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乳癌・甲状腺癌で命を落とさない時代を実現するために

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Academic year: 2021

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(1)

乳癌・甲状腺癌で命を落とさない時代を実現するた

めに

著者

石田 孝宣

雑誌名

東北医学雑誌

129

2

ページ

155-157

発行年

2017-12

URL

http://hdl.handle.net/10097/00128759

(2)

教授就任記念講演

― 2017年 5 月 25 日(木) : 医学部百周年開設記念ホール 星陵オーディトリアム 講堂

乳癌・甲状腺癌で命を落とさない時代を実現するために

東 北 大 学 教 授 石  田  孝  宣

(3)

2 略 歴 1987年  東北大学医学部卒業 1987年  岩手県立中央病院で外科初期研修 1989年  東北大学医学部第二外科入局 1990年  長井市立総合病院で後期研修後,東北大学第二外科帰局 1997年  秋田厚生連由利組合病院外科医長 1998年  医学博士号取得(東北大学) 2000年  東北大学医学部附属病院 乳腺・内分泌外科 助手 2004年  東北大学病院 乳腺・内分泌外科 講師 2008年  東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座腫瘍外科学分野 准教授 2017年  東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座乳腺・内分泌外科学分野 教授

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教授就任記念講演

乳癌・甲状腺癌で命を落とさない時代を実現するために

How to Make Breast and Thyroid Cancer Without Deaths a Reality

石  田  孝  宣 東北大学大学院医学系研究科 乳腺・内分泌外科学分野 は じ め に 乳癌は,女性の悪性腫瘍では最も多く,日本人女性 の約 11 人に 1 人が罹患する時代となりました.残念 ながら,死亡率,死亡数ともに増加の一途を辿ってい ます.こうした背景の中,私はこれまで,病理学,分 子生物学を基盤にした基礎研究,検診,画像診断,手 術・薬物療法を中心とした臨床研究,そしてこれらを つなぐ ER・ホルモン環境を中心としたバイオマー カー,およびナノテクノロジー等を対象としたトラン スレーショナル・リサーチを行って参りました.本稿 では,それらの研究の代表をご紹介し,今後の展望に ついて述べさせて頂きます. 1. 乳癌の乳管内進展と乳房温存療法

乳癌の多くは,末梢乳管(terminal duct lobular unit : TDLU)から発生し,中心乳管に向かって乳管内を進 展して行きます.乳房温存療法における根治性を高め るためには,乳癌の乳管内進展の生物学的特性と臨床 病理学的意義を追求する必要があります.私はまず, 乳癌の乳管内進展を三次元構築法を用いて 4 つの Gradesに 分 類 し, 浸 潤 巣, 乳 管 内 病 巣 に お け る MUC1抗 原,Sialyl-Tn抗 原,c-erbB2 (HER2),p53

の発現が断端陽性,温存乳房内再発と有意に相関する ことを報告しました1).さらに,2 次元での簡便な定

義である,extensive intraductal component (EIC)と 3 次 元 で の 定 義 で あ る intraductal spread of carcinoma (ISC) を対比し,EIC 陰性の中に高度な ISC を有する

症例が 25% あることを究明し,新たな二次元検索法 を提唱しました1) さらに,術前の癌の広がり診断における CT と MRI の対比を行い,それぞれの有用性について検討し,手 術への応用を実現する2)とともに,術中断端病理診断 の有用性を明らかにしました3) 現在,乳房温存療法は早期の乳癌に対する治療法と して,ガイドラインでも強く推奨されていますが,局 所進行乳癌に対しても,術前薬物療法にて縮小が得ら れた症例では積極的に施行されています.根治性と整 容性を兼ね備えた乳房温存療法の確立に向けて,今後 も研究を重ねて参ります. 2. 乳癌検診における新たな科学的根拠の創出 上記の乳房温存療法の対象を増加させるためには, 乳癌検診による早期発見が不可欠です.現在,乳癌検 診において,死亡率減少効果が科学的に証明されてい るのは,マンモグラフィ検診のみです.しかし,高濃 度乳房の多い 40 歳代においては,マンモグラフィの 感度が低下することが明らかになっています.そこで, 国家プロジェクトとして,日本で初の大規模無作為化 比 較 試 験 で あ る Japan Strategic Anti-cancer

