集落機能が低下した一農村における農業従事高齢者の身体機能とリハビリテーションの課題
7
0
0
全文
(2) 看護学 ・ リハ ビリテー シヨン学編 (2010年 3月. 甲南女子大学研究紀要第 4号. ). 結果】 【 筋肉量や基礎代謝量 には有意差がなか ったが,前 期高齢期女性 の農業従事者に歩行能力 の有意な低 下があ り,下 肢関節 ・腰部疾患 の疾患保有率 は高い傾向にあ った。要因 として傾斜地での農作業継続 による身体へ の負担が考え られた。. 吉言 吾】 糸 【 限界集落 の 農業従事高齢者 に必要 な支援 は,医 療 ・福祉専 門職種 に よる早期 か らの生活指導 や補装 具 の 処方 ,継 続 的 な治療 の提 供 であ る。 キー ワ ー ド :農 業従事高齢者 ,身 体機能 ,リ ハ ビ リテ ー シ ョン. この ような現状認識 の もとで ,本 研究 は,当 該 地域 に居住す る高齢者 の 身体機能測定 を実施 し,特 に農業. は じめ に. 従事者 の 身体機能特性 を明 らか に して,リ ハ ビ リテ ー 日本で は,所 謂 団塊 の世 代が高齢期 を迎 え更 なる超 高齢社会 の 到来が予測 されて い る。高齢化 の進行 に よ. シ ョン,介 護予 防 の 在 り方 を検討す る こ とを 目的 とし た。. り介護 を要す る虚 弱 高齢 者 も増 加 して い る。平 成 20 年 度 の 厚 生 労働省 に よる介 護給付 費実態調査. 1に よれ. Ⅱ .調 査 対 象 及 び 方 法. ば,介 護予 防 サー ビス及 び介護 サ ー ビスの受給者数 は 前年度 と比 較 して 146,100人 増加 してお り,社 会保 障 費 や介護 負担 の増大が懸念 され る中 ,介 護保険事業 に. 1)調 査地域 の概況 調 査 を実施 した. o地 区 は人口 696人. (平 成. 19年 9. つ い て も見直 しを迫 られて い る。介護サ ー ビスの提供. 月 )瀬 戸 内海 の 小 島 の一 集 落 で ,65歳 以上 の 高齢 者. に もかか わ らず ,要 介護 度 の重 度化が進 むな ど,介 護. が集落 人口の 53%(平 成 19年 度 )を 占 め る農村 で あ. 度 の 進行 を食 い 止 め る成果 がみ られ なか つた. lた め. ,. る。 島 の主 要 産業 はみかん栽培 で あ り,そ の他 には漁. 2006年 4月 に施 行 され た改正 介護 保 険制 度 で は 介護. 業 や マ リ ンスポー ツ,観 光業 を営 んで い る。みか ん ・. 予 防が重視 され ,運 動器 の 機能向 上 に重点 を置 い た取. す ももが 島 の特 産品 で あ り,島 の斜面 の段 々畑 は天 ま. り組 みが推 進 されて い る。. で至 る と称 された時代 もあ った。果樹栽培特 別措 置法. 一 方 ,国 土交通 省 の「過疎地域等 にお ける集落 の状. の 制定 に よる急激 なみかん栽培 農地 の拡大 や ,柑 橘貿. 2に 況 に関す るア ンケ ー ト調 査」 よれ ば ,65歳 以上 の. 易 の 自由化 に よって供給過乗J状 態 に陥 り,大 幅 な減反. 高齢者 が 人口の半数 を超 える所謂 「限界集落」 は農 山. や価格暴 落が みか ん栽 培農家 を直 撃 した。農地拡大 の. 部 ,離 島 な どを中心 に全 国 で 7873箇 所 にの ぼ る とい. ピー クで あ る 1973年 に全 国 で 173,100 haあ つたみ か. われて い る。「 限界集落」 で は ,市 町村 合併が進 んで. ん 栽 培 農 地 が ,1990年 に は 80,800 ha(1975年 の 48. も,そ の立地や採算性 の観点か ら医療 施設や介護福祉. %)ま で 減 少 した7。. 施設 とい った ハ ー ド面 での環境整備 が遅 れてお り,入 院 0入 所 の必 要が生 じた場 合 には,居 住 地か ら離 れた. 産年齢 人 口が減 少 し,当 該 地域 の 基 幹 的 農 業 従 事 者. 施設 へ の 入院 ・入所 を余儀 な くされ る状態であ る。 ま. の )の 平均 年齢 は 68。 9歳 で あ る。基 幹 的農業従 事 者. た,市 町村合併以前 は利 用可能 で あ った交通手段 ,サ. の うち 47.4%は 女性 で あ り,高 齢 者 が農業 を担 って. ー ビス等が利用率 の低 さか ら経 費削減 のため廃止 に追. い る状況 であ る“。. 後継者 の 都 会 へ の流 出 に よ り生. (農 業就業 人数 の うち,仕 事 と して農業 に従 事 す る も. さ らに,交 通 の 利. 医療 サ ー ビス につい ては,集 落 に 1か 所 出張診療所. 便性 が悪 い 中,医 療 ・介護 サ ー ビスの提供 が行 き届 い. が あ るが ,週 に 2回 半 日の外来診察 を行 うのみで あ る. て い る とは言 い が た い状況であ る。 人口 の高齢化が著. ため ,他 科 へ の受診 や定期 的 な処置等が必要 な島民 は. しい 農 山村 ・離 島 な どに居住す る高齢者 の 多 くは農業. 島外病 院へ の 通院 を余儀 な くされ る状 況 で あ る。平成. を営 み なが ら生活 して きた人が 多 く. 6,そ れが 身体 機. 17年 に市 町村 合併 し,福 祉 施 策 の 統 一 ,サ ー ビス対. 能 に影響 を及 ぼ し,要 介護 リス クにつ なが ってい る こ. 象 地域 の拡大が合併 の利点 と して挙 げ られたが ,そ の. とが 懸念 される。. 一 方 で ,各 町 で独 自に行 われて い た送迎サ ー ビス や 島. い 込 まれ る こ と も少 な くな い. 3`. 5。.
