• 検索結果がありません。

小塚荘一郎『AI の時代と法』 (岩波書店,2019 年)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "小塚荘一郎『AI の時代と法』 (岩波書店,2019 年)"

Copied!
1
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

110 情報法制研究 第 8 号(2020. 11)

小塚荘一郎『AI の時代と法』

(岩波書店,2019 年) 慶應義塾大学大学院法務研究科教授

山 本 龍 彦

YAMAMOTO Tatsuhiko  本書の著者,小塚荘一郎は,ただの4 4 4商法・会社法学 者ではない。それは,彼の研究の軌跡や著作の表題か ら明らかだ。『フランチャイズ契約論』や『宇宙ビジ ネスのための宇宙法入門』。運送法制の研究もある。 宇宙ビジネスにおける法律家の役割を問われた小塚が, それは「エンジニアや開発担当者と一緒になって,新 たなビジネスを創っていく」ことだ,と迷いなく答え ていることからわかるように(「法律家が,新しい宇 宙ビジネスを創っていく時」BIZLAW),彼は,待つ4 4 学者ではなく,法学の需要ある先端ビジネス領域を鋭 敏に嗅ぎ分け,現れ,ビジネスを創る4 4 学者なのである。  AI と法に関する類書が数多く出版されるなかで, 小塚のこの特徴が,本書に独自性を与え,その存在を 際立たせている。本書は,ビジネスの視点を中核に置 きながら,AI の利活用がビジネスの在り方をいかに 変化させるのか,そして,この変化がいかなる法的課 題を惹起するのかを実に鮮やかな筆致で描出するもの なのである。  具体的には,5G 通信を含むデジタル技術の発達に より,モノの取引よりもサービスの取引,とりわけ 「ネットワーク接続を前提としたサブスクリプション 型取引」が中心となり,それによって「モノの取引」 を前提としてきた法体系の再検討が必要になること, 自動車が単なる vehicle からモビリティ・サービスの 「場」と化すなど,プラットフォーム(以下,「PF」) ビジネスの急速な展開を背景に,その契約関係や PF の法的責任を探究する必要があること,さらには主権 国家と PF がそれぞれの「コード」によって対抗する 「新国際経済秩序」を構想せざるを得ないことなどが, 豊富な事例とともに解説される。こうした記述は,今 後,AI を前提とした世界で競争を強いられる事業者 に,ビジネスを「創る」大きなヒントと,法的対応に 向けた重要な perspective を与えるものとなろう。  もっとも,本書の魅力は,こうした実践的で,ビジ ネス法務的な側面に限定されない。それは,小塚自身 が,あとがきで,「『日本社会にとっての法』について, ……考えることが多」く,「非ヨーロッパ世界の法に ついて小論を書いたこともある」と告白するように, 彼が,ビジネスを創る学者というだけでなく,法制史 的素養を持った学者であるという点からも,ただの4 4 4 商 法・会社法学者ではないことと深く関連している。本 書の魅力は,AI 時代の法を,西洋近代法の伝統との 比較において位置付け,かかる伝統それ自体の限界を 鋭く暴露するという,極めて理論的な側面にも認めら れるのである。小塚によれば,個人の意思決定が機械 (AI)による判断に置き換えられるスマートコントラ クトに顕著なように,AI の利活用がもたらすビジネ ス上の変化は,個人の自律的な意思を基本的な要素と し,人間関係を権利・義務で規定しようとする西洋近 代法の前提を掘り崩すインパクトを持つとされる。特 筆すべきは,本書が,法律上の「義務」を超えて,従 業員や取引先など様々な利害関係者との「つながり」 を重視してきた「日本型経営」にも見られるような, 日本社会の非4 近代的要素が,来るべき脱4 西洋近代法の 時代に却ってアドバンテージとなり,AI 社会に求め られるガバナンス論を世界的に牽引するのではないか, との見立てを行っていることである。魅惑的な予言だ が,我々は,日本の非西洋的特殊性を美徳と見る日本 文化論が必ずしも成功を収めてこなかった歴史を知っ ている。「情報に関する法制度の目的は,究極的には, 情報の利用を促進し,それを通じて,関連産業を振興 するとともに,社会を豊かにするところにある」とい う小塚の言葉に,個の自律性・主体性よりも,人類共 同の福祉の増進と調和を重視する彼の国の AI ポリシ ーとの部分的一致を感じ,一抹の不安を覚えるのは評 者だけだろうか。評者も,ベヒモス(PF)とリバイ アサン(国家)との協約的統治を予期するといった点 で,AI 時代における近代法の変容を肯定する。が, 凡庸な一憲法学者として,「自律的な個人」という近 代法の規範的前提を完全に捨て去ることにはなお躊躇 せざるを得ない。本書が,AI 時代のビジネスにとっ て極めて実用的な書であると同時に,法の在り方をラ ディカルに問う極めて論争的な書であり,法学徒が刮 目して読むべき必読書であることは言うまでもない。 ◆

書 評

参照

関連したドキュメント

艮の膀示は、紀伊・山本・坂本 3 郷と当荘と の四つ辻に当たる刈田郡 5 条 7 里 1 坪に打た

ことで商店の経営は何とか維持されていた。つ まり、飯塚地区の中心商店街に本格的な冬の時 代が訪れるのは、石炭六法が失効し、大店法が

学識経験者 小玉 祐一郎 神戸芸術工科大学 教授 学識経験者 小玉 祐 郎   神戸芸術工科大学  教授. 東京都

会長 各務 茂夫 (東京大学教授 産学協創推進本部イノベーション推進部長) 専務理事 牧原 宙哉(東京大学 法学部 4年). 副会長

溶出量基準 超過 不要 不要 封じ込め等. うち第二溶出量基準 超過 モニタリング

一高 龍司 主な担当科目 現 職 税法.

関谷 直也 東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター准教授 小宮山 庄一 危機管理室⻑. 岩田 直子

市民社会セクターの可能性 110年ぶりの大改革の成果と課題 岡本仁宏法学部教授共編著 関西学院大学出版会