2
次元多様体を三角形分割する
yamyamtopo
本稿では、すでに公開しているPDFファイル[PL]で証明された事実を用い、Moiseの 本[2]の方針に沿って、2次元(境界つき)位相多様体*1の三角形分割の存在を証明する。 記法などについて n 次元 Euclid 空間 Rn の点 x = (x 1, . . . , xn) に対して、∥x∥ = √∑n i=1x2i とし、 Dn={x ∈ Rn| ∥x∥ ≦ 1}, Sn−1={x ∈ Rn| ∥x∥ = 1} とする。D0は一点集合である。 距離空間 X = (X, d)において、A ⊂ X, x ∈ X, r > 0とする。xを中心とする半径r の開球体、閉球体をそれぞれ B(x, r) ={y ∈ X | d(y, x) < r}, B(x, r) =¯ {y ∈ X | d(y, x) ≦ r}で定め、N (A, r) = ∪x∈AB(x, r) と定義する。また、A の直径 diam A を diam A = sup{d(x, y) | x, y ∈ A}により定義し、d(x, A) = inf{d(x, y) | y ∈ A}とする。ただし、 diam∅ = 0, d(x, ∅) = ∞とする。 Xを位相空間、AをXの部分集合とするとき、ClXA, IntXA, FrXAはそれぞれXに おけるAの閉包、内部、境界を表す。これらは、それぞれCl A, Int A, Fr Aと略す場合が 多い(多様体M の境界、内部は∂M , M◦によって表す)。 I は単位閉区間[0, 1]を表し、Nは正の整数全体の集合を表す。位相空間の連結性および 弧状連結性には、空でないことを含める。 「局所有限性」に関して 本稿では、Rnの部分集合族の局所有限性に言及することがある が、それらは断りがなければ「和集合における局所有限性」である。すなわち、Rn の添字 づけられた部分集合族(Aλ)λ∈Λが局所有限であるとは、任意のx∈ ∪ λ∈ΛAλに対して、x のRn における開近傍U が存在して、U ∩ A λ ̸= ∅となるλ∈ Λが有限個となることをい う。添字づけられていない部分集合族の局所有限性についても同様とする。すなわち、Rn の部分集合族Aが局所有限であるとは、任意のx∈∪A に対して、xのRnにおける開近 傍U が存在して、U ∩ A ̸= ∅となるA∈ Aが有限個となることをいう。 *1位相多様体の定義は§0.9で改めて与えるが、本稿では、位相多様体は境界をもってもよいものとするの で注意する。
0
「
PL
トポロジーの基礎」などの復習
ここでは、すでに公開しているPDFファイル「PLトポロジーの基礎」(以下では[PL] と表記)で証明された基本的な事実を、用語の定義とともに復習し、いくつかの必要な命 題を証明する。また、最後にJordan-Brouwerの分離定理や領域不変性の定理について述 べる。0.1
ジョインと錐
Euclid空間Rnの部分集合A, B に対して、そのジョイン(join) AB を、 AB = A∪ B ∪ {(1 − t)a + tb | a ∈ A, b ∈ B, t ∈ I} で定義する。A(あるいは B)が空集合のときは AB は B(あるいは A)に等しい。 A ={a}である場合、ABのことをaB で表す。さらにB ={b}である場合、AB をab で表すが、これはaとb を結ぶ線分にほかならない。 a ∈ Rn\ Bであるとき、aBが(aを頂点としB を底とする)錐(cone)であるとは、 任意のx∈ aB \ {a}に対して、t ∈ (0, 1]とb∈ Bの組(t, b)であってx = (1− t)a + tb を満たすようなものがただ一つ存在することをいう。 命題 0.1 ([PL], 命題1.14). 錐の直積は錐となる。すなわち、Ci = aiBi ⊂ Rni(i = 1, 2) がそれぞれ錐であるとき、a = (a1, a2)∈ Rn1+n2, B = (B1× C2)∪ (C1× B2)⊂ Rn1+n2 とおけばaBは錐であって、aB = C1× C2が成り立つ。0.2
多面体と
PL
写像
Rn の部分集合P が(Rn 内の)多面体(polyhedron)であるとは、任意のa ∈ P に 対して、コンパクト集合L ⊂ P が存在して、N = aL は錐であって、かつN がa のP における近傍となることをいう。このときのLをaのP におけるリンク(link)といい、 N を、aのP におけるスター(star)あるいは錐近傍という。このとき、リンクLが多面 体であるようないくらでも小さいaの錐近傍が取れることが示される。 Rn 内の多面体P に対して、P の部分集合Qが再びRn内の多面体であるとき、Qは P の部分多面体(subpolyhedron)であるという。とくに、QがP の閉集合である場合 は、QはP の閉部分多面体であるという。 Rn のアフィン部分空間や立方体In = [0, 1]nはRn内の多面体である。多面体同士の交わりや、多面体同士の直積は多面体となる。また、多面体の開集合は多面体となる。P がコンパクト多面体であるとき、C = aP が錐であるならばC も多面体となる([PL], 例 1.11,命題1.15,命題1.22)。Rn内の多面体の族(P λ)λ∈Λ が局所有限であって、各λ ∈ Λ に対してPλがRnの閉集合であるとき、和集合 ∪ λ∈ΛPλは多面体である。 P ⊂ Rn, Q ⊂ Rm が多面体であるとき、f : P → Q が区分線型写像 (piecewise linear map)あるいは略してPL写像(PL map)であるとは、任意のa ∈ P に対して、
aの適切な錐近傍N = aLを取れば、任意のt∈ I, x ∈ Lに対して f ((1− t)a + tx) = (1 − t)f(a) + tf(x) が成立することをいう。連続写像f : P → QがPL写像であることはグラフΓf ⊂ P × Q がRn× Rm = Rn+m 内の多面体であることと同値である([PL], 定理 1.25)。多面体の 間のPL写像f : P → Q においてP がコンパクトであるとき、f (P )は多面体である。 f : P → Q がPL同相写像(PL homeomorphism)であるとは、f がPL 写像である と同時に同相写像であることをいう。このとき、Γf−1 も多面体なので、f−1: Q → P も PL写像となる。単射PL 写像f : P → QがPL埋め込み(PL embedding) であると は、f (P )がQの部分多面体であってf : P → f(P )がPL同相写像であることをいう。 補題 0.2. PL 写像f : P → Qが位相的な埋め込みであるならば、f はPL埋め込みで ある。 証明. f (P )が多面体であることを示せばよい。そのため、a ∈ P とし、f (a)がf (P )に おいて錐近傍をもつことを示そう。a はP において錐近傍N = aL(ただし、Lはコン パクト)をもつ。PL写像の定義により、錐近傍N を十分小さくとれば、各x∈ L, t ∈ I に対してf ((1− t)a + tx) = (1 − t)f(a) + tf(x)が成り立つ。これとf|N の単射性から、 f (N )はf (a)を頂点としてコンパクト集合f (L)を底とする錐である。f は位相的埋め込 みであったから、f (N ) = f (a)f (L)はf (a)のf (P )における錐近傍である。
0.3
単体複体と単体写像
