 に 発 行 した国 債 の返 済 に充 て る 「国 債 費 」 が20兆. 円 を超 え、 そ の. 半 分 の10兆 円 以 上 が 「利 子 の 支 払 い費 」 とな って い る とい う こ とで す 。 国 の税 収 の 半 分近 くが 国債 費 で あ り、 国債 を 買 って い るの は銀 行 、 最 大 は財務 省 資 金運 用 部 が 買 って い ま す。 金 融 機 関 も国債 を か な り持 って い る状 況 で す。 ま さに 「第 二 の 国鉄 」 に近 づ く国家 財 政 で あ り、 見 方 に よ って は旧 国鉄 よ り も問 題 が あ る と いえ ます 。1990年 代 の世 界 諸 国 の 国 債 発 行 額 の約90%を. 日本 が 占 めて. い るに もか か わ らず 、 政 府 が 公 的資 金 を銀 行 に投 入 して い る とい う状 況 が 続 いて い ま す。 現 在 、 大 手 の金 融 機 関 だ けが 問 題 に な って い ます が 、 今 後 も っと厳 しい と こ ろが 多 く出 て くる こと は間 違 い あ りませ ん 。 ま た、 政 府 が 公 的 資 金 を銀 行 に投 入 して も、 銀 行 は政 府 の発 行 す る国 債 を 引 き受 け る こと に な り、 結 果 にお いて 国 債 の増 発 が 貸 し渋 りを 促 進 す る こ と に な り、 中 小 企 業 の再 生 の た め に は使 わ れ て い な い と い うこ と に な って い ます 。 朝 日新 聞 に掲 載 され た 次 の 社 説 は、 的 確 に今 日の 状 況 を 表 現 して い る と いえ ま す。 こ の10年. あ ま り、 日 本 経 済 の 病 は重 くな る 一 方 だ っ た 。 心 臓 か ら懸 命 に 血 液 を. 送 り 出 して い る の に血 管 は老 廃 物 で 詰 ま りが ち で 、 身 体 の 隅 々 に ま で行 き 渡 ら な い 手 足 を 動 か そ う と して も様 々 な 障 害 物 や 不 安 感 が 邪 魔 を して 自 由 に な ら な い 。 そ の 間 に体 温 は 低 下 し続 け る 。(2003年1月6日). 日本 は この よ うな 状 況 に な って い るの で す 。 先 述 した よ うに、 イ ン グ ラ ン ド銀 行 の レポ ー トで は、 世 界 の金 融危 機 の発 震 源 と な り得 る国 に ア ル ゼ ンチ ン ・ トル コ ・日本 が上 げ られ て い ま す。 か っ て 日本 は最 も経 済 的 に優 秀 な 国 で ア ル ゼ ンチ ンは最 も厳 しい状 態 と捉 え られ 一27一.

(3) 人権 問題研 究資料. 第18号. て い た の で す が、 そ の ア ル ゼ ンチ ンに近 づ きつ っ あ る と い う状 況 な ので す 。 世 界 の 格 付 けが あ りま す が、 日本 の 国債 の二 設 階 の格 下 げ に よ って 日本 の株 価 が 大 幅 に下 落 しま した。 これ らが私 た ち の生 活 に密 接 に関 わ って い るの で す 。. 危 機 的状 況 の 自治 体 財 政 以 上 の よ うな 国家 財 政 の困 難 な状 況 は、 危 機 的 状 況 の 自治 体 財 政 にっ なが って い ま す。 自治 体 の歳 入 の六 割 は 中央 か らの移 転 で あ り、 少 な くと も今後5∼6年. 間 は債 務. の拡 大 が続 く こ とは間 違 い あ りませ ん 。 借 金 が た くさん あ る に もか か わ らず 、 今 後 5∼6年. 間 で さ らに増 え て い く状 況 で す 。 冷 静 に考 え る と、 どの よ う に して この 国. を立 て 直 して い くのか 不 安 に な る ほ ど深 刻 な状 況 にあ り ます。 米 国 は世 界 か ら借 金 を して成 り立 って い ます が 、 日本 は国債 とい う将 来 の子 ど も か らの借 金 に よ って成 り立 って い ます 。 この よ う に 日本 の現 状 は金 融 危 機 の発 震 源 とな る可 能 性 が高 い国 と い われ て も仕 方 が な い状 況 にあ り ます。 多 くの 自治 体 は90年 代 に発 行 した地 方 債 の 大量 償 還 を迎 え て お り、 そ の ピー ク が2004年. と な って い ま す 。 多 くの地 方 自治 体 は福 祉 や 人 権 の施 策 に 一 定 の努 力 を. して きま した。 そ の地 方 自治 体 の財 政 が 縮 小 され る こ と は、 全 体 と して福 祉 ・人 権 の政 策 に も悪 影 響 を与 え る こ と に な り ます。 そ れ だ けで はな く、 公 務 員 も削 減 され、 全 体 と して雇 用 枠 は減 少 して い くこ と に な り ます。 失 業 問題 は人 権 に非 常 に大 きな 悪 影 響 を与 え る こ と は言 う まで も あ り ませ ん。 も う一 っ深 刻 な の は、 約400万. 人 の フ リー ター と約300万. 人 の 引 き こ も りの問 題. で す。 地 方 自治 体 の財 政 が 縮 小 して い くこ と に よ って、 そ の よ うな問 題 もよ り一 層 悪 化 して い く こと に な ります 。 1929年 に世 界 大 恐 慌 が 起 こ りま し た。 株 価 の 大 暴 落 が 原 因 で あ りま す が 、 所 得 の格 差 が 大 き く開 いて い た こ とが 恐 慌 の大 きな要 因 で もあ りま した。 当時 、 高 額 所 得 者 の上 位5%の. 人 に個 人 資 産 の絶 対 量 の三 分 の一 が集 中 して い ま した。 日本 も富 一28一.

(4) 政治 ・経済情勢 と人権の視点か らみた企業 の方向性 あ る もの が富 み 、 貧 しい もの は ます ます 貧 し くな る と い う状 況 にな って きて い ま す。 世 界大 恐 慌 に よ り ドイ ツの ナ チ ス党(国 家 社 会 主 義 ドイ ツ労 働者 党)の. 国会 議 員. が、 結 果 と して議 席 数 を 増加 させ て い き、 後 にユ ダ ヤ人 大量 虐 殺 の準 備 が な され る こ とに な った とい う歴 史 が あ り ます 。 そ う い う意 味 で、 経 済 状 況 の悪 化 は人 権 状 況 の悪 化 と密 接 に か か わ って い る こ とを 理 解 しな けれ ば な り ませ ん。. 先 進 国 で衰 退 が 始 ま る共 通 の特 徴 先 進 国 で衰 退 が始 ま る共 通 の特 徴 にっ い て、 京都 大 学 大 学 院 法 学 研 究 科 の 中西 輝 政 教 授 が次 の項 目を挙 げ て い ま す。 第 一 は 「人 口構 造 の劇 的変 化 」 で す。 最 も影 響 を与 え て い る の は少 子 高 齢 化 で あ り、 あ らゆ る産 業 に影 響 を与 え ま す。 人 口 が減 少 して栄 え た国 は あ りませ ん 。 ただ 、 基 盤 人 口が 減 って も、 交 流 人 口 が増 加 す れ ば問 題 は あ りませ ん 。 交 流 人 口 を増 や す た め に は多 民 族 共 生 の社 会 シス テ ムが 作 れ るか ど うか が 重 要 に な って き ます 。 ヨー ロ ッパ と 日本 を比 較 します と、 日本 の外 国 人 労 働 者 は1%強 は17%に. ですが、 スイス. な った時 期 が あ りま した。 その 当 時、 ス イ スの作 家 マ ック ス ・ブ リ ッ シュ. は、 ス イ ス国 民 の気 持 ち を皮 肉 って 「欲 しか った の は労 働 力 、 だ け ど来 た の は人 間 だ った」 と言 い ま した。 これ は労 働 力 は欲 しいが 、 人 権 を 守 るべ き 「人 」 は来 て 欲 し くな い と い う意 味 で す 。 日本 で は さ らに極 端 に排 外 主 義 的 な 国 家 意 識 が 出 て くる か も しれ ませ ん 。 そ の よ うな状 況 に ど の よ うに対 処 す るか は交 流 人 口を 増 加 させ る と い うと き に最 も重 要 な課 題 で す 。 第 二 に 「財 政 破 綻 」 が あ ります 。 先 に紹 介 した よ う に財 政 破 綻 の 一 歩 手 前 とい う 状 況 に な って い ます 。 国 債 は 日本 の評 価 で あ ります が 、 そ れ が 大 き く下 が って い ま す。 第 三 に 「価 値 規 範 の 崩 れ 」 で す が 、 これ も起 こ って い ます。 様 々 な価 値 規 範 が崩 れ 、 価 値 観 が 大 き く変 化 して きて い る状 況 で す 。 犯 罪 率 の上 昇 が そ れ らの こ とを顕 著 に物 語 って い ます 。 一29.