(3) 高嶋幸恵 他 :集 落機能が低下 した一農村 における農業従事高齢者の身体機能 とリハ ビリテー シ ヨンの課題. 53. 内運行 バ スは廃止 となった。通 院時 の 交通手段 は,島. 量 ,基 礎代謝量 ,脚 点 ,開 眼片足 立 ち (利 き足 立 ち). 外市街地行 きのバ ス利用 か ,自 家用車運転 または家族. 時 間 ,階 段昇 降時 間 (高 さ 30 cmの 3段 階段 ),通 常. に よる送迎 の いず れかであ る。. 歩行 時 間. 高齢者 ・障害者福祉 につい ては,通 所介護施設 1か. (5m),最 大 歩 行 時 間 (5m),機 能 的 バ ラ. ンス能力 (Time Up&Go test,以 下. 所 ,訪 問介護事業所 2か 所 ,認 知症対応 の グル ー プホ. 害物歩行 時 間. ーム が 1か 所 設置 されて い る静。 しか し,特 別養 護 老. ト)を 実施 した。. (10m),ガ. TUG)(3m),障. ム 咀 疇 力 (ガ ム 噛 み テ ス. 人ホ ーム,介 護老 人保健施設 ,介 護療養 医療施設 は設 鱒 置 され てお らず ,隣 接 す る地域 で も空床待 ちの状 態. 肉量 を東 京都老 人総合研 究所 とタニ タの共 同研 究 デ ー. で あ り,在 宅介護が 困難 な場合 は,島 外施設 へ 入所 せ. タ を も とに 点 数 化 した もの で ,50∼ 150点 で 表 示 さ. ざる を得 な い状況 で あ る。. れ ,低 い (50∼ 79点 ),や や低 い (80∼ 89点 ),良 い. 脚 点 (脚 部筋 肉量点数 )は ,体 重 に 占め る脚 部 の筋. (90∼ 150点. 2)対 象. )の 三 段 階 に分 類 され る。 ガ ム 咀 疇 力. は,被 験 者 に色変 わ リチ ュー イ ンガム を 2分 間咀疇 さ. 調査 は o地 区に居住す る 65歳 以上 の 高齢者 371人. せ た 後 ,ガ ム をテ フ ロ ン製 の 型 に はめ ,色 彩 色 素 計. の うち ,調 査 の 趣 旨 を理 解 し書 面 で 同意 した 高齢 者. (CR-13:コ ニ カ ミノル タセ ンシ ン グ)を 用 い て咀 疇. 169人 に実 施 した。 そ の うち ア ンケ ー ト調 査 に 回答. 後 の ガムの色 を測 定 した。測定 に際 して転任lや 体調不. し,身 体機 能計測 に も参加 した 145人 を解 析対象 と し. 良 な どが生 じない よ う十分配慮 しなが ら実施 した。 な. ,女. お ,本 研 究 のア ンケ ー ト調査 な らびに 身体機 能測定 に. 性 91人 で あ り,多 くは 自宅 か ら調査 会場 まで の 歩 行. つい ては,甲 南女子大学研究倫理委員会 の承 認 を得 て. が可 能 な人であ った。. 実施 した。. た。 身体機 能計淑1へ の 参加者 の 内訳 は男性 54人. 統 計解析 は. 3)調 査方法. SPSS統 計 パ ッケ ー ジ Ver。 12を 使 用. し,カ テ ゴ リ変 数 には. X2検 定 を用 い ,身 体 機 能 計. 健康 ・生活 に関す るア ンケ ー ト調査 は民 生 委員 の協. 測値 の 2群 間比較 には対応 の ない t検 定 を用 い た。 な. 力 を得 て 3週 間前 に配布 し,自 己記入 にて ,身 体機 能. お ,本 稿 で は p<0.o5を 有意差 あ りと して論述 した。. 計測 当 日,会 場 に持参 して もらった。 ア ンケ ー ト項 目は,職 業 ,世 帯構 成 ,子 どもの居住 地 ,現 在 の健康感 ,1年 間 の 健康 感 の 変化 ,日 常 生 活 動作 ,入 院 0通 院歴 ,疾 病保有状 況 ,普 段 の活動性 ,. Ⅲ。 結. 1)対 象 の属性. (表. 果. 1). 日頃の暮 ら し方 ,日 常 の 食生活 ,食 品 の摂取状況 ,気 分 (Geriatric Depression Scale短 縮 版 15問 り),咀 疇. 多 か った。女性 は前期 高齢者 ,後 期 高齢者 はほぼ同 数. 能 ,社 会支援状況 ,「 つ らい 」事柄 ,介 護 サ ー ビス 受. で あ った。性 別 に よる 区分 で は女性 が 男性 の約 2倍 で. 