m≥ 0とする。Rnの部分集合σが(Rn内の)m単体(m-simplex)であるとは、Rn のアフィン独立な(m + 1)個の点 v0, . . . , vmが存在して、σ がこれらを含む最小の凸集 合に一致すること、つまり、 σ = { m ∑ i=0 tivi ∑m i=0 ti = 1, ti ≧ 0 }となることをいう。集合V (σ) ={v0, . . . , vm}はσから一意的に決まり、V (σ)の各要素
vi をσ の頂点(vertex)と呼ぶ。また、このとき、単体 σ の次元(dimension) dim σ
をdim σ = m で定義する。空集合 ∅は、0個の頂点をもつ (−1) 単体であると考え、 dim∅ = −1とする。V (σ)の(空でもよい)各部分集合T ⊂ V (σ)に対して、T = V (τ ) であるような単体τ が定まる。このような単体τ をσ の面(face)といい、τ ≦ σ と書 く。面τ がσ と異なるとき、すなわちT ⫋ V (σ) であるとき、τ はσの真の面(proper face)であるといい、τ < σと書く。σの真の面すべての和集合をσの境界(boundary) といい、∂σ で表す。σ\ ∂σをσ◦ で表し、σの内部(interior)という。 m 単体は (m− 1) 単体を底とする錐となる。このことから、単体は多面体であるこ とが分かる。逆に、任意の多面体 P は、ある局所有限な単体の族 (σλ)λ∈Λ によって、 P = ∪λ∈Λσλ と表すことができる([PL], 命題 2.7)。このとき、単体の次元の最大
値maxλdim σλ は (σλ)λ∈Λ の選び方によらない。そこで、多面体 P の次元 dim P を
dim P = maxλdim σλによって定義する。
Rn 内の単体からなる集合K が以下の条件(0)–(3)を満たすとき、K を(Rn 内の)単 体複体(simplicial complex) という。 (0) ∅ ∈ K (1) σ ∈ K, τ ≦ σ ならばτ ∈ K (2) σ, τ ∈ K ならばσ∩ τ ≦ σ (3) K は局所有限である。すなわち、任意のx∈∪K に対して、xの開近傍U であっ てU ∩ σ ̸= ∅となるσ ∈ K が有限個に限るようなものが存在する。 単体複体Kに属する単体の次元の最大値をKの次元(dimension)といいdim Kで表 す。また、和集合∪K ⊂ Rnを|K|で表し、K の台多面体(underlying polyhedron) という。このとき、集合としての直和分割|K| = ⨿σ∈Kσ◦ がある([PL], 補題 2.36)。台 多面体|K|は§0.2の意味で多面体である。(3)により、K の単体は高々可算個である。 V (K) = ∪σ∈KV (σ) とおき、V (K) をK の頂点集合という。V (K) の要素をK の 頂点という。K の部分集合であって、それ自身が単体複体となるものを K の部分複体 (subcomplex)という。各i≧ 0に対して、K のi次元以下の単体全体は、K の部分複 体となる。この部分複体をK のi骨格(i-skeleton) といいKi で表す。 K, LをそれぞれRn, Rm内の単体複体とする。写像f : |K| → |L|がK からLへの単 体写像(simplicial map)であるとは、任意のσ ∈ Kに対して、制限f|σ: σ → |L| ⊂ Rm がアフィン写像であって、かつf (σ) ∈ L であることをいう。K からL への単体写像 f :|K| → |L| のことを簡単にf : K → Lで表す。さらに、f−1: |L| → |K| もLからK への単体写像であるとき、f をK からLへの単体同型 (simplicial isomorphism)と
いう。単体写像f : K → Lは多面体間の写像f :|K| → |L|としてPL写像である([PL], 命題 1.27(2))。同様な意味で、単体同型はPL同相写像である。 単体写像f : K → Lを与えることは、頂点集合の間の写像f0: V (K)→ V (L)であっ て、各σ ∈ K に対してτ ∈ Lが存在してf0(V (σ)) = V (τ ) となるものを与えることと 同値である([PL], 命題 2.56)。
0.4
多面体と単体複体、
PL
写像と単体写像の関係
Rn 内の単体複体K が多面体P ⊂ Rn のアフィン三角形分割(affine triangulation) であるとは、P =|K| となることをいう*2。 定理 0.3 ([PL],定理2.52). 任意の多面体はアフィン三角形分割をもつ。すなわち、任意 の多面体P は、ある単体複体K に対してP =|K|を満たす。 多面体 P のアフィン三角形分割K について、常に dim K = dim P である。定理0.3 の精密化として、次が成り立つ。 定理 0.4 ([PL],定理2.53). 多面体P ⊂ RnおよびP の部分多面体の族(Qλ)λ∈Λ が、次 の条件を満たすとする。 • 各λ∈ Λに対して、QλはP の閉集合である。 • (Qλ)λ∈Λ はP において局所有限である。すなわち、任意のx ∈ P に対して、xの P における開近傍U でU ∩ Qλ ̸= ∅となるλ ∈ Λが有限個に限るようなものが存 在する。 このとき、Pのアフィン三角形分割Kとその部分複体の族(Lλ)λ∈Λ でQλ =|Lλ| (λ ∈ Λ) となるものが存在する。 PL写像と単体写像の関係については、次が成り立つ。 定理 0.5 ([PL], 定理2.61, 2.65). P , Q を多面体、f : P → Q を固有PL写像(あるい は、PL同相写像)とする。このとき、P , Qのアフィン三角形分割 K, Lが存在して、 f : K → Lは単体写像(あるいは、単体同型)となる。 この定理から、多面体の次元がPL同相で不変な概念であること、すなわち、多面体P , QがPL同相であるときdim P = dim Qであることが分かる。 *2[PL]ではアフィン三角形分割を単に三角形分割と呼んだ。本稿では用語法を変え、単なる三角形分割の 語は、位相空間(中でもとくに位相多様体)の三角形分割の意味で用いる(§1の冒頭を参照)。K, K′ がともにRn 内の単体複体であるとき、K′ がK の単体細分(simplical sub-division)であるとは、|K′| = |K|であり、しかも各σ ∈ K′ に対してτ ∈ K が存在し てσ ⊂ τ であることをいう。 定理 0.6 ([PL], 定理2.64, 2.65). K, Lを単体複体、f : |K| → |L|を固有PL写像(ある いは、PL同相写像)とする。このとき、K, Lの単体細分K′, L′が存在して、f : K′ → L′ は単体写像(あるいは、単体同型)となる。
0.5
単体複体を与えられた開被覆より細かく細分できること
