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地域在住高齢者の主観・客観的健康評価に関する検討 -プレフレイル・フレイルの現状と課題-

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(1)

地域在住高齢者の主観・客観的健康評価に関する検討

― プレフレイル・フレイルの現状と課題 ―

A Study of Subjective and Objective Health Assessments of

Senior Citizens Living in the Community:

Current Status and Issues with Pre-frailty/Frailty

野村 敬子

1 )

Keiko Nomura

加納

2 )

Mai Kanohu

名倉 弘美

3 )

Hiromi Nagura

羽田野正高

4 )

Masataka Hatano

抄録:本研究では、60歳以上の介護保険制度における介護認定非該当者、かつ不就労者を対象として、フレイル予防 教室に参加してもらい、同意を得た参加者に、ポピュレーションアプローチ型フレイルチェック方式による主観的・ 客観的健康評価を行った。健康評価の調査結果から、プレフレイル・フレイルの現状と課題について検討した。教室 参加者96名(男27名、女69名)に対し、同意を得られた調査対象者は82名(男21名、女61名)であった(85.4%)。チェッ クリストを用いてフレイル群、プレフレイル群、非該当群に分類した。フレイル群は11名(13.4%)、プレフレイル群 は26名(31.7%)、非該当群は45名(54.9%)であった。年齢、性別は 3 群で有意差を認めなかった。TUG、握力、かな 拾いテスト、主観的健康感、運動習慣、運動する仲間の有無、相談者の有無、ストレスの有無、睡眠の状況において 有意差が認められた。運動する仲間がいるものは、握力の値が高い、かな拾いテストの値が高い、 1 日の歩行時間が 短い、主観的に運動不足だと思わないことが因子として抽出された。プレフレイル状態から健康状態とは異なった事 象が主観的・客観的問わず出現していることが明らかとなった。

Abstract:In this study, a subjective and objective health assessment––using a frailty check method from a population health approach––was conducted with consenting participants in a frailty prevention class for those over 60 years old and for the unemployed who are not eligible for long-term care in the long-term care insurance system. Based on the results of the health assessment, we examined the current status and issues of pre-frail and frail subjects. Of the 96 participants in the class (27 men and 69 women), we obtained consent from 82 subjects (21 men and 61 women; 85.4%). Using a checklist, we classified them into a frail group of 11 (13.4%) subjects, a pre-frail group of 26 subjects (31.7%), and a non-applicable group of 45 subjects (54.9%). There were no significant differences in age or sex among the three groups. Significant differences were observed in TUG, grip strength, the Kana Pick-out Test, subjective health, exercise habits, the presence/absence of friends who exercise, the presence/absence of counseling, the presence/absence of stress, and sleep habits. High grip strength, a high Kana Pick-out Test score, a low amount of daily walking, and subjectively feeling that one exercises enough were extracted as factors for subjects with friends who exercise. It became clear that events apart from health status appear both subjectively and objectively from a condition of pre-frailty.

キーワード:地域在住高齢者 プレフレイル フレイル 主観的・客観的健康評価 ポピュレーションアプローチ型フレイルチェック方式

Keywords:Senior citizens living in the community, pre-frail, frail, subjective and objective health assessment, frailty check method from a population health approach