給状 況 ,な どで あ るが ,本 研 究では,こ れ らの うち職. あ った 。 農業 に従 事 して きた 者 と従事 して い な い 者. 年齢 区分 か らみた属性 では男性 はやや 後期高齢者が. 業 ,通 院歴 ,疾 病 の保有状 況 ,普 段 の活動性 の項 目を. (以 下 ,非 農 )の 区分 で は,前 期 高齢期男性 には非 農. 解析 に用 い た。. が 多 く,前 期 高齢期女性 で は農業従事者 が非農 の 約 2. 身体機 能測 定 は ,平 成 20年 8月 20日 ∼ 22日 に実. 倍 で あ った。後期高齢期男性 は農業従事者が非農 の倍. 施 した。測定項 目は,バ イオイ ンピー ダ ンス法 (身 体. 以上 多 く,女 性 も非農 の 約 7.5倍 農業従事 者 が 多 か っ. BC H82:タ ニ タ社 製 )に よる筋 肉量 ,脂 肪. た。 なお ,本 調査参加者 の うち要介護認定 を受 け て い. 組 成計. 表. 1. 対 象者 の属性 農業 ・非農. 年齢 区分. 前期 高齢者. 後期 高齢者. (男 性. 前期 高齢者 女1生 :45人 ). :24人. 農業. 男性 (54人 ,loo%) 女性 (91人 ,loo%) 全体 (145人 ,loo%). 24 (44.4). 30(55。 6). 45 (49。 5). 46(50.5) 76(52.4). 69 (47.6). 非農. (男 性. 後期 高齢者 女性 :46人 ). :30人. 農業. 非農. 3). 13 (24.1). (37.0). (31.9). 16(17.6). (44.0). (6.6). (27.6). 29 (20.0). (41.4). (H.0). (20。. (18.5).
(4) 看護学 。リハ ビリテー シ ョン学編 (2010年 3月. 甲南女子大学研究紀要第 4号. 54. TUGな. ). らび に障害物 歩行 に つ い て 有 意. る人は,男 性 1人 ,女 性 6人 であ り,そ の うち介護 サ. (p=o.016)。. ー ビス を利用 して い る者 は 3人 であ った。. 差 は認 め られ なか ったが ,女 性 の前期 高齢期非農 で は 農 業 従 事 者 に比 べ て 短 い 時 間 で 歩 行 可 能 で あ っ た. 2)身 体機 能計測結果. (TUG p=0.059,障 害物 歩 行 p=0.083)。 一 方 ,男 性. (表 2). 身体機能計測結果 は,表 2に 示す ように,全 身筋 肉. で は 身体機能測定結果 に有意差 はみ られ なか った。 ガ. 量 ,脚 点 ,基 礎代謝量 につ い ては男女 とも年齢 や農業. ム咀疇 テ ス ト結果 につ い て は,女 性 の後期 高齢期非農. 従事 の 有無 に よる有意差 は認 め られ なか つた。 開眼片. の 方が咀唱能力 は有意 に低 か った (p=0。 013)。. 足 立 ち (利 き足立 ち)時 間測定 で は,女 性 の前期高齢. 3)年 齢 ・ 性 別 ・ 農 業 従 事 の 有 無 に よ る疾 患 保 有 率. 期 農業 従事者 の 方が非 農 に比 して有意 に短か った (p 階段昇 降 で は,女 性 の 前 期 高齢期 農業従事. =0.003)。. (表 3). 者 は非農 に比 べ て階段 昇降 に要す る時 間が有意 に長 か. 年齢 (前 期 高齢期 0後 期 高齢期 )・ 性 別 ・農業 従事. った (p=0.008)。 最 大 歩 行 にお い て も,同 様 に女性. の 有無 (農 業 0非 農 )別 の疾患保有率 を比較 した結果. の前期高齢期 農業従事者 の歩行時 間が有意 に長か った. を表 3に 示す。統計学 的 に有意差 はなか ったが ,前 期. 表 2 農業 に従事 して きた高齢者 と非高齢者 の 身体計測値 の比 較 男. 前期 項. 目. TUG. 障害物歩 行 ガム噛 (咀 噛能 ). 後期. 農業従事. 非農. M(SD). M(SD). 47.30( 6.01) 87.44( 3.05) 1339.44(181.80) 34.63( 27.25) 4.03( 0.42) 3.86( 0.73). 全 身筋 肉量 脚点 基礎 代謝量 開眼片足 立 ち 階段 昇 降 通常歩行 最大歩 行. 1生. N=21. 0.583. 