(5) 人権 問題研究資料. 第18号. そ して最 後 に 「国 と して の意 志 決 定 が で き な い政 治 の 弱 体 化 」 と指 摘 され て い ま す が、 今 日の 日本 の政 治 状 況 は改 革 派 と守 旧 派 の 間 で 改 革 が 右 往 左 往 す る と い う事 態 に な って お り、 ま さ に政 治 の弱 体 化 と いえ ます 。 以 上 四 っ の項 目 が要 因 と な って 国 が 衰退 して い くと指 摘 して い ます。 これ まで の 日本 の 近 年 の 歴 史 の 中 で、 失 わ れ た10年. と いわ れ る こ とが 多 々 あ ります が 、 改 革. しよ う と して痛 み がで る と止 め、 ま た しば ら く して 改 革 を 行 う と い う こ とを繰 り返 して い る状 況 で す。 方針 が 一 貫 して いな い こ とに よ って 、 マ イ ナ スの結 果 が 出 る ケー スが 多 か った と い え ます 。. 経 済 基 盤 の変 化 と人 権 状 況 次 に 「経 済 基 盤 の変 化 と人 権状 況」 に っ い て考 察 して い きま す。 今 日 の経 済 状 況 をみ て い くと、 す べ て の 問題 の根 源 は シス テ ム に あ る とい え ます 。 政 策 と は、 っ ま る と こ ろ 「人」 と 「財 」 と 「情 報 」 を如 何 に駆 使 す るか と い う こ と で あ ります 。 これ を どの よ う に使 うか で 同 じ 「人 」、 「財 」 で も全 く違 う結 果 を生 み 出 す こ と は少 な くあ り ませ ん。 こ の十 数 年 、 日本 の 政府 は経 済 政 策 等 で成 功 して い ませ ん 。 シス テ ム等 に も問 題 が あ り、 改 革 を しな けれ ば な らな い の は多 くの人 が 理 解 して い る と ころで す が 、 果 た して 今 の 方 法 ・視点 で よ い の か疑 問 です 。 正 しいか ど うか は、 将 来 明 らか に な り ます が 、 どの よ うな視 点 に立 っ か に よ って 、 そ の評 価 も大 き く変 わ る と いえ ます 。. 今 日、 時 代 は 「増大 社 会 か ら縮 小 社 会 へ 」 と い う状 況 に あ ります 。 他 国 の 人 が 来 た い と思 うよ うな 多民 族 共 生 社 会 に な らな けれ ば、 ま た、 国 内 に住 ん で い る人 が 子 ど もを 生 み た い と思 うよ うに な らな けれ ば、 間 違 い な く増 大 社 会 か ら縮 小 社 会 にな る と予測 され て い ます。 現 代 の 日本 に お い て、 「少 子 高 齢 化 が もた らす 経 済 基 盤 の変 化 」 が 日本 経 済 の基 本 的 な面 で最 大 の 問題 だ とい え ます 。 人 口が 減 少 して い くこ と は、 経済 活 動 の ほ と 一30一.

(6) 政治 ・経済情勢 と人権 の視点か らみた企業 の方 向性 ん どの ス ケ ー ルが 減 少 して い くこ とで す 。 例 え ば、 土 地 の値 段 は下 が り続 け て い ま す 。 人 口が 減 少 す れ ば、 住 居 等 を は じあ と した土 地 の必 要 性 も減 少 し、 多 くの人 も 土 地 を 買 い ませ ん 。 これ らの 状 況 は経 済 に大 き な影 響 を与 え ます 。 これ まで 人 口が 減 少 して 栄 え た国 は あ り ませ ん で した。 米 国 で は少 子 高 齢 化 を 克 服 す る た め に、 ニ ュ ー ヨー クで も企 業 の中 に社 内保 育 所 を 置 いて い ます 。 安 心 して 子 ど もを産 み 育 て なが ら働 け る状 況 を作 って い る の です 。 日本 に は この よ う な制 度 が 十 分 で は あ り ませ ん 。 これ は社 会 の シス テ ム の問 題 です 。. どの よ うな 社 会 を 築 くの か こ の よ うな保 育 の 政 策 を ど うす るの か と い う こ と と、 「人 権 尊 重 の 多 民 族 共 生 社 会 を 築 け るの か 」 と い う こ は 日本 の経 済 全 体 に と って も非 常 に大 き な影 響 を与 え ま す 。 日本 の人 口が 減 少 して い け ば、 交 流 人 口を いか に増 や す か を考 え な けれ ば な り ませ ん 。 その た め に は外 国 人 が 「日本 に来 た い」 と思 う国 に しな けれ ば な らな い の です。 米 国 の 大 学 院 の 博 士 課 程 に在 籍 して い る院 生 の 半 分 は外 国 人 で す 。 それ は ア メ リ カで 学 び た い、 成 功 した い と思 わ せ る何 か が あ るか らで す 。 ま た ア メ リカで は映 画 産 業 が 盛 ん で す 。 ア メ リカの 映 画 生 産 量 は世 界 の5%で て い る画 面 占有 率 は50%で. す が 、 世 界 の映 画 館 で 映 っ. 、10倍 とな って お り、 映 画 を通 じて ア メ リカの 宣 伝 が. 活 発 に行 わ れ て い る と いえ ます 。 日本 は その よ う な社 会 シ ス テ ムや 社 会 状 況 にな って い ませ ん 。 人 権 と い う視 点 だ けで な く、 経 済 の視 点 か らみ て も人 権 尊 重 の 多 民 族 共 生 社 会 が 築 けて い な い こ とが 、 経 済 の 足 を引 っ張 る こ と にな って い るの で す 。 生 活 しや す く夢 を もて る良 い シ ス テ ム に は人 が 集 ま って き ます が 、 悪 い シ ス テ ム か ら は人 が 離 れ て い き ます 。 将 来 の 不 安 か ら子 供 を 産 まな くな り、 人 や 金 が 海 外 に 逃 げて い くと い う現 象 を 起 こ しっ っ あ り ます 。 そ れ を 克 服 す るた め に は子 育 て しな が ら 自身 の 自 己実 現 を 追 求 す る こ とが で き る 「自己 人 生 コ ン トロ ール 権 を サ ポ ー ト 一31一.