― 51 ―

1 )中部学院大学短期大学部 2 )盛岡医療福祉専門学校

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Ⅰ.研究背景と目的

1990 年代に Buchner と Wagner は、フレイルの概念 を「体の予備力が低下し、身体機能障害に陥りやすい状 態」とし、障害の既にある状態とは明確に区別し、日常 生活機能障害の前段階として定義づけた1 )。葛谷は、生 活習慣病の予防からフレイルの予防への変換点は後期高 齢者となる 75 才が適当であるとの見解を示しており、 前期高齢者までは生活習慣病の予防が、そして後期高齢 者ではフレイルの予防が、それぞれ健康寿命を延ばすた めの重要なポイントとなる2 )と指摘している。つまり、 前期高齢者になると生活習慣病予防からフレイル予防へ と意識の転換が必要で、前期高齢者になる前から自分の 身体に関心を持つことが重要であると考えられる。ま た、葛谷は、フレイルは、身体的問題のみならず、認知 機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的 困窮などの社会的問題を含む概念である3 )とも述べてお り、日本ではフレイルの存在が要介護のリスクになるこ とも報告されている4 )。一方、鈴木は、「身体機能障害 (disability)」とは異なり、適切な介入によって健常状 態に回復することが可能な状態であると報告してい る5 )。田中らは、要介護状態にならないように、フレイ ル・要支援まで状態悪化が顕在化した段階からの介入ポ イントではなく、フレイルにならないように健常な状態 やフレイル予備軍の段階では何が重要で何をすればいい のかを探り、医療・福祉・介護の専門職種によらない地 域レベルでできる予防法を開発し体系化することが重 要6 )であると述べている。 これまで、後期高齢者になると、フレイル予防が重要 であると論じられたことから7-8 )、65歳以上を対象とし たフレイルに関する研究報告は多い9-19) 本研究では、60歳以上の地域在住高齢者を対象とし、 主観的・客観的健康調査から健康評価を行い、プレフレ イル・フレイルの現状と課題について検討した。

Ⅱ.研究方法

1 .ポピュレーションアプローチ型フレイルチェック方 式の定義 本研究では、田中らが開発した「柏スタディから得ら れた知見を基盤とした地域プログラム「栄養(食・口腔 機能)、運動、社会参加の三位一体包括的フレイルチェッ ク方式6 )を参考に、ポピュレーションアプローチ型フレ イルチェック方式を取入れた。ポピュレーションアプ ローチは集団全体をよい方向にシフトさせる効果があ る。そこで、地域在住高齢者を対象に、フレイルに関す る勉強会を開き、フレイル予防に強い関心を示した人が 中心となり、フレイルサポーターになってもらう。そし て、自分の身体機能、知的機能について客観的に自覚で きるように、フレイルサポーターが中心となって地域住 民にフレイルチェックを行いながら、フレイル予防の必 要性を広めていく。フレイルサポーターが地域在住高齢 者の主観的・客観的健康調査のサポートを行っていき、 フレイルサポーターを地域の中で増やしていくしくみを ポピュレーションアプローチ型フレイルチェック方式と 定義する。 本研究で取入れたポピュレーションアプローチ型フレ イルチェック方式は、民生委員及びボランティア協会の 有志10人を中心にフレイルサポーターになってもらい、 市町村の保健師の指導の下、フレイルについての勉強会 としてフレイル予防教室を開催し参加してもらった。調 査研究に同意を得られたら、ポピュレーションアプロー チ型フレイルチェック方式で主観的・客観的健康調査を 行う。主観的・客観的健康調査の診断基準と測定方法を 明確に定め、診断基準に間違いがないかを保健師が チェックを行い、健康評価を行った。 2 .調査対象と調査期間 調査対象は、60歳以上の地域在住高齢者で不就労者と した。選択条件として、介護保険制度における介護認定 非該当者であること、介護予防に関心があること、フレ イル予防教室に参加可能者であって、研究対象者として 同意を得られた者とした。同意が得られた場合であって も、主観的・客観的健康調査のどちらか一方が不参加の 場合には、調査対象から除外した。 フレイル予防教室への案内については、市内の各地域 の自治会に協力依頼を行い、フレイル教室の開催ちらし を回覧板に挟み案内した。フレイル教室開催及び調査期 間は、以下の通り2019年 7 月30日~ 8 月21日の期間で 4 回実施し、都合のつく日程に参加してもらった。 1 回目: 7 月30日開催 (参加者:男10名、女28名、合計38名) 2 回目: 8 月 4 日開催 (参加者:男11名、女22名、合計33名) 3 日目: 8 月 5 日開催 (参加者:男 5 名、女14名、合計19名) 4 回目: 8 月21日開催 (参加者:男 1 名、女 5 名、合計 6 名) フレイル教室参加者総数は、96名(男27名、女69名)で あった。 3 .調査方法 調査方法は、フレイル予防教室でプレフレイル・フレ イルの意味を理解してもらった上で、主観的健康調査と して「生活機能評価と健康観および生活習慣に関する調 査」を実施した。客観的健康調査については、身体機能 評価として、運動機能評価、認知機能評価、口腔機能評 価を実施した。主観的・客観的健康調査については、ポ ピュレーションアプローチ型フレイルチェック方式で 行った。