2.80) 1304.25(165.10). 0.363. 88(. 86。 25(. 0。. 649. 41.42( 37。 75). 0。. 653. 0。 53). 0。. 3.92(. 4.05( 0.56) 2。 94( 0.49) 1.14) 6。 96(. 0.518 0.360. 0。 79). 42.29( 4.23) 85。 35( 5.58) 1180.94(122.34) 21.81( 32.41). 7.40(. 0。 98). 7.ll(. 0。 98). 8.12(. 1。 21). 0。. 054. 20.28(. 9.54). 25。 94(. 5。 84). 0。. 109. 項. 目. M(SD). 33.93( 33。 53). TUG. ). 0。 61). 2.83( 0。 33). 7.60( 1.72) 9.05( 1.73). 10( 8.31). 16.08(10。 45). 3.82( 0。 59). 0。. 589. 961 0.592 0.679. 9.56( 3.87) 1.90) 9。 45(. 0。. 8。 42). 19。 49(. 409 447. 0.342. 0。 70). 3.43(. N=26. 農業従事. 非農. M(SD). M(SD). P値. 31.H(2.16) 85.51( 6。 96). 31.45(1.08) 88.33(6.02). 910. 936.94(87.98). 929.00(45。 94). 0.003. 17.42(17.21). 0。. 0.083. 3.24(. 0。. 580. 0。. 8.11(1.61). 3.68( 0。 61). 0。. 0.275. 6.69( 1.02). 1.81) 0.79). 178. 0.375. 1生. 0.008 0。 235 0.016 0.059. 4.98( 4.10(. 15。. 0。 76). 9.49( 3.49) 10。 29( 4.10) 17.97( 8.89). P値. 33.82( 2.46) 86.50( 5.93) 1041.56(94.48) 74.52(51.03). 34.37( 3.46) 88。 37( 5.00) 1045。 60(122.21). 全 身筋 肉量 脚点 基礎 代謝量 開眼片足 立 ち 階段 昇降 通常歩行 最大歩行 障害物歩 行 ガム噛 (咀 噛能. M(SD). 510. 0。. 71( 1.77) 2.32) 5。 17(. 後期. 農業従事. 0。. 5。 24). 5。. N=21 非農. 5。 29). 82.22(. 12.16( 14.75). 4.57( 0。 83). 女. 前期. 43.56(. 1233.11(172.77). 7.01( 4。 19) 3.25(. P値. M(SD). M(SD). 652 0。 499. 3.12(. リト澤 艶. 農業従事. P値. 5。 60). 45。. N=26. 0。. 792 503 0。 879. 0。 0。. 15。. 46(7.44). 0。. 4。. 90( 0。 69). 0.261. 5.99( 3.47). 4.05( 0.55). 0.348. 3.95( 1.21) 10.02( 4.38). 3.44( 0。 46). 0.475. 7.38( 0。 63). 0。. 11.50( 3.40). 9.58( 0。 79). 0.344. 56( 8.24). 22.42( 6.61). 0.013. 7。. 727. 9。. 23( 3.47). 848. 310. 対応のない t検 定. 表. 3. 農業 従事者 の疾患保有率 後期高齢期. 前期高齢 期 男性 調査項 目. 下肢 関節疾患 あ り 腰部疾患 あ り 2検 χ 定. N=21. 女性. 農業. 非農. (%). (%). 9.1. 23.1. 0。. 7.7. 0。. 18.2. P値 596 576. N=44. 農業. 非農. (%). (%). 41.4. 12.5. 37.9. 12.5. 男性. P値 0.090 0.094. N=26. 女性. N=36. 農業. 非農. (%). (%). 農業. 非農. (%). (%). 15,0. 30.0. 0。. 306. 27.5. 0。. 25.0. 30,0. 1.000. 27.5. 0.0. P値. 0. P値 0.311 0.311.