(7) 人権 問題研究 資料. 第18号. す る社 会 を築 け る か」 ど うか が重 要 に な って きま す。 ニ ッセ イ基 礎 研 究 所 が 出 した 「高 齢 者 の残 した遺 産 の 日米 比 較 」 を見 る と、 米 国 で は年 間 可 処 分 所 得 の5倍 で あ り、 日本 で は20.8倍 に もな って い ます 。 っ ま り将 来 が不 安 だ か ら結 果 と して多 くの遺 産 を残 す こ とに な って い る の で す。 何 故 この よ うな デ ー タ を提 示 した か と い うと、 経 済 ・景 気 の浮 揚 は個 人 消 費 の動 向 と密 接 にか か わ って い るか らです 。 日本 のGDPは. 約530兆. 円 で あ り、 そ の う ち の 約65%が. 個人消 費です。 個人消. 費 が よ くな らな い限 り景 気 は よ くな りませ ん 。 そ して個 人 消 費 の最 た る もの は不 動 産 、 住 宅 で す が 、 活 発 に動 いて い ませ ん 。 無 駄 遣 い を奨 励 す る と い う意 味 で は あ り ませ ん が 、 経 済 ・景 気 の 浮 揚 は個 人 消 費 を刺 激 す る以 外 に な いの で す 。 ど うす れ ば個 人 消 費 を 活 発 にで き る ので し ょうか 、 それ は 「セ ー フ テ ィ ー ネ ッ ト 社 会 を築 け るか ど うか 」 にか か って い ます 。 セ ー フ テ ィ ー ネ ッ トが な い市 場 原 理 は弱 肉 強 食 以 外 の な に もの で もあ り ませ ん。 市 場 原 理 を 導 入 す るな ら、 明 確 な セ ー フ テ ィ ー ネ ッ トを 制 度 的 に構 築 す る必 要 が あ ります 。 個 人 の 視 点 か ら い う な ら、 安 心 して 自 己実 現 の た め に 自身 の 財 産 を遣 え る 状 況 を 社 会 的 に作 れ るか ど うか で す 。 いっ リス トラ され 失 業 す るか わ か らな い状 態 で は 内需 は拡 大 し ませ ん 。 セ ー フテ イー ネ ッ トが な い状 況 で は、 将 来 の た あ に蓄 え て お こ う と な るの は当然 で す 。 遣 わ な い とい う よ り は遣 え な い状 況 な の で す。 さ らに、 セ ー フ テ ィ ー ネ ッ ト社 会 は安心 して 暮 らせ るだ けで はな く、 個 人 消 費 を 活 発 に し、 内需 の拡 大 にっ な が る こ とに よ って 、経 済 に もプ ラス にな りま す。 一 人 一 人 の生 活 を人 権 とい う視 点 で見 て い るか ど うか が経 済 に と って も非 常 に重 要 にな っ て き た と い う こ とで す。 っ ま り セ ー フ テ ィー ネ ッ ト社 会 を築 けれ ば経 済 に好 影 響 を 与 え 、 個 人 消 費 は伸 び て い く と い う こ とで す。. 交 流 人 口を増 や す た め に は ど うす べ きか 次 に、 交 流 人 口 が な ぜ 増 加 しな い の か とい う こ と に関 連 して 、 「な ぜ 日本 を 訪 れ 一32一.

(8) 政治 ・経済情勢 と人権 の視点 か らみた企業 の方 向性 る海 外 か らの 観 光 客 は少 な い の か」 に つ い て考 え て い きま す。 端 的 に い え ば海 外 か ら 日本 に行 きた い と思 うよ うな 魅 力 が無 い、 あ るい は な い と思 わ れ て い るか らで す。 しか し、 日本 に は多 くの 魅 力 が あ りま す。 奈 良 や京 都 に は世 界遺 産 が あ りま す が、 そ の 情 報 を 世 界 に積 極 的 に発 信 す る こ とを して い ま せ ん。 観 光 や文 化 資源 に 関 す る 情 報 を 発 信 す る こ とに財 源 を振 り向 け れ ば少 しは変 わ りま す。 また 、 自然 を 豊 か に す る環 境 回復 の た め に公 共 事 業 を展 開 す れ ば 日本 の豊 か な 自 然 は、 復 活 し ます。 自然 を破 壊 す るよ うな無 駄 な公 共 事 業 は必 要 あ りま せ ん が、 生 活 を快 適 にす る公共 事 業 は今 後 と も必 要 で す。 具 体 的 な 数 字 で 見 る と、2000年 の 日本 か らの 海 外 旅 行 者 は1781万. 人 、 一 方 日本. を 訪 れ た 外 国 人 は461万 人 で あ り、 非 常 に少 な い とい え ま す。 日本 は島 国 で 非常 に美 しい 国 で す。 文 化 資 源 ・自然 資 源 ・技 術 資 源 ・人 的資 源 が 豊 富 に あ るに も関 わ らず 日本 を訪 れ る観 光 客 が 少 な い の は、 世 界 に豊 か な 日本 の文 化 資 源 や 自然 資 源 を積 極 的 に情 報 発 信 して い な いか らです 。 な おか っ 観 光 客 が 行 き た い と思 うよ うな人 の意 識 や感 覚 も含 め た多 民 族 共 生 の社 会 シス テ ム に な って い な い か らで す。 ま た、 ひ とっ の都 市 が国 際 集 客 都 市 に な る た め に は、 まず 国 内集 客 都 市 に な らな けれ ば な りま せ ん。 人 が 来 れ ば経 済 は活 性 化 しま す。 日本 の国 際 旅 行 収 支 にっ い て は、 収 入 が342億 8100万. ドル 、 支 出が3280億8100万. ドル とな って お り、 約10倍. の違 い が あ り ます 。. 日本 を訪 れ た外 国人 は461万 人 で あ ります が 、 フ ラ ンス は同 じ2000年 で7300万 人 に上 りま す。 世 界 の人 が来 る とい うこ と は そ の国 を紹 介 して くれ る こ とで あ り、 情 報 発信 力 も非 常 に大 き くな る とい うこ とで す 。 っ ま り、 経 済 の回 復 と い う観 点 か ら、 これ か らの 日本 に っ いて 考 え て い く と、 「環 境 回 復 が も た らす 国 土 再 生 社 会 を築 け るか 」、 「人 権 情 報 発 信 社 会 を築 け るか 」 とい う こ と も重 要 に な って くる と い うこ とが よ くわか ります 。 先 に述 べ た人 権 尊 重 の多 民 族 共 生 社 会 を築 け るか ど うか は、 人 権 と経 済 が 交 差 す る重要 な課 題 で す。 さ らに、 繰 り返 し述 べ て い る よ う に 「自 己人 生 コ ン トロ ール 権 一33一.

(9) 人権問題研究資料. 第18号. を サ ポ ー トす る社 会 を 築 け るか 」 ど うか が 重 要 で あ り、 そ こに も っ と力 を入 れ る必 要 が あ ります 。 そ して 「セ ー フ テ ィ ー ネ ッ ト社 会 を 築 け るか」 ど うか も、 今 後 の 日本 経 済 に大 き な影 響 を与 え ます 。 以 上 の よ う な人 権 、 環 境 、 安 全 、 共 生 、 自己 実現 を推 進 で きる社 会 を創 造 す る こ とが で き るか ど うか が 、 今 後 の 日本 の 政 治 ・経 済 に と って、 最 も重 要 な課 題 に な っ て い ます 。. 2、 人 権 。環 境 視 点 で 見 た 時 代 の 特 徴 と企 業 の 方 向 性 団 企業 の方 向性1. 環 境 回 復 と企 業 以 上 の認 識 を ふ まえ て 「人 権 ・環境 視 点 で 見 た 時代 の特 徴 と企 業 の方 向 性 」 と い う こと にっ いて 考 え て み る と、 企 業 の方 向性 の第 一 と して 「環 境 回 復 と企 業 」 と い う視 点 が 重 要 で あ る こ とが 理 解 で き ます。 企 業 利 益 と社 会 的 ・環 境 的 利 益 の統 一 を 図 って い くこ とが 、 今 日特 に強 く求 め られ て い ま す。 キ ー ワ ー ドで い うな ら 「開 発 主 義」 か ら 「回復 主 義 」 へ と い うこ とで す 。 環 境 回 復 の た め に投 資 を して い くの は、 今後 ます ま す重 要 に な って き ます 。 経 済 の成 長 を 浪 費 に よ って 求 め るの で はな く、 経 済構 造 の矛 盾 の解 決 に向 けて 社 会 参 加 型 経 済 を 築 くこ とで 問 題 を解 決 す る社 会構 造 を構 築 す る と と もに、 そ の た あ の企 業 活 動 が 重 要 に な って くる と い う こ とで す 。 21世 紀 の 人 類 最 大 の 課 題 は環 境 で す 。 フ ロ ン ガ ス に よ って オ ゾ ン層 が破 壊 され て い る 問題 が あ り ます が 、1988年. に、2000年. ン層 保護 条 約 が で きま した。 昨年(2003年)、. まで に フ ロ ンを全 廃 す る とい うオ ゾ 南 極 の オ ゾ ンホー ルが 過 去 最悪 に な っ. た と い う ニ ュ ー スが 流 れ ま した が 、 そ うい う意 味 で経 済 を活 性 化 す るの に、 「開発 」 か ら 「回 復 」 と い う発想 は人 類生 き残 りの た め に も非 常 に重 要 だ と い う こ とで す 。 一34一.