単体複体を必要に応じて「望むだけ細かく」細分できることを、[PL]の結果を用いて示 しておこう。 定理 0.7. Kを(Rn内の)単体複体とし、U を|K|の開被覆とする。このとき、K の単 体細分K′であって、K′ の各単体がU のある要素に含まれるようなものが存在する。 証明. U = {Uλ| λ ∈ Λ}と添字づける(ただし、λ 7→ Uλ は単射とする)。|K| は局所 コンパクトかつパラコンパクトであるから、U は局所有限であるとしてよく、さらに各 λ ∈ Λ に対してCl|K|Uλ はコンパクトであるとしてよい。このとき、コンパクト集合に よる|K|の被覆{Cλ| λ ∈ Λ} をCλ ⊂ Uλであるように取れる*3。各λ ∈ Λに対して、 Cλ のコンパクト性を用いれば、Rn内の有限個の立方体の集合{Dλ,i| i = 1, . . . , nλ}を、 Cλ⊂ |K| ∩ ∪nλ i=1Dλ,i⊂ Uλ であるように取れる。このときQλ =|K| ∩ ∪nλ i=1Dλ,i とお けば、Qλは多面体で、 ∪ λ∈ΛQλ =|K| かつ(Qλ)λ∈Λ は(|K|において)局所有限であ る。よって、定理0.4により、|K|のアフィン三角形分割K′ とその部分複体Lλ(λ ∈ Λ) および Jσ(σ ∈ K) であって |Lλ| = Qλ, |Jσ| = σ となるものが存在する。すると、 ∪ λ∈Λ|Lλ| = |K|であることから、K′ = ∪ λ∈ΛLλである*4。よって、K′ の各単体はあ るλ ∈ Λに対してUλに含まれている。また、 ∪ σ∈K|Jσ| = ∪ σ∈Kσ = |K|であること から、同様にK′ =∪σ∈KJσ も成り立つ。Jσ の各単体はσに含まれているから、K′ は K の単体細分である。 *3たとえば、このことは次のように示される。|K|のパラコンパクト性を用いると、|K|の局所有限な開被 覆{Vα| α ∈ A}を取り、各α∈ Aに対してあるλ(α)∈ Λが存在してCl|K|Vα⊂ Uλ(α)となるよう にできる。このとき、各λ∈ Λに対してCλ=∪{Cl|K|Vα| λ(α) = λ}とおけばよい。 *4実際、τ ∈ K′とし、τ◦の点xを一つ固定すると、あるλ∈ Λについてx∈ |Lλ|であるから、ρ∈ Lλ であってx∈ ρ◦となるものが存在する。すると、x∈ τ◦∩ ρ◦̸= ∅であるから、τ = ρ∈ Lλである。0.6
PL
多様体
n次元の境界を含む上半空間をRn+で表す。すなわち、 Rn + ={(x1, . . . , xn)∈ Rn| xn ≧ 0} とする。Rn +はRn 内の多面体である。 多面体M がn次元PL多様体(PL n-manifold)であるとは、任意のx ∈ M に対し て、xのある開近傍U からRn +のある開集合V へのPL同相写像h : U → V が存在する ことをいう。h : U → V をxの座標近傍(coordinate neighborhood)という。n≧ 1 のとき、x ∈ M の座標近傍h : U → V に対してh(x) ∈ Rn−1 × {0}であるか否かは h の取り方によらず定まる*5。そこで、h(x) ∈ Rn−1× {0} が成り立つような x ∈ M 全 体の集合をM の境界(boundary) といい、∂M で表す。∂M = ∅であるとき、M を 境界のないPL多様体という。∂M 自身は、境界のない(n− 1)次元PL 多様体となる。 M◦ = M \ ∂M をM の内部(interior)という*6。M◦ は境界のないn次元PL多様体 である。 Rnはもちろんn次元PL多様体である。M とN がそれぞれm,n次元PL多様体であ るとき、M × N は(m + n)次元PL多様体であって ∂(M × N) = (∂M × N) ∪ (M × ∂N) が成り立つ([PL], 例3.3(3))。とくに、立方体Inはn次元多様体であって ∂In={(x1, . . . , xn)∈ In|ある i に対して xi ∈ {0, 1}} となる。 n 単体 σ に対して、その境界 ∂σ は§0.3 で定義されていた。立方体In とσ の間に はPL 同相写像h : In → σ であってh(∂In) = ∂σ となるものが存在する([PL], 定理 3.11)。したがって、n単体σ もn次元PL 多様体であり、その境界∂σはPL多様体と しての境界に等しい。 InとPL同相な多面体をPL n次元球体(PL n-ball) といい、∂InとPL同相な多面 体をPL (n− 1)次元球面(PL (n− 1)-sphere) という。σをn単体とすれば、σはPL n次元球体であり、∂σ はPL (n− 1) 次元球面である。PL 0次元球体は一点集合、PL (−1)次元球面は空集合である。 *5この事実は、より一般の位相多様体の場合に§0.9の補題0.22で示される。 *6[PL]では、これをInt M と表記したが、位相空間における部分集合の内部と区別するために記号を変更 した。命題 0.8 ([PL], 命題 3.5). B1, B2をそれぞれPL n次元球体とする。このとき、任意の PL 同相写像∂B1 → ∂B2 はPL同相写像B1 → B2に拡張できる。
0.7
組合せ多様体
単体複体 K の単体σ ∈ K に対して、v のK におけるスター(star)とリンク(link) とよばれるK の部分複体を st(σ, K) = {τ ∈ K |ある ρ∈ K に対して、 σ ≦ ρ かつ τ ≦ ρ}, lk(σ, K) ={τ ∈ st(σ, K) | τ ∩ σ = ∅} により定義する。とくに、σ が 0 単体 {v} であるとき、すなわち v が K の頂点であ るときは、これらを st(v, K), lk(v, K) と書く。頂点 v のスター(の台多面体)は錐 | st(v, K)| = v| lk(v, K)|となり([PL], §3.2 の最初)、これは|K|におけるvの錐近傍を 与える。 単体複体K がn次元組合せ多様体(combinatorial n-manifold) であるとは、K の 各頂点vに対して| st(v, K)|がPL n次元球体であることをいう。 定理 0.9 ([PL],定理3.25). 単体複体K に対して、次は同値である。 (1) |K|はn次元PL多様体である。 (2) K はn次元組合せ多様体である。 (3) K の各頂点v ∈ V (K)に対して、| lk(v, K)| はPL (n− 1)次元球面または PL (n− 1)次元球体である。 (4) 各0≦ p ≦ nと各p単体σ ∈ K に対して、| lk(σ, K)|はPL (n− p − 1)次元球面 またはPL (n− p − 1)次元球体である。 定理 0.10 ([PL], 系3.26). K をn次元組合せ多様体とするとき、|K|はK のn単体す べての和集合に等しい。 PL多様体の境界も、次のようにアフィン三角形分割の言葉で記述することができる。 定理0.11 ([PL],定理3.27). Kをn次元組合せ多様体とし、σ ∈ Kをp単体(0≦ p ≦ n) とするとき、次の同値性が成り立つ。 (1) | lk(σ, K)|がPL (n− p − 1)次元球体 ⇐⇒ σ ⊂ ∂|K| (2) | lk(σ, K)|がPL (n− p − 1)次元球面 ⇐⇒ σ◦ ⊂ |K|◦ 定理 0.12 ([PL], 定理3.29). K をn次元組合せ多様体(n≧ 1)とするとき、∂|K|はKの(n− 1)単体であってK のちょうど1個のn単体の面であるようなもの全体の和集合 に等しい。 組合せ多様体K に対して、|K|はPL多様体だから、位相多様体となる。しかし、|K| が位相多様体であってもK は組合せ多様体であるとは限らないことが知られている。実 際、|L|がホモロジー3次元球面であるとき、Lの2回懸垂をとったものをK とすれば |K|は5次元球面と同相であることが知られている(Cannon-Edwardsの定理)。このと き、K のある頂点vのリンク| lk(v, K)| としては|L|の懸垂に同相な空間が現れる。ホ モロジー球面|L|の基本群が非自明な場合、これは位相多様体ではなく、とくにPL 4次 元球面ではない。これは、K が組合せ多様体でないことを示している。