(5) 高嶋幸恵 他 :集 落機能が低下 した一農村 における農業従事高齢者 の身体機能 とリハ ビリテー シ ヨンの課題 表 4 農業従事者 ・非農別 歩行能力及び通院の有無. 手押 し車 使 う l. 農業. 非農. (%). (%). 3.0. 13.3. 0。. 33。 3. 1.000. 93.1. 0.442. km 歩 行 で きなし 31.4. 通院. して い る. 85。. 7. 象 と した移動能力 ・バ ラ ンス 能力 の調査 で は,運 動習 慣 の無 い 群 で. 女性. 男性. P値. 農業. 非農. (%). (%). 55. P値. く,40. 10m全 力歩行 能力 は男女 と も有 意 に低. cm踏 み台 昇 降,つ ぎ足 歩行 につ い て は女性 で. 能 力 の低 い 者 の 割 合 が有 意 に高 か った と報 告 して い. 7.7. 0.018. ・ る 。 これ らの先行研 究 か ら,農 業従事者 は非農 よ り. 54.1. 23.1. 0.011. 活動量 が 多 く,身 体機 能が高 く,下 肢機 能 も維持 され. 95。 8. 84.6. 0.078. て い る とい われて い る。 しか し,本 研究 で は,表 2に. 183. 2検 χ 定. 示す よ うに筋 肉量 ,脚 点 ,基 礎代謝量 は男女 ともに農 業従事者 と非農 の 間 で有意差 は認 め られなか った。 一. 高齢期女性 の 農業従事者 は,非 農 と比 較 して ,下 肢 の. 方 ,身 体機能測定結果 で は,前 期高齢期女性 で ,開 眼. 関節疾患 ・腰 部疾患 の保 有率が高 い傾 向 が認め られた. 片足 立 ち (利 き足 立 ち)時 間,階 段昇 降時間 ,最 大歩. (下 肢 関節疾患. p=0.090,腰 部疾患. 行 時 間 にお い て ,非 農 と比 べ て農業 に従 事す る人で有. p=0。 094)。. 意 に下肢機 能が低 下 して い る こ とが 明 らか となった。. 4)性 別 ・ 農業従事 の有 無 に よる通 院状 況 ,歩 行能 力. この よ うに筋 肉量 ,脚 点 に有意差が なか ったに もかか わ らず ,農 業 に従 事す る前期高齢期女性 の下肢機 能が. (表 4). 性 別 ,農 業従事 の有無 (農 業 ・非農 )別 の歩行 能力 (手 押 し車 の 使用 の 有無 お よび. lkm歩 行 の可否 ),通. 院状況 につい ては表 4に 示す よ うに,女 性 の農業従事. 有意 に低下 して い た こ とか ら,筋 以外 の要 因が関与 し て い る可能性 が示 唆 された。 い くつ かの先行研 究 にお い て ,開 眼片足 立 ち (利 き. 者 で は手押 し車 を使用す る人が 多 く (p=0.018),lkm. 足 立 ち)時 間 は,関 節機 能障害 ,筋 力低下 ,小 脳 や大. 歩行 が 出来 な い 人が有 意 に 多 か った (p=0.011)。. ま. 脳 に由来す る協調運動 障害 ,平 衡機 能障害 ,前 庭迷路. た,有 意差 はない ものの ,女 性 で は非農 と比 べ て 農業. 病変 ,深 部感覚 障害 な どの病変 を見 出す早期補助診 断. 従事 者 に通 院 して い る人が 多 い傾 向が認 め られ た (p. と して も有用 で あ り,歩 行能力や転倒 との相 関 が高 い. =0.078)。. ことが 報告 されて い る13 “. )。. 本研 究 にお い て も有 意差. はみ られ なか ったが ,当 該集落 にお け る農業 に従事 し. Ⅳ .考. て い る前期 高齢期女性 に下肢 の 関節疾患 ・腰 部疾患 が. 察. 多 い傾 向が認 め られ ,開 眼片足 立 ち (利 き足 立 ち)時 当該集落 に居住 して い る高齢者 につ い て ,農 業従事. 間 の 短縮 に影響 を及 ぼ して い る と考 え られた。 中谷 ら. 者 と非農 の 間に身体機 能 の相違が あ るか を調査 した。. は山 間地 で生 活す る高齢者 の姿勢 を分析 し,地 理 的条. 対 象者 の特性 と して ,対 象者 数 は女性 が男性 の. 件 や姿勢が腰痛 や下肢症状 に及 ぼす影響 につい て調査. 1.5. ∼2倍 で あ った。 中 で も女性 にお け る農業従事 者 の 占. 8%と. し,急 斜 面 の方が腰痛 や下肢 の痺 れ等 の有症状率が明. る住民基本台帳登録 人口 の男女比 は男性 :女 性 =5:6. らか に高 く,腰 椎 後彎 ,膝 屈 曲角度 の増加 した異常姿 Ю 勢者 が 多 い と報告 して い る 。. で あ り,人 口の男女比 と比 較 して も女性 の参加率が高. みか ん栽培 は傾 斜 5度 以上 の 傾 斜 地 で全 体 の 77%. い こ とを示 して い る。 