(10) 政治 ・経済情勢 と人権 の視点か らみた企業の方向性 近 年 、 産 業 の リサ イ ク ル問 題 も非 常 に重 視 され て い ます が 、 人 権 ・環 境 視 点 の 大 切 さが 経 済 分 野 に お いて も、 よ り一 層 明 確 に認 識 され て き た と い う こ とで す 。 例 え ば、 デ ンマ ー ク は エ ネ ル ギ ー の総 量 を 増 や す こと な く17年 間 に 国 内総 生 産 を1.4倍 に成 長 させ た とい う事 実 が あ り ま す。 そ うい う視 点 を 強化 して い くこ とが 強 く求 め られ て い ます 。 日本 にお いて も環 境 ・省 エ ネ分 野 で は世 界 に大 き く貢 献 し て い ます が 、 人 権 分 野 で は遅 れ を と って い ます 。 環 境 ・人 権 分 野 の 問 題 とか か わ って 、 企 業 の 社 会 的 責 任(CSR)と. ビ ジネ ス に. っ い て も欧 米 を 中 心 に 認 識 が 大 き く変 化 して き て い ます 。 例 え ば イ ギ リ ス に は CSR担. 当 大 臣 が い ます が 、 そ の大 臣 が イ ギ リス のCSRの. 一 例 と して、 ロ ン ドンの. 銀 行 の移 転 事 例 を 紹 介 して い ま す 。 移 転 ・建 て替 え に と もな って2000ト. ン も廃 棄. 処 分 され る家 財 道 具 を 産 業 廃 棄 物 に しな い たあ に次 の よ うな方 法 を取 りま した。 企 業 利 益 と社 会 的 環 境 的 利 益 を 統 一 させ るた あ に廃 棄 予 定 の 家財 道 具 を修 理 す る NPOを. っ く り、 そ のNPOで. 家 具 を 修 理 す る人 を 雇 用 し、 修 理 さ れ た 家 具 を販 売. したの で す 。 産 業 廃 棄 物 を 出 さず利 益 を生 み 出 し、 雇 用 促進 に もっ な げ失 業 対 策 に もな りま し た。 この よ うな こ とを政 府 を上 げて 実 践 して い ま す。 この よ うに静 脈 産 業 を活 性 化 させ る こ とで 動 脈産 業 に も影 響 を与 え る とい う視 点 も必 要 に な って きま す。 これ は社 会 的 責任 を慈 善 活 動 で は な く、 ビ ジネ ス の 中核 に お くと い う こ とで もあ ります 。 人 権 分 野 に っ い て も慈 善 的 な 発想 か ら ビ ジネ ス の 中核 に す え る発 想 が 求 あ られ て い ます。 経 営 と業 務 と人 権 は、 一 一体 で あ る とい う認 識 を強 化 しな け れ ば な ら な い とい う こ とで す。 社 会 的責 任 を ビ ジネ ス の 中核 に お く こ とが 、 社 会 へ の貢 献 に っ な が って い くわ けで す。 経 営 の発 想 を変 え る とい う こと です 。 企 業 の 人 権推 進 活 動 を慈 善 か ら ビ ジネ ス の 中核 に お く とい う こと は、 人 権 を幅 広 く、 深 く捉 え る こ と と もっ な が って い きま す。 そ の よ うな企 業 活 動 を法 的 な面 か ら もサ ポ ー トす る動 き も出て きて い ます 。 商 法 も経 営 内容 だ けで な く、 企 業 の社 会 的活 動 等 も情 報 開 示 と い う方 向 で 動 きっ っ あ り、 一35一.

(11) 人権 問題研究 資料. 第18号. 後 で述 べ る入 札 方 法 等 も変 化 して き て い ます 。 国 際 的 に も倫 理 貿 易 イ ニ シア チ ブ と い う考 え 方 が 広 ま りつ っ あ ります 。 これ は ど の 国 の 企 業 で あ って も、 賃 金 や 労 働 環 境 でILOの. 原 則 を守 って い る こ とを基 本 に. 取 引 を す る とい う こと で あ り、 原 則 を守 って い な い企 業 と は取 引 を しな 小 と い う こ とで もあ ります 。 徐 々 に広 が りを見 せ て お り、 市 場 原 理 を 通 じて 各 国 の 企 業 に労 働 環 境 を守 らせ て い ま す。 さ らに、 公 正 貿 易 と い う考 え 方 も広 ま りっ っ あ り ます。 ア メ リカや ヨー ロ ッパ で は公 正 貿 易 ブ ラ ン ドが 並 ん で お り、 公正 貿 易 に対 す る市 民 意 識 の高 さ によ って、 そ れ らの商 品 は よ く売 れ て い ます 。 これ らの 商 品 は、 途 上 国 の 国民 が今 日の人 権 基 準 を満 たす 生 活 が で き る よ う な賃 金 等 を 支払 って作 られ て い る製 品 で す。 そ う した こ と を重 視 す る市 民 が 増 え て きて い る とい う こ とで す ま た、 日本 で も環 境 配 慮 を 入札 条 件 に とい った よ うな総 合 評 価 方 式 が導 入 され て き て い ま す 。CO2抑. 制 ・騒 音 低 減 ・ゴ ミ減 量 は基 本 的 に 環 境 配 慮 で す が 、 この 入. 札 条 件 に人 権 推 進 を 入 れ る こ と も課 題 に な って きます 。 仕 事 を 受 注 す る とい う こ と、 っ ま り市 場 原 理 を通 じて 人 権 の実 現 を推 進 して い く と い う こ とで す。 人 権 推 進 の た め に企 業 が ど うい う活 動 を して い るか が 、 仕 事 の受 注 競争 で プ ラ スに な る とい う こ とです 。. 環 境 規制 を ビ ジネ ス チ ャ ンス に 一 方 、 環 境 保 護 や人 権 の水 準 が 向上 す れ ば、 それ にか か わ って 社 会 的 に多 くの 規 制 も登場 し ます。 そ う した 時 に 「環 境 規 制 を ビ ジネ ス チ ャ ンス に」 す る と い う発 想 も重 要 にな って きま す。 1970年 代 、 第 一 次 、 第 二 次 の オ イ ル シ ョ ック に よ って 、 エ ネ ル ギ ー の危 機 に遭 遇 した 日本 の産 業 、 特 に 自動 車 産 業 は エ ネル ギ ー と環 境 の 大 きな 制 約 を受 け る こ と に な りま した。 しか しエ ネ ル ギ ー と環 境 の 挑 戦 を 受 けた 自動 車産 業 は、 そ の大 きな 一36一. Tn.

(12) 政 治 ・経 済情勢 と人権 の視点 か らみた企業 の方 向性 波 を克 服 した こ とに よ って、 世 界 の先 端 の 省 エ ネ技 術 を生 み 出 し、 世 界 一 厳 しい排 ガ ス規 制 を克 服 す る技 術 を生 み 出 し ま した。 そ して世 界 一 厳 しい排 ガ ス規 制 を克 服 した こ とが経 営 上 の武 器 に な った の で す。 も し、 オ イ ル シ ョ ック とい うエ ネ ル ギ ー の危 機 に遭 遇 して な けれ ば、 も し厳 しい 排 ガ ス規 制 が な か った な らば、 今 日の 自動 車 産 業 の好 調 は なか ったか も しれ ませ ん 。 世 界 の トヨ タに な れ た の も この 時代 の取 り組 み が大 きい とい え ます 。 ま さ に環 境 規 制 が ビ ジネ ス チ ャ ンス に な った の で す。 今 後 ま す ま す この よ うな視 点 が 強 化 され る 必 要 が あ りま す。. 「人 権 規 制 」 を チ ャン ス に した企 業 同様 に人権 規制 や基 準 の 向上 をチ ャ ンス に した企 業 もあ ります。 今 日の企 業 に と っ て、 環 境 と人 権 は最 も大 き な経 営 上 の課 題 で あ り、 あ る面 で は制 約 要 因 で もあ りま す。 人 権 面 で は、 日本 に お い て も 「改 正 均 等 法 」 第21条. で セ ク シ ャ ル ・ハ ラス メ ン. トの防 止 に対 す る 「事 業 主 の配 慮 義 務 」 が 定 め られ ま した。 一 種 の 人 権 上 の 規 制 で あ り、 セ クハ ラ規 制 で す 。 こ う した 「規 制 」 で さえ 経 営 上 の チ ャ ンスに した 企 業 が あ ります 。 セ クハ ラ規 制 で 大 き な損 害 を被 る と こ ろ もあれ ば 、 そ れ を チ ャ ンス に し て ビ ジネ ス に して い る と こ ろ もあ る ので す 。 米 国 三 菱 自動 車 製 造 の セ クハ ラ訴 訟 がEEOC(米. 国 雇 用機 会均 等 委 員会)と. の. 48億 円 とい う多額 の和 解 で 決 着 した こ と に よ って、 米 国 に お い て 「セ クハ ラ保 険 」 (雇 用 慣 行 賠 償 責 任 保 険)の. 加 入 者 が 急 速 に伸 び る とい う結 果 に な って い ます 。 保. 険 の掛 け金 は従 業 員 の数 な ど に よ って 変 動 しま す が 、 年 間18000千. ドル か ら12万. ドル と な って い ます 。 この 保 険 は、 意 図 的 な行 為 に対 す る訴 え にっ い て は カ バ ー さ れ ず 、 適 切 な防 止 策 を 取 って い な けれ ば 保 険 も出 な い もの で す。 した が って セ クハ ラに対 す る厳 格 な 社 内 規 定 を 設 け る必 要 が あ り ます 。 そ れ で も加 入 者 が増 加 しま し た。 一37.