0.8
PL
座標近傍系と
PL
多様体
可微分多様体は、位相多様体であって、座標変換がすべて微分同相写像であるような座 標近傍系の与えられたものとして定義される。これと同様に、PL多様体の概念も、座標 近傍系の言葉により定義することが可能である。以下、必要な定義を与えた上で、このこ との正確な意味を述べよう。 定義 0.13 ([PL], 定義3.30). X を第二可算公理を満たすHausdorff空間とする。SがX 上のn次元PL座標近傍系であるとは、次を満たすことをいう。 (1) Sは次のような組(U, φ)からなる集合である: U はX の開集合であり、φはU か らRn + のある開集合への同相写像である。(以下、記法を分かりやすくするため、 S = {(Uλ, φλ)| λ ∈ Λ} と添え字を付ける。) (2) ∪λ∈ΛUλ= X である。 (3) 任意のλ, µ∈ Λに対して、φµ◦ φ−1λ |φλ(Uλ∩Uµ): φλ(Uλ∩ Uµ)→ φµ(Uλ∩ Uµ)は PL同相写像である。 この定義から、X がn次元PL座標近傍系をもてば、X はn次元位相多様体となる。 さらに、可微分多様体のときと同じように、座標近傍系の同値の概念を定める。すなわ ち、X 上のn次元PL座標近傍系 S, S′ が同値であるとは、和集合 S ∪ S′ が再び n次 元PL座標近傍系になることをいう。また、S = {(Uλ, φλ)| λ ∈ Λ}がX 上のn次元PL 座標近傍系であり、h : X → Y が同相写像であるとき、Y 上の n次元PL 座標近傍系 h∗S = {(h(Uλ), φλ◦ h−1)| λ ∈ Λ} が自然に定義される。 M を(§0.6の意味での)n次元PL多様体とするとき、SM を、M の開集合U とRn + のある開集合V への PL同相写像φ : U → V の組(U, φ)の全体と定義すると、SM は、位相多様体M 上のn次元 PL座標近傍系となる。この意味で、PL多様体は、その下部 構造としての位相多様体に自然にPL座標近傍系を定める。次の定理は、その逆操作が可 能であることを示している。 定理 0.14 ([PL], 定理3.31). X を位相多様体、S をX 上のn次元 PL座標近傍系とす る。このとき、n次元PL多様体M と同相写像h : M → X が存在して、h∗SM とS は X上の同値なn次元PL座標近傍系となる。さらに、M , hは次のような意味で一意的で ある。n次元PL多様体M′ と同相写像h′: M′ → X も上の条件を満たすならば、PL同 相写像Φ : M → M′ が一意的に存在して、h′◦ Φ = hである。 この定理が、「PL 多様体の概念が座標近傍系の言葉により定義される」ということの 正確な意味を与えている。さらに、この定理は三角形分割定理の証明に実質的な意味をも つ。実際、n次元位相多様体Xがn次元PL座標近傍系をもつことさえ示してしまえば、 上の定理によってX はあるn次元PL多様体M と同相であるから、あるn次元組合せ 多様体K に対してX は|K|と同相であることが分かる。
0.9
Jordan-Brouwer
の分離定理・領域不変性定理など
位相多様体の取り扱いで基本的となるいくつかの定理について述べる。Jordanの閉曲 線定理の高次元への拡張として、次の定理が成り立つ。 定理 0.15. n≧ 2とするとき、次が成り立つ。 (1) 任意の0≦ k ≦ nと任意の位相的な埋め込みh : Dk→ Rn に対して、Rn\ h(Dk) は連結である。 (2) 任意の位相的な埋め込みh : Sn−1 → Rn に対して、Rn\ h(Sn−1)はちょうど2個 の連結成分をもつ。 上の定理のうち、(2)はJordan-Brouwerの分離定理と呼ばれる。本稿の最後に、特 異ホモロジー論の初歩的な知識に基づいた定理0.15の証明を与える。 補題 0.16. n≧ 2とする。K がRnのコンパクト集合であるとき、R2\ K の連結成分で あって非有界なものがただ一つ存在する。 証明. K はコンパクトなので、Rn の有界集合である。したがって、原点を中心とするあ る閉円板Dに対してK ⊂ D である。Rn\ Dは連結であってRn\ K に含まれるから、 Rn\ K のある連結成分U ∞ に含まれる。このU∞ は非有界である。もし、Rn\ K のそ の他の連結成分U で非有界なものが存在すれば、U ̸⊂ Dであるから、U ∩ (R2\ D) ̸= ∅であり、よってU ∩ U∞ ̸= ∅となり矛盾する。 n≧ 2とし、S ⊂ RnがSn−1 と同相であるとしよう。このとき、定理0.15(2)により、 Rn\ Sはちょうど 2個の連結成分をもつが、補題0.16により、一方の連結成分U 0 は有 界であり、もう一方の連結成分U∞ は非有界である。そこで、U0 をS の内側領域、U∞ をSの外側領域と呼ぶことにする。 定理 0.17. n ≧ 2とし、S ⊂ Rn がSn−1 と同相であるとする。このとき、S の内側領 域、外側領域をそれぞれU0, U∞ とすれば、Fr U0 = Fr U∞ = S である。 Rn は局所連結なので、U 0, U∞ はそれぞれRn の開集合である。よって、上でのFr U0 は(Cl U0)\ U0 に等しい。Fr U∞ についても同様である。なお、n = 2の場合の定理 0.15(2)と定理0.17 を合わせたものが、有名なJordanの閉曲線定理である(定理2.1)。 定理0.17の証明. どちらでも同様なので、Fr U0 = S のみ示そう。Rn\ U∞ はRn の閉 集合なので、Fr U0 = (Cl U0)\ U0 ⊂ (Rn\ U∞)\ U0 = S である。逆の包含を示すため、 x ∈ S とする。x∈ Fr U0 を示したいが、それにはx ∈ Cl U0 が言えれば十分である。そ こで、V をxのRn における開近傍とし、V ∩ U 0 =∅であるとして矛盾を導こう。 S におけるxの開近傍Bを、V に含まれ、かつD = S \ B がDn−1 と同相であるよ うに取る。このとき、ところが、U∞′ = (U∞∪ V ) \ Dとおけば、 Rn\ D = U 0∪ U∞′ , U0∩ U∞′ =∅ と、Rn \ D は交わりのない 2 個の空でない開集合の和集合に表される。これは定理 0.15(1)に反する。 次に、ある点が埋め込まれた球面の外側領域にあるという性質が、ある意味で安定して いることを示す次の命題を証明する。以下でdはRn上のEuclid距離を表す。 命題 0.18. n≧ 2とし、h : Dn→ Rnを位相的埋め込みとする。さらに、pをRn\h(Dn) の点とし、ε = d(p, h(Dn)) > 0 とする。h′: Sn−1 → Rn が位相的埋め込みで、各 x∈ Sn−1 に対してd(h′(x), h(x)) < εを満たすならば、pはh′(Sn−1)の外側領域の点で ある*7。 この命題の証明には、ホモトピー拡張定理として知られる次の補題を用いる。 *7この命題の証明は、Hurewicz-Wallman [1]の記述を参考にした。