また ,身 体 機 能 測 定 に つ い て は,対 象者 は何 らかの歩行補助手段 を用 い て歩行 が可. が 栽培 されてお り,全 体 の 42%は 傾斜 15度 以上 の急 口 また 傾斜 地で栽培 されて い る との 報告 が あ る ,瀬. 能 で ,自 宅 で の 日常 生 活 が可 能 な もの に限 られ て い. 尾 らは ,傾 斜 地 で の作 業 が 身体 に 及 ぼ す 影響 に つ い. た。. て ,約 15度 の 前後傾斜 で は床 面 に合 わせ て重 心 位 置. め る割合 が. 75。. 特 に多 か った 。 当該 集 落 にお け. '。. 久野 らは,高 齢者 の 下肢筋量 とライフス タイルの調. が つ ま先 もしくは踵 部 に移動 し,左 右 の傾斜 で は,下. 査 を行 い ,農 業従事 者 は 65歳 以上 の 群 で 平均 よ り多 い筋量 を維持 して い た と報告 して い る。。 また ,身 体. 側 の下肢 へ の荷重 が大 き く,姿 勢調整 を行 うため 関節. 活動量 に関す る先行研 究 で は,農 作業実施者 と非実施. 位 ,足 踏 み作業 の調査 で傾 斜 角度が 上が るほ ど,更 に. 者 に対 して小型生活 習慣記録機 ライフ コー ダ EXを 用 い た 調 査 で ,運 動 量 (kcal),歩 数 (歩 ),活 動 時 間. 前後傾斜 よ りも左右傾斜 にお い て筋電 図波形 とエ ネ ル ギ ー消 費量 が増大す る閣こ とを報告 して い る。本研 究. (分 )の 全 て にお い て 農作 業 実施者 が 非 実施者 を上 回. で はアライメ ン トに関す る評価 は実施 して い な い が. った と報告 して い るH)。 さ らに,農 村 在住 高齢 者 を対. 調査 地域 の地場産業 であ るみか ん栽培 な どの 農作業 は. 屈 曲角 度 が 非対 称 とな る こ とや ,傾 斜 地 で の 静 止 立. ,.
(6) 甲南女子大学研 究紀要 第 4号. 56. 看護学 ・ リハ ビ リテ ー シ ヨン学編 (2010年 3月. ). 島 の山の急斜面で行 われてお り,農 業 に従事 して い る. を多方面 か らサ ポ ー トす るこ とが必 要 で あ る。在宅生. 前期高齢期 女性 で下肢 の 関節疾患 及 び腰 部疾患 の 保有. 活者 と比 べ て 介護 サ ー ビス利用者や施設入所者 の運動 〕)と の 報告 もあ り,運 動機 機 能が有意 に低 下 して い た. 率が高 い とい う結果 か ら,急 斜面 で 行 われ るみか ん収 穫作 業 が大 きな要 因 とな って い る可 能性 が推 察 され た。. 能 の維持 ・改善が在宅 生活 を支援 して い く上 で重 要 で あ る と考 え られ る。 したが つて ,医 師 ・理学療法士 ・. また,移 動 に関 しては,農 業従事女性 に手押 し車 を. 作業療 法 士 ・看護 師 とい った 医療専 門職や ,ケ アマ ネ. 使用す る人や l km歩 行 が 困難 な人が有意 に多 く,非. ー ジ ャー ・健康運動指導 士等 ,介 護福祉専 門職が連携. 農 と比 べ て通 院 して い る割合が多 い傾 向が み られ る こ. して ,早 期か ら定期 的 に評価 を行 い ,そ の結果 に基 づ. とか ら,下 肢 の 関節疾患 ・腰部疾患 の 随伴症状 を抱 え. く介 護 予 防 支 援 事 業 を展 開 す る こ とが 地 域 住 民 の. た状態 で 農作業 の継続 を余儀 な くされた結果 ,下 肢機. QOL向 上 に必要不可 欠であ る と考 え られ る。. の 脊柱変形 を伴 う姿勢異常 は,骨 盤 を介 して下肢 で 代. V。. 結. 五叩. 能 の低下が進行 して い る可能性 が示唆 された。高齢者 償 され る こ とが 多 く,そ の 代償運動 は,転 倒 防止や疼 痛緩和 を 目的 と して行 われて い る こ とが 多 い ため ,高. み か ん 園 は急 斜 面 で 作 業 道 が狭 く,機 械 化 に よる作. 齢 であ るほ ど局所 へ の運 動実施 が 困難 で ,改 善す る こ. 業 負担 軽 減 が 困難 で ,後 継 者 不 足 か ら労 働 力 の 脆 弱 化. とが 難 しい とい われて い る"。 この こ とか ら,姿 勢 異. が 進 行 し,高 齢 者 や女 性 が 生 産 を担 って い るのが現 状. 