(13) 人権問題研究資料. 第18号. こ の よ うに セ クハ ラ と い う人 権 に 関 す る 「規 制 」(あ る面 で は制 約 要 因)を. ビジ. ネ ス ・チ ャ ンス に して い るの で す。 今 後 ます ます そ の よ うな 視点 が 強化 され る必 要 が あ りま す。 っ ま り人 権 無 視 の 企 業 よ り も人 権 尊 重 の企 業 が 、 環 境 破 壊 の企 業 よ り も環 境 回 復 や リサ イ クル に強 い企 業 が、 発 展 す る とい う方 向 に変 化 して きて い る こ とを理 解 す る必 要 が あ り ます。 企 業 にお い て も社 会 の特 徴 を正 確 に把 握 し活 用 す る た め に は ど うす れ ば よ い の か 、 そ して そ の た め の政 策 は何 か を考 え て いか な け れ ば な らな い の で す。. 圖 企業の方向性2. 自 己実 現 をサ ポ ー トで き る社 会 を 先 に述 べ た 「自 己実 現 を サ ポ ー トで き る社 会 を 」 築 くた め に も、 企 業 は大 きな 役 割 を果 たす こ とが で き ます 。 企 業 利 益 と人 権実 現 の統 一 的 把 握 が 大 切 だ とい う こ と です 。 これ まで は企 業 と人 権 は対 立 的 に捉 え られ て きま した が、 先 程 、 人 権 を ビ ジネ ス の中 核 に据 え た取 り組 み が 重 要 だ と述 べ ま した。 人 権 を実 現 す るの に 企業 は ビ ジネ ス上 もどの よ うな貢 献 が で き るの か とい う視 点 が ま す ま す重 要 に な って きま す。 社 会 が 「生 産 優 先 か ら生 活 優 先 へ 」 とな れ ば、 企 業 の方 向 は さ らに変 わ って くる と いえ ます 。 今 後 、 「自 己実 現 ・自己 人 生 コ ン トロ ー ル権 に焦 点 を 当 て た産 業 構 造 の 転 換 」 が 確 実 に進 ん で い き ます 。 マ ズ ロー の欲 求 階 層 説 と い うのが あ ります が、 企 業 は個 々 人 の 欲 求 を 満 た す た め に経 営 努 力 し、 利 益 を得 て き た わ け です 。 欲 求 階 層 説 で は、 第 一 段 階 が 生 理 的 欲 求 で あ り、第 二 段 階 が 安 全 の欲 求 、 第 三 段 階 が 所 属 と愛 の欲 求 、 第 四 段 階 が 承 認 の欲 求 、 第五 段 階 が 自 己実 現 欲 求 で あ り、 それ ぞ れ の殺 階 の欲 求 を 支 え るた め に 企 業 も貢 献 して きま した。 今 日、 企 業 の経 営 活 動 と も関 連 して 自 己実 一38一.

(14) 政治 。経済情勢 と人権 の視点か らみ た企業 の方向性 現 欲 求 が ます ま す重 視 され て きて い ま す。. と ころ で住 宅 政 策 や産 業 政 策 も経 済 の活 性 化 と人 権 の実 現 に重 要 な役 割 を果 た し ます 。 ドイ ツの住 宅 政 策 に は100年. ロー ンが あ ります 。 第 二 次 世 界 大 戦 後 ドイ ツ の. ア デ ナ ウア ー首 相 は 「国 民 精 神 の荒 廃 、 社 会 の緊 張 対 立 は住 ま いの 貧 しさ に起 因 す る」 とい う有 名 な言 葉 を残 しま した。 っ ま り住 ま い を充 実 す る こ とを 通 じて 社 会 的 緊 張 感 を取 り除 き、 産 業 を復 興 す る こ とを政 策 に掲 げ実 現 しま した。 ドイ ッで は そ の具 体 化 の た め に 「住 宅 貯 蓄 割 増 法 」 等 を 制 定 しま した。 住 宅 取 得 を 目的 とす る勤 労 者 の 貯 蓄 に は 国 が25∼45.5%も. の割 増 金 を プ ラ スす る とい う も. の で す。 そ して建 て る と き に は建 設 助 成 金 、 自宅 の 建 設 に は必 要 資 金 の70%を 府 が期 限100年. 政. の無 利 息 融 資 で貸 し出す とい う制 度 で す 。. 個 人 に と って も住 宅 を建 て や す くな り、 住 宅 建 設 も促 進 され て い くこ と にな り ま す。 そ れ に伴 って住 宅 メ ー カ ー に100年 間 耐 え られ る住 宅 を 建 設 す る こ とが 求 め ら れ ま した。 三 代 に渡 って ロー ンを返 済 す る ことが で きれ ば 個 々 の 負 担 はか な り軽 減 さ れ ます 。 日本 の これ か らの よ うに人 口が 減 少 して も、 各 自が 今 の 住 宅 よ り広 い家 を建 て る こ とに な れ ば住 宅 建 設 に か か わ る経 済 は マ イナ ス にな り ませ ん 。 しか し多 くの人 が そ の よ うに考 え な い の は、 住 宅 建 設 にか か わ る個 々 の 負 担 が 重 い とい う こ と と、 デ フ レスパ イ ラル とい う状 況 が 続 いて い るか らで す 。 一 方 、 「雇 用 拡 大 と企 業 利 益 の両 立 」 も今 後 ます ます 重 要 な 問 題 だ と い え ま す。 岐 阜 県 中 津 川 市 の 家 電 部 品 メ ー カ ー は、 勤 務 は土 日祝 とい う条 件 で意 欲 の あ る60 歳 以 上 の人 を求 人 して い ます 。 この よ うな試 み が 、 高 齢 者 の 雇 用 拡 大 に っ な が り、 工 場 の稼 動 も一 層 進 み、 企 業 の利 益 もプ ラス とな って い ます 。. ハ ラ ス メ ン トの防 止 も重 要 な課 題 さ らに、 今 日の経 済 情 勢 と もかか わ って 、 企 業 内 の ハ ラス メ ン トも重 要 な 問題 と して浮 上 して お り、 就 業 環 境 の視 点 で も人 権 を 重 視 しな い と企 業 の マ イ ナ ス が増 幅 一39一.