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(1) 主観的健康調査について 生活機能評価と健康観および生活習慣に関する調査を 行った。生活機能評価は、介護が必要となるリスクが高 い高齢者を抽出するスクリーニング法として、厚生労働 省の研究班により開発された「基本チェックリスト」で ある。これは、2006年より介護予防事業等の一環として 使用されているもので、IADL、社会的 ADL、身体機能、 栄養状態、口腔機能、閉じこもり、認知機能、うつにつ いて、25項目で総合的に評価するものである。「基本 チェックリスト」は国際的に認められている Fried らに よる frailty phenotype に基づいた CHS(Cardiovascular

Health Study)基準20)によるフレイル判定とよく適合し、 カットオフ値を 4/5 に設定したときの感度は72.2%、特 異度は80.0%である21)。そのためフレイル判定には合計 点 4/5 をカットオフ値とされてきた。この基準値は、死 亡や要介護認定をアウトカムとした予測的妥当性が確認 されている22)。しかしながら、近年では健常状態からフ レイルに移行するプレフレイル段階からの介護予防対策 が重要であるとの報告23-24)も多く、Satake らは CHS 基 準のフレイルとプレフレイルに相当する基本チェックリ スト総合点のカットオフ値を求めたところ、フレイルで は 7 点と 8 点の間、プレフレイルは 3 点と 4 点の間と報 告している22)。そこで今回、25点満点中 4 ~ 7 点をプレ フレイル群、 8 点以上をフレイル群として判定した。 健康観および生活習慣に関する調査は、自分が健康で あるか、習慣的な運動の状況、相談者の有無、ストレス の有無、睡眠の状況について質問紙を用いて聴取した。 質問事項の詳細は表 1 に示した。 (2) 客観的健康調査について 身体機能のうち運動機能の評価として Time Up & Go Test(TUG)及び握力並びに指輪っかテストを、口腔 機能の評価としてオーラルディアドコキネシス測定19) 行った。