常 が生 じる以前 の壮年期 か らの予 防的 な取 り組 みが重. で あ る。 当該 地域 の よ うな所 謂 「 限 界集 落 」 にお い て. 要 であ り,姿 勢異常 や代償運動 の継続 に よつて姿勢異. 苛 酷 な労 働 環 境 下 で 高齢 に至 る まで農業 に従 事 す るた. 常が進行 しな い よう,定 期 的 な評価 や指導 を行 う こ と. め に必 要 な支援 は ,早 期 か ら農作 業 指 導 や 身体 機 能訓. が必要 であ る と考 え られ る。. 練 な どを行 う と と もに ,治 療 的側 面 か ら負 担 の か か る. 農業 に従事す る後期 高齢者 で は,非 農 との比 較 にお. 腰 部 ・下肢 関節 の ケ ア を実 施 して い く等 ,医 療 ・福祉. い て 開眼 片足 立 ち ,階 段 昇 降 ,最 大 歩 行 ,障 害 物 歩. 専 門職 種 に よる継 続 的 なサ ポ ー トを行 う こ とで あ る。. 行 ,TUGの 測定結 果 に有意差 は 認 め られ なか った 。 全力歩行速度 の低下 は加齢 との相 関が高 い こ とが 指摘 されてお り,階 段 昇 降や つ ぎ足歩行 とい ったバ ラ ンス 能力 もまた,加 齢 に伴 う下肢機能 の低下 を示す評価法 曖 と して有用 で あ る と述 べ られて い る 。今 回 の 調査 で も,前 期高齢期女性 で 見 られた農業従事者 と非農 間 の 下 肢 機 能 の 有意 差 は ,後 期 高齢 者 にお い て 認 め られ ず ,後 期 高齢期 では農業従事 に よる影響 よ りも加齢 に よる影響 が強 くな ってい る ことが 推 察 され る。 今 回 の測定参加者 は,会 場 まで出か けて来 る こ とが 可 能 な高齢者が多か った ものの ,下 肢 の 関節疾患 ・腰 部疾患保有率 が高 く,下 肢機能 の低下が認 め られた。 島内 に常設 の 医療施設 が な く,適 切 な時期 に医療 サ ー ビス を受給 して い る とい えるか ど うか疑 間が残 る状況 であ る。 この よ うな所謂 「限 界集落」 の現状 をふ まえ. 1)厚 生労働 省. 引用 文献 :介 護保険給付 費実態調査。平成 20年. 度 :http:〃 wwwomhlw.go.jp/za/0731/c04/c04-02.pdf(2009 /10/9). 2)国 土交通省 :「 過疎地域等 における集落の状況 に関す るア ンケー ト調査」報告書 .2007 :過 疎地域 における地方 バ ス政策 と町村 代替. 3)北 島修. バ ス運行 一島根県邑智郡 の事例 ―。人文論究 1992;42 巻 2号 : 104-119. 4)福 留邦 洋. :過 疎 地域 にお け る公 共 交 通 網 存 続 の 背 景. 一秩 父地方 を事例 と して 一。学芸地理. 1996;50:79-. 98. 5)井 上 学. :自 治 体 が 供給 す る バ ス 交 通 サ ー ビス とそ の ― 地域 特性 関西 地 方 を事 例 と して 一。経 済 地理 学 年報. 2005; 51: 261-274.. 6)農 林 業 セ ンサ ス 地 域 デ ー タベ ー ス シ ス テ ム. デー. タ.2005:http:〃 wwwotdb.maffogoojp/mapsys/select_pref.jsp. て リハ ビ リテ ー シ ヨン関連職種 が取 り組 むべ き課題 に. (2009/10/9). つい て以下 に述 べ る。具 体 的 な介護予 防 の取 り組 み と. 7)清 水徹 朗. して,① 就農継続を前提 とした早期か らの営農指導② Ю 高齢者の筋特性をふまえた筋カ トレーニ ング や身体. 8)呉 市 介 護 保 険 課 くれ ケ アね っ と.2009:http://www.. 機能訓練の実施③治療的側面か ら負担のかかる腰部 ・ 下肢関節のケアの実施④負担を軽減す る生活指導の実 践,サ ポー ターや コルセットの処方等が挙げ られ,よ り長 く就労可能な身体機能 を保持できるからだづ くり. :み か んの 需 給 動 向 とみ か ん農 業 の 課 題. .. と扇虫2002;8:508-529 本≦ 岸等本 city.kure.lg.jp/∼ kaigo/jigyosya一 itiran/jigyousya一 itirano htm. (2009/10/9). 9)杉 下守 引ヽ,朝 田隆 版. :高 齢 者 用 うつ 尺 度 短縮 版 一 日本. (Geriatric Depression Scale― Short Version― Japanese,. GDS― S― J)の 作 成 につ い て ,認 知神経科学. 2009;11巻. 1.