Ran-domized Trial (J-START)を 2007 年より行ってきまし

た.この研究は,がん対策のための戦略研究「乳がん 検診における超音波検査の有効性を検証するための比 較試験」で,日本全国から 40 歳代女性,76,145 名に 参加していただきました4).この研究結果の第 1 報が, The Lancet誌で世界に向けて発信され,マンモグラ フィ単独の検診と比較して,マンモグラフィに超音波 を追加した群では乳癌の発見数が 1.5 倍(p=0.0003) に増加し,中間期癌の数を半減 (p=0.034)させるこ とが判明しました.マンモグラフィ所見陰性,超音波 所見陽性で発見される乳癌は腫瘤径の小さい浸潤癌が 多いことも報告されました5,6) 一方で,マンモグラフィに超音波を追加することで, 特異度が低下し,不要な精密検査が増加することも明 らかとなりました.今後,総合判定などこれらの不利 益を軽減する方策の基盤を構築するとともに,超音波 による死亡率減少効果の有無を検証して行く必要があ ります.

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156 石田 ─ 乳癌・甲状腺癌で命を落とさない時代を実現するために 3. トランスレーショナル・リサーチの推進 乳癌研究は,2000 年代に入って遺伝子解析に基づ くサブタイプ分類の導入に伴い,飛躍的な進歩を遂げ ました.このサブタイプを,簡便で安価な病理検索方 法でサロゲートする手法が普及したため,乳癌に対す る薬物療法も格段の進歩を遂げ,治療成績の目覚まし い向上につながりました.これに伴い,内分泌療法, 分子標的治療,化学療法の各領域で,治療効果予測因 子,予後予測因子として,各種バイオマーカー研究が 加速しました. こうした中,乳癌の約 80% がホルモン依存性に増 殖,進展することが明らかとなり,内分泌療法の有効 性に直結するホルモン環境に関する基礎研究が大きな 注目を集めるようになりました.我々は,病理診断学 分野の笹野公伸教授,病理検査学分野の鈴木貴教授ら のグループと共同で,腫瘍局所におけるエストロゲン, アンドロゲンの代謝を中心としたホルモン環境,及び 免疫応答に関する基礎研究を推進してきました7-9) . また,分子機能解析学分野の林慎一教授らのグループ と共同で,内分泌療法の耐性メカニズムを明らかにす る基礎研究を進め10),いずれの研究も新規治療戦略に つながるトランスレーショナル・リサーチとして,多 くの成果を挙げています. また,医学技術の進歩には目覚ましいものがありま す.そのなかにあって,工学系,理学系技術との連携 は不可欠であります.我々は,医用物理学分野の権田 幸祐教授らのグループと共同で,新規ナノ粒子を用い た高感度がん検出方法の開発に力を入れており,臨床 でのセンチネルリンパ節生検への応用を目指してきま した.さらに,蛍光ナノイメージングを用いた高精度 がん組織診断法の研究により,抗 HER2 抗体-量子ドッ トを用いた新たな病理診断方法の開発に成功し,分子 標的治療の精密な効果判定など,実臨床への応用が現 実のものとなっています11,12) さらに,女性で最も罹患の多い悪性腫瘍が乳癌であ ることから,遺伝性乳癌に対する注目が高まっていま す.臨床腫瘍学分野の石岡千加史教授,婦人科学分野 の八重樫伸生教授,遺伝医療学分野の青木洋子教授, 腫瘍生物学分野の千葉奈津子教授らのグループと共同 で,BRCA1,2 や p53,ERBB2,CDK4 などがん遺伝子, がん抑制遺伝子に関わる研究に力を入れており,日本 における遺伝性乳癌卵巣癌症候群(Hereditary Breast and Ovarian Cancer Syndrome : HBOC)研究に関する 基盤整備を推進しています. 4. 甲状腺領域での研究・診療実績 教室では,甲状腺,副甲状腺(上皮小体)の機能的 疾患,および腫瘍性疾患について研究を重ねてきまし た.また,マーシャル諸島における核実験の影響を追 求する目的で,島民に対する甲状腺癌検診を行ってき ており,第 2,3 世代への影響を調査しています.こ れらの経験を活かし,東日本大震災後,福島での甲状 腺検診にも参画しており,次の世代へつながるデータ の収集に全力を挙げています. さらに,気管浸潤を伴う進行した甲状腺癌に対する 気管合併切除術や,悪性度の高い未分化癌に対する新 規分子標的治療を加えた集学的治療などにも積極的に 取り組んでおり,今後,更に発展させて行きたいと考 えています. お わ り に 今後,遺伝子解析技術の進歩により,各遺伝子変異 に応じた治療選択が可能となることが予想されます. 個々人を対象とした真の個別化医療の確立を目指し て,多くの研究分野の皆様方と研究を重ねて参りたい と願っておりますので,どうぞよろしくお願い申し上 げます. 文   献