補題0.19. X を位相空間、A⊂ Xを閉集合とし、X×I が正規空間であるとする*8。この とき、任意の連続写像f : (X×{0})∪(A×I) → Sn−1 はある連続写像f : X˜ ×I → Sn−1 に拡張できる。 証明. r : Rn \ {0} → Sn−1 を r(x) = ∥x∥−1x で定義する。Tietze の拡張定理を座標 ごとに適用することで、f は連続写像 f˜0: X × I → Rn に拡張できることが分かる。 Z = ˜f0−1(0)はX × I の閉集合で、(X × {0}) ∪ (A × I) と交わらない。I のコンパク ト性により、射影 π : X × I → X は閉写像であるから、V = X \ π(Z) は X の開集 合で、A ⊂ V および (V × I) ∩ Z = ∅ を満たす。Urysohn の補題により、連続写像 α : X → I でα(A) ⊂ {1} およびα(X \ V ) ⊂ {0} を満たすものが存在する。最後に、 ˜ f : X× I → Sn−1を ˜ f (x, t) = r( ˜f0(x, tα(x))) で定義すると、f˜が求める拡張を与える。 命題0.18の証明. S = h′(Sn−1) とし、S の内側領域、外側領域をそれぞれ U0, U∞ とする。適切に平行移動と縮小を行うことで、p は原点 0 であるとしてよく、また、 S ⊂ Dn\ Sn−1であるとしてよい。このとき、証明したいことは0∈ U ∞ である。 Rn\ Dnは連結な非有界集合でS と交わらないから、Rn\ Dn ⊂ U ∞ である。よって、 U0 ⊂ Dn であり、したがってCl U0 ⊂ Dn である。 仮定から、各z ∈ Sn−1に対して、h(z)とh′(z)を結ぶ線分はp (= 0)を通らない。し たがって、次のようにして連続写像f : S× I → Rn\ {0} が定義される。 f (x, t) = { h(2t· h′−1(x)) 0≦ t ≦ 1/2 のとき (2− 2t)h(h′−1(x)) + (2t− 1)x 1/2≦ t ≦ 1 のとき これを用いて、連続写像φ : ((Cl U0)× {0}) ∪ (S × I) → Sn−1 を φ(x, 0) = r(h(0)) (x∈ Cl U0), φ(x, t) = r(f (x, t)) (x∈ S, t ∈ I) により定義する。ただし、r :Rn\ {0} → Sn−1 はr(x) =∥x∥−1xにより定義される連続 写像である。このとき、補題0.19により、φを拡張する連続写像φ : (Cl U˜ 0)× I → Sn−1 が存在する。r : Cl U˜ 0 → Sn−1 をr(x) = ˜˜ φ(x, 1) で定義すれば、x ∈ S のときr(x) =˜ φ(x, 1) = r(f (x, 1)) = r(x)である。 *8この仮定は、Xが距離空間のときはもちろん満たされる。正規空間Xに対してX× Iは必ずしも正規 空間ではないことが知られている。
いま、0 /∈ U∞であったとしよう。すると、仮定により0 = p /∈ S であることも考えれ ばCl U∞ = S∪ U∞ ⊂ Rn\ {0}となるので、rはCl U∞ 上定義される。よって、連続写 像R : Dn → Sn−1 を R(x) = { ˜ r(x) x∈ Cl U0 のとき r(x) x∈ Dn∩ Cl U∞ のとき によって定義できる。すると、R|Sn−1 = r|Sn−1 = id : Sn−1 → Sn−1 である。これは、 「Sn−1上で恒等写像に等しい連続写像Dn→ Sn−1 は存在しない」という、ホモロジー論 から証明される良く知られた事実に反する。よって、0∈ U∞ である。これが、証明した いことであった。 系 0.20. n ≧ 2とし、h : Dn→ Rn を位相的埋め込みとし、ε > 0とする。h′: Sn−1 → Rn が位相的埋め込みで、各 x ∈ Sn−1 に対してd(h′(x), h(x)) < ε を満たすならば、 h′(Sn−1)の内側領域U0 に対してCl U0 ⊂ N(h(Dn), ε) が成り立つ。 証明. 補集合をとり、Rn\ N(h(Dn), ε)⊂ U ∞を示せばよい。 ここで、U∞ はh′(Sn−1) の外側領域である。x ∈ Rn\ N(h(Dn), ε) とすると、d(x, h(Dn))≧ εである。よって、 命題0.18により、x∈ U∞である。 次に、定理0.15をもとに、領域不変性の定理を示そう。これは多様体の境界の定義で 重要な役割を果たす。 定理0.21 (領域不変性の定理). U, V ⊂ Rnとする。U がRnの開集合であり、h : U → V が連続な全単射であれば、hは実際には同相写像であって、V もRnの開集合である。 証明. まず、V が Rn の開集合になることを示そう。x ∈ U とするとき、h(x) のRn における近傍でV に含まれるものが存在することを示せばよい。まず、ε > 0 を十分 小さくとり、閉球体D = {y ∈ Rn| ∥y − x∥ ≦ ε} が U に含まれるようにする。D の コンパクト性から、h|D: D → h(D) は同相写像であり、よって定理 0.15(1)により、 V1 = Rn\ h(D)は連結である。次に、S ={y ∈ Rn| ∥y − x∥ = ε}とおくとD\ S は連 結だから、V2 = h(D\ S)も連結である。したがって、Rn\ h(S)は互いに交わらない連 結集合の和集合としてRn\ h(S) = V 1∪ V2 と表される。ところが、h|S: S → h(S) が 同相写像であることと定理0.15(2)によりRn\ h(S)はちょうど2個の連結成分をもつの で、V1, V2はRn\ h(S)の連結成分でなければならない。よって、V1, V2はそれぞれRn の開集合である。このとき、定義からh(x)∈ V2 ⊂ V なので、V2が求める近傍を与える。 最後に、h が実際には同相写像であることを示そう。U′ をU の開集合とすると、U′ はRn の開集合であるから、連続全単射h| U′: U′ → h(U′) にいま示したことを適用し
て、h(U′) はRn の開集合、よって V = h(U )の開集合であることが分かる。よって、 h : U → V は開写像となるから、hは同相写像である。 位相空間M がn次元位相多様体(topological n-manifold)であるとは、M が第二 可算なHausdorff空間であって、任意のx ∈ M に対して xのある開近傍U から Rn + の ある開集合V への同相写像h : U → V が存在することをいう*9。このようなh : U → V をxの(M における)座標近傍と呼ぶ。PL多様体は、もちろん位相多様体となる。 位相多様体の境界の定義は、次の事実に基づいている。 補題 0.22. M をn次元位相多様体とし、x∈ M とするとき、次は同値である。 (1) xの任意の座標近傍h : U → V に対して、h(x)∈ Rn−1× {0}である。 (2) xの少なくとも一つの座標近傍h : U → V に対して、h(x)∈ Rn−1× {0}である。 証明. (1) =⇒ (2)は明らかである。次に、(2) =⇒ (1)を示すために、xの一つの座標近傍 h0: U0 → V0(⊂ Rn+)に対してh0(x)∈ Rn−1× {0} となっているとする。xの座標近傍 h : U → V を任意に与える。h(x)∈ Rn−1× {0}を示そう。もし、そうでないとすれば、 W1 = h(U ∩ U0)\ (Rn−1× {0}) は h(x) のRn における開近傍となる。よって、領域不変性の定理 0.21 より、W 2 = h0◦ h−1(W1)はh0(x)のRnにおける開近傍である。ところが、h0(x)∈ Rn−1× {0} で あったから、W2 ̸⊂ Rn+である。一方、W2 ⊂ h0(U0) = V0 ⊂ Rn+となり、これは矛盾で ある。 そこで、補題 0.22の同値な条件を満たす点x ∈ M の全体の集合をn次元位相多様体 M の境界(boundary)といい、∂M で表す。∂M =∅であるとき、M を境界のない位 相多様体という。∂M 自身は境界のない(n− 1)次元位相多様体であり、M の閉集合と なる。M◦ = M \ ∂M はM の内部(interior)と呼ばれる。M◦ はM の開集合であっ て、境界のないn次元位相多様体となる。PL多様体の境界・内部は、もちろん、それを 位相多様体とみたときの境界・内部と一致する。 位相多様体の境界・内部は、次のような特別な場合には、位相空間における部分集合の 境界・内部と一致する。 定理 0.23. M , X をともにn次元の位相多様体とし、M はX の閉部分集合であって ∂X =∅であるとする。このとき、∂M = FrXM , M◦ = IntXM となる。 *9本稿では、単に位相多様体と言った場合は境界をもってもよいので注意する。