Time Up & Go Test(TUG)は、高齢者の転倒リス クと運動器不安定症の診断として測定した。運動器不安 定症を判断する基準として、日本整形外科学会が定めて いるカットオフ値「11秒以上」を基準として評価した20) 握力は手指屈曲筋群の粗大筋力を評価するために測定し た。測定基準は、文部科学省による平成29年度体力・運 動能力調査結果の年齢別カットオフ値で評価した21)。指 輪っかテストは、サルコペ二アである可能性を知る方法 として、ふくらはぎの筋肉の太さをチェックする方法で ある。指輪っかテストで隙間ができる場合、全身の筋肉 量の減少と示唆されている22)ことから、指輪っかテスト を行った。測定時、注視して見守り、転倒を防ぐよう最 善の注意を払いながら実施した。オーラルディアドコキ ネシス測定は、2006 年から介護予防事業の一つとして 口腔機能の評価項目に取入れられ、「健口くん」測定器 がオーラルディアドコキネシス回数の測定に有用である ことが示唆された19)ことから、「健口くん」測定器を用い、 健口くんの評価基準を基に評価した。 認知機能の評価は、かな拾いテスト(浜松式高次脳機 能スケール・サブテスト)を実施した。かな拾いテスト は、注意障害を診断することを目的とし、吉本らのカッ トオフ値で評価した23) 測定記録は、「わたしのからだ診断記録表」に記載し、 記録表には数値の記入と評価を色分けシールを貼付す る。数値の基準内・リスクなしは、青色(健康)・基準値・ リスクやや有りは、黄(要注意)・基準値外・リスク有は、 赤(警告)で示した。健康バロメーターが視覚的に直ぐ に判断できるようにして、客観的に自己評価を促すよう にした。 客観的健康調査結果の数値の入った記録表は回収し、 データ入力をした。色分けシールの記録表は被検査者に 持ち帰ってもらった。 4 .統計解析方法 年齢、TUG、滑舌機能、握力、下腿周径、かな拾い テストのフレイル群、プレフレイル群、非該当群の群間 比較には独立した多重比較を用いた。健康観および生活 習慣に関する調査項目についての群間比較にはχ2検定 (Pearson’s)を用いた。各測定項目の相関については Pearson の相関係数を用いた。次に、「日常的に運動す る仲間がいる」項目における因子を検討するため、当該 項目を従属変数、各評価項目を独立変数として二項ロジ スティク回帰分析を行った。解析にあたり事前に各変数 間の相関行列と散布図を観察し、問題がないことを確認 した。有意水準は 5 %とした。多重比較に用いたすべて の数値は mean±SD で示した。χ2検定に用いた数値は サンプル数(割合(%))で示した。すべての統計解析は SPSS statistics ver26.0(日本アイ・ビー・エム社)を 用いた。 ― 53 ― 表 1 健康観および生活習慣に関する調査項目 自分が健康だと思うか 非常に健康/まあ健康/あまり健康でない/健康でない 一日の歩行時間 15分未満/30分未満/1時間未満/1時間以上 1日30分以上の早歩きをしているか 毎日する/週に半分以上する/時々する/ほとんどしない 自分が運動不足だと思う とても運動不足/どちらかといえば運動不足/どちらかといえば運動不足でない/運動不足ではない 日常的に運動を一緒にする仲間がいる いる/いない 身近に相談できる人がいる いる/いない 最近1か月でストレスを感じることがあった 強いストレスを感じている/たびたびストレスを感じている/少しストレスを感じた/全く感じない 睡眠はとれているか しっかりとれている/まあまあとれている/あまりとれていない/とれていない