(15) 人権問題研究資料. 第18号. さ れ る傾 向 に あ ります 。 閉塞 した時 代 状 況 の 中 で職 場 等 にお い て 、 ハ ラ ス メ ン トが横 行 して い ます。 職 場 に お け るハ ラ ス メ ン トとい った場 合 、 最 も関心 が あ るの はセ ク シ ャル ・ハ ラ ス メ ン トで す が 、 ハ ラ ス メ ン ト(嫌 が らせ)は セ クハ ラだ けで は あ りま せ ん。 セ ク ハ ラの問 題 も非 常 に重 要 な 問題 で す が、 そ の他 の ハ ラス メ ン トもそ れ に劣 らず重 要 な問 題 で す。 セ クハ ラの 場 合 は、 改正 男 女 雇 用 均 等 法21条. で 「事 業 主 の セ クハ ラ. 防 止 の配 慮 義 務 」 が規 定 され て い ま す が、 そ の他 の ハ ラス メ ン トは特 別 に法 律 で規 定 され て い る もの はあ りま せ ん。 職 場 で の い じめ が原 因 で会 社 を辞 め た の な ら民 事 上 の損 害 賠 償 請 求 をす る ことが 可 能 で すが 、 「い じめ」 や 「嫌 が らせ 」 を防 止 す るた め の 特 別 の法 律 は な く、 欧 州 の よ う に立 法 化 しよ う とい う動 き もあ りませ ん 。 これ らの こ と も一 因 で す が 、 職 場 で の 「い じあ」 や 「嫌 が らせ 」 が 後 を絶 たず 、 職 場 環 境 を 悪 化 させ て い る現 場 も多 くあ り ます。 これ らの 問題 はハ ラス メ ン トを受 けて い る職 員 だ けの 問 題 で はな く、 そ の 他 の職 員 に も悪影 響 を与 え、 企 業 や 組 織 に と って も大 き な マ イ ナ ス にな り ます 。 職 場 環境 の 悪 化 はセ クハ ラ と同 様 、 職 場 全 体 の 力 量 を大 き く低 下 させ 、 職 員 、 組 織 に大 きな 負 担 を 強 い る こ とに な ります 。 職 場 にお け るハ ラス メ ン トは、 私 た ちが 考 え る以 上 に深 刻 な 問 題 で あ り、 ハ ラス メ ン トによ る損 失 は労 働 者 だ けで は な く企 業 に と って も非 常 に 大 きい とい え ま す。 ハ ラス メ ン トや い じめ犠 牲 者 個 人 に と って 、 そ の 結 果 は非 常 に 深刻 で す。 ス トレ ス、 うっ病 、 自尊 心 の低 下 、 自 己非 難 、 恐 怖 症 、 不 眠 、 消 化 器 系 お よ び筋 骨 格 系 障 害 とい った身 体 的 ・精 神 的 な症 状 や 心 身 相 関 の 症 状 が 現 出 し、心 的外 傷 後 ス トレス 障 害 にな った りす る場 合 もあ ります 。 この よ う に列 記 す れ ば 簡単 に 聞 こえ ま す が、 一 っ一 っ の症 状 が犠 牲 者 に大 き な負 担 を 強 い る こ と にな りま す。 今 日、 うっ病 で悩 む30代 、40代 は増 加 傾 向 に あ り、 悪 化 す れ ば最 悪 の事 態 に も な りか ね ま せ ん。 職 場 に よ って はハ ラス メ ン トの 被 害者 だ け で な く加 害 者 も精 神 的 一r.

(16) 政治 ・経済情勢 と人権 の視点 か らみた企業 の方 向性 に追 いっ あ られ た 状 況 で あ る と い う場 合 も少 な くあ りま せ ん。 さ らに、 精 神 的 な 問 題 が 身 体 的 な 多 くの 問 題 を 引 き起 こ して い ま す。 以 上 の よ うな 症 状 が 、 休 職 や 解 雇 に よ る社 会 的孤 立 、 家 族 問 題 、 経 済 問題 な どの 重 大 な 問 題 に発 展 す る可 能 性 もあ りま す。 また 、 企 業 レベ ル で は、 い じめ の結 果、 欠 勤 率 ・離 職 率 の上 昇 を指 摘 す る こと が で きま す。 ハ ラス メ ン トが横 行 して い る職 場 で は一 っ の企 業 で あ っ て も、 そ の職 場 だ け欠 勤 率 や離 職 率 が高 い とい う こ と もあ ります 。 離 職 率 や 欠 勤 率 が 高 い の はハ ラ ス メ ン トだ け が原 因 で は な く、 職 務 内容 や勤 務 条 件 等 も大 き く影 響 します が 、 職 務 内容 や勤 務 条 件 が ほ ぼ 同 じで特 定 の職 場 だ け に欠 勤 率 や 離 職 率 の 高 さが み られ る場 合 、 そ の職 場 の い じめ やハ ラス メ ン トが 原 因 で あ る こ とが少 な くあ り ませ ん 。 職 場 に お け るハ ラ ス メ ン トは効 率 や 生 産 性 の低 下 な ど にっ な が る場 合 も多 々 あ り、 い じめ やハ ラス メ ン トの犠 牲 者 だ けで な く、 労 働環 境 にお け るマ イ ナ スの心 理 社 会 的環 境 に苦 しむ ほか の同 僚 に もあて は ま り ます 。 い じあや ハ ラ ス メ ン トか ら生 じる法 的 ダ メ ー ジ も高 く、 民 事 上 の訴 訟 を提 起 され た り、 時 に は刑 事 事 件 に発 展 す る こ と もあ り ます。 そ れ だ け で は な く訴 訟 等 が提 起 され る こ と に よ って 、 企 業 イ メ ー ジが 大 き く傷 っ く こ とに な ります 。 こ う した状 況 か ら も企 業 にお け る人 権 視 点 の強 化 が 強 く求 め られ て い る とい え ま す。. 全 米 障 害者 法 と企 業 一 方 、 障 害者 の 「自立 して生 活 で き る権 利 」 の保 障 も重 要 な テ ー マ に な って い ま す 。 その 思 想 を最 も具 現 化 して い る の は、1990年7月26日 た全 米 障 害者 法(ADA)で. 、 米 国 に お いて 成 立 し. す。. この法 律 は当 時 の 日本 か らみ れ ば画 期 的 な もので した 。 例 え ば、 車 椅 子 の人 が 他 人 の手 助 け な しで 、 自力 で ど こへ で も行 くこ とが で き る よ うに す る とい う もの です 。 自宅 か ら出て 車 椅 子 に乗 って い る人 が 路 線 バ ス に 自力 一41一.

(17) 人権問題研究資料. 第18号. で乗 る こ とは で き ませ ん 。 米 国 の バ ス は、 この 法 律 が 施 行 され て か ら、 原 則 と して 車 椅 子 の人 が 他 人 の力 を借 りず に、 自力 で 乗 れ る リフ トを 取 りっ け る こ とを義 務 づ け られ ま した。 映 画 館 、 ガ ソ リ ンス タ ン ド、 ス ーパ ー マ ー ケ ッ ト等 、全 て の公 共 施 設 で そ の よ うに しな けれ ば な り ませ ん 。 鉄 道 も、 原 則 と して 一 両 は車 椅 子 の人 が 自 力 で乗 れ る車 両 にす る こ と にな り ま した 。 この法 が 施 行 され て 、 エ ンパ イ ア ステ ー ト ビル の 所 有 会 社 が 訴 え られ る こ とに な りま した。 エ ンパ イ ア ス テ ー トビル の 最 上 階 の 二 階 分 は エ レベ ー ター が な く、 階 段 を上 らな け れ ば な りませ ん で した 。 車 椅子 の 人 が 自力 で 行 けな い こ とに よ って、 差 別 ビル だ とい うこ と に な っ たの で す 。 日本 で も この 影 響 を 強 く受 けて い ます 。 当時 、 日本 で は小 学 校 や 中 学 校 で エ レベ ー ター の 設 置 され て い る学 校 は ほ とん ど あ りませ ん で したが 、 学 校 に は車 椅 子 の 子 ど もた ち も通 って い ま す。 そ う した現 状 や全 米 障 害 者 法 の影 響 、 高 齢 化 社 会 の影 響 もあ って 、学 校 にエ レベ ー ター を設 置 し て い く とい う方 向 に徐 々 に変 化 して い き ま した。 小 学 校 や 中学 校 に は三 ・四階 建 て が た くさん あ ります 。 車 椅 子 の 子 ど も達 は段 差 を な くせ ば水 平 の移 動 は で き ます が 、 垂 直 の移 動 はで き ませ ん 。 垂 直 の 移動 を可 能 にす るた め に は、 エ レベ ー タ ー を設 置 す る必 要 が あ ります 。 当時 、 三 階 建 て に小 さな エ レベ ー ター を一 機 設 置 す るの に約 一 億 円か か る と いわ れ て い ま した。 全 国 の 小 中 高 等学 校 の数 を考 え れ ば 相 当 な額 に な ります 。 全 米 障 害 者 法 が 成 立 した と き に、 多 くの企 業 は反 対 して い ま したが 、 賛 成 して い た企 業 もあ りま した 。 エ レベ ー ター を設 置 す る会社 を は じあ 障害 者 に貢 献 で き る会 社 、 建 設 会 社 も賛 成 して い ま した。 自社 を改 造 す るた め の 企 業 負担 もあ りま す が、 そ の こ とに よ って仕 事 が 増 加 す る こ とに な ります 。 この よ うな 動 きは 今後 の 企業 の在 り方 を示 す典 型 的 な事 例 で す。 未 だ に行 財 政 を 支 出 す る こ とを通 じて 障害 者 の生 活 保 障 を す る と い っ ただ けの 生 存 権 を守 る と い う発 想 が あ りま す。 行 財 政 を支 出 す る こ と も重 要 な こ とで す が 、 ど の よ うな政 策 ・考 え 方 の も とで支 出 す る の か とい う こ とが 問 わ れ て い る ので す。 一42一.