証明. M はX の閉集合なので、M◦ = IntXM のみ示せば十分である。x ∈ IntXM と すると、xのX における座標近傍h : U → V ⊂ Rn+ をU ⊂ M となるように選べる。U はM に含まれるX の開集合なので、M の開集合でもある。よって、h : U → V はM に おける座標近傍とも見なせる。また、∂X = ∅であるから、h(x) /∈ Rn−1× {0}である。 よって、x∈ M◦である。これで、IntXM ⊂ M◦ が示された。 逆の包含を示すためには、M◦がM の開集合であることを示せばよい。そこで、x ∈ M◦ とする。すると、xのM における座標近傍h : U → V でh(x) /∈ Rn−1 × {0}となるも のが存在する。このとき、U′ = h−1(V \ (Rn−1 × {0})) とおけば U′ はM の開集合で x∈ U′ ⊂ M◦ である。よって、M◦ はM の開集合である。
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次元多様体の三角形分割のもつ性質
X を位相空間とするとき、単体複体K と同相写像 φ : |K| → M との組 (K, φ)をX の三角形分割(triangulation)という。本稿では、位相多様体の三角形分割についての み考える。まず、次の「常識的には正しそうな」命題からはじめよう。 命題 1.1. (K, φ)が空でないm次元位相多様体M の三角形分割であるとき、dim K = m である。しかも、|K|はK のm単体すべての和集合に等しい。 証明. M = |K| であるとして証明してよい。もし、dim K > mであるとすれば、K は(m + 1)単体 σ をもつ。x を内部σ◦ の点の一つとする。xのM における座標近傍 h : U → Rm を取る(つまり、hはxのM における開近傍U からh(U ) =Rm への同相 写像である)。xのσ◦ における開近傍U′であってRm+1と同相なものをU′ ⊂ U となる ように選び、同相写像k : U′ → Rm+1を固定する。Rm =Rm× {0} ⊂ Rm+1 と見ると き、k−1(Rm)はU′ において内点をもたないから、U においても内点をもたない。よっ て、Rmと同相な集合h(k−1(Rm))はRmにおいて内点をもたない。これは、領域不変性 の定理0.21に反する。これで、dim K ≦ mが示された。 次に、dim K = k < m であったとしよう。M = |K| は空でないから、k ≧ 0 であ る。k 単体σ ∈ K を一つ選び、点x ∈ σ◦ を一つ選ぶ。σを真の面にもつK の単体が存 在しないことから、σ◦ = M \∪(K \ {σ}) である。よって、σ◦ はM = |K| の開集合 であるから、xのM における座標近傍h : U → RmでU ⊂ σ◦ となるものが存在する。 一方、同相写像k : σ◦ → Rk が存在する。このとき、Rk = Rk× {0} ⊂ Rm とみれば k◦ h−1(Rk)はRkにおいて内点をもたないから、領域不変性の定理 0.21に反する。 以 上で、dim K = mが示された。 最後の主張は、前段落の議論から直ちに分かる。実際、|K|がK のm単体すべての和集合に一致しなければ、この和集合に含まれない最大次元(k 次元とする)の単体σ ∈ K についてk < mであって、σを真の面にもつK の単体が存在せず、さきほどと同様に矛 盾を生じる。 以下では、とくに2次元位相多様体M の三角形分割(K, φ)の場合に、K の構造を調 べておく。単体の1次元の面のことを辺(edge)と呼ぶ。 命題 1.2. 単体複体K の台多面体|K|が2次元位相多様体であるとき、K の任意の1単 体eに対して、eを辺にもつK の2単体の個数neは1または2となる。さらに、 ne= 1 ⇐⇒ e ⊂ ∂|K| ne= 2 ⇐⇒ e◦ ⊂ |K|◦ となる。とくに、K のどの 1単体eについてもe ⊂ ∂|K| またはe◦ ⊂ |K|◦ のどちらか が成り立つ。 証明. eをK の1単体とする。eを辺にもつK の2単体は、命題1.1 により、少なくと も一つ存在するので、ne ≧ 1である。あとは、次の3個の主張を示せば証明は終わる。 (i) e◦∩ ∂|K| ̸= ∅ならば、ne= 1である。 (ii) ne = 1ならば、e⊂ ∂|K|である。 (iii) e◦ ⊂ |K|◦ならば、ne = 2である。 (i)の証明: e◦∩ ∂|K| ̸= ∅とする。x∈ e◦∩ ∂|K| ̸= ∅を一つ固定する。xの|K|にお ける座標近傍h : U → R2+ であって、h(x) = 0となるものが存在する。もし、eを辺にも つ異なる2個の2単体σ1, σ2が存在したとすると、xのσ1∪σ2における開近傍U′ であっ て、U′ ⊂ U かつU′がR2 と同相であるようなものが存在する。すると、h(U′)は領域不 変性の定理0.21によりR2 の開集合である一方、0 = h(x)∈ h(U′)なのでh(U′) ̸⊂ R2 + である。これは、h(U′)⊂ h(U) = R2+ であることに矛盾する。よって、ne= 1である。 (ii) の証明: ne = 1 とする。e を辺にもつ K のただ一つの 2 単体を σ とすれば、 U = σ◦ ∪ e◦ は|K|の開集合であり、U はe◦を境界とする2次元位相多様体である。こ のことから、e◦ ⊂ ∂|K|である。よって、e⊂ ∂|K|である。 (iii) の証明: e◦ ⊂ |K|◦ とする。e を辺にもつ2 単体すべてを σi(i = 1, 2, . . . , m) とし、m ≧ 3 であるとして矛盾を導けばよい。x を e の重心(つまり中点)とする。 U をx の|K| における開近傍で、R2 と同相なものとする。ε > 0 を十分小さくとり、 各 i = 1, 2, . . . , m に対して、x を中心とする σi 内の半径 ε の閉半円板を Di とし、 D =∪mi=1DiとするときD ⊂ U であるようにできる。さらに、i = 1, 2に対して、xを 中心とするσi 内の半径ε/2の半円弧をCi とし、J = C1∪ C2 とする。J はU 内のS1