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mean±SD フレイル群 (n=11) プレフレイル群(n=26) 非該当群(n=45) p値 年齢(year) 78.6±6.9 75.5±7.8 73.8±6.3 0.116 n.s. TUG(sec) 11.3±9.5 7.2±1.5 6.2±1.2 0.002** 滑舌機能 「パ」(回) 4.9±1.7 5.4±1.5 5.1±0.9 0.71 n.s. 「タ」(回) 4.8±1.3 5.4±1.3 5.5±1.1 0.32 n.s. 「カ」(回) 4.7±1.2 4.8±1.8 5.2±0.9 0.52 n.s. 握力(kg)(女性のみ) 21.3±14.7 27.0±5.9 26.4±4.3 0.04 * 下腿周径(cm) 32.4±3.5 34.2±4.6 33.4±3.3 0.40 n.s. かなひろいテスト(個) 25.2±12.4 25.2±11.4 33.2±11.6 0.019* **p <0.01,*p <0.05,n.s. p ≧0.05 人(%) フレイル群 プレフレイル群 非該当群 p値 (n=11) (n=26) (n=45) 性別 男性 2 7 12 0.83 n.s (9.5%) (33.3%) (57.1%) Cramer’s V=0.067 女性 9 19 33 (14.8%) (31.1%) (54.1%) 年齢 60歳代 1 7 14 0.28 n.s (4.5%) (31.8%) (63.6%) Cramer’s V=0.214 70歳代 5 11 24 (12.5%) (27.5%) (60.0%) 80歳代 4 7 7 (22.2%) (38.9%) (38.9%) 90歳代 1 1 0 (50.0%) (50.0%) (0.0%) 健康調査項目 健康だと思うか 思う 7 21 40 0.04* (10.3%) (30.9%) (58.8%) Cramer’s V=0.286 思わない 4 4 3 (36.4%) (36.4%) (27.3%) 1日の歩行時間 <15min 4 12 3 0.009** (21.1%) (63.2%) (15.8%) Cramer’s V=0.331 <30min 4 6 18 (14.3%) (21.4%) (64.3%) <1h 1 3 11 (6.7%) (20.0%) (73.3%) ≦1h 2 3 11 (12.5%) (18.8%) (68.8%) 1日に30分以上の早歩きをしている 毎日 2 2 4 0.004** (25.0%) (25.0%) (50.0%) Cramer’s V=0.352 週の半分 1 0 7 (12.5%) (0.0%) (87.5%) 時々 5 3 18 (19.2%) (11.5%) (69.2%) ほとんどしない 3 20 13 (8.3%) (55.6%) (36.1%) 自分は運動不足だ 思う 9 20 27 0.146 n.s (18.2%) (18.3%) (18.4%) Cramer’s V=0.222 思わない 2 4 16 (18.2%) (18.3%) (18.4%) 運動を一緒にする仲間がいる いる 3 7 30 0.002** (7.5%) (17.5%) (75.0%) Cramer’s V=0.402 いない 8 16 13 (21.6%) (43.2%) (35.1%) 身近に相談できる人がいる いる 8 14 37 0.04* (13.6%) (23.7%) (62.7%) Cramer’s V=0.305 いない 2 7 3 (16.7%) (58.3%) (25.0%) ストレスを感じるか 感じる 5 12 8 0.02* (20.0%) (48.0%) (32.0%) Cramer’s V=0.337 感じていない 5 11 33 (10.2%) (22.4%) (67.3%) 睡眠がとれているか とれている 6 20 36 0.031* (9.7%) (32.3%) (58.1%) Cramer’s V=0.311 とれていない 4 3 3 (40.0%) (30.0%) (30.0%) χ2-test(Pearson’s) **p<0.01,p<0.05,n.s.p≧0.05 表 2 各群の年齢および身体計測値の比較 表 3 各群の健康調査項目の比較

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Ⅲ.倫理的配慮

研究協力は任意であること、調査への参加は自由であ り、不参加であっても不利益につながることは一切ない こと、許可なく個人や所属団体が特定されるような情報 を発信しないこと、同意書の提出を求めるが、同意書提 出後であっても、撤回可能は自由に行えること、研究目 的以外には一切使用しないことを対象者に対し書面及び 口頭で調査の目的・意義・方法を説明した。 中部学院大学・中部学院大学短期大学部の研究倫理委 員会の審査を受け承認を得た。(承認番号:D19-0003)