(18) 政治 ・経済情勢 と人権 の視点 か らみた企業 の方向性 障害 者 の生 存 権 を守 る こ とは極 め て重 要 な こ とです が 、 障 害 者 は受 動 的 な立 場 を 求 め て い るの で は あ りませ ん 。 多 くの障 害 者 は受 動 的 な立 場 よ り も、 自立 して 生 活 で きる権 利 の保 障 を求 あて い る ので す 。 納 税 す る た め、 社 会 に貢 献 す る ため に働 く こ とが で きる と い う条 件 整 備 を 求 めて い るの で す 。 その ため の 費 用 は相 当 な もの で あ ります が 、 産 業 の プ ラ ス に大 き な影 響 を 与 え ます 。 条 件 整 備 の需 要 が 、 全 米 障 害 者 法 の 事 例 で 示 した よ う に経 済 に大 きな 効 果 を もた ら します 。 ま た障 害 者 の 持 って い る能 力 を 一 層 活 性 化 で き、 社 会 全 体 に 大 きな プ ラ ス にな り ます 。 以 上 の よ うな 考 え 方 が 大 切 な の は、 今 日の グ ロー バ リゼ ー シ ョ ンの 中 で い わ れ て い る競 争 原 理 だ けで は、 一 部 の金 持 ち と大 多 数 の貧 乏 人 を生 む こ とに な る か らで す。 そ う した格 差 拡 大 が 、 先 に も指 摘 した よ う に歴 史 的 に有 名 な1929年. の ア メ リカ ・. ニ ュー ヨー ク株 式 市 場 の大 暴 落 を生 み 出 した こ とを忘 れ て は な りませ ん 。. 團 企業の方向性3. 産 業 構 造 の劇 的 変 化 これ ま で述 べ た こ と以 外 に も、 企 業 に と って 人 権 が 重 視 され る よ う にな った 背景 が あ ります 。 それ は 「産 業 構 造 の 劇 的 変 化」 に よ って で す。 情 報 工 学 ・遺 伝 子 工 学 の飛 躍 的 な進 歩 が あ り、 そ れ らの 進歩 が 企業 に と って の差 別 撤 廃 や人 権 の重 視 を 強 く求 めて い ます 。 環 境 回 復 と企 業 利益 の統 一 と同様 に、 企 業 利 益 と差 別 撤 廃 の統 一 が必 要 に な って きて い るの で す。 遺 伝 子 差 別 は、 す べ て の人 が被 差 別 者 で あ り、 加 差 別 者 で もあ り ます 。 す で に ア メ リカ で は遺 伝 子 差 別 撤 廃 に関 す る大 統 領 令 も出 さ れ て い ます 。 こ う した 動 き は、 企 業 に も多 大 な影 響 を与 え る こ とに な ります 。 アイ ス ラ ン ドの事 例 です が 、 ア イ ス ラ ン ド国 民 の遺 伝 子 バ ンク をバ イ オ企 業 が 活 用 す る こ とに よ って、 新 しい産 業 を創 出 して い ます。 国 をあ げ て進 あ て お り、 デ コ ー 一43一.

(19) 人権 問題研究資料. 第18号. ド ・ジェ ネ テ ィク ス社(バ. イ オ ベ ンチ ャー)が 国 民 の 遺 伝子 とい う資 源 を使 う こ と. で産 業 を創 出 して い ます 。 民 間 企 業 に個 人 の遺 伝 子 情 報 へ の独 占的 利 用 権 を 与 え て い るの で す。 ア イ ス ラ ン ドで は、 家 系 が1000年. ほ ど辿 れ る こ とか ら、 そ の 人 の疾 病 傾 向 を調 べ 、 遺 伝 子 と. 病 気 と の関 係 を明 らか に し、 新 た な医 薬 品 を 創 る と と も に、 国民 の健 康 管 理 を 同時 に展 開 して い ます 。 しか し、 同 時 に特 許 支 配 と差 別 を 生 む 危 険 が あ り、 そ れ らを克 服 す る こ とが 非 常 に重 要 に な って きて い ます。 っ ま り企 業 と して遺 伝 子 差 別 を防 ぎ、 個 人 情 報 保 護 を 徹 底 す る こ と と企 業 利 益 の 統 一性 を 確保 す る こ とが重 要 に な って きて い る とい う こ と で す。 この よ うな産 業 構 造 の劇 的 な 変 化 か ら も、21世 紀 は人 権 を尊 重 しな い と 持 た な い世 紀 にな って い る こ とが理 解 で きま す。 企 業 に圧 倒 的 な 影響 を 与 え る遺 伝 子 工 学 ・情 報 工 学 の進 歩 は、 人 権 問 題 を よ り高 度 で 、 複 雑 で 、 重 大 な 問題 に して い る こ とを忘 れ て は な りませ ん 。. ビ ジネ ス チ ャ ンス に な る個 人 情 報 保 護 た だ、 個 人 情 報 保 護 は、 ビ ジネ ス チ ャ ンス に もな る と い う視 点 を 見 落 と して はな り ませ ん。 一 部 の先 進 的 な企 業 は す で に実 施 して い ます が 、 企 業 利 益 と個 人 情 報 保 護 の統 一 とい う観 点 で す。 今 日、 物 質 経 済 か ら情 報 経 済 へ と い う社 会 の 大 きな 流 れ が あ りま す。 先 の 「遺 伝 子 ビ ジネ ス」 にか か わ る問 題 だ けで な く、 個 人 情 報 保護 の た あ の投 資 は企 業 に と って プ ラス に もな って い き ます 。 例 え ば、 い くっ か の企 業 は個 人 情 報 の扱 い を徹 底 す る こ とで 顧 客 の 信 頼 を 確保 し、 利 益 を上 げ て い ま す。 イ ン ター ネ ッ ト時 代 は、 企 業 に と って も個 人 情 報 保 護 の視 点 を 強化 す る こ とが、 ます ま す求 め られ る よ うに な ります 。 今 日で は消 費 者 の意 思 を尊 重 し、 個 人 情 報 を適 切 に区 別 す る こ とで 信 頼 を獲 得 し、 確 実 に情 報 を 欲 しが る顧 客 にマ ー ケ テ ィ ングす る 「パ ー ミッ シ ョ ンマ ー ケテ ィ ング」 とい う考 え方 が 広 ま りっ っ あ ります 。 II.

(20) 政治 ・経 済情勢 と人権の視点 か らみた企業の方向性 ちな み に米 国 に お け る個 人 情 報 に関 す る訴 訟 の賠 償 額 は、 過 去 二 年 聞(2001年 2002年)で8500万. ドル(約90億. 円)に. ・. もな って い ま す 。 イ ン ター ネ ッ ト時代 の. 企 業 リス ク は国 際 化、 迅 速 化 、 巨 大 化 、 多様 化 、情 報 化 して お り、 この よ うな状 況 の 中 で 、 一層 の個 人 情 報 保 護 が 求 あ られ て い ま す。 ほ とん どの 国 と同様 に 日本 の 法 律 も、 人 ・物 ・金 が 現 実 空 間 で 動 く こ とを基 本 と して い ま す。 経 済 分 野 も含 め、 あ らゆ る社 会 分 野 に お い て、 電 子 空 間 の 占あ る位 置 が 大 き くな って きて い ま す。 そ う した観 点 か ら も個 人 情 報 保 護 が重 視 され て きて い るの で す。. 團 企業の方向性4. トー タ ル と して の人 権 情 報 発 信 企 業 へ 以 上 の よ うな状 況 をふ ま え る な らば、 これ か らの企 業 の方 向 と して、 総 じて 「人 権 情 報 発 信 企 業 」 とい う観 点 が 強 く求 め られ て くる とい え ま す。 企 業 利 益 と人 権 情 報 発 信 の統 一 とい う こと です 。 人 権 面 の責 任 を認 識 しっ っ 、 人 権 上 の チ ャ ンス をっ か み取 る企 業 に な る のか 、 人 権 面 の無 責 任 さ が、 人 権 上 の ク ライ シス を招 く企 業 に な る の か と い うこ と です 。 環 境 、 リサ イ ク ルが ビ ジネ ス の中 心 に な って き た の と同 じよ うに、 人 権 の実 現 も経 営 の 中心 に な りっ っ あ ります 。 今 や環 境 が ビ ジネ ス の 中核 と な って い る状 況 で す 。 人 権 も同 じよ うに変 化 して くるで し ょ う。 企 業 の評 価 基 準 も変 化 して き て お り、 環 境 や 人 権 が ます ます 重 視 され る傾 向 に あ り、 経 営 ・業 務 と人 権 の統 一 的 把 握 の視 点 が 、 今 後 ます ます 重 要 に な って くる と い え ま す。. リー ガ ル リス ク マネ ジ メ ン トの 必 要 性 一 方 、 日本 社 会 も司 法 の面 で 大 き な変 革 の と きを 迎 え て い ます 。 そ れ らの動 き と 一45一.