と同相な部分集合であるから、Jordanの閉曲線定理により、U \ J は非連結である。一 方、m≧ 3に注意すれば、D\ J は弧状連結であることが直接容易に確かめられる。とこ ろが、U は弧状連結であってJ ⊂ Int|K|Dであるから、U \ J の各点はD\ J のある点 へとU \ J 内の連続な道で結ぶことができる。以上によりU \ J は弧状連結となり、矛盾 する。 命題 1.3. 単体複体K の台多面体|K|が2次元位相多様体であるとき、K の各頂点vに 対して、リンク| lk(v, K)|は連結である。 証明. まず、単体複体の定義での局所有限性の条件から、lk(v, K)はK の有限部分複体 であり、よって| lk(v, K)| はコンパクトであることに注意する。v は|K|の孤立点では ないから、| lk(v, K)|は空集合ではない。もし、| lk(v, K)| が連結でなかったとすれば、 | lk(v, K)| = L1 ∪ L2, L1∩ L2 = ∅ となる空でないコンパクト集合L1, L2 が存在する。 さて、| st(v, K)|はvの|K|における近傍であるから、vの| st(v, K)|に含まれる開近傍 U でR2 またはR2 + と同相であるものが存在する。このとき、U \ {v}は二つの交わりの ない空でない閉集合(vLi∩ U) \ {v} (i = 1, 2) の和集合に表される。よって、U \ {v}は 非連結となるが、R2 あるいはR2 + から一点を除いたものは常に連結であるので、これは 矛盾している。 定理 1.4. (K, φ)が2次元位相多様体M の三角形分割であるならば、K は2次元組合せ 多様体である。 証明. この状況で、|K|はM と同相なので、|K|はもちろん2次元位相多様体である。定 理0.9により、K の各頂点vに対して、リンク| lk(v, K)|がPL 1次元球面またはPL 1 次元球体であることを証明すればよい。 すでに命題1.3の証明で注意したように、lk(v, K)はK の有限部分複体である。命題 1.1 から、dim lk(v, K) = 1であって、| lk(v, K)|はlk(v, K)の1単体の和集合に等しい ことが分かる。さらに、命題1.2により、lk(v, K)のどの頂点wについても、wを端点に もつlk(v, K)の1単体は1個または2個である。さらに、命題1.3により、| lk(v, K)|は 連結である。以上により、| lk(v, K)|はPL 1次元球面またはPL 1次元球体のどちらか でなければならない。
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PL Schoenflies
の定理
以下では、主にR2 内で議論を行う。R2 内ではPL 1次元球面をとくに多角形合であって円周S1と同相なものを単純閉曲線(simple closed curve)と呼ぶ。§0.9で ふれたJordanの閉曲線定理は次のように述べることができる。 定理2.1 (Jordanの閉曲線定理). J ⊂ R2が単純閉曲線であるとき、R2\J は有界な連結 成分U0と、非有界な連結成分U∞のちょうど2個の連結成分をもち、J = Fr U0 = Fr U∞ が成り立つ。 証明. 定理0.15(2)と定理0.17でn = 2とした場合である。 上の U0 を J の内側領域、U∞ を J の外側領域と呼ぶのであった。内側領域の閉包 Cl U0 = U0∪ Fr U0 = U0 ∪ J はR2 の有界閉集合であるから、コンパクトである。こ のコンパクト集合は閉円板 D2 = {(x, y) ∈ R2| x2 + y2 ≦ 1} と同相となっている。 実際、h(Cl U0) = D2 を満たす同相写像h : R2 → R2 が存在することが知られている (Schoenflies の定理)。 Schoenfliesの定理の証明は、複素解析的な手法を用いたものが比較的シンプルである が、特別な道具を用いない証明には、かなりの手数を要する。また、この定理は2次元に 特有のものであり、3次元以上での対応する主張は成り立たない。すなわち、Rn(n≧ 3) の部分集合SがSn−1 と同相なとき、やはり Rn\ S は有界な連結成分U 0と非有界な連 結成分U∞ からなるが、Cl U0がDnと同相であるという主張は一般には成り立たない。 2次元多様体の三角形分割可能性の証明には、Schoenfliesの定理を利用するものが多い が、ここでは、より簡単に証明できる「PLバージョン」のみを用いる。すなわち、 定理 2.2 (PL Schoenflies の定理). J ⊂ R2 を多角形とし、J の内側領域を U0 とす る。このとき、PL 同相写像h : R2 → R2 が存在して、h(Cl U 0)はR2 内の2単体とな り、h(J )はこの2単体の境界となる。とくに、Cl U0はPL 2次元球体で、J はその境界 である。 以下では、この定理の証明のための補題を示していく。まず、今後よく使う論法の一つ を定式化しておく。 補題 2.3. J ⊂ R2 を多角形とし、J の内側領域、外側領域をそれぞれU 0, U∞ とする。 p∈ J とし、pを中心とする十分小さい閉円板D をとり、D∩ J がDの2本の半径の和 集合となるようにする(D∩ J がDの直径となることもある)。このとき、D\ J は2個 の連結成分からなるが、これらの連結成分のうち一方はU0 に、他方はU∞ に含まれる。 証明. D\ J ⊂ R2\ J であるから、D\ J の各連結成分はU0 とU∞ のどちらかに含ま れる。もし、両方の連結成分がともにU0 に含まれたとすれば、D∩ U∞ =∅ であるから p /∈ Cl U∞となり、p∈ J = Fr U∞ であることに反する。D\ J の両方の連結成分がとも
にU∞ に含まれたとしても、同様に矛盾する。 補題 2.4. U0を多角形J ⊂ R2 の内側領域とすると、ある単体複体K に対してCl U0 = |K|となる。しかも、そのようなK は必ず2次元組合せ多様体となり、J = ∂|K|が成り 立つ。 証明. Cl U0 が多面体であり、かつ 2 次元位相多様体であることを示せばよい。実際、 これが言えれば定理 0.3 によって Cl U0 = |K| となる単体複体 K が存在する。しか も、Cl U0 は2次元位相多様体なので、定理 1.4により、そのような K は2 次元組合 せ多様体となる。さらに、U∞ をJ の外側領域とすれば、定理 2.1と定理 0.23により J = Cl U0∩ Cl U∞ = Cl U0∩ Cl(R2\ Cl U0) = Fr Cl U0 = Fr|K| = ∂|K|である。 まず、Cl U0が多面体であることを示すため、x∈ Cl U0 とし、xのCl U0 における錐近 傍が存在することを示そう。 (i) x ∈ U0の場合は錐近傍としてxを中心とする十分小さい閉円板が取れる。 (ii) x ∈ J の場合、xを中心とする半径の十分小さい閉円板Dに対してD∩ J はその 円板の2本の半径の和集合となる。このとき、補題2.3により、D\ J の2個の(扇形の) 連結成分の一つD0はU0 に、もう一つD∞はU∞ に含まれていなければならない。この とき、xを中心とする閉じた扇形Cl D0 = D0∪ (D ∩ J)はxのCl U0における錐近傍を 与える。 これでCl U0 は多面体であると分かった。上のどの場合でも、xの錐近傍としてはD2 と同相なものが取れている。よって、Cl U0は2次元位相多様体であることも分かる。 補題2.4の状況に名前を付けておこう。J ⊂ R2 が多角形、K がR2 内の単体複体であ るとき、「J がK を囲む」とは、J の内側領域をU0とするとき|K| = Cl U0 となること をいう(このとき、J = ∂|K|であってK は2次元組合せ多様体となる) 。 J がK を囲むとき、K の2単体σ が自由(free) であるとは、σ∩ J がσ の辺である か、あるいはσの2本の辺の和集合であることをいう。 補題 2.5. J がKを囲むとき、K が2個以上の2単体をもつならば、K は自由な2単体 をもつ。 この補題の証明の考え方は図形的にはシンプルなものだが、図形的に期待できることを 定義に基づいて確認するのに少々手間がかかる。そのような確認は小さい文字で書かれて いるので、まずその部分は飛ばして読み、流れをつかむことを読者にはおすすめする。J の内側領域、外側領域はいままで通りU0, U∞で表す。 証明. より強く、「K が少なくとも2個の自由な2単体をもつ」という主張を、K に属す