Ⅳ.結果

教室全参加者96名で、同意を得られた調査対象者は 82名(85.4%)であった。そのうちフレイル群は11名 (13.4%)、プレフレイル群は26名(31.7%)、非該当群 は45名(54.9%)であった。各群の年齢、TUG、滑舌機 能、握力、下腿周径、かな拾いテストの群間比較の結果 を表 2 に示す。年齢、滑舌機能、下腿周径において群間 で有意差は認められなかった(p≧0.05)。群間比較にお いて有意差が認められたものについて多重比較を行った ところ、TUG ではプレフレイル群と非該当群間で有意 差が認められた(p=0.002)。女性の握力についてはフレ イル群と非該当群間で有意差が認められた(p=0.04)。 かな拾いテストにおいてはプレフレイル群と非該当群間 で有意差が認められた(p=0.019)。性別、年齢、健康観 および生活習慣に関する調査項目についての群間比較の 結果を表 3 に示す。各群において、性別、年齢、主観的 な運動不足感では有意差は認められなかった(p≧0.05)。 有意差が認められたものについて、その後残差分析を 行った結果、主観的な健康観では、フレイル群の「非常 に健康/まあ健康」と回答する者が有意に少なく、「あま り健康でない/健康でない」と回答する者が有意に多く 認められた(p=0.04)。 1 日の歩行時間では、非該当群 の「15分未満」が有意に少なく、プレフレイル群の「15 分未満」が有意に多く認められた(p=0.009)。 1 日に30 分以上の早歩きをしている頻度については、非該当群の 「週の半分」とプレフレイル群の「ほとんどしない」が 有意に多く、プレフレイル群の「週の半分」「時々」お よび非該当群の「ほとんどしない」が有意に少なく認め られた(p=0.004)。運動を一緒にする仲間の有無につ いては、非該当群の「いる」とプレフレイル群の「いな い」が有意に多く、プレフレイル群の「いる」と非該当 群の「いない」が有意に少なく認められた(p=0.002)。 身近な相談者の存在の有無では、非該当群の「いる」 とプレフレイル群の「いない」が有意に多く、非該当群 の「いない」とプレフレイル群の「いる」が有意に少な く認められた(p=0.04)。ストレスの有無では、非該当 群の「(ストレスを)感じる」とプレフレイル群の「(ス トレスを)感じない」が有意に少なく、プレフレイル群 の「感じる」と非該当群の「感じる」が有意に少なく認 められた(p=0.02)。睡眠の状況では、フレイル群の「睡 眠がとれている」が有意に少なく、フレイル群の「とれ ていない」が有意に多く認められた(p=0.031)。 健康観および生活習慣に関する調査項目のうち、「日 常的に運動する仲間がいる」項目における因子を検討す るため、当該項目を従属変数、各評価項目を独立変数と して二項ロジスティク回帰分析を行った分析結果を表 3 に示す。 身体機能では、「握力」および「かな拾いテスト」で 有意差が認められた(p=0.030,p=0.003)。健康観お よび生活習慣に関する調査項目では、「1日の歩行時間」 および「自分は運動不足だ」において有意差が認められ た(p=0.006,p=0.047)。日常的に運動する仲間がい るものは、握力の値が高い、かな拾いテストの値が高い、 1 日の歩行時間が短い、主観的に運動不足だと思わない ことが因子として抽出された(表 4 )。 ― 55 ― 表 4 日常的に一緒に運動をする仲間がいることに対する二項ロジスティック回帰分析 因子 回帰係数 標準誤差 p値 オッズ比 95% 信頼区間 性別 -0.343 0.866 0.692 0.710 ( 0.130 - 3.879 ) 年代 -1.467 0.719 0.041 0.231 ( 0.056 - 0.943 ) TUG 0.139 0.172 0.421 1.149 ( 0.820 - 1.609 ) 握力 0.064 0.030 0.030* 1.066 ( 1.006 - 1.130 ) 下腿周径 0.016 0.046 0.731 1.016 ( 0.929 - 1.111 ) かな拾いテスト -0.076 0.026 0.003** 0.927 ( 0.881 - 0.975 ) 健康だと思うか 1.773 1.476 0.230 5.889 ( 0.326 - 106.2 ) 1日の歩行時間 -1.800 0.659 0.006** 0.165 ( 0.045 - 0.602 ) 1日に30分以上の早歩きをしている -0.834 0.500 0.095 0.434 ( 0.163 - 1.158 ) 自分は運動不足だ -2.328 1.172 0.047* 0.097 ( 0.010 - 0.969 ) 身近に相談できる人がいる 0.973 1.122 0.386 2.647 ( 0.294 - 23.86 ) ストレスを感じるか 0.844 1.092 0.440 2.326 ( 0.273 - 19.79 ) 睡眠がとれているか 1.486 1.282 0.246 4.421 ( 0.358 - 54.56 ) **p<0.01,*p<0.05