1) Ishida, T., Furuta, A., Ohuchi, N., et al. (2003) Patho-logical assessment of intraductal spread of carcinoma in relation to surgical margin state in breast-conserving

surgery. Jpn. J. Clin. Oncol., 33(4), 161-166.

2) Harada-Shoji, N., Ishida, T., Ohuchi, N., et al. (2009) 

Usefulness of lesion image mapping with multidetec-tor-row helical computed tomography using a dedicated

skin marker in breast-conserving surgery. Eur.

Radiol., 19(4), 868-874.

3) Fukamachi, K., Ishida, T., Ohuchi, N., et al. (2010)  Total-circumference intraoperative frozen section

anal-ysis reduced margin-positive rate in breast-

conserva-tion surgery. Jpn. J. Clin. Oncol., 40, 513-520.

4) Ishida, T., Suzuki, A., Ohuchi, N., et al. (2014) A ran-domized controlled trial to verify the efficacy of the use of ultrasonography in breast cancer screening aged 40-49 (J-START): 76, 196 women registered. Jpn. J.

Clin. Oncol., 44(2), 134-140.

5) Ohuchi, N., Ishida, T., Suzuki, A., et al. (2016) Sensi-tivity and specificity of mammography and adjunctive ultrasonography to screen for breast cancer in the Japan strategic anti-cancer randomized trial (J-START): a

(6)

randomised controlled trial. Lancet, 387(10016), 341-348.

6) Ohuchi, N., Ishida, T., Suzuki, A., et al. (2016) Adjunc-tive ultrasonography for breast cancer screening. Lan-cet, 387(10036), 2381-2382.

7) Suzuki, T., Ishida, T., Sasano, H., et al. (2003) Estro-gen sulfotransferase and steroid sulfatase in human breast carcinoma. Cancer Research, 63(11), 2762

-2770.

8) Takagi, K., Ishida, T., Suzuki, T., et al. (2013) Intratu-moral concentration of estrogens and clinicopathologi-cal changes in ductal carcinoma in situ following aromatase inhibitor letrozole treatment. Br. J. Cancer,

109(1), 100-108.

9) Miyashita, M., Ishida, T., Sasano, H., et al. (2015)  Prognostic significance of tumor-infiltrating CD8+ and

FOXP3+ lymphocytes in residual tumors and alterations

in these parameters after neoadjuvant chemotherapy in triple-negative breast cancer : a retrospective

multi-center study. Breast Cancer Res., doi : 10.1186/ s13058-015-0632-x. PMID : 26341640.

10) Fujii, R., Ishida, T., Hayashi, S., et al. (2014) Increased androgen receptor activity and cell proliferation in aro-matase inhibitor-resistant breast carcinoma. J. Steroid

Biochem. Mol. Biol., 144, 513-522.

11) Gonda, K., Ishida, T., Ohuchi, N., et al. (2015) Highly sensitive imaging of cancer with functional nanoparticles. J. Photopolym. Sci. Technol., 28(5), 701-705.

12) Gonda, K., Ishida, T., Ohuchi, N., et al. (2017) Quan-titative diagnostic imaging of cancer tissues by using phosphor-integrated dots with ultra-high brightness. 

参照

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