(21) 人権問題研究資料. 第18号. 上 記 の 動 きが ク ロス す る と き、 企 業 に お い て も人 権 上 の リー ガ ル リス クマ ネ ジメ ン トが重 要 な 課題 にな って きま す。 米 国 で は毎 年4、5万. 人 の新 た な弁 護 士 が生 ま れ て い ます 。 それ に比 較 して 日本. で は司 法 試 験 に 合格 す るの が1000人 ま した。 この合 格 者 の 数 を3000人. 強 です 。 か っ て は500人 強 の 時代 が 長 く続 き に ま で高 あ よ う と して い ます 。 これ らの 司 法 シ. ス テ ムの 改革 を通 じて 司法 サ ー ビス を充 実 させ よ うと して い る ので す 。 米 国 に は弁 護 士 はす で に約100万 日本 の6000人. 人 に い ま す。 人 口300人 弱 に一 人 の割 合 で 弁 護 士 が い ます 。. 強 に一 人 と は大 き な違 いで す。. 米 国 も元 々、 訴 訟 社 会 とい わ れ る よ うな 状 況 で は あ り ませ ん で した 。1960年 代 か ら大 き く変 化 して い ま す。 日本 も これ か ら10年 で 司 法 を 取 り巻 く環 境 は 大 き く 変 化 しま す。 そ の一 つ の モ デ ル が米 国 で す 。 例 え ば 、 日本 の大 企 業 が 国 内 で 支 払 う弁 護 士 費 用 は平 均 して米 企 業 の30分 で す。30分 の1と. い う こ と は、 同規 模 の 企 業 で あ れ ば 日本 企 業 が1億. の1. 円の司法費. 用 に対 して米 国 企 業 は30億 円 も支 出 して い ま す。 最 近 、 日本 に お いて も大 企 業 で リー ガル(法 的)リ ス クマ ネ ジメ ン トとい う言葉 が使 わ れ る よ うに な って き ま したが 、 米 国 の 企 業 に比 較 す る とま だ ま だ 不十 分 で す。 日本 で は医 療 の過 ち、 医 療 過 誤 に よ って 訴 え られ る医者 が い ま す が、 米 国 で は弁 護 過 誤 に よ って 訴 え られ る弁 護 士 が い る くら いで す 。 っ ま り、 弁 護 士 の弁 護 の仕 方 が 悪 か った こ と に よ って 敗 訴 に な っ たん だ か ら、 そ の損 害 を弁 護 士 に請 求 す るの は 当然 だ とい うこ とで す 。 ま た、 英 国 で は金 融 ビ ッグバ ー ンが 実 施 され た1985年. 、 法 律 事 務 所 は3000人 規. 模 の と ころ も現 れ 、 法 律 事 務 所 そ の もの が 大 き く変 化 して い ま す。 世 界 で は ビ ッグ フ ァイ ブ と いわ れ る5大 会 計 事 務 所 が 弁 護 士 事 務 所 を 吸収 す る とい う現 象 も起 こ っ て い ます 。 こ う した動 き は 日本 に も多 大 な 影 響 を 与 え て い ま す。 米 国 の リー ガ ル(法 律)産 業 は 自動 車 産 業 に匹 敵 す る利 益 を 上 げて い る とい わ れ て お り、 リー ガ ル サ ー ビス の .,.

(22) 政治 ・経済情勢 と人権の視点か らみ た企業 の方向性 輸 出先 と して 日本 は極 め て大 き な市 場 で あ る と い うこ とで す 。 日本 で は これ まで 法 律 事 務 所 と い うと小 規 模 な事 務 所 が ほ とん どで あ り ま したが 、 今 日で は100人. を越 え る弁 護 士 が い る事 務 所 も出現 して い ます 。. こ う した動 き の中 で 行 政 的 事 前 規 制 か ら司 法 的 事 後 規 制 の 社 会 へ ます ます 加 速 し て い ます 。 か っ て は金 融 機 関 と い え ば大 蔵 省(現 財 務 省)を 中 心 と した護 送 船 団 方 式 と いわ れ 、 金 融 機 関 は一 貫 して 大 蔵 省 頼 み で あ りま したが 、 これ が 弁 護 士 頼 み に変 化 して き て い ます 。 弁 護 士 へ の リー ガ ル ・オ ピニ オ ン(法 律 意 見 書)の 発 注 が 急 増 して い るの で す 。 経 営 や業 務 執 行 の判 断 をす る時 に 「役 所 」 に お伺 い を たて る こ とか ら法 的 リス クが な いか ど うか と い う判 断 に重 点 が 置 か れ て い る ので す 。 こ れ らの変 化 が 企 業 に与 え る影 響 はか な り大 き な も のが あ る と いえ ます 。 ま た、 経 済 の グ ロ ーバ ル化 は各 国 の国 内 法 の変 化 を 迫 る もの にな って きて い ます。 国 の経 済 競 争 力 を維 持 し治 安 を守 る た め、 国 際 協 調 の たあ に とい う理 由 で 、 この動 きが 加 速 され て い ます 。 そ う した 中で 、 司 法 サ ー ビスの 分 野 で は、 先 に も述 べ た よ うに欧 米 勢 が 攻 勢 をか け 「ビ ッグ フ ァイ ブ」 と いわ れ る世 界 五 大 会 計事 務 所 が地 球 規 模 の サ ー ビス網 を完 成 させ る勢 いで 進 ん で お り、 日本 の弁 護 士 事 務 所 と も関係 を 構 築 しよ う と働 きか け を強 化 して い ます 。 こ う した動 き と と もに、 これ か らは国 内 事 業 者 で あ って も米 国 の裁 判 所 に訴 え ら れ る危 険 性 が あ る こ と を十 分 に認aす. る必 要 が あ り ます。. 日本 の司 法 改 革 の一 っ の モ デ ルで あ る米 国 にお け る司 法 と企業 とい う問題 で は、 1999年 の 東 芝 事 件 が 象 徴 的 で す 。 東 芝 はパ ソ コ ンの 「欠 陥 」 を め ぐ る問 題 を提 訴 さ れ1100億. 円 で和 解 して い ます 。 原 告 弁 護 団 の費 用 は100億. 円 だ と いわ れ て い ま. す 。 敗 訴 す る と桁 が さ らに変 わ る可 能 性 が あ り、 東芝 は苦 渋 の決 断 を しま した。 米 国 一 審 の特 徴 は、 「デ イス カバ リ」 と い って 、 事 前 の証 拠 調 べ が 日本 の刑 事 事 件 の よ うに民 事 事 件 で もで き る と い う こ と。 さ ら に陪 審 に伴 う陪審 コ ンサ ル タ ン トが 一47一.

(23) 人権問題研究資料. 第18号. 存 在 し、 集 団 訴 訟 と懲 罰 的 賠 償 金 に よ って 高 額 だ と い う こ とで す 。 そ の ひ とっ の結 果 が 、 先 に紹 介 した 米 国 三 菱 自動 車 製 造(イ 場)と 米 国 雇 用 機 会 均 等 委 員 会 との 和 解 金48億. リノ イ州 ノ ー マル ェ. 円 に っ な が って い るの で す。. 最 後 に、 以 上 述 べ た諸 点 や リー ガル リス クを 克 服 す るた め に も、 ま た、 イ ンタ ー ネ ッ ト時 代 の企 業 リス クが 、 国 際 化 、 迅 速 化 、 巨大 化 、 多 様 化 、 情 報 化 して い る こ とを考 え る な ら、 人 権 性 、 合 法 性 、 倫 理 性 、 公 式 性 、 公 開 性 、 国 際 性 等 を 遵 守 す る こ とが 企 業 等 に強 く求 め られ て い る と いえ ます 。. 一48一.

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