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Ⅴ.考察

本研究は、地域在住高齢者自身が自分の心身機能に関 心を持ち続けることを願い、ポピュレーションアプロー チ型フレイルチェック方式を取り入れた。そして、主体 的な参加を求めるため強制的な誘いは控えた。 参加者は主体的に集まった60歳以上の地域住民であっ たが、フレイル群は11人(13.4%)、プレフレイル群26人 (31.7%)と、 1 割強がフレイル状態であり、併せると 45.1%がフレイル要支援者であった。この結果から、比 較的健康に関心がある集団であってもフレイル予防の必 要性があると言える。日常生活に支障が生じるような、 つまり自覚症状が出現してはじめて健康意識が高まる事 例も多く存在すると考えられる。 今回のフレイルの発生率については、これまでの報告 を見ると、フレイルの発生率は6.1%-29.3%24-28)であり、 本調査の結果も過去の報告と同水準の結果であるとい える。 本研究では、フレイル群と非該当群の 2 群ではなく、 プレフレイル群を設け 3 群での比較を試みた。その結 果、プレフレイル群と非該当群において有意差が認めら れる結果が多く存在した。これはすでにプレフレイル状 態から健康状態とは異なった事象が主観的・客観的問わ ず出現することが示唆されたといえる。 なかでも、TUG およびかな拾いテストにおいてプレ フレイル群と非該当群間で有意差が認められていること から、TUG およびかな拾いテストがフレイルへの進展 予測因子として有用であると考えられる。さらに運動習 慣の項目において、運動習慣があるものが非該当群に多 い結果となったことは、過去の報告を支持するものであ る29-33) 運動習慣だけではなく、主観的な健康観においても有 意差が認められ、フレイル群では主観的に健康だと思う ものが少ない結果となった。また、フレイル群では睡眠 がとれていないとの自覚があるものが多い結果となっ た。フレイル状態となると、日常生活においてさまざま な支障をきたし始め、自覚症状も増加してくるため、特 に主観的な健康観や睡眠において有意差が認められたと 考えられる。一方でストレス負荷については、プレフレ イル群でストレス負荷が高く、非該当群でストレス負荷 を低く感じていた。これは身近な相談者の有無および運 動する仲間の有無と同様の結果であり、プレフレイル状 態では、身近に相談できるものや運動する仲間がおらず、 ストレス負荷も上昇しているといえる。そのため、プレ フレイル状態への移行を阻止するためには、孤独にさせ ないことが重要な因子であると示唆された。この結果か ら、運動する仲間の有無についてすべてのサンプルで検 討したところ、身体機能では握力とかな拾いテストが因 子として抽出された。握力は筋力を反映しており、かな 拾いテストは認知機能を反映していることから、健常者 においてはプレフレイル段階へ移行する前から、特に筋 力および認知機能の低下に重点を置いたフレイル予防対 策が有用であると考えられる。 生活習慣の項目では、歩行時間および主観的に運動不 足と感じることが因子として挙げられており、運動する 機会の創出ならびに運動しているとの実感や達成感を感 じられるプログラムにより、self-efficacy を高めること が重要であると考えられる。 2018年 9 月に、厚生労働省保険局・老健局による「健 康寿命延伸に向けた取組」34)のなかで、「多様な主体の連 携により、無関心層も含めた予防・健康づくり」を社会 全体での推進を打ち出していることから鑑みると、今後 は、無関心層にも着目し、プレフレイル群・フレイル群 を早期に発見し、日常的に運動する仲間や身近な相談者 の開拓などのフレイル予防対策を講じていく必要性が ある。 今後の研究課題としては、サンプル数を増やして各群 間の経時的変化および養生教育による影響を検証する必 要がある。また、地域の特性を分析し、その地域に適し たアプローチを創造することが課題であると考える。 謝 辞 本研究にご協力いただいた、地域在住高齢者の方々、 S市高齢福祉課、S市社会福祉協議会、S市ボランティ ア協会の皆様には深甚の意を表します。

引用文献

1 )Buchner DM, Wagner EH. Preventing frail health. Clin Geriatr Med. 8:1-17, (1992)

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