る2単体の個数nに関する帰納法によって示す。n = 2の場合、確かに主張は正しい。 n ≧ 3であるとし、n未満では主張が成立しているとする。J = ∂|K|であるから、定 理0.12により、K の部分複体 KJ ={σ ∈ K | σ ⊂ J}について|KJ| = J となる。この とき、ある辺がKJ に属するようなK の2単体が少なくとも2個は存在する。 もし、そうでなかったとすると、命題1.2により、KJ のどの1単体も、共通の2単体σ∈ K の辺になっており、よってJ ⊂ ∂σである。一方|KJ|は多角形なので、KJ には少なくと も3個の1単体がある。よって、σの3本の辺はすべてKJ に属していなければならないの で、J = ∂σである。このときσ\ J = σ \ ∂σ = σ◦ はR2\ J の空でない有界な開かつ閉 集合であるからU0に一致し、よって|K| = Cl U0= Cl(σ\ J) = σである。したがって、 Kの単体はσおよびその面に限られるから、K の2単体はσのほかにないことが分かり矛 盾する。 そこで、そのような異なる2個の 2単体を選びσ0, σ0′ とする。これらがともに自由であ れば、証明することはないので、たとえばσ0 が自由でないとする。このとき、σ0の頂点 をv0, v1, v2 と適切に名づければ σ0∩ J = v1v2∪ {v0} となる。 折れ線J \ (v1v2)◦ は、点v0 のみを共有する2本の折れ線C1, C2 の和集合に表され る。ただし、vi ∈ Ci(i = 1, 2) とする。すると、Ci ∩ σ0 = {v0, vi} (i = 1, 2)であり、 J1 = C1∪ v1v2∪ v0v2 およびJ2 = C2∪ v1v2∪ v0v1は多角形となる。Jiの内側領域、外 側領域をそれぞれUi,0, Ui,∞ としよう。すると、Ui,0 ⊂ U0(i = 1, 2)である。 これを示そう。まず、i = 1, 2に対して、Ji\ J ⊂ σ0\ J ⊂ U0となるから、Ji∩ U∞ =∅ である。よって、U∞∪ (J \ Ji)はJi と交わらない非有界な連結集合であり、したがって U∞∪ (J \ Ji)⊂ Ui,∞となる。R2における補集合をとることで、Ui,0∪ Ji ⊂ U0∪ (J ∩ Ji) を得る。よって、Ui,0 ⊂ U0である。 さて、集合としての直和分解|K| = ⨿σ∈Kσ◦ があることに注意する。Ji はK のある 部分複体KJi に対して|KJi|という形をしているから、K のどんな単体σ についても、 σ ⊂ Ji となるか、σ◦ ∩ Ji = ∅であるか、どちらかである。以上と、さきほど示した Ui,0 ⊂ U0により、Ui,0 = ∪ {σ◦| σ ∈ K, σ◦ ⊂ U i,0}と表すことができる。そこで、K の 部分複体Kiを Ki ={σ ∈ K |ある τ ∈ K に対して σ ≦ τ かつ τ◦ ⊂ Ui,0} により定義すれば、|Ki| = ∪{σ ∈ K | σ◦ ⊂ Ui,0} = Cl Ui0 となる。したがって、Ji は Kiを囲んでいる。 K1, K2はともにK より少ない個数の2単体からなる。 · · · (⋆)
実際、C1に含まれるK の1単体eを1 個選び、eを辺にもつただ一つのK の2 単体を σとすれば(命題1.2)、U∞∪ e◦∪ σ◦はJ2と交わらない非有界な連結集合なので、U2,∞ に含まれる。したがって、σ◦∩ U2,0 = ∅であるので、σ /∈ K2である。同様に、C2に含 まれるK の1単体e′を1個選び、e′を辺にもつただ一つのK の2単体をσ′ とすれば、 σ′∈ K/ 1であることが示される。 したがって、帰納法の仮定により、K1, K2はそれぞれ少なくとも2個の自由な2単体 をもつ。さらに、σ0はK1の自由な2単体であり、K2 の自由な2単体でもある。 どちらも同様なので、σ0がK1の自由な2単体であることを示そう。σ0∩ J1= v1v2∪ v0v2 であるので、σ0 ∈ K1が言えればよい。線分v1v2の中点をv∗ とし、v∗ を中心とする十 分小さい閉円板Dをとる。D\ J は2個の半円形の連結成分をもつが、そのうち一方の成 分D1はσ0◦に含まれ、他方の成分D2はσ0と交わらない。いまσ0◦⊂ |K| \ J = U0なの で、D1 ⊂ U0である。これと補題2.3により、D2 ⊂ U∞である。U∞ はJ1 と交わらな い非有界な連結集合だから、U∞ ⊂ U1,∞ である。よって、D2 ⊂ U1,∞であるから、補題 2.3により、D1⊂ U1,0 である。D1⊂ σ0◦であり、σ◦0はJ1と交わらない連結集合だから、 σ0◦⊂ U1,0 である。よって、σ0∈ K1である。 よって、Ki の自由な2単体σi(i = 1, 2) であって、σi ̸= σ0 であるものが存在する。こ のとき、σ1 ̸= σ2である。 これを示すには、σ1∈ K/ 2を示せば十分である。σ1はK1において自由なので、σ1∩ J1は σ1のある辺eを含む。もし、eがv1v2またはv0v2であれば、eはK1の2個の異なる単体 σ0, σ1 の辺となるが、e⊂ J1= ∂|K1|であるから、これは命題1.2に反する。したがって、 e⊂ C1である。あとは、(⋆)の証明のときと同じ議論によって、σ1∈ K/ 2が示される。 そして、σ1, σ2はK においても自由な2単体である。 σ1 は K1 において自由であったから、σ1 が K においても自由であることを示すには、 σ1∩ J1= σ1∩ J を示せばよい。しかし、J1\ J = (v0v2)◦, J\ J1= C2◦ であるから、それ には、σ1∩ (v0v2)◦ =∅とσ1∩ C2◦ =∅を示せば十分である。σ1∩ (v0v2)◦ ̸= ∅であったと すれば、v0v2はσ1の辺となるが、この場合は、v0v2(⊂ J1)がK1の2個の異なる2単体σ0, σ1の辺となり、命題1.2に反する。σ1∩ C2◦̸= ∅であったとすれば、σ◦1∪ C2◦∪ U∞はJ1と 交わらない非有界連結集合となるので、U1,∞に含まれる。よって、σ1◦⊂ U1,∞=R2\ |K1| となり矛盾する。σ2がK2において自由であることも同様である。 以上で、K は少なくとも2個の自由な2単体σ1, σ2 をもつことが分かり、帰納法によ る証明が完結した。 PL Schoenfliesの定理2.2の証明. J ⊂ R2 を PL 1 次元球面、すなわち多角形とす る。J が単体複体 K を囲むときに、PL 同相写像 h : R2 → R2 であって、h(|K|) が2 単体となるようなものが存在することを示せばよい。これが言えれば、定理0.23 により ∂h(|K|) = Fr h(|K|) = h(Fr |K|) = h(J) となるから、残りの主張もしたがう。