(7) 高嶋幸恵 他 :集 落機能が低下 した一農村 における農業従事高齢者 の身体機能 とリハ ビリテー シ ヨンの課題. 者 の バ ラ ンス 能 力 と下 肢 筋 力 ,歩 行 能 力 との 関連性. 万 : 87-90. 10)久 野譜 也 :加 齢 に伴 う骨 格 筋 萎 縮 とラ イ フス タイル の 関係 .健 康 医科学. 57. 16)中 谷孝 ,山 本博 司 ,貞 広 哲 郎 ら :山 間地域 にお け る. 1998;13:71-77. 11)矢 島伸 樹 ,前 島文 夫 ,西 垣 義 夫 :農 業 体 験 の運 動 効 果 に 関 す る研 究 ∼ ラ イ フ コー ダ. EX着 用 デ ー タか ら. 2007;56巻 12)岡 田真 平 ,上 岡洋 晴 ,小 林 佳 澄 ら :農 村 在 住 高齢 者 ∼ .日 本農村 医学会誌. 3号 :455. の 移 動 能 力 ・バ ラ ンス 能 力 とそ の 関連事 項 に関す る考 察 一北御牧村研 究 一。 身体 教 育 医学研 究. .. 理学療法科学。 1999;14巻 1号 :33-36. 2001;2:13-. 20. 13)村 田伸 ,甲 斐 義 浩 ,溝 田勝 彦 ら :地 域 在 住 女性 高齢 者 の 開眼片 足 立 ち保 持 時 間 と身体 機 能 との 関連 。理 学 療法科学 2006;21:437-440 14)坂 田憚 教 ,土 居 通 哉 ,細 川 武 ら :予 防 的 見知 か らみ. 高齢 者 の 姿 勢 と腰 痛 ,下 肢 症 状 に つ い て の 調 査 。 リハ ビ リテ ー シ ヨン医学 1983;vol.20 No。. 6:355. 17)宮 崎 昌宏 ,岡 崎紘 一 郎 ,石 束 宣 明 ら 1急 傾 斜 地 カ ン キ ツ園 の 機 械 化 体 系 に関す る研 究 .近 畿 中 国 四 国農 業 研 究 セ ン ター研 究報告 。 2002;第 1号 :1-48. 18)瀬 尾 明 彦 :立 ち作 業 にお け る床 面 傾 斜 の 影響 .産 業 衛 生 学会誌 2006;48巻 :729 19)金 谷 さ とみ :高 齢 者 の 姿 勢 異 常 と代 償 一後期 高 齢 者 を中心 に 一.理 学療法 2002;19巻 5号 :593-598. 20)久 野 譜 也 ,村 上 晴香 ,馬 場 紫乃 ら :高 齢 者 の 筋 特 性 と筋カ トレーニ ング.体 力科学. 2003;52:17-30. 転伊. 21)重 森健 太 ,日 下 隆 一 ,大 城 昌平 ら :高 齢 者 の運 動 機. にお け る片 脚 起 立 時 間 の 測 定 の 意 義 .埼 玉 圏央 リハ ビ. 能評価 の 特 徴 ―コ ミュ ニ テ イにお け る比 較 か ら 一。理. た リハ ビ リテ ー シ ョン リテ ー シ ヨン研 究会雑 誌. 地域 在 住 高 齢 者 の 体 力. 1. 2004:4巻 1号 :13-16. 15)臼 田滋 ,山 端 る り子 ,遠 藤 文 雄 :地 域 在 住 女 性 高齢. 学療 法科学. 2006;21巻 3号 :221-225.
(8)
関連したドキュメント
緒 副腎皮質機能の高低を知らむとして,従来
心臓核医学に心機能に関する標準はすべての機能検査の基礎となる重要な観
高齢者の性腺機能低下は,その症状が特異的で
従事者 作付地 耕地 作付地 当たり 生産高.
機能名 機能 表示 設定値. トランスポーズ
ヨーロッパにおいても、似たような生者と死者との関係ぱみられる。中世農村社会における祭り
Amount of Remuneration, etc. The Company does not pay to Directors who concurrently serve as Executive Officer the remuneration paid to Directors. Therefore, “Number of Persons”
道路の交通機能は,通行機能とアクセス・滞留機能に